JP3972535B2 - 自動車の制動力制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、機械式ブレーキと電気式ブレーキとを協同させてアンチロックブレーキ動作を行う自動車の制動力制御装置に関し、特に、アンチロックブレーキ性能を改善したものである。
【0002】
【従来の技術とその問題点】
制動時に路面状況などによって車輪が滑走状態になり、車体速度が車輪速度を上まわることがある。このような状態を車輪のロック傾向と呼び、車輪ロック傾向を回避するための装置としてアンチロックブレーキ装置(以下、ABSと呼ぶ)が用いられている。
【0003】
一方、モーターを走行駆動源とする電気自動車やハイブリッド自動車では、油圧装置や空圧(エンジンの負圧を含む)装置を動力源とする機械式ブレーキ(摩擦ブレーキ)と、走行用モーター自体を動力源とする電気式ブレーキ(回生ブレーキ)とが併用されている。
【0004】
電気自動車やハイブリッド自動車の制動力制御装置として、機械式ブレーキと電気式ブレーキとを協同させてアンチロックブレーキ動作を行う制動力制御装置が知られている(特開平5−270387号公報参照)。この制動力制御装置では、車輪のロック傾向が検出された時には、機械式ブレーキの制動力を所定値一定に保持しつつ、電気式ブレーキの動力源であるモーターを回生モードから力行モードまで制御して電気式ブレーキの制動力を調節している。この制動力制御装置によれば、車両制動時のモーターのトルク制御範囲を回生から力行まで用いることによって、回生トルク(制動トルク)を0にしても車輪ロック傾向から迅速に脱出できない路面状況では力行トルク(駆動トルク)を発生させ、車輪ロック傾向を回避しつつ迅速に制動できるとしている。
【0005】
ところが、この制動力制御装置では、電気式ブレーキの動力源であるモーターの回生トルクおよび力行トルクが路面摩擦係数や機械式ブレーキの制動力に応じて決まってしまうことになり、条件によってはモータートルク指令値がモータートルク制御範囲を越えてしまうことがあり、そのような場合には期待した制動力が得られないという問題がある。また、回生ブレーキ時に回収されるエネルギー量も路面摩擦係数や機械式ブレーキの制動力に応じて決まってしまうことになり、エネルギー回収が充分に行われず、エネルギー回収性の点から必ずしも最良の方式とは言えるものではない。
【0006】
また、機械式ブレーキと電気式ブレーキとを備え、いずれか一方のブレーキによりアンチロックブレーキ制御を行うとともに、そのアンチロックブレーキの制動力が減少限界になった時には他方のブレーキによりアンチロックブレーキ制御を行う自動車の制動力制御装置が知られている(特開平6−171490号公報参照)。この制動力制御装置では、電気式ブレーキにより最初のアンチロックブレーキ制御を行う場合に、モータートルク指令値がモータートルク制御範囲を越えても機械式ブレーキが作動するため、制動性能が確保されるとしている。
【0007】
ところが、後者の制動力制御装置でも、モータートルクが路面摩擦係数や機械式ブレーキの制動力に応じて決まってしまうことになり、制御性に優れたモーターによるアンチロックブレーキ制御を最大限に活用できるものとは言えない。また、上述した前者の制動力制御装置と同様に、モーターによるエネルギー回収性を考慮しておらず、エネルギー回収性の点からも必ずしも最良の装置と言えるものではない。さらに、機械式ブレーキにより最初のアンチロックブレーキ制御を行い、電気式ブレーキによりそれをバックアップする場合には、機械式ブレーキの制御精度が電気式ブレーキの制御精度より劣るため、電気式ブレーキにより最初のアンチロックブレーキ制御を行い、機械式ブレーキによりそれをバックアップする場合よりもアンチロックブレーキ性能が低下する。
【0008】
本発明の目的は、モーターの制御性を最大限に活用して車輪ロック傾向を防止するとともに、制動時のエネルギー回収量を増大することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
一実施の形態の構成を示す図1と、一実施の形態の制御ブロック図2と、一実施の形態の目標制動力演算ルーチンを示す図3とに対応づけて本発明を説明すると、
(1) 請求項1の発明は、車輪3に制駆動トルクを作用させるモーター1と、摩擦力により車輪3に摩擦ブレーキトルクを作用させる機械式ブレーキ7〜10と、アンチロックブレーキシステム(ABS)の作動を決定するABS作動決定手段18(S6)と、車輪3のスリップ率μを検出するスリップ率検出手段18d(S5)と、ABS作動決定後に、車輪3のスリップ率μが目標スリップ率μ0に一致するようにフィードバック制御を行い、モータートルク指令値Tmを演算してモーター1の制駆動トルクを制御するモータートルク制御手段14,18a,18b,18c(S14)と、ABS作動時にモーター1のトルク制御範囲を正負両側に確保するためのモータートルク目標値Tm0を設定するモータートルク目標値設定手段18e(S8)と、モーター1のトルクTmsを検出するトルク検出手段22,14と、ABS作動決定後に、モーター1のトルク検出値Tmsがモータートルク目標値Tm0に一致するようにフィードバック制御を行い、モータートルク検出値T ms とモータートルク目標値T m0 との偏差にPID演算を施して得た値T ffb からモータートルク目標値T m0 を減じて摩擦ブレーキトルク指令値T f を求め、摩擦ブレーキトルク指令値Tfを演算して機械式ブレーキ7〜10の摩擦ブレーキトルクを制御する摩擦ブレーキトルク制御手段17,18i,18j,18k(S15)とを備える。
(2) 請求項2の自動車の制動力制御装置は、摩擦ブレーキトルク制御手段17,18i,18j,18k(S15)のフィードバック制御18i,18jの応答速度をモータートルク制御手段14,18a,18b,18c(S14)のフィードバック制御18a,18bの応答速度よりも遅くしたものである。
(3) 請求項3の自動車の制動力制御装置は、ABS作動決定前のモータートルク指令値TmとABS作動決定後のモータートルク目標値Tm0との差分Tff0を演算し、その差分Tff0をABS作動決定後に所定時間で0まで徐々に低減してモータートルクから摩擦ブレーキトルクへ置き換えるフィードフォワードトルクTffを演算するフィードフォワードトルク演算手段18f(S12〜S13)を備え、モータートルク制御手段14,18a,18b,18c(S14)によって、ABS作動決定後に、車輪のスリップ率μと目標スリップ率μ 0 との偏差にPID演算を施して得た値TmfdにフィードフォワードトルクTffを加算してモータートルク指令値Tmを演算するとともに、摩擦ブレーキトルク制御手段17,18i,18j,18k(S15)によって、ABS作動決定後に、値TffbからフィードフォワードトルクTff を減じて摩擦ブレーキトルク指令値Tfを演算するようにしたものである。
(4) 請求項4の自動車の制動力制御装置は、モータートルク目標値設定手段18e(S8)によって、モータートルク目標値Tm0を0または負の値としたものである。
