JP2006082809A - ブレーキ制御装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】車両の走行速度が設定速度より小さい場合には、すべての正常な電動ブレーキ装置が作動させられるが(S9,12の判定がNOである場合)、設定速度以上である場合には旋回内側の後輪の正常な電動ブレーキ装置が作動させられないことになる(S10,13)。車両の同じ側の異常である電動ブレーキ装置の個数が1個である場合には2個である場合より、設定速度が大きくされる。異常である電動ブレーキ装置の個数が少なく、走行状態が安定である場合には、正常なブレーキ装置を作動させるのであり、それによって、正常なブレーキ装置の有効利用を図り得る。
【選択図】図4
Description
このブレーキ制御装置においては、例えば、右後輪のブレーキ装置が1つ異常である場合には正常な左後輪のブレーキ装置の作動が禁止され、左前輪のブレーキ装置と左後輪のブレーキ装置との2つが異常である場合には、正常な右後輪のブレーキ装置の作動が禁止される。その結果、1つ以上のブレーキ装置が異常となった場合における車両の左側と右側とのブレーキ力の差が小さくされるため、車両の操縦安定性の低下を抑制することができる。
本項に記載のブレーキ制御装置においては、車両の走行速度が、異常が検出されたブレーキ装置の個数が多い場合は少ない場合より小さい値である設定速度以上である場合に設定速度より小さい場合より、正常な1つ以上のブレーキ装置のうちの少なくとも1つのブレーキ力が小さくされる。
前記複数のブレーキ装置のうちの1つ以上が異常であり、1つ以上が正常である場合において、前記車両の走行速度が、前記異常が検出されたブレーキ装置の個数が多い場合は少ない場合より小さい値である設定速度以上である場合に前記設定速度より小さい場合より、前記正常な1つ以上のブレーキ装置のうちの少なくとも1つのブレーキ力を小さくする異常時ブレーキ制御部を設けたことを特徴とするブレーキ制御装置(請求項1)。
(2)前記設定速度が、前記異常が検出されたブレーキ装置の前記車両の幅方向のいずれか一方の側にある個数が2つの場合は1つの場合より小さい値とされた(1)項に記載のブレーキ制御装置(請求項2)。
異常であるブレーキ装置が車両の幅方向のいずれか一方の側に2つある場合と1つの場合とでは、2つある場合の方が、正常なブレーキ装置を作動させた場合に生じる一方の側と他方の側とのブレーキ力の差が大きくなる。そのため、これらのブレーキ力差を許容すると操縦安定性が著しく低下するおそれがある。したがって、異常であるブレーキ装置が2つである場合の方が、車両の走行状態が安定であると検出され難くすることは妥当なことである。また、1つである場合の方が、安定であると検出され易くなり、正常なブレーキ装置を有効に利用し得る機会が多くなる。
(3)前記異常時ブレーキ制御部が、前記少なくとも1つの正常なブレーキ装置のブレーキ力を、前記車両の走行速度が大きい場合は小さい場合より小さくなるように制御する制御部を含む(1)項または(2)項に記載のブレーキ制御装置(請求項3)。
(4)前記異常時ブレーキ制御部が、前記車両の走行速度が前記設定速度より小さい場合には、前記正常なブレーキ装置のすべてを作動させ、設定速度以上である場合には、前記正常なブレーキ装置の少なくとも1つを作動させない手段を含む(1)項ないし(3)項のいずれか1つに記載のブレーキ制御装置(請求項4)。
車両の走行速度が設定速度より小さい場合は正常なブレーキ装置をすべて作動させても、操縦安定性をほぼ良好な状態に保ち得るのであり、正常なブレーキ装置の有効利用を図ることができる。それに対して、設定速度以上である場合には、例えば、異常であるブレーキ装置に対応する車輪の位置に応じて決まる位置のブレーキ装置、すなわち、異常であるブレーキ装置と車両の幅方向の反対側のブレーキ装置の少なくとも1つの作動を禁止することが望ましい。車両の幅方向の一方の側と他方の側とのブレーキ力の差を小さくすることができ、操縦安定性の低下を抑制することができる。
(5)前記異常時ブレーキ制御部が、前記少なくとも1つの正常なブレーキ装置のブレーキ力の増加勾配と減少勾配との少なくとも一方を、異常なブレーキ装置が検出されない場合に比較して抑制する変化勾配抑制部を含む(1)項ないし(4)項のいずれか1つに記載のブレーキ制御装置(請求項5)。
ブレーキ力の変化勾配を抑制すれば、幅方向の一方の側と他方の側とのブレーキ力差の変化勾配が緩やかになる。ブレーキ力差が急激に変化することが回避されるため、ブレーキ力差に起因するヨーモーメントの変化を抑制することができ、ヨーモーメントの変化に伴って車両の挙動が変わっても、運転者の操舵によって容易に修正することができる。
増加勾配と減少勾配との少なくとも一方が抑制されるブレーキ装置は、正常なブレーキ装置すべてであっても、異常なブレーキ装置と幅方向の反対側に位置する正常なブレーキ装置の少なくとも1つであってもよい。
なお、抑制された増加勾配と減少勾配との少なくとも一方は、常に一定の大きさとしても、車両の走行状態等に基づいた大きさとしてもよい。
前記3つ以上のブレーキ装置のうちの1つ以上が異常であり、2つ以上が正常である状態において、車両の走行状態が予め定められた設定状態より安定側にある場合は、それ以外の場合に比較して、前記車両の幅方向の一方の側と他方の側とのブレーキ力の差が大きくなることを許容する状態で、前記正常な2つ以上のブレーキ装置を作動させる異常時ブレーキ制御部を設けたことを特徴とするブレーキ制御装置。
本項に記載のブレーキ制御装置においては、車両の走行状態が予め定められた設定状態より安定側にある場合は、それ以外の場合に比較して、車両の幅方向の一方の側と他方の側とのブレーキ力の差が大きくなることを許容する状態で、正常な2つ以上のブレーキ装置が作動させられる。
