JP4737058B2 - 制駆動力制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車輪に機械的な制動トルクを発生させる機械制動トルク発生装置と車輪に制動トルク又は駆動トルクを発生させるモータとに対しての制駆動力制御を行う制駆動力制御装置に関する。
従来、車輌には制動力を発生させる制動力発生装置が具備されている。近年においては、その制動力発生装置として、車輪に機械的な制動トルクを発生させる機械制動トルク発生装置(例えば、油圧の力を利用して油圧制動トルクを発生させる油圧制動トルク発生装置)だけでなく、モータを回生側で使用してモータ回生トルクを発生させるものも存在する。
例えば、下記の特許文献1には、その油圧制動トルクとモータ回生トルクを1台の車輌において併用する際の技術について開示されている。この特許文献1に開示された制動制御装置は、所謂ABS(Anti−lock Brake System)制御を実行する際に、油圧制動トルクを一定に保ちつつモータ回生トルクを増減制御し、これにより車輪に必要とされる全ての制動トルク(以下、「全制動トルク」という。)を発生させている。また、この特許文献1には、要求された全制動トルクが油圧制動トルクよりも小さいときに、モータを力行側で駆動して(即ち、モータを駆動力発生装置として使用して)、その要求された全制動トルクを車輪に発生させるようにした技術についても記載されている。
尚、下記の特許文献2には、制動特性をブレーキパッドが新品のときから継続的に学習させ、ブレーキパッドが新品のときの制動特性に対して所定以上乖離するようになったときにブレーキパッドの摩耗異常と判定し、今回と最近の学習値との間の乖離が所定以上になったときにブレーキ系統の異常と判定する技術について開示されている。
また、下記の特許文献3には、通常時には各車輪の中で最も大きな車輪速度となっている車輪の車輪速度からABS制御時の車体速度の推定を行う車体速度推定装置について開示されている。
特開平5−270387号公報 特開2004−237886号公報 特開2000−108875号公報
ここで、油圧制動トルクは、油圧制動トルク発生装置の構成部品の消耗や劣化などの影響を受けて変動する。例えば、油圧制動トルクは、ブレーキパッドの摩耗やブレーキオイルの劣化等のような油圧制動トルク発生装置の経年変化、ブレーキパッドやブレーキオイルの過熱等のような油圧制動トルク発生装置の異常事態などによって低下していく。従って、一般的な制駆動力制御装置は、そのような構成部品の消耗などが無いものとして算出された油圧制動トルクを油圧制動トルク発生装置に要求するので、上記特許文献1に開示された制動制御装置においては、油圧制動トルク発生装置に対して要求された油圧制動トルクよりも実際の油圧制動トルクが低下してしまう。そして、そのような状況下でモータが力行状態で駆動されている場合には、実際の油圧制動トルクの絶対値がモータ力行トルクの絶対値よりも小さくなり、制動制御中の車輪に駆動トルクが働いて加速スリップを発生させてしまう可能性がある。これが為、その際の車輌においては、要求されたよりも減速度が低下してしまう虞がある。これと同様のことは、モータに異常が生じたときにもいえる。
そこで、本発明は、かかる従来例の有する不都合を改善し、制動力発生装置に経年変化や異常が生じても各車輪に適切な制動トルクを発生させることのできる制駆動力制御装置を提供することを、その目的とする。
上記目的を達成する為、請求項1記載の発明では、全ての車輪の機械制動トルクを個別に制御する機械制動トルク制御手段と、その車輪に発生させるモータトルクをモータ毎に制御するモータ制御手段と、運転者又は車輌から要求された車輌への目標制動力に応じた車輪への要求全制動トルクを算出して設定する要求全制動トルク設定手段と、機械制動トルク制御手段の制御要求値たる車輪への要求機械制動トルク及びモータ制御手段の制御要求値たる車輪への要求モータトルクを要求全制動トルクに基づき各々算出して設定する要求機械制動トルク設定手段及び要求モータトルク設定手段と、を備えた制駆動力制御装置において、車輌の目標制動力と実際の車輌の制動力との差が所定値を超えたときに機械制動トルク発生装置又はモータに異常ありと判定する制動装置異常判定手段と、前記車輌の目標制動力と実際の車輌の制動力とが一致するように夫々の車輪に対して所定の制動トルクを発生させるパターン制動を行うパターン制動実行手段と、を設け、この制動装置異常判定手段が異常ありと判定した際に、車輌の目標制動力と実際の車輌の制動力とが一致するよう全ての車輪に対して機械制動トルクのみで前記所定の制動トルクを発生させるパターン制動を行い、且つ、車輌の目標制動力と実際の車輌の制動力とが一致するように、各車輪の内の一輪に対して機械制動トルク及びモータトルクで前記所定の制動トルクを発生させると共に、残りの車輪に対して機械制動トルクのみで前記所定の制動トルクを発生させるパターン制動をその車輪と制動トルクの組み合わせを入れ替えて複数回行い、該全てのパターン制動における夫々の車輪間の全制動トルクの対応関係に基づいて当該各車輪の要求機械制動トルク又は前記要求モータトルクを補正することを特徴としている
例えば、その要求機械制動トルク設定手段又は要求モータトルク設定手段は、請求項2記載の発明の如く、パターン制動実行手段が行った全てのパターン制動における夫々の車輪間の全制動トルクの対応関係に基づいて当該各車輪のトルク補正値を求め、制動装置異常判定手段が異常ありと判定しているときに設定された要求機械制動トルク又は要求モータトルクをトルク補正値によって補正するよう構成する。
この請求項1又は2に記載の制駆動力制御装置によれば、構成部品の劣化やブレーキパッド等の過熱などによって油圧制動トルク発生装置の制動性能が低下したとしても、車輪の総制動力を目標値に近づけることができる。
また、上記目的を達成する為、請求項3記載の発明では、全ての車輪の機械制動トルクを個別に制御する機械制動トルク制御手段と、その車輪に発生させるモータトルクをモータ毎に制御するモータ制御手段と、運転者又は車輌から要求された車輌への目標制動力に応じた車輪への要求全制動トルクを算出して設定する要求全制動トルク設定手段と、機械制動トルク制御手段の制御要求値たる車輪への要求機械制動トルク及びモータ制御手段の制御要求値たる車輪への要求モータトルクを要求全制動トルクに基づき各々算出して設定する要求機械制動トルク設定手段及び要求モータトルク設定手段と、を備えた制駆動力制御装置において、車輌の目標制動力と実際の車輌の制動力との差が所定値を超えたときに機械制動トルク発生装置又はモータに異常ありと判定する制動装置異常判定手段と、車輌の目標制動力と実際の車輌の制動力とが一致するように各車輪の内の一輪に対してのみ機械制動トルク及びモータトルクを発生させる一方で残りの車輪に対して機械制動トルクのみを発生させるパターン制動を車輪毎に行うパターン制動実行手段と、を設け、制動装置異常判定手段が異常ありと判定した際に、パターン制動実行手段が行った全てのパターン制動における夫々の車輪間の全制動トルクの対応関係に基づいて当該各車輪の要求機械制動トルク又は要求モータトルクを補正するよう要求機械制動トルク設定手段又は要求モータトルク設定手段を構成したことを特徴としている
また、上記目的を達成する為、請求項4記載の発明では、全ての車輪の機械制動トルクを個別に制御する機械制動トルク制御手段と、その車輪に発生させるモータトルクをモータ毎に制御するモータ制御手段と、運転者又は車輌から要求された車輌への目標制動力に応じた車輪への要求全制動トルクを算出して設定する要求全制動トルク設定手段と、機械制動トルク制御手段の制御要求値たる車輪への要求機械制動トルク及びモータ制御手段の制御要求値たる車輪への要求モータトルクを要求全制動トルクに基づき各々算出して設定する要求機械制動トルク設定手段及び要求モータトルク設定手段と、を備えた制駆動力制御装置において、車輌の目標制動力と実際の車輌の制動力との差が所定値を超えたときに機械制動トルク発生装置又はモータに異常ありと判定する制動装置異常判定手段と、車輌の目標制動力と実際の車輌の制動力とが一致するように各車輪の内の少なくとも一輪と残りの車輪との間で制動力配分を変えて機械制動トルクのみを発生させる複数のパターン制動を行うパターン制動実行手段と、を設け、制動装置異常判定手段が機械制動トルク発生装置に異常ありと判定した際に、パターン制動実行手段が行った全てのパターン制動における夫々の車輪間の全制動トルクの対応関係に基づいて当該各車輪の要求機械制動トルク又は要求モータトルクを補正するよう要求機械制動トルク設定手段又は要求モータトルク設定手段を構成したことを特徴としている
ここで、この請求項4のパターン制動実行手段は、請求項5記載の発明の如く、左右輪で制動力配分を変更するパターン制動の場合、車輌の挙動の安定状態を保つことが可能な左右輪間の制動力配分を設定するように構成することが好ましい。その際、このパターン制動実行手段には、請求項6記載の発明の如く、車輌の横加速度,車輌のヨーレート若しくはステアリングホイールの操舵角又は操舵輪の転舵角の内の少なくとも1つの情報を用いて左右輪間の制動力配分を設定させればよい。
ところで、制動装置異常判定手段については、請求項7記載の発明の如く、要求機械制動トルク及び要求モータトルクを用いて求めた目標車体減速度と実際の車体減速度との差が所定値を超えたときに機械制動トルク発生装置又はモータに異常ありと判定するよう構成する。
また、請求項8記載の発明では、上記請求項1から7の内の何れか1つに記載の制駆動力制御装置において、車輪のロック傾向を検出するロック傾向検出手段と、車輪のロック解除傾向を検出するロック解除傾向検出手段と、を新たに設け、ロック傾向検出時及びロック解除傾向検出時における夫々の全制動トルクの間の値に要求機械制動トルクを設定するよう要求機械制動トルク設定手段を構成している。
この請求項8記載の制駆動力制御装置においては、車輪への全制動トルクに基づいて要求機械制動トルクを設定することとなる。これが為、要求全制動トルクから要求機械制動トルクを減算することによって求められる要求モータトルクは、モータにおける回生側及び力行側の双方の出力限界値に対して夫々に余裕代を持つことになる。即ち、この制駆動力制御装置によれば、上記請求項1から7の内の何れか1つに記載の発明に係る効果に加えて、モータトルクの制御幅を拡大することができるので、路面の摩擦係数の変化に応じた要求全制動トルクの変動に対してのモータトルクの制御範囲を拡大することができる。
本発明に係る制駆動力制御装置は、機械制動トルク発生装置やモータの制動性能低下時に各車輪の総制動力を目標値に近づけることができる(即ち、各車輪に適切な制動トルクを発生させ、目標値に対する総制動力の大幅な低下を防ぐことができる)ので、そのような状況下における車輪の加速スリップを抑えることができるようになる。従って、この制駆動力制御装置によれば、機械制動トルク発生装置に経年変化や異常が生じても、制動中に車輌の減速度を低下させずに済む。
以下に、本発明に係る制駆動力制御装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
本発明に係る制駆動力制御装置の実施例1を図1から図13に基づいて説明する。
最初に、本実施例1における制駆動力制御装置の構成について図1を用いて説明する。この図1には、本実施例1の制駆動力制御装置が適用される車輌を示している。
本実施例1の車輌には、各々の車輪10FL,10FR,10RL,10RRに夫々独立して機械的な制動トルクを発生させる機械制動トルク発生装置が設けられている。この機械制動トルク発生装置は、電子制御装置(ECU)等により構成された機械制動トルク制御手段によってその動作が制御され、所望の機械制動トルクを発生させる。例えば、本実施例1の機械制動トルク発生装置としては、油圧の力により夫々の車輪10FL,10FR,10RL,10RRに機械的な制動トルクを付与して制動力を発生させる所謂油圧ブレーキを例示する。これが為、以下においては、この機械制動トルク発生装置を「油圧制動トルク発生装置」といい、この油圧制動トルク発生装置により発生させられた機械的な制動トルク及び制動力を夫々「油圧制動トルク」及び「油圧制動力」といい、その機械制動トルク制御手段を「油圧制動トルク制御手段」という。
具体的に、ここで例示する油圧制動トルク発生装置は、夫々の車輪10FL,10FR,10RL,10RRに配設したキャリパーやブレーキパッド、ディスクロータ等からなる油圧制動手段21FL,21FR,21RL,21RRと、これら各油圧制動手段21FL,21FR,21RL,21RRのキャリパーに対して各々に油圧(即ち、ブレーキオイル)を供給する油圧配管22FL,22FR,22RL,22RRと、これら各油圧配管22FL,22FR,22RL,22RRの油圧を夫々に調節する油圧調節手段(以下、「ブレーキアクチュエータ」という。)23と、このブレーキアクチュエータ23を制御する油圧制動トルク制御手段24と、運転者が車輌の制動力発生時に操作するブレーキペダル25と、運転者によるブレーキペダル25の踏み込み操作に応じて駆動されるブレーキマスタシリンダ26と、を備えている。
更に、図示しないが、この油圧制動トルク発生装置には、ブレーキペダル25の踏み込みによって生じる圧力を増圧し、ブレーキマスタシリンダ26に入力するブースタ等も設けられている。
ここで、そのブレーキアクチュエータ23は、オイルリザーバ,オイルポンプ,夫々の油圧配管22FL,22FR,22RL,22RRの油圧を各々に増減する為の増減圧制御弁の如き種々の弁装置等を含み、所謂ABS制御を行い得るよう構成されている。その増減圧制御弁は、通常時にはブレーキマスタシリンダ26により制御されて各油圧制動手段21FL,21FR,21RL,21RRにおけるキャリパーの油圧を夫々調節する。一方、この増減圧制御弁は、必要に応じて油圧制動トルク制御手段24によってもデューティ比制御され、各油圧制動手段21FL,21FR,21RL,21RRにおけるキャリパーに掛かる油圧の調節を夫々に行う。
また、本実施例1の車輌には、各々の車輪10FL,10FR,10RL,10RRにモータ31FL,31FR,31RL,31RRが配備されている。この夫々のモータ31FL,31FR,31RL,31RRは、図1に示すモータ制御手段32によって制御され、各々の車輪10FL,10FR,10RL,10RRに対して夫々にモータトルクTmを付与する。
ここで、そのモータトルクTmには、車輪10FL,10FR,10RL,10RRに駆動力(以下、「モータ駆動力」という。)を発生させるモータ力行トルクと、車輪10FL,10FR,10RL,10RRに回生制動力(以下、「モータ回生制動力」という。)を発生させるモータ回生トルクと、が存在している。
これが為、モータ制御手段32の制御により各モータ31FL,31FR,31RL,31RRがモータ力行トルクを発生させたときには、夫々の車輪10FL,10FR,10RL,10RRにモータ駆動力が掛かり、車輌を前進又は後退させる。例えば、この車輌が電気自動車である場合には、その各モータ31FL,31FR,31RL,31RRのモータ力行トルクが車輌の動力源として利用される。また、この車輌が内燃機関等の原動機も具備している場合には、その各モータ31FL,31FR,31RL,31RRのモータ力行トルクが原動機の動力補助又は原動機との動力の切り替えに伴う動力源として利用される。この車輌においては、そのモータ力行トルクを発生させる為に、夫々のモータ31FL,31FR,31RL,31RRに対して図1に示すバッテリ33から給電される。
一方、モータ制御手段32の制御により各モータ31FL,31FR,31RL,31RRがモータ回生トルクを発生させたときには、夫々の車輪10FL,10FR,10RL,10RRにモータ回生制動力が掛かり、車輌を制動させる。その際、この車輌においては、そのモータ回生制動力により得られた電力がバッテリ33に蓄電される。
ここでのモータトルクTmは、そのモータ力行トルクを負の値とする一方、そのモータ回生トルクを正の値とする。
ところで、本実施例1の車輌には上述したが如く油圧制動トルク発生装置も具備されている。これが為、各車輪10FL,10FR,10RL,10RRに発生する夫々の全制動トルクTaは、その油圧制動トルク発生装置による各車輪10FL,10FR,10RL,10RRの油圧制動トルクToと各々のモータ31FL,31FR,31RL,31RRによる各車輪10FL,10FR,10RL,10RRのモータトルクTmとを夫々に合算したものとなる。例えば、夫々の車輪10FL,10FR,10RL,10RRに油圧制動トルクToを付与し、その各車輪10FL,10FR,10RL,10RRのモータ31FL,31FR,31RL,31RRにモータ回生トルクを発生させた場合、各車輪10FL,10FR,10RL,10RRの夫々の全制動トルクTaは、油圧制動トルクToのみで発生させたときよりも大きくなる。
ここで、車輌の制動時に各モータ31FL,31FR,31RL,31RRに対してモータ力行トルクを発生させた場合を考察してみる。かかるモータ力行トルクは、モータ回生トルクとは逆方向の回転力を車輪10FL,10FR,10RL,10RRに与えるものであり、車輌の制動力を増加させるモータ回生トルクとは逆に上述したが如く車輌の駆動力を発生させる。これが為、各車輪10FL,10FR,10RL,10RRに油圧制動トルクToが付与されているときに夫々のモータ31FL,31FR,31RL,31RRに対してモータ力行トルクを発生させると、夫々の車輪10FL,10FR,10RL,10RRにはその油圧制動トルクToに抗するモータ力行トルクが掛かり、油圧制動トルクToのみで発生させたときよりも各車輪10FL,10FR,10RL,10RRの夫々の全制動トルクTaが小さくなる。
即ち、本実施例1の車輌においては、油圧制動トルク発生装置からの各車輪10FL,10FR,10RL,10RRへの油圧制動トルクToと各モータ31FL,31FR,31RL,31RRのモータ回生トルク又はモータ力行トルクとを合算したもの夫々が各車輪10FL,10FR,10RL,10RRにおける全制動トルクTaとなる。これが為、この車輌においては、これらのトルク値を増減制御することによって夫々の車輪10FL,10FR,10RL,10RRに付与する各々の全制動トルクTaを調節し、その各車輪10FL,10FR,10RL,10RRに発生させる各々の全制動力を調節することができる。例えば、各車輪10FL,10FR,10RL,10RRに対して一定の油圧制動トルクToが付与されていると仮定し、その際に各モータ31FL,31FR,31RL,31RRからモータトルクTmを発生させると、そのモータトルク(モータ回生トルク又はモータ力行トルク)Tmに応じて夫々の車輪10FL,10FR,10RL,10RRの全制動トルクTaを増減させることができる。
このように、本実施例1の車輌においては、油圧制動トルク発生装置とモータ31FL,31FR,31RL,31RRとによって、車輌に対して制動力を発生させる制動力発生装置(以下、「車輌制動力発生装置」という。)が構成されている。これが為、本実施例1の車輌におけるABS制御は、その油圧制動トルク発生装置の油圧制動トルクToとモータ31FL,31FR,31RL,31RRのモータトルクTmとを増減制御することによって実行される。尚、そのモータ31FL,31FR,31RL,31RRは、力行側で使用された場合に、車輌に対して駆動力を発生させる駆動力発生装置(以下、「車輌駆動力発生装置」という。)として機能する。
ここで、かかるABS制御は、車輌の電子制御装置(ECU)が当該技術分野で周知の制御手法によって実行する。
例えば、この電子制御装置は、運転者がブレーキ操作を行って車輌制動力発生装置を作動させた際に夫々の車輪10FL,10FR,10RL,10RRのロック傾向の検出を行い、その何れかの車輪10FL,10FR,10RL,10RRでロック傾向が検出された時に、その該当する車輪10FL,10FR,10RL,10RRのロック傾向を解除させ得る全制動トルク(以下、「要求全制動トルク」という。)Tareqを求める。そして、この電子制御装置は、その該当する車輪10FL,10FR,10RL,10RRの全制動トルクTaが要求全制動トルクTareqとなるように車輌制動力発生装置に対する制御を実行する。この車輌においては、かかるトルク演算とトルク制御が繰り返し実行されることによって、ABS制御対象たる車輪10FL,10FR,10RL,10RRの全制動トルクTaが減少してロック傾向が解除方向へと向かう。
一方、この電子制御装置は、その該当する車輪10FL,10FR,10RL,10RRのロック解除傾向の検出も行い、ロック解除傾向が検出された時に、その車輪10FL,10FR,10RL,10RRの全制動トルクTaを増加させる要求全制動トルクTareqを求め、その全制動トルクTaが要求全制動トルクTareqとなるように車輌制動力発生装置に対する制御を実行する。ここでは、かかるトルク演算とトルク制御が繰り返し実行されることによって、ABS制御対象たる車輪10FL,10FR,10RL,10RRの全制動トルクTaが増加して当該車輪10FL,10FR,10RL,10RRの全制動力が強くなる。
この電子制御装置は、再びロック傾向を検出した時には当該ロック傾向を解除させるよう全制動トルクTaを調節して減少させ、その後、ロック解除傾向を検出した時には全制動トルクTaを増加させる。電子制御装置は、ABS制御中にこれらを繰り替えし実行する。
ところで、上述したが如く、本実施例1にあっては、車輌制動力発生装置が油圧制動トルク発生装置とモータ31FL,31FR,31RL,31RRとによって構成されており、その油圧制動トルク発生装置のブレーキアクチュエータ23とモータ31FL,31FR,31RL,31RRとが夫々に油圧制動トルク制御手段24とモータ制御手段32とにより制御される。これが為、本実施例1にあっては、その油圧制動トルク制御手段24とモータ制御手段32が上述した電子制御装置における全制動トルクTa(=To+Tm)の調節制御機能の一旦を担っている。即ち、油圧制動トルク制御手段24は、要求全制動トルクTareqを発生させる際に求めた油圧制動トルク(以下、「要求油圧制動トルク」という。)Toreqとなるよう制御対象の車輪10FL,10FR,10RL,10RRの油圧制動トルクToを制御する。一方、モータ制御手段32は、要求全制動トルクTareqを発生させる際に求めたモータトルク(以下、「要求モータトルク」という。)Tmreqとなるよう制御対象のモータ31FL,31FR,31RL,31RRのモータトルクTmを制御する。
更に、上述した電子制御装置には、車輪10FL,10FR,10RL,10RRのロック傾向やロック解除傾向の検出処理、要求全制動トルクTareqの演算処理などの如く各々の車輪10FL,10FR,10RL,10RRに対する処理機能もある。また、上記の油圧制動トルク制御手段24とモータ制御手段32により全制動トルクTaを調節する際には、油圧制動トルク制御手段24の制御パラメータたる要求油圧制動トルクToreqとモータ制御手段32の制御パラメータたる要求モータトルクTmreqとを設定する必要があり、これら要求油圧制動トルクToreq及び要求モータトルクTmreqは上述した電子制御装置が設定した要求全制動トルクTareqに基づいて下記の式1から算出される。
Figure 0004737058
このようなことから、本実施例1にあっては、かかる処理機能を有する電子制御装置(以下、「ブレーキ・モータ統合ECU」)41を設け、このブレーキ・モータ統合ECU41と上述した油圧制動トルク制御手段24とモータ制御手段32とによって、車輌制動力発生装置及び車輌駆動力発生装置に対しての制駆動力制御装置を構成している。
具体的に、この本実施例1のブレーキ・モータ統合ECU41には、各車輪10FL,10FR,10RL,10RRのロック傾向を検出するロック傾向検出手段41aと、各車輪10FL,10FR,10RL,10RRのロック解除傾向を検出するロック解除傾向検出手段41bと、が設けられている。
本実施例1のロック傾向検出手段41aとロック解除傾向検出手段41bは、制動時の各車輪10FL,10FR,10RL,10RRのスリップ率Sに基づいて、その車輪10FL,10FR,10RL,10RRがロック傾向か否か、ロック解除傾向か否かを夫々に検出するよう構成する。つまり、本実施例1においては、例えば、車輪10FL,10FR,10RL,10RRのスリップ率Sが所定値(「0」又は「0」に近い値)よりも大きい場合にその車輪10FL,10FR,10RL,10RRがスリップ状態にあると判断できるので、ロック傾向検出手段41aにはその車輪10FL,10FR,10RL,10RRがロック傾向であると検出させる。一方、車輪10FL,10FR,10RL,10RRのスリップ率Sが所定値以下の場合には、その車輪10FL,10FR,10RL,10RRがスリップしていない又はグリップし始めていると判断できるので、ロック解除傾向検出手段41bにその車輪10FL,10FR,10RL,10RRがロック解除傾向であると検出させる。
そのスリップ率Sは、ブレーキ・モータ統合ECU41に設けたスリップ率演算手段41cに演算させる。このスリップ率演算手段41cは、この技術分野において周知の演算手法によって夫々の車輪10FL,10FR,10RL,10RRのスリップ率Sを算出又は推定するよう構成されている。例えば、本実施例1のスリップ率演算手段41cは、車輪10FL,10FR,10RL,10RRの回転速度と車体速度とに基づいて夫々の車輪10FL,10FR,10RL,10RRのスリップ率Sを求める。従って、本実施例1においては、各車輪10FL,10FR,10RL,10RRの回転速度の検出を行う車輪回転速度検出手段(又はその車輪回転速度を推定する車輪回転速度推定手段)と、車体速度の検出を行う車体速度検出手段(又は車体速度を推定する車体速度推定手段)と、が必要になる。