(5) 請求項5の自動車の制動録制御装置は、モータートルク目標値設定手段18e(S8)によってモータートルク目標値Tm0を0としたものである。
(6) 請求項6の自動車の制動力制御装置は、モーターの回転速度Nmを検出するモーター回転速度検出手段15を備え、モータートルク目標値設定手段18e(S8)によって、モーター回転速度Nmが所定値Nm1以下の範囲ではモータートルク目標値Tm0を0とし、モーター回転速度Nmが所定値Nm2(>Nm1)を越える範囲ではモーター1の最小トルクTminに所定値Tplus(>0)を加算した値と0との小さい方をモータートルク目標値Tm0に設定し、モーター回転速度NmがNm1からNm2までの範囲では、所定値Nm1のときのモータートルク目標値Tm0(=0)と所定値Nm2のときのモータートルク目標値Tm0とを結んだ値をモータートルク目標値Tm0に設定するようにしたものである。
(7) 請求項7の自動車の制動力制御装置は、モータートルク目標値設定手段18e(S8)によって、モータートルク目標値Tm0を、モーター1の最大トルクTmaxと最小トルクTminとの間の中央値としたものである。
(8) 請求項8の自動車の制動力制御装置は、モーター1の回転速度Nmを検出するモーター回転速度検出手段15を備え、モータートルク目標値設定手段18e(S8)によって、モーター回転速度Nmが所定値Nm1以下の範囲ではモータートルク目標値Tm0を0とし、モーター回転速度Nmが所定値Nm2(>Nm1)を越える範囲では、スリップ率μに応じて増加する値Tplus1と、モータートルク検出値Tmsと摩擦ブレーキトルク指令値Tfとの和(Tms+Tf)に応じて増加する値Tplus2との和(Tplus1+Tplus2)をモーター1の最小トルクTminに加算した値(Tplus1+Tplus2+Tmin)と、0との小さい方をモータートルク目標値Tm0に設定し、モーター回転速度NmがNm1からNm2までの範囲では、所定値Nm1のときのモータートルク目標値Tm0(=0)と所定値Nm2のときのモータートルク目標値Tm0とを結んだ値をモータートルク目標値Tm0に設定するようにしたものである。
(9) 請求項9の自動車の制動力制御装置は、モーター回転速度Nmの代わりに車輪3の滑り0を実現する仮想モーター回転速度Nm’を用いるようにしたものである。
(10) 請求項10の自動車の制動力制御装置は、モータートルク目標値設定手段18e(S8)によって、仮想モーター回転速度Nm’が所定値Nm’1以下の範囲ではモータートルク目標値Tm0を0とし、仮想モーター回転速度Nm’が所定値Nm’2(>Nm’1)を越える範囲では、モータートルク検出値Tmsと摩擦ブレーキトルク指令値Tfとの和(Tms+Tf)に応じて増加する値Tplus2をモーター1の最小トルクTminに加算した値と0との小さい方をモータートルク目標値Tm0に設定し、仮想モーター回転速度Nm’がNm’1からNm’2までの範囲では、所定値Nm’1のときのモータートルク目標値Tm0(=0)と所定値Nm’2のときのモータートルク目標値Tm0とを結んだ値をモータートルク目標値Tm0に設定するようにしたものである。
(11) 請求項11の自動車の制動力制御装置は、摩擦ブレーキトルク制御手段17,18i,18j,18k(S15)によって、モーター1のトルク検出値Tmsをモータートルク目標値Tm0に一致させるフィードバック制御の出力Tffbが駆動トルクになったときはフィードバック制御を停止し、フィードバック制御の出力Tffbを0にするようにフィードバック制御系の積分要素をリセットするようにしたものである。
【0010】
上述した課題を解決するための手段の項では、説明を分かりやすくするために一実施の形態の図を用いたが、これにより本発明が一実施の形態に限定されるものではない。
【0011】
【発明の効果】
(1) 請求項1の発明によれば、車輪のスリップ率μが目標スリップ率μ0に一致するようにフィードバック制御を行い、モータートルク指令値Tmを演算してモーターの制駆動トルクを制御するとともに、ABS作動時にモーターのトルク制御範囲を正負両側に確保するためのモータートルク目標値Tm0を設定し、ABS作動決定後に、モーターのトルク検出値Tmsがモータートルク目標値Tm0に一致するようにフィードバック制御を行い、モータートルク検出値T ms とモータートルク目標値T m0 との偏差にPID演算を施して得た値T ffb からモータートルク目標値T m0 を減じて摩擦ブレーキトルク指令値T f を求め、機械式ブレーキの摩擦ブレーキトルクを制御するようにしたので、モーターの制御範囲が正負両側に確保され、路面の摩擦係数が変化しても常にモーターの制御性を最大限に活用することができ、安定な制動力を得ることができる。
また、モーターの制御範囲が負側に確保されるので、モーターにより制動時のエネルギーを充分に回収することができ、総合的な燃費を向上させることができる。
さらに、たとえモータートルク目標値を低摩擦路面などで車輪がロック傾向となるような制動トルクを設定したとしても、摩擦ブレーキトルクのフィードバック制御によって負の摩擦ブレーキトルク指令値、つまり駆動トルクが演算されるが、機械式ブレーキでは駆動トルクを実現できないから車輪には何ら作用を及ぼさず、結局、車輪の制動力は車輪のスリップ率を目標スリップ率に一致させるためのモータートルクのフィードバック制御により路面状況に最適な値に制御されることになる。したがって、良好な制動性能を得ることができるモータートルク目標値の設計自由度が大きくなるという効果も得られる。
(2) 請求項2の発明によれば、モーターのトルク検出値Tmsをモータートルク目標値Tm0に一致させるフィードバック制御の応答速度を、車輪のスリップ率μを目標スリップ率μ0に一致させるフィードバック制御の応答速度よりも遅くしたので、路面摩擦変化などの影響によりモータートルクが振動的になるような状況においても、モータートルク制御と摩擦ブレーキトルク制御とが干渉して制動性能を低下させることが防止され、安定な制動性能を得られる。
(3) 請求項3の発明によれば、ABS作動決定前のモータートルク指令値TmとABS作動決定後のモータートルク目標値Tm0との差分Tff0を演算し、その差分Tff0をABS作動決定後に所定時間で0まで徐々に低減してモータートルクから摩擦ブレーキトルクへ置き換えるフィードフォワードトルクTffを演算し、ABS作動決定後に、車輪のスリップ率μと目標スリップ率μ 0 との偏差にPID演算を施して得た値TmfdにフィードフォワードトルクTffを加算してモータートルク指令値Tmを演算するとともに、値TffbからフィードフォワードトルクTff を減じて摩擦ブレーキトルク指令値Tfを演算するようにしたので、ABS作動開始時の摩擦ブレーキトルク制御とモータートルク制御との干渉を抑制しながら、ABS作動直後にモータートルクTmsがその目標値Tm0へすばやく変化してモータートルクの制御範囲を正負両側に確保することができ、ABS作動直後から、モーターの制御性を最大限に活用して安定な制動力を得ることができる上に、モーターにより制動時のエネルギーを充分に回収することができ、総合的な燃費を向上させることができる。
