JP4737395B2 - カルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末の処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、セメントキルンの排ガスの一部を抽気する塩素バイパス技術で得られる微粉末等のカルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末の処理方法に関し、より詳しくは、カルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末から、カルシウム成分及び鉛成分を分離して回収するための処理方法に関する。
家庭ごみ等の廃棄物を原料の一部として用いるセメントキルンにおいては、塩素の含有率が高い排ガスが発生する。この排ガスは、塩素バイパス技術によって処理される。すなわち、セメントキルンの排ガスの一部を抽気した後、この抽気した高温の排ガス中の粗粉(塩素含有量が少ない固体分)をサイクロンで捕集し、セメント原料としてセメントキルンに戻す一方、サイクロンを通過した排ガスを冷却して生じる微粉末(塩素含有量が多い固体分)を、バグフィルター等の集塵機で捕集して、塩素成分を除去し、こうして浄化された排ガスを大気中に排出するものである。捕集した微粉末は、カルシウム成分、カリウム成分、鉛成分、塩素成分等を含む。なお、この微粉末は、カリウム成分、鉛成分、塩素成分等を除去すれば、カルシウム成分を主成分とするセメント原料として、セメントキルンに戻すことができる。
一方、塩素成分、カルシウム成分、鉛成分等を含む微粉末に対して、浮遊選鉱を行い、カルシウム成分、鉛成分等を分別して回収する技術が知られている。
例えば、廃棄物を焼却した際に発生する飛灰を処理する方法であって、炭酸ガスを吹送しながら水を用いて飛灰を洗浄する洗浄工程と、該洗浄工程で得られた固形残渣に対して、炭酸カルシウム用浮選剤を用いて浮遊選鉱を行い、フロス(浮鉱)として炭酸カルシウムを回収する第1浮遊選鉱工程と、該第1浮遊選鉱工程の沈降残渣(沈鉱)に硫酸を加えるなどして、金属銅、硫酸鉛等を含む混合物を生成させた後、この混合物を濾過等によって濾滓として回収する浸出工程と、該浸出工程で回収した濾滓に対して、金属用浮選剤を用いて浮遊選鉱を行い、フロス(浮鉱)として金属銅及び硫酸鉛を回収する第2浮遊選鉱工程とを有する飛灰の処理方法が、提案されている(特許文献1)。
特開平8−323321号公報
塩素バイパス技術で得られる微粉末は、上述のようにカルシウム成分、カリウム成分、鉛成分、塩素成分等を含むものである。このうち、カリウム成分、塩素成分等は、水洗処理後の濾液中の成分として回収することができる。
しかし、セメント原料として利用可能なカルシウム成分と、非鉄精錬原料として利用可能な鉛成分を、例えば、上述の文献に記載された技術を用いて分別して回収しようとすると、工程や薬剤の数が多いため、多大の手間を要し、かつ高コストになる。
そこで、本発明は、工程及び薬剤の数が少なく、しかも簡易な操作によって、カルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末から、カルシウム成分と鉛成分を分別して回収することのできる処理方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、カルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末と、水と、硫酸を混合して、pHを所定の値以下に調整し、固体分である硫酸カルシウム及び硫酸鉛を含むスラリーを得た後、このスラリーにアルカリ剤を加えて、pHを特定の範囲内に調整し、次いで、このスラリーにn−ドデシル硫酸ナトリウム捕収剤として加えて、浮遊選鉱を行なえば、浮鉱である硫酸カルシウムと、沈鉱である硫酸鉛を得ることができ、カルシウム成分と鉛成分を容易に分別回収しうることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[]を提供するものである。
] カルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末と、水と、硫酸を混合して、液性をpH4以下に調整し、固体分である硫酸カルシウム及び硫酸鉛を含むスラリーを調製する硫酸塩生成工程と、前記スラリーにアルカリ剤を加えて、液性をpH5〜7に調整するpH調整工程と、pH5〜7に調整した前記スラリーに捕収剤として、n−ドデシル硫酸ナトリウムを加えて、浮遊選鉱を行ない、硫酸カルシウムを主成分とする浮鉱と、硫酸鉛を主成分とする沈鉱を得る鉛・カルシウム分離工程とを含むことを特徴とするカルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末の処理方法。
] 前記鉛・カルシウム分離工程の浮遊選鉱において、硫酸鉛の浮遊を抑制するための抑制剤として、タンニンを加える前記[1]のカルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末の処理方法。
] 前記カルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末が、セメント製造装置から抽気したガスから回収される微粉末である前記[1]又は[2]のカルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末の処理方法。
