JP5132137B2 - カルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末の処理方法 - Google Patents
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Description
例えば、廃棄物を焼却した際に発生する飛灰を処理する方法であって、炭酸ガスを吹送しながら水を用いて飛灰を洗浄する洗浄工程と、該洗浄工程で得られた固体残渣に対して、炭酸カルシウム用浮選剤を用いて浮遊選鉱を行い、フロス(浮鉱)として炭酸カルシウムを回収する第1浮遊選鉱工程と、該第1浮遊選鉱工程の沈降残渣(沈鉱)に硫酸を加えるなどして重金属の金属塩を生成し、さらに水を加えて金属塩を溶解すると同時に、溶解した銅イオンを金属銅として析出させ、該金属銅、硫酸鉛等を含む混合物を生成させた後、この混合物を濾過等によって濾滓として回収する浸出工程と、該浸出工程で回収した濾滓に対して、硫化剤等の活性化剤と、捕収剤及び起泡剤からなる金属用浮選剤を用いて浮遊選鉱を行い、フロス(浮鉱)として金属銅及び硫酸鉛を回収する第2浮遊選鉱工程とを有する飛灰の処理方法が、提案されている(特許文献1)。
しかし、セメント原料として利用可能なカルシウム成分と、非鉄精錬原料として利用可能な鉛成分を、例えば、上述の文献に記載された技術を用いて分別して回収しようとすると、工程や薬剤の数が多いため、多大の手間を要し、かつ高コストになる。
そこで、本発明者は、まず、処理対象物となるカルシウム成分及び鉛成分を含む微粉末と、水とを混合して、スラリーを得た後、該スラリーに硫酸及び硫化剤を加えて、前記微粉末中のカルシウム成分及び鉛成分を各々、硫酸カルシウム、鉛硫化物に変化させ、その後、硫酸カルシウム及び鉛硫化物を含むスラリーに対して、捕収剤を加えて、鉛硫化物の表面の疎水化処理を行い、浮遊選鉱の技術によって、鉛硫化物を浮鉱として分離し、硫酸カルシウムを沈鉱として分離し、回収する簡易な処理方法を検討した。
第一に、粗粒に内包された鉛成分は、スラリーに加えられた硫化剤と反応せず、鉛硫化物に変化しないために、その後に浮遊選鉱を行っても、処理対象物である微粉末からの鉛の回収率が低下した。
第二に、粗粒には、微粉末中のカルシウム成分が消石灰分(Ca(OH)2)として内包されるために、この消石灰分が粗粒から徐々に溶け出して、スラリーのpHを経時的に大きく上昇させるために、捕収剤の添加時に、スラリーのpHが、捕収剤の使用に適するpHの上限値(例えば、ザンセートでは7.5)を超えてしまう場合があった。捕収剤の使用に適するpHの数値範囲を外れたpH条件下で、スラリー中の鉛硫化物を疎水化処理した場合、浮鉱に含まれる鉛硫化物の量が少なくなり、鉛硫化物の回収率及び品位が低下した。
そこで、本発明は、カルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末から、カルシウム成分及び鉛成分を分別して回収するための処理方法において、工程及び薬剤の数が少なく、簡易な方法でありながら、高い回収率及び品位で鉛成分及びカルシウム成分を回収することができる方法を提供することを目的とする。
[1] (A)カルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末と水を混合して、スラリーを得るスラリー化工程と、
(B)工程(A)で得られたスラリーに対して、硫酸及び硫化剤を加えて、該スラリー中に固体分である硫酸カルシウム及び鉛硫化物を生成する固体分生成工程と、
(C)工程(B)で得られたスラリーに捕収剤を加えて、スラリー中の鉛硫化物を疎水化させる鉛硫化物疎水化工程と、
(D)工程(C)で得られたスラリーを浮遊選鉱処理して、鉛硫化物を含む浮鉱と、硫酸カルシウムを含む沈鉱を得る鉛・カルシウム分離工程を含むカルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末の処理方法であって、
前記スラリー化工程(A)において、スラリー中の平均粒径が500μmを超える粗粒の生成を抑制するための粗粒化抑制処理を行うことを特徴とするカルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末の処理方法。
