JP4737945B2 - 分離膜の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、複数成分からなる混合物を各成分に分離する際に用いられる分離膜、分離膜の製造方法に関する。
従来、有機化合物と水を含む複数成分からなる混合物の分離方法として、蒸留塔を用いた蒸留法が広く利用されている。
しかしながら、蒸留法はエネルギー消費量が大きく、装置も大型になるという問題があることから、近年、蒸留塔と分離膜とを組み合わせた混合物の分離方法が提案されてきている。
例えば特許文献1に記載の分離方法では、蒸留塔内の水およびエタノールの混合物を加熱することにより、蒸留塔内の上下方向に水およびエタノールの濃度分布を形成させ(この場合、相対的に沸点の低いエタノールが上部側に、相対的に沸点の高い水が下部側に濃縮される)、蒸留塔頂部より発生する塔頂蒸気(エタノール濃度の高い蒸気)を分離膜に導入するようになっている。この分離膜は、水を透過しやすいが、エタノールを透過しにくいという機能を有しており、分離膜を透過しなかった非透過蒸気は、冷却され高純度のエタノールとして回収される。一方、分離膜を透過した透過蒸気については、再度蒸留塔内に戻されるようになっている。
この分離方法によれば、分離膜が分離機能の一部を担うこととなるため、その分、蒸留塔の小型化およびエネルギー消費量の低減を図ることが可能になる。
特開平7−227517号公報
このような分離膜は、他にも、例えば酢酸水溶液からの水の回収や、湿分を含む空気中から水を回収するプロセスで利用可能である。
一般に分離膜は材質から有機膜と無機膜に分類され、分離機能としては次のように説明できる。
有機膜の場合、膜内へ透過物質が溶解した後、さらに拡散する際に、溶解速度と拡散速度の差により各成分が分離される。一方、無機膜の場合は、膜表面に選択的に凝縮性ガス(HO等)が吸着されて微細孔内に凝縮し、無機膜の細孔内を毛管吸引力で反対側に移動し、低圧の透過側から特定成分が分離される。従って、分離性能は膜の種類によりそれぞれ相違する。
無機膜としては、従来、セラミック等の無機多孔体の細孔中に、アルミナゾルや高分子ハイドロゲルを担持させたものがある(例えば特許文献2〜5参照)。
これらの無機膜は、無機多孔体の細孔中にアルミナゾルを含浸したり、高分子ハイドロゲルの原料となる重合開始剤、モノマおよび架橋剤混合水溶液に無機多孔体を浸漬させることで形成している。
特開昭60−180979号公報 特開昭60−180980号公報 特開昭61−192314号公報 特公平8−32298号公報
分離膜における分離性能(例えば分離目的物質の透過速度等)は、常に向上することが求められている。分離性能が向上すれば、分離膜を用いた分離装置のコスト低減が図れるからである。
分離膜の透過速度の向上のためには、無機膜であれば、基材の空隙率の向上と分離膜の均一製膜化が必要である。
また、無機多孔体の細孔にアルミナゾルや高分子ハイドロゲルを担持させる際に、ゾルが焼結してしまい、細孔が消滅して無孔化することがある。その結果、透過速度が低下し、分離膜の分離性能が低下してしまう。
同じくゾルの焼結により、ゾルに含有される水分等が急激に蒸発し、分離膜に大きな空隙(ピンホール)が発生してしまい、これにより分離膜としての機能を損失してしまう恐れもある。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、分離性能を従来以上に向上させるとともに、耐久性に優れる分離膜の製造方法等を提供することを目的とする。
かかる目的のもと、本発明の分離膜の製造方法は、無機材料から形成された多孔体の一方の側と他方の側に圧力差を生じさせた状態で、多孔体を、ゾル材に浸漬させ、ゾル材を多孔体の細孔に担持させる担持工程と、ゾル材が細孔に担持された多孔体を焼成する焼成工程と、を備えることを特徴とする。このようにして、圧力差を用いることで、ゾル材は多孔体の細孔に引き込まれ、確実に担持させることができる。
