JP4737801B2 - 消臭性に優れたセルロース繊維又は繊維製品 - Google Patents

消臭性に優れたセルロース繊維又は繊維製品 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、消臭性に優れたセルロース繊維又は繊維製品に関する。
【0002】
【従来の技術】
人体から発生する臭気には、酸性臭、塩基性臭及び中性臭の性質の異なる臭気が存在している。更に、中高年の人の皮脂には、若い人には殆ど存在しないパルミトオレイン酸という脂肪酸が多く存在し、これが過酸化脂質によって酸化分解されたり、皮膚表面に常在している菌によって分解されて、ノネナールというアルデヒドが生成することが、最近の研究により明らかにされた。このノネナールという成分が中年臭の原因となる臭気物質であることが突き止められ、最近の話題になっている。
【0003】
今日までに、消臭性能が付与されたセルロース繊維又は繊維製品が数多く開発されている(例えば特開平4−370270号公報、特許第2946339号)。しかしながら、斯かるセルロース繊維又は繊維製品は、ノネナール臭を除去する効果が不充分であり、特にノネナール臭等の種々の臭気が混在した中年臭を有効に除去できるものではない。
【0004】
更に、消臭性能が付与されたセルロース繊維又は繊維製品には、洗濯を繰り返し行っても消臭性能が殆ど低下しない性能(耐洗濯性)を備えていることが要望されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、酸性臭、中性臭及び塩基性臭に対し優れた消臭性能を発現し得るセルロース繊維及びセルロース繊維製品を提供することを課題とする。
【0006】
本発明は、中年臭に対して優れた消臭性能を有するセルロース繊維及びセルロース繊維製品を提供することを課題とする。
【0007】
本発明は、洗濯を繰り返し行っても上記消臭性能が殆ど低下しない性能(耐洗濯性)を備えたセルロース繊維及びセルロース繊維製品を提供することを課題とする。
【0008】
本発明は、上記セルロース繊維及びセルロース繊維製品の製造方法を提供することを課題とする。
【0009】
本発明は、上記セルロース繊維及びセルロース繊維製品から作製されたエアーフィルターを提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、酸性臭、中性臭及び塩基性臭に対し優れた消臭性能を有し、更に中年臭に対しても優れた消臭性能を有し、しかも耐洗濯性を備えたセルロース繊維及びセルロース繊維製品を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、セルロース繊維及びセルロース繊維製品にフラボノイド類並びにアセタール結合、エーテル結合及びウレタン結合から選ばれた化学結合によりフラボノイド類とセルロース繊維又はセルロース繊維製品とを結合させることができる化合物を含有させ且つ水不溶性無機金属化合物を把持させることにより、上記課題を達成できることを見い出した。本発明は、斯かる知見に基づき完成されたものである。
1.本発明は、アセタール結合、エーテル結合及びウレタン結合から選ばれた化学結合によりフラボノイド類が結合されたセルロース繊維又はセルロース繊維製品であって、更に水不溶性無機金属化合物を把持してなるセルロース繊維又はセルロース繊維製品である。
2.本発明は、セルロース繊維又はセルロース繊維製品にフラボノイド類、アセタール結合、エーテル結合及びウレタン結合から選ばれた化学結合によりフラボノイド類とセルロース繊維又はセルロース繊維製品とを結合させることができる化合物並びに金属イオンを付着及び/又は含浸させ、次いで熱処理した後金属イオンを水不溶性無機金属化合物に変換せしめて得られる、上記1に記載のセルロース繊維又はセルロース繊維製品である。
3.本発明は、セルロース繊維又はセルロース繊維製品にフラボノイド類並びにアセタール結合、エーテル結合及びウレタン結合から選ばれた化学結合によりフラボノイド類とセルロース繊維又はセルロース繊維製品とを結合させることができる化合物を付着及び/又は含浸させ、次いで熱処理し、更に金属イオンを含浸させた後金属イオンを水不溶性無機金属化合物に変換せしめて得られる、上記1に記載のセルロース繊維又はセルロース繊維製品である。
4.本発明は、セルロース繊維又はセルロース繊維製品に金属イオンを含浸させた後金属イオンを水不溶性無機金属化合物に変換せしめ、次いでフラボノイド類並びにアセタール結合、エーテル結合及びウレタン結合から選ばれた化学結合によりフラボノイド類とセルロース繊維又はセルロース繊維製品とを結合させることができる化合物を付着及び/又は含浸させ、更に熱処理して得られる、上記1に記載のセルロース繊維又はセルロース繊維製品である。
5.本発明は、水不溶性無機金属化合物が水酸化亜鉛及び塩基性炭酸亜鉛からなる群より選ばれた少なくとも1種である、上記1〜4に記載のセルロース繊維又はセルロース繊維製品である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明において、セルロース繊維は、従来公知のセルロース繊維であり、例えば木綿、麻等の天然セルロース、レーヨン等の再生セルロース、又はこれらの混紡品である。本発明のセルロース繊維には、これら繊維の他、これら繊維の一次加工品、例えば糸、ニット、織物、編物、不織布等が包含される。特に木綿の場合、原綿そのもの、苛性マーセル化した木綿、液体アンモニアで処理した木綿等も、本発明のセルロース繊維に包含される。
【0012】
本発明においては、本発明のセルロース繊維に非セルロース系合成繊維を混紡、交撚、混編させることもできる。