(4) 請求項4および請求項5の発明によれば、モータートルク目標値Tm0を0または負の値としたので、簡単な構成でモータートルクの正負両側にそれぞれ同量のトルク制御範囲を確保することができ、モーターの制御性を広く活用して制動性能をより安定的に実現できる上に、モーターにより制動時のエネルギーを充分に回収することができ、総合的な燃費を向上させることができる。
(5) 請求項6の発明によれば、モーター回転速度Nmが所定値Nm1以下の範囲ではモータートルク目標値Tm0を0とし、モーター回転速度Nmが所定値Nm2(>Nm1)を越える範囲ではモーターの最小トルクTminに所定値Tplus(>0)を加算した値と0との小さい方をモータートルク目標値Tm0に設定し、モーター回転速度NmがNm1からNm2までの範囲では、所定値Nm1のときのモータートルク目標値Tm0(=0)と所定値Nm2のときのモータートルク目標値Tm0とを結んだ値をモータートルク目標値Tm0に設定するようにしたので、モータートルク目標値Tm0がモーターの調整可能なトルク範囲内に設定され、モーターの回転速度、温度、モーター駆動装置の温度、メインバッテリーの温度および充電状態などによってモーターの調整可能なトルク範囲が変化しても、モータートルク目標値Tm0を常に実現可能なトルク範囲内に設定することができ、モーターの制御性を広く活用して制動性能をより安定的に実現できる上に、モーターにより制動時のエネルギーを充分に回収することができ、総合的な燃費を向上させることができる。
(6) 請求項7の発明によれば、モータートルク目標値Tm0を、モーターの最大トルクTmaxと最小トルクTminとの間の中央値としたので、モーターの回転速度および温度、モーター駆動装置の温度、メインバッテリーの温度および充電状態などによってモーターの調整可能なトルク範囲が変化しても、モータートルクを正側と負側にそれぞれ同量ずつ確保することができ、モーターの制御性を最大限に活用して制動性能をより安定的に実現することができる上に、モーターにより制動時のエネルギーを充分に回収することができ、総合的な燃費を向上させることができる。
(7) 請求項8の発明によれば、モーター回転速度Nmが所定値Nm1以下の範囲ではモータートルク目標値Tm0を0とし、モーター回転速度Nmが所定値Nm2(>Nm1)を越える範囲では、スリップ率μに応じて増加する値Tplus1と、モータートルク検出値Tmsと摩擦ブレーキトルク指令値Tfとの和(Tms+Tf)に応じて増加する値Tplus2との和(Tplus1+Tplus2)をモーターの最小トルクTminに加算した値(Tplus1+Tplus2+Tmin)と、0との小さい方をモータートルク目標値Tm0に設定し、モーター回転速度NmがNm1からNm2までの範囲では、所定値Nm1のときのモータートルク目標値Tm0(=0)と所定値Nm2のときのモータートルク目標値Tm0とを結んだ値をモータートルク目標値Tm0に設定するようにしたので、モーター回転速度Nmが高くなっても制動側のトルク制御範囲を確保することができ、路面の摩擦係数が大きく変化するような状況においても、大きな制動力を安定して維持することができる。また、路面摩擦係数が小さい状況から大きい状況となった場合には車輪のグリップ力が大きくなるため、モータートルクをより制動側に操作して制動力を増加させる必要がある。このような状況においても、モーターの制動側のトルク制御範囲を充分に確保でき、路面摩擦係数の変化に対して制動力を安定に維持することができる。また、路面摩擦係数が大きい時に制動側のトルク制御範囲を大きくするので、制動エネルギーをより多く回収することができる。
(8) 請求項9の発明によれば、モーター回転速度Nmの代わりに車輪の滑り0を実現する仮想モーター回転速度Nm’を用いるようにしたので、請求項6の上記効果に加え、車両の逆走を防止するためにモーター回転速度0近傍においてモータートルクを0にしても、制動力に段差が発生せず、スムーズな制動を実現することができる。
(9) 請求項10の発明によれば、仮想モーター回転速度Nm’が所定値Nm’1以下の範囲ではモータートルク目標値Tm0を0とし、仮想モーター回転速度Nm’が所定値Nm’2(>Nm’1)を越える範囲では、モータートルク検出値Tmsと摩擦ブレーキトルク指令値Tfとの和(Tms+Tf)に応じて増加する値Tplus2をモーターの最小トルクTminに加算した値と0との小さい方をモータートルク目標値Tm0に設定し、仮想モーター回転速度Nm’がNm’1からNm’2までの範囲では、所定値Nm’1のときのモータートルク目標値Tm0(=0)と所定値Nm’2のときのモータートルク目標値Tm0とを結んだ値をモータートルク目標値Tm0に設定するようにしたので、路面の状況に応じて適切なモーターの制動側トルク制御範囲を確保することができ、路面の状況が変化しても必要な制動力を安定に実現することができる。また、路面摩擦係数が大きい時に制動側トルク制御範囲を大きくするので、制動エネルギーをより多く回収することができる。
(10) 請求項11の発明によれば、モーターのトルク検出値Tmsをモータートルク目標値Tm0に一致させるフィードバック制御の出力Tffbが駆動トルクになったときはフィードバック制御を停止し、フィードバック制御の出力Tffbを0にするようにフィードバック制御系の積分要素をリセットするようにした。摩擦ブレーキトルク指令値Tmを演算するためのフィードバック制御の出力Tffbが駆動トルクになり、フィードバック制御の積分要素に駆動トルク側の値が蓄積していく場合には、その後のモータートルクの目標値追従性に悪影響を及ぼすが、請求項11の発明によればこのような不具合を防止することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
前輪の左右にそれぞれ走行駆動用モーターを備えた電気自動車に、本発明を応用した一実施の形態を説明する。
なお、後輪の左右にそれぞれ走行駆動用モーターを備えた電気自動車や、4輪すべてにそれぞれ走行駆動用モーターを備えた電気自動車に対しても、本発明を適用することができる。また、走行駆動用モーター以外にエンジンなどの走行駆動源を備えたパラレル・ハイブリッド自動車や、エンジンなどの駆動源により発電機を駆動して発電を行い、走行駆動用モーターへ電力を供給するシリーズ・ハイブリッド自動車に対しても、本発明を適用することができる。
【0013】
図1は一実施の形態の構成を示す。なお、一実施の形態の左右前輪の駆動系は対象であり、図1には左右前輪の内の一方の車輪の駆動系のみを示し、他方の車輪の駆動系の図示と説明を省略する。
【0014】
この車両のパワートレインは、走行駆動用の三相交流モーター1から車軸2を介して駆動輪3が連結されている。モーター1には三相同期電動機や三相誘導電動機などの交流機や直流電動機を用いることができ、力行運転による車両の推進と回生運転による車両の制動とを行う。
【0015】
モーター1はインバーター4により駆動される。インバーター4はDCリンク5を介してメインバッテリー6に接続されており、メインバッテリー6の直流電力を交流電力に変換してモーター1へ供給するとともに、モーター1の交流発電電力を直流電力に変換してメインバッテリー6を充電する。メインバッテリー6にはリチウム・イオン電池、ニッケル・水素電池、鉛電池などの各種電池や、電気二重層キャパシターなどを用いることができる。