ゾル材は、シリカゾル、アルミナゾル、シリカ・アルミナゾルのいずれかを含むものとすることができる。さらに、ゾル材に、前述のゾル材の主要成分中に、その他微量の調整剤を含むこともできる。
ここで、担持工程では、多孔体を加熱する工程と、加熱された多孔体をゾル材に浸漬させる工程と、を有するようにするのが良い。このとき、多孔体を加熱する工程では、多孔体をゾル材に含まれる水分の沸点より高い温度に加熱するのが好ましい。これにより、ゾル材に含まれる水分を蒸発させて除去することができる。このときの温度は、ゾル材に含まれる水分が多孔体に接触した時点で蒸発する温度であれば良く、気温、気圧等に応じて異なるが、常温〜300℃、より一般的には100〜250℃とするのが好ましい。また水分の蒸発により多孔体の温度が低下するため、130〜250℃とするのがさらに好ましい。
また、焼成工程に先立ち、担持工程を複数回繰り返す。そのとき、複数回繰り返す担持工程にて、多孔体の一方の側と他方の側の圧力差を、段階的に小さくしていく。また、複数回繰り返す担持工程にて、ゾル材の濃度を、段階的に薄くしていくのも好ましい。
さらに、焼成工程では、分離膜の使用温度よりも高い温度で焼成するのが好ましい。これにより、分離膜の使用中に、担持されたゾル材が焼結して細孔を塞いだり、逆に大きな空隙が発生するのを防止できる。
本発明の分離膜は、上記方法で形成されたものとすることができる。これにより、分離膜は、無機多孔体の細孔にゾル材が担持されたものとなる。さらに、この分離膜は、α={(1−y)/y}/{(1−x)/x}(ただし、xは供給混合ガスの溶剤組成、yは透過ガス中の溶剤組成)で表される分離係数αが1.3以上であることを特徴とすることができる。そしてこの分離膜は、ガス透過速度が20kmol/mh以下であるのが好ましい。これにより、高い分離性能を有した分離膜とすることができる。
このような分離膜は、無機多孔体の一方の側と他方の側に圧力差を生じさせた状態で、無機多孔体をゾル材に浸漬させてゾル材を多孔体の細孔に担持させた後、無機多孔体を焼成することで形成することができる。
本発明によれば、分離膜の分離性能を従来以上に向上させることができる。また、分離膜は、使用時に高温に長時間保持しても、分離膜としての機能が損なわれることなく、耐久性に優れたものとすることができる。しかも、このような分離膜は、浸漬という手法を採用することで、大量生産が可能となる。
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
本発明の分離膜は、基材となる無機多孔体(無機材料から形成された多孔体)の細孔内に、ゾル材を担持させることによって形成されるものであり、ゾル材を担持させる際には、無機多孔体の表面と裏面に圧力差を設けて担持させる。
さらに、この分離膜は、ゾル材の担持を複数回実施し、担持の回数の増加と共に、無機多孔体の表面と裏面の圧力差を減少させることで製造されるのが好ましい。また、この分離膜は、ゾル材を担持させる際には、無機多孔体の表面温度を130〜250℃とするのが好ましい。
無機多孔体としては、アルミナ、ゼオライト、多孔質セラミックス、多孔質ガラス、多孔質磁器、金属ろ過体、金属金網焼結体等があり、本発明においてはいずれも使用できる。しかしながら、無機多孔体の細孔径が大きくなると、ゾル材の必要担持量が多くなり、またクラックが発生しやすくなるため、細孔径の小さい無機多孔体を使用することが好ましい。
ゾル材としては、シリカゾル、アルミナゾルまたはシリカ・アルミナゾルを用いることができる。また、これらのゾル材主要成分中に、その他微量の調整剤を含むゾル材とすることもでき、本発明では、いずれのゾル材であっても用いることができる。以下にゾル材の好適な製造法の例を述べる。
シリカゾルの製法としては、
(1)水ガラス溶液に大量にNaCl、Na2SO4等の塩を添加し、更に酸が中和して白色粉末状のシリカゾルを得る水ガラス溶液からの沈殿方法、
