JP4738664B2 - 自動玉揚げ機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、フライヤーワインダー(フライヤー撚糸機)などの繊維機械又は産業資材用の糸状部材(以下単に糸という)などの巻取装置において連続的に供給されるワーク部材を撚りを付与して巻き取り、満管時のボビン交換時に停止することなく、かつ、満管ボビンの玉揚げと空ボビンの装着とが人手を介することなく自動的に効率よく行いうる自動玉揚げ機に関する。
【0002】
【従来の技術】
繊維産業界におけるマルチフィラメントあるいは産業資材用の糸をフライヤーワインダーなどを用いボビン巻取りを行う場合のボビン交換では、撚りを付与しない無撚のテークアップワインダーを用いたものはすでに提案されている(たとえば、特開平10−279188号公報、特開2000−355463号公報、特開2001−72338号公報など)が、実際の作業においては、満管ボビンと空ボビンの交換作業を複雑な人手作業によって低効率で実施しているのが現状である。
【0003】
たとえば、現在実施されているフライヤーワインダー機によるボビン交換では、撚りを付与させるフライヤー部がタレット(ターレットと同じ)作動時にボビンなどに接触するために、供給糸を停止するか、段差ローラなどの補機を使用するなどにより見掛け上のタレット動作を実施している。そこで、巻取糸が製造ラインから定速で連続的に供給されるため、巻取ボビンが満管になると、先ず、そのスピンドルの回転を止め満管ボビンを人手作業によりスピンドルから取り外し、空ボビンをこのスピンドルに取付けた後、スピンドルを再び回転させて空ボビンの巻取作業を再開しているが、連続的に送られてくる糸の処理のため、この交換作業中は製造ラインから連続的に繰り出される糸を一旦停止するか、巻取装置の手前でウエスト状態とするか、或いは段差ローラなどを用いて一旦待機させる方法が採用されている。この作業は連続生産を続行しながら実施されるので、たとえば、段差ローラなどの補機を用いた場合、慣性が働いて糸が段差ローラに巻付いてしまうなどの不具合があり、巻取作業を一旦停止する必要が生ずることから低能率で生産コストに悪影響を与えている。そして、段差ローラによる待機装置が必要なことから装置が大型化する。そこで、作業能率を高めるために、タレット型糸巻取装置を単純に採用すると、満管ボビンと空ボビンを交換する際に空ボビンへの糸端巻付け定着作業に多くの手間がかかるばかりでなく、自動巻付けにあっては、特に、撚りを付与させずに巻き取る方式であるためにボビン間の糸渡り時に張力バランスが困難なことと相まって糸切れが頻繁に発生するなど、この点でも生産コストに悪影響を与えるといった問題点があるためフライヤーワインダーなどの繊維機械又は産業資材用の糸などの巻取装置における連続生産において解決されるべき問題である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
この発明の自動玉揚げ機は、このような操業上の課題を解決し、供給糸を停止することなく、かつ、段差ローラなどの補機を用いることなく満管ボビンと空ボビンの交換がタレット交換のもとに連続生産を続行しながら高効率に実施できる自動玉揚げ機の提供を目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するものは、以下のものである。