例えば、従来のブレーキ制御装置においては、右後輪のブレーキ装置が異常である場合には必ず正常な左後輪のブレーキ装置の作動が禁止されていたのに対し、本項に記載のブレーキ制御装置においては、車両の走行状態が設定状態より安定側にある場合は左後輪のブレーキ装置も作動させられるようにすることができる。この場合には、正常な左後輪のブレーキ装置を作動させても操縦安定性がほぼ良好な状態に保たれるのであり、正常なブレーキ装置の有効利用を図り得、車両全体のブレーキ力の低下を抑制することができる。
本項に記載のブレーキ制御装置には、(1)項ないし(5)項に記載の技術的特徴を採用することができる。
(7)前記異常時ブレーキ制御部が、前記車両の走行状態が設定状態より安定側にあるか否かを、車両の操舵状態と走行速度との少なくとも一方に基づいて検出する走行状態検出部を含む(6) 項に記載のブレーキ制御装置。
車両の走行状態が安定状態にあるか否かは、操舵状態と走行状態との少なくとも一方に基づいて検出することができる。
車両が、異常であるブレーキ装置に対応する車輪が旋回内側輪である方向に旋回している状態は、旋回外側輪である方向に旋回している状態より安定側にあると検出することができる。車両が旋回状態にある場合には、旋回に起因して旋回方向のヨーモーメントが生じる。また、異常であるブレーキ装置に対応する車輪が旋回内側輪である場合には、旋回内側より旋回外側の方がブレーキ力が大きくなり、これらのブレーキ力差に起因して旋回方向と反対方向のヨーモーメントが生じる。このように、異常であるブレーキ装置に対応する車輪が旋回内側輪である方向に旋回している状態においては、旋回に伴うヨーモーメントの方向とブレーキ力差に起因するヨーモーメントの方向とが逆になるため、スピン状態になり難くなる。それに対して、異常であるブレーキ装置に対応する車輪が旋回外輪である方向に旋回している状態においては、旋回に伴うヨーモーメントの方向とブレーキ力差に起因するヨーモーメントの方向とが同じになり、スピン状態になり易くなる。したがって、車両が、異常であるブレーキ装置に対応する車輪が旋回内側輪である方向に旋回している状態は、設定状態より安定側にあると検出されるようにすることができるのである。
また、車両が、異常であるブレーキ装置に対応する車輪が旋回外側輪である方向に旋回している状態において、車両の舵角が小さい場合は大きい場合より安定状態にあるとすることができ、例えば、舵角が設定角度より小さい場合は設定状態より安定側にあると検出されるようにすることができる。なお、舵角に限らず、ステアリングホイールの操舵角,ヨーレイト等に基づいて同様に安定状態にあるか否かを検出することができる。
車両の走行速度が小さい場合は大きい場合より安定状態にあるとすることができ、例えば、設定速度より小さい速度で走行している状態は、設定状態より安定側にあると検出されるようにすることができる。また、走行速度が小さい場合は大きい場合より同じ舵角に対して車両に作用する横方向の力が小さくなるため、一方の側と他方の側とのブレーキ力差に起因してヨーモーメントが生じても、車両の挙動に大きな影響を及ぼすことがない。また、たとえ車両の挙動に多少影響が及んでも、走行速度が小さい場合は運転者の操舵によって容易に修正することができる。
なお、車両の走行状態が操舵状態と走行速度との両方に基づいて検出されるようにすれば、安定状態にあるか否かがより的確に検出される。
(8)前記走行状態検出部が、車両の走行速度が操舵状態に応じて決まる設定速度より小さい場合に、前記車両の走行状態が設定状態より安定側にあるとする(7) 項に記載のブレーキ制御装置。
例えば、〔実施例〕において説明するように、設定速度を、舵角が大きい場合は小さい場合より小さくすることができる。舵角が小さい場合は走行速度が大きくても安定であり、舵角が大きい場合は走行速度が小さい場合に安定であると検出されることは妥当なことである。
(9)前記異常時ブレーキ制御部が、前記異常であるブレーキ装置の位置と、前記車両の旋回方向とに基づいて、前記車両の走行状態が設定状態より安定側にあるか否かを検出する旋回方向対応走行状態検出部を含む(6) 項ないし(8) 項のいずれか1つに記載のブレーキ制御装置。
(10)前記旋回方向対応走行状態検出部が、前記車両の旋回方向が、前記異常であるブレーキ装置に対応する車輪が旋回内輪である場合は、安定側にあると検出する(9) 項に記載のブレーキ制御装置。
(11)前記設定状態を、異常であるブレーキ装置の個数が多い場合は少ない場合より安定側の状態とする(6) 項ないし(10) 項のいずれか1つに記載のブレーキ制御装置。
(12)前記異常時ブレーキ制御部が、前記正常な2つ以上の車輪のブレーキ装置のうちの少なくとも1つのブレーキ力を、前記車両の走行状態に基づいて制御する(6) 項ないし(11) 項のいずれか1つに記載のブレーキ制御装置。
正常な2つ以上のブレーキ装置のうちの少なくとも1つのブレーキ力が走行状態に基づいて制御されるため、操縦安定性をほぼ良好な状態に保ちつつ車両全体のブレーキ力の低下を抑制することができる。
ブレーキ力は、例えば、走行状態の安定性の程度(安定度と略称する)に応じた大きさに制御されるようにすることができる。安定度が大きい場合は小さい場合よりブレーキ力が大きな値に制御されるようにするのである。この場合において、ブレーキ力は安定度に応じて連続的に変化させられるようにしても段階的に変化させられるようにしてもよい。また、ブレーキ力の制御にはブレーキ力を0にする制御も含まれる。ブレーキ力が0にされれば、そのブレーキ装置の作動が禁止されたことと同じになる。さらに、ブレーキ力が制御されるブレーキ装置は、異常であるブレーキ装置と幅方向の反対側の正常なブレーキ装置の少なくとも1つとすることが望ましい。
例えば、ブレーキ力が走行速度に基づいて制御されるようにすることができる。走行速度が大きい場合は小さい場合より安定度が低いと考えられるため、走行速度が大きい場合はブレーキ力を小さくするのである。ブレーキ力が0より大きく、通常の制御値より小さい値に制御されれば、そのブレーキ装置の作動が禁止される場合より車両全体のブレーキ力を大きくすることができ、通常の大きさに制御される場合より操縦安定性を良好な状態に保つことができる。