(2)SiCl4を水蒸気中で燃焼させてSiO2ガラスを生成させ、これを捕集するSiCl4燃焼方法、
(3)SiO2を1700℃付近で蒸発させ、これを凝縮させるSiO2蒸気凝集法、
等がある。
しかしながらこれらの方法によって得られたSiO2粒子を数十μm程度の薄膜にコーティングし、更に1〜3nm程度の多孔質のものとすることは、きわめて困難である。そこで本発明においては上記のように不具合が無く、薄膜形成が可能なシリカゾルを得る方法として、特許文献6に記載の方法を推奨する。即ち、シリカゾルの前駆体として、例えば、シラノール系の化合物で、シラノールのアルキル基1〜4置換体、エトキシシラン基、メトキシ基等を含むアルコキシランを加水分解して得られるものを使用する。これらのエトキシシランの例としては、テトラエトキシシラン(ケイ酸エチル)、テトラメトキシシラン(ケイ酸メチル)等がある。
この方法で製造したシリカゾルの平均細孔径は1〜3nm程度であり、0.26nmの分子径の水には抵抗とならない細孔径である。
特開平4−63119号公報
アルミナゾルの製法としては、
(1)Alアルコキシドを加水分解する方法:
Alをイソプロピルアルコールに溶解させて作ったイソプロポキシドが低沸点(140.5℃)であるのでよく使用される。加水分解法としては、アルコール溶液の均一相加水分解、ベンゼン溶液の不均一相加水分解がある。
(2)Al塩に触媒を加えて加水分解する方法:
Al塩としてはAl2(SO4)O3、AlCl3、Al(NO3)O3等があり、触媒としては硝酸、NH3水、Na2CO3等がある。
(3)アルミン酸アルカリを加水分解する方法:
NaAlO2水溶液に塩酸を加えて加水分解する。そして、アルミナゾルは製造方法により異なるが、約1.5〜3.0nmの細孔が形成される(特許文献2、3参照)
また、シリカ・アルミナゾルの製造方法としては、例えば以下の方法がある。
アルミニウムアルコキシドまたはアルミニウムキレートを加水分解して得たアルミナゾルを担持した後、ケイ酸ナトリウム水溶液を担持し、酸処理を施した後、乾燥ゲル化する。アルミニウムアルコキシドとしてはアルミニウムイソプロポキシド、アルミニウム−2−ブチレート等が、また、アルミニウムキレートとしてはアルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)やエチルアセテートアルミニウムジイソプロピレート等がある。なお上記の方法で製造したシリカ・アルミナゾルの平均径は約1〜2nmである(特許文献4参照)。
本発明では、無機多孔体の細孔内にゾル材を担持させた後、約500℃で焼結処理を施すことにより無機多孔体の細孔内部に平均径1〜2nmの微細孔を形成することで、分離膜を形成する。
このような分離膜110としては、図1(a)に示すように、中央部に連続する孔111が形成されたチューブ状のもの、あるいは図1(b)に示すように、一方向に連続する複数の孔113が形成されたレンコン(蓮根)状のもの等がある。
図1(a)に示した分離膜110は、中央部に孔111が形成された無機多孔体からなる基材112に、上記ゾル材を担持させることで形成される。このような基材112から形成される分離膜110は、分離膜110の外側表面または孔111に分離対象となる混合物を通すと、基材112自体が有する細孔に担持されたゾル材によって形成された微細孔を通し、所望の物質が選択的に分離されて分離膜110の内側または外側に染み出てくるため、これによって分離機能を有する。
また、図1(b)に示した分離膜110は、一方向に連続する複数の孔113が形成された無機多孔体からなる基材114に、上記ゾル材を担持させることで形成される。
このような基材114から形成される分離膜110は、孔113に、分離対象となる混合物を通すと、基材114自体が有する細孔に担持されたゾル材に形成された微細孔を通し、所望の物質が選択的に分離されて分離膜110の外側に染み出てくるため、これによって分離機能を有する。
このような分離膜110は、例えば、図2に示すような分離膜製造装置120を用いて製造される。