ここで、ABS制動を行う一般的な車輌においては、各車輪10FL,10FR,10RL,10RRに設けた車輪回転速度検出手段の夫々の検出信号により車輪速度(車輪の回転速度に車輪の周長を掛けた値)の把握を行う一方で、その夫々の検出信号に基づいて車体速度を推定し、その夫々の車輪速度と車体速度との比率を求めることによって各車輪10FL,10FR,10RL,10RRのスリップ率Sが算出されている。つまり、このABS制動を行う車輌においては、一般的に車輪回転速度検出手段と車体速度推定手段とが用意されており、本実施例1においてもこれに従う。従って、本実施例1においては、その車輪回転速度検出手段として図1に示す各車輪10FL,10FR,10RL,10RR毎の車輪速度センサ51FL,51FR,51RL,51RRを車輌に配備すると共に、ブレーキ・モータ統合ECU41に図1に示す車体速度推定手段41dを設ける。この車体速度推定手段41dは、その技術分野における周知の方法によって車体速度の推定を行うものであって、ここでは各車輪10FL,10FR,10RL,10RRの中で最も大きな車輪速度となっている車輪の車輪速度からABS制御時の車体速度を推定するよう構成されている。例えば、その車体速度の推定方法としては、前述した特許文献3に記載のものが考えられる。
尚、車輪速度と車体速度が同じであれば、その車輪のスリップ率Sは、0%となる。一方、車輪においては、その車輪速度が車体速度よりも低ければ減速スリップが発生しており、車輪速度が車体速度よりも高ければ加速スリップが発生している。
更に、本実施例1のブレーキ・モータ統合ECU41には、制御対象の車輪10FL,10FR,10RL,10RRの要求全制動トルクTareqを算出して設定する要求全制動トルク設定手段41eと、その車輪10FL,10FR,10RL,10RRの要求油圧制動トルクToreqを算出して設定する要求油圧制動トルク設定手段41fと、その車輪10FL,10FR,10RL,10RRの要求モータトルクTmreqを算出して設定する要求モータトルク設定手段41gと、が設けられている。
その要求全制動トルク設定手段41eは、大別すると、通常制動時(ABS非制御時)とABS制御時とに分けて夫々に要求全制動トルクTareqの設定を行うものであり、夫々の技術分野において周知の演算手法により要求全制動トルクTareqを算出するよう構成されている。例えば、この要求全制動トルク設定手段41eには、通常制動時であれば、運転者によるブレーキペダル25の踏み込み量やブレーキ踏力、車体速度推定手段41dによって推定された推定車体速度の情報などに基づいて、夫々の車輪10FL,10FR,10RL,10RRに発生させる要求全制動トルクTareqを算出させる。また、この要求全制動トルク設定手段41eには、ABS制御時において、ロック傾向検出時を最大値にし、その後、ロック解除傾向が検出されるまで要求全制動トルクTareqを減少させる一方、ロック解除傾向検出時を最小値にし、その後、ロック傾向が検出されるまで要求全制動トルクTareqを増加させる。このABS制御時においても、この要求全制動トルク設定手段41eには、車体速度推定手段41dによって推定された推定車体速度の情報などを用いて要求全制動トルクTareqの算出を行わせる。
この要求全制動トルク設定手段41eは、そのような運転者の制動要求のみならず、例えば自動ブレーキを備えた車輌おいては車輌自身の判断による制動要求、車輌の挙動安定制御等を行う際の制動要求などに基づいて要求全制動トルクTareqを算出させるように構成してもよい。
続いて、本実施例1の要求油圧制動トルク設定手段41fについて説明する。
この要求油圧制動トルク設定手段41fについても、大別すると、通常制動時(ABS非制御時)とABS制御時とに分けて夫々に要求油圧制動トルクToreqの設定を行うものであり、夫々の技術分野において周知の演算手法により要求油圧制動トルクToreqを算出するよう構成されている。例えば、この要求油圧制動トルク設定手段41fは、ABS制御時において、要求全制動トルクTareqに基づいて要求油圧制動トルクToreqの算出を行うよう構成することができる。
具体的に、本実施例1の要求油圧制動トルク設定手段41fは、ABS制御時において、ロック傾向にある車輪10FL,10FR,10RL,10RRのロック傾向検出時の要求全制動トルク(以下、「最大全制動トルク」という。)Tamaxと当該車輪10FL,10FR,10RL,10RRのロック解除傾向が検出された際の要求全制動トルク(以下、「最小全制動トルク」という。)Taminとの間に要求油圧制動トルクToreqが設定されるよう構成する。ここで、本実施例1の要求油圧制動トルク設定手段41fには、先ず始めに要求油圧制動トルクの暫定値(以下、「暫定要求油圧制動トルク」という。)Toproを算出させ、その後に最終的な要求油圧制動トルクToreqを設定させるようにする。従って、本実施例1にあっては、例えば下記の式2を用いて、ABS制御時の暫定要求油圧制動トルクToproが最大全制動トルクTamaxと最小全制動トルクTaminの中間値となるように演算処理を行わせる。本実施例1においては、この暫定要求油圧制動トルクToproを新たな最小全制動トルクTaminが算出される度に求めさせる。
Figure 0004737058
その最大全制動トルクTamaxと最小全制動トルクTaminとしては、夫々にロック傾向検出時の暫定要求油圧制動トルクToproとロック解除傾向検出時の暫定要求油圧制動トルクToproを適用してもよく、夫々にロック傾向検出時の実際の全制動トルクTaとロック解除傾向検出時の実際の全制動トルクTaを適用してもよい。前者を適用する場合には、要求全制動トルク設定手段41eによる算出値を使用して最大全制動トルクTamaxと最小全制動トルクTaminを求める。一方、後者を適用する場合には、実際の全制動トルクTaを求めることができるようにブレーキ・モータ統合ECU41を構築する必要がある。従って、後者を適用する場合には、実際の全制動トルクTaの算出を行う実全制動トルク演算手段41hをブレーキ・モータ統合ECU41に設けておく。
例えば、その実全制動トルク演算手段41hは、各車輪速度センサ51FL,51FR,51RL,51RRからの検出信号(車輪の回転速度)に基づき夫々の車輪10FL,10FR,10RL,10RRにおいて実際に発生している全制動トルクTaの算出を各々行うように構成する。この実全制動トルク演算手段41hにより求められた全制動トルクTaは、ロック傾向検出時のものであれば最大全制動トルクTamaxとなり、ロック解除傾向検出時のものであれば最小全制動トルクTaminとなる。
ここで、上記式2を用いた暫定要求油圧制動トルクToproの演算処理は、最新の最大全制動トルクTamaxと最小全制動トルクTaminが算出される度に(即ち、ロック解除傾向が検出されて新たな最小全制動トルクTaminが算出される度に)実行させる。つまり、本実施例1の要求油圧制動トルク設定手段41fには、新たな最小全制動トルクTaminが算出されるまで油圧制動トルク制御手段24の制御要求値たる要求油圧制動トルクToreqを上記の中間値に保持させ、その新たな最小全制動トルクTaminが算出されたときに式2を用いて新たな中間値へと要求油圧制動トルクToreqの更新を行わせる。これが為、この要求油圧制動トルク設定手段41fについては、ABS制御時において新たな最小全制動トルクTaminが算出されるまで先に設定した要求油圧制動トルク(以下、「要求油圧制動トルク既算値」という。)Toreqを暫定要求油圧制動トルクToproとして設定するよう構成しておく。従って、その要求油圧制動トルク既算値Toreqは、主記憶装置等に記憶しておくことが好ましい。
続いて、本実施例1の要求モータトルク設定手段41gについて説明する。
この要求モータトルク設定手段41gについても、大別すると、通常制動時(ABS非制御時)とABS制御時とに分けて夫々に要求モータトルクTmreqの設定を行うものであり、夫々の技術分野において周知の演算手法により要求モータトルクTmreqを算出するよう構成されている。
ここで、本実施例1の要求モータトルク設定手段41gには、上述した要求油圧制動トルク設定手段41fと同様に、先ず始めに要求モータトルクの暫定値(以下、「暫定要求モータトルク」という。)Tmproを算出させ、その後に最終的な要求モータトルクTmreqを設定させるようにする。従って、本実施例1の要求モータトルク設定手段41gは、ABS制御時において、例えば上記の如く求めた要求全制動トルクTareqと暫定要求油圧制動トルクToproとを下記の式3(上述した式1の変形式)に代入し、これにより暫定要求モータトルクTmproの算出を行うよう構成する。尚、この式3では、式1の「Toreq」を「Topro」に、「Tmreq」を「Tmpro」に置き換えている。
Figure 0004737058
このように、上述した要求油圧制動トルク設定手段41fと要求モータトルク設定手段41gは、ABS制御時に要求全制動トルクTareqの変化に従って演算結果を導き出すものであり、その要求全制動トルクTareqの変化に応じた暫定要求油圧制動トルクTopro及び暫定要求モータトルクTmproの変化態様,換言すれば、要求全制動トルクTareqの変化に応じた要求油圧制動トルクToreq及び要求モータトルクTmreqの変化態様を求める手段であるといえる。
更に、夫々のモータ31FL,31FR,31RL,31RRにはモータトルクTmの出力限界値(以下、「モータトルク出力限界値」という。)Tmlimがあり、このモータトルク出力限界値Tmlim以上のモータトルクTmを出力させることはできない。従って、要求油圧制動トルク設定手段41fと要求モータトルク設定手段41gは、そのモータトルク出力限界値Tmlimと暫定要求モータトルクTmproとの比較結果に応じてABS制御中の要求油圧制動トルクToreqと要求モータトルクTmreqの設定を夫々に行うよう構成する。
具体的に、本実施例1の要求モータトルク設定手段41gには、先ず、ABS制御対象の車輪10FL,10FR,10RL,10RRにおけるモータ31FL,31FR,31RL,31RRのモータトルク出力限界値Tmlimを算出させる。このモータトルク出力限界値Tmlimは、モータ回転数や車輪速度に一意に対応するものであり、図2に示す如く回生側と力行側との双方で個別の値が存在している。これが為、以下においては、その回生側のモータトルク出力限界値Tmlimを「モータ回生トルク出力限界値Tm1lim」といい、その力行側のモータトルク出力限界値Tmlimを「モータ力行トルク出力限界値Tm2lim」という。ここでは、そのモータ回生トルク出力限界値Tm1limを正の値とし、そのモータ力行トルク出力限界値Tm2limを負の値とする。
本実施例1の要求油圧制動トルク設定手段41fと要求モータトルク設定手段41gは、暫定要求モータトルクTmproがモータ回生トルク出力限界値Tm1limよりも低い又はモータ力行トルク出力限界値Tm2limよりも高ければ、算出された暫定要求油圧制動トルクToproと暫定要求モータトルクTmproを夫々に最終的な要求油圧制動トルクToreqと要求モータトルクTmreqとして設定させるよう構成する。
一方、その要求モータトルク設定手段41gは、暫定要求モータトルクTmproがモータ回生トルク出力限界値Tm1lim以上又はモータ力行トルク出力限界値Tm2lim以下であれば、そのモータ回生トルク出力限界値Tm1lim又はモータ力行トルク出力限界値Tm2limを最終的な要求モータトルクTmreqとして設定させるよう構成する。これが為、要求油圧制動トルク設定手段41fには、そのようにして設定した要求モータトルクTmreqに基づいて求めたものを最終的な要求油圧制動トルクToreqとして設定させる。従って、この要求油圧制動トルク設定手段41fは、かかる場合に、その設定された要求モータトルクTmreq(=Tm1lim又はTm2lim)と要求全制動トルクTareqを下記の式4(上述した式1の変形式)に代入して要求油圧制動トルクToreqの算出を行うよう構成されている。
Figure 0004737058
以下に、上述したが如く構成した本実施例1の制駆動力制御装置の動作について図3及び図4のフローチャート及び図5のタイムチャートに基づき説明する。この図3及び図4のフローチャートと図5のタイムチャートは、各車輪10FL,10FR,10RL,10RRの内の何れか1輪に対しての制御動作を示したものであり、これと同様の制御動作が全ての車輪10FL,10FR,10RL,10RRに対して別個独立に実行される。例えば、ここでは、左側前輪10FLについて代表して例示する。
尚、ABS制御を開始するまでは、図5に示す如く、例えば、運転者によるブレーキペダル25の踏み込み量や踏力、車体速度推定手段41dにより推定された車体速度などに基づいて夫々の車輪10FL,10FR,10RL,10RRに発生させる要求全制動トルクTareqが各々算出される。そして、その各車輪10FL,10FR,10RL,10RRの夫々の全制動トルクTaに対する運転者のブレーキ踏力に応じた要求油圧制動トルクToreqの不足分が補填されるように、夫々のモータ31FL,31FR,31RL,31RRの要求モータトルクTmreqが設定される。
また、本実施例1の制駆動力制御装置は、ABS制御開始直後からロック解除傾向が検出されるまで(即ち、後述する最小全制動トルクTaminが算出されるまで)の間において周知のABS制御を実行させる。例えば、その間においては、図5に示す如く、各車輪10FL,10FR,10RL,10RRの夫々の全制動トルクTaを減少させるよう要求全制動トルクTareqが設定される。そして、その各車輪10FL,10FR,10RL,10RRへの要求油圧制動トルクToreqをABS制御開始時点における値に固定し、要求全制動トルクTareqに応じて減少させた夫々のモータ31FL,31FR,31RL,31RRの要求モータトルクTmreqを設定する。
先ず、本実施例1のブレーキ・モータ統合ECU41は、左側前輪10FLがABS制御を実行中であるか否かを判断し(ステップST10)、ABS制御中でなければ、この判断を繰り返す。
一方、ABS制御中であれば、このブレーキ・モータ統合ECU41は、その要求全制動トルク設定手段41eにより、先に車体速度推定手段41dによって推定された推定車体速度の情報などを用いて左側前輪10FLの要求全制動トルクTareqを算出し(ステップST15)、ロック傾向検出手段41aの検出結果に基づいて左側前輪10FLがロック傾向にあるか否かを判定する(ステップST20)。その判定の際、このブレーキ・モータ統合ECU41においては、左側前輪10FLの車輪速度センサ51FLから検出された車輪速度と先に車体速度推定手段41dによって推定された推定車体速度とに基づいてスリップ率演算手段41cが左側前輪10FLのスリップ率Sを求め、このスリップ率Sを参考にして左側前輪10FLがロック傾向にあるか否かをロック傾向検出手段41aが判定する。
そして、このブレーキ・モータ統合ECU41は、そのステップST20にて肯定判定が為された場合、その実全制動トルク演算手段41hにより、このロック傾向検出時における上記ステップST15で求めた左側前輪10FLの要求全制動トルクTareq(最大全制動トルクTamax)を算出する(ステップST25)。本実施例1にあっては、その求めた最大全制動トルクTamaxをブレーキ・モータ統合ECU41の主記憶装置等に記憶させておく。この記憶された最大全制動トルクTamaxは、新たな最大全制動トルクTamaxが算出されるまで保持され、新たな最大全制動トルクTamaxが算出された後にこれと置き換えられる。
このブレーキ・モータ統合ECU41は、しかる後、又はそのステップST20にて否定判定が為された場合に、ロック解除傾向検出手段41bの検出結果に基づいて左側前輪10FLがロック解除傾向にあるか否かを判定する(ステップST30)。この判定の際にも、このブレーキ・モータ統合ECU41においては、スリップ率演算手段41cが上記の如くして左側前輪10FLのスリップ率Sを求め、このスリップ率Sを参考にして左側前輪10FLがロック解除傾向にあるか否かをロック解除傾向検出手段41bが判定する。
そして、このブレーキ・モータ統合ECU41は、そのステップST30にて肯定判定が為された場合、その実全制動トルク演算手段41hにより、このロック解除傾向検出時における上記ステップST15で求めた左側前輪10FLの要求全制動トルクTareq(最小全制動トルクTamin)を算出する(ステップST35)。本実施例1にあっては、その最小全制動トルクTaminを最大全制動トルクTamaxと同様にブレーキ・モータ統合ECU41の主記憶装置等に記憶させておく。この記憶された最小全制動トルクTaminは、新たな最小全制動トルクTaminが算出されるまで保持され、新たな最小全制動トルクTaminが算出された後にこれと置き換えられる。
このブレーキ・モータ統合ECU41は、しかる後、又はそのステップST30にて否定判定が為された場合に、左側前輪10FLのモータ31FLのモータトルク出力限界値Tmlimを算出する(ステップST40)。ここでは、モータ回生トルク出力限界値Tm1limとモータ力行トルク出力限界値Tm2limの双方が求められる。
続いて、このブレーキ・モータ統合ECU41は、主記憶装置等に左側前輪10FLの最小全制動トルクTaminに関する最新の情報の有無(換言すれば、先のステップST35にて最小全制動トルクTaminの情報が置き換えられたか否か)を判断する(ステップST45)。
そして、このブレーキ・モータ統合ECU41は、最新の最小全制動トルクTaminが存在していれば、その要求油圧制動トルク設定手段41fにより、上記ステップST25,ST35で夫々に求めた左側前輪10FLの最大全制動トルクTamaxと最小全制動トルクTaminを前述した式2に代入し、左側前輪10FLの暫定要求油圧制動トルクToproを算出する(ステップST50)。
一方、次のロック解除傾向が検出されるまで(即ち、新たな最小全制動トルクTaminが算出されるまで)は、上記ステップST45にて否定判定が為される。ここで、少なくとも一度本演算処理を最後まで行って要求油圧制動トルクToreqと要求モータトルクTmreqを設定した場合には、その要求油圧制動トルクToreqが要求油圧制動トルク既算値Toreqとして主記憶装置等に記憶させている。これが為、次に上記ステップST45にて肯定判定されるまでの間においては、要求油圧制動トルク設定手段41fが既に設定されている左側前輪10FLの要求油圧制動トルク既算値Toreqを左側前輪10FLの暫定要求油圧制動トルクToproとして設定する(ステップST55)。
そのステップST50又はステップST55を経た後、このブレーキ・モータ統合ECU41の要求モータトルク設定手段41gは、そのステップST50又はステップST55で求めた左側前輪10FLの暫定要求油圧制動トルクToproと上記ステップST15で求めた左側前輪10FLの要求全制動トルクTareqとを前述した式3に代入し、左側前輪10FLにおけるモータ31FLの暫定要求モータトルクTmproを算出する(ステップST60)。
続いて、このブレーキ・モータ統合ECU41は、左側前輪10FLの要求油圧制動トルクToreqと要求モータトルクTmreqの設定を行う(ステップST65)。以下に、本実施例1における要求油圧制動トルクToreqと要求モータトルクTmreqの設定動作について図4のフローチャートを用いて詳述する。
先ず、本実施例1のブレーキ・モータ統合ECU41は、上記ステップST60で求めた暫定要求モータトルクTmproが上記ステップST40で求めたモータ回生トルク出力限界値Tm1lim以上であるか否か判定する(ステップST110)。
ここで、そのステップST110にて否定判定が為された場合、次に、このブレーキ・モータ統合ECU41は、その暫定要求モータトルクTmproがステップST40で求めたモータ力行トルク出力限界値Tm2lim以下であるか否か判定する(ステップST115)。
そして、このステップST115にて否定判定が為された場合、このブレーキ・モータ統合ECU41の要求油圧制動トルク設定手段41fは、上記ステップST50又は上記ステップST55で設定した暫定要求油圧制動トルクToproを左側前輪10FLの要求油圧制動トルクToreqとして設定する(ステップST120)。更に、このブレーキ・モータ統合ECU41の要求モータトルク設定手段41gは、上記ステップST60で求めた暫定要求モータトルクTmproを左側前輪10FLの要求モータトルクTmreqとして設定する(ステップST125)。これにより、左側前輪10FLにおいては、要求油圧制動トルクToreqが最大全制動トルクTamaxと最小全制動トルクTaminの中間値に設定される。
一方、上記ステップST110にて肯定判定が為された場合、要求モータトルク設定手段41gは、モータ回生トルク出力限界値Tm1limを左側前輪10FLの要求モータトルクTmreqとして設定する(ステップST130)。また、上記ステップST115にて肯定判定が為された場合、その要求モータトルク設定手段41gは、モータ力行トルク出力限界値Tm2limを左側前輪10FLの要求モータトルクTmreqとして設定する(ステップST135)。
そして、要求油圧制動トルク設定手段41fは、そのステップST130又はステップST135で設定した要求モータトルクTmreqと上記ステップST15で求めた要求全制動トルクTareqを上述した式4に代入して要求油圧制動トルクToreqの算出を行う(ステップST140)。
このようにして左側前輪10FLの要求油圧制動トルクToreqと要求モータトルクTmreqの設定が行われた後、本実施例1のブレーキ・モータ統合ECU41は、後述する油圧ブレーキ異常判定フラグ「ON」が立てられているのか否かを判定する(ステップST70)。ここでは、その油圧ブレーキ異常判定フラグ「ON」が立てられていない(即ち、後述するような油圧制動トルク発生装置の制動性能が低下していない)ものとする。
従って、このブレーキ・モータ統合ECU41は、油圧制動トルク制御手段24とモータ制御手段32に対して、上記ステップST65で設定した要求油圧制動トルクToreqと要求モータトルクTmreqを夫々左側前輪10FLに発生させるよう指示する(ステップST75)。具体的に、このブレーキ・モータ統合ECU41は、下記の式5に基づいて左側前輪10FLの油圧制動手段21FLが要求油圧制動トルクToreqを発生させる為に必要な油圧Poを求めると共に、下記の式6に基づいて左側前輪10FLのモータ31FLが要求モータトルクTmreqを発生させる為に必要な電圧Vmを求め、その夫々を油圧制動トルク制御手段24とモータ制御手段32に対して指示する。その式5の「C1new-n{n=FL(FR,RL,RR)}」は、要求油圧制動トルクToreqを発生させるに要する油圧制動手段21FL,21FR,21RL,21RRの油圧Poを求める為の変換係数(以下、「油圧変換係数」という。)であり、油圧制動トルク発生装置固有の値として予め設定しておくことができる。また、その式6の「C2new-n{n=FL(FR,RL,RR)}」は、要求モータトルクTmreqを発生させるに要するモータ31FL,31FR,31RL,31RRへの電圧Vmを求める為の変換係数(以下、「電流変換係数」という。)であり、モータ31FL,31FR,31RL,31RR固有の値として予め設定しておくことができる。
Figure 0004737058
Figure 0004737058
これにより、その油圧制動トルク制御手段24は、ブレーキアクチュエータ23に対して左側前輪10FLにおける油圧制動手段21FLの油圧を調節させ、この油圧制動手段21FLからの油圧制動トルクToが要求油圧制動トルクToreqとなるように制御する。また、そのモータ制御手段32は、左側前輪10FLにおけるモータ31FLからのモータトルクTmが要求モータトルクTmreqとなるように制御する。
このブレーキ・モータ統合ECU41は、上述した演算処理と判定処理をABS制御実行中に繰り返す。そして、このブレーキ・モータ統合ECU41は、要求モータトルクTmreqがモータ回生トルク出力限界値Tm1limとモータ力行トルク出力限界値Tm2limとの間にある限り、新たな最大全制動トルクTamaxと最小全制動トルクTaminとの中間値に要求油圧制動トルクToreqを設定する。更に、このブレーキ・モータ統合ECU41は、新たな最大全制動トルクTamaxと最小全制動トルクTaminが求められるまでは要求油圧制動トルクToreqを先の算出値(先の最大全制動トルクTamaxと最小全制動トルクTaminとの中間値)のまま保持する。つまり、この制駆動力制御装置においては、新たな最大全制動トルクTamaxと最小全制動トルクTaminが求められるまでは、要求モータトルクTmreqがモータ回生トルク出力限界値Tm1limとモータ力行トルク出力限界値Tm2limとの間にある限り、図5に示す如く油圧制動トルクToを一定の値(先の最大全制動トルクTamaxと最小全制動トルクTaminとの中間値)に保ちながらモータトルクTmを増減させることによって全制動トルクTaを発生させる。そして、この制駆動力制御装置においては、新たな最大全制動トルクTamaxと最小全制動トルクTaminが得られたときに油圧制動トルクToを新たな値(新たな最大全制動トルクTamaxと最小全制動トルクTaminとの中間値)へと更新させる。
ここで、油圧制動トルクToの増減制御は、モータ31FL,31FR,31RL,31RRのモータトルクTmを増減制御する場合に比べて、そのトルク値の出力精度や応答性に劣る。これが為、要求油圧制動トルクToreqの更新を頻繁に実行することは好ましくない。
そこで、本実施例1の要求油圧制動トルク設定手段41fは、可能な限り要求油圧制動トルクToreqの更新処理を実行させないように構成する。具体的に、ここでは、その要求油圧制動トルクToreqの更新処理の要否を判断する閾値(以下、「要求油圧制動トルク更新判断閾値」という。)を設定し、これと後述する暫定要求モータトルクTmproとを比較させるよう要求油圧制動トルク設定手段41fを構成する。
その要求油圧制動トルク更新判断閾値としては、各モータ31FL,31FR,31RL,31RRの後述するモータトルク出力限界値Tmlim(モータ回生トルク出力限界値Tm1lim、モータ力行トルク出力限界値Tm2lim)に対して夫々に所定の余裕代(モータ余裕トルク)を持たせたモータトルクTmの値を用いる。この要求油圧制動トルク更新判断閾値Tmbは、モータトルク出力限界値Tmlimに対する所定の割合により求められた値として定めてもよく、モータトルク出力限界値Tmlimから所定の余裕代を減算した値として定めてもよい。