本発明の処理方法によれば、工程及び薬剤の数が少なく、しかも簡易な操作によって、カルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末から、カルシウム成分と鉛成分を分別して回収することができる。
以下、図面を参照しつつ、本発明のカルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末の処理方法を説明する。
図1は、本発明のカルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末の処理方法の一例を示すフロー図である。
図1中、本発明のカルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末の処理方法は、(A)硫酸塩生成工程、(B)pH調整工程、及び(C)鉛・カルシウム分離工程を含む。以下、各工程について説明する。
[(A)硫酸塩生成工程]
本工程は、カルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末と、水と、硫酸を混合して、液性をpH4以下に調整し、固体分である硫酸カルシウム及び硫酸鉛を含むスラリーを調製する工程である。
カルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末と、水と、硫酸の混合方法としては、例えば、撹拌翼付きの液槽内に水、及び、カルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末を収容した後、撹拌しながら硫酸を添加していく方法が挙げられる。
本工程において、水1リットル当たりのカルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末の量は、好ましくは5〜200g、より好ましくは10〜150g、特に好ましくは20〜100gである。該量が5g未満では、カルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末の単位質量当たりの水量が大きくなり、処理の効率が低下する。該量が300gを超えると、鉛・カルシウム分離工程(C)における鉛成分とカルシウム成分の分離性能が低下する。
カルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末と、水と、硫酸を混合してなるスラリーのpHは、4以下、好ましくは3.5以下である。該pHの下限値は、特に限定されないが、硫酸の使用量の節減等の観点から、通常、2以上である。該pHが4を超えると、固体分である硫酸カルシウム及び硫酸鉛が十分に生成せず、鉛・カルシウム分離工程(C)におけるカルシウム成分及び鉛成分の回収率が低下する。
カルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末の一例の成分組成(質量基準)は、カルシウム14%、カリウム37%、ナトリウム3%、硫黄8%、鉛6%、塩素29%(鉛及び塩素を除き、酸化物換算の値である。)である。
[(B)pH調整工程]
本工程は、硫酸塩生成工程(A)で得られたスラリーにアルカリ剤を加えて、液性をpH5〜7に調整する工程である。
アルカリ剤の例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物や、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物や、炭酸ナトリウム等が挙げられる。
アルカリ剤の添加後のスラリーのpHの下限値は、鉛・カルシウム分離工程(C)における鉛成分とカルシウム成分の分離性能の向上等の観点から、5以上、好ましくは6以上である。該pHの上限値は、アルカリ剤の使用量の削減等の観点から7以下である。
[(C)鉛・カルシウム分離工程]
本工程は、pH調整工程(B)で得られたスラリーに捕収剤として、n−ドデシル硫酸ナトリウムを加えて、浮遊選鉱を行ない、硫酸カルシウムを主成分とする浮鉱と、硫酸鉛を主成分とする沈鉱を得る工程である。
浮遊選鉱とは、疎水性の表面を有する粒子、及び親水性の表面を有する粒子を含む水中にガスを供給して、このガスからなる泡の表面に、疎水性の表面を有する粒子を付着させ、該粒子が付着している泡を、水中で浮力により浮上させることによって、沈鉱である親水性の表面を有する粒子と、浮鉱である疎水性の表面を有する粒子とに分離するものである。なお、通常、粒子の表面の疎水性または親水性を人為的に調節して、分離性能を高めるために、捕収剤と呼ばれる種々の化学薬剤が用いられる。従来知られている個々の捕収剤は、粒子の種類によってその効果(適否)が異なることが知られている。
本発明用いられる捕収剤、n−ドデシル硫酸ナトリウムである
捕収剤の添加量は、スラリー1リットルに対して、好ましくは3〜200mg、より好ましくは5〜100mg、特に好ましくは10〜50mgである。該量が3mg未満では、硫酸カルシウムを浮鉱として十分に浮上させることが困難となる。該量が200mgを超えると、硫酸カルシウムを浮鉱として浮上させる効果が頭打ちとなる一方、捕収剤の薬剤コストが増大する。