図2に示す分離膜製造装置120は、ゾル材100を基材112に担持させるための処理部130と、この処理部130にゾル材100を供給する供給装置140と、処理部130にて基材112に圧力差を生じさせるための圧力差付与部150と、を備える。
処理部130は、基材112を収めるとともに、所定レベルまでゾル材100が満たされる、例えばガラス製の処理セル131を備えている。この処理セル131の底部には、ゾル材100を排出するための排出管132が接続され、排出バルブ133を開くことで、ゾル材100の排出を行うことができるようになっている。この処理セル131は、その全体が恒温槽134に収容されている。
供給装置140は、ゾル材100を貯留するタンク141と、タンク141内のゾル材100を攪拌する攪拌部材142と、タンク141から処理セル131にゾル材100を送り込むためのポンプ143と、を備えている。
圧力差付与部150としては、上記のように基材112に形成された孔111の一端を塞ぐ、例えばシリコンゴム製のキャップ151と、孔111の他端に接続される、例えばシリコンゴム製の接続管152と、この接続管152に接続され、負圧を発生させる真空ポンプ等からなる圧力差発生源153と、が備えられている。
このような分離膜製造装置120で、分離膜110を製造するには、まず、基材112の一端にキャップ151を装着して孔111の一端を塞ぎ、他端に接続管152を接続する。この状態で、恒温槽134を昇温し、基材112を、所定の温度まで加熱するとともに、圧力差発生源153により、接続管152を通じ、基材112内(孔111内)を、所定の真空度まで真空引きする。これにより、基材112には、その外周側(一方の側)と孔111側(これを内周面側と称する:他方の側)との間に圧力差が発生する。基材112内を真空引きするときの到達真空度は、後述の過程において、ゾル材100を細孔に有効に侵入させることができるのであればいかなる真空度であってもよいが、例えば、100torr以下とするのが好ましい。
このとき、恒温槽134内で、基材112は、その表面が水の気化温度(平地の場合、大気圧下で100℃)以上、さらに好ましくは130℃以上となるまで加熱するのが好ましい。これは、以降の過程で基材112をゾル材100に浸漬させる際、細孔内に液状の水分が極力残留しないよう、ゾル材100が基材112の表面に接触すると直ちに蒸発させるためである。また、恒温槽134内で加熱する基材112の上限温度は、250℃以下とするのが好ましい。これは、基材112の温度が高すぎると、ゾル材100に含まれる水分の蒸発が爆発的に生じるので、これを防止するためである。
次いで、供給装置140において、タンク141で十分に攪拌されたゾル材100を、ポンプ143によって処理セル131に送り込み、所定のレベルまでゾル材100を満たす。そして、この状態で、基材112を所定時間、ゾル材100に浸漬する。
これにより、基材112の圧力差によって、無機多孔体からなる基材112の細孔にゾル材100が引き込まれ、担持されることになる。
この後、ポンプ143を停止させ、排出バルブ133を開く。これにより、排出管132を通し、処理セル131内からゾル材100を排出する。上記の操作を担持処理の1サイクルとする。
続いて、恒温槽134による、基材112の所定の温度までの加熱、圧力差発生源153による基材112内(孔111内)の真空引きを行った後、上記と同様にして、ゾル材100への基材112の浸漬、ゾル材100の排出を行うという一連の担持処理を、所定数のサイクルに到達するまで繰り返す。
その後、所定サイクルの担持処理を経た基材112を所定温度で所定時間焼成する。
このようにして、基材112の細孔に担持されたゾル材100が焼結され、これによって分離膜110が製造される。
