JP2517738B2 - 化合物半導体単結晶の製造方法 - Google Patents

化合物半導体単結晶の製造方法

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【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、液体封止チョクラルスキー法(LEC法)に
よる化合物半導体単結晶の製造方法に関し、特に直接合
成LEC法による化合物半導体単結晶の製造に利用して効
果的な技術に関する。
[従来の技術] 一般に、GaAs,InP,GaP,InAs等の化合物半導体単結晶
の製造方法としては、LEC法や水平ブリッジマン法(HB
法)が工業的に利用されている。ここで、LEC法とは、
高圧容器内をAr,N2ガス等の高圧ガス雰囲気とし、原料
融液をB2O3等のガラスで封止して高蒸気圧成分であるAs
やPが融液から分解するのを防止しながら、融液に単結
晶の種結晶を浸漬し、これを回転させながら徐々に引き
上げる方法である。このLEC法は、HB法に比べて円形ウ
ェハを効率よく採取できる円柱状結晶を育成でき、また
大口径化も比較的容易であるという利点を有している。
また、GaAs,InAs等の単結晶の製造には、高圧容器内
のるつぼ中でGa,In,As等の原料から直接合成する直接合
成LEC法が行なわれており、特にGaAs単結晶にあって
は、pBN製のるつぼを使用して直接合成LEC法を適用する
ことにより、高純度化が達成され、アンドープ半絶縁性
単結晶の育成が可能となり、高速・低消費電力のIC用基
板としての用途が見込まれている。
ところで、第4図は、ABという式で表される一般的な
化合物半導体単結晶の化学量論組成近傍の温度−組成状
態図を示すものであり、第4図中、実線1は液相線を示
し、実線2は固相線を示す。第4図において、液相線
(実線1)上のP点から晶出する結晶の組成は固相線
(実線2)上のQ点であることから判るように、融液組
成がずれると育成する結晶の組成もそれに応じてずれる
ことになる。また、るつぼ中の限られた融液量の中で結
晶引上げによる固化が進行すると、第4図から判るよう
に、融液組成と結晶組成とが異なるため、融液組成の変
化が必然的に生じる。例えばGaAs単結晶の場合、Ga過剰
融液であると結晶が引上がるにつれて融液組成は更にGa
過剰となり、逆にAs過剰融液であると結晶が引上がるに
つれて融液組成は更にAs過剰となる。
このような融液組成の変動は、結晶組成を一定とする
ための阻害要因となっている。すなわち、第1に、単結
晶育成開始時における初期融液組成が一定でないと、ロ
ット間の結晶組成にばらつきを生じる。第2に、初期融
液組成が化学量論組成から大きくずれてしまうと、1本
の結晶の中においても結晶組成のばらつきを生じてしま
う。
上記のごとき融液組成および結晶組成のばらつきが結
晶の電気的特性に及ぼす影響は顕著である。そのため、
高抵抗でかつ高移動度の化合物半導体単結晶の結晶育成
を行なうには、融液組成を化学量論組成に近づけること
が不可欠である。また、デバイス作製の観点からも、結
晶のロット間および1本のインゴット内のウェハ間にお
ける品質のばらつきは、極力抑えることが望ましい。
[発明が解決しようとする問題点] しかし、従来のLEC法では、高蒸気圧成分であるAs,P
等の蒸発による揮散は、B2O3からなる封止剤層およびA
r,N2等の高圧ガスにより結晶育成が可能な程度に抑制さ
れてはいるものの、初期融液組成を常に一定とすること
ができなかった。特に、直接合成LEC法の場合には、As
等の高蒸気圧成分原料は、合成時および合成から融解ま
での昇温過程において、揮散が必然的に生じてしまう。
この揮散量は、原料の仕込み時における重量の数%に達
することがあり、原料仕込み時にはその揮散量を見込ん
で高蒸気圧成分原料を過剰に用意するのであるが、揮散
量にはばらつきがあるので、初期融液組成を所定組成に
制御することが非常に困難であった。
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもの
で、単結晶育成開始時における初期融液組成を高精度か
つ再現性よく一定範囲内に抑えることができ、高品質の
単結晶を得ることができる化合物半導体単結晶の製造方
法を提供するものである。
[問題点を解決するための手段] 上記従来の問題点を解決するために、本発明は、液体
封止チョクラルスキー法によってGaAs単結晶を製造する
にあたり、Asを過剰に含有させた原料融液を用意し、As
の揮散による原料融液の重量変化を測定しつつ、高圧容
器内の圧力を減圧してAsの揮散を行ない、該原料融液が
