JP4739549B2 - 歯車加工機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、歯車素材としてのワークに歯切り加工を施すホブ盤等の歯車加工機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、ホブ盤においては、ホブヘッドにホブアーバを介してホブが装着されている。また、ワークテーブル上にはワーク保持治具を介して歯車素材としてのワークが装着されるようになっている。そして、ホブが回転されながらワークの外周面に沿って、軸線方向または軸線に対する所定角度方向に送り移動されることにより、ワークに創成歯切り加工が施されるようになっている。
【0003】
このホブ盤の創成歯切り加工時には、ワークから多量の切屑が発生して、ワークを保持するワーク保持治具のワークチャック部等に堆積する。このため、ワークの歯切り加工後に、ワークをワーク保持治具のワークチャック部から取り外した状態で、そのワークチャック部に付着している切屑を除去して、次のワークの加工に備える必要があった。
【0004】
このような要望に対処するため、例えば図5に示すような構成のホブ盤が従来から提案されている。すなわち、このホブ盤においては、回転可能なワークテーブル31上にワーク保持治具32が配設され、その胴体部32aの上端にはコレットチャック等のワークチャック部32bが設けられている。そして、ワーク33が下端においてワーク保持治具32のワークチャック部32bに着脱可能に装着されるとともに、上端においてサポートセンタ34に支持されるようになっている。
【0005】
前記ワーク保持治具32の胴体部32aの外周には、供給リング35がロータリージョイント36を介して相対回転可能に接合配置されている。この供給リング35は装置フレームに固定した回り止め39により定位置で保持される。供給リング35の外周には供給チューブ37が接続され、その先端が図示しないクーラント及びエアの供給源に接続されている。供給リング35に連通するように、ワーク保持治具32の胴体部32aには供給通路38が形成されている。
【0006】
そして、ワーク33の歯切り加工中には、クーラント供給源から供給チューブ37及び供給通路38を介して、ワーク33の周側にクーラントが供給される。また、ワーク33の歯切り加工後には、ワーク33がワーク保持治具32のワークチャック部32bから取り外された状態で、エア供給源から供給チューブ37及び供給通路38を介して、ワークチャック部32bにエアが供給される。これにより、ワークチャック部32bに付着している切屑が除去されるようになっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、この従来のホブ盤においては、直径の大きなワーク保持治具32の胴体部32aの外周に、供給リング35が滑り接触をするロータリージョイント36を介して固定位置において胴体部32aに対して相対回転可能に接合配置されている。このため、供給リング35の内側に切屑が侵入しやすく、その切屑のために加工に悪影響が生じるおそれがあった。また、ワーク33の歯切り加工中に、ワーク保持治具32の胴体部32aが回転される際に、その胴体部32aと供給リング35との間で騒音を含む振動等が発生するという問題があった。つまり、供給リング35とワーク保持治具32との間にボールベアリング等の転がり軸受けを設けることができず、供給リング35とワーク保持治具32との間に円滑な相対回転を得ることができない。このため、前記の振動が原因となって加工精度が低下するばかりでなく、早期摩耗や焼き付きのおそれがあった。さらに、特に、ワーク保持治具32の胴体部32aの回転時には、供給チューブ37の引張り力が供給リング35を介してロータリージョイント36に作用するため、前述した摩耗のおそれがいっそう高くなる。加えて、ワーク保持治具32は、加工されるワークの種類等によって直径等が相違するするため、供給リング35やロータリージョイント36等はそれにあわせて多くの種類を用意する必要があり、煩雑であった。