さてここで、担持処理に用いるゾル材100は、各サイクルで同条件としても良いが、ゾル材100の濃度、粒径を異ならせるのが好ましい。より詳しくは、処理サイクルが進むにしたがい、ゾル材100の粒径が徐々に細かくなるよう、濃度を段階的に薄くするのが好ましい。例えば、ゾル材100に、シリカゾルを用い、これを得るために特許文献6に記載の方法を採用する場合、シリカゾルの前駆体としてのテトラエトキシシランの量を、段階的に減らすのである。
ゾル材100を基材112の細孔に担持させる処理が進むにしたがい、細孔に担持されたゾル材100により、細孔の口径が徐々に小さくなる。したがって、これに応じてゾル材100の粒径を小さくしていくことで、細孔内にゾル材100に確実に担持させることができるのである。
また、担持させる際の圧力(真空引きする真空度)も、処理サイクルが進むにしたがい、段階的に低くするのが好ましい。例えば、1〜10サイクル目までは100torr、11〜20サイクル目までを300torr、21〜30サイクル目までは、例えば、真空引きせず大気圧のままとする、等とするのである。もちろん、要求される分離膜110の性能により、各段階の圧力は最適な値に設定され、本実施例のように、最終的に大気圧下で担持を行うものに限定されるものでは無い。
このようにすることで、基材112の細孔に水分が深く入り込みすぎるのを抑制できる。前述したように、ゾル材100を基材112の細孔に担持させる処理が進むにしたがい、細孔に担持されたゾル材100により、細孔の口径が徐々に小さくなるため、ゾル材100に含まれる水分が細孔に残留し易くなってしまう。高い真空度のまま、担持処理を繰り返すと、細孔の奥深くまで水分が入り込み、後に焼成する際、この水分が抜けてゾル材100に穴が開き、膜機能を損なう可能性がある。このため、後工程になるにしたがい、真空度を低くすることで、細孔の奥深くまで入り込む水分の量を抑制し、上記現象を防止できるのである。
上記のようにして得られる分離膜110によれば、基材112の細孔に、ゾル材100を担持させ、これを500℃で焼結することにより、平均孔径1〜3nmといった微細孔を形成することができる。これにより、分離膜110は、500℃以下の高温に長時間保持しても、ゾル材100の焼結によって微細孔が消滅して無孔化し、分離対象物質の透過速度が低下するのを回避できる。また、焼結により大きな空隙が発生することもないため、ピンホールの発生によって分離膜としての機能が損なわれることも無い。このようにして、分離膜110を、分離性能を従来以上に向上させるとともに、耐久性に優れたものとすることができる。
しかも、このような分離膜110は、ゾル材100の浸漬という手法を採用することで、機械による塗布等を用いる手法に比較し、大量生産が可能となる。これにより、高性能の分離膜110を低コストで生産することが可能となる。
ここで、本発明により得られる分離膜110と、従来の分離膜の比較を行ったのでその結果を以下に示す。
分離膜の基材としては、日本ガイシ(株)製セラミックフィルタ(平均径0.1μm、外径10mm、長さ120mm)を使用した。
また、ゾル材としては、シリカゾルを用いた。
(1)シリカゾルの調製
(実施例1)
ここで、実施例1では、ゾル材として以下のシリカゾルAを調製した。
シリカゾルA :ビーカー内に所定濃度のテトラエトキシシラン水溶液を調整し、これをイオン交換水で希釈し、次いで硝酸を少量加えた後、攪拌を続けたまま100〜150℃の範囲で煮沸を行った。
(実施例2、3)
ここで、実施例2、3では、ゾル材として以下のシリカゾルA〜Cを調製した。
シリカゾルA :実施例1と同様の操作を行った。
シリカゾルB:ビーカー内にシリカゾルA調整時より希薄なテトラエトキシシラン水溶液を調整し、前述シリカゾルAと同様の操作を行った。
シリカゾルC:ビーカー内にシリカゾルAおよびBの調整時より希薄なテトラエトキシシラン水溶液を調整し、前述シリカゾルBと同様の操作を行った。
(2)シリカゾルの担持
図1に示す分離膜製造装置120を用い、基材へのゾル材の担持を行った。
(実施例1)
恒温槽を昇温し、基材の温度を140℃まで加熱した後、真空ポンプにより接続管を通じ、基材内を真空引きした。