所定組成となった時点で高圧容器内を加圧してAsの揮散
を抑制し、単結晶育成開始時における融液組成を原子数
比で次式: As/(Ga+As)=0.5001±0.0002 で表される比率に調整するものである。
すなわち、本発明は、原料融液から揮散するのは高蒸
気圧成分であるAsであって仕込み重量に対して減少する
量は高蒸気圧成分(As)の揮散量のみとみなして良いこ
とに着目し、原料を仕込んだ時の組成を基準として融液
の重量変化を測定し、融液の組成を高精度で把握するも
のである。
より具体的には、高蒸気圧成分(As)を過剰に含有し
た融液の入ったるつぼにロードセルのような重量センサ
を取付け、融液の重量変化を測定しながら、高圧容器内
の圧力を減圧して高蒸気圧成分(As)の揮散を積極的に
行ない、融液が所定重量(所定組成)となった時点で高
圧容器内を加圧して高蒸気圧成分(As)の揮散を抑制
し、所望の初期融液組成とするものである。ここで、高
蒸気圧成分の揮散の進行および停止の条件は、基本的に
は、高圧容器内の圧力を融液の平衡蒸気圧(解離圧)近
くまたは蒸気圧以下とすることにより揮散を進行させる
ことができ、蒸気圧より十分に高い圧力(通常は結晶育
成時の圧力程度)まで加圧することにより揮散を停止す
ることができる。
[作用] 上記構成の化合物半導体単結晶の製造方法によれば、
融液の重量を測定しながら高圧容器内の圧力を減圧して
Asの揮散を行ない、該原料融液が所定組成となった時点
で高圧容器内を加圧してAsの揮散を抑制することによ
り、融液の組成を調整することとしたので、結晶育成開
始時における初期融液組成を高精度かつ再現性よく決定
することができる。また、初期融液組成を化学量論組成
またはコングルエント組成に精度よく一致させることが
できるため、結晶の上部から下部まで均一な組成にして
均一な特性を有する単結晶とすることができ、高品質な
デバイス用基板を得ることができる。
[実施例] 第1図は、本発明の一実施例において使用する単結晶
引上げ炉(結晶引上げ過程)を示すもので、密閉型の高
圧容器3内には、略円筒状のヒータ4が配設されてお
り、このヒータ4の中央には、口径約6インチのpBN製
のるつぼ5が配置されている。そして、このるつぼ5中
には、GaAsの融液6が入れられており、融液6の上面は
B2O3からなる液体封止剤層7で覆われている。また、る
つぼ5は、その下端に固着された支持軸8により回転か
つ上下動可能に支持されている。9は支持軸8の下端に
設けられた支持軸回転・上下駆動機構である。さらに、
るつぼ5には、その下端に融液6等の重量を含めたるつ
ぼ5の重量を測定できるロードセル(重量センサ)10が
取付けられている。11はヒータ4の外周を囲繞するよう
に配置された断熱部材である。
一方、るつぼ5の上方からは、高圧容器3内に結晶引
上げ軸12が回転かつ上下動可能に垂下されており、この
結晶引上げ軸12によって種結晶を保持し、るつぼ5中の
融液6の表面に接触させることができるようになってい
る。13は結晶引上げ軸12の上端に設けられた引上げ軸回
転・上下駆動機構である。また、結晶引上げ軸12には、
結晶の重量を測定できるロードセル14が取付けられてい
る。
さらに、高圧容器3の側壁上部には、高圧のArガスを
導入するためのガス導入管15が接続され、側壁下部に
は、そのArガスを高圧容器3外部へ排出するガス排出管
16が接続されている。これらガス導入管15およびガス排
出管16を介して高圧容器3内を加圧、減圧して内部圧力
を所定圧力とすることができるようになっている。
本実施例においては、上記構成の単結晶引上げ炉にお
いて、直接合成LEC法によってアンドープ半絶縁性GaAs
単結晶を育成した。
すなわち、先ず、原料として7Nの高純度品であるGaお
よびAsを合計約4.3kg用意し、これをるつぼ5中に入れ
た。ここで、原料仕込み時におけるGaとAsとの量は、原
子数比でAs/(Ga+As)=0.5200とした。次にB2O3から
なる液体封止剤をるつぼ5内に入れ、このるつぼ5をヒ
ータ4の内側に設置した後、高圧容器3内の圧力が80気
圧となるようにArガスを導入するとともに、ヒータ4を
加熱してるつぼ5内を約800℃に昇温させ、GaとAsとの
直接合成を行なった。
その後、高圧容器3内を80気圧の圧力に保持しながら
温度を1250℃にまで昇温し、GaAsを融解させた。このGa
As融解時において、ロードセル10により融液6等の入っ
たるつぼ5の重量を測定し、その測定結果から融液組成
を演算したところ、As/(Ga+As)=0.5160であったの
で、この時点から融液6の温度はそのままとなるように
るつぼ5内の温度を保持しつつ、Arガスを排出して圧力
