JP4738512B2 - 蓄熱パネル体 - Google Patents
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Description
また、蓄熱材に袋状凹部が点在するため、蓄熱材の深部(厚さ方向)にまで袋状凹部の表面を伝って空気層の熱が伝えられるため熱交換効率の向上が得られる。
更に、袋状凹部が形成された2枚のパネル材を貼り合わせるだけで、上記のような各種の効果を有するパネル体を簡単に作ることができ、また、袋状凹部の底部同士が当接するパネル構造であるから剛性が高く軽量な蓄熱パネル体となる。
[第1実施形態]
図1は、アクティブソーラーシステムを利用した建物の断面図である。
一般に、建物の壁、床、天井材等に蓄熱パネル体1を配置したアクティブソーラーと呼称される太陽熱蓄熱構造物が知られている。蓄熱パネル体1は、外気が高い場合には、それを蓄熱して室内に熱伝導させず、外気が低い場合には、内気の熱を蓄熱して室外に熱伝導させず、これによって室内の居住空間の快適性を確保する。
建物37の特に壁面は外気の温度の影響を受ける部分であり、壁構造38には、蓄熱パネル体1が配置され、その室内側の面には内壁板や壁の仕上げ材40が貼られている。床部の根太37D間には、上面が床材37Eの裏面に接触した状態で蓄熱パネル体1が配置され、その下部に電気式床暖房機としてのヒーター43が敷設され、ヒーター43の下部が断熱材41で覆われている。また、天井材39の上部に蓄熱パネル体1が配置され、その上部には断熱材42が敷設されている。
蓄熱パネル体1は、内部に蓄熱材5が充填されたパネル状の構造体として構成され、建材に用いて好適な寸法(例えば600mm×900mm×10mm)の略矩形に形成され、上述のように、建物37の壁や天井、床などに敷設されている。
蓄熱パネル体1は、板状の樹脂製で中空のパネル体8の表裏面を樹脂製の表面シート材9で覆って容器を形成し該容器に蓄熱材5を充填して構成されている。パネル体8は、底部に向かって縮径した所定の高さの円錐台形状(すり鉢状や円柱状でもよい)の凹部である袋状凹部13が千鳥格子状に設けられた2枚の樹脂製のパネル材2を、袋状凹部13の底部同士が当接するように重ね合わせて接合して形成されている。すなわち、パネル体8には、2枚のパネル材2の間に、胴部が括れた形状(いわゆる、砂時計形状)の多数の中空筒状体11が散在し、また、それぞれの中空筒状体11の間には互いに連通した隙間12が形成される。パネル体8にあっては、これらの中空筒状体11により剛性が高められ、また、軽量化が図られる。そして、このように剛性に優れ軽量なパネル体8を、袋状凹部13を予め設けた2枚のパネル材を貼り合わせるだけで簡単に製作できる。
上記表面シート材9は、パネル体8の縁部の隙間12を封止して、パネル体8を容器32(図9)とするものであり、この表面シート材9には樹脂製の硬質シートが用いられている。
この図に示すように、蓄熱材5は、マイナス(−)70℃からプラス(+)70℃に加熱される過程では約35.8℃に吸熱ピークP1が出現し、プラス(+)70℃からマイナス(−)70℃に冷却される過程では約25.8℃に放熱ピークP2が出現する。
このような蓄熱材5を蓄熱パネル体1に用いることで、図5に示すように、蓄熱パネル体1が約31℃で蓄熱し約28℃で安定放熱するパネルが実現される。
一方、冬季においては、室内の熱が外気に伝熱されることなく該蓄熱パネル体1に蓄熱され、さらに、日中の外気の温度も蓄熱パネル体1に蓄熱され、そして室内の温度低下に伴って蓄熱パネル体1が放熱するため、外気の温度低下に比して室内の温度低下が抑えられる。また冬季においては、安い夜間電力を使用してヒーター43で蓄熱パネル体1を40℃に加熱して蓄熱材5に蓄熱させておくことで、明け方にかけて外気温が低下し蓄熱パネル体1が28℃に冷やされたときに放熱を開始させることができる。これにより、明け方の冷え込むときに合せて室内が暖められる。このとき、蓄熱パネル体1を床材37Eの下に配置した場合には、蓄熱パネル体1と床材37Eの間の熱抵抗により、床材37Eの表面温度は約23℃程度に抑えられ快適な温度の床暖房が実現される。このように、蓄熱パネル体1を用いることで、冬季においては、外気温の温度低下に比して室内温度の低下を抑えることができ、また、夜間電力を使用して蓄熱パネル体1を加熱し蓄熱しておくことで電力料金を抑えつつ快適な室温が維持される。