また、ブレーキ力が操舵状態に基づいて制御されるようにすることができる。操舵状態としての舵角が大きい場合は小さい場合より安定度が低いと考えられるため、舵角が大きい場合にブレーキ力が小さくされるようにするのである。
(13)前記異常時ブレーキ制御部が、前記車両の幅方向の一方の側と他方の側とのブレーキ力の差が大きくなることを許容する状態で前記正常な2つ以上のブレーキ装置が作動させられた場合には、それ以外の場合より、前記2つ以上の正常なブレーキ装置のうちの少なくとも1つのブレーキ装置のブレーキ力の増加勾配と減少勾配との少なくとも一方を小さくする変化勾配抑制部を含む(6) 項ないし(12) 項のいずれか1つに記載のブレーキ制御装置。
一方の側と他方の側とのブレーキ力差が大きくなることが許容された場合は、変化勾配を抑制することが望ましいが、大きなブレーキ力差が生じることがない場合は、変化勾配を抑制する必要はない。
(14)複数の車輪の回転をそれぞれ抑制する複数のブレーキ装置のブレーキ力をそれぞれ制御するブレーキ制御装置に、
前記複数のブレーキ装置のうちの1つ以上が異常であり、1つ以上が正常である状態において、前記1つ以上の正常なブレーキ装置のうちの少なくとも1つのブレーキ装置のブレーキ力の増加勾配と減少勾配との少なくとも一方を、異常なブレーキ装置がない場合に比較して抑制する変化勾配抑制部を設けたブレーキ制御装置。
(15)前記ブレーキ装置が、車輪とともに回転するブレーキ回転体に、車体側部材に保持された摩擦係合部材を押し付けるアクチュエータであって、その摩擦係合部材のブレーキ回転体への押付力が供給電気エネルギの制御により制御可能な電気制御アクチュエータを含む(1) 項ないし(14)項のいずれか1つに記載のブレーキ制御装置。
ブレーキ装置は、電動アクチュエータとしての電動モータ等を含む電動ブレーキ装置とすることができる。この電動ブレーキ装置においては、摩擦係合部材がブレーキ回転体に電動モータ等の電動アクチュエータにより押し付けられてブレーキが作動させられるのであり、押付力が電動アクチュエータに供給される電気エネルギの制御によって制御されることになる。
ブレーキ装置は、ホイールシリンダと、そのホイールシリンダの液圧を制御可能な液圧制御弁装置とを含む液圧ブレーキ装置とすることができる。液圧制御弁装置は、ホイールシリンダと、高圧源と、低圧源との間に設けられた1つ以上の電磁制御弁を含むものであり、電磁制御弁の制御によりホイールシリンダ液圧を増圧,減圧することができ、それによって押付力を制御することができる。この場合には、ホイールシリンダと液圧制御弁装置とによって電気制御アクチュエータが構成される。電気制御アクチュエータは、また、ホイールシリンダと、ホイールシリンダに接続されたポンプと、そのポンプを駆動する電動のポンプモータとを含むものとすることができる。ポンプモータの制御によりポンプから吐出される作動液の液圧が制御され、それに応じてホイールシリンダ液圧が制御される。この形式の電気制御アクチュエータは、ポンプモータを駆動源、ホイールシリンダを出力部材、液通路内の作動液を伝達媒体とする電動アクチュエータと見なすことも可能である。
いずれにしても、ブレーキ装置においては、ブレーキ力が電気制御アクチュエータへの供給電気エネルギの制御によって制御されるが、ブレーキ力は、ブレーキ操作部材の操作状態に応じた大きさに制御されても、操作状態とは対応しない大きさに制御されてもよい。また、ブレーキ装置は、電気制御アクチュエータに電気エネルギが供給されることによってブレーキ力を発生させるものであるため、電気制御アクチュエータ等に異常が生じると電気エネルギを供給してもブレーキ力が発生させられないことになる。ブレーキ装置は、ブレーキ力がブレーキ操作部材の操作に基づいて機械的に発生させられるものであってもよいが、その場合でも、ブレーキ操作に基づいて機械的に発生させられる機械的ブレーキ力とは別に、電気制御アクチュエータへの電気エネルギの制御により電気的に制御可能なブレーキ力が発生させられ得ることが必要である。
なお、ブレーキ装置は上述の摩擦ブレーキ装置に限らず電動モータの回生制動により車輪の回転を抑制する回生ブレーキ装置とすることもできる。この場合には、車輪毎に車両を駆動する電動モータ(ホイールインモータ)を設け、車輪に加えられる回生制動トルクを別個に制御可能とする。
(16)複数の車輪の回転をそれぞれ抑制する複数のブレーキ装置のブレーキ力をそれぞれ制御するブレーキ制御装置に、
前記複数のブレーキ装置のうちの1つ以上が異常であり、1つ以上が正常である場合において、正常な1つ以上のブレーキ装置のうちの少なくとも1つのブレーキ力を、前記それら複数のブレーキ装置が設けられた車両の操舵状態に基づいて制御する異常時ブレーキ制御部を設けたことを特徴とするブレーキ制御装置。
正常な1つ以上のブレーキ装置のうちの少なくとも1つのブレーキ力を、車両の操舵状態に基づいて制御すれば、操縦安定性をほぼ良好な状態に保ちつつ、車両全体のブレーキ力の低下を抑制することができる。
なお、本項に記載のブレーキ制御装置には、(1) 項ないし(15)項のいずれか1つに記載の技術的特徴を採用することができる。
(17)前記異常時ブレーキ制御部が、前記異常が検出されたブレーキ装置に対応する車輪が旋回外側輪である場合は旋回内側輪である場合に比較して、前記正常な1つ以上のブレーキ装置のうちの、異常が検出されたブレーキ装置とは前記車両の幅方向において反対側のブレーキ装置の少なくとも1つのブレーキ力を小さくする旋回方向対応ブレーキ力抑制部を含む(16)項に記載のブレーキ制御装置。
(18)前記旋回方向対応ブレーキ力抑制部が、前記ブレーキ力を小さくするブレーキ装置のブレーキ力を、操舵角度が大きい場合に小さい場合より小さくする(17)項に記載のブレーキ制御装置。
(19)前記異常時ブレーキ制御部が、さらに、前記車両の走行速度に基づいて前記ブレーキ力を制御する走行速度対応ブレーキ制御部を含む(16)項ないし(18)項のいずれか1つに記載のブレーキ制御装置。
車両の操舵状態のみでなく走行速度も考慮すれば、操縦安定性の低下を良好に抑制することが可能となる。