【0013】
非セルロース系合成繊維としては、従来公知のものを広く例示でき、例えばポリエステル、液晶ポリエステル、ポリアミド、液晶ポリアミド、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、スパンデックス等を挙げることができる。上記合成繊維の中でも、ポリエステル、ポリアミド、アクリル及びポリプロピレンが好ましく、ポリエステルが特に好ましい。
【0014】
セルロース繊維に上記合成繊維が混紡される場合、混紡割合は特に限定されるものではない。セルロース繊維の混紡割合が多い方が、本発明の効果(優れた消臭性能及び耐洗濯性)がより一層発現されるが、混紡繊維及び繊維製品の特徴である繊維強度等の合成繊維の性能を損なわないように具現する為には、通常合成繊維が全繊維中に1〜80重量%、好ましくは20〜66重量%の割合で混紡されるのがよい。
【0015】
本発明において、セルロース繊維製品とは、上記セルロース繊維を更に加工したもの、例えば外衣、中衣、内衣等の衣料、寝装品、インテリア等の製品を意味する。本発明のセルロース繊維製品としては、具体的にはコート、ジャケット、ズボン、スカート、ワイシャツ、ニットシャツ、ブラウス、セーター、カーディガン、ナイトウエア、肌着、サポーター、靴下、タイツ、帽子、スカーフ、マフラー、襟巻き、手袋、服の裏地、服の芯地、服の中綿、作業着、ユニフォーム、学童用制服等の衣料、カーテン、布団地、布団綿、枕カバー、シーツ、マット、カーペット、タオル、ハンカチ等の製品を例示できる。また、本発明のセルロース繊維製品には、例えば壁布、フロア外張り等の産業資材分野で使用される繊維製品の形態のものも包含される。
【0016】
本発明のセルロース繊維又はセルロース繊維製品は、アセタール結合、エーテル結合及びウレタン結合から選ばれた化学結合によりフラボノイド類が結合されたセルロース繊維又はセルロース繊維製品であって、更に水不溶性無機金属化合物を把持してなるセルロース繊維又はセルロース繊維製品である。
【0017】
本発明において、フラボノイド類は、下記の化学式に示すような、[C6−C3−C6]を基本構造とする一群の化合物をいう。
【0018】
【化1】
Figure 0004737801
【0019】
フラボノール類は、
【0020】
【化2】
Figure 0004737801
【0021】
の骨格を有する化合物である。この種の化合物は、3位の水酸基でエーテル結合して配糖体を形成し、配糖体として広く植物中に存在している。本発明では、このような化合物を広く使用することができる。ここで配糖体は、3位の水酸基でエーテル結合して形成されたものであってもよいし、6位又は7位で直接結合して形成されていてもよい。
【0022】
例えば、4’,5,7−トリヒドロキシフラボノールは、ケンフェロールと呼ばれ、ケンフェロールの3−ガラクトシドは、トリホリンと呼ばれてアカツメクサの花中に存在し、ケンフェロールの3−グルコシドは、アストラガリンと呼ばれてレンゲの花中に存在し、ケンフェロールの3−ラムノグルコシドは、ロビニンと呼ばれてニセアカシアの花中に存在している。
【0023】
また、3’,4’,5,7−テトラヒドロキシフラボノールは、クエルセチンと呼ばれており、クエルセチンの3−ラムノシドがクエルシトリンと呼ばれてQuercus tinctoriaの樹皮中に存在している。クエルセチンの3−グルコシドは、イソクエルシトリンと呼ばれてシロツメクサの花中に存在している。また、クエルセチンの3−ラムノグルコシドは、ルチンと呼ばれてエンジュの花やソバの葉中に存在している。
【0024】
また、3’,4’,5,5’,7−ペンタヒドロキシフラボノールは、ミリセチンと呼ばれ、ミリセチンの3−ラムノシドは、ミリシトリンと呼ばれてヤマモモの樹皮等に存在している。
【0025】
更に、クエルセチン−7−グリコシドは、クエルシメリトリンと呼ばれ、綿の花、杉の葉に存在している。また、ケンフェロール−3,7−ジラムノシドは、ケンフェリトリンと呼ばれ、ミヤコグサ、カラスウリの葉に存在している。
【0026】
フラボノール類としては、ケンフェロール、クエルセチン及びミリセチン並びにそれらの誘導体が好ましい。
【0027】
フラバノノール類は、上記式(1)のフラボノール類に水素が添加された化合物であり、
【0028】
【化3】
Figure 0004737801
【0029】
の骨格を有する化合物である。この種の化合物も、3位の水酸基でエーテル結合して配糖体を形成し、配糖体として広く植物中に存在している。本発明では、このような化合物を広く使用することができる。
【0030】
例えば、5,7−ジヒドロキシフラバノノールは、ピノバンクシンと呼ばれPinus banksinaの心材中に含まれている。4’,5,7−トリヒドロキシフラバノノールは、アロマデンドリンと呼ばれ、ユーカリ属、カツラの材に含まれ、アロマデンドリンの3−ラムノシドは、エンゲリチンと呼ばれフジバシデの材に含まれている。3’,4’,5,7−テトラヒドロキシフラバノノールは、タキシホリンと呼ばれイスノキの材に含まれ、タキシホリンの3−ラムノシドは、アスチルビンと呼ばれトリアシシヨウマ、アカシヨウマの根茎に含まれている。また、3’,4’,5,5’,7−ペンタヒドロキシフラバノノールは、アンベロブチンと呼ばれセンダンバウドカズラの葉に含まれている。
【0031】
フラバノール類は、フラバンの3位に水酸基が導入された化合物であり、
【0032】
【化4】
Figure 0004737801
【0033】
の骨格を有する化合物である。
【0034】
例えば、3’,4’,5,7−テトラヒドロキシフラバノールは、カテキンと呼ばれ、そのエピマーであるエピカテキンと共に、茶葉から抽出される。