【0016】
駆動輪3には、車軸2に連結されたブレーキディスク7と、そのブレーキディスク7との接触摩擦により制動力を発生するブレーキパッド8とが設けられている。これらのブレーキディスク7とブレーキパッド8により機械式ブレーキ(摩擦ブレーキ)を構成する。ブレーキパッド8は油圧配管9の油圧によってブレーキディスク7との接触圧が調節され、制動力が増減する。ブレーキアクチュエーター10は、ブレーキペダルの踏み込み圧Boに応じて油圧を増圧するブースター(不図示)を備えるとともに、油圧配管9を介してホイールシリンダー(不図示)の油圧を増圧、保持、減圧するソレノイドバルブ(ABS制御弁、不図示)を備えている。なお、他方の駆動輪も駆動輪3と同様な機械式ブレーキを備えている。
【0017】
バッテリーコントローラー11はマイクロコンピューターとメモリなどの周辺部品から構成され、メインバッテリー6の温度Tbatや充電状態SOCに基づいてメインバッテリー6の入力可能電力Pbat_inおよび出力可能電力Pbat_outを演算する。バッテリーコントローラー11には、メインバッテリー6の温度Tbatを検出する温度センサー12と、充電状態SOCを検出するSOC検出装置13などが接続されている。
【0018】
モーターコントローラー14はマイクロコンピューターとメモリなどの周辺部品から構成され、インバーター4を制御してモーター1のトルクを調節する。モーターコントローラー14には、モーター1に連結されてモーター回転速度Nm[rpm]を検出する回転センサー15と、インバーター4の温度Tinvを検出する温度センサー16などが接続されている。モーターコントローラー14はまた、電流センサー22によりモーター1に流れる三相交流電流iu、iv、iwを測定し、それらに基づいてモーター1のトルクTmsを検出する。なお、他方の駆動輪を駆動するモーターのトルクも駆動輪3と同様に調節され、左右の駆動輪の駆動力と電気式ブレーキ力(回生ブレーキ力)とはそれぞれ別個に調節可能となっている。また、モーター1は駆動輪3に変速比1で連結されているので、モーター回転速度Nm[rpm]は駆動輪3の回転速度に等しい。
【0019】
ここで、駆動輪3の有効半径をr[m]とすると、駆動輪3の周速(以下、車輪速度と呼ぶ)Vm[km/h]は次式により求められる。
【数1】
Vm=2πr・Nm・60/1000 [km/h]
【0020】
ブレーキコントローラー17はマイクロコンピューターとメモリなどの周辺部品から構成され、ブレーキアクチュエーター10を制御してホイールシリンダー(不図示)の油圧を調節し、駆動輪3の制動力を増減する。なお、他方の駆動輪の制動力も駆動輪3と同様に調節され、左右の駆動輪の機械式ブレーキ力(摩擦ブレーキ力)はそれぞれ別個に調節可能となっている。
【0021】
制駆動力コントローラー18はマイクロコンピューターとメモリなどの周辺部品から構成され、バッテリーコントローラー11、モーターコントローラー14およびブレーキコントローラー17を制御して駆動輪3の制駆動力を調節する。制駆動力コントローラー18はまた、他方の駆動輪のバッテリーコントローラー(不図示)、モーターコントローラー(不図示)およびブレーキコントローラー(不図示)を制御して他方の駆動輪の制駆動力を調節する。制駆動力コントローラー18にはアクセルペダルの踏み込み量Accを検出するアクセルセンサー19、ブレーキペダルの踏み込み圧B0を検出するブレーキセンサー20、車速Vspを検出する車速センサー21などが接続されており、後述する目標制動力演算ルーチンを実行してモータートルク指令値Tmと摩擦ブレーキトルク指令値Tfを演算する。
【0022】
モータートルク指令値Tmはモーターコントローラー14に対してモーター1の走行駆動トルクまたは電気式ブレーキ(回生ブレーキ)トルクを指令するものであり、モーターコントローラー14はモータートルク検出値Tmsがモータートルク指令値Tmに一致するようにフィードバック制御を行う。また、摩擦ブレーキトルク指令値Tfはブレーキコントローラー17に対して機械式ブレーキ(摩擦ブレーキ)のトルクを指令するものである。なお、モータートルク指令値Tmは正値が駆動トルクを示し、負値が制動トルク(電気式ブレーキトルク)を示す。また、摩擦ブレーキトルク指令値Tfは負値が制動トルクを示す。
【0023】
なお、上述したバッテリーコントローラー11、モーターコントローラー14、ブレーキコントローラー17、制駆動力コントローラー18およびセンサー類12,13,15,16,19,20,21,22には補助バッテリー(不図示)から電源が供給されている。
【0024】
図2は、制駆動力コントローラー18によるABS作動時の目標制動力演算処理を示す制御ブロック図である。
制駆動力コントローラー18は、マイクロコンピューターのソフトウエア形態により図2に示す制御ブロック18a〜18mを構築し、ABS作動時にモータートルク指令値Tmと摩擦ブレーキトルク指令値Tfを演算してモーターコントローラー14とブレーキコントローラー17へそれぞれ出力する。
【0025】
一般に、自動車においては、車輪に加える制動力が、車輪が路面から受ける力、すなわち車輪のグリップ力の最大値となるように車輪の制動力を制御することによって、車輪のロック傾向を防止しながら最大の制動性能を得ることができる。ところが、車輪のグリップ力は路面状況すなわち車輪と路面との間の摩擦係数によって変化するため、路面状況に応じたグリップ力を時々刻々に検出することは困難である。
【0026】
そこで、この実施の形態では、ABS作動時には、車輪のグリップ力が最大となるスリップ率(目標スリップ率)μ0を予め実験により測定しておき、実際のスリップ率μをフィードバックし、実際のスリップ率μが目標スリップ率μ0となるようにモータートルクを制御するとともに、正負両側にモータートルクの制御範囲を確保してモーターの制御性を充分に活用し、制動時のエネルギー回収量を増大するモータートルク目標値を設定し、モータートルクがモータートルク目標値となるように摩擦ブレーキトルクをフィードバック制御する。
【0027】
図3は目標制動力演算ルーチンを示すフローチャートである。図2の制御ブロック図と図3のフローチャートにより、一実施の形態の動作を説明する。
制駆動力コントローラー18は、所定時間ごとに図3の演算ルーチンを実行する。ステップ1において、ブレーキセンサー20からブレーキペダルの踏み込み圧B0を入力するとともに、回転センサー15から駆動輪3の回転速度Nm[rpm](=モーター1の回転速度)を入力する。なお、他方の駆動輪および左右後輪の各回転センサーからも各車輪の回転速度を入力する。そして、駆動輪3の回転速度Nmと車輪径rとに基づいて車輪速度Vm[km/h]を算出するとともに、車体速度Vv[km/h]を推定する。この実施の形態では、全車輪の内の最も速い回転速度Nmの車輪の車輪速度Vmを車体速度Vvとする。なお、車体速度Vvの推定方法はこの実施の形態の方法に限定されず、他の公知の方法を用いることができる。また、走行用モーターと駆動輪との間に減速機が介装される場合には、モーター回転速度と車輪径と減速機の減速比とに基づいて車輪速度を演算する。