(20)複数の車輪の回転をそれぞれ抑制する複数の主ブレーキ装置のブレーキ力と、前記複数の車輪のうちの少なくとも1つの車輪に対応して設けられた前記主ブレーキ装置とは別の副ブレーキ装置のブレーキ力とをそれぞれ制御するブレーキ制御装置に、
前記複数の主ブレーキ装置の1つ以上が異常である場合に、その異常である1つ以上の主ブレーキ装置と同じ車輪に対応する副ブレーキ装置のうちの少なくとも1つを作動させる異常時ブレーキ制御部を設けたことを特徴とするブレーキ制御装置。
主ブレーキ装置が異常である場合に副ブレーキ装置を作動させれば、車両全体のブレーキ力の低下を抑制することができる。また、副ブレーキ装置を作動させない場合に比較して、車両の幅方向の一方の側と他方の側とのブレーキ力の差を小さくすることができ、操縦安定性の低下を抑制することができる。
例えば、主ブレーキ装置をサービスブレーキ装置とし、副ブレーキ装置をパーキングブレーキ装置とすることができる。主ブレーキ装置と副ブレーキ装置とのいずれか一方をディスクブレーキを含む装置とし他方をドラムブレーキを含む装置とすることができる。また、車両の駆動装置が駆動モータを含むものである場合であって、駆動モータが車輪毎に設けられたホイールインモータである場合には、主ブレーキ装置と副ブレーキ装置とのいずれか一方を回生ブレーキ装置とし、他方をディスクブレーキを含むブレーキ装置とすることができる。
なお、本項に記載のブレーキ制御装置には、(1) 項ないし(19)項のいずれか1つに記載の技術的特徴を採用することができる。
(21)前記異常時ブレーキ制御部が、車両の走行状態が予め定められた設定状態より安定側になるように、正常な主ブレーキ装置のブレーキ力を制御する異常時主ブレーキ力制御部を含む(20)項に記載のブレーキ制御装置。
複数の主ブレーキ装置のうちの1つ以上が異常である場合に、少なくとも1つの副ブレーキ装置が作動させられるとともに、正常な主ブレーキ装置のブレーキ力が制御されれば、安定な走行状態に保つことができる。
(22)前記異常時主ブレーキ力制御部が、前記主ブレーキ装置のブレーキ力を車両の走行状態に基づいて制御する(21)項に記載のブレーキ制御装置。
(23)前記複数の車輪のうちの少なくとも2つが、前記複数の車輪が設けられた車両の幅方向の互いに反対側に設けられたものである場合において、
前記異常時ブレーキ制御部が、前記車両の幅方向の一方の側と他方の側とのブレーキ力の差が予め定められた設定差より大きくならないように、前記副ブレーキ装置のブレーキ力と主ブレーキ装置のブレーキ力との少なくとも一方を制御するブレーキ力差抑制型ブレーキ制御部を含む(20)項ないし(22)項のいずれか1つに記載のブレーキ制御装置。
複数の主ブレーキ装置のうちの1つ以上が異常である場合に、主ブレーキ装置のブレーキ力と副ブレーキ装置のブレーキ力との少なくとも一方が制御されれば、ブレーキ力差を抑制することができる。
主ブレーキ装置と副ブレーキ装置とで、出力可能なブレーキ力の大きさが異なる場合、例えば、副ブレーキ装置の能力が小さいため、通常制御状態において主ブレーキ装置によって出力されるブレーキ力より小さいブレーキ力しか出力できない場合には、異常である主ブレーキ装置の代わりに副ブレーキ装置を作動させても、幅方向の一方の側と他方の側とのブレーキ力差が大きい場合がある。この場合に、ブレーキ力の差が大きくならないように、主ブレーキ装置のブレーキ力も制御されれば、操縦安定性の低下を抑制することができる。なお、ブレーキ力の制御は、ブレーキ力が設定値と0とのいずれかにされる(ブレーキ装置の作動,非作動を切り換える)ことによって行われてもよい。
前記車両の幅方向の一方の側と他方の側とのブレーキ力の差が予め定められた設定差より大きいか否かは、実際のブレーキ力の差に基づいて判定しても、車両の旋回状態に基づいて判定してもよい。実際のブレーキ力は直接検出したり、ブレーキ装置の作動状態に基づいて間接的に検出したりすることができる。また、車両のヨーレイトが設定値より大きい場合、操舵角や舵角が設定値より大きい場合等には、左右のブレーキ力差が設定差より大きいとすることができる。
例えば、〔実施例〕において後述するように、車両の前後左右に設けられた4つの車輪の各々において、車輪の回転をそれぞれ抑制する4つの主ブレーキ装置と副ブレーキ装置とが設けられている場合において、左側と右側とのいずれか一方の側において2つの主ブレーキ装置に異常が検出された場合に、これら主ブレーキ装置に代わってそれぞれ副ブレーキ装置が作動させられる場合がある。しかし、一方の側において2つの副ブレーキ装置が作動させられ、他方の側において2つの主ブレーキ装置が作動させられると(副+副:主+主)、一方の側と他方の側とのブレーキ力の差が大きくなる。そこで、他方の側の2つの主ブレーキ装置のいずれか一方のブレーキ力を抑制したり(副+副:主+主′)、ブレーキ力を0にしたり(作動を禁止したり)すれば(副+副:主)、ブレーキ力差を小さくすることができ、操縦安定性を良好な状態に保つことができる。
(24)前記ブレーキ力差抑制型ブレーキ制御部が、異常が検出された主ブレーキ装置の車輪に対応して設けられた副ブレーキ装置を作動させ、正常な主ブレーキ装置の少なくとも1つのブレーキ力を抑制する異常時主ブレーキ力抑制部を含む(23)項に記載のブレーキ制御装置。
主ブレーキ装置が異常である場合には、その車輪に対応する副ブレーキ装置を作動させる。しかし、副ブレーキ装置を作動させても左右のブレーキ力の差が大きい場合には、正常な主ブレーキ装置のブレーキ力を抑制するのであり、それによって、左右のブレーキ力の差を小さくすることができる。
(25)前記異常時主ブレーキ力抑制部が、車両の走行状態が予め定められた設定状態より安定側にない場合に、前記主ブレーキ装置のブレーキ力を抑制する(24)項に記載のブレーキ制御装置。
本項に記載のブレーキ制御装置によれば、ブレーキ力が不要に抑制されることを回避することができる。
(26)前記異常時ブレーキ制御部が、車両に加えられるブレーキ力が、運転者によるブレーキ操作状態に応じたブレーキ力に対して小さくならないように、主ブレーキ装置のブレーキ力と副ブレーキ装置のブレーキ力との少なくとも一方を制御するブレーキ力低下抑制型ブレーキ制御部を含む(20)項ないし(25)項のいずれか1つに記載のブレーキ制御装置。