【0035】
3’,4’,5,5’,7−ペンタヒドロキシフラバノールは、エピガロカテキンと呼ばれ、そのエピマーであるガロカテキンと共に、茶葉から抽出される。
【0036】
エピカテキンの3−ガロイルエステルは、エピカテキンガレートと呼ばれ、茶葉から抽出される。
【0037】
また、エピガロカテキンの3−ガロイルエステルは、エピガロカテキンガレートと呼ばれ、茶葉から抽出される。
【0038】
これらのフラバノール類は、茶葉から混合物として又はそれぞれ精製物として抽出製造されており、例えば三井農林株式会社製のポリフェノンシリーズとして市販されている。
【0039】
本発明のフラボノイド類には、上記フラボノール類、フラバノノール類、フラバノール類の他、フラボンの5位及び7位に水酸基が置換したクリシン、フラボンの3位、5位及び7位に水酸基が置換したガランギン、フラボンの5位、7位及び4’位に水酸基が置換したアピゲニン、フラボンの3位、7位、3’位及び4’位に水酸基が置換したフィセチン、フラボンの5位、7位、3’位及び4’位に水酸基が置換したルテオリン、フラボンの3位、5位、7位、2’位及び4’位に水酸基が置換したモリン、フラボンの3位、7位、3’位、4’位及び5’位に水酸基が置換したロビネチン、フラボンの3位、5位、7位、3’位及び4’位に水酸基が置換したゴシペチン等やこれらを基本骨格とする誘導体も包含される。
【0040】
本発明では、フラボノイド類は、セルロース繊維又はセルロース繊維製品中に0.1〜20重量%、好ましくは1〜10重量%含有されているのがよい。
【0041】
本発明において、アセタール結合、エーテル結合及びウレタン結合から選ばれた化学結合によりフラボノイド類とセルロース繊維又はセルロース繊維製品とを結合させることができる化合物としては、例えば下記に示す各種の化合物を例示することができる。
【0042】
アセタール結合(−OCH2O−)によりフラボノイド類とセルロース繊維又はセルロース繊維製品とを結合させることができる化合物としては、例えば分子内にアルデヒド基を有する化合物が挙げられ、具体的にはアルデヒド化合物等を挙げることができる。
【0043】
アルデヒド化合物としては、例えばホルムアルデヒド、ジアルデヒド(グリオキザール)等が挙げられる。
【0044】
エーテル結合(−O−)によりフラボノイド類とセルロース繊維又はセルロース繊維製品とを結合させることができる化合物としては、例えばN−メチロール化合物、分子内にエポキシ基(グリシジル基)やビニル基を有する化合物等を挙げることができる。
【0045】
N−メチロール化合物としては、例えばジメチロール尿素及びそのメチル化物、ジメチロールエチレン尿素及びそのメチル化物、ジメチロールウロン及びそのメチル化物、ジメチロールトリアゾン及びそのメチル化物、ジメチロールプロピレン尿素及びそのメチル化物、ジメチロールジヒドロキシエチレン尿素、メチル化ジメチロールジメトキシエチレン尿素、1,3−ジメチル−4,5−ジヒドロキシエチレン尿素及びそのメチル化物、ジメチロール−4−メトキシ−5,5−ジメチルプロピレン尿素及びそのメチル化物、ジメチロールアルキルカーバメイト及びそのメチル化物、テトラメチロールグリオキザールモノウレイン及びそのメチル化物等が挙げられる。
【0046】
これらの中でも、ジメチロールジヒドロキシエチレン尿素が好ましい。
【0047】
市販品としては、住友化学工業社製のスミテックスレジンシリーズ、三木理研社製のリケンレジンシリーズ等が挙げられる。
【0048】
分子内にエポキシ基(グリシジル基)を有する化合物としては、例えば脂肪族エポキシ化合物、ジグリシジル化合物、トリグリシジル化合物、ポリグリシジル化合物、脂環式エポキシ化合物、異節環状型エポキシ化合物、活性ビニル化合物の他、ビスフェノールA−エピクロルヒドリン化合物、ビスフェノールA−ジグリシジルエーテル化合物及びそのエチレンオキシド付加物又はプロピレンオキシド付加物、ビスフェノールF−ジグリシジルエーテル化合物、水素化ビスフェノールA−ジグリシジルエーテル化合物、水素化ビスフェノールF−ジグリシジルエーテル化合物等が挙げられる。
【0049】
脂肪族エポキシ化合物としては、例えばエポキシ化大豆油、エポキシ化オレイルオレート等が挙げられる。
【0050】
ジグリシジル化合物としては、一般式(4)
【0051】
【化5】
Figure 0004737801
【0052】
[式中、Rは−O−R1−O−又は−O(R2O)n−を示す。ここでR1は炭素数2〜12の直鎖又は分枝鎖状アルキレン基を示す。R2は−CH2CH2−、−CH2−CH(CH3)−又は−(CH24−を示し、nは4〜50の整数を示す。

で表されるジグリシジルエーテルを挙げることができ、具体的にはエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(n=4〜50)、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(n=4〜50)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、ジグリシジルポリシロキサン等が挙げられる。
【0053】
トリグリシジル化合物としては、例えばグリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0054】
ポリグリシジル化合物としては、例えばポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリシジルポリシロキサン等が挙げられる。
【0055】