【0028】
ステップ2で、ブレーキペダル踏み込み圧B0が0より大きいか、つまりブレーキペダルが踏み込まれているかどうかを確認し、踏み込まれている時はステップ3へ進み、踏み込まれていない時はステップ4へ進む。ブレーキペダルが踏み込まれていない時は、ステップ4で車両を制動するためのモータートルク指令値Tmと摩擦ブレーキトルク指令値Tfにそれぞれ0を設定し、この目標制動力演算ルーチンを終了する。
【0029】
一方、ブレーキペダルが踏み込まれている時は、ステップ3で、ブレーキペダルの踏み込み圧に対する各車輪の制動トルク指令値を示すデータテーブルから、ブレーキペダル踏み込み圧B0に対応する各車輪の制動トルク指令値を表引き演算する。ここでは、駆動輪3に割り当てられる制動トルク指令値をT0とする。なお、ブレーキペダル踏み込み圧に対する各車輪の制動トルク指令値のデータテーブルは、予め設定されて制駆動力コントローラー18のメモリに記憶されている。また、制動トルク指令値は負値が制動トルクを表す。
【0030】
なお、この実施の形態ではブレーキペダルの踏み込み圧B0を検出し、ブレーキペダルの踏み込み圧に対する各車輪の制動トルク指令値を示すデータテーブルから、ブレーキペダル踏み込み圧B0に対応する各車輪の制動トルク指令値を表引き演算して制動トルク指令値T0を決定する例を示すが、車両の運転者指示による制動力指令値に応じて制動制御するもの以外にも、車両の自動運転装置により制動動作を行う装置、あるいは車両の姿勢を安定化する目的で車輪ごとに制動力を調整する装置などにも適用でき、同様の効果を得ることができる。
【0031】
ステップ5において、先に推定した車体速度Vvと駆動輪3の車輪速度Vmとに基づいて、スリップ率μを次式により演算する(図2のスリップ率演算ブロック18d参照)。
【数2】
μ=(Vm−Vv)/Vv
上述したように、制動時に路面状況などによって車輪が滑走状態になり、車輪速度Vmが車体速度Vvよりも小さくなると車輪ロック傾向となる。この時、スリップ率μは負値となり、値が小さいほど車両ロック傾向が強く滑りが大きい。
【0032】
図4はスリップ率μと車輪のグリップ力との関係を示す。
スリップ率μ(負値)の減少につれて車輪のグリップ力は増加し、目標スリップ率μ0において最大となる。さらにスリップ率μが減少すると、車輪のグリップ力はわずかに減少してほぼ一定値になる。
【0033】
ステップ6において、スリップ率μを所定値μthと比較してABS作動判定を行う。ここで、所定値μthは図4に示すように最大グリップ力が得られる目標スリップ率μ0よりわずかに大きな値とする。スリップ率μが所定値μthより小さい場合は、制動力指令値がグリップ力最大値よりも大きく、車輪ロック傾向が強くなって滑りが大きくなると判断し、ABSの作動を決定してステップ7からステップ8へ進む。一方、スリップ率μが所定値μth以上の場合には、制動力指令値がグリップ力最大値よりも小さく、車輪ロック傾向が弱く滑りが小さいと判断し、ABS非作動を決定してステップ7からステップ9へ進む。なお、いったんABS作動の判定がなされた後は、スリップ率μが所定値μth’(>μth)を越えるまでABS作動判定を解除しないことにし、ABS作動、非作動の判定にヒステリシスを持たせて判定ごとに作動と非作動が切り替わるのを防止する。
【0034】
なお、この実施の形態ではスリップ率μに基づいてABS作動、非作動の判定を行う例を示すが、ABS作動、非作動の判定方法はこの実施の形態に限定されず、例えば特開平6−098418号公報に開示される方法、すなわち車輪の角加速度、角速度情報および車輪周りの運動方程式を用いて、車輪が路面から受ける反力を推定し、その推定反力から判定する方法などを採用することができる。
【0035】
ABS非作動と判定された場合は、ステップ9でモータートルク指令値Tmを演算し、続くステップ10で摩擦ブレーキトルク指令値Tfを演算する。モータートルク指令値Tmと摩擦ブレーキトルク指令値Tfは、例えば図5に示す制動トルク配分にしたがって決定する。すなわち、制動トルク指令値T0が所定値T01以下の場合にはすべて電気式ブレーキにより制動し、モータートルク指令値Tmと摩擦ブレーキトルク指令値Tfを、
【数3】
Tm=T0,
Tf=0
とする。また、制動トルク指令値T0が所定値T01を越えたらモータートルク指令値Tmを所定値T01一定とし、制動トルク指令値T0が所定値T01を越えた分を機械式ブレーキにより負担する。すなわち、
【数4】
Tm=T01,
Tf=T0−Tm=T0−T01
【0036】
一方、ABS作動と判定された場合は、ステップ8で、まずモータートルク目標値Tm0を設定する(図2のモータートルク目標値設定ブロック18e参照)。モータートルク目標値Tm0の設定方法には次のような方法がある。
【0037】
《ABS作動時のモータートルク目標値Tm0の第1の設定方法》
第1の設定方法は、特に演算を行わず、常にモータートルク目標値Tm0を0とする。
【0038】
一般に、モーターは、正側、負側ともに同量ずつのトルク制御範囲を有するように設計されている。したがって、モータートルク目標値Tm0を0とすることによって、簡単な構成でモータートルクの正負両側にそれぞれ同量のトルク制御範囲を確保することができ、モーター1の制御性を広く活用して制動性能をより安定的に実現できる上に、モーター1により制動時のエネルギーを充分に回収することができ、総合的な燃費を向上させることができる。
【0039】
《ABS作動時のモータートルク目標値Tm0の第2の設定方法》
第2の設定方法は、まず、少なくともモーター1の回転速度Nmと最大入出力パワー(仕事率)とに基づいて、モーター1で調節可能な最大トルクTmax(最大駆動トルク)と最小トルクTmin(最大制動トルク)を求める。
【0040】
そして、例えば車輪速度Vmが5km/h以下では、モータートルク目標値Tm0を0とする。また、車輪速度Vmが20km/hを越える範囲では、モータートルク目標値Tm0を、最小トルク(最大制動トルク)Tminに所定値Tplus(正値)を加算した値と0との小さい方の値とする。ここで、所定値Tplusは、モーター1の制動側のトルク制御範囲を確保するための値である。さらに、車輪速度Vmが5km/hから20km/hまでの間では、5km/hと20km/hのモータートルク目標値Tm0を直線で結び、車輪速度Vmに対応するモータートルク目標値Tm0を補間演算する。
【0041】
このように、モータートルク目標値Tm0を、モーター1で調整可能なトルク範囲(最大トルクTmax〜最小トルクTmin)内で設定するようにしたので、モーター1の回転速度Nmおよび温度、インバーター4の温度、メインバッテリー6の温度および充電状態などによってモーター1の調整可能なトルク範囲が変化しても、モータートルク目標値Tm0を常に実現可能なトルク制御範囲内に設定することができる。
【0042】