主ブレーキ装置が異常である場合に、その異常である主ブレーキ装置の作動を禁止して副ブレーキ装置を作動させた場合には、車両全体に加わるブレーキ力が運転者の意図するブレーキ力に対して不足する場合がある。それに対して、例えば、1つの車輪について異常である主ブレーキ装置と正常な副ブレーキ装置との両方を作動させれば、副ブレーキ装置によりブレーキ力を補うことが可能となり、車両全体のブレーキ力の低下を抑制することができる。
(27)前記主ブレーキ装置と前記副ブレーキ装置との両方が1つの車輪について設けられている場合において、これら主ブレーキ装置と副ブレーキ装置とが互いに異なる駆動源に接続された(20)項ないし(26)項のいずれか1つに記載のブレーキ制御装置。
主ブレーキ装置と副ブレーキ装置とが別個の駆動源に接続されていれば、いずれか一方の駆動源に異常が生じても他方の駆動源によってブレーキ装置を作動させることができ、その車輪にブレーキ力を加えることができる。主ブレーキ装置,副ブレーキ装置は前述の電動アクチュエータを含むものとすることができ、この場合には、各々の電動アクチュエータに電気エネルギを供給する電源が別個に設けられることになる。
図1に示すように、本ブレーキシステムは、4つのブレーキ装置を含むものである。ブレーキ装置10〜16は、左前輪20,右前輪22,左後輪24,右後輪26にそれぞれ設けられた電動ブレーキ装置であり、電動アクチュエータ(電気制御アクチュエータ)としての電動モータ28〜31と、電動モータ28〜31への供給電流を制御するモータコントローラ34〜37と、電動モータ28〜31の作動状態を検出する図示しない1つ以上のセンサとを含むものである。電動モータ28〜31の駆動により車体側部材に回転不能に保持された摩擦係合部材が車輪20〜26とともに回転するブレーキ回転体に押し付けられることによってブレーキ力が発生させられる。この摩擦係合部材のブレーキ回転体への押付力が電動モータ28〜31への供給電流の制御により制御され、ブレーキ力が制御される。
なお、ブレーキの作動状態を検出するセンサを設けることもできる。電動モータの作動状態とブレーキの作動状態とに基づけば、電動モータやブレーキが異常であるか否かを検出することができる。
ブレーキ操作量検出装置54は、ブレーキ操作部材52に加えられる操作ストロークや操作力を検出するものであり、ヨーレイトセンサ56は、車両の鉛直軸回りの回転速度を検出するものである。ヨーレイト,車速,車両の構造を表すデータ等に基づいて舵角が検出される。車速センサ58は、車両の走行速度を検出するものであるが、車輪速に基づいて検出するものであっても、車両の駆動装置の出力軸の回転数等に基づいて検出するものであってもよい。
すべての電動ブレーキ装置10〜16が正常である場合には、要求ブレーキ力がブレーキ操作量に応じて演算により求められ、要求ブレーキ力を表す情報がモータコントローラ34〜37にそれぞれ出力される。その要求ブレーキ力に応じて、電動モータ28〜31がそれぞれモータコントローラ34〜37により制御される。
また、電動ブレーキ装置10〜16の少なくとも1つに異常が検出された場合には、それに応じて正常な電動ブレーキ装置が制御される。
まず、4つの電動ブレーキ装置10〜16のうちの1つに異常が生じた場合について説明する。
後輪側の電動ブレーキ装置14,16のいずれか一方に異常が検出された場合には、正常な電動ブレーキ装置すべての作動が許可される。2つの前輪20,22と1つの後輪を含む3輪でブレーキが作動させられても、車両の操縦安定性をほぼ良好な状態に保つことができるのである。
前輪側の電動ブレーキ装置10,12のいずれか一方に異常が検出された場合には、その異常である電動ブレーキ装置と幅方向の反対側の正常な後輪の電動ブレーキ装置の作動を許可するか禁止するかが、車両の走行速度と操舵状態とに基づいて決定される。例えば、左前輪20の電動ブレーキ装置10に異常が検出された場合には、正常な右後輪26の電動ブレーキ装置16の作動が、車両の走行状態が設定状態より安定側にあるか否かが判定され、安定側にある場合には許可され、それ以外の場合には禁止されるのである。
右前輪22の電動ブレーキ装置12に異常が検出された場合には、正常な左後輪24の電動ブレーキ装置14の作動を禁止するか許可するかが、車速と操舵状態とに基づいて決定されるのである。
車両の左側と右側とのそれぞれ1つずつの電動ブレーキ装置に異常が検出された場合には、正常な2輪の電動ブレーキ装置が作動させられる。この場合には、左側と右側とで大きなブレーキ力差が生じることはない。
例えば、左右後輪24,26の電動ブレーキ装置14,16に異常が検出された場合、左右前輪20,22の電動ブレーキ装置10,12に異常が検出された場合、左前輪20,右後輪26の電動ブレーキ装置10,16に異常が検出された場合、右前輪22,左後輪24の電動ブレーキ装置12,14に異常が検出された場合が該当する。
例えば、左側の前後輪20,24の電動ブレーキ装置10,14に異常が検出された場合には、右後輪26の電動ブレーキ装置16の作動を禁止するか許可するかが決定され、右前後輪22,26の電動ブレーキ装置12,16に異常が検出された場合には、左後輪24の電動ブレーキ装置14の作動を禁止するか許可するかが決定されるのである。
すなわち、車両の走行状態が、左右のブレーキ力の差が大きくなると操縦安定性を良好な状態に保つことができない状態にある場合には禁止されるのであるが、大きなブレーキ力差が生じることが許容されても、操縦安定性をほぼ良好な状態に保ち得る状態にある場合には許可される。具体的には、車速Vが舵角δ等に基づいて決まるしきい値より大きい場合は禁止され、しきい値以下である場合は許可される。しきい値が大きい場合は小さい場合より禁止され難くなるのであり、走行状態が安定側にある場合はしきい値が大きくされるのである。