これに対して、本実施形態の蓄熱パネル体1では、図1に示す内部構造により、中空筒状体11が蓄熱材5の中に散在するため、これら中空筒状体11が蓄熱材5の中を熱が伝わる際の抵抗として寄与し、中空筒状体11がない場合に比べて蓄熱材5の熱応答性(外気温度に対する蓄熱及び放熱の持続時間)が緩やかになる。これにより、室内の温度が外気温及び室内温度の急激な変動に追従することがなく、快適な温度域を中心として緩やかに室温を変化させることができる。
この比較試験から明らかなように、室内の壁構造にベニヤ壁を用いた場合、ベニヤ壁が外部の温度変動に対して熱応答性が良すぎることから、冷房中に室内温度が過度に低くなり、また、冷房終了後は外気の温度により室内温度が急激に上昇する。このように、ベニヤ壁にあっては、冷房中に室内温度が低下し過ぎるためベニヤ壁表面に結露が生じ、また、冷房時と冷房終了後の温度差が大きく、また、冷房終了後の温度変化が急であるため、人体に負担を強いることになる。
パネル体8は、2枚のパネル材2を貼り合わせて形成するため、図7(A)に示すように、その端面(縁部)30が開放している。したがって、パネル材2の間の隙間12に蓄熱材5を充填するためには、容器を形成する必要がある。容器の形成に際しては、端面30を閉塞するように、例えば帯状の閉塞用の板材を端面30に宛がって接合し容器を構成することが考えられる。しかしながら、この場合には、端面30が平滑な面でないと、閉塞用板材と端面30の間に隙間が生じ、蓄熱材5が漏れてしまうし、これを防止するために、端面30を平滑に面出しするのは非常に労力が要る。
すなわち、図7(B)に示すように、パネル体8の表裏面に、樹脂製の硬質シートである表面シート材9を重ねた後、パネル体8の表裏の面全体を加熱加圧して表面シート材9を接合する。表面シート材9には、例えばPP(ポリプロピレン)やPET(ポリエチレンテレフタラート)や塩化ビニール、スチロール等の硬質な熱可塑性の樹脂材が好適に用いられる。
なお、表面シート材9が無い状態でもパネル体8の縁部を熱溶着することで容器32を形成することは可能であるが、この場合には、パネル体8を構成するパネル材2の厚みが十分でないと、熱溶着箇所が延びて肉薄になったときに破けて穴が生じる。これに対して、表面シート材9を用いることで、破ける危険性を容易に回避することができ、また、表面の剛性や平坦性を確保することができる。
そして、図9(A)に示すように、注入口35、及びエア抜き孔36の下側に規定した溶着予定線Vに沿って表面シート材9を加熱押圧して熱溶着し、図9(B)に示すように、溶着予定線Vに沿って切り落として容器32を分断する。蓄熱材5を密封した蓄熱パネル体1が形成される。
この蓄熱パネル体1には、その4隅に表裏に貫通する貫通孔370が予め設けられており、図10に示すように、この貫通孔370に釘375を通して壁面に釘着される。これらの貫通孔370は、例えば、樹脂製の筒部材をパネル体8の対応箇所に予め埋め込んでおき、パネル体8が表面シート材9で覆われた後に、各筒部材の両端開口を貫通させることで形成される。このように蓄熱パネル体1に筒部材を用いて貫通孔370を予め形成しておくことで、内部の蓄熱材5が漏れ出すことなく、釘や鋲を打ち付けて壁面に設置することができる。
また、図11に示すように、蓄熱パネル体1の縁部377を例えば段形状に形成し、他の蓄熱パネル体1の縁部377と互いに嵌り合う構成とすることで、蓄熱パネル体1同士の間に隙間を生じずに壁面に敷き詰め可能にしてもよい。
また、蓄熱材5に袋状凹部13が点在するため、蓄熱材5の深部(厚さ方向)にまで袋状凹部13の表面を伝って空気層の熱が伝えられるため熱交換効率の向上が得られる。
更に、袋状凹部13が予め形成された2枚のパネル材を貼り合わせるだけで、上記のような各種の効果を有するパネル体8を簡単に作ることができ、また、袋状凹部13の底部同士が当接するパネル構造であるから剛性が高く軽量な蓄熱パネル体1が得られる。