[2] 前記粗粒化抑制処理は、前記微粉末と水を混合する混合槽内で、前記微粉末と水との混合物を、回転速度200〜2,000回転/分の撹拌手段により撹拌することによって行う前記[1]記載のカルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末の処理方法。
[3] 前記粗粒化抑制処理は、前記スラリーを磨砕処理することによって行う前記[1]記載のカルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末の処理方法。
[4] 前記粗粒化抑制処理は、前記スラリーを湿式粉砕処理することによって行う前記[1]記載のカルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末の処理方法。
[5] 前記粗粒化抑制処理は、前記スラリーを超音波処理することによって行う前記[1]記載のカルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末の処理方法。
[6] 前記粗粒化抑制処理は、前記微粉末と水を混合する混合槽内で、前記微粉末と水との混合物を、撹拌手段により撹拌し、その後、得られたスラリーに対して、磨砕処理、湿式粉砕処理又は超音波処理のいずれかの処理をすることによって行う前記[1]記載の微粉末の処理方法。
また、微粉末中に含まれていたカルシウム成分は、消石灰分(Ca(OH)2)として上記粗粒中に内包されることがないため、その後の工程において、上記粗粒中に含まれる消石灰分が徐々にスラリー中に放出して、スラリーのpHを経時的に大きく上昇させることがない。このため、捕収剤の使用に適するpHのスラリーに対して、捕収剤を加えて、スラリー中の鉛硫化物の疎水化処理を行うことができ、浮鉱に含まれる鉛硫化物の量が大きくなり、鉛硫化物を高い回収率及び品位で回収できる。
また、スラリー中の平均粒径が500μmを超える粗粒の生成が抑制されるため、微粉末に含まれていたカルシウム成分が硫酸と反応しやすくなり、微粉末中に含まれていたカルシウム成分に由来する硫酸カルシウムの生成量を大きくすることができ、消石灰分(Ca(OH)2)の生成量を小さくすることができるので、消石灰分が溶け出すことによるスラリーのpHの上昇を抑制することができ、捕収剤の使用に適した条件で、スラリー中の鉛硫化物を疎水化処理することができるので、その後に浮遊選鉱を行うことによって、微粉末中のカルシウム成分を沈鉱として、微粉末中の鉛成分を浮鉱として、良好に分離することができる。
また、回収された鉛硫化物は、山元還元による非鉄精錬原料等として用いることができる。特に、浮遊選鉱で回収される固体分として、硫酸カルシウム、鉛硫化物以外の他の物質(例えば、ケイ素、アルミニウム等の化合物)が高含有率で含まれる場合であっても、当該他の物質が、硫酸カルシウムと共に沈鉱として回収されるため、浮鉱に含まれる鉛硫化物の含有率を高く維持することができ、常に、良質の非鉄精錬原料を得ることができる。
本発明のカルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末の処理方法は、(A)カルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末と水を混合して、スラリーを得るスラリー化工程と、(B)工程(A)で得られたスラリーに対して、硫酸及び硫化剤を加えて、該スラリー中に固体分である硫酸カルシウム及び鉛硫化物を生成する固体分生成工程と、(C)工程(B)で得られたスラリーに捕収剤を添加して、スラリー中の鉛硫化物を疎水化させる鉛硫化物疎水化工程と、(D)工程(C)で得られたスラリーに浮遊選鉱処理して、鉛硫化物を含む浮鉱と、硫酸カルシウムを含む沈鉱を得る鉛・カルシウム分離工程を含むカルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末の処理方法であって、前記スラリー化工程(A)において、スラリー中の平均粒径が500μmを超える粗粒の生成を抑制するための粗粒化抑制処理を行う。
本工程は、カルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末と水とを混合し、スラリーを得る工程である。