次いで供給ポンプを用いて貯留槽に入れたシリカゾルAを処理セル内に供給し、基材をシリカゾルAに浸漬させた。
次いで処理セル内のシリカゾルAを排出し、再び基材の温度が140℃に上昇するまで加熱を続けた。
以上の操作を30回繰り返した。
(実施例2)
恒温槽を昇温し、基材の温度を140℃まで加熱した後、真空ポンプにより接続管を通じ、基材内を実施例1と同様に真空引きした。
次いで供給ポンプを用いて貯留槽に入れたシリカゾルAを処理セル内に供給し、基材をシリカゾルAに浸漬させた。
次いで処理セル内のシリカゾルAを排出し、再び基材の温度が140℃に上昇するまで加熱を続けた。
以上の操作を10回繰り返した。
続いて、ゾル材をシリカゾルBに変更し、上記と同様、基材をシリカゾルBに浸漬した後、加熱することを10回繰り返した。
さらに、ゾル材をシリカゾルCに変更し、上記と同様、基材をシリカゾルCに浸漬した後、加熱することを10回繰り返した。
(実施例3)
恒温槽を昇温し、基材の温度を140℃まで加熱した後、真空ポンプにより接続管を通じ、基材内を実施例1と同様に真空引きした。
次いで供給ポンプを用いて貯留槽に入れたシリカゾルAを処理セル内に供給し、基材をシリカゾルAに浸漬させた。
次いで処理セル内のシリカゾルAを排出し、再び基材の温度が140℃に上昇するまで加熱を続けた。
以上の操作を10回繰り返した。
続いて、恒温槽を昇温し、基材の温度を140℃まで加熱した後、真空ポンプにより接続管を通じ、基材内を真空引きした。このとき、真空ポンプの運転を調整し、真空度をシリカゾルAのときよりも常圧に近づけた。そして、ゾル材をシリカゾルBに変更し、上記と同様、基材をシリカゾルBに浸漬した後、加熱することを10回繰り返した。
さらに、恒温槽を昇温し、基材の温度を140℃まで加熱した後、真空ポンプによる基材内の真空引きを行わず、大気圧のままとした。そして、ゾル材をシリカゾルCに変更し、上記と同様、基材をシリカゾルCに浸漬した後、加熱することを10回繰り返した。
(比較例1)
基材に対し、実施例2、3と同様、シリカゾルA、B、Cに浸漬し、加熱することを10回ずつ繰り返し、ゾル材の担持処理を行った。ただし、シリカゾルA、B、Cとも、基材内の真空引きを行わず、大気圧のままとした。
(比較例2)
基材に対するシリカゾルA、B、Cの担持処理は行わず、基材のままとした。
(3)焼結
実施例1〜3、比較例1、2とも、前述のようにシリカゾルを担持させた基材を焼成後、更に500℃で焼結させた。
このようにして得た実施例1〜3、比較例1、2で得られるそれぞれの分離膜の性能を、以下のようにして評価した。
図3に示すように、評価対象の分離膜200を評価用セル201に収め、その下端を蓋202で封じ、上端を、接続管203を介して、真空ポンプ204に接続した。接続管203の途中には、液体窒素で冷却された透過ガストラップ205を介在させた。
評価用セル201は、混合ガス供給管206と非透過ガス排出管207に接続した。そしてこの評価用セル201を恒温槽208内に設置し、120℃まで加熱した。
恒温槽208内で、分離膜200の温度が120℃で安定した後、混合ガス供給管206からエタノール蒸気と水蒸気をそれぞれ68:32の重量比で混合したガスを供給した。
このとき、分離膜200の内側は、真空ポンプ204により100torrの負圧に保った。
このようにすると、分離膜200を透過した水蒸気は透過ガストラップ205に蓄積され、非透過のガスは非透過ガス排出管207から排出される。ここで透過ガストラップ205に蓄積された水蒸気の量と水蒸気の純度を測定することにより、分離膜200のガス透過速度と分離係数αが求められる。
ここで分離係数αとは以下の式で求められる分離性能を示す数値で、数値が大きいほど分離性能が高く、分離性能がない場合には1と等しくなる。
α={(1−y)/y}/{(1−x)/x}
ただし、xは供給混合ガスの溶剤組成(モルフラクション)、yは透過ガス中の溶剤組成(モルフラクション)である。
