JPH0777683B2 - チャック装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は旋盤等の工作機械の回転主軸に取付けられワー
クをクランプするためにチャック装置に関し、特にワー
クを芯出しして把持する求心チャックと、芯出しとは無
関係にクランプするフローティングチャックとを兼用し
得るようにしたチャック装置に関する。

（従来の技術） ワークを回転させながらこれを加工するために旋盤が用
いられており、旋盤は通常ワークを回転する主軸を有し
ている。この主軸にはワークをクランプするためのチャ
ックが取付けられている。チャックにワークをクランプ
させた状態でのワークの加工形態としては、求心チャッ
クによる加工がある。これは、例えばワークの外周径が
所定の精度の円形に仕上げられている場合に、これの中
心を工作機械の主軸の中心に一致させるようにしてワー
クの加工を行なう場合であり、この場合にはワークの中
心と主軸の中心とを一致させるようにワークを把持つま
りクランプすることから求心チャック状態のクランプな
いし求心チャックと言われている。また、例えばワーク
の外周を切削して所定の外径のワークを得る場合等のよ
うに、ワークの中心を主軸の中心に一致させるようにし
てワークをクランプする必要がない場合には、フローテ
ィングチャックと言われるクランプ方式が用いられる。

（発明が解決しようとする課題） 一台の旋盤を用いて求心チャック方式の加工とフローテ
ィングチャック方式の加工とを行なう場合には、従来で
はチャック自体を求心用チャックとフローティング用チ
ャックと選択して交換する必要があった。このチャック
自体の交換作業は容易でなく、そのためにかなりの時間
を要することからワークの加工能率の向上を阻害するこ
とになっていた。

本発明は上記従来技術の問題点に鑑みてなされたもので
あり、一台の工作機械を用いて、求心チャック状態での
加工とフローティング状態での加工とを迅速に設定し得
るようにすることを目的とする。

（課題を解決するための手段） 上記目的を達成するための本発明は、工作機械のヘッド
ストックに回転自在に装着された中空の主軸にチャック
本体を取付け、それぞれ先端にワーク把持部を有する複
数のクランプ片を前記チャック本体に開閉自在に取付
け、前記チャック本体の回転中心に沿う方向に進退移動
するクランプロッドに、半径方向に調整移動自在に複数
の作動部材を取付け、前記それぞれの作動部材を前記そ
れぞれのクランプ片の後端部に係合し、前記チャック本
体の回転中心位置で軸方向に移動自在となった求心ロッ
ドにテーパー部を形成すると共に、当該テーパー部と前
記作動部材の内方端面との間に求心コマを介在してなる
チャック装置である。

（作用） ワークを求心チャックするには、求心ロッドを作動して
求心コマを径方向外方に調整移動させる。これにより、
作動部材は所定の距離だけ径方向外方に移動することに
なり、この作動部材を介してクランプ片が所定の距離だ
け閉じる動作を行ない、ワークはクランプ片によって芯
出しされることになる。そして、この状態でクランプロ
ッドを作動させれば、クランプ片によってワークは把持
つまりクランプされることになる。また、ワークをフロ
ーティングチャックする場合には、求心ロッドを作動さ
せることなく、クランプロッドのみを作動して、クラン
プ片を閉じさせてこれによりワークをクランプすること
になる。

（実施例） 以下、図示する本発明の一実施例に基いて本発明を詳細
に説明する。

第１図は本発明の一実施例に係るチャック装置を示す断
面図であり、本発明のチャック装置によって、外周面が
円形となった丸物ワークW1を求心チャッキングしている
状態を示す。

符号１は工作機械のヘッドストックを示し、このヘッド
ストック１の前端面の前方には、第１図には示されてい
ないテールストックが前記ヘッドストック１に対して接
近離反移動自在となっている。このヘッドストック１に
は、中空の主軸２が軸受３により回転自在に装着されて
いる。この主軸２を回転駆動するために、主軸２の後端
に固定されたプーリー４には、図示しないモータにより
駆動されるベルトが掛け渡されることになる。