脂環式エポキシ化合物としては、例えば3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等が挙げられる。
【0056】
異節環状型エポキシ化合物としては、例えばトリグリシジルイソシアヌレート等が挙げられる。
【0057】
上記一般式(4)で表されるジグリシジルエーテルの中でも、R1がエチレングリコール系、ポリエチレングリコール系、グリセリン系であるものが好ましい。
【0058】
市販品としては、ナガセ化成工業社製のデナコールEXシリーズ等が挙げられる。
【0059】
活性ビニル化合物としては、分子内にジアクリロイル基を有する化合物、分子内にジメタクリロイル基を有する化合物、分子内にトリアリル基を有する化合物、分子内にテトラアリル基を有する化合物、分子内にペンタアリル基を有する化合物等を挙げることができる。
【0060】
分子内にジアクリロイル基を有する化合物としては、具体的にはエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート(n=3〜50)、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物ジアクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物ジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート等を例示できる。
【0061】
分子内にジメタクリロイル基を有する化合物としては、具体的にはエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート(n=3〜50)、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物ジメタクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物ジメタクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ヘキサヒドロフタル酸ジアリル、ジアリルオルソフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルテレフタレート、ジビニルベンゼン、1,1’−ビフェニル−2,2’−ジカルボン酸ジアリル、ジアリルクロレンデート、N,N−メチレンビスアクリルアミド等を例示できる。
【0062】
分子内にトリアリル基を有する化合物としては、具体的にはトリメチロールプロパントリアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアクリレートとそのエチレンオキシド変性物、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリアリルトリメリテート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリアクリルホルマール、トリメタアリルイソシアヌレート等を例示できる。
【0063】
分子内にテトラアリル基を有する化合物としては、具体的にはジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等を例示できる。
【0064】
分子内にペンタアリル基を有する化合物としては、具体的にはジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等を例示できる。
【0065】
活性ビニル化合物としては、分子内にジアクリロイル基を有する化合物や分子内にジメタクリロイル基を有する化合物が好ましく、特にポリエチレングリコールジアクリレート(n=3〜50)やポリエチレングリコールジメタクリレート(n=3〜50)が好ましい。
【0066】
ウレタン結合(−NCOO−)によりフラボノイド類とセルロース繊維又はセルロース繊維製品とを結合させることができる化合物としては、例えばジイソシアネート化合物、トリイソシアネート化合物、ポリイソシアネート化合物等の他、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等を挙げることができる。
【0067】
ジイソシアネート化合物としては、具体的にはトリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、o−トリジンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等を例示できる。
【0068】
トリイソシアネート化合物としては、具体的にはトリフェニルメタントリイソシアネート等を例示できる。
【0069】
ポリイソシアネート化合物としては、具体的にはポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等を例示できる。
【0070】
本発明では、上記ジイソシアネート化合物、トリイソシアネート化合物、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等は、活性イソシアネート基がブロック剤によりブロックされたものであってもよい。ブロック剤としては、例えばオキシム(アセトオキシム、シクロヘキサノンオキシム)、ラクタム(ε−カプロラクタム)、ジエチルマロネート、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン、重亜硫酸塩等を挙げることができる。
【0071】
これらの中でも、ジイソシアネート化合物が好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートが特に好ましい。