(1) 定速で連続的に供給させる糸状部材を、縦方向に往復作動するトラバース機構を有し一定の撚りを付与させながら巻き取りを行うフライヤーワインダーにおいて、前記糸状部材に撚りをかけ、撚りかけされた前記糸状部材のボビンへの巻取りと、ボビン交換時に空ボビンへの糸端巻付け定着を行うフライヤーと、前記フライヤー直下の巻取位置と、該巻取位置と離間する満管ボビンの抜取りと前記空ボビンの装着セットとを行う待機位置とに配備され、前記ボビンの脱着ができ、かつ、モータで各別に回転駆動されるスピンドルと、前記巻取位置と前記待機位置との間に配備され、ボビン交換時において前記満管ボビンと前記フライヤー間の前記糸状部材の押し下げと、前記満管ボビンの巻取回転の停止後かつ前記フライヤーの回転による前記空ボビンへの前記糸端巻付け定着後に、押し下げられ、かつ前記満管ボビンと前記空ボビン間を張架する前記糸状部材の切断を行う糸押えを兼ねたヤーンカッターと、前記フライヤー、前記スピンドル、前記ヤーンカッターの機械要素を信号指令により自動的に作動させるコントローラとを備えた自動玉揚げ機。
(2) 前記フライヤーはフリー状態のほか、モータによる強制回転と制動装置による回転停止位置の規制制御とが可能となっている上記(1)に記載の自動玉揚げ機。
(3) 前記スピンドルの通常回転と前記空ボビンへの次の巻取糸の糸端巻付け定着時のフライヤーの強制回転とはトルクモータで回転駆動し、前記空ボビンに対する次の糸巻取り当初のスピンドル回転はインバータモータで回転駆動する上記(1)に記載の自動玉揚げ機。
(4) 前記フライヤーによる前記空ボビンへの糸端巻付け定着時には糸張力を許容張力の範囲内において緩和させる上記(1)に記載の自動玉揚げ機。
(5) 前記待機位置の一側に前記満管ボビンの巻き崩れを防止するヤーンストッパーを備えた上記(1)に記載の自動玉揚げ機。
(6) 前記各スピンドルの回転駆動手段は、駆動源となるトルクモータとインバータモータ及びタイミングプーリ、タイミングベルトを含む構成となっている上記(1)または(3)に記載の自動玉揚げ機。
(7) 前記一連の玉揚げ動作は、予め設定されたプログラムによりシーケンス制御される上記(1)に記載の自動玉揚げ機。
上記課題を解決するこの発明は、撚糸を対象とするタレット型巻取機構であって、タレットの回動軸の軸心に関し、好ましくは180度対称位置に2個のスピンドルが離間して設けられ、これらのスピンドルは巻取位置と待機位置とに交互に変位でき、そして、これらのスピンドルが巻取装置本体内部に設けられた駆動手段によって回転され、巻取位置の上部にはフライヤーを備えた糸の巻取装置を対象とし、この巻取装置における満管ボビンと空ボビンの交換の自動化ができる自動玉揚げ機を提供している。
【0006】
そして、上記課題を解決する本発明の後述する実施例の自動玉揚げ機では、定速にて連続的に供給されてくる糸を巻取糸に引張られて回転しながらトラバース運動をするフライヤーを介して巻取ボビンに撚りをかけながら巻取られている糸が満管の状態になったことを任意の検知手段、たとえば、タイマーによって検知すると、タレットは所定の角度(180度以下同じ)巻取方向に水平回転し、巻取位置の満管ボビンがタレットの所定角度回転によって巻取作業を継続したままタレット回転軸の軸芯に対し所定の角度変位した待機位置に移動し、一方、待機位置に予めセットされてスタンバイしていた空ボビンは巻取位置に移動する。このとき、フライヤーは満管ボビンと空ボビンの移動変位に邪魔にならない予め決められた定位置に停止している。なお、この発明において使用する巻取ボビン形状はスピンドル軸と共軸径を有する物であれば特に拘る物ではない。
【0007】
以上のようなタレットの回動中は、生産設備から定常的に送られてくる糸はヤーンガイドとフライヤーに案内されて巻取作業を継続したまま(回転しつつ)待機位置に到達する満管ボビンに巻取られその張力は保たれる。