前記主軸２の先端面には支持プレート５を介してチャッ
ク本体６が取付けられている。このチャック本体６に
は、それぞれピン７を中心に開閉自在となったクランプ
片８が設けられている。このクランプ片８は、例えば３
個設けられており、チャック本体６の回転中心軸に対し
て120゜の位相となっている。それぞれのクランプ片８
の先端には、ワークW1を把持する把持部としての把持爪
９が一体となっている。ただし、このクランプ片８の数
は３個に限られない。

前記主軸２の中には中空となったクランプロッド11が軸
方向に進退移動自在に装着されており、このクランプロ
ッド11の先端はチャック本体６の内部にまで達してい
る。このクランプロッド11の先端部には、半径方向に伸
びた作動部材12が取付けられており、この作動部材12は
半径方向に調整移動自在となっている。また、この作動
部材12は前述したクランプ片８の個数だけ取付けられて
おり、それぞれの作動部材12はそれぞれのクランプ片８
の後端部と係合している。これにより、クランプロッド
11が軸方向に摺動すると、この軸方向の移動が例えば３
個のクランプ片８の開閉移動に変換されることになる。
この変換移動を円滑に行なうべく、作動部材12に形成さ
れた球形状の孔13内には球体14が収容され、この球体14
に形成された孔内を前記クランプ片８の後端部が貫通し
ている。

前記中空のクランプロッド11の中には、求心ロッド15が
軸方向に移動自在に設けられており、この先端にはテー
パー部16が形成されている。そして、テーパー部16と前
記作動部材12の径方向内方の端面との間には、求心コマ
17が介在している。この求心コマ17は複数の作動部材12
のそれぞれに対応して設けられている。したがって、求
心ロッド15を後退させると、求心コマ17が径方向外方に
移動して、複数のクランプ片８は、それぞれの把持爪９
の内方面がチャック本体６の回転中心から一定の距離と
なるような姿勢に調整移動され、ワークW1の芯出しが達
成されることになる。

求心ロッド15を前進限位置に設定すると、チャックはフ
ローティング状態となり、このフローティング量は、求
心ロッド15の前進限位置によって設定される。この前進
限位置を設定するために、中空のクランプロッド11の先
端部内にはフローティング量調整カラー20が嵌合されて
いる。このカラー20を長さの相違したものに交換すれ
ば、フローティング量が変化することになる。

主軸２の後端面には回転円筒体21が固定されており、こ
の円筒体21は主軸２と共に回転する。この円筒体21内に
は、求心用シリンダー22が軸方向に摺動自在に組込まれ
ており、この求心用シリンダー22は連結部材23を介して
求心ロッド15に連結されている。また、この求心用シリ
ンダー22の中には、クランプ用シリンダー24が軸方向に
摺動自在に組込まれており、このシリンダー24は連結部
材25を介してクランプロッド11に連結されている。

前記回転円筒体21の外側には、固定円筒体31が軸受32を
介して嵌合されており、この円筒体31には２つの油圧ポ
ート33、34が形成されている。一方のポート33はそれぞ
れのシリンダー22、24を前進移動させる際に圧油を供給
するためのポートであり、他方のポート34はそれぞれの
シリンダー22、24を後退移動させる際に圧油を供給する
ためのポートである。

ポート33から油室35内に圧油を供給した場合には、求心
用シリンダー22の後端面が押されて前進すると共に、こ
のシリンダー22の後端部に形成された連通孔36を通って
クランプ用シリンダー24の後端面にも圧油が供給される
ことになる。一方、ポート34から反対側の油室37に圧油
を供給すると、ここの圧油は連通孔38を通ってクランプ
用シリンダー24の背面側油室にも供給されることにな
る。

上述した本発明のチャック装置を用いてワークをその中
心を芯出しして把持する場合の手順について説明する。

第１図はワークW1を求心チャッキングした状態つまりワ
ークの芯出ししを完了した状態を示す図であり、第２図
はワークW1をチャックから外した状態を示す。

図示しない搬送装置によってワークW1を把持爪９に当て
るようにワークW1をチャック本体６にセットする。この
状態のもとで、油圧ポート34に図示しない油圧源からの
圧油を供給する。すると、まず求心用シリンダー22が後
退して求心ロッド15が後退移動することになる。これに
より、求心ロッド15に形成されたテーパー部16の作用に
よって、求心コマ17が径方向外方に移動して、作動部材
12が所定の距離だけ径方向外方に調整移動することにな
る。したがって、ワークW1は、その中心が主軸２の回転
中心と一致した位置に芯出しされる。引続く圧油の供給
によって、クランプ用シリンダー24が後退する。これに
より、クランプロッド11が後退することによって、作動
部材12が後退することになり、クランプ片８がピン７を
中心に第１図において時計方向に回動してワークW1をク
ランプすることになる。このクランプは例えば３つのク
ランプ片８が全て閉じることにより達成される。