【0008】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、ロータリージョイント等を使用する必要がない歯車加工機を提供することにある。すなわち、この発明は、ワーク保持治具等の摩耗,焼き付き,騒音等が発生するのを防止することができるとともに、切屑の侵入等を防止でき、しかも、ロータリージョイント等を数多く用意する等の煩雑さを解消できる歯車加工機を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、ワークテーブル上にワーク保持治具を介してワークを装着し、ホブヘッドに装着された工具により、ワークに加工を施すようにした歯車加工機において、前記ワークテーブルの中心軸及びワーク保持治具の胴体部には、ワーク保持治具のワークチャック部に切屑除去用のエアを供給するためのエア供給通路を形成したことを特徴とするものである。
【0010】
従って、この請求項1に記載の発明によれば、ロータリージョイント等を使用することなく、ワークテーブルの中心軸及びワーク保持治具の胴体部に形成されたエア供給通路を介して、ワーク保持治具のワークチャック部に切屑除去用のエアを供給することができる。よって、従来構成とは異なり、ワーク保持治具の胴体部とその外周に接合配置された供給リング等のエア供給部材との間で、摩耗,焼き付き,振動や騒音等が発生するのを防止することができる。また、ロータリージョイントを使用していないため、従来構成とは異なり、供給チューブの引張り力が供給リングを介してロータリージョイントに作用することもなく、耐久性を向上させることができる。加えて、ロータリージョイントとワーク保持治具との間に切屑が侵入したりするおそれがなく、さらには、ワーク保持治具の外周に供給リングを設ける構成ではないため、供給リング等の種類を数多く用意する必要がない。
【0011】
また、請求項1に記載の発明は、前記ワークテーブルの中心軸の端部にはワーク保持治具のワークチャック部を開閉させるためのシリンダを連接し、そのシリンダの軸端部には前記エア供給通路と連通するエア供給チューブを接続したことを特徴とするものである。
【0012】
従って、この請求項1に記載の発明によれば、シリンダの軸端部に接続したエア供給チューブから、ワークテーブルの中心軸及びワーク保持治具の胴体部に形成されたエア供給通路を介して、ワーク保持治具のワークチャック部に切屑除去用のエアを容易に供給することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記エア供給通路が、ワーク保持治具のワークチャック部の外周側及び内周側にエアを吹き出すための複数の吹き出し口を備えていることを特徴とするものである。
【0014】
従って、この請求項2に記載の発明によれば、エア供給通路の複数の吹き出し口からワークチャック部の外周側及び内周側にエアを吹き出して、そのワークチャック部に付着している切屑を確実に除去することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明の歯車加工機をホブ盤において具体化した一実施形態を、図1〜図4に基づいて説明する。この実施形態のホブ盤は、切削油を用いないいわゆるドライカットタイプのものである。
【0016】
図1に示すように、このホブ盤においては、ベッド11の一側上部にコラム12が立設されている。コラム12の側面には、ホブサドル13が上下送り機構14を介して上下方向へ送り移動可能に配設されている。ホブサドル13には、ホブヘッド15が角度変更機構16を介して角度変更可能に配設されている。ホブヘッド15上にはホブアーバ17がホブ駆動機構(図示しない)により回転駆動可能に支持され、このホブアーバ17に工具としてのホブ19が装着されるようになっている。
【0017】
図1及び図2に示すように、前記ベッド11の他側上部には、ワークテーブル20が割り出し機構21を介して回転可能に配設され、その中心には中心軸20aが挿通配置されている。ワークテーブル20上にはワーク保持治具22が配設され、その胴体部22aの上端にはコレットチャック等のワークチャック部22bが設けられている。ベッド11の他側上部には支柱23が立設されている。支柱23の側面にはサポートアーム24が上下方向へ移動可能に配設され、その先端にはサポートセンタ25が設けられている。そして、歯車素材としてのワーク26が下端においてワーク保持治具22のワークチャック部22bに着脱可能に装着されるとともに、上端においてサポートセンタ25に支持されるようになっている。
【0018】