【0072】
市販品としては、第一工業製薬社製のエラストロンシリーズ等が挙げられる。
【0073】
アセタール結合、エーテル結合及びウレタン結合から選ばれた化学結合によりフラボノイド類とセルロース繊維又はセルロース繊維製品とを結合させることができる化合物(以下これらの化合物を「化学結合形成化合物」という)としては、上記に例示した化合物を1種単独で使用してもよいし、2種以上混合して使用してもよい。
【0074】
本発明では、化学結合形成化合物は、セルロース繊維又はセルロース繊維製品中に0.1〜40重量%、好ましくは1〜15重量%含有されているのがよい。
【0075】
セルロース繊維又はセルロース繊維製品の内部に把持される無機金属化合物としては、水不溶性である限り特に限定されるものではなく、銅、銀、亜鉛、チタン、ジルコニウム、バナジウム、モリブデン、タングステン、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、ゲルマニウム、セリウム等の遷移金属の水酸化物、アルミニウム、珪素、スズ、アンチモン等の両性金属の水酸化物、マグネシウム等の水酸化物、アルカリ金属を除く金属の炭酸塩、リン酸塩、珪酸塩、アルミン酸塩、ジルコン酸塩等が例示される。これら金属化合物は、セルロース繊維内部に1種又は2種以上把持される。これら金属化合物の中では、水酸化亜鉛及び塩基性炭酸亜鉛が特に好適である。
【0076】
本発明では、斯かる金属化合物は、セルロース繊維中に0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%把持されているのがよい。
【0077】
本発明のセルロース繊維又はセルロース繊維製品は、例えば下記に示す方法により製造される。
【0078】
方法A:
本発明のセルロース繊維又はセルロース繊維製品は、セルロース繊維又はセルロース繊維製品にフラボノイド類、化学結合形成化合物及び金属イオンを付着及び/又は含浸させ、次いで熱処理した後金属イオンを水不溶性無機金属化合物に変換せしめることにより製造される。
【0079】
セルロース繊維又はセルロース繊維製品に金属イオンを含浸させる場合には、セルロース繊維の内部に金属イオンを侵入させる方法である限り従来公知の方法をいずれも採用することができる。例えばセルロース繊維又はセルロース繊維製品に侵入させようとする金属イオンを、水溶性金属塩の形態でセルロース繊維又はセルロース繊維製品に侵入させればよい。
【0080】
水溶性金属塩は、繊維の内部に把持しようとする金属化合物を構成する金属の塩化物、オキシ塩化物、硫酸塩、硝酸塩等の鉱酸塩、酢酸塩、蟻酸塩等の有機酸塩の形態がよい。特に繊維の内部に把持しようとする金属化合物が水酸化亜鉛又は塩基性炭酸亜鉛である場合には、水溶性金属塩は塩化亜鉛が好適である。
【0081】
セルロース繊維又はセルロース繊維製品へフラボノイド類、化学結合形成化合物及び水溶性金属塩を付着及び/又は含浸させるに当たっては、従来公知の方法、例えば浸漬法、スプレー法、コーティング法等従来公知の各種の方法を広く適用することができる。本発明では、フラボノイド類、化学結合形成化合物及び水溶性金属塩を含有する処理液中に処理すべきセルロース繊維又はセルロース繊維製品を浸漬する、いわゆる、浸漬法を採用するのが好ましい。尚、化学結合形成化合物としてN−メチロール化合物を用いる場合には、触媒を配合しておくのが好ましい。このような触媒としては、例えば塩化アルミニウム 、硫酸アルミニウム 、塩基性塩化アルミニウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム 、リン酸二水素マグネシウム 、ホウフッ化亜鉛 、硝酸亜鉛 、塩化亜鉛 、ホウフッ化マグネシウム 、過塩素酸マグネシウム等の各種金属塩(結晶水含有物も含む)類、硫酸、塩酸、硝酸、りん酸等の強酸のアンモニウム塩類、2 −アミノ−2 −メチル−1 −プロパノールの塩酸塩等の各種アルカノールアミンの酸性塩及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0082】
以下、浸漬法につき詳述する。
【0083】
処理液中のフラボノイド類濃度、化学結合形成化合物濃度及び水溶性金属塩濃度は、処理液の絞り率と必要とする担持量より算出した濃度に設定すればよい。
【0084】
本発明では、一つの処理液中に所定濃度のフラボノイド類、化学結合形成化合物及び水溶性金属塩が全て含有されていてもよいし、これらフラボノイド類、化学結合形成化合物及び水溶性金属塩が別個の処理液中に含有されていてもよい。
【0085】
上記処理液のpHは0〜6、好ましくは2〜5に調整されていることが好ましい。処理液のpHがこの範囲であれば、本発明で所望するセルロース繊維又はセルロース繊維製品を得ることができる。当該範囲のpHは処理液に対して中和剤、即ち適当なアルカリ又は塩を添加することにより調整できる。
【0086】
pHの調整に使用される中和剤として、例えば水酸化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、過炭酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、メタホウ酸ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、乳酸ナトリウム等が挙げられる。また、上記のナトリウム塩に代わり、カリウム塩、アンモニウム塩、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の揮発性の低級アミンの塩も使用できる。これらの中和剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0087】
