JP4058068B2 - ブレーキ制御装置 - Google Patents
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このブレーキ制御装置においては、例えば、右後輪のブレーキ装置が1つ異常である場合には正常な左後輪のブレーキ装置の作動が禁止され、左前輪のブレーキ装置と左後輪のブレーキ装置との2つが異常である場合には、正常な右後輪のブレーキ装置の作動が禁止される。その結果、1つ以上のブレーキ装置が異常となった場合における車両の左側と右側とのブレーキ力の差が小さくされるため、車両の操縦安定性の低下を抑制することができる。
具体的には、ブレーキ制御装置において、車両の幅方向のいずれか一方の側にある異常であると検出されたブレーキ装置の個数と、走行速度とに基づいて、操縦安定性をほぼ良好な状態に保ちつつ、正常なブレーキ装置を有効に利用可能とすることである。
異常であるブレーキ装置が車両の幅方向のいずれか一方の側に2つある場合と1つの場合とでは、2つある場合の方が、正常なブレーキ装置を作動させた場合に生じる一方の側と他方の側とのブレーキ力の差が大きくなることが多い。そのため、これらのブレーキ力差を許容すると操縦安定性が著しく低下するおそれがある。そこで、請求項1に係るブレーキ制御装置においては、走行速度が設定速度以上である場合に正常なブレーキ装置のうちの前記異常が検出されたブレーキ装置とは前記車両の幅方向の反対側のブレーキ装置の少なくとも1つのブレーキ力を小さくする場合の、その設定速度が、個数が2つの場合は1つの場合より小さい値とされる。
請求項3に記載のブレーキ制御装置においては、前記異常時ブレーキ制御部が、前記少なくとも1つの正常なブレーキ装置のブレーキ力を、ブレーキ操作量で決まる大きさより小さいが、0よりは大きい値となるように制御する制御部を含むものとされる。
請求項4に記載のブレーキ制御装置においては、前記異常時ブレーキ制御部が、前記一方の側の後輪のブレーキ装置が異常である場合において、前記車両の走行速度が前記設定速度以上である場合には、前記正常なブレーキ装置すべてを作動させ、前記一方の側の前輪のブレーキ装置が異常である場合において、前記車両の走行速度が前記設定速度以上である場合には、前記正常なブレーキ装置のうちの少なくとも1つを作動させない手段を含むものとされる。
車両の走行速度が設定速度より小さい場合は正常なブレーキ装置をすべて作動させても、操縦安定性をほぼ良好な状態に保ち得るのであり、正常なブレーキ装置の有効利用を図ることができる。それに対して、設定速度以上である場合には、例えば、異常であるブレーキ装置に対応する車輪の位置に応じて決まる位置のブレーキ装置、すなわち、異常であるブレーキ装置と車両の幅方向の反対側のブレーキ装置の少なくとも1つの作動を禁止することが望ましい。車両の幅方向の一方の側と他方の側とのブレーキ力の差を小さくすることができ、操縦安定性の低下を抑制することができる。
請求項5に記載のブレーキ制御装置においては、前記異常時ブレーキ制御部が、前記少なくとも1つの正常なブレーキ装置のブレーキ力の増加勾配と減少勾配との少なくとも一方を、異常なブレーキ装置が検出されない場合に比較して抑制する変化勾配抑制部を含むものとされる。
ブレーキ力の変化勾配を抑制すれば、幅方向の一方の側と他方の側とのブレーキ力差の変化勾配が緩やかになる。ブレーキ力差が急激に変化することが回避されるため、ブレーキ力差に起因するヨーモーメントの変化を抑制することができ、ヨーモーメントの変化に伴って車両の挙動が変わっても、運転者の操舵によって容易に修正することができる。
増加勾配と減少勾配との少なくとも一方が抑制されるブレーキ装置は、正常なブレーキ装置すべてであっても、異常なブレーキ装置と幅方向の反対側に位置する正常なブレーキ装置の少なくとも1つであってもよい。
なお、抑制された増加勾配と減少勾配との少なくとも一方は、常に一定の大きさとしても、車両の走行状態等に基づいた大きさとしてもよい。
請求項6に記載のブレーキ制御装置においては、前記変化勾配抑制部が、前記正常なブレーキ装置のうち前記異常時ブレーキ制御部により作動させられるブレーキ装置すべてのブレーキ力の増加勾配と減少勾配との少なくとも一方を抑制するものとされる。