この構成によれば、パネル体8を構成する2枚のパネル材2を加熱加圧して容器32を形成するため、密封性の高い容器32を簡単に製造することができる。更に、パネル体8の表裏面に、樹脂製の硬質シートから成る表面シート材9を設けて溶着するため、溶着部分の破けが防止され液漏れを確実に防止することができる。
更に、パネル体8の表面が表面シート材9で覆われることで袋状凹部13には空気が密封されるが、空気は蓄熱材5に比べて蓄熱量が非常に小さいため、当該蓄熱パネル体1の蓄熱性能に影響を与えることがなく、蓄熱材5の充填量だけを考慮して蓄熱性能を設計することができる。すなわち、パネル体8の容積に占める袋状凹部13の容積を調節することで、蓄熱材5の充填量を調整することができ、これにより、蓄熱パネル体1の蓄熱性能を所望の性能とすることができる。このとき、袋状凹部13の容積は、袋状凹部13の数や開口径、深さ方向の縮径率を可変することで容易に調整することができる。
本実施形態は、電磁波遮蔽機能を備えた蓄熱パネル体について説明する。
電化製品、屋内配電線、送電線或いは、携帯電話、パソコン、コンピューター等から発する電磁波は、現代社会の生活では避けて通れない。そこで、特開2004−250643号公報に示されるように、従来、電磁波から身を守ることが可能な電磁波吸収構造物が提案されている。
これに対して、本実施形態の蓄熱パネル体100は、建物37の壁、床、天井材等に配置するに適した第1実施形態の蓄熱パネル体1に電磁波遮蔽機能を持たせることで、居住空間の電磁波遮蔽を容易に実現可能にしている。
蓄熱パネル体100は、パネル材2の凹部(袋状凹部)13に電磁波を反射する反射面が構成されている。すなわち、袋状凹部13の内面には電磁波遮蔽素材としてのアルミニウム箔14が張設され、このアルミニウム箔14により蓄熱パネル体100に進入する電磁波が反射される。
また本実施形態の表面シート材109は、第1実施形態の表面シート材9とは異なり、接合用樹脂シート21と、硬質樹脂シート22と、電磁波遮蔽層23とを、この順で積層して構成されている。電磁波遮蔽層23は、例えば10μm程度の厚みに形成された薄いアルミニウム箔、或いは、硬質樹脂シート22の表面に蒸着等により形成されたアルミニウム層により構成されており、蓄熱パネル体100に入射する電磁波を反射する。
すなわち、蓄熱パネル体100の成型時には、硬質樹脂シート22が溶融する程度に加熱しながら表面シート材9を押圧することで、硬質樹脂シート22の下層の接合用樹脂シート21にも適度に溶融を生じさせ、この接合用樹脂シート21とパネル体8の間の接合、接合用樹脂シート21と硬質樹脂シート22の間の接合、及び、硬質樹脂シート22と電磁波遮蔽層23の間の接合を一度に行うことができる。
そこで、本実施形態では、底部に向かって縮径するように袋状凹部13を形成している。このような構成により、パネル材2の表面では開口Aの割合を大きくして、多くの電磁波Hが袋状凹部13に導かれるようにしつつ、それぞれのパネル体8の内部では容積を十分に確保して十分な量の蓄熱材5を充填可能としている。
また、アルミニウム箔14に代えて、電磁波遮蔽効果(反射効果或いは吸収効果)を有する他の金属箔を張設する構成としても良い。このとき、アルミニウム箔14や、これに代わる金属箔は、袋状凹部13の内面に隙間なく密接させて張り付いてなくとも良く、アルミニウム箔14や金属箔を袋状凹部13に宛がい、先端が細い棒などで袋状凹部13に押し込むなどすれば十分である。
係るパネル材102の素材としては、PE(ポリエチレン)などの熱可塑性樹脂に、導電性カーボンなどから成る導電性繊維などの導電性充填材、或いは磁性充填材を混合した素材を用いることができ、このような熱可塑性樹脂を基材にした素材を用いることで、電磁波の遮蔽性に加え、加工成形の容易性を発揮することができる。また、パネル材102の熱伝導性が高められるため、空気との熱交換効率が高められ、結果として蓄熱パネル体100の蓄熱性能が高められる。
特に、蓄熱パネル体100を電熱式床暖房機と組み合わせて使用することで、電熱式床暖房機が発する電磁波を遮蔽し、なおかつ、該床暖房機の熱を蓄熱して床暖房に利用することができるため消費電力を削減することができる。