図1は、本発明のカルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末の処理方法の一例を示すフロー図である。
本発明の処理対象となる微粉末としては、例えば、前記の背景技術の欄で説明した、塩素バイパス技術によるセメントキルンの排ガスの処理の過程で捕集される微粉末や、焼却飛灰、溶融飛灰等が挙げられる。
本発明の処理対象となる微粉末中のカルシウム成分の含有率(CaO換算の質量割合)は、特に限定されないが、好ましくは5〜70質量%、より好ましくは10〜60質量%、特に好ましくは15〜50質量%である。該含有率が5質量%未満では、本発明の処理方法によって回収されるカルシウム成分の量が少なくなり、カルシウム成分の再資源化を十分に図ることができない。該含有率が70質量%を超えると、鉛・カルシウム分離工程(D)における浮鉱への鉛の分配率が低下することがある。
次に、上記の各処理方法について説明する。
[(a)急速撹拌(回転速度200〜2,000回転/分の撹拌手段による撹拌)による粗粒化抑制処理]
前記スラリー化工程(A)における粗粒化抑制処理の第一の実施の形態として、粗粒化抑制処理(a)は、カルシウム成分及び鉛成分を含む微粉末と、水とを混合する混合槽内において、前記微粉末と水との混合物を、撹拌翼等の撹拌手段により急速撹拌することによって行う。
ここで、スラリー中に生成される粗粒とは、カルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末同士が固まって、目視で確認できる程度の大きさに団粒化した粒状物をいう。スラリー中の粒状物は、正確な粒径の測定が非常に困難であるが、目視で確認できる程度の大きさの粒状物は、通常、平均粒径が約500μmを超える程度の大きさのものである。
水1リットル当たりのカルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末の量は、好ましくは5〜500g、より好ましくは20〜250g、特に好ましくは50〜200gである。該量が5g未満では、カルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末の単位質量当たりの水量が大きくなり、処理の効率が低下する。該量が500gを超えると、急速撹拌を行った場合であっても、スラリー中に粗粒の生成を抑制することができない場合がある。
前記微粉末と水を混合する混合槽の容量は、100〜5,000リットル、より好ましくは200〜3,000リットル、特に好ましくは300〜1,000リットルである。混合槽の容量が100リットル未満であると、処理する量が小さすぎて、処理の効率が低下する。該容量が5,000リットルを超えると、急速撹拌によっても、スラリー中の粒状物を、目視で確認できない程度の大きさ(粒状物の平均粒径が約500μm以下)に細粒化するまでに時間がかかり、処理の効率が低下する。
前記スラリー化工程(A)における粗粒化抑制処理の第二の実施の形態として、粗粒化抑制処理(b)は、カルシウム成分及び鉛成分を含む微粉末と、水とを混合して得られたスラリーを磨砕処理することによって行う。
磨砕処理としては、例えば、磨砕処理装置に前記スラリーを供給し、該磨砕処理装置内で、スラリー中に含まれる粒状物に擦り合わせ力を作用させて、スラリー中の粒状物を目視で確認することができない程度の大きさ(粒状物の平均粒径が約500μm以下)に、細粒化する方法が挙げられる。
磨砕処理装置12としては、例えば、図3に示すように、内周面に、中心方向に向かって突出する複数の羽体121aを有する円柱状の回転ドラム121と、外周面に、外方に向かって突出する複数の羽体122aを有し、回転ドラム121内に偏心するように設けた円柱状のローター122と、この回転ドラム121とローター122とを駆動機構(図示略)によって互いに逆回転させるようにしたものを用いることができる。この磨砕処理装置12は、スラリーSを回転ドラム121内に供給し、回転ドラム121とローター122との間で、スラリーS中に含まれる粒状物に対して擦り合わせ力を作用させ、スラリーS中の粒状物を、目視で確認することができない程度の大きさに、細粒化する。なお、図3に示す磨砕処理装置12は、回転ドラム121とローター122との間隔Dと、回転ドラム121とローター122の相対的な回転速度を調節することによって、粒状物に対して作用させる擦り合わせ力を調整し、スラリー中に含まれる粒状物の平均粒径の大きさを調整するようにしてもよい。