また、モータートルク目標値Tm0を、モーター回転速度Nmが略0、すなわち車輪速度Vm=5km/h以下では0とし、モーター回転速度Nmが0以外、すなわち、車輪速度Vmが20km/hを越える範囲では最小トルク(最大制動トルク)Tminに所定値Tplus(正値)を加算した値と0との小さい方の値とし、車輪速度Vmが5km/hから20km/hまでの間では5km/hと20km/hのモータートルク目標値Tm0を直線で結び、車輪速度Vmに対応する値としたので、車両の逆走を防止するためにモーター回転速度0近傍においてモータートルクを0にしても、制動力に段差が発生せず、スムーズな制動を実現することができる。
【0043】
さらに、モータートルク目標値Tm0を、モーター1で調整可能なトルク範囲(Tmax〜Tmin)内の0または負の値としたので、モーター1により制動エネルギーを充分に回収することができる。
【0044】
さらにまた、モーター回転速度Nmが0以外の、車輪速度Vmが20km/hを越える範囲では、最小トルク(最大制動トルク)Tminに所定値Tplusを加算した値と0との小さい方の値をモータートルク目標値Tm0としたので、モーター1の制動側のトルク制御範囲を少なくとも所定値Tplusだけ確保することができ、制動エネルギーを充分に回収することができる。
【0045】
《ABS作動時のモータートルク目標値Tm0の第3の設定方法》
第3の設定方法は、モータートルク目標値Tm0を、上述したモーター1の最大トルクTmaxと最小トルクTminとに基づいて次式により演算する。
【数5】
Tm0=(Tmax+Tmin)/2
【0046】
これにより、モーター1の回転速度Nmおよび温度、インバーター4の温度、メインバッテリー6の温度および充電状態などによってモーター1の調整可能なトルク範囲が変化しても、トルク制御範囲を正側と負側にそれぞれ同量ずつ確保することができ、モーター1の制御性を最大限に活用して制動性能をより安定的に実現することができる。また、モーター1により制動時のエネルギーを充分に回収することができ、総合的な燃費を向上させることができる。
【0047】
《ABS作動時のモータートルク目標値Tm0の第4の設定方法》
第4の設定方法は、上記第2の設定方法の所定値Tplusを一定値とせず、予め設定したTplus1テーブル(後述)を参照してスリップ率μに対応する所定値Tplus1を求めるとともに、予め設定したTplus2テーブル(後述)を参照してモータートルク検出値Tmsと摩擦ブレーキトルク指令値Tfとの和に対応する所定値Tplus2を求め、最小トルクTminに(Tplus1+Tplus2)を加えた値と0との小さい方の値を、車輪速度Vmが20km/h以上でのモータートルク目標値Tm0とする。なお、車輪速度Vmが20km/h未満におけるモータートルク目標値Tm0は上記第2の設定方法にしたがって設定する。
【0048】
ここで、Tplus1テーブルは、スリップ率μが小さくなる、つまり制動による滑りが大きくなるほど、大きい正値を割り当てたテーブルである。また、Tplus2テーブルは、モータートルク検出値Tmsと摩擦ブレーキトルク指令値Tfとの和が小さいほど、つまり制動力が大きいほど、大きい正値を割り当てたテーブルである。なお、モータートルク検出値Tmsは、電流センサー22により測定された三相交流電流iu、iv、iwに基づいてモーターコントローラー14で検出され、制駆動力コントローラー18へ送られる。
【0049】
上述した第2の設定方法では、図6に示すように、モーター1の回転速度Nm(車輪速度Vm)が高くなるほどモーター1による制動側のトルク制御範囲が小さくなるため、所定値Tplusの制動力を確保できなくなる。この第4の設定方法によれば、スリップ率μが小さくなって車輪のロック傾向が強くなり、滑りが大きくなるほど所定値Tplus1を大きくするようにしたので、モーター回転速度Nmが高くなっても制動側のトルク制御範囲を確保することができ、路面の摩擦係数が大きく変化するような状況においても、大きな制動力を安定して維持することができる。
【0050】
また、この実施の形態では、ABS作動時には、車輪に作用する制動力がグリップ力最大値に一致するようにモーター1のトルクをフィードバック制御するとともに、モーター1のトルクが目標値Tm0に一致するように機械式ブレーキトルクをフィードバック制御する。したがって、ABS作動時はモータートルクと機械式ブレーキトルクとの和が制動力、すなわちグリップ力最大値に比例する。換言すれば、ABS制御時は、モータートルクと機械式ブレーキトルクとの和と、モーター回転速度(または車輪速度)とに基づいてグリップ力最大値を推定することができる。上述したモータートルク検出値Tmsと摩擦ブレーキトルク指令値Tfとの和(Tms+Tf)はグリップ力に比例するから、この第4の設定方法では、和(Tms+Tf)が小さい(負値が制動トルクを表す)ほど、つまり制動力が大きいほど所定値Tplus2が大きくなるようにした。路面摩擦係数が小さい状況から大きい状況となった場合にはグリップ力が大きくなるため、モーター1のトルクをより制動側に操作して制動力を増加させる必要がある。このような状況においても、モーター1の制動側のトルク制御範囲を充分に確保でき、路面摩擦係数の変化に対して制動力を安定に維持することができる。また、路面摩擦係数が大きい時に制動側のトルク制御範囲を大きくするので、制動エネルギーをより多く回収することができる。
【0051】
《ABS作動時のモータートルク目標値Tm0の第5の設定方法》
第5の設定方法は、第2の設定方法における車輪速度Vmの代わりに車体速度Vvを車輪滑り0を実現する仮想車輪速度Vm’とし、少なくとも仮想車輪速度Vm’とモーター1の最大入出力パワーに基づいて、モーター1で調節可能な最大トルクTmax’(最大駆動トルク)と最小トルクTmin’(最大制動トルク)を求める。そして、例えば仮想車輪速度Vm’が5km/h以下では、モータートルク目標値Tm0を0とする。また、仮想車輪速度Vm’が20km/hを越える場合には、最小トルクTmin’に所定値Tplus(正値)を加算した値と0との小さい方の値とする。また、仮想車輪速度Vm’が5から20km/hまでの間では、5km/hと20km/hのモータートルク目標値Tm0を直線で結び、仮想車輪速度Vm’に対応するモータートルク目標値Tm0を補間演算する。
【0052】
このように、モータートルク目標値Tm0を、モーター1で調整可能なトルク範囲(最大トルクTmax’〜最小トルクTmin’)内で設定するようにしたので、モーター1の回転速度Nmおよび温度、インバーター4の温度、メインバッテリー6の温度および充電状態などによってモーター1の調整可能なトルク範囲が変化しても、モータートルク目標値Tm0を常に実現可能なトルク制御範囲内に設定することができる。
【0053】
また、モータートルク目標値Tm0を、モーター回転速度Nmが略0、すなわち仮想車輪速度Vm’=5km/h以下では0とし、モーター回転速度Nmが0以外、すなわち、仮想車輪速度Vm’が20km/hを越える範囲では最小トルク(最大制動トルク)Tmin’に所定値Tplus(正値)を加算した値と0との小さい方の値とし、仮想車輪速度Vm’が5km/hから20km/hまでの間では5km/hと20km/hのモータートルク目標値Tm0を直線で結び、仮想車輪速度Vm’に対応する値としたので、車両の逆走を防止するためにモーター回転速度0近傍においてモータートルクを0にしても、制動力に段差が発生せず、スムーズな制動を実現することができる。