本発明においては、浮遊選鉱の気泡を安定化し、良い泡立ちを与えるために、起泡剤を添加してもよい。起泡剤の例としては、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールメチルエーテル、エチレングリコール等が挙げられる。起泡剤の添加量は、スラリー1リットルに対して、通常、0.1〜3g、好ましくは0.5〜2gである。
本発明において、捕収剤と共に抑制剤を用いることができる。
抑制剤は、親水性の表面を有する粒子(硫酸鉛)の親水性を高めて、浮遊を抑制するためのものである。抑制剤を用いることによって、鉛・カルシウム分離工程(C)における鉛成分とカルシウム成分の分離性能を高めることができる。
抑制剤の例としては、タンニン挙げられる。
抑制剤の添加量は、スラリー1リットルに対して、好ましくは10〜150mg、より好ましくは20〜130mg、特に好ましくは30〜120mgである。該量が60mg未満では、抑制剤の添加効果が十分に得られないことがある。該量が150mgを超えると、抑制剤の薬剤コストが増大するなどの欠点がある。
浮遊選鉱の手段としては、ファーレンワルド型浮選機(FW型)、MS型浮選機、フェジャーグレン型浮選機、アジテヤ型浮選機、ワーマン型浮選機等の浮選機が挙げられる。
硫酸カルシウムを主成分とする浮鉱は、スラリーの液中の上部領域(特に液面付近)に存在する固体分を回収することによって、スラリーの他の成分(液分、沈鉱)から分離することができる。
浮鉱は、塩素及び鉛の含有率が小さく、かつ硫酸カルシウムを主成分として含むので、セメント原料等として用いることができる。
硫酸鉛を主成分とする沈鉱は、スラリーの液中の下部領域(特に底面上)に存在する固体分を回収することによって、スラリーの他の成分(液分、浮鉱)から分離することができる。
沈鉱は、硫酸鉛を主成分として含むので、山元還元による非鉄精錬原料として用いることができる。
本発明を実施例によって説明する。なお、以下の「%」は、特に断らない限り、質量基準である。
[実施例1]
成分組成が、カルシウム14%、カリウム37%、ナトリウム3%、硫黄8%、鉛6%、塩素29%(鉛及び塩素を除き、酸化物換算の値である。)であるカルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末を用意した。
撹拌翼付きの液槽内に、水0.3リットルと、水1リットル当たり55gの量のカルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末を投入して撹拌し、スラリーを得た後、このスラリーに対し、撹拌しながら硫酸を添加して、スラリーのpHを3に調整した。
次いで、このスラリーに水酸化ナトリウムを添加して、スラリーのpHを6に調整した。このスラリーを、MS型浮選機を用いて浮遊選鉱し、浮鉱及び沈鉱を得た。この際、捕収剤として、スラリー1リットル当たり25mgの量のn−ドデシル硫酸ナトリウムを用い、かつ、抑制剤として、スラリー1リットル当たり50mgの量のタンニンを用いた。
浮鉱及び沈鉱の質量比、及びこれらの成分組成を、表1に示す。
Figure 0004737395
[実施例2]
浮遊選鉱の際にタンニンを添加しなかったこと、及び、スラリー1リットル当たりのn−ドデシル硫酸ナトリウムの量を30mgとしたこと以外は、実施例1と同様にして実験を行なった。
浮鉱及び沈鉱の質量比、及びこれらの成分組成を、表2に示す。
Figure 0004737395
なお、浮遊選鉱の際のスラリーのpHを5に定めた場合、及び、該pHを7に定めた場合についても同様にして実験したところ、前記のpH6の場合とほぼ同じ結果が得られた。該pHが3以下の場合には、鉛成分とカルシウム成分の分離性能が低下する傾向が見られた。
本発明のカルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末の処理方法の一例を示すフロー図である。

Claims (3)

  1. カルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末と、水と、硫酸を混合して、液性をpH4以下に調整し、固体分である硫酸カルシウム及び硫酸鉛を含むスラリーを調製する硫酸塩生成工程と、
    前記スラリーにアルカリ剤を加えて、液性をpH5〜7に調整するpH調整工程と、
    pH5〜7に調整した前記スラリーに捕収剤として、n−ドデシル硫酸ナトリウムを加えて、浮遊選鉱を行ない、硫酸カルシウムを主成分とする浮鉱と、硫酸鉛を主成分とする沈鉱を得る鉛・カルシウム分離工程と、
    を含むことを特徴とするカルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末の処理方法。
  2. 前記鉛・カルシウム分離工程の浮遊選鉱において、硫酸鉛の浮遊を抑制するための抑制剤として、タンニンを加える請求項に記載のカルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末の処理方法。
  3. 前記カルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末が、セメント製造装置から抽気したガスから回収される微粉末である請求項1又は2に記載のカルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末の処理方法。
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