図1に示すように、本ブレーキシステムは、4つのブレーキ装置を含むものである。ブレーキ装置10〜16は、左前輪20,右前輪22,左後輪24,右後輪26にそれぞれ設けられた電動ブレーキ装置であり、電動アクチュエータ(電気制御アクチュエータ)としての電動モータ28〜31と、電動モータ28〜31への供給電流を制御するモータコントローラ34〜37と、電動モータ28〜31の作動状態を検出する図示しない1つ以上のセンサとを含むものである。電動モータ28〜31の駆動により車体側部材に回転不能に保持された摩擦係合部材が車輪20〜26とともに回転するブレーキ回転体に押し付けられることによってブレーキ力が発生させられる。この摩擦係合部材のブレーキ回転体への押付力が電動モータ28〜31への供給電流の制御により制御され、ブレーキ力が制御される。
なお、ブレーキの作動状態を検出するセンサを設けることもできる。電動モータの作動状態とブレーキの作動状態とに基づけば、電動モータやブレーキが異常であるか否かを検出することができる。
ブレーキ操作量検出装置54は、ブレーキ操作部材52に加えられる操作ストロークや操作力を検出するものであり、ヨーレイトセンサ56は、車両の鉛直軸回りの回転速度を検出するものである。ヨーレイト,車速,車両の構造を表すデータ等に基づいて舵角が検出される。車速センサ58は、車両の走行速度を検出するものであるが、車輪速に基づいて検出するものであっても、車両の駆動装置の出力軸の回転数等に基づいて検出するものであってもよい。
すべての電動ブレーキ装置10〜16が正常である場合には、要求ブレーキ力がブレーキ操作量に応じて演算により求められ、要求ブレーキ力を表す情報がモータコントローラ34〜37にそれぞれ出力される。その要求ブレーキ力に応じて、電動モータ28〜31がそれぞれモータコントローラ34〜37により制御される。
また、電動ブレーキ装置10〜16の少なくとも1つに異常が検出された場合には、それに応じて正常な電動ブレーキ装置が制御される。
まず、4つの電動ブレーキ装置10〜16のうちの1つに異常が生じた場合について説明する。
後輪側の電動ブレーキ装置14,16のいずれか一方に異常が検出された場合には、正常な電動ブレーキ装置すべての作動が許可される。2つの前輪20,22と1つの後輪を含む3輪でブレーキが作動させられても、車両の操縦安定性をほぼ良好な状態に保つことができるのである。
前輪側の電動ブレーキ装置10,12のいずれか一方に異常が検出された場合には、その異常である電動ブレーキ装置と幅方向の反対側の正常な後輪の電動ブレーキ装置の作動を許可するか禁止するかが、車両の走行速度と操舵状態とに基づいて決定される。例えば、左前輪20の電動ブレーキ装置10に異常が検出された場合には、正常な右後輪26の電動ブレーキ装置16の作動が、車両の走行状態が設定状態より安定側にあるか否かが判定され、安定側にある場合には許可され、それ以外の場合には禁止されるのである。
右前輪22の電動ブレーキ装置12に異常が検出された場合には、正常な左後輪24の電動ブレーキ装置14の作動を禁止するか許可するかが、車速と操舵状態とに基づいて決定されるのである。
車両の左側と右側とのそれぞれ1つずつの電動ブレーキ装置に異常が検出された場合には、正常な2輪の電動ブレーキ装置が作動させられる。この場合には、左側と右側とで大きなブレーキ力差が生じることはない。
例えば、左右後輪24,26の電動ブレーキ装置14,16に異常が検出された場合、左右前輪20,22の電動ブレーキ装置10,12に異常が検出された場合、左前輪20,右後輪26の電動ブレーキ装置10,16に異常が検出された場合、右前輪22,左後輪24の電動ブレーキ装置12,14に異常が検出された場合が該当する。
例えば、左側の前後輪20,24の電動ブレーキ装置10,14に異常が検出された場合には、右後輪26の電動ブレーキ装置16の作動を禁止するか許可するかが決定され、右前後輪22,26の電動ブレーキ装置12,16に異常が検出された場合には、左後輪24の電動ブレーキ装置14の作動を禁止するか許可するかが決定されるのである。
すなわち、車両の走行状態が、左右のブレーキ力の差が大きくなると操縦安定性を良好な状態に保つことができない状態にある場合には禁止されるのであるが、大きなブレーキ力差が生じることが許容されても、操縦安定性をほぼ良好な状態に保ち得る状態にある場合には許可される。具体的には、車速Vが舵角δ等に基づいて決まるしきい値より大きい場合は禁止され、しきい値以下である場合は許可される。しきい値が大きい場合は小さい場合より禁止され難くなるのであり、走行状態が安定側にある場合はしきい値が大きくされるのである。