例えば、ここでは、図7に示す如く、モータ回生トルク出力限界値Tm1limから力行側へと所定の余裕代を持たせた値を回生側の要求油圧制動トルク更新判断閾値(以下、「回生側要求油圧制動トルク更新判断閾値」という。)Tm1bとして設定し、モータ力行トルク出力限界値Tm2limから回生側へと所定の余裕代を持たせた値を力行側の要求油圧制動トルク更新判断閾値(以下、「力行側要求油圧制動トルク更新判断閾値」という。)Tm2bとして設定する。ここでは、その回生側要求油圧制動トルク更新判断閾値Tm1bを正の値とし、力行側要求油圧制動トルク更新判断閾値Tm2bを負の値とし、夫々の絶対値が同一となるようにしている。
ここでは、暫定要求モータトルクTmproが回生側要求油圧制動トルク更新判断閾値Tm1bと力行側要求油圧制動トルク更新判断閾値Tm2bとの間にある限り、要求油圧制動トルクToreqを更新させずに先に式2から求めた中間値に保ち続けさせる。
一方、その暫定要求モータトルクTmproが回生側要求油圧制動トルク更新判断閾値Tm1b以上になった場合、又は力行側要求油圧制動トルク更新判断閾値Tm2b以下になった場合には、要求油圧制動トルクToreqを更新させる。これが為、この場合の要求油圧制動トルク設定手段41fは、そのような状況になった後、新たな最小全制動トルクTaminが算出された際に、主記憶装置等に記憶されている要求油圧制動トルク既算値Toreqを削除するよう構成しておく。
この場合の制駆動力制御装置は、上述した図3のフローチャートのステップST65における要求油圧制動トルクToreqと要求モータトルクTmreqの設定動作を以下の図6のフローチャートに示す如く変更したものである。
先ず、この場合のブレーキ・モータ統合ECU41は、その要求油圧制動トルク設定手段41fにより、左側前輪10FLのモータ31FLについての要求油圧制動トルク更新判断閾値Tmbを算出する(ステップST210)。ここでは、その要求油圧制動トルク更新判断閾値Tmbとして回生側要求油圧制動トルク更新判断閾値Tm1bと力行側要求油圧制動トルク更新判断閾値Tm2bとが求められる。
そして、その要求油圧制動トルク設定手段41fは、上記ステップST60で求めた暫定要求モータトルクTmproが上記ステップST210で求めた回生側要求油圧制動トルク更新判断閾値Tm1b以上であるか否か判定する(ステップST215)。
このステップST215にて否定判定が為された場合、次に、要求油圧制動トルク設定手段41fは、その暫定要求モータトルクTmproが上記ステップST210で求めた力行側要求油圧制動トルク更新判断閾値Tm2b以下であるか否か判定する(ステップST220)。
そして、このステップST220にて否定判定が為された場合、この要求油圧制動トルク設定手段41fは、主記憶装置等に左側前輪10FLの要求油圧制動トルク既算値Toreqが記憶されているか否か判定する(ステップST225)。
ここで、その要求油圧制動トルク既算値Toreqが存在していなければ、この要求油圧制動トルク設定手段41fは、上記ステップST50で求めた暫定要求油圧制動トルクToproを左側前輪10FLの要求油圧制動トルクToreqとして設定し(ステップST230)、更に、要求モータトルク設定手段41gは、上記ステップST60で求めた暫定要求モータトルクTmproを左側前輪10FLの要求モータトルクTmreqとして設定する(ステップST235)。これにより、図7に示す如く、左側前輪10FLの要求油圧制動トルクToreqが最大全制動トルクTamaxと最小全制動トルクTaminの中間値に設定される。ここでは、主記憶装置等に未だ要求油圧制動トルクToreqの情報(要求油圧制動トルク既算値Toreq)が存在していなければ、その新たに設定された要求油圧制動トルクToreqを要求油圧制動トルク既算値Toreqとして主記憶装置等に記憶させ、既に要求油圧制動トルクToreqの情報が存在していれば、その新たな要求油圧制動トルクToreqへと要求油圧制動トルク既算値Toreqを置き換える。
尚、その主記憶装置等に記憶された要求油圧制動トルク既算値Toreqは、上記ステップST215にて暫定要求モータトルクTmproが回生側要求油圧制動トルク更新判断閾値Tm1b以上になった場合、又は上記ステップST220にて力行側要求油圧制動トルク更新判断閾値Tm2b以下になった場合で、その後、新たな最小全制動トルクTaminが算出された際に要求油圧制動トルク設定手段41fに削除させるものとする。
一方、上記ステップST225にて要求油圧制動トルク既算値Toreqが存在していれば、要求油圧制動トルク設定手段41fは、その要求油圧制動トルク既算値Toreqを左側前輪10FLの要求油圧制動トルクToreqとして設定する(ステップST240)。そして、要求モータトルク設定手段41gは、その要求油圧制動トルクToreqとステップST15で求めた左側前輪10FLの要求全制動トルクTareqを下記の式7に代入して要求モータトルクTmreqの設定を行う(ステップST245)。これにより、図7に示す如く、新たな最小全制動トルクTaminが求められたとしても、要求油圧制動トルクToreqが前回から更新されない。
Figure 0004737058
更に、上記ステップST215にて肯定判定が為された場合、要求油圧制動トルク設定手段41fは、暫定要求モータトルクTmproがモータ回生トルク出力限界値Tm1lim以上であるか否か判定する(ステップST250)。また、上記ステップST220にて肯定判定が為された場合、その要求油圧制動トルク設定手段41fは、その暫定要求モータトルクTmproがモータ力行トルク出力限界値Tm2lim以下であるか否か判定する(ステップST255)。
そして、この要求油圧制動トルク設定手段41fは、そのステップST250又はステップST255にて否定判定が為された場合に上記ステップST225へと進み、要求油圧制動トルク既算値Toreqの有無に応じて要求油圧制動トルクToreqを設定する。これにより、かかる場合には、モータトルクTmがモータ回生トルク出力限界値Tm1lim又はモータ力行トルク出力限界値Tm2limに達するまで、回生側要求油圧制動トルク更新判断閾値Tm1b又は力行側要求油圧制動トルク更新判断閾値Tm2bを超えて要求モータトルクTmreqが設定される。そして、かかる場合には、次に最小全制動トルクTaminが算出された際に、新たな最大全制動トルクTamaxと最小全制動トルクTaminの中間値に要求油圧制動トルクToreqが更新される。
ここで、上記ステップST250又はステップST255にて肯定判定が為された場合には、モータトルクTmを増減制御させるのみで要求全制動トルクTareqに対応しきれない。例えば、車輌が走行している路面の摩擦係数(路面μ)が変化すると、モータトルクTmがモータトルク出力限界値Tmlimに達してしまい、そのモータトルクTmを増減させるのみでは路面の摩擦係数の変化に伴い急変する要求全制動トルクTareqを発生させることができなくなってしまう。
そこで、かかる場合には、要求全制動トルクTareqの不足分又は余剰分について油圧制動トルクToを変化させることで対応させる。
具体的に、上記ステップST250にて肯定判定が為された場合、要求モータトルク設定手段41gは、モータ回生トルク出力限界値Tm1limを左側前輪10FLの要求モータトルクTmreqとして設定する(ステップST260)。また、上記ステップST255にて肯定判定が為された場合、その要求モータトルク設定手段41gは、モータ力行トルク出力限界値Tm2limを左側前輪10FLの要求モータトルクTmreqとして設定する(ステップST265)。
そして、要求油圧制動トルク設定手段41fは、そのステップST260又はステップST265で設定した左側前輪10FLの要求モータトルクTmreqとステップST15で求めた左側前輪10FLの要求全制動トルクTareqとを上述した式4に代入して要求油圧制動トルクToreqを算出する(ステップST270)。
このようにして左側前輪10FLの要求油圧制動トルクToreqと要求モータトルクTmreqの設定が行われた後、この場合のブレーキ・モータ統合ECU41は、上記と同様にステップST70へと進んで後述する油圧ブレーキ異常判定フラグ「ON」が立てられているのか否かの判定を行う。ここでも、その油圧ブレーキ異常判定フラグ「ON」が立てられていないものとする。
従って、ここでのブレーキ・モータ統合ECU41についても、上記ステップST75に進み、油圧制動トルク制御手段24とモータ制御手段32に対して上記ステップST65で設定した要求油圧制動トルクToreqと要求モータトルクTmreqを夫々左側前輪10FLに発生させるよう指示する。
この場合にも、ブレーキ・モータ統合ECU41は、上述した演算処理と判定処理をABS制御実行中に繰り返す。そして、このブレーキ・モータ統合ECU41は、要求モータトルクTmreqが回生側要求油圧制動トルク更新判断閾値Tm1bと力行側要求油圧制動トルク更新判断閾値Tm2bとの間にある限り、最大全制動トルクTamaxと最小全制動トルクTaminの中間値に要求油圧制動トルクToreqを設定し、新たな最大全制動トルクTamaxと最小全制動トルクTaminが求められたとしても要求油圧制動トルクToreqを更新させない。つまり、要求油圧制動トルクToreq(油圧制動トルクTo)は、上述したような所定の条件を満たさない限り図7に示す如く一定の値に保持される。
ところで、上述した油圧制動トルク発生装置は、定期的に部品交換などの必要な整備を行っていたとしても、必ずしも新品時又は交換直後の制動性能を長期に渡って常に維持し続けることができない。例えば、油圧制動トルクToは、ブレーキパッドなどの摩擦材の摩耗や油圧配管(通常はゴム材料により成形されている)などの構成部品の劣化が進むにつれて低下していく。つまり、この油圧制動トルク発生装置は、その構成部品が使用開始直後から消耗し始め、また、使用や経年変化などに伴い劣化するので、各車輪10FL,10FR,10RL,10RRに対して所期の(即ち、新品時又は交換直後に発生している)油圧制動トルクToを働かせることができない。更に、この油圧制動トルク発生装置においては、ブレーキパッドやブレーキロータの過熱によって油圧制動トルクToの急激な低下(所謂フェード現象)が起こり、また、ブレーキオイルの過熱や劣化によっても油圧制動トルクToの急激な低下(所謂ベーパーロック現象)が起こってしまう。
従って、このような理由による油圧制動トルクToの低下が起きているときには、図8に示す如く、要求油圧制動トルク設定手段41fにより設定された要求油圧制動トルクToreqに対して実際の油圧制動トルクToが低くなってしまい、その際にモータ31FL,31FR,31RL,31RRが力行状態で駆動されると、実際の油圧制動トルクToの絶対値がモータ力行トルクTmの絶対値よりも小さくなり、制動制御中の車輪10FL,10FR,10RL,10RRに駆動トルクが働いて加速スリップを発生させてしまう可能性がある。そして、これにより、車輌の減速度を著しく低下させてしまう虞がある。
そこで、本実施例1においては、そのような経年変化や異常を起因とした油圧制動トルク発生装置の制動性能の低下が起こっているか否かについて判定を行う制動装置異常判定手段41iをブレーキ・モータ統合ECU41に設ける。
尚、ここでは、各車輪10FL,10FR,10RL,10RRのモータ31FL,31FR,31RL,31RRに何らの不具合も生じていないものとしている。
ここで、車輌の制動力については、厳密に言えば、乗員や荷物の増減、路面勾配θRの変化などの影響を受ける。つまり、例えば、乗員や荷物の増加によって慣性が大きくなるので、車輌総重量(ここでは、車輌や油脂類のみならず、乗員や荷物なども含むものとする。)Mの増加に伴って制動距離が増える。また、路面勾配θRが大きくなるほどに重力の影響を受けて車輌の加速度が増加するので、路面勾配θRが大きくなるにつれて制動距離が増える。このようなことから、制動距離が増えたからといって直ぐに油圧制動トルク発生装置の制動性能が低下したと結論づけることは難しい。これが為、本実施例1の制動装置異常判定手段41iには、車輌総重量Mと路面勾配θRを考慮に入れて油圧制動トルク発生装置の制動性能の低下の有無の判定(油圧ブレーキ異常判定)を実行させる。
本実施例1においては、車輌総重量Mの推定を行う車輌総重量推定手段41jをブレーキ・モータ統合ECU41に設ける。油圧制動トルク発生装置の制動性能が低下している場合には、要求油圧制動トルクToreqに対する実際の油圧制動トルクToが低くなるので、その要求油圧制動トルクToreqに応じた車体減速度よりも実際の車体減速度が低くなる。これが為、車輌の減速中には正確な車輌総重量Mを求めることが出来ない可能性があるので、この車輌総重量推定手段41jには、車輌が加速しているときに車輌総重量Mの推定を行わせる。具体的に、ここでは、モータ31FL,31FR,31RL,31RRが力行状態で駆動しているときに車輌総重量(以下、「モータ加速時推定車輌総重量」という。)Mmを推定させる。
例えば、本実施例1の車輌総重量推定手段41jには、図9のフローチャートに示す如く、車輌が直進加速状態か否かを判断させ、直進加速状態のときにのみモータ加速時推定車輌総重量Mmの推定を行わせる。
ここでは、先ず、車体速度Vが所定値Aを超えているのか否かについて判断する(ステップST310)。その車体速度Vは、車体速度推定手段41dによって推定されたものであってもよく、また、車輌に搭載されているのであれば車速センサ(図示略)によって検出されたものであってもよい。また、その所定値Aは、車輌の加速状態を判断する為の1つの条件値であり、少なくとも「0km/h」よりも大きな値であればよい。尚、このステップST310にて否定判定が為された場合には、現状ではモータ加速時推定車輌総重量Mmを推定できないものと判断し、モータ加速時推定車輌総重量演算完了フラグ「OFF」を立てさせる(ステップST340)。
車輌総重量推定手段41jは、そのステップST310にて肯定判定された場合、次に、車輌が減速状態にあるのか否かをブレーキOFFか否かの情報に基づいて判断する(ステップST315)。例えば、かかる判断は、ブレーキペダル25の踏み込みによる位置(又は移動量)を検出可能なペダル位置検出センサ52の出力信号を利用して行う。このペダル位置検出センサ52は、例えば、運転者がブレーキペダル25を操作することによりブレーキON信号と共にペダル位置信号を出力し、ブレーキペダル25が操作されなければブレーキOFF信号を出力する。従って、この車輌総重量推定手段41jには、ブレーキON信号が検知されているとき(このステップST315にて否定判定されたとき)に車輌が減速状態にあると判断させ、本推定演算処理を一旦終了させる。尚、このステップST315にて肯定判定されたとしても定常走行している可能性を捨てることができないので、未だ車輌が加速中であるとは判断させない。
車輌総重量推定手段41jは、そのステップST315にて肯定判定された場合、次に、車輌が直進状態にあるのか旋回状態にあるのかを判断する(ステップST320)。ここでは、ステアリングホイール(図示略)の操舵角θSTが所定の範囲内にあるか否か(つまり、その操舵角θSTの絶対値が所定値Bよりも小さいか否か)を判断することによって、車輌が直進状態か旋回状態かの判断を行う。その操舵角θSTについて、例えば、ステアリングシャフト(図示略)上に設けた操舵角センサ53の検出信号から知ることができる。また、その所定値Bは、車輌の直進状態を判断する為の条件値であり、例えば、ステアリングホイールの遊び(操舵輪を転舵させない操舵角θSTの範囲)の上限値などを利用する。従って、この車輌総重量推定手段41jには、その操舵角θSTの絶対値が所定値B以上のときに車輌が旋回状態にあると判断させ、本推定演算処理を一旦終了させる。尚、このステップST320の判断は、操舵輪の転舵角に基づいて行わせてもよく、例えば、その転舵角が「0度」であれば直進状態と判断させ、その転舵角が「0度」よりも大きければ旋回状態と判断させる。
車輌総重量推定手段41jは、そのステップST320にて肯定判定された場合、次に、車輌が加速状態にあるのか否かを判断する(ステップST325)。ここでは、アクセルペダル(図示略)のアクセル開度θACが所定値Cよりも大きいか否かを判断することによって、車輌が加速状態か否かの判断を行う。そのアクセル開度θACについては、アクセルペダルに配備したアクセル開度センサ54の出力信号から知ることができる。このアクセル開度センサ54は、例えば、運転者がアクセルペダルを操作することによりアクセルON信号と共にペダル位置信号を出力し、アクセルペダルが操作されなければアクセルOFF信号を出力する。また、その所定値Cは、車輌の加速状態を判断する為の条件値であり、例えば、アクセルペダルの遊び(図示しないスロットルバルブを開弁させることのないアクセル開度θACの範囲)の上限値を設定する。従って、この車輌総重量推定手段41jには、そのアクセル開度θACが所定値C以下のときに車輌が定常走行状態にあると判断させ、本推定演算処理を一旦終了させる。尚、このステップST325の判断は、そのアクセル開度θACの変化を検知することによって行ってもよく、例えば、そのアクセル開度θACが増量方向への変化であれば車輌が加速状態にあると判断させ、そのアクセル開度θACが減量方向への変化であれば車輌が定常走行状態にあると判断させる。また、かかる判断は、スロットルバルブの開弁角度やこの開弁角度の変化に基づいて、アクセル開度θACのときと同様に行わせてもよい。
本実施例1の車輌総重量推定手段41jは、そのステップST325にて肯定判定された際に車輌が直進加速状態であると判断し、下記の式8を用いてモータ加速時推定車輌総重量Mmの演算を行って(ステップST330)、モータ加速時推定車輌総重量演算完了フラグ「ON」を立てる(ステップST335)。
Figure 0004737058
ここで、この式8の「Tmreq-FL」,「Tmreq-FR」,「Tmreq-RL」及び「Tmreq-RR」は、要求モータトルク設定手段41gがアクセル開度θACやスロットルバルブの開弁角度(換言すれば、車輌への要求加速度)に基づいて算出した夫々の車輪10FL,10FR,10RL,10RRに対しての要求モータトルク(ここでは、モータ力行トルク)である。また、この式8の「r」は、各車輪10FL,10FR,10RL,10RRのタイヤ半径を指す。ここでは、車輪10FL,10FR,10RL,10RRを同じサイズで統一するので1つの値「r」のみとしているが、異なるサイズの車輪10FL,10FR,10RL,10RRが車輌に装着されている場合には個別のタイヤ半径の情報を持たせておく。また、この式8の「Gcreal」は、実際の車体前後加速度(ここでは、車体加速度)を指す。従って、本実施例1の車輌には、車輌の前後加速度を検出可能な車体前後加速度センサ55を配備しておく。
ここで示したモータ加速時推定車輌総重量Mmの推定演算処理は、少なくともイグニッションON信号を検知した後に1度は実行させるようにする。ここでは、その推定精度を向上させる為に、上記の推定演算処理を複数回行い、夫々の平均値を最終的なモータ加速時推定車輌総重量Mmとして設定する。また、車輌がある程度長い時間停車している場合には、乗員の乗り降りや荷物の出し入れが行われている可能性がある。これが為、かかる場合を考慮し、停車時間が所定時間を超えたときには、車輌総重量推定手段41jが再びモータ加速時推定車輌総重量Mmの推定演算処理を実行させるように構成しておく。更に、ここで算出されたモータ加速時推定車輌総重量Mmの情報は、少なくともトルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)の算出を終えるまでブレーキ・モータ統合ECU41の主記憶装置等に記憶させておく。
本実施例1の制動装置異常判定手段41iには、その車輌総重量推定手段41jによって推定されたモータ加速時推定車輌総重量Mmの情報を用い、更に走行中の路面勾配θRの大きさを考慮して、上述した経年変化や異常による油圧制動トルク発生装置の制動性能の低下が起こっているか否か判定させる。
具体的に、この制動装置異常判定手段41iには、車輌の目標制動力と実際の車輌の制動力との差が所定値を超えたときに機械制動トルク発生装置又はモータに異常ありと判定させる。例えば、本実施例1の制動装置異常判定手段41iには、図10のフローチャートに示す如く、車輌が直進減速状態か否かを判断させ、直進減速状態のときにのみ油圧ブレーキ異常判定を実行させる。
ここでは、先ず、モータ加速時推定車輌総重量演算完了フラグ「ON」が立っているか否かを判断する(ステップST410)。つまり、上述した車輌総重量推定手段41jによってモータ加速時推定車輌総重量Mmが求められているか否かについての判断を最初に行う。尚、このステップST410にて否定判定が為された場合には、現状では正確に油圧ブレーキ異常判定を行うことができないと判断し、油圧ブレーキ異常判定フラグ「OFF」を立てさせる(ステップST445)。
制動装置異常判定手段41iは、そのステップST410にて肯定判定された場合、車輌が加速状態にあるのか否かをアクセルOFFか否かの情報に基づいて判断する(ステップST415)。例えば、かかる判断は、上述したアクセル開度センサ54からの出力信号を利用して行う。つまり、運転者がアクセルペダルを操作すれば、アクセル開度センサ54からのアクセルON信号によって車輌が加速状態にあることが判る。従って、この制動装置異常判定手段41iには、アクセルOFF信号が検知されなければ車輌が加速状態にあると判断させ、本判定処理を一旦終了させる。
制動装置異常判定手段41iは、そのステップST415にて肯定判定された場合、次に、上述したモータ加速時推定車輌総重量Mmの推定演算処理時のステップST320と同様にして、車輌が直進状態にあるのか旋回状態にあるのかを判断する(ステップST420)。これが為、このステップST420にて否定判定(操舵角θSTの絶対値が所定値B以上であると判定)された場合には、車輌が旋回状態にあると判断して本判定処理を一旦終了する。
一方、この制動装置異常判定手段41iは、そのステップST420にて肯定判定された場合、次に、車輌が所定の減速状態にあるのか否かを判断する(ステップST425)。ここでは、例えば図3のステップST15で要求全制動トルク設定手段41eにより算出された要求全制動トルクTareqが所定値Dを超えているか否かを判断することによって、車輌が減速状態にあるのか否かの判断を行う。その所定値Dは、車輌の減速状態を判断する為の条件値である。ここで、ある程度大きな要求全制動トルクTareqが油圧制動トルク発生装置に求められていなければ、実際に油圧制動トルク発生装置の制動性能が低下しているのか、それとも誤差の範囲内であるのかを識別し難いので、この所定値Dは、かかる点を考慮に入れて設定することが好ましい。従って、この制動装置異常判定手段41iには、油圧ブレーキ異常判定を行うに必要な減速度(目標車体減速度Gcb-t)が車輌に要求されていなければ、このステップST425にて否定判定させて、本判定処理を一旦終了させる。
本実施例1の制動装置異常判定手段41iは、そのステップST425にて肯定判定された際に車輌が直進減速状態であると判断し、下記の式9を用いて目標車体減速度Gcb-tの算出を行う(ステップST430)。
Figure 0004737058
ここで、この式9の「Tbreq-FL」,「Tbreq-FR」,「Tbreq-RL」及び「Tbreq-RR」は、上述した図3のステップST65にて設定された夫々の車輪10FL,10FR,10RL,10RRに対しての要求油圧制動トルクである。また、この式9の「Tmreq-FL」,「Tmreq-FR」,「Tmreq-RL」及び「Tmreq-RR」は、そのステップST65にて設定された夫々の車輪10FL,10FR,10RL,10RRに対しての要求モータトルク(ここでは、モータ回生トルク)である。また、この式9の「g」は、重力加速度である。本実施例1においては、この式9の「g・sinθR」によって走行中の路面勾配θRを考慮に入れた油圧ブレーキ異常判定が行われる。尚、その「g・sinθR」は、下記の式10のように、車体前後加速度センサ55により検出された実際の車体前後加速度Gcrealと、車体速度推定手段41dが推定した車体速度に基づき算出された(つまり、車輪速度に基づいて算出された)車体前後加速度Gcspeedと、の差によって求めることができる。
Figure 0004737058
本実施例1の制動装置異常判定手段41iは、目標車体減速度Gcb-tを求めた後、この目標車体減速度Gcb-tと上記の車体速度に基づいた車体前後加速度Gcspeedとの差の絶対値が所定値Eよりも大きくなっているか否かを判断する(ステップST435)。つまり、その差が所定以上乖離していれば油圧制動トルク発生装置に上述した経年変化や異常による制動性能の低下が起こっていると判断できるので、制動装置異常判定手段41iには、このステップST435の判断を行わせる。その所定値Eについては、例えば、油圧制動トルク発生装置の制動性能を低下させた状態と正常状態とに分けて制動実験や制動シミュレーションを行い、その結果から正常状態と異常状態の境界を求めて設定する。
従って、この制動装置異常判定手段41iには、このステップST435にて否定判定されたときに本判定処理を一旦終了させる。一方、この制動装置異常判定手段41iは、このステップST435にて肯定判定されたときに油圧制動トルク発生装置に上述した経年変化や異常による制動性能の低下が起きていると判断し、油圧ブレーキ異常判定フラグ「ON」を立てる(ステップST440)。