そこで、満管ボビンは待機位置に、空ボビンは巻取位置に達すると、待機位置の満管ボビンと、巻取位置の空ボビン上の空ボビンと同一軸心を保って位置している上記フライヤーとの間に張架されている糸の略中央部上に糸押えを兼ねたヤーンカッターが降下してきて満管ボビンの上方部に巻取られている糸を満管ボビンの中程まで押し下げ、満管ボビンの巻取り回転を停止すると同時にフライヤーを所定方向(図示時計方向)に強制回転しながら降下させると、糸の押し下げにより斜状となっている先の巻取糸の上に次の巻取糸の糸端に相当する部分が停止中の空ボビン、すなわち、両鍔ボビンの巻取軸の上方から下方に向けて斜状に巻付けられて満管ボビンから空ボビンへの巻取糸の引渡しがしっかりと確実に行われる。このとき、定常的に送られてくる糸とフライヤーによる空ボビンへの巻付けとが同調して糸の張力は保たれる。
【0008】
上記空ボビンへの糸端の巻付け定着が完了すると、満管ボビンと空ボビン間の糸をヤーンカッターで素早く切断すると同時にフライヤーの巻付け用回転を停止してフライヤーをフリー状態にするとともに、巻取位置の空ボビンを回転始動して次の巻取り作業に移行するものである。
その後、タレットの待機位置にある満管ボビンのスピンドルからの抜脱と次の空ボビンの該スピンドルへの装着セットとを自動又は手動で行うことにより、上述した満管ボビンと空ボビンの交換作業が糸の生産中繰返し実施されるものである。
【0009】
さらに、要約すると、定速で連続的に供給される糸を、縦方向に往復作動するトラバース機構を有し一定の撚りを付与させながら巻き取りを行うフライヤー撚糸機において、巻取中のボビンが外部信号により満管状態となったとき、タレットを所定の角度に水平回転させて、タレット上の待機位置に予めセットされている空ボビンは巻取位置に、巻取位置の満管ボビンは供給系を停止及び弛ませることなく連続して巻き取りながら待機位置へ変位させ、次いで、待機位置の満管ボビンと、巻取位置の空ボビン上に同一軸心を保って位置する上記フライヤーとの間に張架する糸上に糸押さえを兼ねたヤーンカッターを降下させることにより糸を満管ボビンの中程まで押し下げて後、満管ボビンの回転を停止すると同時にフライヤーを所定方向に強制回転しながら降下させて次の巻取糸の糸端に相当する部分を糸の張力を保ったまま空ボビンに巻付け定着し、上記巻付け定着後、満管ボビンと空ボビン間の糸をヤーンカッターで切断すると同時にフライヤーの巻付け回転用駆動モータを停止してフリー状態とするとともに、空ボビンをスピンドル回転用駆動モータにて回転始動して次の巻取り作業に移行させ、その後、タレットの待機位置にある満管ボビンのスピンドルからの抜脱と次の空ボビンの該スピンドルへの装着セットとを自動又は手動で行うものである。
【0010】
上述の特徴を有するこの発明の満管ボビンと空ボビンの交換作業において、ボビンが挿脱されるスピンドルと空ボビンへの次の巻取糸の糸端巻付け定着時におけるフライヤーの回転はトルクモータで回転駆動し、空ボビンにおける次の糸の巻き取り当初の回転はインバータモータで回転駆動すると、これらの回転制御が適正に行え、また、満管ボビンが待機位置へ変位してその回転が停止されたとき、ヤーンストッパーでその外側面を保持してその巻き崩れを防止する。さらに、フライヤーによる新しい空ボビンへの糸端巻付け定着時に糸張力を許容張力の範囲内において緩和し糸の供給速度とボビンへの巻付け速度との誤差を吸収し糸切れを防止する。さらには、一連のボビン交換動作は予め設定されたプログラムによりシーケンス制御されるから、ボビン交換の完全自動化が実現できる。なお、図示しないが待機位置における満管ボビンの抜脱及び空ボビンの装着の完全自動化は容易である。
【0011】
上述の特徴を有するこの発明の満管ボビンと空ボビンの交換作業は、巻取機構がタレット型であることを前提として、特殊構造のフライヤーの使用によって撚りをかけながらの巻付けと、満管ボビンと空ボビン間の糸の引渡しのための機械的手段、トラバースガイドを含む関連機械要素の組合せは装置と相互に関連した作業機能によって確実に実施される。