【0054】
さらに、モータートルク目標値Tm0を、モーター1で調整可能なトルク範囲(Tmax’〜Tmin’)内の0または負の値としたので、モーター1により制動エネルギーを充分に回収することができる。
【0055】
さらにまた、モーター回転速度Nmが0以外の、仮想車輪速度Vm’が20km/hを越える範囲では、最小トルク(最大制動トルク)Tmin’に所定値Tplusを加算した値と0との小さい方の値をモータートルク目標値Tm0としたので、路面摩擦係数が大きくなってグリップ力が大きくなる状況において、車輪の滑りが0となってモーター回転速度Nmが高くなっても、モーター1の制動側のトルク制御範囲を少なくとも所定値Tplusだけ確保することができ、路面摩擦係数の変化に対して制動力を安定に実現することができる。
【0056】
《ABS作動時のモータートルク目標値Tm0の第6の設定方法》
第6の設定方法は、上記第5の設定方法で求めた最小トルク(最大制動トルク)Tmin’に第4の設定方法で説明した所定値Tplus2(正値)を加算した値と0との小さい方を、仮想車輪速度Vm’が20km/hを越える場合のモータートルク目標値Tm0とする。それ以外は上記第5の設定方法と同様である。なお、Tplus2テーブルは、上述したように、モータートルク検出値Tmsと摩擦ブレーキトルク指令値Tfとの和が小さいほど、つまり制動力が大きいほど、大きい正値を割り当てたテーブルである。
【0057】
これにより、路面の状況に応じて適切なモーター1の制動側のトルク制御範囲を確保することができ、路面の状況が変化しても必要な制動力を安定に実現することができる。
【0058】
また、上述したモータートルク検出値Tmsと摩擦ブレーキトルク指令値Tfとの和(Tms+Tf)がグリップ力最大値に比例するから、この第6の設定方法では、和(Tms+Tf)が小さい(負値が制動トルクを表す)ほど、すなわち制動力が大きいほど所定値Tplus2が大きくなるようにした。路面摩擦係数が小さい状況から大きい状況になるとグリップ力が大きくなるため、モーター1のトルクをより制動側に操作して制動力を増加させる必要がある。このような状況においても、モーター1の制動側のトルク制御範囲を充分に確保でき、路面摩擦係数の変化に対して制動力を安定に維持することができる。また、路面摩擦係数が大きい時に制動側のトルク制御範囲を大きくするので、制動エネルギーをより多く回収することができる。
【0059】
なお、この実施の形態ではモーター1の回転速度Nm[rpm]と駆動輪3の回転速度とが1:1の関係にあるので、モータートルク目標値Tm0の設定にモーター1の回転速度Nmの代わりに数式1により求められる駆動輪3の車輪速度Vmを用いたが、モーター1と駆動輪3との間に減速機が設置されるような場合には、モーター1の回転速度Nmを用いてモータートルク目標値Tm0を設定してもよい。その場合には、車輪速度Vmの所定値5km/hと20km/hに対応するモーター回転速度Nm1とNm2(>Nm1)を用いる。また、車輪滑り0を実現する仮想車輪速度Vm’の代わりに、車輪滑り0を実現する仮想モーター回転速度Nm’を用い、仮想車輪速度5km/hと20km/hに対応する仮想モーター回転速度Nm’1とNm’2(>Nm’1)を用いる。
【0060】
この実施の形態では、モーター1に定出力特性のモーターを採用する。すなわち、図6に示すように、モーター回転速度Nmが基底回転速度(ベーススピード)Nbまでは最大入出力トルクまで使用でき、基底回転速度Nbを越えたらモーター回転速度Nmの上昇に応じて最大出力トルクを低減し、最大入力トルクを増加する。モーター1で調整可能な最大トルクTmax、Tmax’(最大駆動トルク)と最小トルクTmin、Tmin’(最大制動トルク)については、車輪速度Vm、仮想車輪速度Vm’に比例するモーター回転速度Nm、およびモーター1の最大入出力パワーのみならず、メインバッテリー6の入出力可能電力Pbat_in、Pbat_outの増減と、インバーター4の温度Tinvの変化による制駆動能力の増減などを反映させてもよい。すなわち、図6に示すように、バッテリー出力可能電力Pbat_outが大きいほど最大トルクTmax、Tmax’を増加し、バッテリー入力可能電力Pbat_inが小さいほど最小トルクTmin、Tmin’(負値)を増加する。また、インバーター温度Tinvが高いほど、最大トルクTmax、Tmax’を低減するとともに、最小トルクTmin、Tmin’(負値)を増加する。
【0061】
ふたたび図2に戻り説明を続ける。
ステップ8において、モータートルク目標値Tm0を設定したら目標スリップ率μ0を設定する。目標スリップ率μ0には、グリップ力が最大となる例えば−0.2を設定する。
【0062】
ステップ11で、今回の目標制動力演算処理がABS作動直後の処理であるか否かを確認し、ABS作動直後の処理であればステップ12へ進み、そうでなければステップ12をスキップする。ステップ12では、前回の目標制動力演算処理におけるモータートルク指令値TmをTmzに代入するとともに(図2の制御ブロック18g参照)、前回の目標制動力演算処理における摩擦ブレーキトルク指令値TfをTfzに代入する(図2の制御ブロック18m参照)。さらに、フィードフォワード基準値Tff0を、ABS作動直後のモータートルク目標値Tm0と、ABS作動直前のモータートルク目標値Tmzとの差分として次式により演算し、以後ABS作動中はその値を保持する。
【数6】
Tff0=Tmz−Tm0
【0063】
ステップ13で、この目標制動力演算プログラムを実行するたびに、フィードフォワード基準値Tff0を所定量ずつ低減して所定時間で0まで減少させ、モータートルクから摩擦ブレーキトルクへ置き換えるフィードフォワード分の制動トルクTffを求める(図2のフィードフォワードトルク演算ブロック18f参照)。続くステップ14で、駆動輪3のスリップ率μが目標スリップ率μ0となるようにPIDフィードバック制御(図2の減算器18aとPID演算ブロック18b参照)により求めたモータートルク演算値Tmfbと、フィードフォワード分の制動トルクTffとを加算してモータートルク指令値Tmを演算する(図2の加算器18c参照)。
【数7】
Tm=Tmfb+Tff
この時、ABS作動直後においてモーター1のトルク指令値が連続するように、ABS作動直後のみ、駆動輪3のスリップ率μを目標スリップ率μ0に一致させるためのPIDフィードバック制御の積分値にモータートルク目標値Tm0を設定する。
【0064】
ステップ15では、モータートルクが(Tm0+Tff)となるようにPIDフィードバック制御(図2の減算器18iとPID演算ブロック18j参照)により求めた値Tffbに、(−Tff−Tm0)を加算して摩擦ブレーキトルクTfを演算する(図2の加算器18k参照)。
【数8】
Tf=Tffb−Tff−Tm0
ABS作動直後において、摩擦ブレーキのトルク指令値が連続するように、ABS作動直後のみ、モータートルクを(Tm0+Tff)に一致させるためのPIDフィードバック制御の積分値に(Tmz+Tfz)を設定する。
【0065】