このステップST440にて油圧ブレーキ異常判定フラグ「ON」が立てられたときには、各車輪10FL,10FR,10RL,10RRの内の少なくとも1本において制動性能の低下が起こっている。これが為、その制動性能の低下が起きている車輪10FL,10FR,10RL,10RRにおいては、実際の油圧制動トルクToが要求油圧制動トルクToreqよりも小さくなるので、実際の全制動トルクTaが要求全制動トルクTareqよりも低くなってしまう。そして、この場合には、各車輪10FL,10FR,10RL,10RRの内の少なくとも一輪と残りの車輪の夫々の全制動トルクTaを車輌の目標制動力と実際の車輌の制動力とが一致するように設定し、その各全制動トルクTa間の相対関係に基づいて要求油圧制動トルクToreq又は要求モータトルクTmreqの補正を行わせる。例えば、後述するパターン制動を行い、その結果に基づいて、その小さくなった分の制動トルク(Toreq−To)を制動性能の低下が起きている車輪10FL,10FR,10RL,10RRの油圧制動手段21FL,21FR,21RL,21RR又はモータ31FL,31FR,31RL,31RRに補填させればよい。
そこで、本実施例1においては、その油圧制動手段21FL,21FR,21RL,21RR又はモータ31FL,31FR,31RL,31RRに対しての制動トルクの補正値を求めるトルク補正値演算手段41kをブレーキ・モータ統合ECU41に設ける。ここでは、要求油圧制動トルクToreq又は要求モータトルクTmreqを制動性能の低下に応じて補正する為のトルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)をトルク補正値として求めさせる。
ここで、本実施例1の制動装置異常判定手段41iは、上記のようにして油圧制動トルク発生装置の制動性能の低下の有無を判断することはできるが、その制動性能の低下がどの車輪10FL,10FR,10RL,10RRにおいて起きているのかについては把握することができない。つまり、上記ステップST440にて油圧ブレーキ異常判定フラグ「ON」が立てられたときには、各車輪10FL,10FR,10RL,10RRの内の少なくとも1本において制動性能の低下が起こっているのだが、どの車輪10FL,10FR,10RL,10RRの制動性能が低下しているのかを特定できない。これが為、トルク補正値演算手段41kには、全ての車輪10FL,10FR,10RL,10RRについてのトルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)を算出させるようにする。例えば、そのトルク補正係数Knが要求油圧制動トルクToreq又は要求モータトルクTmreqに対しての加減値であれば、そのトルク補正係数Knは、制動性能の低下が起きている車輪10FL,10FR,10RL,10RRにおいて「0」以外の数値となり、制動性能の低下が起きていない車輪10FL,10FR,10RL,10RRにおいて「0」となる。また、そのトルク補正係数Knが要求油圧制動トルクToreq又は要求モータトルクTmreqに対しての乗算値又は除算値であれば、そのトルク補正係数Knは、制動性能の低下が起きている車輪10FL,10FR,10RL,10RRにおいて「1」以外の数値となり、制動性能の低下が起きていない車輪10FL,10FR,10RL,10RRにおいて「1」となる。
本実施例1においては、全ての車輪10FL,10FR,10RL,10RRのトルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)を算出させる為に、所定の様々な条件下における制動状態(ここでは、第1から第4のパターン制動)を実際に作り出す。そして、本実施例1のトルク補正値演算手段41kには、その各制動状態においての要求値や検出値を下記の式11から式22の関係式に当てはめて、夫々の車輪10FL,10FR,10RL,10RRのトルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)を求めさせる。従って、本実施例1のブレーキ・モータ統合ECU41には、その様々な条件下における制動状態を実際に作り出すパターン制動実行手段41lを設ける。
本実施例1のパターン制動実行手段41lには、全ての車輪10FL,10FR,10RL,10RRを油圧制動トルクToのみで制動させるパターン制動と、車輪10FL,10FR,10RL,10RR毎に油圧制動トルクToとモータトルクTmの出力配分を変化させたパターン制動と、を実行させる。また、このパターン制動実行手段41lには、パターン制動を行う際に、前輪10FL,10FRと後輪10RL,10RRの総制動力の配分比(以下、「前後制動力配分比」という。)kpが一定になるようにさせ、更に、左側前輪10FLと右側前輪10FRの総制動力及び左側後輪10RLと右側後輪10RRの総制動力が各々一定になるようにさせる。以下に、その第1から第4のパターン制動と夫々のパターン制動における関係式とについて説明する。以下においては、トルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)が要求油圧制動トルクToreqを補正するものとして例示する。
先ず、第1パターン制動とは、上記の全ての車輪10FL,10FR,10RL,10RRを油圧制動トルクToのみで制動させる制動パターンのことである。ここでは、油圧制動トルク発生装置の制動性能の低下に対応させた最適なトルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)で補正して第1パターン制動を実行することによって、この第1パターン制動実行時に運転者や車輌から要求された目標車体減速度Gcb-tが実際に車輌に発生するように下記の式11から式13の関係式を成立させる。その式11は、上記の最適なトルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)で補正して第1パターン制動を実行させた際の目標車体減速度Gcb-t(左項)と、その際に車体前後加速度センサ55により検出された実際の車体前後加速度Gc1realと、を一致させる関係式である。この式11においても、モータ加速時推定車輌総重量Mmと走行中の路面勾配θRを考慮に入れている。また、その式12は、上述した前後制動力配分比kpを一定にし、且つ、左側前輪10FLと右側前輪10FRの総制動力及び左側後輪10RLと右側後輪10RRの総制動力を各々一定にしていることを表した関係式である。
Figure 0004737058
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本実施例1のパターン制動実行手段41lには、この第1パターン制動実行時における夫々の車輪10FR,10RL,10RRへの要求油圧制動トルクTb1req-FL,Tb1req-FR,Tb1req-RL,Tb1req-RRと、この第1パターン制動実行中に車体前後加速度センサ55により検出された実際の車体前後加速度Gc1realと、を少なくともトルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)の算出を終えるまでブレーキ・モータ統合ECU41の主記憶装置等に記憶させておく。
続いて、第2パターン制動とは、左側前輪10FLのみを油圧制動トルクToとモータトルクTmとで制動させ、残りの車輪10FR,10RL,10RRを油圧制動トルクToのみで制動させる制動パターンのことである。ここでも、油圧制動トルク発生装置の制動性能の低下に対応させた最適なトルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)で補正して第2パターン制動を実行することによって、この第2パターン制動実行時に運転者や車輌から要求された目標車体減速度Gcb-tが実際に車輌に発生するように下記の式14から式16の関係式を成立させる。その式14は、上記の最適なトルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)で補正して第2パターン制動を実行させた際の目標車体減速度Gcb-t(左項)と、その際に車体前後加速度センサ55により検出された実際の車体前後加速度Gc2realと、を一致させる関係式である。この式14においても、モータ加速時推定車輌総重量Mmと走行中の路面勾配θRを考慮に入れている。また、その式15は、上述した前後制動力配分比kpを一定にし、且つ、左側前輪10FLと右側前輪10FRの総制動力及び左側後輪10RLと右側後輪10RRの総制動力を各々一定にしていることを表した関係式である。
Figure 0004737058
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本実施例1のパターン制動実行手段41lには、この第2パターン制動実行時における夫々の車輪10FR,10RL,10RRへの要求油圧制動トルクTb2req-FL,Tb2req-FR,Tb2req-RL,Tb2req-RRと、この第2パターン制動実行時における左側前輪10FLのモータ31FLへの要求モータトルクTm2req-FLと、この第2パターン制動実行中に車体前後加速度センサ55により検出された実際の車体前後加速度Gc2realと、を少なくともトルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)の算出を終えるまでブレーキ・モータ統合ECU41の主記憶装置等に記憶させておく。
続いて、第3パターン制動とは、右側前輪10FRのみを油圧制動トルクToとモータトルクTmとで制動させ、残りの車輪10FL,10RL,10RRを油圧制動トルクToのみで制動させる制動パターンのことである。ここでも、油圧制動トルク発生装置の制動性能の低下に対応させた最適なトルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)で補正して第3パターン制動を実行することによって、この第3パターン制動実行時に運転者や車輌から要求された目標車体減速度Gcb-tが実際に車輌に発生するように下記の式17から式19の関係式を成立させる。その式17は、上記の最適なトルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)で補正して第3パターン制動を実行させた際の目標車体減速度Gcb-t(左項)と、その際に車体前後加速度センサ55により検出された実際の車体前後加速度Gc3realと、を一致させる関係式である。この式17においても、モータ加速時推定車輌総重量Mmと走行中の路面勾配θRを考慮に入れている。また、その式18は、上述した前後制動力配分比kpを一定にし、且つ、左側前輪10FLと右側前輪10FRの総制動力及び左側後輪10RLと右側後輪10RRの総制動力を各々一定にしていることを表した関係式である。
Figure 0004737058
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本実施例1のパターン制動実行手段41lには、この第3パターン制動実行時における夫々の車輪10FR,10RL,10RRへの要求油圧制動トルクTb3req-FL,Tb3req-FR,Tb3req-RL,Tb3req-RRと、この第3パターン制動実行時における右側前輪10FRのモータ31FRへの要求モータトルクTm3req-FRと、この第3パターン制動実行中に車体前後加速度センサ55により検出された実際の車体前後加速度Gc3realと、を少なくともトルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)の算出を終えるまでブレーキ・モータ統合ECU41の主記憶装置等に記憶させておく。
続いて、第4パターン制動とは、左側後輪10RLのみを油圧制動トルクToとモータトルクTmとで制動させ、残りの車輪10FL,10FR,10RRを油圧制動トルクToのみで制動させる制動パターンのことである。ここでも、油圧制動トルク発生装置の制動性能の低下に対応させた最適なトルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)で補正して第4パターン制動を実行することによって、この第4パターン制動実行時に運転者や車輌から要求された目標車体減速度Gcb-tが実際に車輌に発生するように下記の式20から式22の関係式を成立させる。その式21は、上記の最適なトルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)で補正して第4パターン制動を実行させた際の目標車体減速度Gcb-t(左項)と、その際に車体前後加速度センサ55により検出された実際の車体前後加速度Gc4realと、を一致させる関係式である。この式21においても、モータ加速時推定車輌総重量Mmと走行中の路面勾配θRを考慮に入れている。また、その式22は、上述した前後制動力配分比kpを一定にし、且つ、左側前輪10FLと右側前輪10FRの総制動力及び左側後輪10RLと右側後輪10RRの総制動力を各々一定にしていることを表した関係式である。
Figure 0004737058
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本実施例1のパターン制動実行手段41lには、この第4パターン制動実行時における夫々の車輪10FR,10RL,10RRへの要求油圧制動トルクTb4req-FL,Tb4req-FR,Tb4req-RL,Tb4req-RRと、この第4パターン制動実行時における左側後輪10RLのモータ31RLへの要求モータトルクTm4req-RLと、この第4パターン制動実行中に車体前後加速度センサ55により検出された実際の車体前後加速度Gc4realと、を少なくともトルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)の算出を終えるまでブレーキ・モータ統合ECU41の主記憶装置等に記憶させておく。
尚、その第2,第3又は第4のパターン制動の内の何れか1つに替えて、右側後輪10RRのみを油圧制動トルクToとモータトルクTmとで制動させ、残りの車輪10FL,10FR,10RLを油圧制動トルクToのみで制動させるパターン制動を実行してもよい。
本実施例1のトルク補正値演算手段41kは、その第1から第4のパターン制動の実行時に主記憶装置等へと記憶させられた上記の各種情報などと、上述した式11から式22により求めた下記の式23から式26と、を用いてトルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)の算出を行う。
Figure 0004737058
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Figure 0004737058
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ここで、本実施例1のパターン制動実行手段41lには、図11のフローチャートに示す如く、車輌が直進減速状態か否かを判断させ、直進減速状態のときにのみ第1から第4のパターン制動を実行させる。そして、本実施例1においては、その第1から第4のパターン制動を全て実行し終えた後でトルク補正値演算手段41kにトルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)を算出させる。
ここでは、先ず、パターン制動実行手段41lにより油圧ブレーキ異常判定フラグ「ON」が立っているか否かを判断する(ステップST510)。つまり、パターン制動実行手段41lによるパターン制動やトルク補正値演算手段41kによる演算処理は油圧制動トルク発生装置の制動性能が低下していると判断されたときにのみ実行すればよいので、ここでは、最初にこの判断を行う。従って、パターン制動実行手段41lは、このステップST510にて否定判定が為された場合、本処理を一旦終了する。
一方、パターン制動実行手段41lは、そのステップST510にて肯定判定された場合、次に、車輌が減速状態にあるのか否かをブレーキONか否かの情報に基づいて判断する(ステップST515)。例えば、かかる判断は、上述したペダル位置検出センサ52の出力信号を利用して行う。パターン制動については、車輌が減速状態にないときに行うと無用な減速により運転者が違和感を覚える。従って、このステップST515にて否定判定されて車輌が減速状態にないことが判ったときには、本処理を一旦終了させる。
パターン制動実行手段41lは、そのステップST515にて肯定判定された場合、次に、上述したモータ加速時推定車輌総重量Mmの推定演算処理時のステップST320と同様にして、車輌が直進状態にあるのか旋回状態にあるのかを判断する(ステップST520)。これが為、このステップST520にて否定判定(操舵角θSTの絶対値が所定値B以上であると判定)された場合には、車輌が旋回状態にあると判断して本処理を一旦終了する。
一方、このパターン制動実行手段41lは、そのステップST520にて肯定判定された場合、次に、上述した油圧ブレーキ異常判定時のステップST425と同様にして、車輌が所定の減速状態にあるのか否かを判断する(ステップST525)。これが為、このステップST525にて否定判定(要求全制動トルクTareqが所定値D以下であると判定)された場合には、パターン制動を行うに必要な減速度(目標車体減速度Gcb-t)が車輌に要求されていないと判断して本処理を一旦終了する。
本実施例1のパターン制動実行手段41lは、そのステップST425にて肯定判定された際に車輌が直進減速状態であると判断し、未だ実行されていないパターン制動で制動動作を行わせる。
ここでは、最初に上述した第1パターン制動が実行済であるのか否かについて判断し(ステップST530)、これが実行されていなければ第1パターン制動で車輌を制動させる(ステップST535)。パターン制動実行手段41lは、第1パターン制動での制動動作を終えた際、この第1パターン制動実行時における夫々の車輪10FR,10RL,10RRへの要求油圧制動トルクTb1req-FL,Tb1req-FR,Tb1req-RL,Tb1req-RR及び車体前後加速度センサ55により検出された実際の車体前後加速度Gc1realをブレーキ・モータ統合ECU41の主記憶装置等に記憶させておく。そして、上記ステップST510〜ST525にて再び車輌が直進減速状態にあるか否かの判断を行う。
一方、パターン制動実行手段41lは、第1パターン制動を実施済であれば(即ち、車輌が直進減速状態にあると判断された後、上記ステップST530にて肯定判定された場合)、次に、上述した第2パターン制動が実行済であるのか否かについて判断し(ステップST540)、これが実行されていなければ第2パターン制動で車輌を制動させる(ステップST545)。このパターン制動実行手段41lは、第2パターン制動での制動動作を終えた際、この第2パターン制動実行時における夫々の車輪10FR,10RL,10RRへの要求油圧制動トルクTb2req-FL,Tb2req-FR,Tb2req-RL,Tb2req-RR、左側前輪10FLのモータ31FLへの要求モータトルクTm2req-FL及び車体前後加速度センサ55により検出された実際の車体前後加速度Gc2realをブレーキ・モータ統合ECU41の主記憶装置等に記憶させておく。そして、上記ステップST510〜ST525にて再び車輌が直進減速状態にあるか否かの判断を行う。
また、パターン制動実行手段41lは、第2パターン制動まで実施済であれば(即ち、車輌が直進減速状態にあると判断された後、上記ステップST530,ST540にて肯定判定された場合)、次に、上述した第3パターン制動が実行済であるのか否かについて判断し(ステップST550)、これが実行されていなければ第3パターン制動で車輌を制動させる(ステップST555)。このパターン制動実行手段41lは、第3パターン制動での制動動作を終えた際、この第3パターン制動実行時における夫々の車輪10FR,10RL,10RRへの要求油圧制動トルクTb3req-FL,Tb3req-FR,Tb3req-RL,Tb3req-RR、右側前輪10FRのモータ31FRへの要求モータトルクTm3req-FR及び車体前後加速度センサ55により検出された実際の車体前後加速度Gc3realをブレーキ・モータ統合ECU41の主記憶装置等に記憶させておく。そして、上記ステップST510〜ST525にて再び車輌が直進減速状態にあるか否かの判断を行う。
続いて、パターン制動実行手段41lは、第3パターン制動まで実施済であれば(即ち、車輌が直進減速状態にあると判断された後、上記ステップST530,ST540,ST550にて肯定判定された場合)、次に、上述した第4パターン制動が実行済であるのか否かについて判断し(ステップST560)、これが実行されていなければ第4パターン制動で車輌を制動させる(ステップST565)。このパターン制動実行手段41lは、第4パターン制動での制動動作を終えた際、この第4パターン制動実行時における夫々の車輪10FR,10RL,10RRへの要求油圧制動トルクTb4req-FL,Tb4req-FR,Tb4req-RL,Tb4req-RR、左側後輪10RLのモータ31RLへの要求モータトルクTm4req-RL及び車体前後加速度センサ55により検出された実際の車体前後加速度Gc4realをブレーキ・モータ統合ECU41の主記憶装置等に記憶させておく。
本実施例1のトルク補正値演算手段41kは、上記の如くして第1から第4のパターン制動を終えた後、上記ステップST535,ST545,ST555,ST565にて各々主記憶装置等に記憶された各種情報と、タイヤ半径rと、モータ加速時推定車輌総重量Mmと、前後制動力配分比kpと、を適宜上記式23〜式26に代入し、夫々にトルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)を算出する(ステップST570)。
このように、本実施例1においては、車輌が直進減速状態になければパターン制動を実行させないので、油圧ブレーキ異常判定フラグ「ON」が立てられたからといって直ぐにトルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)の演算が行われるわけではない。従って、ABS制御中に油圧ブレーキ異常判定フラグ「ON」が立っている場合(即ち、図3のステップST70にて肯定判定された場合)であっても、その時までにトルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)が算出されていなければ、運転者や車輌の要求に応じた適切な制動力を車輌に働かせることができない。
そこで、本実施例1のブレーキ・モータ統合ECU41には、図3のステップST70にて肯定判定された場合に、図12のフローチャートに示す如く、トルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)が算出済か否かを判定させる(ステップST610)。この図12の説明においても左側前輪10FLの場合を代表して例示する。ここで否定判定されて未だトルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)が算出されていないことが判った場合、このブレーキ・モータ統合ECU41には、そのトルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)が算出されるまで以下のようにして加速スリップの発生を抑えることの可能な要求油圧制動トルクToreqと要求モータトルクTmreqを設定させる。
ここで、その加速スリップの発生する可能性の有無については、制動要求時における車輪10FL,10FR,10RL,10RRのモータ31FL,31FR,31RL,31RRの駆動状態(回生状態であるのか力行状態であるのか)と、その車輪10FL,10FR,10RL,10RRの制動時におけるスリップ率Sと、に基づいて判断することができる。つまり、図8に示す如く、制動要求時に車輪10FL,10FR,10RL,10RRのモータ31FL,31FR,31RL,31RRが力行状態で駆動しており、且つ、その力行状態で駆動している車輪10FL,10FR,10RL,10RRが減速スリップ状態から加速スリップ状態へと移り変わるときには、その車輪10FL,10FR,10RL,10RRが余剰分のモータ力行トルクTmによって加速スリップを発生させてしまう可能性があると判断できるので、本実施例1のブレーキ・モータ統合ECU41にかかる判断を実行させる。
モータ31FL,31FR,31RL,31RRが力行状態であるか否かについては、要求モータトルク設定手段41gの算出した暫定要求モータトルクTmproがモータ力行トルクであるのか否かによって判断することができる。また、ABS制御中に車輪10FL,10FR,10RL,10RRが減速スリップ状態から加速スリップ状態へと移り変わるときとは、換言すれば、ABS制御中に車輪10FL,10FR,10RL,10RRの減速スリップが収束しつつあるときに車輪速度が車体速度を超えてしまうときのことであり、そのときのスリップ率を閾値(所定値S0)にしてABS制御中のスリップ率Sと比較することで判断できる。つまり、ABS制御中における減速時のスリップ率Sが所定値S0以下のときには、車輪10FL,10FR,10RL,10RRが減速スリップ状態から加速スリップ状態に移行するときであるとの判断が可能になる。ここでは、その所定値S0として車輪速度と車体速度が一致したときのスリップ率(0%)を設定する。
一方、上記の如き加速スリップの発生を抑える為には、その発生の可能性がある車輪10FL,10FR,10RL,10RRのモータ31FL,31FR,31RL,31RRのモータトルク(モータ力行トルク)Tmを回生制動力の増加方向へと増加させることが有効である。これが為、そのような加速スリップの発生する可能性がある場合には、加速スリップ抑制対象のモータ31FL,31FR,31RL,31RRの要求モータトルクTmreqをこの時点(図13に示す如く加速スリップ抑制制御実行時)でのモータ力行トルクよりも回生制動力の増加方向に増加させ、この増加された要求モータトルクTmreqを基準にして上記の式4から要求油圧制動トルクToreqを求めさせるようにする。本実施例1の要求油圧制動トルク設定手段41fと要求モータトルク設定手段41gは、かかる場合にそのような要求油圧制動トルクToreqと要求モータトルクTmreqとが各々算出されるように構成する。
例えば、その加速スリップ抑制対象のモータ31FL,31FR,31RL,31RRの要求モータトルクTmreqは、「0」又は回生側に設定する。ここでは、上記式3で求めた暫定要求モータトルク(モータ力行トルク)Tmproを回生制動力の増加方向に増加させ、この増加された暫定要求モータトルクTmproを要求モータトルクTmreqとして設定させる。