前記スラリー化工程(A)における粗粒化抑制処理の第三の実施の形態として、粗粒化抑制処理(c)は、カルシウム成分及び鉛成分を含む微粉末と、水とを混合して得られたスラリーを湿式粉砕処理することによって行う。
湿式粉砕処理としては、例えば、湿式粉砕処理装置に前記スラリーを供給し、該湿式粉砕処理装置内で、スラリー中の粒状物を粉砕し、スラリー中の粒状物を目視で確認することができない大きさ(粒状物の平均粒径が約500μm以下)に、細粒化する方法が挙げられる。
湿式粉砕処理装置としては、例えば、ビーズミル、ロッドミル、ボールミル等の粉砕媒体を用いる湿式粉砕処理装置、チューブミル等の密閉型の湿式粉砕処理装置、タワーミル等の開放型の湿式粉砕処理装置等が挙げられる。
湿式粉砕処理装置に供給されるスラリーは、その濃度(固形分濃度)が、0.5〜50質量%、好ましくは5〜20質量%の範囲内に調整されているとよい。
前記スラリー化工程(A)における粗粒化抑制処理の第四の実施の形態として、粗粒化抑制処理(d)は、カルシウム成分及び鉛成分を含む微粉末と、水とを混合して得られたスラリーを超音波処理することによって行う。
超音波処理としては、カルシウム成分及び鉛成分を含む微粉末と水とを混合するための混合槽内のスラリーに対して、超音波を印加するような装置を用いて行ってもよく、混合槽から排出されたスラリー(例えば、流通路内のスラリー)に対して、超音波を印加するような装置を用いて行ってもよい。超音波の振動によって、スラリー中の粗粒が分散し、スラリー中の粒状物を、目視で確認することができない程度の大きさ(粒状物の平均粒径が約500μm以下)に、細粒化することができる。
超音波処理を行う条件としては、例えば、処理対象となるスラリーの量等によって条件が変動し、特に限定されるものではないが、例えば、周波数が数10Hz〜数100kHz、振幅0.1μm以上の超音波をスラリーに印加することが好ましい。周波数が10Hz未満、振幅が0.1μm未満であると十分な分散効果が得られない場合がある。
スラリーに超音波処理を印加する時間は、特に限定されるものではないが、0.1秒以上、好ましくは60秒以上である。超音波処理を行う時間が0.1秒未満であると、時間が短すぎて、スラリー中に生成された粗粒を分散することができず、粗粒の生成を抑制する効果が得られない場合がある。
なお、流通路内のスラリーに対して超音波処理を行う場合は、流通路(内径2.5cm。長さ20cmの円筒状の管路)内のスラリーの流量が、0.5〜3リットル/分の範囲であることが好ましい。
前記スラリー化工程(A)における粗粒化抑制処理の第五の実施の形態として、粗粒化抑制処理(e)は、カルシウム成分及び鉛成分を含む微粉末と、水とを混合する混合槽内において、前記微粉末と水との混合物を、撹拌手段により撹拌し、その後、得られたスラリーに対して、磨砕処理、湿式粉砕処理又は超音波処理のいずれかの処理をすることによって行う。
粗粒化抑制処理として、前記微粉末と水との混合物を、撹拌するとともに、その後に、磨砕処理、湿式粉砕処理又は超音波処理のいずれかの処理を行うことによって、スラリー中の粗粒の生成を確実に抑制することができる。
なお、固体分生成工程(B)は、スラリー化工程(A)で得られたスラリーに対して、硫化剤を加えて、固体分である鉛硫化物を含むスラリーを得る鉛硫化物生成工程(B−1)と、上記のスラリーに対して硫酸を加えて、固体分である硫酸カルシウムを含むスラリーを得る硫酸カルシウム生成工程(B−2)を含む。固体分生成工程(B)においては、まず、鉛硫化物生成工程(B−1)を行った後に、硫酸カルシウム生成工程(B−2)を行ってもよく(図1参照)、この逆の順序で行ってもよい(図2参照)。
本工程は、スラリー化工程(A)で得られたスラリーに対して、硫化剤を加えて、固体分である鉛硫化物を含むスラリーを得る工程である。
硫化剤の例としては、水硫化ソーダ(NaSH)、硫化ソーダ(Na2S)、硫化水素ガス(H2S)等が挙げられる。
本工程で得られるスラリー中に生成される鉛硫化物は、例えば、硫化鉛(PbS)等が挙げられる。