また、この蓄熱パネル体100を蓄冷材として使用することができる。特に、表面がアルミニウムから成る電磁波遮蔽層23で覆われているため、この電磁波遮蔽層23が、蓄熱材5の温度上昇を遅延するように作用し、高い保冷効果が得られる。
本実施形態は、防耐火性を備えた耐火・蓄熱パネル体について説明する。
図14は、本実施形態に係る耐火・蓄熱パネル体200の断面図である。なお、同図において、第1実施形態の蓄熱パネル体1と同様の部材については同一の符号を付し、その説明を省略する。
また、蓄熱パネル体1への耐火板50の固定手法は、縁部50Aを折り曲げて固定する手法の他にも、耐火板50の裏面に、多数の楔を設けて蓄熱パネル体1の表面にとめても良い。
輻射熱反射層51は、例えば耐火板50の表面へのアルミニウムの溶射によって形成されている。なお、輻射熱反射層51の素材には、輻射熱の反射性能が高い任意の素材が使用できる。また、輻射熱反射層51の形成には、耐火板50の表面に、輻射熱反射性が得られる厚みの皮膜を形成可能であれば任意の形成手法を用いても良い。
特に、本実施形態の耐火・蓄熱パネル体200においては、内部に多数の中空筒状体11が形成されているため、これら中空筒状体11を介して耐火板50から蓄熱パネル体1の裏面への熱移動が生じ易くなり、防耐火性能を向上に寄与する。また、蓄熱パネル体1の蓄熱材5には、固相−液相の間で状態を変化させて蓄熱する潜熱型のものが使用されるため、蓄熱パネル体1のパネル材2が熱で破けた場合でも、液体の蓄熱材5が漏れ出るだけなので、不燃性の点でも有利なものとなる。
すなわち、耐火・蓄熱パネル体200を、厚みが10mmのときに1m2あたり10kgの蓄熱材5が入るように構成すると、この耐火・蓄熱パネル体200には4000kcalの熱量を蓄熱できることとなる。
このような耐火・蓄熱パネル体200によれば、火災時に加わる熱量を蓄熱材5で大量に吸収できるため、高温環境下でも、より長い時間耐えることができ、防耐火性能を大きく向上させることができる。
また、本実施形態の耐火・蓄熱パネル体200において、中空筒状体11の径や数、さらには蓄熱パネル体1の厚みを変えるだけで、所望の防耐火性能を簡単に得ることができる。
例えば、保冷車両の保冷庫の壁面に蓄熱パネル体1、100、或いは、耐火・蓄熱パネル体200を設置し、各蓄熱パネル体1、100、或いは、耐火・蓄熱パネル体200には、8%の塩水を使用した弱酸性の蓄熱材5を予め充填しておくことで、マイナス5℃以下の温度に庫内を保冷することができる。
200 耐火・蓄熱パネル体
2、102 パネル材
5 蓄熱材
8 パネル体
9、109 表面シート材
11 中空筒状体
12 隙間
13 袋状凹部
14 アルミニウム箔
21 接合用樹脂シート
22 硬質樹脂シート
23 電磁波遮蔽層
50 耐火板
51 輻射熱反射層
H 電磁波
Claims (5)
- 複数の袋状凹部を千鳥格子状に備え各袋状凹部の開口幅を当該袋状凹部とこの凹部の周囲を囲んで隣接する袋状凹部間の平坦幅より大きくした樹脂製の一対のパネル材を形成し、各パネル材の袋状凹部の底部同士を当接させ各パネル材を重ね合わせて各パネル材の間に多数の中空筒状体を散在させ全容積に占める中空筒状体の全体の割合を20〜50%に設定したパネル体を形成し、当該パネル体の表裏面に樹脂製の表面シートを積層し、これらの表面シートを前記パネル体の縁に沿う溶着予定線に沿って当該パネル体とともに溶着して前記蓄熱材を密封する容器を形成し、一対のパネル材間における各中空筒状体の間の互いに連通した隙間部分に潜熱型の蓄熱材を充填したことを特徴とする蓄熱パネル体。
- 前記蓄熱材は、吸熱ピークと放熱ピークの間に温度差を有することを特徴とする請求項1に記載の蓄熱パネル体。
- 輻射熱を反射する輻射熱反射層が表面に形成された耐火板で前記パネル体を覆い耐火性を持たせたことを特徴とする請求項1又は2に記載の蓄熱パネル体。
- 前記袋状凹部が電磁波を反射する反射面を構成することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の蓄熱パネル体。
- 前記袋状凹部が前記底部に向かって縮径することを特徴とする請求項4に記載の蓄熱パネル体。
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