異常である電動ブレーキ装置に対応する車輪が旋回内輪側である状態では旋回外輪側である状態よりしきい値が大きくされる。旋回内輪側である状態では、旋回に伴うヨーモーメントの方向と左右ブレーキ力差に起因するヨーモーメントの方向とが逆になるため、スピン傾向が強くなることが回避される。旋回外輪側である状態では、旋回に伴うヨーモーメントの方向と左右ブレーキ力差に起因するヨーモーメントの方向とが同じになるため、スピン傾向が強くなる可能性が高く、左右ブレーキ力差が大きくなると、操縦安定性が低下するおそれがあるからである。
また、異常である電動ブレーキ装置に対応する車輪が旋回外輪側である状態では、しきい値が舵角δが大きくなるほど段階的に小さくされる。舵角δが大きいほど操縦安定性が低下するため、しきい値を小さくして、ブレーキ力差が生じることを許容され難く(ブレーキ装置の作動が禁止され易く)するのである。
さらに、しきい値は、異常である電動ブレーキ装置が2つである場合は1つである場合より小さくされる。左側,右側のいずれか一方の側の前輪,後輪の2つの電動ブレーキ装置が異常である場合には、左側と右側とでブレーキ力差が大きくなるため、車速が小さくても操縦安定性が低下するおそれがあるからである。図3の実線で表すしきい値が異常である電動ブレーキ装置が1つの場合であり、一点鎖線で表すしきい値が2つの場合である。
すべての電動ブレーキ装置10〜16が正常である場合には、前述のように、ブレーキ操作量に基づいて決定された操作量対応要求ブレーキ力が要求ブレーキ力とされて各モータコントローラ34〜37に出力されるが、少なくとも1つが異常である場合には、ブレーキ操作量が増加傾向にある場合には、操作量対応要求ブレーキ力と前回の要求ブレーキ力に勾配抑制変化量を加えたブレーキ力との小さい方が要求ブレーキ力として出力され、減少傾向にある場合には、操作量対応要求ブレーキ力と前回の要求ブレーキ力から勾配抑制変化量を引いたブレーキ力との大きい方が出力される。いずれの場合においても、前回の要求ブレーキ力に勾配抑制変化量を加えたり、引いたりして得られた値を勾配抑制時要求ブレーキ力と称する。
ステップ1(以下、S1と略称する。他のステップについても同様とする)において、4つの電動ブレーキ装置10〜16のいずれか1つに異常が検出されたか否かが判定される。本実施形態においては、イニシャルチェック時に行われた異常検出結果が読み込まれるのである。すべての電動ブレーキ装置10〜16が正常である場合には判定がNOとなり、S2,3において電動ブレーキ装置の通常制御が行われる。前述のように、各電動ブレーキ装置において、操作量対応要求ブレーキ力が出力されるように電動モータが制御されるのであり、各モータコントローラ34〜37に操作量対応要求ブレーキ力Breq を要求ブレーキ力Bout として出力する。
異常である電動ブレーキ装置が1つである場合において、正常な右後輪26の電動ブレーキ装置26の作動が禁止される場合には、図2のかっこ内の数字のように、減速度が最大でも0.5Gしか得られないが、3つの正常な電動ブレーキ装置の作動を許可すれば、最大で0,65Gの減速度を得ることができる。同様に、2つの電動ブレーキ装置が異常である場合において、正常な右後輪26の電動ブレーキ装置26の作動が禁止される場合には、最大でも0.35Gの減速度しか得られないが、2つの正常な電動ブレーキ装置の作動が許可されれば、0.5Gの減速度を得ることができる。
S14において、ブレーキ操作量の変化量ΔFが0以上であるか否かが判定され、0以上である場合には、S15において、前回の要求ブレーキ力Bout に増加勾配ΔBu を加えた値(抑制勾配時要求ブレーキ力)が求められ、S16において、ブレーキ操作量に基づいて求められた操作量対応要求ブレーキ力Breq と比較される。勾配抑制時要求ブレーキ力Bout が操作量対応要求ブレーキ力Breq 以上であるか否かが判定されるのであり、勾配抑制時要求ブレーキ力の方が小さい場合には、判定がNOとなり、S3において、勾配抑制時要求ブレーキ力が作動が許可された正常な電動ブレーキ装置のモータコントローラに出力される。操作量対応要求ブレーキ力の方が小さい場合には、S2,3において、操作量対応要求ブレーキ力Breq が要求ブレーキ力Bout とされて、上述の作動が許可された正常な電動ブレーキ装置のモータコントローラに出力される。
増加勾配が抑制されることによって、左側と右側との間に生じるブレーキ力の差を緩やかに増加させることができ、これらブレーキ力の差に起因して車両の挙動が影響が及ぼされても、運転者による操舵修正が可能となる。