このワークW1に対する切削加工は、図示しないモータに
よってプーリー４を介して主軸２を回転することにより
達成される。加工終了後には、油圧ポート33から圧油を
供給することによってクランプ片８を第２図に示す姿勢
に変化させる。そして、この状態でワークW1をチャック
から外すことになる。

第３図はワークを芯出しすることなく加工する場合にお
ける加工状態を示す図であり、この図に示されたワーク
W2は、これの中心と外周面の中心とが高精度で加工され
ていない場合等のように、芯出しを行なうことなく、チ
ャックにクランプされることになる。

この場合には、芯出しを行なわないので、把持爪９にワ
ークW2を接触させた状態で、チャック用シリンダー24の
みを後退移動させる。ただし、把持爪９及びフローティ
ング量調整カラー20は、第１、２図に示されたものとは
別のものに交換されている。第３図に示されるように、
この場合には、求心コマ17は作動部材12を外径方向に調
整移動させずに、クランプロッド11の後退によってクラ
ンプ片８が閉じる。これによって、上述したフローティ
ングチャックが達成されることになる。

第４図は本発明の他の実施例に係るチャックを示す図で
あり、この場合も第３図と同様にワークをフローティン
グチャックしている状態を示している。ただし、この場
合には、チャック本体６の前方に設けられたテールスト
ック40のセンター41と、チャックとによってワークW3が
支持されることになる。また、チャック本体６には別の
センター42が装着されると共に、把持爪９も交換される
ことになる。

（発明の効果） 以上のように、本発明によれば、クランプロッドに径方
向に調整移動自在に作動部材を備え、これらの作動部材
にクランプ片の後端部を係合するようにし、更に求心ロ
ッドに形成されたテーパー部と作動部材との間に求心コ
マを介在させるようにした結果、作動部材を介してクラ
ンプ片を調心移動させることができるので、チャック本
体を交換することなく、一台の工作機械つまり旋盤によ
って、ワークのフローティングチャックと求心チャック
とを行なうことが可能となる。これにより、種々の種類
のワークに対して、フローティングチャックの状態での
加工と、求心チャック状態での加工との相互交換を迅速
に行なうことができ、加工能率が大幅に向上することに
なった。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の一実施例に係るチャック装置によりワ
ークを求心チャッキングしている状態を示す断面図、第
２図はワークを取外した状態を示す断面図、第３図は同
一のチャック装置によってワークをフローティングチャ
ッキングしている状態を示す一部省略断面図、第４図は
軸物ワークを同一のチャック装置によってフローティン
グチャックしている状態を示す一部省略断面図である。 １……ヘッドストック、２……主軸、６……チャック本
体、８……クランプ片、９……把持爪、11……クランプ
ロッド、12……作動部材、15……求心ロッド、16……テ
ーパー部、17……求心コマ、22……求心用シリンダー、
24……クランプ用シリンダー、W1、W2、W3……ワーク。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】工作機械のヘッドストックに回転自在に装
   着された中空の主軸にチャック本体を取付け、それぞれ
   先端にワーク把持部を有する複数のクランプ片を前記チ
   ャック本体に開閉自在に取付け、前記チャック本体の回
   転中心に沿う方向に進退移動するクランプロッドに、半
   径方向に調整移動自在に複数の作動部材を取付け、前記
   それぞれの作動部材を前記それぞれのクランプ片の後端
   部に係合し、前記チャック本体の回転中心位置で軸方向
   に移動自在となった求心ロッドにテーパー部を形成する
   と共に、当該テーパー部と前記作動部材の内方端面との
   間に求心コマを介在してなるチャック装置。