すなわち、定速で連続的に供給されてくる糸に撚りをかけ、撚りかけされた糸の巻取ボビンへの巻取り及び空ボビンへの糸端巻付け定着とを行う上下移動可能なフライヤーと、上記フライヤー直下の巻取位置と該巻取位置とは離間する満管ボビンの抜取りと空ボビンの装着セットとを行う待機位置とに配備され、ボビンが脱着でき、かつ、タレットの離間位置にトルクモータでそれぞれが各別に回転駆動されるように軸設された2つのスピンドルと、タレットの待機位置と巻取位置との間に配備され、満管ボビンと空ボビン間の糸を押し下げ切断する上下移動可能な糸押えを兼備するヤーンカッターと、上記フライヤー、スピンドル、ヤーンカッターの機械要素を信号指令により自動的に作動させるコントローラとを主要な機械的手段としている。
【0012】
上記満管ボビンと空ボビンの自動交換において、待機位置の一側にヤーンストッパーを満管ボビンの外側面に接離可能に設けて満管ボビンの糸崩れを防止するほか、上記各々のスピンドルの回転駆動手段は、駆動源となるトルクモータとインバータモータ及び駆動伝達部材、たとえば、タイミングプーリ、タイミングベルトを含んで構成され、それぞれのモータなどの特徴を活して自動制御が適正に行いうるようにし、また、フライヤーはフリー状態のほか、トルクモータによる強制回転と制動装置による回転停止位置の規制制御とができるようになっていて、巻取り時の撚かけ巻付け、空ボビンへの糸端巻付け及び定位置での停止が確実に行えるようになっている。
【0013】
【発明の実施の形態】
以上説明したこの発明の構成、作用を一層明確にするために、以下この発明の自動玉揚げ機の好適な実施の形態の一例について図面を参照して説明する。
【0014】
図示した実施の形態は、マルチフィラメント糸条を両鍔ボビン(直径略20cm、高さ略40cm)に巻取るフライヤー撚糸機を例としたもので、以下このフライヤー撚糸機について具体的に説明する。
【0015】
この発明が適用されているマルチフィラメントの製造装置では、百数十本の合成樹脂系の極細単糸が1つに合糸されたマルチフィラメント糸条(以下単に糸条という)が製造ラインから一定速度で連続供給され巻取装置によって独立して巻取ボビンに巻き取られるものであり、以下の説明は単位巻取装置とその機能について説明する。
【0016】
最初に満管ボビンと空ボビンの交換作業を実施するための単位巻取装置について説明する。この単位巻取装置(以下単に巻取装置という)は、図1乃至図8に示されているように、巻取ボビンを装着する一対のスピンドルを有するタレット型巻取装置であって、巻取ボビン1(以下の説明では満管ボビンを1a、空ボビンを1bという)を装着したタレット2の回転軸4の軸芯を中心として180度対称的位置にこれらのスピンドル3(以下の説明では後述する巻取位置aにあるスピンドルを3a、待機位置bにあるスピンドルを3bという)を配置したタレット型巻取機構を中核として構成されている。
【0017】
そして、スピンドル3の一方が、それに装着した空ボビン1bに糸条5を巻取る位置、すなわち、巻取位置aに位置し、他の一方は満管ボビン1aを取外した後に空ボビン1bを装着し、タレット2の次の180度回動まで回転を停止している位置、すなわち、待機位置bに位置するように、タレット2に180度の間欠的回転運動を与える駆動機構6が巻取装置本体に設けられている。
上記駆動機構6としては、駆動モータ7の回転力をタレット2の回転軸4にチェーン8及びチェーン歯車9、10を介して伝達し、回転軸4の軸芯を中心とした180度対称位置の巻取位置aと待機位置bに満管ボビン1aを装着するスピンドル3a又は3bと空ボビン1bを装着するスピンドル3b又は3aが交互に位置できるように回転制御される構成となっている。
【0018】
タレット2のスピンドル3に装着された空ボビン1bへの巻取りが開始されてから満管となるまでの時間が、糸条5の生産設備からこの巻取装置に供給される速度、巻取ボビンの巻取容量との関係で予め設定されていて、この設定時間によってタレット2の駆動手段に作動信号を発信するタイマーが全巻取装置の作業を制御する集中制御ボックス(図示せず)に設けられている。