4つの電動ブレーキ装置10〜16すべてが正常である場合には、図6の破線に従って制御されることになるが、少なくとも1輪の電動ブレーキ装置が異常であると検出された場合には、実線に従って制御されることになるのである。
ブレーキ力の減少勾配が抑制されれば、ブレーキ操作解除時においても同様に操縦安定性の低下を抑制することができる。
異常時ブレーキ制御部のうちモータコントローラ34〜37、主制御装置40のうち図2,3のマップで表されるテーブルを記憶する部分、電動ブレーキ装置制御プログラムのS1,4〜13を記憶する部分,実行する部分等により走行速度対応異常時ブレーキ力抑制部が構成され、異常時ブレーキ制御部のうち、モータコントローラ34〜37、主制御装置40のうち図2,3のマップで表されるテーブルを記憶する部分、電動ブレーキ装置制御プログラムのS1,4〜13を記憶する部分,実行する部分等により、異常ブレーキ数対応ブレーキ力抑制部が構成される。また、異常時ブレーキ制御部のモータコントローラ34〜37、主制御装置40のうちの電動ブレーキ装置制御プログラムのS14〜18を記憶する部分,実行する部分等により変化勾配抑制部が構成される。
また、電気制御アクチュエータは、ホイールシリンダとそのホイールシリンダに接続されたポンプとそのポンプを駆動する電動のポンプモータとを含むものとすることができる。ポンプモータへの供給電流の制御により、ブレーキ力が制御される。
さらに、ブレーキ装置は、上述の摩擦ブレーキ装置に限らず電動モータの回生制動により車輪の回転を抑制する回生ブレーキ装置とすることもできる。この場合には、車輪毎に車両駆動用の電動モータ(ホイールインモータ)を設ける必要がある。
さらに、電動ブレーキ装置の異常の検出がイニシャルチェック時に行われ、その結果に応じて電動ブレーキ装置制御プログラムが実行されるようにされていたが、異常の検出はパーキングブレーキ作動中、制動中等に行われるようにすることもできる。この場合には、異常検出結果がその都度変わる場合もある。
34〜37 モータコントローラ
40 主制御装置
56 ヨーレイトセンサ
58 車速センサ
Claims (6)
- 車両に設けられた複数の車輪の回転をそれぞれ抑制する複数のブレーキ装置のブレーキ力をそれぞれ制御するブレーキ制御装置に、
前記複数のブレーキ装置のうち、前記車両の幅方向のいずれか一方の側にある1つ以上のブレーキ装置が異常であり、他方の側にあるブレーキ装置が正常である場合において、前記車両の走行速度が設定速度以上である場合にその設定速度より小さい場合より前記他方の側の正常なブレーキ装置のうちの少なくとも1つのブレーキ力を小さくするとともに、前記設定速度を、前記一方の側の前記異常が検出されたブレーキ装置の個数が2つの場合は1つの場合より小さい値とする異常時ブレーキ制御部を設けたことを特徴とするブレーキ制御装置。 - 前記異常時ブレーキ制御部が、前記少なくとも1つの正常なブレーキ装置のブレーキ力を、前記車両の走行速度が大きい場合は小さい場合より小さくなるように制御する制御部を含む請求項1に記載のブレーキ制御装置。
- 前記異常時ブレーキ制御部が、前記少なくとも1つの正常なブレーキ装置のブレーキ力を、ブレーキ操作量で決まる大きさより小さいが、0より大きい値となるように制御する制御部を含む請求項1または2に記載のブレーキ制御装置。
- 前記異常時ブレーキ制御部が、前記一方の側の後輪のブレーキ装置が異常である場合において、前記車両の走行速度が前記設定速度以上である場合には、前記正常なブレーキ装置すべてを作動させ、前記一方の側の前輪のブレーキ装置が異常である場合において、前記車両の走行速度が前記設定速度以上である場合には、前記正常なブレーキ装置のうちの少なくとも1つを作動させない手段を含む請求項1ないし3のいずれか1つに記載のブレーキ制御装置。
- 前記異常時ブレーキ制御部が、前記少なくとも1つの正常なブレーキ装置のブレーキ力の増加勾配と減少勾配との少なくとも一方を、異常なブレーキ装置が検出されない場合に比較して抑制する変化勾配抑制部を含む請求項1ないし4のいずれか1つに記載のブレーキ制御装置。
- 前記変化勾配抑制部が、前記正常なブレーキ装置のうち前記異常時ブレーキ制御部により作動させられるブレーキ装置すべてのブレーキ力の増加勾配と減少勾配との少なくとも一方を抑制するものである請求項5に記載のブレーキ制御装置。
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