表1にその結果を示す。
Figure 0004737945
表1に示すように、基材そのものである比較例2の分離膜では、ガス透過速度は28[kmol/mh]、分離係数αは1.0であり、シリカゾルA、B、Cを大気圧下で基材に担持させた比較例1の分離膜では、ガス透過速度は27[kmol/mh]、分離係数αは1.0であった。
これに対し、シリカゾルAのみを負圧状態で基材に担持させた実施例1の分離膜では、ガス透過速度は20[kmol/mh]、分離係数αは1.3であった。これにより、負圧状態でゾル材を担持させることにより、ガス透過速度が小さく、分離係数が大きくなり、すなわち分離性能が若干高まっていることがわかる。
これが、シリカゾルA、B、Cを、一定の負圧状態で基材に担持させた実施例2の分離膜では、ガス透過速度が0.3[kmol/mh]、分離係数αが1.5となり、分離性能が向上していることが確認された。さらに、シリカゾルA、B、Cを基材に担持させる際、基材に作用させる負圧を段階的に小さくした実施例3の分離膜では、ガス透過速度が0.2[kmol/mh]、分離係数αが2.0となり、比較例1、2、実施例1はもちろん、実施例2に比較しても、分離性能がさらに向上していることが確認された。
以上の結果により本発明により、有機溶剤と水を分離する機能性分離膜の製造が可能となることが分かる。そして、基材にゾル材を担持させる際、分離膜の分離性能を向上させるには、特に、ゾル材の濃度を徐々に低くするのが有効であり、さらには、基材に作用させる負圧を徐々に弱くするのが有効であることが確認された。
なお、上記実施の形態では、基材112の孔111に負圧を作用させて、ゾル材100を基材112の外周面側に作用させるようにしたが、基材112の外周側に負圧を作用させ、孔111を正圧とすることもできる。これにより、基材112の内周側にゾル材100を担持させることもできる。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
本実施の形態における分離膜の形態を示す図である。 分離膜製造装置の構成を示すための図である。 実施例において、分離膜の性能を評価するための装置構成を示す図である。
符号の説明
100…ゾル材、110…分離膜、111、113…孔、112、114…基材、120…分離膜製造装置、131…処理セル、134…恒温槽、150…圧力差付与部、153…圧力差発生源

Claims (5)

  1. 無機材料から形成された多孔体の一方の側と他方の側に圧力差を生じさせた状態で、前記多孔体をゾル材に浸漬させ、前記ゾル材を前記多孔体の細孔に担持させる担持工程と、
    前記ゾル材が前記細孔に担持された前記多孔体を焼成する焼成工程と、を備え、
    前記焼成工程に先立ち、前記担持工程を複数回繰り返し、
    複数回繰り返す前記担持工程にて、前記多孔体の一方の側と他方の側の圧力差を、段階的に小さくしていくことを特徴とする分離膜の製造方法。
  2. 前記担持工程は、
    前記多孔体を加熱する工程と、
    加熱された前記多孔体を前記ゾル材に浸漬させる工程と、
    を有することを特徴とする請求項1に記載の分離膜の製造方法。
  3. 前記多孔体を加熱する工程にて、前記多孔体を前記ゾル材に含まれる水分の沸点より高い温度に加熱することを特徴とする請求項2に記載の分離膜の製造方法。
  4. 複数回繰り返す前記担持工程にて、前記ゾル材の濃度を、段階的に薄くしていくことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の分離膜の製造方法。
  5. 前記焼成工程では、前記分離膜の実際の使用温度よりも高い温度で焼成することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の分離膜の製造方法。
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