【0019】
この一対のスピンドル3a、3bは、トルクモータ11又はインバータモータ12によってそれぞれのタイミングプーリ13、14、15及び一連のタイミングベルト16を介してそれぞれが独立して回転される(図3参照)。そして、製造装置から定速で連続的に送り出される糸条5は、中間の糸ガイド17及び巻取位置aのスピンドル3a上に同一軸心を保って配備され、該スピンドル3aと平行にトラバース運動が与えられるフライヤー18によって案内されて、巻取位置aに位置するスピンドル3aに装着された巻取ボビン1aに巻取られる。なお、上記タイミングベルト16の張力はタイミングプーリ13の取付板11aをスライドして調整できるようになっている。
【0020】
このフライヤー18は、図4及び図5に示されているように、トルクモータ19と制動装置20とともにそれぞれのタイミングプーリ21、22、23とこれらにかけ渡された一連のタイミングベルト24を介して連動可能に設けられ、フライヤー18がフリー状態のときは巻取ボビン1aに巻き取られる糸条5に引張られてフライヤー18が追従回転し糸条5に、たとえば、リング精紡機のリングの働きと同様に撚りをかけながら巻取ボビンに巻き取る働きをし、また、ボビン交換後の巻取位置aにある新しい空ボビン1bへの糸端巻付け定着時には、トルクモータ19でフライヤー18を図示時計方向(右方向)へ強制回転しながら降下して新しい空ボビン1bへの糸端の巻付けを行い、この巻付け完了後、制動装置20でフライヤー18の回転を停止するとともに、満管時にはフライヤー18を予め決められた定位置(タレット交換時に邪魔にならない位置)に規制制御して位置させる構造となっている。したがって、フライヤー18はフリー状態のほか、トルクモータ19による強制回転と制動装置20による回転停止及び停止位置の制御とが行いうるようになっている。
【0021】
フライヤー18のトラバース運動は、正逆モータ25の回転をベルト26を介して駆動軸27に伝へ、機枠Aに固定されたガイドレール28に沿って上下動する可動基板29に両端が取付けられた連動ベルト30を上記駆動軸27に固定されたプーリ31と上部のフリー状態のプーリ32とにかけ渡して可動基板29に取付けられたフライヤー18をトルクモータ19、制動装置20とともに上下動することにより、フライヤー18にスピンドル3aと平行なトラバース運動が付与されるようになっている(図1参照)。なお、フライヤー18は上面板18aの周縁下部の対向位置にガイド管18bを垂設し、その下端をリング状の支持板18cで保持し、かつ、ガイド管18bの先端部を下方部にまで突出させた構造となっていて、このフライヤー18に対し糸条5は、中心上部の軸受体33の中心に穿った糸通孔34に上方から下方に向けて挿通され、ガイド管18bの途中の挿入孔18dからガイド管18bの下方突出部18eに挿通して下端開口18fから引き出し巻取ボビン1bに至る経路をもって挿通支持されている。
【0022】
巻取ボビン1を挿脱するスピンドル3は、たとえば、図6に例示されているように、スピンドル3の基端部がベアリング34を介在した軸受け35により回転自由に支持され、正確な軸心を保って振れを防ぐために上下二段の軸受け35で支持されているが、オイル軸受けとしてもよいこと勿論である。また、上記軸受け35の上部にはタイミングプーリ14が固定され、その上部に巻取ボビン1の下端角孔部が嵌着される角軸部36を上面に有するボビン受け部37がスピンドル3と一体に備えられている。
【0023】