従って、上記ステップST610にて否定判定された場合、ブレーキ・モータ統合ECU41は、左側前輪10FLの現時点での制動時のスリップ率Sをスリップ率演算手段41cに求めさせ、そのスリップ率Sが前述した所定値S0以下であるのか否かについて判定する(ステップST615)。ここで肯定判定されて左側前輪10FLが減速スリップ状態から加速スリップ状態へと移り変わる可能性ありと判断された場合、このブレーキ・モータ統合ECU41は、上記図3のステップST65にて設定された要求モータトルクTmreqがモータ力行トルクであるのか否かについて判定する(ステップST620)。
続いて、そのステップST620にて肯定判定されて左側前輪10FLのモータ31FLが力行状態にあることが判ったときには、この左側前輪10FLに対して加速スリップ抑制制御を行う。従って、このときの要求モータトルク設定手段41gは、その要求モータトルク(モータ力行トルク)Tmreqを「0」又はモータ回生トルクとなるように増加させた補正要求モータトルクTmreq-cを求め(ステップST625)、これを要求モータトルクTmreqとして設定し直す(ステップST630)。そして、要求油圧制動トルク設定手段41fは、その左側前輪10FLの要求モータトルクTmreqと上記図3のステップST15で求めた左側前輪10FLの要求全制動トルクTareqとを上述した式4に代入して要求油圧制動トルクToreqを設定する(ステップST635)。ここでは、図13に示す如く要求モータトルクTmreqを「0」に設定しているので、要求油圧制動トルクToreqが要求全制動トルクTareqと同じ値に設定される。
しかる後、このブレーキ・モータ統合ECU41は、上記図3のステップST75に進んで油圧制動トルク制御手段24とモータ制御手段32に対して指示を行い、その改めて設定された要求油圧制動トルクToreqと要求モータトルクTmreqを左側前輪10FLにおける油圧制動手段21FLとモータ31FLから発生させるようにする。
これにより、左側前輪10FLにおいては、要求全制動トルクTareqを変更することなくモータ31FLの力行状態を解消させることができるので、加速スリップ、厳密には減速スリップから加速スリップへの移行が防がれる。そして、かかる加速スリップ抑制制御はその必要性があれば全ての車輪10FL,10FR,10RL,10RRに対して実行されるので、本実施例1の制駆動力制御装置は、トルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)が算出されるまでの間において、夫々の車輪10FL,10FR,10RL,10RRに適切な全制動トルクTaを働かせることができる。従って、この本実施例1の制駆動力制御装置は、制動時における車輌の減速度の低下を抑えることができる。
このような加速スリップ抑制制御を実行した後、トルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)が算出されるまで又は上述した要求油圧制動トルクToreqの更新時期(新たな最小全制動トルクTaminが算出されたとき、図6のフローチャートにおいては更に暫定要求モータトルクTmproが回生側要求油圧制動トルク更新判断閾値Tm1bと力行側要求油圧制動トルク更新判断閾値Tm2bとの間にあるとき)が来るまでは、そのステップST635で設定した加速スリップ抑制制御実行時の要求油圧制動トルクToreqを保持しながら要求モータトルクTmreqを増減制御して、要求全制動トルクTareqを発生させるようにする。従って、加速スリップ抑制制御の実行後においても、トルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)が算出されるまでは、制動中における車輌の減速度の低下を防ぐことができる。
尚、上記ステップST615又はステップST620にて否定判定された場合には、上記ステップST75に進んで上記ステップST65にて設定された要求油圧制動トルクToreqと要求モータトルクTmreqをそのまま発生させるような指示を行う。ここではブレーキパッドに摩耗などが生じて本来の油圧制動トルクToを発生させることができなくなっているので、図13に示す如く実際の油圧制動トルクToが本来の要求油圧制動トルクToreqよりも低くなっている。
このようにして加速スリップ抑制制御を実行し、その後トルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)が算出された場合(即ち、上記ステップST610にて肯定判定された場合)、本実施例1の要求油圧制動トルク設定手段41fは、左側前輪10FLのトルク補正係数KFLを用いて下記の式27のように左側前輪10FLの油圧変換係数C1new-FLを補正する(ステップST640)。尚、便宜上、この式27においては、補正前の既存の油圧変換係数を「C1old-n(n=FL,FR,RL,RR)」と表す一方、補正後の新たな油圧変換係数を「C1new-n(n=FL,FR,RL,RR)」と表す。
Figure 0004737058
そして、ブレーキ・モータ統合ECU41は、上記ステップST75に進んで油圧制動トルク制御手段24とモータ制御手段32に対して指示を行う。その際、油圧制動トルク制御手段24に対しては、上記ステップST65で設定した要求油圧制動トルクToreqと上記ステップST640にて補正した新たな油圧変換係数C1new-FLを上記式5に代入し、これにより得られた油圧Poを左側前輪10FLの油圧制動手段21FLに発生させるよう指示する。
これにより、左側前輪10FLにおいては、油圧制動トルク発生装置の制動性能の低下に伴う不足分を補った油圧制動トルクTo(=補正前の要求油圧制動トルクToreq)が実際に働くので、要求全制動トルクTareqが発生するようになり、モータ31FLが力行状態で駆動していても加速スリップの発生を抑えることができる。このような油圧制動トルクToの不足分の補填は必要があれば全ての車輪10FL,10FR,10RL,10RRに対して実行されるので、本実施例1の制駆動力制御装置は、夫々の車輪10FL,10FR,10RL,10RRに対して要求全制動トルクTareqに応じた適切な全制動トルクTaを働かせることができる。従って、この本実施例1の制駆動力制御装置は、ここでも制動時における車輌の減速度の低下を抑えることができる。
尚、ここでは油圧変換係数C1new-n(n=FL,FR,RL,RR)を補正することによって要求油圧制動トルクToreqの補正を行っているが、これとは逆に、電流変換係数C2new-n(n=FL,FR,RL,RR)を補正して、これにより要求モータトルクTmreqが補正されるように構成してもよい。この場合、下記の式28を用いて電流変換係数C2new-n(n=FL,FR,RL,RR)の補正を行わせる。便宜上、この式28においては、補正前の既存の電流変換係数を「C2old-n(n=FL,FR,RL,RR)」と表す一方、補正後の新たな電流変換係数を「C2new-n(n=FL,FR,RL,RR)」と表す。
Figure 0004737058
以上示した如く、本実施例1の制駆動力制御装置によれば、車輪10FL,10FR,10RL,10RRの油圧制動トルクToを一定の値(最大全制動トルクTamaxと最小全制動トルクTaminの中間値)に保った状態で夫々のモータ31FL,31FR,31RL,31RRのモータトルクTmを増減させているので、そのモータトルクTmを回生側と力行側の双方にて同一の制御幅で増減させることができる。これが為、路面の摩擦係数が高低の何れに変化しても、モータトルク出力限界値Tmlimまではその双方に対して均等にモータトルクTmを増減制御することによって対応することができ、応答性に優れた精度の良いABS制御を行うことができる。即ち、この制駆動力制御装置においては、モータトルクTmの制御幅(回生側及び力行側への余裕代)を拡大することができ、これにより、路面の摩擦係数の変化に応じた要求全制動トルクTareqの変動に対してのモータトルクTmの制御範囲を拡大することができる。
また、そのような最大全制動トルクTamaxと最小全制動トルクTaminの中間値に要求油圧制動トルクToreqを設定するので、モータトルクTmの制御幅を最大にすることができ、路面の摩擦係数の変化に応じた要求全制動トルクTareqの変動に対してのモータトルクTmの制御範囲を更に拡大することができる。
また、上述した図2に示す如く出力し得るモータトルクTmはモータ回転数の上昇に伴って小さくなっていくが、本実施例1は回生側と力行側のモータトルクTmの制御幅を均等にしているので、より高回転(換言すれば、より高い車速)まで回生側と力行側の双方に対して均等に対応することができる。
更に、最大全制動トルクTamaxと最小全制動トルクTaminが算出される度に要求油圧制動トルクToreqの設定値を更新するので、路面の摩擦係数の変化に応じてモータトルクTmの制御幅(回生側及び力行側への余裕代)を最適なものへと調節することができる。
また更に、油圧制動トルク発生装置の制動性能が低下していることが判ったにも拘わらず、トルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)が未だ算出されていないときであっても、モータ31FL,31FR,31RL,31RRが力行状態で駆動しているときには、そのモータトルクTmを回生制動力増加方向へと増加させるので(ここでは、更にその分だけ油圧制動トルクToを減少させるので)、各車輪10FL,10FR,10RL,10RRに適切な制動トルク(全制動トルクTa)を発生させ、夫々の車輪10FL,10FR,10RL,10RRの総制動力を目標値に近づけることができる。一方、そのトルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)の算出後においては、その制動性能の低下による不足分が補われるので、これにより、各車輪10FL,10FR,10RL,10RRに適切な制動トルク(全制動トルクTa)を発生させ、夫々の車輪10FL,10FR,10RL,10RRの総制動力を目標値に近づけることができる。従って、この制駆動力制御装置によれば、油圧制動トルク発生装置に経年変化や異常が生じても、また、夫々の車輪10FL,10FR,10RL,10RRの間で油圧制動トルク発生装置に経年変化や異常が生じたものが混在したとしても各車輪10FL,10FR,10RL,10RRの加速スリップを抑えることができ、これにより、制動中に車輌の減速度を低下させずに済む。
また、この制駆動力制御装置は、モータトルク(モータ力行トルク)Tmを基にして車輌総重量を推定させ、そのモータ加速時推定車輌総重量Mmと走行中の路面勾配θRを基にして油圧制動トルク発生装置の制動性能の異常判定を行わせているので、その異常判定の判定精度を向上させることができる。そして、この制駆動力制御装置は、異常と判定され、所定の減速度が車輌に要求されているときにのみパターン制動を実行させるので、パターン切り替え時の制動状態の変化に伴う違和感を運転者に感じさせることなく各車輪10FL,10FR,10RL,10RRに適切な制動トルクを発生させることができる。
次に、本発明に係る制駆動力制御装置の実施例2を図14に基づいて説明する。
本実施例2の制駆動力制御装置は、前述した実施例1の制駆動力制御装置においてトルク補正値演算手段41kとパターン制動実行手段41lを変更したものであり、それ以外については実施例1と同様に構成して同じ動作を行うようになっている。
一般に、モータ31FL,31FR,31RL,31RRを回生状態で駆動させる為には、バッテリ33の蓄電可能容量に余裕がなければならない。従って、そのバッテリ33の蓄電状態如何ではモータ31FL,31FR,31RL,31RRを回生状態で駆動させることができないので、実施例1のパターン制動実行手段41lは前述した第1から第4のパターン制動で制動させることができず、これによりトルク補正値演算手段41kがトルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)を求めることができない可能性がある。
そこで、本実施例2においては、以下に示す第5から第8のパターン制動を実行させるようにパターン制動実行手段41lを構成し、その結果に応じてトルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)の算出を行うようにトルク補正値演算手段41kを構成する。
本実施例2のパターン制動実行手段41lには、全ての車輪10FL,10FR,10RL,10RRの内の少なくとも1輪と残りの車輪との間の制動力配分を変えて油圧制動トルクToのみで制動させる。その際には、車輌への減速度を変えずに所定の車輪間の制動力配分を変化させる。以下においては、トルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)が要求油圧制動トルクToreqを補正するものとして例示する。
先ず、第5パターン制動とは、前輪10FL,10FRと後輪10RL,10RRの間の制動力配分を変えたものであり、実施例1の第1パターン制動と同じ前後制動力配分比kpのみを設定した制動パターンのことである。従って、この第5パターン制動においては、その第1パターン制動と同様の上記式11から式13の関係式が成立する。
本実施例2のパターン制動実行手段41lにおいても、この第5パターン制動実行時における夫々の車輪10FR,10RL,10RRへの要求油圧制動トルクTb1req-FL,Tb1req-FR,Tb1req-RL,Tb1req-RRと、この第5パターン制動実行中に車体前後加速度センサ55により検出された実際の車体前後加速度Gc1realと、を少なくともトルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)の算出を終えるまでブレーキ・モータ統合ECU41の主記憶装置等に記憶させておく。
続いて、第6パターン制動とは、第5パターン制動に対して前輪10FL,10FRの制動力配分(配分変更トルクTc)を後輪10RL,10RRと比して大きくした制動パターンのことである。ここでも、油圧制動トルク発生装置の制動性能の低下に対応させた最適なトルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)で補正して第6パターン制動を実行することによって、この第6パターン制動実行時に運転者や車輌から要求された目標車体減速度Gcb-tが実際に車輌に発生するように下記の式29及び式30並びに上記式16の関係式を成立させる。その式29は、上記の最適なトルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)で補正して第6パターン制動を実行させた際の目標車体減速度Gcb-t(左項)と、その際に車体前後加速度センサ55により検出された実際の車体前後加速度Gc2realと、を一致させる関係式である。この式29においても、モータ加速時推定車輌総重量Mmと走行中の路面勾配θRを考慮に入れている。また、その式30は、前輪10FL,10FRへの要求油圧制動トルクTb2req-FL,Tb2req-FRと後輪10RL,10RRへの要求油圧制動トルクTb2req-RL,Tb2req-RRとの間に、第5パターン制動と同じ前後制動力配分比kpが設定されていることを表したものである。
Figure 0004737058
Figure 0004737058
本実施例2のパターン制動実行手段41lには、この第6パターン制動実行時における夫々の車輪10FR,10RL,10RRへの要求油圧制動トルクTb2req-FL,Tb2req-FR,Tb2req-RL,Tb2req-RRと、この第6パターン制動実行中に車体前後加速度センサ55により検出された実際の車体前後加速度Gc2realと、を少なくともトルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)の算出を終えるまでブレーキ・モータ統合ECU41の主記憶装置等に記憶させておく。
続いて、第7パターン制動とは、第5パターン制動に対して左側前輪10FLと右側後輪10RRの制動力配分(配分変更トルクTc)を右側前輪10FRや左側後輪10RLと比して大きくした制動パターンのことである。ここでも、油圧制動トルク発生装置の制動性能の低下に対応させた最適なトルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)で補正して第7パターン制動を実行することによって、この第7パターン制動実行時に運転者や車輌から要求された目標車体減速度Gcb-tが実際に車輌に発生するように下記の式31及び式32並びに上記式19の関係式を成立させる。その式31は、上記の最適なトルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)で補正して第7パターン制動を実行させた際の目標車体減速度Gcb-t(左項)と、その際に車体前後加速度センサ55により検出された実際の車体前後加速度Gc3realと、を一致させる関係式である。この式31においても、モータ加速時推定車輌総重量Mmと走行中の路面勾配θRを考慮に入れている。また、その式32は、前輪10FL,10FRへの要求油圧制動トルクTb3req-FL,Tb3req-FRと後輪10RL,10RRへの要求油圧制動トルクTb3req-RL,Tb3req-RRとの間に、第5パターン制動と同じ前後制動力配分比kpが設定されていることを表したものである。
Figure 0004737058
Figure 0004737058
本実施例2のパターン制動実行手段41lには、この第7パターン制動実行時における夫々の車輪10FR,10RL,10RRへの要求油圧制動トルクTb3req-FL,Tb3req-FR,Tb3req-RL,Tb3req-RRと、この第7パターン制動実行中に車体前後加速度センサ55により検出された実際の車体前後加速度Gc3realと、を少なくともトルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)の算出を終えるまでブレーキ・モータ統合ECU41の主記憶装置等に記憶させておく。
続いて、第8パターン制動とは、第5パターン制動に対して左側前輪10FLの制動力配分(配分変更トルクTc)を右側前輪10FRと比して大きくし、更に、左側後輪10RLの制動力配分(配分変更トルクTc)を右側後輪10RRと比して大きくした制動パターンのことである。ここでも、油圧制動トルク発生装置の制動性能の低下に対応させた最適なトルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)で補正して第8パターン制動を実行することによって、この第8パターン制動実行時に運転者や車輌から要求された目標車体減速度Gcb-tが実際に車輌に発生するように下記の式33及び式34並びに上記式22の関係式を成立させる。その式33は、上記の最適なトルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)で補正して第8パターン制動を実行させた際の目標車体減速度Gcb-t(左項)と、その際に車体前後加速度センサ55により検出された実際の車体前後加速度Gc4realと、を一致させる関係式である。この式33においても、モータ加速時推定車輌総重量Mmと走行中の路面勾配θRを考慮に入れている。また、その式34は、前輪10FL,10FRへの要求油圧制動トルクTb4req-FL,Tb4req-FRと後輪10RL,10RRへの要求油圧制動トルクTb4req-RL,Tb4req-RRとの間に、第5パターン制動と同じ前後制動力配分比kpが設定されていることを表したものである。
Figure 0004737058
Figure 0004737058
ここで、この第8パターン制動を行う際には、車輌の挙動が不安定方向へと変化しないよう左右輪のどちらの制動力配分(配分変更トルクTc)を大きくするか決める。例えば、この制動力配分(配分変更トルクTc)は、先に実行されたパターン制動時の車輌の横加速度,ヨーレート若しくは操舵角θST(又は操舵輪の転舵角)の内の少なくとも1つの情報を利用して設定する。また、この制動力配分(配分変更トルクTc)の大きさについても、これと同様にして設定させてもよい。従って、この第8パターン制動を実行しても車輌の挙動を安定状態に保つことができる。
本実施例2のパターン制動実行手段41lには、この第8パターン制動実行時における夫々の車輪10FR,10RL,10RRへの要求油圧制動トルクTb4req-FL,Tb4req-FR,Tb4req-RL,Tb4req-RRと、この第8パターン制動実行中に車体前後加速度センサ55により検出された実際の車体前後加速度Gc4realと、を少なくともトルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)の算出を終えるまでブレーキ・モータ統合ECU41の主記憶装置等に記憶させておく。
一方、本実施例2のトルク補正値演算手段41kは、その第5から第8のパターン制動の実行時に主記憶装置等へと記憶させられた上記の各種情報などと、上述した各式から求めた下記の式35から式38と、を用いてトルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)の算出を行う。
Figure 0004737058
Figure 0004737058
Figure 0004737058
Figure 0004737058
ここで、本実施例2のパターン制動実行手段41lには、図14のフローチャートに示す如く、車輌が直進減速状態か否かを判断させると共にバッテリ33の蓄電状態を判断させ、直進減速状態のときで且つバッテリ33に対して蓄電不可能なときに第5から第8のパターン制動を実行させる。そして、本実施例2においても、その第5から第8のパターン制動を全て実行し終えた後でトルク補正値演算手段41kにトルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)を算出させる。
従って、本実施例2のパターン制動実行手段41lは、実施例1と同様に、油圧ブレーキ異常判定フラグ「ON」が立っているか否かの判断(ステップST510)、車輌が減速状態にあるのか否か(ブレーキONか否か)の判断(ステップST515)、車輌が直進状態にあるのか旋回状態にあるのか(操舵角θSTの絶対値が所定値Bよりも小さいか)の判断(ステップST520)、車輌が所定の減速状態にあるのか否か(要求全制動トルクTareqが所定値Dよりも大きいか)の判断(ステップST525)を行う。そして、そのステップST510,ST515,ST520,ST525の何れかにおいて否定判定が為された場合には、車輌が直進減速状態にないとして本処理を一旦終了させる。
更に、本実施例2のパターン制動実行手段41lには、バッテリ33の蓄電可能容量に余裕があるか(即ち、モータ31FL,31FR,31RL,31RRを回生状態で駆動させることができるか否か)について判断させる(ステップST517)。そして、このパターン制動実行手段41lは、このステップST517にて肯定判定が為された場合に本処理を一旦終了させる一方、このステップST517にて否定判定され、更に、上記ステップST510,ST515,ST520,ST525の全てにおいて肯定判定された場合、車輌が直進減速状態で且つバッテリ33の蓄電可能容量が足りない状態であると判断して、未だ実行されていないパターン制動で制動動作を行わせる。
本実施例2においては、最初に上述した第5パターン制動が実行済であるのか否かについて判断し(ステップST532)、これが実行されていなければ第5パターン制動で車輌を制動させる(ステップST537)。パターン制動実行手段41lは、第5パターン制動での制動動作を終えた際、この第5パターン制動実行時における夫々の車輪10FR,10RL,10RRへの要求油圧制動トルクTb1req-FL,Tb1req-FR,Tb1req-RL,Tb1req-RR及び車体前後加速度センサ55により検出された実際の車体前後加速度Gc1realをブレーキ・モータ統合ECU41の主記憶装置等に記憶させておく。そして、上記ステップST510に戻る。
一方、パターン制動実行手段41lは、第5パターン制動を実施済であれば、次に、上述した第6パターン制動が実行済であるのか否かについて判断し(ステップST542)、これが実行されていなければ第6パターン制動で車輌を制動させる(ステップST547)。このパターン制動実行手段41lは、第6パターン制動での制動動作を終えた際、この第6パターン制動実行時における夫々の車輪10FR,10RL,10RRへの要求油圧制動トルクTb2req-FL,Tb2req-FR,Tb2req-RL,Tb2req-RR及び車体前後加速度センサ55により検出された実際の車体前後加速度Gc2realをブレーキ・モータ統合ECU41の主記憶装置等に記憶させておく。そして、上記ステップST510に戻る。
また、パターン制動実行手段41lは、第6パターン制動まで実施済であれば、次に、上述した第7パターン制動が実行済であるのか否かについて判断し(ステップST552)、これが実行されていなければ第7パターン制動で車輌を制動させる(ステップST557)。このパターン制動実行手段41lは、第7パターン制動での制動動作を終えた際、この第7パターン制動実行時における夫々の車輪10FR,10RL,10RRへの要求油圧制動トルクTb3req-FL,Tb3req-FR,Tb3req-RL,Tb3req-RR及び車体前後加速度センサ55により検出された実際の車体前後加速度Gc3realをブレーキ・モータ統合ECU41の主記憶装置等に記憶させておく。そして、上記ステップST510に戻る。