上記中和剤の添加量は、使用されるフラボノイド類、化学結合形成化合物及び水溶性金属塩の溶解量や種類にもよるが、処理液中の濃度として通常0.1〜10重量%程度とするのがよい。
【0088】
上記処理液を構成する溶媒としては有機溶媒でも差支えないが、安全、価格を考慮すれば水を溶媒にするのが好ましい。上記化学結合形成化合物が水不溶性のものであれば、適当な界面活性剤を使用するのがよい。処理液の形態は、所定の効果が得られる限り特に限定されるものではなく、溶液の形態であっても乳化液の形態であってもよいが、処理効率及び安全性の観点から水溶液又は水分散液であることが好ましい。
【0089】
上記処理液のセルロース繊維又はセルロース繊維製品に対する浸透速度は充分に速く、浸漬時間、浴温度に特に制限はない。通常、浸漬時間0.1〜300秒、浴温は10〜40℃で行われる。絞りは加工する製品によって異なり、夫々に適当な絞り方法、絞り率が採用できる。通常、絞り率は30〜200%で行うのが好ましい。
【0090】
浸漬、絞りを行った後、乾燥を行う。工業的には、乾燥温度は40〜150℃、時間は温度に応じて選定すればよい。
【0091】
本発明においては、フラボノイド類、化学結合形成化合物及び水溶性金属塩を付着及び/又は含浸させたセルロース繊維又はセルロース繊維製品を次いで加熱処理する。
【0092】
加熱処理の温度は、通常100〜250℃、好ましくは120〜200℃、処理時間は20秒〜1時間である。これより穏やかな条件では、加工布の消臭性能が洗濯を繰り返すことにより低下する傾向になり、厳しすぎる条件では繊維の劣化を引き起こし、強度低下や繊維黄変として表れる傾向が生ずるので、いずれも好ましくない。
【0093】
本発明の方法では、次いでセルロース繊維又は繊維製品の内部に侵入させた金属イオンを水不溶性の無機金属化合物の形態に変換させる。具体的には、セルロース繊維の内部に侵入させた金属イオンを水不溶性の無機金属化合物の形態に変換させる(不溶化させる)ための処理液(以下「第2処理液」という)中でセルロース繊維又は繊維製品を処理すればよい。
【0094】
第2処理液での処理において、水溶性金属塩にアルカリ、酸及びアルカリ金属塩の水溶液のいずれか一つを作用させて、繊維中に含浸付着させた水溶性金属塩を水不溶性の金属化合物に変換させる。この方法にも、浸漬法、パッド法、スプレー法、コーティング法等が適用できるが、実用上は浸漬法及びパッド法が好適である。浸漬法はあらゆる形態の繊維に対して適用できるが、特に織物や編物に対してはパッド法が適している。
【0095】
第2処理液での処理の具体例を示せば、アルカリ、酸又はアルカリ金属塩を0.01〜10重量%含有する水溶液に、処理すべきセルロース繊維又は繊維製品を浸漬し、室温〜70℃において3秒〜5分間処理した後、所定の均一な絞り率になるようにマングル等で絞るのがよい。アルカリ、酸及びアルカリ金属塩としては、従来公知のものをいずれも使用できる。
【0096】
上記第2処理の後、必要に応じてソーピング又は水洗を行なってアルカリ、酸又はアルカリ金属塩を完全に除去した後、乾燥処理を行なうのがよい。斯くして本発明のセルロース繊維又はセルロース繊維製品が製造される。本発明のセルロース繊維又はセルロース繊維製品では、水不溶性の無機金属化合物が繊維の非晶質領域内部に封入されたような挙動を示す。
【0097】
方法B:
本発明のセルロース繊維又はセルロース繊維製品は、セルロース繊維又はセルロース繊維製品にフラボノイド類及び化学結合形成化合物を付着及び/又は含浸させ、次いで熱処理し、更に金属イオンを含浸させた後金属イオンを水不溶性無機金属化合物に変換せしめることにより製造される。
【0098】
セルロース繊維又はセルロース繊維製品にフラボノイド類及び化学結合形成化合物を付着及び/又は含浸させる工程、熱処理工程、セルロース繊維又はセルロース繊維製品に金属イオンを含浸させる工程、及び含浸させた後金属イオンを水不溶性無機金属化合物に変換する工程の各手段や条件は、方法Aと同じでよい。
【0099】
方法C:
本発明のセルロース繊維又はセルロース繊維製品は、セルロース繊維又はセルロース繊維製品に金属イオンを含浸させた後金属イオンを水不溶性無機金属化合物に変換せしめ、次いでフラボノイド類及び化学結合形成化合物を付着及び/又は含浸させ、更に熱処理することにより製造される。
【0100】
また、本発明のセルロース繊維製品は、セルロース繊維に金属イオンを含浸させた後金属イオンを水不溶性無機金属化合物に変換せしめ、次いでフラボノイド類及び化学結合形成化合物を付着及び/又は含浸させ、更に乾燥した後、縫製等によりセルロース繊維製品とし、最後に該セルロース繊維製品を熱処理することによっても製造される。
【0101】
セルロース繊維又はセルロース繊維製品に金属イオンを含浸させる工程、含浸させた金属イオンを水不溶性無機金属化合物に変換する工程、セルロース繊維又はセルロース繊維製品にフラボノイド類及び化学結合形成化合物を付着及び/又は含浸させる工程、及び熱処理工程の各手段や条件は、方法Aと同じでよい。また、乾燥処理の手段や条件は、従来公知の乾燥手段や条件を広く適用することができる。
【0102】
方法D:
本発明のセルロース繊維製品は、セルロース繊維に金属イオンを含浸させた後金属イオンを水不溶性無機金属化合物に変換せしめ、次いでフラボノイド類を付着及び/又は含浸させ、更に乾燥した後、縫製等によりセルロース繊維製品とし、最後に該セルロース繊維製品を気相ホルマリン加工処理することにより製造される。
【0103】