硫化剤の添加量は、スラリー化する前の微粉末中の鉛成分の量に応じて定められる。具体的には、S(硫化剤中の硫黄)/Pb(微粉末中の鉛)のモル比が0.8〜3.0の範囲内となる量の硫化剤を添加することが望ましい。但し、硫化剤の添加量は、微粉末に含まれる他の金属成分によってもその最適値が変動することから、狭い数値範囲内に特に限定されるものではない。
なお、図1に示すように、鉛硫化物生成工程(B−1)を行い、次に、硫酸カルシウム生成工程(B−2)を行った場合は、鉛硫化物生成工程(B−1)において、硫化剤を過剰に加えて、pHが大きくなり過ぎた場合であっても、工程(B−2)における硫酸の添加によって、pHを適正な数値範囲に調整することができる。
本工程においては、硫化剤を添加した後に十分に撹拌することが好ましい。
本工程は、工程(B−1)で得られた前記スラリーに硫酸を加えて、固体分である鉛硫化物及び硫酸カルシウムを含むスラリーを得る工程である。
硫酸の添加量は、前記スラリーのpHを1.5〜7.5、好ましくは2.0〜7.0、特に好ましくは2.5〜6.5に調整できる量を添加する。
該pHが1.5未満または7.5を超えると、工程(D)における鉛の回収率が低下する。
前記スラリーに硫酸を加える方法としては、例えば、次の(B−2a)、(B−2b)が挙げられる。
(B−2a)pH測定手段を用いる方法
この方法は、工程(B−1)で得られたスラリーに対して、好ましくは撹拌下で、硫酸を加えつつ、pH測定手段(pH計)を用いて当該スラリーのpHを測定することによって、pHを1.5〜7.5、好ましくは2.0〜7.0、特に好ましくは2.5〜6.5に調整する方法である。この方法によれば、pH測定手段を用いるだけで、pHを調整することができる。
この方法におけるpHの調整は、工程(B−2)のスラリーのpHの測定に代えて、鉛硫化物疎水化工程(C)のスラリーのpHの測定によって行なってもよい。
(B−2b)硫酸の添加量を予め定める方法
この方法は、工程(A)の前に、本発明の処理対象物である微粉末中のカルシウム成分の含有量(CaO換算の質量割合)を測定するとともに、工程(B−2)において、前記のカルシウム成分の含有量の測定値に基づいて、スラリー中のH2SO4/CaOのモル比が0.85〜1.20、好ましくは0.90〜1.12、より好ましくは0.92〜1.05の範囲内となる量の硫酸を添加する方法である。
この方法によれば、pH測定手段でpHの値を測定しなくても、スラリーのpHを1.5〜7.5の範囲内とすることができる。
本工程においては、硫化剤を添加した後に十分に撹拌することが好ましい。
本工程は、固体分生成工程(B)で得られたスラリーに捕収剤を加えて、スラリー中の鉛硫化物を疎水化させる工程である。
本工程は、工程(D)(鉛・カルシウム分離工程)における浮遊選鉱の前処理として、鉛硫化物を疎水化させるものである。
浮遊選鉱とは、疎水性の表面を有する粒子及び親水性の表面を有する粒子を含む水中に空気を供給して、この空気の泡の表面に、疎水性の表面を有する粒子を付着させ、該粒子が付着している泡を、水中で浮力により浮上させることによって、沈鉱である親水性の表面を有する粒子と、浮鉱である疎水性の表面を有する粒子とに分離するものである。
本発明で用いられる捕収剤は、工程(B−1)で生成した鉛硫化物の疎水性を高めるためのものである。鉛硫化物は、捕収剤によって疎水性を高められた後、泡の表面に付着して、水中を浮上し、浮鉱となる。
中でも、ザンセート、酸性ジチオリン酸エステル類、オレイン酸ナトリウム等は、本発明において好ましく用いられる。
ここで、ザンセートとは、−OC(=S)−S−の化学構造を有するキサントゲン酸塩をいう。ザンセートの例としては、R−OC(=S)−S−M+(式中、Rは炭素数1〜20(好ましくは2〜5)のアルキル基、MはNa、K等のアルカリ金属またはNH4等を表す。)の一般式で表される化合物が挙げられる。
捕収剤の添加量は、スラリー1リットルに対して、好ましくは10mg以上、より好ましくは30mg以上、特に好ましくは50mg以上である。該量が10mg未満では、鉛硫化物を浮鉱として十分に浮上させることが困難となる。
捕収剤の添加量の上限値は、特に限定されないが、薬剤コストの削減等の観点から、スラリー1リットルに対して、好ましくは1,000mg以下、より好ましくは500mg以下である。