を80気圧から1気圧まで減圧し、Asを積極的に揮散させ
た。
しかる後、ロードセル10により重量測定をしながら、
融液組成がAs/(Ga+As)=0.5003となった時点で高圧
容器3内に再び加圧して20気圧とし、Asの揮散を抑制し
た。そして、この初期融液組成As/(Ga+As)=0.5003
の状態から種結晶を融液6に浸漬して結晶育成を開始
し、直径3インチ、長さ約160mmのGaAs単結晶を得た。
第2図は、横軸に時間、縦軸にAs/(Ga+As)をとっ
て、原料をつるぼ5内に入れた時から結晶引上げ開始時
までの融液組成の変化を示すグラフである。第2図にお
いて、t1はGaとAsとの直接合成反応時、t2はGaAs融解
時、t3からt4までは減圧によるAsの揮散過程、t5は結晶
育成開始時を示すものである。第2図から判るように、
直接合成反応時t1においてはAsの揮散が著しく、結晶育
成開始時t5における初期融液組成はAs/(Ga+As)=0.5
003に調整されている。
一方、第3図は、結晶引上げ過程における融液組成を
両ロードセル10,14による重量測定結果から演算した結
果を示すものである。なお、この演算において、育成結
晶の組成はGa:As=1:1の化学量論組成とした。
第3図から判るように、初期融液組成をAs/(Ga+A
s)=0.5003として実施例の場合、第3図における斜線
領域内にあり、結晶育成初期から終了時まで融液組成の
変動がほとんどなく、また均一であった。これに対し、
初期融液組成が所定組成になっていなかった場合には第
3図において破線で示すように、結晶育成過程において
組成が著しく変化してしまうことが判る。
なお、本実施例で得られたGaAs単結晶の電気特性をVa
n der Pauw法により固化率0.1,0.4,0.75のウェハの中心
部と周辺部とを測定したところ、抵抗率は3×107〜5
×107Ω・cm、移動度は6500〜7500cm2/V・sで成長方向
の電気特性の分布は均一であった。
また、本実施例において、ロードセル10,14の精度は
±2g(不感帯)であり、初期融液組成として制御可能な
精度は、As/(Ga+As)で±0.0002であった。さらに、
初期融液組成As/(Ga+As)が0.5001±0.0002の範囲で
あれば、結晶育成中に融液組成の変動が極めて小さくな
ることが判った。
[発明の効果] 以上のように、本発明の化合物半導体単結晶の製造方
法によれば、原料融液の重量を測定しながら、その測定
結果に基づいて融液組成を演算し、高圧容器内の圧力を
減圧してAsの揮散を行ない、該原料融液が所定組成とな
った時点で高圧容器内を加圧してAsの揮散を抑制するこ
とによって原料融液の組成を調整することとしたので、
結晶育成開始時における初期融液組成を高精度にかつ再
現性よく調整することができる。これによって、初期融
液組成を化学量論組成またはコングルエント組成に精度
よく一致させることができ、育成結晶におけるロット間
のばらつきの小さな高品質の単結晶を得ることができ、
ウェハ間の電気特性のばらつきが極めて小さくなるとい
う効果がある。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の一実施例において使用した単結晶引上
げ炉の縦断面図、 第2図は本発明の一実施例における直接合成反応前から
結晶育成開始時までのAs/(Ga+As)の組成変化を示す
グラフ、 第3図は融液組成と固化率および種結晶からの距離との
関係を示すグラフ、 第4図はAB式で表される化合物半導体単結晶の化学量論
組成近傍の温度−組成状態図である。 3……高圧容器、4……ヒータ、5……るつぼ、6……
融液、7……液体封止剤層、8……支持軸、10,14……
ロードセル、12……結晶引上げ軸、15……ガス導入管、
16……ガス排出管。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】液体封止チョクラルスキー法によってGaAs
    単結晶を製造するにあたり、Asを過剰に含有させた原料
    融液を用意し、Asの揮散による原料融液の重量変化を測
    定しつつ、高圧容器内の圧力を減圧してAsの揮散を行な
    い、該原料融液が所定組成となった時点で高圧容器内を
    加圧してAsの揮散を抑制し、単結晶育成開始時における
    融液組成を原子数比で次式: As/(Ga+As)=0.5001±0.0002 で表される比率に調整するようにしたことを特徴とする
    化合物半導体単結晶の製造方法。
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