待機位置bに到達して回転が停止された満管ボビン1aの巻き崩れを防ぐためのヤーンストッパーは、たとえば、図7及び図8に例示されているように、回転軸38の上端に解除時の操作把手39を先端に有する支持アーム40の基端を固定し、この支持アーム40にウレタンなどで作られた押え部41を表面側に備えた縦長角状のストッパー部材42が支持アーム40に沿ってスライド調節可能に取付けられ、該ストッパー部材42を回転軸38を支点として回動変位することで、これが満管ボビン1aの外側面に接離するように設けられている。
【0024】
そして、回転軸38の中程には、上記支持アーム40と共動する突板43を固定し、この突板43と機枠Aとの間に引張り発条44を設けて上記支持アーム40をこの引張り発条44の弾発力でストッパー部材42が常時満管ボビン1a側へ接近して満管ボビン1aが押圧保持される方向へ付勢し、かつ、支軸45を支点として揺動可能な作動レバー46の先端側に上記突板43の先端に設けられた係合凸部47が係脱する係合凹部48を有し、基端側にはソレノイド49のプランジャー50の先端を横方向から当接するとともに、引張り発条51により作動レバー46を係合凸部47に係合凹部48が係合される方向に付勢して設けられている。また、回転軸38の下端にはリミットスイッチ52をON、OFFするスイッチ作動片53を設け、このリミットスイッチ52で上記ソレノイド49を作動するように設けられている。
【0025】
したがって、満管ボビン1aが待機位置bに到達してその回転が停止されると、これを感知してソレノイド49が作動しプランジャー50で作動レバー46の基端側を引張り発条51に抗して押動すると、作動レバー46は図示反時計方向に回動してその先端側の係合凹部48と突板43の係合凸部47との係合関係が解かれるため、支持アーム40は引張り発条44の引張力で突板43を介して図示反時計方向に回動しストッパー部材42の押え部41を満管ボビン1aの外側面に押し当てその巻き崩れを防止する。このとき、ソレノイド49の作動はすでに停止されていてストッパー部材42による押圧保持は引張り発条44の引張力のみで行われており、作動レバー46は突板43の係合凸部47でその先端部が受け止められ作動前の状態に保たれている(図7参照)。
【0026】
そこで、ストッパー部材42による満管ボビン1aの押圧保持を解くときは、支持アーム40の先端把手39を持って支持アーム40を手動で手前に引くと、支持アーム40は図示時計方向に回動し一体回動する突板43の先端係合凸部47が作動レバー46の係合凹部48に作動レバー46の引張り発条51による付勢力と相まって自動で嵌り込み係合されることでストッパー部材42は満管ボビン1aと離間した位置に保持されるのである(図7参照)。
【0027】
タレットの待機位置bと巻取位置aとの間に配備され満管ボビン1aと空ボビン1b間の糸条5を押し下げ切断する糸押えを兼備するヤーンカッター58は、糸押え54とカッター55とを先端部に備えた支持アーム56が枢軸57を支点として傾動し、満管ボビン1aと空ボビン1bとが変換された後、糸条5を満管ボビン1aの中程まで糸押え54で押し下げ、次の糸端巻付けに備えるとともに、糸端巻付け完了後、直ちにカッター55で糸条5の切断を行って次の巻取り開始が適正に行いうるように構成されている。なお、カッター55としては合成樹脂系の糸にはヒータによる溶断カッターを用いるのがよく、その他の糸には切断刃などによる切断カッターを用いる場合もある。なお、溶断カッターの場合は、溶断部が溶融してかためられ、切断端部がバラバラにほぐれることがないので実施上有益である。
【0028】
以上述べた巻取装置は、満管ボビンと空ボビンの交換作業において、後述する連続した逐次的動作を行うが、これら逐次的動作は電気的シーケンス制御システムを適用することによって確実に実施される。なお、各単位巻取装置ごとに独立したシーケンス制御システムが適用され、これらの制御システムは一括して中央制御装置に装備されている。
【0029】
上記構成において、図9乃至図14を参照してボビンの自動交換手順の一例について簡単に説明する。
【0030】