異常である電動ブレーキ装置に対応する車輪が旋回内輪側である状態では旋回外輪側である状態よりしきい値が大きくされる。旋回内輪側である状態では、旋回に伴うヨーモーメントの方向と左右ブレーキ力差に起因するヨーモーメントの方向とが逆になるため、スピン傾向が強くなることが回避される。旋回外輪側である状態では、旋回に伴うヨーモーメントの方向と左右ブレーキ力差に起因するヨーモーメントの方向とが同じになるため、スピン傾向が強くなる可能性が高く、左右ブレーキ力差が大きくなると、操縦安定性が低下するおそれがあるからである。
また、異常である電動ブレーキ装置に対応する車輪が旋回外輪側である状態では、しきい値が舵角δが大きくなるほど段階的に小さくされる。舵角δが大きいほど操縦安定性が低下するため、しきい値を小さくして、ブレーキ力差が生じることを許容され難く(ブレーキ装置の作動が禁止され易く)するのである。
さらに、しきい値は、異常である電動ブレーキ装置が2つである場合は1つである場合より小さくされる。左側,右側のいずれか一方の側の前輪,後輪の2つの電動ブレーキ装置が異常である場合には、左側と右側とでブレーキ力差が大きくなるため、車速が小さくても操縦安定性が低下するおそれがあるからである。図3の実線で表すしきい値が異常である電動ブレーキ装置が1つの場合であり、一点鎖線で表すしきい値が2つの場合である。
すべての電動ブレーキ装置10〜16が正常である場合には、前述のように、ブレーキ操作量に基づいて決定された操作量対応要求ブレーキ力が要求ブレーキ力とされて各モータコントローラ34〜37に出力されるが、少なくとも1つが異常である場合には、ブレーキ操作量が増加傾向にある場合には、操作量対応要求ブレーキ力と前回の要求ブレーキ力に勾配抑制変化量を加えたブレーキ力との小さい方が要求ブレーキ力として出力され、減少傾向にある場合には、操作量対応要求ブレーキ力と前回の要求ブレーキ力から勾配抑制変化量を引いたブレーキ力との大きい方が出力される。いずれの場合においても、前回の要求ブレーキ力に勾配抑制変化量を加えたり、引いたりして得られた値を勾配抑制時要求ブレーキ力と称する。
ステップ1(以下、S1と略称する。他のステップについても同様とする)において、4つの電動ブレーキ装置10〜16のいずれか1つに異常が検出されたか否かが判定される。本実施形態においては、イニシャルチェック時に行われた異常検出結果が読み込まれるのである。すべての電動ブレーキ装置10〜16が正常である場合には判定がNOとなり、S2,3において電動ブレーキ装置の通常制御が行われる。前述のように、各電動ブレーキ装置において、操作量対応要求ブレーキ力が出力されるように電動モータが制御されるのであり、各モータコントローラ34〜37に操作量対応要求ブレーキ力Breq を要求ブレーキ力Bout として出力する。
異常である電動ブレーキ装置が1つである場合において、正常な右後輪26の電動ブレーキ装置26の作動が禁止される場合には、図2のかっこ内の数字のように、減速度が最大でも0.5Gしか得られないが、3つの正常な電動ブレーキ装置の作動を許可すれば、最大で0,65Gの減速度を得ることができる。同様に、2つの電動ブレーキ装置が異常である場合において、正常な右後輪26の電動ブレーキ装置26の作動が禁止される場合には、最大でも0.35Gの減速度しか得られないが、2つの正常な電動ブレーキ装置の作動が許可されれば、0.5Gの減速度を得ることができる。
S14において、ブレーキ操作量の変化量ΔFが0以上であるか否かが判定され、0以上である場合には、S15において、前回の要求ブレーキ力Bout に増加勾配ΔBu を加えた値(抑制勾配時要求ブレーキ力)が求められ、S16において、ブレーキ操作量に基づいて求められた操作量対応要求ブレーキ力Breq と比較される。勾配抑制時要求ブレーキ力Bout が操作量対応要求ブレーキ力Breq 以上であるか否かが判定されるのであり、勾配抑制時要求ブレーキ力の方が小さい場合には、判定がNOとなり、S3において、勾配抑制時要求ブレーキ力が作動が許可された正常な電動ブレーキ装置のモータコントローラに出力される。操作量対応要求ブレーキ力の方が小さい場合には、S2,3において、操作量対応要求ブレーキ力Breq が要求ブレーキ力Bout とされて、上述の作動が許可された正常な電動ブレーキ装置のモータコントローラに出力される。
増加勾配が抑制されることによって、左側と右側との間に生じるブレーキ力の差を緩やかに増加させることができ、これらブレーキ力の差に起因して車両の挙動が影響が及ぼされても、運転者による操舵修正が可能となる。
4つの電動ブレーキ装置10〜16すべてが正常である場合には、図6の破線に従って制御されることになるが、少なくとも1輪の電動ブレーキ装置が異常であると検出された場合には、実線に従って制御されることになるのである。
ブレーキ力の減少勾配が抑制されれば、ブレーキ操作解除時においても同様に操縦安定性の低下を抑制することができる。
異常時ブレーキ制御部のうち、モータコントローラ34〜37、図2,3のマップで表されるテーブルを記憶する部分、電動ブレーキ装置制御プログラムのS1,4〜13を記憶する部分,実行する部分等により、走行速度対応ブレーキ力抑制部が構成され、異常時ブレーキ制御部のうちモータコントローラ34〜37、図3のマップで表されるテーブルを記憶する部分、電動ブレーキ装置制御プログラムのS1,4〜13を記憶する部分,実行する部分等により異常ブレーキ数対応ブレーキ力抑制部が構成される。走行速度対応ブレーキ力抑制部は旋回方向対応ブレーキ力抑制部でもある。また、異常時ブレーキ制御部のモータコントローラ34〜37、主制御装置40のうちの電動ブレーキ装置制御プログラムのS14〜18を記憶する部分,実行する部分等により変化勾配抑制部が構成される。さらに、主制御装置40のうちの電動ブレーキ装置制御プログラムのS8,9,11,12を記憶する部分,実行する部分および図3のマップで表されるテーブルを記憶する部分等により走行状態検出部が構成される。走行状態検出部は旋回方向対応走行状態検出部でもある。
また、電気制御アクチュエータは、ホイールシリンダとそのホイールシリンダに接続されたポンプとそのポンプを駆動する電動のポンプモータとを含むものとすることができる。ポンプモータへの供給電流の制御により、ブレーキ力が制御される。