続いて、パターン制動実行手段41lは、第7パターン制動まで実施済であれば、次に、上述した第8パターン制動が実行済であるのか否かについて判断し(ステップST562)、これが実行されていなければ第8パターン制動で車輌を制動させる(ステップST567)。このパターン制動実行手段41lは、第8パターン制動での制動動作を終えた際、この第8パターン制動実行時における夫々の車輪10FR,10RL,10RRへの要求油圧制動トルクTb4req-FL,Tb4req-FR,Tb4req-RL,Tb4req-RR及び車体前後加速度センサ55により検出された実際の車体前後加速度Gc4realをブレーキ・モータ統合ECU41の主記憶装置等に記憶させておく。
本実施例1のトルク補正値演算手段41kは、上記の如くして第5から第8のパターン制動を終えた後、上記ステップST537,ST547,ST557,ST567にて各々主記憶装置等に記憶された各種情報と、タイヤ半径rと、モータ加速時推定車輌総重量Mmと、前後制動力配分比kpと、配分変更トルクTcと、を適宜上記式35〜式38に代入し、夫々にトルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)を算出する(ステップST572)。
このように、本実施例2においては、バッテリ33の蓄電可能容量が足りなくても第5から第8のパターン制動を行い、トルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)を求めることができる。つまり、本実施例2は、バッテリ33が充電可能な状態になるまで待つことなくトルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)を求めることができるので、可能な限り早い段階で夫々の車輪10FL,10FR,10RL,10RRに対して要求全制動トルクTareqに応じた適切な全制動トルクTaを働かせることができるようになる。そのトルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)は、実施例1と同様に、要求油圧制動トルクToreq又は要求モータトルクTmreqの補正を行う際に利用される。
ここで、上記ステップST517にて肯定判定されてバッテリ33の蓄電可能容量に余裕があると判断された場合には、本実施例2の第5から第8のパターン制動を行ってからトルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)を算出させてもよく、実施例1の第1から第4のパターン制動を実行させた後にトルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)を算出させてもよい。
以上示した如く、本実施例2の制駆動力制御装置によれば、実施例1の制駆動力制御装置と同様の効果を奏するのみならず、バッテリ33の蓄電状態に影響されることなく夫々の車輪10FL,10FR,10RL,10RRに対して要求全制動トルクTareqに応じた適切な全制動トルクTaを働かせ、その各車輪10FL,10FR,10RL,10RRにおける加速スリップの発生を抑えることができる。
次に、本発明に係る制駆動力制御装置の実施例3を図15から図17に基づいて説明する。
本実施例3の制駆動力制御装置は、前述した実施例1又は実施例2の制駆動力制御装置において、モータ31FL,31FR,31RL,31RRに経年変化や異常による制動性能の低下が起きた際にも対応できるよう構成したものであり、それに関する以外については実施例1又は実施例2と同様に構成して同じ動作を行うようになっている。
そこで、本実施例3の車輌総重量推定手段41jについては、実施例1,2のモータ加速時推定車輌総重量Mmのみならず、油圧制動トルク発生装置及びモータ31FL,31FR,31RL,31RRで制動動作を行っているときの車輌総重量(以下、「制動時推定車輌総重量」という。)Mbについても推定させる。
例えば、本実施例3の車輌総重量推定手段41jには、図15のフローチャートに示す如く、車輌が直進減速状態か否かを判断させ、直進減速状態のときにのみ制動時推定車輌総重量Mbの推定を行わせる。
ここでは、先ず、モータ加速時推定車輌総重量Mmを求めるときのステップST310と同様に、車体速度Vが所定値Aを超えているのか否かについて判断する(ステップST710)。このステップST710にて否定判定が為された場合には、現状では制動時推定車輌総重量Mbを推定できないものと判断し、制動時推定車輌総重量演算完了フラグ「OFF」を立てさせる(ステップST740)。
車輌総重量推定手段41jは、そのステップST710にて肯定判定された場合、次に、車輌が減速状態にあるのか否かをアクセルOFFか否かの情報に基づいて判断する(ステップST715)。例えば、かかる判断は、上述したアクセル開度センサ54からの出力信号を利用して行う。この車輌総重量推定手段41jには、アクセルOFF信号が検知されなければ車輌が加速状態にあると判断させ、本推定演算処理を一旦終了させる。
一方、車輌総重量推定手段41jは、そのステップST715にて肯定判定された場合、次に、モータ加速時推定車輌総重量Mmを求めるときのステップST320と同様にして、車輌が直進状態にあるのか旋回状態にあるのかを判断する(ステップST720)。これが為、このステップST720にて否定判定(操舵角θSTの絶対値が所定値B以上であると判定)された場合には、車輌が旋回状態にあると判断して本推定演算処理を一旦終了する。
車輌総重量推定手段41jは、そのステップST720にて肯定判定された場合、次に、実施例1における油圧ブレーキ異常判定時のステップST425と同様にして、車輌が所定の減速状態にあるのか否かを判断する(ステップST725)。その際、このステップST725にて否定判定(要求全制動トルクTareqが所定値D以下であると判定)された場合には、本推定演算処理を一旦終了させる。
本実施例3の車輌総重量推定手段41jは、そのステップST725にて肯定判定された際に車輌が直進減速状態であると判断し、下記の式39を用いて制動時推定車輌総重量Mbの演算を行って(ステップST730)、制動時推定車輌総重量演算完了フラグ「ON」を立てる(ステップST735)。
Figure 0004737058
ここで、この式39の「Tbreq-FL」,「Tbreq-FR」,「Tbreq-RL」及び「Tbreq-RR」は、実施例1又は実施例2における図3のステップST65にて設定された夫々の車輪10FL,10FR,10RL,10RRに対しての要求油圧制動トルクである。また、この式39の「Tmreq-FL」,「Tmreq-FR」,「Tmreq-RL」及び「Tmreq-RR」は、そのステップST65にて設定された夫々の車輪10FL,10FR,10RL,10RRに対しての要求モータトルク(ここでは、モータ回生トルク)である。
ここで示した制動時推定車輌総重量Mbの推定演算処理は、モータ加速時推定車輌総重量Mmの推定演算時と同様に、少なくともイグニッションON信号を検知した後に1度は実行させるようにする。ここでも、その推定精度を向上させる為に、上記の推定演算処理を複数回行い、夫々の平均値を最終的な制動時推定車輌総重量Mbとして設定する。また、この車輌総重量推定手段41jは、車輌の停車時間が所定時間を超えたときにも再び制動時推定車輌総重量Mbの推定演算処理を実行するように構成しておく。更に、ここで算出された制動時推定車輌総重量Mbの情報は、少なくともトルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)の算出を終えるまでブレーキ・モータ統合ECU41の主記憶装置等に記憶させておく。
本実施例2の制動装置異常判定手段41iには、その車輌総重量推定手段41jによって推定されたモータ加速時推定車輌総重量Mmと制動時推定車輌総重量Mbの差を求めさせ、その差が所定値Fよりも大きければ経年変化や異常による油圧制動トルク発生装置又はモータ31FL,31FR,31RL,31RRの制動性能の低下が起こっていると判断させるよう構成する。その所定値Fについては、例えば、予め実験やシミュレーションを行って、それ以上差が大きくなると要求全制動トルクTareqに応じた適切な全制動トルクTaを車輪10FL,10FR,10RL,10RRに対して発生させることができなくなるような正の値を設定しておく。尚、この所定値Fは、少なくともモータ加速時推定車輌総重量Mm及び制動時推定車輌総重量Mbの推定誤差が除外できる程度の大きさにしておくことが好ましい。
例えば、本実施例2の制動装置異常判定手段41iは、先ず、図16のフローチャートに示す如く、モータ加速時推定車輌総重量演算完了フラグ「ON」が立っているか否か及び制動時推定車輌総重量演算完了フラグ「ON」が立っているか否かを判断する(ステップST810,ST815)。ここでは、その何れか一方でもフラグが立っていなければ、モータ加速時推定車輌総重量演算完了フラグ「OFF」、制動時推定車輌総重量演算完了フラグ「OFF」のフラグを立てて、一旦本判定処理を終える。
また、そのステップST810,ST815の双方にて肯定判定された場合、制動装置異常判定手段41iは、モータ加速時推定車輌総重量Mmから制動時推定車輌総重量Mbを減算した数値が所定値Fよりも大きくなっているのか否か(Mm−Mb>所定値F?)について判断する(ステップST820)。
ここで、モータ加速時推定車輌総重量Mmは、モータ31FL,31FR,31RL,31RRの制動性能が低下していれば実際のモータ力行トルクTmが要求値よりも小さくなるので、車輌が思った以上に加速しない状態となり、大きな重量に推定される。他方、制動時推定車輌総重量Mbは、油圧制動トルク発生装置又はモータ31FL,31FR,31RL,31RRの制動性能が低下していれば実際の全制動トルクTaが要求値よりも小さくなるので、車輌が思った以上に減速しない状態となり、大きな重量に推定される。つまり、モータ加速時推定車輌総重量Mmの方が制動時推定車輌総重量Mbよりも大きくなっているときには、モータ31FL,31FR,31RL,31RRの制動性能が低下していると考えられ、その逆であれば油圧制動トルク発生装置の制動性能が低下していると考えられる。
従って、制動装置異常判定手段41iは、そのステップST820にて肯定判定された場合、モータ31FL,31FR,31RL,31RRの制動性能が低下していると判断してモータ異常判定フラグ「ON」を立てる(ステップST825)。
一方、この制動装置異常判定手段41iは、そのステップST820にて否定判定された場合、次に、制動時推定車輌総重量Mbからモータ加速時推定車輌総重量Mmを減算した数値が所定値Fよりも大きくなっているのか否か(Mb−Mm>所定値F?)について判断する(ステップST830)。
そして、この制動装置異常判定手段41iは、そのステップST830にて肯定判定された場合、油圧制動トルク発生装置の制動性能が低下していると判断して油圧ブレーキ異常判定フラグ「ON」を立てる(ステップST835)。また、そのステップST830にて否定判定された場合、この制動装置異常判定手段41iは、上記ステップST840に進み、モータ加速時推定車輌総重量演算完了フラグ「OFF」、制動時推定車輌総重量演算完了フラグ「OFF」のフラグを立てる。
本実施例3においては、その判定の結果、油圧ブレーキ異常判定フラグ「ON」が立てられた場合、前述した実施例1又は実施例2と同様にして図11又は図14のフローチャート及び図12のフローチャートに進み、その図11又は図14に従ってトルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)の算出を行いつつ、そのトルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)が算出されるまではその図12に従って加速スリップ抑制制御を行う。これが為、この場合には、前述した実施例1又は実施例2と同様の効果を得ることができる。
一方、その判定の結果、モータ異常判定フラグ「ON」が立てられた場合には、図11のステップST510にて読み替えたモータ異常判定フラグ「ON」か否かの判定を行い、この図11に沿って車輌が直進減速状態であれば第1から第4のパターン制動を実行してトルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)を算出する。
このモータ異常判定フラグ「ON」の場合においても、油圧ブレーキ異常判定フラグ「ON」のときと同様に、そのトルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)が算出されるまでには時間を要する。これが為、かかる場合においても、トルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)が算出されるまでは、図17のフローチャートに示す如く、油圧ブレーキ異常判定フラグ「ON」のときと同様の加速スリップ抑制制御を実行する(ステップST610〜ST635)。そして、ここでは、トルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)が算出された後に上記式28を用いて新たな電流変換係数C2new-n(n=FL,FR,RL,RR)を求める(ステップST642)。尚、ここでは、実施例1又は実施例2における上記図3のステップST70を「油圧ブレーキ異常判定フラグON?又はモータ異常判定フラグON?」と読み替えている。
このときのブレーキ・モータ統合ECU41は、実施例1又は実施例2における図3のステップST75に進んで油圧制動トルク制御手段24とモータ制御手段32に対して指示を行う。その際、モータ制御手段32に対しては、その図3のステップST65で設定した要求モータトルクTmreqと上記ステップST642にて補正した新たな電流変換係数C2new-n{n=FL(FR,RL,RR))を上記式6に代入し、これにより得られた電圧Vmを左側前輪10FLのモータ31FLに発生させるよう指示する。
尚、この場合においても、上記式27を用いて油圧変換係数C1new-n(n=FL,FR,RL,RR)を補正し、要求油圧制動トルクToreqが補正されるように構成してもよい。
このように、本実施例3の制駆動力制御装置によれば、前述した実施例1又は実施例2の制駆動力制御装置においてモータ31FL,31FR,31RL,31RRの経年変化や異常による制動性能の低下が起きたとしても、これを把握して夫々の車輪10FL,10FR,10RL,10RRに適切な全制動トルクTaを発生させることができる。つまり、本実施例3の制駆動力制御装置は、実施例1又は実施例2の制駆動力制御装置に対してより精度の高い制動装置異常判定を行うことができるので、各車輪10FL,10FR,10RL,10RRにおける加速スリップの発生を更に精度良く抑えることができるようになる。
次に、本発明に係る制駆動力制御装置の実施例4を図18から図20に基づいて説明する。
本実施例4の制駆動力制御装置は、前述した実施例1,実施例2又は実施例3の制駆動力制御装置に対して下記の点を変更したものであり、それ以外については実施例1,実施例2又は実施例3と同様に構成する。また、本実施例4の制駆動力制御装置は、実施例1,実施例2又は実施例3の制駆動力制御装置の適用対象と同じ車輌に対して適用するものとして例示する。
前述した実施例1,実施例2又は実施例3の制駆動力制御装置においては、トルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)が算出されるまでの間の加速スリップ抑制制御実行時に、加速スリップが発生していないときの車輪10FL,10FR,10RL,10RRに対する要求モータトルク(モータ力行トルク)Tmreqを回生制動力の増加方向(「0」又は回生側)へと増加させ、その増加分だけ要求油圧制動トルクToreqを減少させている。
しかしながら、一般に、油圧制動トルク発生装置とモータ31FL,31FR,31RL,31RRとでは、油圧制動トルク制御手段24とモータ制御手段32から夫々同時に制御信号を受け取ったとしても、実際に油圧制動トルクToとモータトルクTmを各々が出力するまでに時間差が生じる。つまり、一般的にはモータ31FL,31FR,31RL,31RRの方が応答性に優れているので、モータトルクTmに対して油圧制動トルクToが遅れて出力される。従って、実施例1,実施例2又は実施例3の制駆動力制御装置において加速スリップ抑制制御を実行したときには、厳密に言えば、制動力を上昇させた要求モータトルクTmreqをモータ31FL,31FR,31RL,31RRが即座に発生させる一方で、設定された要求油圧制動トルクToreqまで油圧制動トルク発生装置が実際の油圧制動トルクToを減少させることができない。これが為、車輪10FL,10FR,10RL,10RRにおいては、加速スリップ抑制制御実行時に実際に働く全制動トルクTaが予定よりも大きくなってしまい、瞬間的にではあるが想定外に大きな総制動力が働いてしまう。そして、これにより、車輌に対して必要以上に大きな減速加速度が働く可能性があるので、その際の前方へのピッチング動作により乗り心地が悪化して運転者に不快感や違和感を覚えさせる虞がある。また、車輪10FL,10FR,10RL,10RRの減速スリップが収束しつつあるにも拘わらず再び減速スリップが発生してしまう可能性もある。
ここで、そのような総制動力の増加は、要求モータトルクTmreqをなだらかに増加させることによって解消方向へと導くことができる。しかしながら、単に要求モータトルクTmreqの変化勾配を小さくするのみでは、未だ車輪10FL,10FR,10RL,10RRに駆動トルクを発生させる虞があり、加速スリップを発生させる可能性が残っている。
そこで、本実施例4においては、加速スリップ抑制制御の要否を早い段階から推定し、その実行が必要であるならば、車輪10FL,10FR,10RL,10RRの減速スリップが収束し終える前に油圧制動トルクToの応答遅れを考慮しつつ油圧制動トルクToとモータトルクTmを変化させ始める。
ここでは加速スリップ抑制制御を実行することによってモータトルクTmをモータ力行トルクから「0」へと最終的に変化させるので、加速スリップ抑制制御開始時の要求油圧制動トルクToreqは、その応答遅れを考慮して減速スリップ収束時(モータトルクTmが「0」になったとき)の要求全制動トルクTareqとなるよう設定する。
従って、本実施例4の要求全制動トルク設定手段41eは、減速スリップ収束時の要求全制動トルクTareqを推定できるように構成しておく。例えば、この推定は、ここに至るまでの要求全制動トルクTareqの変化勾配や車輪10FL,10FR,10RL,10RRのスリップ量(車輪速度センサ51FL,51FR,51RL,51RRの検出信号等)などを参考にして行う。以下、この推定された要求全制動トルクTareqを「推定要求全制動トルクTaest」という。
また、本実施例4の要求油圧制動トルク設定手段41fは、その推定要求全制動トルクTaestを加速スリップ抑制制御開始時の要求油圧制動トルクToreqとして設定するように構成する。本実施例4の要求油圧制動トルク設定手段41fには、加速スリップ抑制制御終了時(減速スリップ収束時)までその推定要求全制動トルクTaestを要求油圧制動トルクToreqとして設定させる。実施例1においても説明したように、油圧制動トルク発生装置は、その構成部品の劣化やブレーキパッド等の過熱などが生じた際に新品時よりも制動性能が低下する。これにより、かかる場合における実際の油圧制動トルクToは、加速スリップ抑制制御開始時の実際の値から徐々に減少していき、加速スリップ抑制制御終了時(減速スリップ収束時)に推定要求全制動トルクTaestから構成部品の劣化などに相当する制動性能の低下分を減じた値となる。
ここで、このように実際の油圧制動トルクToが徐々に減少していくにも拘わらずモータトルクTmを急激に変化(増加)させた場合には、そのモータトルクTmの変化に追従して実際の全制動トルクTaが急激に変化(増加)してしまうので、収束しつつある減速スリップを再び大きくしてしまい、車輌の挙動を不安定にしてしまう可能性があるので好ましくない。これが為、モータトルクTmは、加速スリップ抑制制御開始時から加速スリップ抑制制御終了時(減速スリップ収束時)までに徐々に増加して「0」となるようにすることが望ましい。本実施例4の要求モータトルク設定手段41gは、モータトルクTmをそのように増加させる要求モータトルクTmreqが設定されるように構成する。例えば、この要求モータトルク設定手段41gには、加速スリップ抑制制御開始時の要求モータトルクTmreq-stと加速スリップ抑制制御開始時から加速スリップ抑制制御終了時(減速スリップ収束時)までの時間(=減速スリップ収束時間T2)とに基づいて要求モータトルクTmreqの変化勾配Slを算出させ、この変化勾配Slと加速スリップ抑制制御開始時からの経過時間tと加速スリップ抑制制御開始時の要求モータトルクTmreq-stとを下記の式40に代入して要求モータトルクTmreqを求めさせる。尚、ここではモータトルクTmを回生側へと増加させるので、その変化勾配Slは正の値とする。
Figure 0004737058
ところで、加速スリップ抑制制御を行う為の油圧制動トルクToとモータトルクTmの変更開始時機(加速スリップ抑制制御開始時)は、現時点で推定要求全制動トルクTaestを発生させるべく指示された油圧制動トルク発生装置がその推定要求全制動トルクTaestに相当する油圧制動トルク(油圧制動トルク発生装置の制動性能が低下していれば、その低下分を減じた値)Toを実際に出力するまでの時間(以下、「実油圧制動トルク出力時間(実機械制動トルク出力時間)」という。)T1と、現時点から起算した車輪10FL,10FR,10RL,10RRの減速スリップが収束するまでの時間(以下、「減速スリップ収束時間」という。)T2と、を用いて決定させる。従って、本実施例4のブレーキ・モータ統合ECU41には、図18に示す如く、その実油圧制動トルク出力時間T1を求める実油圧制動トルク出力時間演算手段41mと、その減速スリップ収束時間T2を求める減速スリップ収束時間演算手段41nと、が設けられている。
その実油圧制動トルク出力時間T1とは、言い換えれば、モータ力行トルクとなっている実際のモータトルクTmが油圧制動トルク発生装置の応答遅れを考慮しながら「0」に移り変わるまでに必要な時間のことである。従って、この実油圧制動トルク出力時間T1は、現時点における要求モータトルクTmreq(厳密には、暫定要求モータトルクTmpro)とモータトルク変化量ガード値SGとに基づいて下記の式41から求める。そのモータトルク変化量ガード値SGとは、要求油圧制動トルクToreqに対する実際の油圧制動トルクToの単位時間当たりの出力変化特性に基づいて決められる値であり、予め実験やシミュレーションを行い設定しておく。尚、ここで用いるモータトルク変化量ガード値SGは、油圧制動トルク発生装置の制動性能の低下が生じていないものとして求めておく。
Figure 0004737058
また、減速スリップ収束時間T2は、現時点における車輪10FL,10FR,10RL,10RRのスリップ量Qsと車輪加速度Gwとに基づいて下記の式42から求めることができる。そのスリップ量Qsは、周知の如く車輪速度センサ51FL,51FR,51RL,51RRの検出信号により得られる車輪速度と車体速度から求めることができる。また、車輪加速度Gwは、車輪速度センサ51FL,51FR,51RL,51RRの検出信号から求めることができる。尚、この減速スリップ収束時間T2を求めることによって、加速スリップ抑制制御終了時(減速スリップ収束時)を推定することができる。
Figure 0004737058
ここでは、その実油圧制動トルク出力時間T1が減速スリップ収束時間T2以上かかると判定されたときには、加速スリップ抑制制御が必要になる可能性が高いと推察できるので、その判定時を加速スリップ抑制制御開始時、即ち油圧制動トルクToとモータトルクTmの変更開始時機であると仮定する。一方、その実油圧制動トルク出力時間T1が減速スリップ収束時間T2ほどかからないと判定されたときには、加速スリップ抑制制御の必要なしと推察できる。
以下に、上述したが如く構成した本実施例4の制駆動力制御装置における加速スリップ抑制制御の動作について図19のフローチャート及び図20のタイムチャートに基づき説明する。この図19のフローチャートと図20のタイムチャートは、各車輪10FL,10FR,10RL,10RRの内の何れか1輪に対しての制御動作を示したものであり、これと同様の制御動作が全ての車輪10FL,10FR,10RL,10RRに対して別個独立に実行される。例えば、ここでは、左側前輪10FLについて代表して例示する。
本実施例4においても、先ず、ブレーキ・モータ統合ECU41には、トルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)が算出済か否かを判定させる(ステップST610)。そして、ここで否定判定されて未だトルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)が算出されていないことが判った場合、このブレーキ・モータ統合ECU41には、上述した実油圧制動トルク出力時間T1及び減速スリップ収束時間T2を算出させる(ステップST617)。このブレーキ・モータ統合ECU41は、その実油圧制動トルク出力時間T1と減速スリップ収束時間T2を比較して、実油圧制動トルク出力時間T1が減速スリップ収束時間T2以上かかるか否かについて判定する(ステップST618)。
ここで、このステップST618にて肯定判定が為された場合、この時点を加速スリップ抑制制御開始時と仮定することができるので、ブレーキ・モータ統合ECU41は、実施例1,実施例2又は実施例3における上記図3のステップST65で設定した要求モータトルクTmreqがモータ力行トルクであるのか否かについて判定する(ステップST620)。
そして、そのステップST620にて肯定判定されて左側前輪10FLのモータ31FLが力行状態にあることが判ったときには、現時点を加速スリップ抑制制御開始時として、この左側前輪10FLに対して本実施例4の加速スリップ抑制制御を行う。