生産ラインから定速にて連続的に供給されてくる糸条5は巻取糸条に引張られて回転しながらトラバース運動をするフライヤー18を介してトルクモータにより巻き取り回転している巻取ボビン1に撚りをかけながら巻き取られ、巻取ボビン1が満管になると(図9参照)、フライヤーが定位置に停止して保持される(図9参照)と同時にタレット2が所定の角度巻取方向に水平回転して巻取位置aの満管ボビン1aを待機位置bへ巻取作業を継続したまま移動し、待機位置bの空ボビン1bはフライヤー直下の巻取位置aへ移動する(図10参照)。
【0031】
上記満管ボビン1aと空ボビン1bの移動変位が終了すると、ヤーンカッター58が降下して満管ボビン1aとフライヤー18との間の糸条5の略中央部をヤーンカッター58で押し下げて糸条5を満管ボビン1aの中程まで押し下げ(図11参照)、満管ボビン1aの巻取回転を停止すると同時にフライヤー18を所定方向に強制回転しながら降下させ、巻取位置aの空ボビン1bに次の巻取糸条の糸端に相当する部分を巻付け定着して糸条5を満管ボビン1aから空ボビン1bへ引渡す(図12及び図13参照)。上記糸条の引渡動作において、満管ボビン1aの巻取回転停止と同時にヤーンストッパー42が満管ボビン1aの外側面に押し当てられる(図12参照)。
【0032】
上記糸条の引渡動作、すなわち、空ボビン1bへの糸端の巻付け定着が完了すると、満管ボビン1aと空ボビン1bとの間の糸条5をヤーンカッター58で切断して糸条5の完全引渡しをすると同時にフライヤー18の巻付け用回転を停止してフライヤーをフリー状態にするとともに、巻取位置の空ボビン1bを回転始動して次の巻取作業に移行する(図14参照)。
【0033】
その後、待機位置にある満管ボビンのヤーンストッパーによる押圧を解いて満管ボビン1aのスピンドルからの抜脱取外しと、次の空ボビン1bの該スピンドルへの装着セットとを自動又は手動で行うことで、上述した満管ボビンと空ボビンの交換作業が生産ラインを止めることなく生産中繰返し実施される。
【0034】
以上のボビン交換手順において、空ボビンへの糸端の巻付け定着に万一ミスが発生すると、満管ボビン1aと空ボビン1bとの円滑な交換作業を不能にするので、このようなミスは絶対に避けなければならない。この技術的観点から、この発明の好ましい実施形態では糸端巻付け定着時に糸張力を許容張力の範囲において緩和し上昇する糸張力を吸収することによって糸切れ防止を図りその確実性を高めている。
【0035】
以上この発明の実施の形態の一例について説明したが、この発明はこうした実施の形態のものに何等限定されず、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施しうることは勿論である。
たとえば、満管ボビンと空ボビンの移動変位角度としては、180度とするのが構造上最も望ましいが、120度としても実施可能である。また、この発明の方法を実施するための各機械要素、たとえば、フライヤーと巻取ボビンの関係及びこれらの駆動源としてのトルクモータ又はヤーンカッターの構造等は、この発明の技術思想を満足する限り種々の改変が可能である。
【0036】
【発明の効果】
この発明は以上説明したような形態で実施され、以下に記載されるような効果を奏する。
【0037】
この発明の自動玉揚げ機によれば、撚糸を対象とする機構となっているから、定速にて連続的に供給されてくる糸を巻取ボビンにフライヤーを介して撚りをかけながら巻き取るので、糸のボビンへの巻付けが適正に行われ、ボビンの巻き姿が崩れることはなく、また、合糸された糸がばらけることもないので、取扱い上有益である。
【0038】
また、上記撚りかけのほか、巻取ボビンへの巻き取り及び空ボビンへの糸端巻付け定着をもフライヤーで行うので、糸押えを兼備するヤーンカッターでの糸の押し下げと相まって糸端巻付けによる糸の引渡しが正確、かつ、円滑に行えてボビン交換作業が連続生産を続行しながら高効率のもとに実施できる。