さらに、ブレーキ装置は、上述の摩擦ブレーキ装置に限らず電動モータの回生制動により車輪の回転を抑制する回生ブレーキ装置とすることもできる。この場合には、車輪毎に車両駆動用の電動モータ(ホイールインモータ)を設ける必要がある。
さらに、電動ブレーキ装置の異常の検出がイニシャルチェック時に行われ、その結果に応じて電動ブレーキ装置制御プログラムが実行されるようにされていたが、異常の検出はパーキングブレーキ作動中、制動中等に行われるようにすることもできる。この場合には、異常検出結果がその都度変わる場合もある。
図7において、主制御装置100は、CPU102,ROM104,RAM106,入力部108および出力部110等を含むコンピュータを主体とするものであり、入力部108には、上記実施形態における場合と同様にブレーキ操作量検出装置54,ヨーレイトセンサ56,車速センサ58等が接続されている。また、出力部110には、電動サービスブレーキ装置140〜146と電動パーキングブレーキ装置150〜156とが接続されている。電動サービスブレーキ装置140〜146は、ブレーキ回転体としてのディスクロータにマウンティングブラケットに回転不能に保持された摩擦パッドを押し付ける電動アクチュエータとしての電動モータ160〜166と、モータコントローラ170〜176と、当該電動サービスブレーキ装置140〜146の作動状態を検出する作動状態検出装置178a〜dとを含むものであり、電動パーキングブレーキ装置150〜156は、ブレーキ回転体としてのドラムにバッキングプレートに回転不能に支持された摩擦パッドとしてのシューを押し付ける電動アクチュエータとしての電動モータ180〜186と,モータコントローラ190〜196とを含むものである。本実施形態においては、車輪毎にいわゆる電動式のドラムインディスクブレーキ装置が設けられることになる。
なお、電動モータ160〜166の作動状態とディスクブレーキの作動状態とに基づいて電動サービスブレーキ装置の作動が正常か否かを検出することも可能である。
また、右前輪22の電動サービスブレーキ装置142,左後輪24の電動サービスブレーキ装置144、左前輪20の電動パーキングブレーキ装置150,右後輪26の電動パーキングブレーキ装置156には電源200が接続され、左前輪20の電動サービスブレーキ装置140,右後輪26の電動サービスブレーキ装置146,右前輪22の電動パーキングブレーキ装置152,左後輪24の電動パーキングブレーキ装置154には電源202が接続されている。このように、電源を2つ設け、一部のブレーキ装置が一方の電源に接続され、残りのブレーキ装置が他方の電源に接続されるようにすれば、一方の電源に異常が生じても他方の電源によりブレーキを作動させることが可能となる。さらに、1つの車輪に対応して設けられている電動サービスブレーキ装置と電動パーキングブレーキ装置とがそれぞれ異なる電源に接続されているため、一の電源に異常が生じても、すべての車輪各々について必ずブレーキを作動させることが可能となる。同様に、コンピュータを主体とする主制御装置等を複数個設けたり、主制御装置の電源を複数個設けたりすることも可能である。
例えば、パーキングブレーキはサービスブレーキより出力されるブレーキ力が小さいため、単に、異常な電動サービスブレーキ装置の代わりに電動パーキングブレーキ装置を作動させるだけの場合には、左側と右側とのブレーキ力差が大きくなってしまう場合がある。そこで、左側と右側との一方の側の前後輪の電動パーキングブレーキ装置が作動させられた場合には、他方の側の後輪の電動サービスブレーキ装置は作動させられない(P+P:S)か作動が抑制される(P+P:S+S′)。また、左側と右側との一方の側において、電動パーキングブレーキ装置と電動サービスブレーキ装置とが作動させられた場合にも同様である(P+S:S)(P+S:S+S′)。
以下、禁止または抑制されることを禁止等されると略称する。
異常である電動サービスブレーキ装置が1つである場合において、その異常である電動サービスブレーキ装置が後輪側の電動サービスブレーキ装置144,146のいずれか一方である場合には、これらに代わって電動パーキングブレーキ装置が作動させられることはない。上記実施形態における場合と同様に、左右後輪24,26のいずれか一輪においてブレーキが作動させられなくても、車両の操縦安定性が著しく低下することがないからである。また、不要な電動パーキングブレーキ装置の作動を許可しないことによって、消費エネルギの低減を図ることも可能となる。
前輪側の電動サービスブレーキ装置140,142のいずれか一方が異常である場合には、それに代わって電動パーキングブレーキ装置150,152のいずれか一方が作動させられるとともに電動パーキングブレーキ装置が作動させられた側とは反対側の後輪の電動サービスブレーキ装置の作動が禁止等される。電動パーキングブレーキの方がブレーキ力が小さいため、他方の側の後輪の電動サービスブレーキ装置の作動を禁止等すれば、左側と右側とのブレーキ力差を小さくすることができる(P+S:S)(P+S:S+S′)。例えば、左前輪20の電動サービスブレーキ装置140に異常が生じた場合には、電動パーキングブレーキ装置150が作動させられるが、右後輪26の電動サービスブレーキ装置146は正常であっても作動が禁止等されるのである。
一方が前輪側の電動サービスブレーキ装置であり他方が後輪側のそれである場合には、前輪側の電動サービスブレーキ装置に代わって電動パーキングブレーキ装置が作動させられ、異常が生じた後輪においては電動パーキングブレーキ装置が作動させられることはない(S+P:S)。電動サービスブレーキ装置に異常が生じた後輪については、ブレーキが作動させられないことになる。例えば、左前輪20の電動サービスブレーキ装置140と右後輪26の電動サービスブレーキ装置146とに異常が検出された場合には、左前輪の電動パーキングブレーキ装置150は作動させられるが、右後輪26の電動パーキングブレーキ装置156が作動させられることがないのである。上述のように、後輪側においては1輪にブレーキが作動させられなくても、操縦安定性を良好な状態に保つことができるからである。