先ず、ブレーキ・モータ統合ECU41は、その要求全制動トルク設定手段41eによりモータトルクTmが「0」になったときの推定要求全制動トルクTaestを算出し(ステップST645)、この推定要求全制動トルクTaestを現時点における要求油圧制動トルクToreqに設定する(ステップST650)。また、このブレーキ・モータ統合ECU41の要求モータトルク設定手段41gは、上述した要求モータトルクTmreqの変化勾配Slを算出し、これと加速スリップ抑制制御開始時からの経過時間tと加速スリップ抑制制御開始時の要求モータトルクTmreq-stとを上記式40に代入して要求モータトルクTmreqを設定する(ステップST655)。
そして、このブレーキ・モータ統合ECU41は、油圧制動トルク制御手段24とモータ制御手段32に対して指示を行い、その要求油圧制動トルクToreqと要求モータトルクTmreqを左側前輪10FLにおける油圧制動手段21FLとモータ31FLから発生させるようにする(ステップST660)。
しかる後、このブレーキ・モータ統合ECU41は、減速スリップ収束時であるのか否かを判定し(ステップST665)、減速スリップ収束時に到達するまで上記ステップST650〜ST665を繰り返す。
これにより、左側前輪10FLにおいては、要求全制動トルクTareqを変更することなくモータ31FLの力行状態を解消させることができるので、実施例1,実施例2又は実施例3の加速スリップ抑制制御実行時と同様に加速スリップの防止が可能になる。従って、本実施例4の制駆動力制御装置についても、実施例1,実施例2又は実施例3のときと同じく、制動時における車輌の減速度の低下を抑えることができる。
更に、この左側前輪10FLにおいては、油圧制動トルク発生装置とモータ31FL,31FR,31RL,31RRとの間の応答性の差を考慮に入れ、減速スリップが収束する前に最適な要求油圧制動トルクToreqと要求モータトルクTmreqを設定して出力指示を行い、実際の油圧制動トルクToの応答遅れに起因する総制動力の急激な変化(増加)を防ぎつつモータトルクTmを回生側へと増加させることができる。つまり、実際の油圧制動トルクToのなだらかな変化(減少)に合わせてモータトルクTmを回生側に(ここでは「0」になるまで)徐々に増加させているので、総制動力が急激に変化(増加)せず、また、減速スリップ収束時にモータトルクTmが回生側(「0」)へと増加する。このような加速スリップ抑制制御は、その必要性があれば実施例1,実施例2又は実施例3と同様に全ての車輪10FL,10FR,10RL,10RRに対して実行される。従って、本実施例4の制駆動力制御装置は、車輌に対する必要以上の減速加速度の発生を抑制可能であり、乗り心地の悪化を抑えて運転者への不快感や違和感を解消することができ、更に、車輪10FL,10FR,10RL,10RRの減速スリップをそのまま収束させて車輌の挙動を安定状態に保つことができる。
このような加速スリップ抑制制御を実行した後、上記ステップST665にて肯定判定された場合には、本処理を一旦終えて上記図3のステップST10に戻る。そして、上記ステップST610にて肯定判定されるまでは、加速スリップ抑制制御終了時(減速スリップ収束時)の要求油圧制動トルクToreqを保持しながら要求モータトルクTmreqを増減制御して、要求全制動トルクTareqを発生させるようにする。従って、加速スリップ抑制制御の実行後においても、制動中における車輌の減速度の低下を防ぐことができる。
この図19においては、ステップST610にて肯定判定された際に油圧変換係数C1new-n(n=FL,FR,RL,RR)の補正を行うように構成しているが、実施例1,実施例2又は実施例3で説明したように電流変換係数C2new-n(n=FL,FR,RL,RR)を補正させるようにしてもよい。
尚、上記ステップST618又はステップST620にて否定判定された場合には、上記図3のステップST75に進んで上記ステップST65にて設定された要求油圧制動トルクToreqと要求モータトルクTmreqをそのまま発生させるような指示を行う。ここではブレーキパッドに摩耗などが生じて本来の油圧制動トルクToを発生させることができなくなっているので、図20に示す如く実際の油圧制動トルクToが本来の要求油圧制動トルクToreqよりも低くなっている。
以上示した如く、本実施例4の制駆動力制御装置によれば、実施例1,実施例2又は実施例3と同様の効果を奏するのみならず、油圧制動トルク発生装置とモータ31FL,31FR,31RL,31RRとの間の応答性の差に起因する加速スリップ抑制制御実行時における総制動力の無用な(特に急激な)増加を防ぎ、上述したように乗り心地の悪化や車輌の挙動の不安定化の抑制を図ることができる。特に、この本実施例4の制駆動力制御装置は、ABS制御の本来の目的の1つでもある車輌の挙動安定化が図れるので有用である。
次に、本発明に係る制駆動力制御装置の実施例5を図21から図23に基づいて説明する。
本実施例5の制駆動力制御装置は、前述した実施例1〜4の内の何れか1つの制駆動力制御装置において、トルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)が算出されるまでの間の要求油圧制動トルクToreqと要求モータトルクTmreqの設定動作を変更したものであり、それ以外については夫々の制駆動力制御装置と同様に構成する。
ここで、油圧制動トルク発生装置の制動性能の低下によって加速スリップが発生しているときには、図21に示す如く、上述した車体速度推定手段41dがその加速スリップしている車輪(異常輪)10FL,10FR,10RL,10RRの車輪速度に基づいて実際よりも高く車体速度を推定してしまう。これにより、要求全制動トルク設定手段41eは、次工程で他の正常な車輪(正常輪)10FL,10FR,10RL,10RRが大きく減速スリップを起こしている又はロックしていると判断し、その車輪(正常輪)10FL,10FR,10RL,10RRに対しての要求全制動トルクTareqを本来要求されるべき大きさよりも低下させるので、これまでも説明したように、車輌の減速度を著しく低下させてしまう虞がある。
そこで、本実施例5においては、力行状態にあるモータ31FL,31FR,31RL,31RRを有している(即ち、モータ31FL,31FR,31RL,31RRがモータ力行トルクTmを出力している)車輪10FL,10FR,10RL,10RRについては加速スリップを発生させる虞ありと判断し、その車輪10FL,10FR,10RL,10RRを車体速度の推定演算対象から除外するように車体速度推定手段41dを構成する。つまり、本実施例5の車体速度推定手段41dは、モータ31FL,31FR,31RL,31RRがモータ回生トルクTmを発生させている車輪10FL,10FR,10RL,10RRのみを車体速度の推定演算対象の車輪とする。そして、これにより、推定車体速度の大きなズレを解消し、車輪(正常輪)10FL,10FR,10RL,10RRが制動力不足とならないようにする。
例えば、本実施例5においても、図22のフローチャートに示す如く、先ず、ブレーキ・モータ統合ECU41にトルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)が算出済か否かを判定させる(ステップST610)。そして、ここで否定判定されて未だトルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)が算出されていないことが判った場合、このブレーキ・モータ統合ECU41には、その車体速度推定手段41dにより、上記図3のステップST65にて設定された左側前輪10FLの要求モータトルクTmreqがモータ力行トルクであるのか否か判定する(ステップST670)。
本実施例5の車体速度推定手段41dは、このステップST670にて肯定判定されて左側前輪10FLのモータ31FLが力行状態にあることが判った場合、この左側前輪10FLを車体速度の推定演算対象から除外して(ステップST675)、上記図3のステップST75に進む。一方、このステップST670にて否定判定された場合には、この左側前輪10FLを車体速度の推定演算対象として残しておいて上記ステップST75に進む。
ここで、このブレーキ・モータ統合ECU41は、上述した演算処理と判定処理の一連の工程を全ての車輪10FL,10FR,10RL,10RRに対して略同時機に実行する。これが為、本実施例5の車体速度推定手段41dは、車体速度の推定演算対象から除外されている車輪(加速スリップしている異常輪)が存在しているか否かを把握することができ、その存在が認められたときにはそれ以外の車輪(正常輪)の中で最も速く回転している車輪の車輪速度を用いて推定車体速度を演算する。これにより、その推定車体速度は、図23に示す如く実際の車体速度に近づけた値となるように推定される。そして、ここで演算された推定車体速度の情報は、次工程における上記図3のステップST15の要求全制動トルクTareqの算出時や、上記図3のステップST20,ST25におけるスリップ率Sの演算時(ロック傾向及びロック解除傾向の判断時)に使用される。特に、次工程においては、加速スリップしていない車輪(正常輪)に対して適切な要求全制動トルクTareqが設定されるようになるので、この正常輪の制動力不足を防ぐことができる。
従って、本実施例5の制駆動力制御装置によれば、夫々の車輪10FL,10FR,10RL,10RRの間で油圧制動トルク発生装置に経年変化や異常が生じたものが混在していたとしても精度の高い車輪速度の推定を行うことができるので、遅くとも次工程以降において正常輪に適切な要求油圧制動トルクToreqや要求モータトルクTmreqによって全制動トルクTaを発生させることができるようになる。これが為、このように構成した制駆動力制御装置であっても、前述した実施例1〜4の内の何れか1つの制駆動力制御装置と同様の効果を奏するのみならず、トルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)が算出されるまでの間において、制動時における車輌の減速度の低下を抑えることができる。
尚、本実施例5においては、上記ステップST610にて肯定判定された際に油圧変換係数C1new-n(n=FL,FR,RL,RR)の補正を行うように構成しているが、実施例1,実施例2又は実施例3で説明したように電流変換係数C2new-n(n=FL,FR,RL,RR)を補正させるようにしてもよい。
次に、本発明に係る制駆動力制御装置の実施例6を図24及び図25に基づいて説明する。
本実施例6は、前述した実施例5の制駆動力制御装置において車体速度推定手段41dを一部変更したものであり、それ以外については実施例5と同様に構成して同じ動作を行うようになっている。つまり、本実施例6の制駆動力制御装置は、前述した実施例1〜4の内の何れか1つの制駆動力制御装置において、トルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)が算出されるまでの間の要求油圧制動トルクToreqと要求モータトルクTmreqの設定動作を変更したものである。
前述した実施例5の車体速度推定手段41dは、モータ31FL,31FR,31RL,31RRが力行状態にある場合に、これに該当する車輪10FL,10FR,10RL,10RRを異常輪(加速スリップを発生させる車輪)として捉えて車体速度の推定演算対象から除外している。
しかしながら、その異常輪として除外された車輪10FL,10FR,10RL,10RRは、実際の油圧制動トルクTo如何ではモータ31FL,31FR,31RL,31RRが力行状態にあるからといって必ずしも異常輪になるとは限らず、加速スリップを発生させない正常輪になっている場合もあり得る。実施例5の車体速度推定手段41dは、このような場合においても実際には正常輪であるその車輪10FL,10FR,10RL,10RRを異常輪として車体速度の推定演算対象から除外する。従って、この実施例5の車体速度推定手段41dは、仮にその車輪10FL,10FR,10RL,10RRが正常輪の中で最も高い車輪速度で回転していても、これよりも低い車輪速度に基づいて推定車体速度を求めてしまうので、その推定車体速度が実際よりも低くなる。そして、これにより、要求全制動トルク設定手段41eは、次工程で他の正常な車輪(正常輪)10FL,10FR,10RL,10RRが大きく加速スリップを起こしていると判断し、その車輪(正常輪)10FL,10FR,10RL,10RRに対しての要求全制動トルクTareqを本来要求されるべき大きさよりも増加させるので、車輌の減速度を著しく上昇させ、乗り心地の悪化や車輌挙動の悪化を引き起こしてしまう虞がある。
そこで、本実施例6においては、車体速度推定演算時の除外対象の車輪がより厳密に設定されるように車体速度推定手段41dを構成する。具体的に、本実施例6の車体速度推定手段41dは、モータ31FL,31FR,31RL,31RRが力行状態にある車輪10FL,10FR,10RL,10RRであっても当該車輪10FL,10FR,10RL,10RRのスリップ率Sが所定よりも小さければ、その車輪10FL,10FR,10RL,10RRの情報も含めて車体速度を推定させるように構成する。例えば、本実施例6の車体速度推定手段41dには、その除外対象の車輪の設定機能に加えて、路面μの推定演算機能と、夫々の車輪10FL,10FR,10RL,10RRの接地荷重の推定演算機能と、夫々の車輪10FL,10FR,10RL,10RRにおける加速スリップを起こす可能性のある駆動トルクの最大値(以下、「加速スリップ発生駆動トルク限界値」という。)Tdslipの推定演算機能と、を設ける。
先ず、その路面μの推定演算機能は、その技術分野における周知の方法により実行されるものであり、例えばABS制御中の車体前後加速度Gcから推定させる。ここでは、車体前後加速度センサ55により検出された車体前後加速度Gcrealを用いて路面μの推定を行わせる。
また、車輪接地荷重の推定演算機能についても、その技術分野における周知の方法により実行されるものを用意する。例えば、この車輪接地荷重の推定演算機能には、車輌重量と車輌重心位置とホイールベース長さと車体前後加速度Gcrealの夫々の情報を用いて算出させる。尚、この推定演算機能に替えて夫々の車輪10FL,10FR,10RL,10RRに荷重計などの計測手段を設け、これにより、車輪接地荷重を直接測定してもよい。
また、加速スリップ発生駆動トルク限界値Tdslipの推定演算機能には、路面μと車輪接地荷重の情報を用いて各車輪10FL,10FR,10RL,10RRの加速スリップ発生駆動トルク限界値Tdslipを各々算出させる。つまり、モータ31FL,31FR,31RL,31RRが力行状態のときには、路面μが低いほど、また、車輪接地荷重が小さいほどに加速スリップが発生し易くなるので、ここでは、その路面μと車輪接地荷重をパラメータにして加速スリップ発生駆動トルク限界値Tdslipを求めさせる。例えば、ここでは、路面μと車輪接地荷重とに対応する加速スリップ発生駆動トルク限界値Tdslipを予め実験やシミュレーションにより求め、これらをパラメータにしたマップデータ(図示略)として用意しておく。この加速スリップ発生駆動トルク限界値Tdslipは、図25に示す如く、モータ31FL,31FR,31RL,31RRの力行側に設定する。
ここで、本実施例6の車体速度推定手段41dにおいては、車体速度推定演算時の除外対象の車輪の設定機能を次のように構成する。
先ず、モータ31FL,31FR,31RL,31RRが力行状態にあったとしても、それに対して設定された要求モータトルク(モータ力行トルク)Tmreqが上記の加速スリップ発生駆動トルク限界値Tdslipよりも低ければ、その車輪10FL,10FR,10RL,10RRにおいて加速スリップの発生する可能性が低くなる。これが為、本実施例6の車体速度推定手段41dは、要求モータトルクTmreqが加速スリップ発生駆動トルク限界値Tdslip以上の場合に、これに該当する車輪10FL,10FR,10RL,10RRを異常輪(加速スリップを発生させる車輪)として捉えて車体速度の推定演算対象から除外させるように構成する。尚、本実施例6においてもこれまでの実施例1〜5と同じく力行状態の要求モータトルクTmreqは負の値になるので、車体速度推定手段41dには、その要求モータトルクTmreqの絶対値と加速スリップ発生駆動トルク限界値Tdslipの絶対値とを比較させるようにする。
また、要求モータトルク(モータ力行トルク)Tmreqが加速スリップ発生駆動トルク限界値Tdslipより低くても、車輪加速度Gwと車体前後加速度Gcの差の絶対値がある程度大きければ、その車輪10FL,10FR,10RL,10RRにおいて加速スリップ又は減速スリップの発生する可能性が高くなる。これが為、本実施例6の車体速度推定手段41dは、要求モータトルクTmreqの絶対値が加速スリップ発生駆動トルク限界値Tdslipの絶対値より小さくても、その際の車輪加速度Gwと車体前後加速度Gcの差の絶対値が所定値H以上の場合に、これに該当する車輪10FL,10FR,10RL,10RRを異常輪として捉えて車体速度の推定演算対象から除外させるように構成する。ここでは、その車体前後加速度Gcとして車体前後加速度センサ55により検出された車体前後加速度Gcrealを用いる。また、その所定値Hは、例えば、予め実験やシミュレーションを行い、車輪10FL,10FR,10RL,10RRがグリップ状態から加速スリップ状態又は減速スリップ状態へと移り変わるときの車輪加速度Gwと車体前後加速度Gcrealの差の絶対値を求めて設定しておく。
つまり、本実施例6においては、モータ31FL,31FR,31RL,31RRが力行状態にあったとしても、要求モータトルクTmreqの絶対値が加速スリップ発生駆動トルク限界値Tdslipの絶対値よりも小さく、且つ、車輪加速度Gwと車体前後加速度Gcの差の絶対値が所定値Hよりも小さければ、その車輪10FL,10FR,10RL,10RRを加速スリップ状態にない正常輪として判断させる。
例えば、本実施例5においても、図24のフローチャートに示す如く、先ず、ブレーキ・モータ統合ECU41にトルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)が算出済か否かを判定させる(ステップST610)。
このブレーキ・モータ統合ECU41の車体速度推定手段41dには、ここで否定判定されて未だトルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)が算出されていないことが判った場合に、車体前後加速度センサ55からの車体前後加速度Gcrealに基づいて路面μを算出させると共に、その車体前後加速度Gcrealやホイールベース長さなどに基づいて左側前輪10FLの車輪接地荷重を算出させる(ステップST667)。そして、この車体速度推定手段41dは、その路面μと車輪接地荷重の情報に基づいて左側前輪10FLの加速スリップ発生駆動トルク限界値Tdslipを求める(ステップST668)。
続いて、この車体速度推定手段41dは、上記図3のステップST65にて設定された左側前輪10FLの要求モータトルクTmreqがモータ力行トルクであるのか否か判定する(ステップST670)。この車体速度推定手段41dは、このステップST670で否定判定された場合には左側前輪10FLを車体速度の推定演算対象として残しておいて上記図3のステップST75に進む。
一方、本実施例6の車体速度推定手段41dは、そのステップST670で肯定判定されて左側前輪10FLのモータ31FLが力行状態にあることが判った場合、次に、その要求モータトルクTmreqの絶対値が上記ステップST668で求めた加速スリップ発生駆動トルク限界値Tdslipの絶対値以上か否かについて判断する(ステップST672)。
そして、このステップST672で否定判定された場合、この車体速度推定手段41dは、次に、左側前輪10FLの車輪加速度Gwと車体前後加速度Gcrealの差の絶対値を求め、これが所定値Hよりも小さいのか否かについて判断する(ステップST673)。
本実施例6の車体速度推定手段41dは、上記ステップST672にて肯定判定された場合又は上記ステップST673で否定判定された場合、左側前輪10FLを車体速度の推定演算対象から除外する(ステップST675)。つまり、この車体速度推定手段41dは、左側前輪10FLのモータ31FLが加速スリップ発生駆動トルク限界値Tdslipを超えた力行状態にあることが判った場合、又は、左側前輪10FLの力行状態のモータ31FLが加速スリップ発生駆動トルク限界値Tdslipを超えていなくても、車輪加速度Gwと車体前後加速度Gcの差が所定値H以上乖離していることが判った場合、左側前輪10FLを加速スリップ状態にある異常輪と判断して車体速度の推定演算対象から除外する。そして、ブレーキ・モータ統合ECU41は、上記ステップST75に進む。
一方、この車体速度推定手段41dは、上記ステップST673にて肯定判定された場合、左側前輪10FLを加速スリップ状態にない正常輪と判断し、車体速度の推定演算対象として残しておいて上記ステップST75に進む。
本実施例6においても、ブレーキ・モータ統合ECU41は、実施例5と同様に上述した演算処理と判定処理の一連の工程を全ての車輪10FL,10FR,10RL,10RRに対して略同時機に実行する。これが為、本実施例6の車体速度推定手段41dは、車体速度の推定演算対象から除外されている車輪(加速スリップしている異常輪)が存在しているか否かを把握することができ、その存在が認められたときにはそれ以外の車輪(正常輪)の中で最も速く回転している車輪の車輪速度を用いて推定車体速度を演算する。これにより、その推定車体速度は、図25に示す如く実際の車体速度に近づけた値となるように推定される。そして、ここで演算された推定車体速度の情報は、実施例5のときと同じく、次工程における上記図3のステップST15の要求全制動トルクTareqの算出時や、上記図3のステップST20,ST25におけるスリップ率Sの演算時(ロック傾向及びロック解除傾向の判断時)に使用される。特に、次工程においては、加速スリップしていない車輪(正常輪)に対して適切な要求全制動トルクTareqが設定されるようになるので、この正常輪の制動力不足を防ぐことができる。
従って、本実施例6の制駆動力制御装置によれば、車輪速度の推定精度を実施例5以上に高めることができるので、次工程以降における正常輪の全制動トルクTaを更に適切な大きさで発生させることができるようになる。これが為、このように構成した制駆動力制御装置であっても、前述した実施例1〜4の内の何れか1つの制駆動力制御装置と同様の効果を奏するのみならず、トルク補正係数Kn(n=FL,FR,RL,RR)が算出されるまでの間において、制動時における車輌の減速度の低下を更に抑えることができる。
尚、本実施例6においては、上記ステップST610にて肯定判定された際に油圧変換係数C1new-n(n=FL,FR,RL,RR)の補正を行うように構成しているが、実施例1,実施例2又は実施例3で説明したように電流変換係数C2new-n(n=FL,FR,RL,RR)を補正させるようにしてもよい。
次に、本発明に係る制駆動力制御装置の実施例7を図26に基づいて説明する。
本実施例7の制駆動力制御装置は、前述した各実施例1〜6の内の何れか1つの制駆動力制御装置においてブレーキ・モータ統合ECU41の要求油圧制動トルク設定手段41fを一部変更し、それ以外について各実施例1〜6に合わせて夫々構成したものである。
ここで、近年の車輌においては、バッテリ33の電力の用途は多岐に渡っており、その消費電力は増加の一途を辿っている。このことは本実施例7の車輌においても例外ではなく、そのバッテリ33の蓄電量が少ないときは、各モータ31FL,31FR,31RL,31RRのモータ回生トルクを増加させ、バッテリ33への充電量を増やすことが好ましい。
一方、そのバッテリ33の蓄電量が多く、それ以上充電できないときには、各モータ31FL,31FR,31RL,31RRのモータ力行トルクを増加させ、無駄なバッテリ33への電力供給を抑制することが好ましい。
そこで、本実施例7にあっては、バッテリ33の蓄電量に基づいて、油圧制動トルクToを増減させ、バッテリ33の蓄電量を常に最適な状態に保たせるよう要求油圧制動トルク設定手段41fを構成する。
具体的に、本実施例7の要求油圧制動トルク設定手段41fには、バッテリ33の蓄電量に応じて暫定要求油圧制動トルクToproの補正値(以下、「バッテリ補正値」という。)Tobatの算出を行うバッテリ補正値演算機能を設ける。そして、この要求油圧制動トルク設定手段41fは、下記の式43を用いて、最大全制動トルクTamaxと最小全制動トルクTaminの中間値からバッテリ補正値Tobatに応じて暫定要求油圧制動トルクToproを補正するよう構成する。
Figure 0004737058
ここで、このバッテリ補正値Tobatは、バッテリ容量や車輌側の消費電力量等に応じて適宜設定する。
例えば、バッテリ33の蓄電量が車輌において必要とされる基準値又は基準の範囲内にあれば、バッテリ補正値Tobatを「0」に設定して、実際上は補正がされないようにする。
また、このバッテリ補正値Tobatは、その基準値又は基準の範囲内に対してバッテリ33の蓄電量が少なく、充電を要するときであれば、モータ回生トルクが多くなるよう暫定要求油圧制動トルクToproを減少させる負の値に設定する。
一方、このバッテリ補正値Tobatは、その基準値又は基準の範囲内に対してバッテリ33の蓄電量が多く、それ以上充電できないときには、モータ力行トルクが多くなるよう暫定要求油圧制動トルクToproを増加させる正の値に設定する。
上述したが如く構成した本実施例7における制駆動力制御装置においては、次の様に制御が行われる。尚、本実施例7においては、暫定要求油圧制動トルクToproの演算処理に係る部分以外は前述した各実施例1〜6と同じであるので、その相違点のみについて説明し、他は省略する。
本実施例7のブレーキ・モータ統合ECU41は、その要求油圧制動トルク設定手段41fが暫定要求油圧制動トルクToproを求める前に、バッテリ33の蓄電量に応じてバッテリ補正値Tobatを求める。
そして、その要求油圧制動トルク設定手段41fは、そのバッテリ補正値Tobatと先に求めた最大全制動トルクTamax及び最小全制動トルクTaminを上記式43に代入して暫定要求油圧制動トルクToproを求める。