起泡剤の例としては、メチルイソブチルカルビノール(MIBC;4−メチル−2−ペンタノール)、メチルイソブチルケトン、パイン油、エチレングリコール、プロピレングリコールメチルエーテル、クレゾール酸等が挙げられる。起泡剤として、前記の例示物の他に、例えば、炭素数6〜8の鎖状の炭化水素基(アルキル基等)や炭素数10〜15の環状の炭化水素基(芳香族基、シクロアルキル基等)等の疎水性基、及び、水酸基、カルボキシル基等の親水性基を有する化合物も、使用することができる。
起泡剤の添加量は、スラリー1リットルに対して、好ましくは5〜100mgである。なお、本発明において、起泡剤の添加は必須ではなく、任意である。
本工程は、工程(C)で得られたスラリーを浮遊選鉱処理して、鉛硫化物を含む浮鉱と、硫酸カルシウムを含む沈鉱を得る工程である。
浮遊選鉱の手段としては、ファーレンワルド型浮選機(FW型浮選機)、MS型浮選機、フェジャーグレン型浮選機、アジテヤ型浮選機、ワーマン型浮選機等の浮選機が挙げられる。
浮鉱は、スラリーの液中の上部領域(特に液面付近)に存在する固体分を回収することによって、スラリーの他の成分(液分、沈鉱)から分離することができる。
浮鉱は、鉛(Pb)の分配率(換言すれば、浮鉱中のPbと沈鉱中のPbの合計量中の浮鉱中のPbの質量割合)が大きいので、カルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末に由来する鉛含有物質として分離回収することができる。
浮鉱への鉛の分配率は、本発明の処理対象物である微粉末に含まれるカルシウム成分の含有率の大きさ等によっても変動するが、通常、60質量%以上である。
浮鉱中の鉛の含有率(質量%)は、本発明の処理対象物である微粉末に含まれるカルシウム成分の含有率の大きさ等によっても変動するが、通常、10質量%以上である。
沈鉱は、スラリーの液中の下部領域(特に底面上)に存在する固体分を回収することによって、スラリーの他の成分(液分、浮鉱)から分離することができる。
沈鉱は、浮鉱とは逆に、硫酸カルシウムの分配率が大きく、かつ、鉛硫化物の分配率が小さいので、セメント原料等として用いることができる。沈鉱には、ケイ素、アルミニウム等の化合物が含まれることがある。
沈鉱へのカルシウム(Ca)の分配率は、通常、80質量%以上である。
図4中、微粉末の処理システムは、処理対象物であるカルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末と、水を貯留し、該スラリーを撹拌するための撹拌翼1aを備えた混合槽1と、混合槽1から供給されたスラリーに硫化剤を加えて、鉛硫化物を生成するための鉛硫化物生成槽2と、鉛硫化物生成槽2に硫化剤を供給するための硫化剤貯留槽3と、鉛硫化物生成槽2から供給されたスラリーに硫酸を加えて、硫酸カルシウムを生成するための硫酸カルシウム生成槽4と、硫酸カルシウム生成槽4に硫酸を供給するための硫酸貯留槽5と、硫酸カルシウム生成槽4内のスラリーを測定するためのpH測定手段(pH計)10と、硫酸カルシウム生成槽4から供給されたスラリーに捕収剤を加えて、スラリー中の鉛硫化物の疎水性を高めるための疎水化反応槽6と、疎水化反応槽6に捕収剤を供給するための捕収剤貯留槽7と、疎水化反応槽6から供給されたスラリーに対して浮遊選鉱を行なうための浮選機9と、疎水化反応槽6から浮選機9までの流通路の所定の地点にて起泡剤を供給するための起泡剤貯留槽8とを備えている。
図4に示すように、pH測定手段(pH計)11は、疎水化反応槽6に設けてもよい。
処理システムを構成する各部(ただし、pH測定手段10、11を除く。)の間には、スラリーの流通路、または硫化剤等の薬剤の供給路が設けられている。
上記の処理システム中、鉛硫化物生成槽2及び硫化剤貯留槽3を含む部分は、鉛硫化物生成装置を構成している。硫酸カルシウム生成槽4及び硫酸貯留槽5を含む部分は、硫酸カルシウム生成装置を構成している。疎水化反応槽6、捕収剤貯留槽7及び起泡剤貯留槽8を含む部分は、鉛硫化物疎水化装置を構成している。浮選機9は、浮遊選鉱装置である。
なお、鉛硫化物生成装置と、硫酸カルシウム生成装置の配置順序を逆にしてもよい。