セルロース繊維に金属イオンを含浸させる工程、含浸させた金属イオンを水不溶性無機金属化合物に変換する工程、セルロース繊維にフラボノイド類を付着及び/又は含浸させる工程、及び乾燥工程の各手段や条件は、方法Aや方法Cと同じでよい。
【0104】
気相ホルマリン加工処理につき、以下に説明する。
【0105】
ホルマリンを吸着させるために適度な水分率に調節した後、気相ホルマリン加工処理すべきセルロース繊維製品にホルムアルデヒドガスを吸着させ、熱処理してホルムアルデヒドを架橋せしめる。
【0106】
架橋反応をさせる際に用いる触媒は、予めセルロース繊維製品に触媒溶液をパディングした後に気相処理を行ってもよいし、触媒溶液又は液化している触媒を気化又はミスト化してセルロース繊維製品に吸着させてもよい。或いは、セルロース繊維にフラボノイド類を付着及び/又は含浸させる際に、触媒をセルロース繊維に吸着させておいてもよい。
【0107】
触媒としては、例えば塩化水素ガス、亜硫酸ガス等のガス、塩酸、硝酸、硫酸、りん酸等の無機酸、グリコール酸、マレイン酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、蓚酸等の有機酸等を挙げることができる。また、例えば塩化アルミニウム 、硫酸アルミニウム 、塩基性塩化アルミニウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム 、リン酸二水素マグネシウム 、ホウフッ化亜鉛 、硝酸亜鉛 、塩化亜鉛 、ホウフッ化マグネシウム 、過塩素酸マグネシウム等の各種金属塩(結晶水含有物も含む)類、硫酸、塩酸、硝酸、りん酸等の強酸のアンモニウム塩類、2 −アミノ−2 −メチル−1 −プロパノールの塩酸塩等の各種アルカノールアミンの酸性塩及びこれらの混合物等のルイス酸も触媒として使用可能である。
【0108】
ホルムアルデヒドガスを吸着させた後、セルロース繊維製品を熱処理して架橋反応を行うが、この熱処理は、100〜180℃の範囲の温度、0.5〜10分間の処理を行うことにより架橋反応を完結することができる。
【0109】
方法E:
本発明のセルロース繊維製品は、セルロース繊維に金属イオンを含浸させ、金属イオンを水不溶性無機金属化合物に変換せしめ、次いで乾燥した後、縫製等によりセルロース繊維製品とし、更にフラボノイド類を付着及び/又は含浸させ、必要に応じて乾燥した後、最後に該セルロース繊維製品を気相ホルマリン加工処理することにより製造される。
【0110】
セルロース繊維に金属イオンを含浸させる工程、含浸させた金属イオンを水不溶性無機金属化合物に変換する工程、乾燥工程、セルロース繊維製品にフラボノイド類を付着及び/又は含浸させる工程、及びホルマリン加工処理工程の各手段や条件は、方法A、方法Cや方法Dと同じでよい。
【0111】
本発明では、方法Aに従いセルロース繊維又はセルロース繊維製品を製造するのが特に好ましい。方法Aに従い製造されたセルロース繊維又はセルロース繊維製品は、一段と優れた消臭性能を発現する。
【0112】
更に、本発明によれば、上記セルロース繊維又はセルロース繊維製品から作製されたエアーフィルターが提供される。
【0113】
本発明のセルロース繊維又はセルロース繊維製品からエアーフィルターを作製する方法は特に限定されるものではなく、従来のエアーフィルターの作成方法と同様にして製造すればよい。
【0114】
本発明のエアーフィルターには、エアコン用、空気清浄機用、掃除機用の各種フィルターの他、掃除機用紙パックも包含される。
【0115】
【発明の効果】
本発明のセルロース繊維又はセルロース繊維製品は、酸性臭、中性臭及び塩基性臭のいずれの臭気成分に対しても優れた消臭性能を有している。
【0116】
特に、本発明のセルロース繊維又はセルロース繊維製品は、中年臭に対して優れた消臭性能を有している。
【0117】
更に、本発明のセルロース繊維又はセルロース繊維製品は、洗濯を繰り返し行っても上記消臭性能が殆ど低下しない性能(耐洗濯性)を備えている。
【0118】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を掲げて、本発明をより一層明らかにする。
【0119】
実施例1
目付150g/m2の綿織物を精練、漂白、シルケット処理の後、ジメチロールジヒドロキシエチレン尿素系樹脂(商品名:スミテックスNS200、住友化学工業社製)5重量%、塩化マグネシウム1重量%、塩化亜鉛2.5重量%及びフラボノール類(日進香料社製、カメリアID259)10重量%を含む水溶液に浸漬後、マングルで絞り(絞り率:100%)、100℃で乾燥後160℃で2分間熱処理を行った。次いで該織物を水酸化ナトリウム1重量%水溶液に3秒浸漬の後、マングルで絞り(絞り率:100%)、直ちに水洗、乾燥し、本発明の綿織物を得た。
【0120】
この綿織物は、フラボノール類を9重量%含有し、水酸化亜鉛を2.2重量%把持していた。また、フラボノール類はアセタール結合を介して綿織物に強固に結合していた。
【0121】
実施例2
目付150g/m2の綿織物を精練、漂白、シルケット処理の後、グリセロールポリグリシジルエーテル系樹脂(商品名:デコナールEX−313、ナガセ化成工業社製)5重量%、塩化亜鉛2.5重量%、50重量%ホウ弗化亜鉛2.5重量%及びフラボノール類(日進香料社製、カメリアID259)10重量%を含む水溶液に浸漬後、マングルで絞り(絞り率:100%)、100℃で乾燥後160℃で2分間熱処理を行った。次いで該織物を水酸化ナトリウム1重量%水溶液に3秒浸漬の後、マングルで絞り(絞り率:100%)、直ちに水洗、乾燥し、本発明の綿織物を得た。
【0122】
この綿織物は、フラボノール類を9重量%含有し、水酸化亜鉛を2.2重量%把持していた。また、フラボノール類はエーテル結合を介して綿織物に強固に結合していた。