図3に示すように、前記ワークテーブル20の中心軸20aの下端には油圧シリンダ27が連接されている。そして、この油圧シリンダ27のピストン27aが下動されたときには、ワークテーブル20の中心軸20a、及びワーク保持治具22の胴体部22a内に設けられ伝達部材22c,22d,22eを介して、ワークチャック部22bが下方に移動される。これにより、胴体部22aの上端内周に設けられた傾斜カム面22fの作用で、ワークチャック部22bが閉じられて、ワーク26の下端がチャックされるようになっている。また、油圧シリンダ27のピストン27aが上動されたときには、ワークテーブル20の中心軸20a及びワーク保持治具22内の伝達部材22c〜22eを介して、ワークチャック部22bが上方に移動される。これにより、ワークチャック部22bが開かれて、ワーク26の下端がチャック状態から解放されるようになっている。
【0019】
図2〜図4に示すように、前記油圧シリンダ27の中心の軸部27b、ワークテーブル20の中心軸20a、ワーク保持治具22の胴体部22a及び伝達部材22c,22eには、エア供給通路28が形成されている。このエア供給通路28の先端には、ワークチャック部22bの外周側及び内周側に切屑除去用のエアを吹き出すための複数の吹き出し口28a,28b,28cが形成されている。エア供給通路28と連通するように、油圧シリンダ27の軸部27bの下端にはエア供給チューブ29が接続され、その端部が図示しないエア供給源に接続されている。なお、前記軸部27bはボールベアリング27cを介してピストン27aに相対回転可能に支持されるとともに、軸部27bにはコネクタ27eが固定され、前記エア供給チューブ29がコネクタ27eに固定されている。そして、コネクタ27eは、固定部に固定の回り止め30により保持されて、軸部27b及びコネクタ27eがロータリージョイントを構成している。
【0020】
次に、前記のように構成されたホブ盤の動作を説明する。
さて、このホブ盤の運転時には、図1及び図2に示すように、歯車素材としてのワーク26が、下端においてワーク保持治具22のワークチャック部22bに装着されるとともに、上端においてサポートセンタ25に支持される。この状態で、ワークテーブル20が割り出し機構21により回転されて、ワーク26が所定角度ずつ割り出し回転される。そして、ワーク26の各割り出し回転位置において、ホブ19がホブ駆動機構18により回転されながら、上下送り機構14によりワーク26の外周面に沿って、軸線方向または軸線に対する所定角度方向に送り移動される。この動作により、ドライカットにて歯車創生法によりワーク26に歯切り加工が施される。
【0021】
このワーク26の歯切り加工が終了すると、油圧シリンダ27のピストン27aが上動され、ワークテーブル20の中心軸20a及びワーク保持治具22内の伝達部材22c〜22eを介して、ワークチャック部22bが上方に移動される。これにより、ワークチャック部22bが開かれて、ワーク26の下端がチャック状態から解放される。そして、この状態で加工済みのワーク26がワーク保持治具22のワークチャック部22bとサポートセンタ25との間から取り外される。
【0022】
その後、図示しないエア供給源からエア供給チューブ29を介してエア供給通路28にエアが供給され、そのエアが複数のエア吹き出し口28a〜28cからワークチャック部22bの外周側及び内周側に向かって吹き出される。これにより、ワークチャック部32bの外周及び内周に付着している切屑が除去される。よって、次に歯切り加工するワーク26の下端をワーク保持治具22のワークチャック部22bにチャックした場合、そのワーク26を振れ等が生じることなく、所定位置に正確に保持することができる。
【0023】
従って、この実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1) このホブ盤においては、ワークテーブル20上にワーク保持治具22を介してワーク26が装着され、ホブヘッド15に装着されたホブ19により、ワーク26に歯切り加工が施されるようになっている。ワークテーブル20の中心軸20a及びワーク保持治具22の胴体部22aには、ワーク保持治具22のワークチャック部22bに切屑除去用のエアを供給するためのエア供給通路28が形成されている。
【0024】
このため、治具上で大径の滑り軸受け型のロータリージョイント等を使用することなく、エアをワークチャック部22bに供給することができる。すなわち、ワークテーブル20の中心軸20a及びワーク保持治具22の胴体部22aに形成されたエア供給通路28を介して、ワーク保持治具22のワークチャック部22bにエアを供給できる。そして、そのワークチャック部22bに付着している切屑を除去することができる。よって、従来構成とは異なり、ワーク保持治具22の胴体部22aとその外周に接合配置された供給リング等のエア供給部材との間で、摩耗,焼き付き,振動や騒音等が発生するのを防止することができる。従って、振動に起因した加工精度の低下が生じるおそれがない。また、ロータリージョイントを使用していないため、従来構成のように、供給チューブの引張り力が供給リングを介してロータリージョイントに作用することもなく、耐久性を向上させることができる。加えて、ロータリージョイントとワーク保持治具22との間から切屑が侵入することはなく、それによる悪影響を阻止できる。しかも、ロータリージョイントがワーク保持治具22の軸芯に位置しているため、このロータリージョイントを複数種類用意するような煩雑さを避けることができる。