図5に示す処理システムにおいて、撹拌翼1aで、混合槽1内に収容されたカルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末と水を、通常の条件(例えば、撹拌翼の回転速度30〜180回転/分、1〜30分間の滞留時間下)で撹拌して得られたスラリーを、磨砕処理装置12で磨砕処理してもよい。また、混合槽1内に収容された前記微粉末と水を、急速撹拌(撹拌翼の回転速度200〜2,000回転/分、1〜30分間の滞留時間下)し、その後、得られたスラリーを、磨砕処理装置12で磨砕処理してもよい。
本発明の微粉末の処理方法において、磨砕処理装置12の代わりに、湿式粉砕処理装置を配置した処理システムを用いてもよい。また、磨砕処理装置12の代わりに、混合槽1から鉛硫化物生成槽2に供給される流通路内のスラリーに対して、超音波を印加する超音波装置を備えた処理システムを用いてもよい。超音波装置として、混合槽1内のスラリーに対して、超音波を印加するようにしたものを用いてもよい。
本発明の微粉末の処理方法において、連続式とバッチ式のいずれの処理方法及び処理システムを採用してもよいが、処理効率の観点からは、連続式の処理方法及び処理システムが好ましい。
[カルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末の用意]
処理対象物であるカルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末として、微粉末Aを用意し、微粉末A中のカルシウム成分(CaO換算の質量割合)と鉛成分(PbO換算の質量割合)を、蛍光X線分析により測定した。微粉末A中のカルシウム成分の含有率は、35質量%(CaO換算の質量割合)であり、鉛成分の含有率は、2.5質量%(PbO換算の質量割合)であった。
なお、微粉末Aは、塩素バイパス技術によるセメントキルンの排ガスの処理の過程で捕収された微粉末である。
図4に示す連続処理システムを用いて、以下のように微粉末Aを処理した。
撹拌翼付きの混合槽1内に、水800リットルと、水1リットル当たり150gの量の微粉末Aを投入し、撹拌翼の回転速度500回転/分、30分間の滞留時間下で急速撹拌して、撹拌翼で混合槽1内のスラリー中の粗粒にせん断力を与えて、粗粒化抑制処理を行った。得られたスラリーを目視で確認した。スラリー中には、目視で確認できる大きさ(平均粒径が500μmを超える大きさ)の粒状物は見当たらず、スラリーが均一化されていることが確認できた。
このスラリーを撹拌翼付きの鉛硫化物生成槽2に導いた後、槽内のスラリーに対して、スラリー1リットル当たり3,000mg(固形分)の水硫化ソーダの添加量になるように水硫化ソーダ水溶液(濃度:20質量%)を加えて、45分間の滞留時間下で撹拌し、鉛硫化物を生成させた。
次いで、このスラリーを撹拌翼付きの硫酸カルシウム生成槽4に導いた後、槽内のスラリーに対して、該スラリーのpHが、4.0となる量の硫酸(濃度:98質量%)を加えて、90分間の滞留時間下で撹拌し、硫酸カルシウムを生成させた。
次いで、このスラリーを、疎水化反応槽6から流通路を介してFW型浮選機9に導いた後、FW型浮選機9内にて、送気しながらスラリーを浮遊選鉱し、浮鉱及び沈鉱を得た。なお、FW型浮選機9にスラリーを導く際に、流通路の所定の地点にて、起泡剤貯留槽8から、起泡剤として、スラリー1リットル当たり70mgの添加量になるように、メチルイソブチルカルビノール(MIBC)を添加した。
浮遊選鉱で得られた浮鉱及び沈鉱の各々について、鉛及びカルシウムの含有量を測定した。微粉末Aからの鉛の回収率は、78質量%であり、鉛品位は、36質量%であった。
図5に示す連続処理システムを用いて、撹拌翼付きの混合槽1内で、微粉末Aと水との混合物を、通常の条件(撹拌翼の回転速度150回転/分、30分間の滞留時間下)で撹拌した後、得られたスラリーに対して、磨砕処理装置12で磨砕処理を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、実験した。
本実験において、磨砕処理した後、得られたスラリーを目視で確認した。スラリー中には、目視で確認できる大きさの粒状物は見当たらず、スラリーが均一化されていることが確認できた。また、本実験において、疎水化反応槽6内のスラリーのpHは、4.4であり、スラリーのpHの変動は小さく、スラリーのpHは安定していた。微粉末Aからの鉛の回収率は、77質量%であり、鉛品位は、33質量%であった。