【0123】
実施例3
目付150g/m2の綿織物を精練、漂白、シルケット処理の後、ポリエチレングリコール(#600)ジメタクリレート系樹脂(商品名:ライトエステル14EG、共栄社化学社製)5重量%、塩化亜鉛2.5重量%及びフラボノール類(日進香料社製、カメリアID259)10重量%を含む水溶液に浸漬後、マングルで絞り(絞り率:100%)、100℃で乾燥後160℃で2分間熱処理を行った。次いで該織物を水酸化ナトリウム1重量%水溶液に3秒浸漬の後、マングルで絞り(絞り率:100%)、直ちに水洗、乾燥し、本発明の綿織物を得た。
【0124】
この綿織物は、フラボノール類を9重量%含有し、水酸化亜鉛を2.2重量%把持していた。また、フラボノール類はエーテル結合を介して綿織物に強固に結合していた。
【0125】
実施例4
目付150g/m2の綿織物を精練、漂白、シルケット処理の後、活性イソシアネート基をオキシムでブロックされたヘキサメチレンジイソシアネート系樹脂(商品名:タケネートWB−720、武田薬品工業社製)5重量%、塩化亜鉛2.5重量%及びフラボノール類(日進香料社製、カメリアID259)10重量%を含む水溶液に浸漬後、マングルで絞り(絞り率:100%)、100℃で乾燥後160℃で2分間熱処理を行った。次いで該織物を水酸化ナトリウム1重量%水溶液に3秒浸漬の後、マングルで絞り(絞り率:100%)、直ちに水洗、乾燥し、本発明の綿織物を得た。
【0126】
この綿織物は、フラボノール類を9重量%含有し、水酸化亜鉛を2.2重量%把持していた。また、フラボノール類はウレタン結合を介して綿織物に強固に結合していた。
【0127】
比較例1
目付150g/m2の綿織物を精練、漂白、シルケット処理して、比較例1の綿織物とした。
【0128】
試験例1
上記実施例1〜4及び比較例1で得られた各綿織物を以下の消臭試験に供した。また、上記実施例1〜4及び比較例1で得られた各綿織物をそれぞれ50回洗濯したものを以下の消臭試験に供した。
【0129】
洗濯は花王(株)製の花王ニュービーズを5g/リットルの割合で溶解した水溶液を用い、40℃で10分間、家庭用洗濯機中で洗濯し、次いで水洗し、乾燥する操作を1サイクルとして、このサイクルを50回繰り返した。
【0130】
アンモニア及びイソ吉草酸の消臭率は、次のようにして求めた。上記実施例1〜4及び比較例1で得られた各綿織物(洗濯前及び50回洗濯後)を10cm×10cmの大きさに切断したものを、別々に三角フラスコに入れておき、次にこれらの三角フラスコ内にアンモニア又はイソ吉草酸の溶液を一定量入れ、密栓して室温で60分間放置し、その後三角フラスコの上部に溜まったアンモニアガス又はイソ吉草酸ガスの濃度を北川式ガス検知管を用いて調べ、消臭率を求めた。
【0131】
また、ノネナールの消臭率は、次のようにして求めた。上記実施例1〜4及び比較例1で得られた各綿織物(洗濯前及び50回洗濯後)の一定量をバイアル瓶に入れ、ノネナールをマイクロシリンジで一定量注入し、ゴム栓をしてアルミシールで密閉し、80℃で30分間加熱し揮発させ、室温にて30分間放冷後、バイアル瓶のヘッドスペース部分の適量を、ガスタイトシリンジでガスクロマトグラフに導入し測定した。
【0132】
バイアル瓶に綿織物を入れない以外は、上記と同じ方法で作成したものをブランクとした。
【0133】
ノネナールの検出にはFIDを用い、ブランクとのピーク面積比から消臭率を求めた。
【0134】
結果を表1に示す。
【0135】
【表1】
Figure 0004737801
【0136】
試験例2
上記実施例1〜4及び比較例1で得られた各綿織物(洗濯前及び50回洗濯後)を以下の消臭試験に供した。
【0137】
中高年の体臭に多く含まれているイソ吉草酸(0.01重量%)とノネナール(0.01重量%)とを混合した中高年体臭合成液を調製した。この中高年体臭合成液を上記各綿織物にミニスプレーを用いて同量噴霧し、2〜3分放置した後の臭いを、20人に嗅がせた。下記に示す6段階基準に従い官能値を決定し、平均値を求めた。結果を下記表2に示す。
【0138】
官能値
0:無臭
1:やっと感知できる臭い
2:何の臭いであるのか判断できる程度の弱い臭い
3:何の臭いであるのか楽に判断できる程度の臭い
4:強い臭い
5:強烈な臭い
【0139】
【表2】
Figure 0004737801
【0140】
表2から、本発明の綿織物は、中高年体臭に対して格段に優れた消臭性能を備えており、しかも耐洗濯性にも優れていることがわかる。

Claims (3)

  1. アセタール結合、エーテル結合及びウレタン結合から選ばれた化学結合によりフラボノイド類が結合されたセルロース繊維又はセルロース繊維製品であって、更に水不溶性無機金属化合物を把持してなるセルロース繊維又はセルロース繊維製品。
  2. セルロース繊維又はセルロース繊維製品にフラボノイド類、アセタール結合、エーテル結合及びウレタン結合から選ばれた化学結合によりフラボノイド類とセルロース繊維又はセルロース繊維製品とを結合させることができる化合物並びに金属イオンを付着及び/又は含浸させ、次いで乾燥処理し、更に熱処理した後金属イオンを水不溶性無機金属化合物に変換せしめて得られる請求項1記載のセルロース繊維又はセルロース繊維製品。
  3. 水不溶性無機金属化合物が水酸化亜鉛及び塩基性炭酸亜鉛からなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1又は請求項2に記載のセルロース繊維又はセルロース繊維製品。
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