【0039】
さらに、上記フライヤー、スピンドル等の回転駆動源としてトルクモータを用い、これらの回転制御が適正、かつ、円滑に行えるようにしたから、満管ボビンと空ボビン間の糸の引渡しのための機械的手段などの相互関連機能に基づく確実な実施が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の自動玉揚げ機の一例を示した全体の概略正面図である。
【図2】同一部切欠側面図である。
【図3】スピンドル回転機構の一例を示した概略平面図である。
【図4】フライヤー部の側面図である。
【図5】その平面図である。
【図6】スピンドルの取付け構造の半断側面図である。
【図7】ヤーンストッパー部の一例を示した平面図である。
【図8】同側面図である。
【図9】巻取状態の概略説明図である。
【図10】ボビン移動変位状態の概略説明図である。
【図11】糸押し下げ状態の概略説明図である。
【図12】糸端巻付け当初の状態の概略説明図である。
【図13】糸端巻付け状態の概略説明図である。
【図14】糸端巻付け完了と糸切断状態の概略説明図である。
【符号の説明】
1…巻取ボビン
2…タレット
3…スピンドル
1a…満管ボビン
1b…空ボビン
a…巻取位置
b…待機位置
3a…巻取位置にあるスピンドル
3b…待機位置にあるスピンドル
5…糸条
18…フライヤー
42…ヤーンストッパー
58…ヤーンカッター
Claims (7)
- 定速で連続的に供給させる糸状部材を、縦方向に往復作動するトラバース機構を有し一定の撚りを付与させながら巻き取りを行うフライヤーワインダーにおいて、
前記糸状部材に撚りをかけ、撚りかけされた前記糸状部材のボビンへの巻取りと、ボビン交換時に空ボビンへの糸端巻付け定着を行うフライヤーと、
前記フライヤー直下の巻取位置と、該巻取位置と離間する満管ボビンの抜取りと前記空ボビンの装着セットとを行う待機位置とに配備され、前記ボビンの脱着ができ、かつ、モータで各別に回転駆動されるスピンドルと、
前記巻取位置と前記待機位置との間に配備され、ボビン交換時において前記満管ボビンと前記フライヤー間の前記糸状部材の押し下げと、前記満管ボビンの巻取回転の停止後かつ前記フライヤーの回転による前記空ボビンへの前記糸端巻付け定着後に、押し下げられ、かつ前記満管ボビンと前記空ボビン間を張架する前記糸状部材の切断を行う糸押えを兼ねたヤーンカッターと、
前記フライヤー、前記スピンドル、前記ヤーンカッターの機械要素を信号指令により自動的に作動させるコントローラと
を備えたことを特徴とする自動玉揚げ機。 - 前記フライヤーはフリー状態のほか、モータによる強制回転と制動装置による回転停止位置の規制制御とが可能となっている請求項1に記載の自動玉揚げ機。
- 前記スピンドルの通常回転と前記空ボビンへの次の巻取糸の糸端巻付け定着時のフライヤーの強制回転とはトルクモータで回転駆動し、前記空ボビンに対する次の糸巻取り当初のスピンドル回転はインバータモータで回転駆動する請求項1に記載の自動玉揚げ機。
- 前記フライヤーによる前記空ボビンへの糸端巻付け定着時には糸張力を許容張力の範囲内において緩和させる請求項1に記載の自動玉揚げ機。
- 前記待機位置の一側に前記満管ボビンの巻き崩れを防止するヤーンストッパーを備えた請求項1に記載の自動玉揚げ機。
- 前記各スピンドルの回転駆動手段は、駆動源となるトルクモータとインバータモータ及びタイミングプーリ、タイミングベルトを含む構成となっている請求項1または3に記載の自動玉揚げ機。
- 前記一連の玉揚げ動作は、予め設定されたプログラムによりシーケンス制御される請求項1に記載の自動玉揚げ機。
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