例えば、バッテリ33の蓄電量が基準値又は基準の範囲内よりも多く、それ以上充電できないときには、本実施例7の要求油圧制動トルク設定手段41fは、図26のタイムチャートに示す如く、左側前輪10FLの要求油圧制動トルクToreqが最大全制動トルクTamaxと最小全制動トルクTaminの中間値に対してバッテリ補正値Tobat分だけ増加するよう暫定要求油圧制動トルクToproを求める。これにより、そのモータ31FLにおいてはモータ力行トルクが多くなり、無駄なバッテリ33への電力供給が抑制されて当該バッテリ33の蓄電量を最適な状態に保つことができる。
一方、バッテリ33の蓄電量が基準値又は基準の範囲内に対してバッテリ33の蓄電量が少なく、充電を要するときには、本実施例7の要求油圧制動トルク設定手段41fは、図26のタイムチャートに示す如く、左側前輪10FLの要求油圧制動トルクToreqが最大全制動トルクTamaxと最小全制動トルクTaminの中間値に対してバッテリ補正値Tobat分だけ減少するよう暫定要求油圧制動トルクToproを求める。これにより、そのモータ31FLにおいてはモータ回生トルクが多くなり、バッテリ33への充電量が増加して当該バッテリ33の蓄電量を最適な状態に保つことができる。
また、バッテリ33の蓄電量が基準値又は基準の範囲内にある最適なものである場合には、本実施例7の要求油圧制動トルク設定手段41fは、バッテリ補正値Tobatを「0」にして、前述した各実施例1〜6の場合と同様に左側前輪10FLの要求油圧制動トルクToreqが最大全制動トルクTamaxと最小全制動トルクTaminの中間値になるよう暫定要求油圧制動トルクToproを求める。
ここで、本実施例7の制駆動力制御装置においても、加速スリップ抑制制御を行う際には、そのようなバッテリ33の蓄電量を考慮した暫定要求油圧制動トルクToproが算出されないように要求油圧制動トルク設定手段41fを構成しておく。これにより、この本実施例7の制駆動力制御装置においても、各実施例1〜6と同様の効果を得ることができる。
以上示した如く、本実施例7の制駆動力制御装置によれば、前述した各実施例1〜6と同様の効果に加えて、バッテリ33の蓄電量を常に最適な状態に保つことができる。
次に、本発明に係る制駆動力制御装置の実施例8を図27及び図28に基づいて説明する。
本実施例8の制駆動力制御装置は、前述した各実施例1〜6の内の何れか1つの制駆動力制御装置においてブレーキ・モータ統合ECU41の要求油圧制動トルク設定手段41fを一部変更し、それ以外について各実施例1〜6に合わせて夫々構成したものである。
具体的に、本実施例8は、実施例1において例示した回生側要求油圧制動トルク更新判断閾値Tm1bと力行側要求油圧制動トルク更新判断閾値Tm2bを用いずとも可能な限り要求油圧制動トルクToreqの更新処理を行わずに済むよう構成したものである。
そこで、本実施例8の要求油圧制動トルク設定手段41fには、先ず、要求モータトルクTmreq(演算処理時においては暫定要求モータトルクTmpro)に対するモータトルク出力限界値Tmlim(モータ回生トルク出力限界値Tm1lim、モータ力行トルク出力限界値Tm2lim)までの余裕代(以下、「モータ余裕トルク」という。)Tmmarを用いて要求油圧制動トルクToreqの更新処理の要否を判断させる。
例えば、そのモータ余裕トルクTmmarとしては、ABS制御中におけるモータ31FL,31FR,31RL,31RRのモータトルクTmの最大値(以下、「最大モータトルク」という。)Tmmaxを求め、この最大モータトルクTmmaxを下記の式44の如くモータトルク出力限界値Tmlimから減算した値を用いる。
Figure 0004737058
ここで、そのモータトルク出力限界値Tmlimと最大モータトルクTmmaxは夫々に回生側と力行側の値を有しており、これが為、具体的には下記の式45,46を用いて別個に回生側と力行側のモータ余裕トルクTmmarを求める。その式45に示す「Tm1mar」は回生側モータ余裕トルクを表し、「Tm1max」は回生側の最大モータトルク(以下、「最大モータ回生トルク」という。)を表している。また、その式46に示す「Tm2mar」は力行側モータ余裕トルクを表し、「Tm2max」は力行側の最大モータトルク(以下、「最大モータ力行トルク」という。)を表している。ここでは、その最大モータ回生トルクTm1maxを正の値とし、最大モータ力行トルクTm2maxを負の値としている。
Figure 0004737058
Figure 0004737058
本実施例8にあっては、要求全制動トルクTareqが最大全制動トルクTamaxに回生側モータ余裕トルクTm1marを加算した値(Tamax+Tm1mar)と最小全制動トルクTaminに力行側モータ余裕トルクTm2marを加算した値(Tamin+Tm2mar)との間にある場合に、要求油圧制動トルクToreqを更新させずに一定に保ち続けさせるよう要求油圧制動トルク設定手段41fを構成する。
一方、この要求油圧制動トルク設定手段41fは、要求全制動トルクTareqがその「Tamax+Tm1mar」以上となった場合、又は要求全制動トルクTareqがその「Tamin+Tm2mar」以下となった場合に、要求油圧制動トルクToreqを更新させるよう構成する。ここでは、そのような状況になった後、新たな最小全制動トルクTaminが算出された際に、主記憶装置等に記憶されている要求油圧制動トルク既算値Toreqを削除するよう要求油圧制動トルク設定手段41fを構成する。ここでいう要求油圧制動トルク既算値Toreqとは、前述した式2に基づき算出されて設定された要求油圧制動トルクToreqのことをいい、後述するが如く要求油圧制動トルクToreqとして設定されるモータトルク出力限界値Tmlim等は含まない。
以下に、本実施例8の制駆動力制御装置における要求油圧制動トルクToreqと要求モータトルクTmreqの設定動作について図27のフローチャート及び図28のタイムチャートに基づき説明する。この図27のフローチャートと図28のタイムチャートは、各車輪10FL,10FR,10RL,10RRの内の何れか1輪に対しての制御動作を示したものであり、これと同様の制御動作が全ての車輪10FL,10FR,10RL,10RRに対して別個独立に実行される。例えば、ここでは、左側前輪10FLについて代表して例示する。また、以下においては、実施例1の図4のフローチャートを基にした制駆動力制御装置について例示する。
尚、その図27に示すステップST225〜ST270までの演算処理及び判定処理は、図6のフローチャートのステップST225〜ST270までと同じである。
ここで、本実施例8におけるブレーキ・モータ統合ECU41の要求油圧制動トルク設定手段41fは、要求全制動トルクTareqが「Tamax+Tm1mar」以上になった場合、又は要求全制動トルクTareqがその「Tamin+Tm2mar」以下になった場合、その後(換言すれば、モータトルクTmがモータトルク出力限界値Tmlimに達した後)、新たな最小全制動トルクTaminが算出された際に主記憶装置等に記憶されている要求油圧制動トルク既算値Toreqを削除している。
先ず、本実施例8のブレーキ・モータ統合ECU41は、その要求油圧制動トルク設定手段41fにより、上述した式45,46を用いて回生側モータ余裕トルクTm1mar及び力行側モータ余裕トルクTm2marを算出する(ステップST212)。
このステップST212においては、上記図3のステップST25,ST35にて最大全制動トルクTamaxと最小全制動トルクTaminとが求められた各々の時点における左側前輪10FLの暫定要求モータトルクTmproを夫々最大モータ回生トルクTm1max,最大モータ力行トルクTm2maxとし、これらを上記式45,46に代入している。
続いて、その要求油圧制動トルク設定手段41fは、上記図3のステップST15で求めた要求全制動トルクTareqが上記図3のステップST25で求めた最大全制動トルクTamaxと上記の回生側モータ余裕トルクTm1marとを加算した値以上で有るか否か(Tareq≧Tamax+Tm1mar)を判定する(ステップST217)。
ここで、否定判定が為されたときは、次に、その要求全制動トルクTareqが上記図3のステップST35で求めた最小全制動トルクTaminに上記の力行側モータ余裕トルクTm2marを加算した値以下で有るか否か(Tareq≦Tamin+Tm2mar)を判定する(ステップST222)。
そして、このステップST222にて否定判定が為された場合、この要求油圧制動トルク設定手段41fは、ステップST225に進み、要求油圧制動トルク既算値Toreqの有無に応じた左側前輪10FLの要求油圧制動トルクToreqと要求モータトルクTmreqを設定する。従って、そのステップST225にて要求油圧制動トルク既算値Toreqが存在しているとの判定がされた場合には、新たな最小全制動トルクTaminが求められたとしても、左側前輪10FLの要求油圧制動トルクToreqが前回から更新されない。一方、そのステップST225にて否定判定が為された場合には、左側前輪10FLの要求油圧制動トルクToreqが新たな最大全制動トルクTamaxと最小全制動トルクTaminの中間値に設定されて更新される。
また、本実施例8の要求油圧制動トルク設定手段41fは、上記ステップST217にて肯定判定が為された場合に、ステップST250に進んで暫定要求モータトルクTmproがモータ回生トルク出力限界値Tm1lim以上であるか否かを判定し、上記ステップST222にて肯定判定が為された場合に、ステップST255に進んで暫定要求モータトルクTmproがモータ力行トルク出力限界値Tm2lim以下であるか否かを判定する。そして、その夫々の判定結果に応じて前述した図6のときと同様に左側前輪10FLの要求油圧制動トルクToreqと要求モータトルクTmreqを設定する。
従って、そのステップST250又はステップST255にて否定判定が為された場合には、要求油圧制動トルク既算値Toreqの有無に応じて上記と同様に要求油圧制動トルクToreqの更新又は非更新が決められる。一方、この要求油圧制動トルク設定手段41fは、上記ステップST250又はステップST255にて肯定判定が為された場合には、要求油圧制動トルクToreqが新たなものへと更新される。
この本実施例8のブレーキ・モータ統合ECU41は、上述した演算処理と判定処理をABS制御実行中に繰り返し、図28に示す如く、要求全制動トルクTareqが「Tamax+Tm1mar」と「Tamin+Tm2mar」との間にある限り、新たな最大全制動トルクTamaxと最小全制動トルクTaminが求められたとしても要求油圧制動トルクToreqを更新させない。
このように、本実施例8の制駆動力制御装置においても、要求油圧制動トルクToreqの値が頻繁に更新されることはない。これが為、本実施例8の制駆動力制御装置は、モータ31FL,31FR,31RL,31RRのモータトルクTmの増減制御によって要求全制動トルクTareqの変化に対応させ、全制動トルクTaを精度良く且つ応答性良く発生させることができ、前述した各実施例1〜6と同様の効果を得ることが可能になる。
尚、本実施例8にあっても、前述した実施例7のバッテリ補正値Tobatを求め、バッテリ33の蓄電量に応じた暫定要求油圧制動トルクToproの補正を行うよう構成してもよい。例えば、かかる補正を本実施例8に適用する際には、その実施例7と同様に本実施例8のステップST50の演算式を上述した式43に置き換える。また、本実施例8のステップST55で設定した暫定要求油圧制動トルクToproに対してバッテリ補正値Tobatを加算してもよい。これにより、上述した本実施例8の有用な効果に加えて、バッテリ33の蓄電量を常に最適な状態に保つことも可能になる。
ここで、上述した各実施例1〜8においては夫々の車輪10FL,10FR,10RL,10RRに各々モータ31FL,31FR,31RL,31RRを備えた車輌に対する制駆動力制御装置を例示したが、その各実施例1〜8における制駆動力制御装置は、必ずしもかかる態様の車輌のみに限定して適用し得るものではない。例えば、左右夫々の前輪にのみモータが配備された車輌又は後輪に左右夫々若しくは1つモータが配備された車輌などに対して適用してもよい。
以上のように、本発明に係る制駆動力制御装置は、機械制動力と回生制動力を発生させる制動力発生装置の制御技術に係り、特に、その制動力発生装置に経年変化や異常が生じて制動性能が低下したとしても車輪に対して適切な制動トルクを発生させる技術に有用である。
本発明に係る制駆動力制御装置の構成を示すブロック図である。 モータの出力限界をモータ回転数(車輪速度)との関係から見た図である。 本発明に係る制駆動力制御装置の全体動作を説明するフローチャートである。 実施例1における要求油圧制動トルクと要求モータトルクの設定動作について説明するフローチャートである。 油圧制動トルク発生装置及びモータの何れもが正常であるときの車輌におけるある一輪の全制動トルクと油圧制動トルクとモータトルクとの関係を示すタイムチャートであって、図4の設定動作に基づいたものである。 実施例1における要求油圧制動トルクと要求モータトルクの他の設定動作について説明するフローチャートである。 油圧制動トルク発生装置及びモータの何れもが正常であるときの車輌におけるある一輪の全制動トルクと油圧制動トルクとモータトルクとの関係を示すタイムチャートであって、図6の設定動作に基づいたものである。 油圧制動トルク発生装置の制動性能が低下しているときの車輌におけるある一輪の全制動トルクと油圧制動トルクとモータトルクとの関係を示すタイムチャートであって、加速スリップ抑制制御が適用される前の状態について示す図である。 モータ加速時推定車輌総重量の演算動作を説明するフローチャートである。 油圧ブレーキ異常判定動作について説明するフローチャートである。 実施例1のトルク補正係数の演算動作について説明するフローチャートである。 トルク補正係数演算終了前後における実施例1の加速スリップ抑制制御動作や油圧変換係数の演算動作について説明するフローチャートである。 油圧制動トルク発生装置の制動性能が低下しているときの車輌におけるある一輪の全制動トルクと油圧制動トルクとモータトルクとの関係を示すタイムチャートであって、実施例1の加速スリップ抑制制御実行時の状態について示す図である。 実施例2のトルク補正係数の演算動作について説明するフローチャートである。 制動時推定車輌総重量の演算動作を説明するフローチャートである。 実施例3における油圧ブレーキ異常判定とモータ異常判定の動作について説明するフローチャートである。 トルク補正係数演算終了前後における実施例3の加速スリップ抑制制御動作や電流変換係数の演算動作について説明するフローチャートである。 本発明に係る制駆動力制御装置の実施例4の構成を示すブロック図である。 トルク補正係数演算終了前後における実施例4の加速スリップ抑制制御動作や油圧変換係数の演算動作について説明するフローチャートである。 油圧制動トルク発生装置の制動性能が低下しているときの車輌におけるある一輪の全制動トルクと油圧制動トルクとモータトルクとの関係を示すタイムチャートであって、実施例4の加速スリップ抑制制御実行時の状態について示す図である。 油圧制動トルク発生装置の制動性能が低下しているときの車輌におけるある一輪の全制動トルクと油圧制動トルクとモータトルクとの関係を示すタイムチャートであって、車体速度推定精度向上制御が適用される前の状態について示す図である。 トルク補正係数演算終了前後における実施例5の車体速度推定精度向上制御動作や油圧変換係数の演算動作について説明するフローチャートである。 油圧制動トルク発生装置の制動性能が低下しているときの車輌におけるある一輪の全制動トルクと油圧制動トルクとモータトルクとの関係を示すタイムチャートであって、実施例5の車体速度推定精度向上制御実行後の状態について示す図である。 トルク補正係数演算終了前後における実施例6の車体速度推定精度向上制御動作や油圧変換係数の演算動作について説明するフローチャートである。 油圧制動トルク発生装置の制動性能が低下しているときの車輌におけるある一輪の全制動トルクと油圧制動トルクとモータトルクとの関係を示すタイムチャートであって、実施例6の車体速度推定精度向上制御実行後の状態について示す図である。 油圧制動トルク発生装置及びモータの何れもが正常であるときの車輌におけるある一輪の全制動トルクと油圧制動トルクとモータトルクとの関係を示すタイムチャートであって、バッテリの蓄電量を考慮に入れた実施例7の図である。 実施例8における要求油圧制動トルクと要求モータトルクの設定動作について説明するフローチャートである。 油圧制動トルク発生装置及びモータの何れもが正常であるときの車輌におけるある一輪の全制動トルクと油圧制動トルクとモータトルクとの関係を示すタイムチャートであって、図27の設定動作に基づいたものである。
符号の説明
10FL,10FR,10RL,10RR 車輪
21FL,21FR,21RL,21RR 油圧制動手段
22FL,22FR,22RL,22RR 油圧配管
23 ブレーキアクチュエータ
24 油圧制動トルク制御手段
25 ブレーキペダル
31FL,31FR,31RL,31RR モータ
32 モータ制御手段
33 バッテリ
41 ブレーキ・モータ統合ECU
41a ロック傾向検出手段
41b ロック解除傾向検出手段
41c スリップ率演算手段
41d 車体速度推定手段
41e 要求全制動トルク設定手段
41f 要求油圧制動トルク設定手段
41g 要求モータトルク設定手段
41h 実全制動トルク演算手段
41i 制動装置異常判定手段
41j 車輌総重量推定手段
41k トルク補正値演算手段
41l パターン制動実行手段
41m 実油圧制動トルク出力時間演算手段
41n 減速スリップ収束時間演算手段
51FL,51FR,51RL,51RR 車輪速度センサ
52 ペダル位置検出センサ
53 操舵角センサ
54 アクセル開度センサ
55 車体前後加速度センサ
C1new 油圧変換係数
C2new 電流変換係数
Gcreal 実際の車体前後加速度
Gcspeed 車体速度から推定された車体前後加速度
Gcb 目標車体減速度
Gw 車輪加速度
n(n=FL,FR,RL,RR) トルク補正係数(トルク補正値)
kp 前後制動力配分比
Mb 制動時推定車輌総重量
Mm モータ加速時推定車輌総重量
Po 油圧
Qs スリップ量
r タイヤ半径
S スリップ率
SG モータトルク変化量ガード値
Sl 要求モータトルクの変化勾配
T1 実油圧制動トルク出力時間(実機械制動トルク出力時間)
T2 減速スリップ収束時間
Ta 全制動トルク
Taest 推定要求全制動トルク
Tamax 最大全制動トルク
Tamin 最小全制動トルク
Tareq 要求全制動トルク
Tc 配分変更トルク
Tdslip 加速スリップ発生駆動トルク限界値
Tm モータトルク
Tmb 要求油圧制動トルク更新判断閾値
Tm1b 回生側要求油圧制動トルク更新判断閾値
Tm2b 力行側要求油圧制動トルク更新判断閾値
Tmlim モータトルク出力限界値
Tm1lim モータ回生トルク出力限界値
Tm2lim モータ力行トルク出力限界値
Tmmar モータ余裕トルク
Tm1mar 回生側モータ余裕トルク
Tm2mar 力行側モータ余裕トルク
Tmmax 最大モータトルク
Tm1max 最大モータ回生トルク
Tm2max 最大モータ力行トルク
Tmpro 暫定要求モータトルク
Tmreq 要求モータトルク
Tmreq-c 補正要求モータトルク
Tmreq-st 加速スリップ抑制制御開始時の要求モータトルク
To 油圧制動トルク
Topro 暫定要求油圧制動トルク
Toreq 要求油圧制動トルク
t 加速スリップ抑制制御開始時からの経過時間
V 車体速度
Vm 電圧
θAC アクセル開度
θR 路面勾配
θST 操舵角

Claims (8)

  1. 全ての車輪の機械制動トルクを個別に制御する機械制動トルク制御手段と、該車輪に発生させるモータトルクをモータ毎に制御するモータ制御手段と、運転者又は車輌から要求された車輌への目標制動力に応じた車輪への要求全制動トルクを算出して設定する要求全制動トルク設定手段と、前記機械制動トルク制御手段の制御要求値たる車輪への要求機械制動トルク及び前記モータ制御手段の制御要求値たる車輪への要求モータトルクを前記要求全制動トルクに基づき各々算出して設定する要求機械制動トルク設定手段及び要求モータトルク設定手段と、を備えた制駆動力制御装置において、
    前記車輌の目標制動力と実際の車輌の制動力との差が所定値を超えたときに機械制動トルク発生装置又はモータに異常ありと判定する制動装置異常判定手段と、前記車輌の目標制動力と実際の車輌の制動力とが一致するように夫々の車輪に対して所定の制動トルクを発生させるパターン制動を行うパターン制動実行手段と、を設け、
    前記制動装置異常判定手段が異常ありと判定した際に、前記車輌の目標制動力と実際の車輌の制動力とが一致するよう全ての前記車輪に対して機械制動トルクのみで前記所定の制動トルクを発生させるパターン制動を行い、且つ、前記車輌の目標制動力と実際の車輌の制動力とが一致するように、前記各車輪の内の一輪に対して機械制動トルク及びモータトルクで前記所定の制動トルクを発生させると共に、残りの車輪に対して機械制動トルクのみで前記所定の制動トルクを発生させるパターン制動をその車輪と制動トルクの組み合わせを入れ替えて複数回行い、該全てのパターン制動における夫々の車輪間の全制動トルクの対応関係に基づいて当該各車輪の前記要求機械制動トルク又は前記要求モータトルクを補正することを特徴とする制駆動力制御装置。
  2. 前記要求機械制動トルク設定手段又は前記要求モータトルク設定手段は、前記パターン制動実行手段が行った全てのパターン制動における夫々の車輪間の全制動トルクの対応関係に基づいて当該各車輪のトルク補正値を求め、前記制動装置異常判定手段が異常ありと判定しているときに設定された前記要求機械制動トルク又は前記要求モータトルクを前記トルク補正値によって補正するよう構成したことを特徴とする請求項1記載の制駆動力制御装置。
  3. 全ての車輪の機械制動トルクを個別に制御する機械制動トルク制御手段と、該車輪に発生させるモータトルクをモータ毎に制御するモータ制御手段と、運転者又は車輌から要求された車輌への目標制動力に応じた車輪への要求全制動トルクを算出して設定する要求全制動トルク設定手段と、前記機械制動トルク制御手段の制御要求値たる車輪への要求機械制動トルク及び前記モータ制御手段の制御要求値たる車輪への要求モータトルクを前記要求全制動トルクに基づき各々算出して設定する要求機械制動トルク設定手段及び要求モータトルク設定手段と、を備えた制駆動力制御装置において、
    前記車輌の目標制動力と実際の車輌の制動力との差が所定値を超えたときに機械制動トルク発生装置又はモータに異常ありと判定する制動装置異常判定手段と、前記車輌の目標制動力と実際の車輌の制動力とが一致するように前記各車輪の内の一輪に対してのみ機械制動トルク及びモータトルクを発生させる一方で残りの車輪に対して機械制動トルクのみを発生させるパターン制動を車輪毎に行うパターン制動実行手段と、を設け、前記制動装置異常判定手段が異常ありと判定した際に、前記パターン制動実行手段が行った全てのパターン制動における夫々の車輪間の全制動トルクの対応関係に基づいて当該各車輪の前記要求機械制動トルク又は前記要求モータトルクを補正するよう前記要求機械制動トルク設定手段又は前記要求モータトルク設定手段を構成したことを特徴とする制駆動力制御装置。
  4. 全ての車輪の機械制動トルクを個別に制御する機械制動トルク制御手段と、該車輪に発生させるモータトルクをモータ毎に制御するモータ制御手段と、運転者又は車輌から要求された車輌への目標制動力に応じた車輪への要求全制動トルクを算出して設定する要求全制動トルク設定手段と、前記機械制動トルク制御手段の制御要求値たる車輪への要求機械制動トルク及び前記モータ制御手段の制御要求値たる車輪への要求モータトルクを前記要求全制動トルクに基づき各々算出して設定する要求機械制動トルク設定手段及び要求モータトルク設定手段と、を備えた制駆動力制御装置において、
    前記車輌の目標制動力と実際の車輌の制動力との差が所定値を超えたときに機械制動トルク発生装置又はモータに異常ありと判定する制動装置異常判定手段と、前記車輌の目標制動力と実際の車輌の制動力とが一致するように前記各車輪の内の少なくとも一輪と残りの車輪との間で制動力配分を変えて機械制動トルクのみを発生させる複数のパターン制動を行うパターン制動実行手段と、を設け、前記制動装置異常判定手段が前記機械制動トルク発生装置に異常ありと判定した際に、前記パターン制動実行手段が行った全てのパターン制動における夫々の車輪間の全制動トルクの対応関係に基づいて当該各車輪の前記要求機械制動トルク又は前記要求モータトルクを補正するよう前記要求機械制動トルク設定手段又は前記要求モータトルク設定手段を構成したことを特徴とする制駆動力制御装置。
  5. 前記パターン制動実行手段は、左右輪で制動力配分を変更するパターン制動の場合、車輌の挙動の安定状態を保つことが可能な左右輪間の制動力配分を設定するよう構成したことを特徴とする請求項4記載の制駆動力制御装置。
  6. 前記パターン制動実行手段は、左右輪で制動力配分を変更するパターン制動の場合、車輌の横加速度,車輌のヨーレート若しくはステアリングホイールの操舵角又は操舵輪の転舵角の内の少なくとも1つの情報を用いて前記左右輪間の制動力配分を設定するよう構成したことを特徴とする請求項5記載の制駆動力制御装置。
  7. 前記制動装置異常判定手段は、前記要求機械制動トルク及び前記要求モータトルクを用いて求めた目標車体減速度と実際の車体減速度との差が所定値を超えたときに機械制動トルク発生装置又はモータに異常ありと判定するよう構成したことを特徴とする請求項1から6の内の何れか1つに記載の制駆動力制御装置。
  8. 車輪のロック傾向を検出するロック傾向検出手段と、車輪のロック解除傾向を検出するロック解除傾向検出手段と、を新たに設け、
    前記要求機械制動トルク設定手段は、ロック傾向検出時及びロック解除傾向検出時における夫々の全制動トルクの間の値に要求機械制動トルクを設定するよう構成したことを特徴とする請求項1から7の内の何れか1つに記載の制駆動力制御装置。
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