図5に示す連続処理システムを用いて、混合槽1内で、微粉末Aと水との混合物を、実施例1と同様にして急速撹拌した後、得られたスラリーに対して、磨砕処理装置12で磨砕処理を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、実験した。
本実験において、急速撹拌し、その後、磨砕処理した後、得られたスラリーを目視で確認した。スラリー中には、目視で確認できる大きさの粒状物は見当たらず、スラリーが均一化されていることが確認できた。また、本実験において、疎水化反応槽6内のスラリーのpHは、4.3であり、スラリーのpHの変動は小さく、スラリーのpHは安定していた。微粉末Aからの鉛の回収率は、80質量%であり、鉛品位は、37質量%であった。
図4に示す連続処理システムを用いて、撹拌翼付きの混合槽1内で、微粉末Aと水との混合物を、通常の条件(撹拌翼の回転速度150回転/分、30分間の滞留時間下)で撹拌したこと以外は、実施例1と同様にして、実験した。
本実験において、通常の条件で撹拌した後、得られたスラリーを目視で確認した。スラリー中に目視で確認できる大きさ(平均粒径が約500μmを超える大きさ)の多数の粒状物が確認できた。また、本実験において、疎水化反応槽6内のスラリーのpHは、8.3であり、硫酸カルシウム生成槽4において、調整したスラリーよりもpHがかなり大きくなっていた。微粉末Aからの鉛の回収率は、57質量%であり、鉛品位は、4.4質量%であった。
2 鉛硫化物生成槽
3 硫化剤貯留槽
4 硫酸カルシウム生成槽
5 硫酸貯留槽
6 疎水化反応槽
7 捕収剤貯留槽
8 起泡剤貯留槽
9 浮選機
10 pH測定手段(pH計)
11 pH測定手段(pH計)
12 磨砕処理装置
121 回転ドラム
121a 羽体
122 ローター
122a 羽体
Claims (6)
- (A)カルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末と水を混合して、スラリーを得るスラリー化工程と、
(B)工程(A)で得られたスラリーに対して、硫酸及び硫化剤を加えて、該スラリー中に固体分である硫酸カルシウム及び鉛硫化物を生成する固体分生成工程と、
(C)工程(B)で得られたスラリーに捕収剤を加えて、スラリー中の鉛硫化物を疎水化させる鉛硫化物疎水化工程と、
(D)工程(C)で得られたスラリーを浮遊選鉱処理して、鉛硫化物を含む浮鉱と、硫酸カルシウムを含む沈鉱を得る鉛・カルシウム分離工程を含むカルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末の処理方法であって、
前記スラリー化工程(A)において、スラリー中の平均粒径が500μmを超える粗粒の生成を抑制するための粗粒化抑制処理を行うことを特徴とするカルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末の処理方法。 - 前記粗粒化抑制処理は、前記微粉末と水を混合する混合槽内で、前記微粉末と水との混合物を、回転速度200〜2,000回転/分の撹拌手段により撹拌することによって行う請求項1記載のカルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末の処理方法。
- 前記粗粒化抑制処理は、前記スラリーを磨砕処理することによって行う請求項1記載のカルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末の処理方法。
- 前記粗粒化抑制処理は、前記スラリーを湿式粉砕処理することによって行う請求項1記載のカルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末の処理方法。
- 前記粗粒化抑制処理は、前記スラリーを超音波処理することによって行う請求項1記載のカルシウム成分及び鉛成分を含有する微粉末の処理方法。
- 前記粗粒化抑制処理は、前記微粉末と水を混合する混合槽内で、前記微粉末と水との混合物を、撹拌手段により撹拌し、その後、得られたスラリーに対して、磨砕処理、湿式粉砕処理又は超音波処理のいずれかの処理をすることによって行う請求項1記載の微粉末の処理方法。
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