また、左右後輪24,26の電動サービスブレーキ装置144,146の両方が異常である場合には、これらに代わって電動パーキングブレーキ装置154,156が作動させられる。
3つのうちの2つが前輪側のブレーキ装置である場合には、すべての車輪20〜26について電動パーキングブレーキ装置150〜156が作動させられる。正常な後輪の電動サービスブレーキ装置の作動が禁止されて電動パーキングブレーキ装置が作動させられることになる。4輪とも電動パーキングブレーキ装置とした方が車両の操縦安定性の低下を抑制し得るのである。
そして、S74において、ヨーレイトセンサ56の検出値に基づいてヨーレイトの絶対値が設定値以上であるか否かが判定される。設定値より小さい場合には、その制御状態のままにされる。設定値以上である場合には、図10のマップで表されるテーブルに従って、左右ブレーキ力差が小さくなるように、正常な電動サービスブレーキ装置のブレーキ力が抑制される。ブレーキ力は、予め定められた設定量だけ小さくされるようにしたり、ヨーレイトに応じた大きさに抑制されるようにしたりすることができる。また、ヨーレイトをフィードバックし、ヨーレイトの絶対値が設定値より小さくなるまでブレーキ力が小さくされるようにすることもできる。
前輪側の電動サービスブレーキ装置140,142のいずれか一方が異常である場合には、上記実施形態における場合と同様に制御される。本実施形態においては、正常な後輪の電動サービスブレーキ装置の作動が禁止されることはないが、正常な電動サービスブレーキ装置の制御により、ブレーキ力が0にされる場合があり、その場合には、実質的に作動が禁止されたことと同じになる。
一方が前輪側の電動サービスブレーキ装置であり他方が後輪側のそれである場合には、これらに代わって電動パーキングブレーキ装置が作動させられるが、ヨーレイトの絶対値が設定値以上である場合には、正常な後輪の電動サービスブレーキ装置の制御により後輪のブレーキ力が抑制される(S+P:P+S′)。
それに対して、左側と右側とのいずれか一方の側の前後2つの電動サービスブレーキ装置に異常が生じた場合には、異常な2つの電動サービスブレーキ装置の代わりに2つの電動パーキングブレーキ装置を作動させる。そして、ヨーレイトの絶対値が設定値以上である場合には、後輪の正常な電動サービスブレーキ装置の制御により、ブレーキ力を抑制する(P+P:S+S′)。
さらに、正常な電動サービスブレーキ装置のブレーキ力の抑制は常に行われるのではなく、ヨーレイトの絶対値が設定値以上である場合のみに行われるようにされているため、車両全体のブレーキ力の低下を抑制することができる。また、電動モータが作動不能の場合のみならず、ブレーキ力の不足の異常が生じた場合にも適用されるため、車両全体のブレーキ力の不足を良好に回避することができる。
また、上記実施形態においては、異常な電動サービスブレーキ装置の作動が禁止されるようにされていたが、禁止されることは不可欠ではなく、作動が継続して行われるようにしてもよい。1つの車輪について電動サービスブレーキ装置と電動パーキングブレーキ装置との両方によりブレーキ力が加えられることになるが差し支えない。
さらに、上記実施各形態においては、主ブレーキ装置がディスクブレーキを含む電動サービスブレーキ装置とされ、副ブレーキ装置がドラムブレーキを含む電動パーキングブレーキ装置とされていたが、電動パーキングブレーキ装置の代わりに回生ブレーキ装置とすることもできる。また、回生ブレーキ装置を主ブレーキ装置とし、ディスクブレーキを含む電動サービスブレーキ装置を副ブレーキ装置とすることもできる。
その他、本発明は、以上に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を施した態様で実施することができる。
34〜37 モータコントローラ
40 主制御装置
56 ヨーレイトセンサ
58 車速センサ
100 主制御装置
140〜146 電動サービスブレーキ装置
150〜156 電動パーキングブレーキ装置
160〜166 電動モータ
170〜176 モータコントローラ
178a〜d 作動状態検出装置
180〜186 電動モータ
190〜196 モータコントローラ
Claims (5)
- 車両に設けられた複数の車輪の回転をそれぞれ抑制する複数のブレーキ装置のブレーキ力をそれぞれ制御するブレーキ制御装置に、
前記複数のブレーキ装置のうちの1つ以上が異常であり、1つ以上が正常である場合において、前記車両の走行速度が、前記異常が検出されたブレーキ装置の個数が多い場合は少ない場合より小さい値である設定速度以上である場合に前記設定速度より小さい場合より、前記正常な1つ以上のブレーキ装置のうちの少なくとも1つのブレーキ力を小さくする異常時ブレーキ制御部を設けたことを特徴とするブレーキ制御装置。 - 前記設定速度が、前記異常が検出されたブレーキ装置の前記車両の幅方向のいずれか一方の側にある個数が2つの場合は1つの場合より小さい値とされた請求項1に記載のブレーキ制御装置。
- 前記異常時ブレーキ制御部が、前記少なくとも1つの正常なブレーキ装置のブレーキ力を、前記車両の走行速度が大きい場合は小さい場合より小さくなるように制御する制御部を含む請求項1または2に記載のブレーキ制御装置。
- 前記異常時ブレーキ制御部が、前記車両の走行速度が前記設定速度より小さい場合には、前記正常なブレーキ装置のすべてを作動させ、設定速度以上である場合には、前記正常なブレーキ装置の少なくとも1つを作動させない手段を含む請求項1ないし3のいずれか1つに記載のブレーキ制御装置。
- 前記異常時ブレーキ制御部が、前記少なくとも1つの正常なブレーキ装置のブレーキ力の増加勾配と減少勾配との少なくとも一方を、異常なブレーキ装置が検出されない場合に比較して抑制する変化勾配抑制部を含む請求項1ないし4のいずれか1つに記載のブレーキ制御装置。
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