【0025】
(2) このホブ盤においては、前記ワークテーブル20の中心軸20aの端部にワーク保持治具22のワークチャック部22bを開閉させるための油圧シリンダ27が連接されている。そして、その油圧シリンダ27の軸部27bの端部にはエア供給通路28と連通するエア供給チューブ29が接続されている。このため、油圧シリンダ27の軸部27bに接続したエア供給チューブ29から、ワークテーブル20の中心軸20a及びワーク保持治具22の胴体部22aに形成されたエア供給通路28を介して、ワークチャック部22bに切屑除去用のエアを容易に供給することができる。
【0026】
(3) このホブ盤においては、前記エア供給通路28が、ワーク保持治具22のワークチャック部22bの外周側及び内周側にエアを吹き出すための複数の吹き出し口28a〜28cを備えている。このため、ワークチャック部22bに付着している切屑を確実に除去することができる。よって、次に歯切り加工するワーク26をワーク保持治具22のワークチャック部22bに振れ等を生じることなく正確に装着することができて、加工精度を向上させることができる。
【0027】
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ この発明を、ホブ盤以外の歯車加工機、例えばシェービング加工機等に具体化すること。このような場合も、前記実施形態と同様な効果を発揮する。
【0028】
・ この発明を、切削油を用いるいわゆるウェットカットタイプの歯車加工機において具体化すること。このような場合には、切屑が切削油により付着しやすいため、いっそう有効である。
【0029】
(別の技術的思想)
請求項以外の技術的思想から把握される別の技術的思想は以下の通りである。
(1) ドライカットタイプのホブ盤であることを特徴とした歯車加工機。
【0030】
(2) ワークテーブルの内部にエア供給路を設けたことを特徴とする前記(1)項に記載の歯車加工機。
【0031】
【発明の効果】
以上、実施形態で例示したように、この発明においては、切屑の侵入や摩耗,焼き付き,振動や騒音等が発生するのを防止することができるとともに、耐久性を向上させることができる。また、この発明は、加工精度向上でき、しかもエア供給用の部品を複数用意するような煩雑さを避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 一実施形態のホブ盤を示す正面図。
【図2】 図1のホブ盤のワーク保持治具を拡大して示す部分断面図。
【図3】 図2のワーク保持治具の下部の構成を示す部分断面図。
【図4】 図2のワーク保持治具のワークチャック部をさらに拡大して示す部分断面図。
【図5】 従来のホブ盤のワーク保持治具を示す部分断面図。
【符号の説明】
15…ホブヘッド、19…ホブ、20…ワークテーブル、20a…中心軸、22…ワーク保持治具、22a…胴体部、22b…ワークチャック部、26…ワーク、27…油圧シリンダ、27b…軸部、28…エア供給通路、28a〜28c…エア吹き出し口、29…エア供給チューブ。
Claims (2)
- ワークテーブル上にワーク保持治具を介してワークを装着し、ホブヘッドに装着された工具により、ワークに加工を施すようにした歯車加工機において、
前記ワークテーブルの中心軸及びワーク保持治具の胴体部には、ワーク保持治具のワークチャック部に切屑除去用のエアを供給するためのエア供給通路を形成し、
前記ワークテーブルの中心軸の端部にはワーク保持治具のワークチャック部を開閉させるためのシリンダを連接し、そのシリンダの軸端部には前記エア供給通路と連通するエア供給チューブを接続したことを特徴とする歯車加工機。 - 前記エア供給通路は、ワーク保持治具のワークチャック部の外周側及び内周側にエアを吹き出すための複数の吹き出し口を備えていることを特徴とする請求項1に記載の歯車加工機。
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