なお、モータートルク検出値Tmsが(Tm0+Tff)に一致するようにPIDフィードバック制御を行う図2の減算器18iとPID演算ブロック18jでは、フィードバック制御の出力Tffbが正値(駆動トルク)となったときはフィードバック制御を停止し、フィードバック制御の出力Tffbを0とするようにフィードバック制御系の積分要素をリセットする。
【0066】
また、摩擦ブレーキトルクのPIDフィードバック制御において、摩擦ブレーキトルク指令値Tfの値が0以下、つまり駆動力を発生させるような値が演算された場合には、フィードバック制御の積分値をリセットして摩擦ブレーキトルク指令値Tfを0にする。
【0067】
ここで、摩擦ブレーキトルク指令値TfのPIDフィードバック制御の応答速度を、PIDゲインの設定によりモータートルク指令値TmのPIDフィードバック制御の応答速度より遅く設定しておくと、路面摩擦の急激な変化によりモータートルクが振動的になるような状況においても、両フィードバック制御が互いに干渉するのを抑制できる。
【0068】
また、この実施の形態では時間的に連続して変化するフィードフォワードトルクTffを用いて、モーターの制動トルク減少分と摩擦ブレーキトルク増加分とを相殺するように両制動トルク指令値Tm、Tfを演算したが、特に両者の指令値に対する制動トルクの応答速度に違いが見られる場合には、それぞれの応答特性の逆系(動特性の入力を出力とし、出力を入力とした系)の近似式を用いて、実際に制動力として及ぼされるモータートルク減少分と摩擦ブレーキトルク増加分とが相殺されるような指令値を求めてもよい。
【0069】
なお、ステップ8で、モーター1で調整可能なトルク範囲(Tmax−Tmin)を求め、そのトルク範囲が予め設定されているTband(正値)よりも小さい場合には、モータートルク指令値Tmを0とし、摩擦ブレーキによりスリップ率μが目標スリップ率μ0となるようにフィードバック制御すればよい。
【0070】
図7は、一実施の形態によるABS動作を示すタイムチャートである。この例は、時刻t3まで中摩擦路を走行し、時刻t3からt4まで低摩擦路を走行し、時刻t4以後は中摩擦路を走行した場合の結果であり、(a)は車体速度Vvの変化を示し、(b)は制動トルクの変化を示し、(c)はモーターによる制動トルクの変化を示し、(d)は摩擦ブレーキによる制動トルクの変化を示し、(e)は車輪のスリップ率を示す。
【0071】
時刻t1において運転者がブレーキペダルを踏み始め、時刻t1からt2において図5に示す制動トルク配分にしたがってモーターブレーキトルクと摩擦ブレーキトルクとを配分し、実現している。時刻t2では、車輪のスリップ率μがABS作動判定スリップ率μth(ここではμth=μ0とする)を下回ったことを検出し、滑りが大きいと判断してABS作動を判定している。同時に、モータートルク目標値Tm0を生成し始める。ここで図示してある生成法は、モーター仮想車輪速度Vm’から最小トルク(最大制動トルク)Tmin’を演算した上で、Tmin’に所定値Tplus(正値)を加算した値と0との小さい方を目標値とするとともに、車体速度VvSから車体速度VvEまでの間で連続的に0とする生成法としてある。さらに、時刻t2においては、モータートルクがいち早く目標値に一致するように、Tff0(時刻t2における目標トルクTm0と実トルクとの差)だけモータートルクを増やして制動力を弱めるとともに、Tff0分の制動力低下を補うようにTff0分だけ摩擦ブレーキトルクを強めている。
【0072】
さらに、時刻t2からは、車輪スリップ率μが目標スリップ率μ0に一致するようにモータートルクのフィードバック制御を開始するとともに、モータートルクTmsがモータートルク目標値Tm0に一致するように摩擦ブレーキトルクのフィードバック制御を開始している。同時に、モータートルク目標値Tm0の減少(制動トルクを強める向き)に応じた摩擦ブレーキトルクの増大補正(制動トルクを弱める向き)を開始させている。ただし、時刻t5〜t6では逆にモータートルク目標値Tm0の増大(制動トルクを弱める向き)に応じて摩擦ブレーキトルクを減少補正(制動トルクを強める向き)させることになる。
【0073】
時刻t3で路面摩擦抵抗が下がった直後においては、まずモータートルクが反応してスリップ率を良好に制御し、その後はモーターのトルク制御範囲を確保するように摩擦ブレーキトルクが調整される。これにより、時刻t4で路面摩擦抵抗が復帰した場合にも、モーターのトルク制御範囲が確保されることになり、摩擦抵抗復帰直後のスリップ率も良好に制御される。
【0074】
時刻t5以降では、上述したようにモータートルク目標値Tm0を連続的に0としており、モータートルク目標値Tm0の変化速度が速くなっているが、モータートルク目標値Tm0の変化に応じて摩擦ブレーキトルクを補正するので、モータートルクを目標値Tm0に遅れなく追従させることができる。
【0075】
時刻t7以降では、車体速度がほぼ0に達し、車輪のスリップ率μの検出精度が低下することからABS作動を停止し、モータートルク目標値Tm0を0にして摩擦ブレーキで制動トルクT0を実現している。この場合、車体速度がほぼ0になっていることから、ABS作動停止によりたとえ車輪がロックしても制動距離に与える影響はごくわずかであり、操舵特性にも影響がないような車速となるようなタイミングとして設定しているので問題はない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 一実施の形態の構成を示す図である。
【図2】 一実施の形態の目標制動力演算処理を示す制御ブロック図である。
【図3】 一実施の形態の目標制動力演算ルーチンを示すフローチャートである。
【図4】 スリップ率に対する車輪のグリップ力特性を示す図である。
【図5】 電気式ブレーキと機械式ブレーキのブレーキトルク配分を示す図である。
【図6】 モーター回転速度に対するモータートルク制御範囲と、バッテリー入出力可能電力とインバーター温度によるモータートルク制御範囲の増減を示す図である。
【図7】 一実施の形態によるABS動作を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
1 モーター
2 車軸
3 駆動輪
4 インバーター
5 DCリンク
6 メインバッテリー
7 ブレーキディスク
8 ブレーキパッド
9 油圧配管
10 ブレーキアクチュエーター
11 バッテリーコントローラー
12 温度センサー
13 SOC検出装置
14 モーターコントローラー
15 回転センサー
16 温度センサー
17 ブレーキコントローラー
18 制駆動力コントローラー
19 アクセルセンサー
20 ブレーキセンサー
21 車速センサー
22 電流センサー
Claims (11)
- 車輪に制駆動トルクを作用させるモーターと、
摩擦力により前記車輪に摩擦ブレーキトルクを作用させる機械式ブレーキと、
アンチロックブレーキシステム(以下、ABSと呼ぶ)の作動を決定するABS作動決定手段と、
前記車輪のスリップ率μを検出するスリップ率検出手段と、
ABS作動決定後に、前記車輪のスリップ率μが目標スリップ率μ0に一致するようにフィードバック制御を行い、モータートルク指令値Tmを演算して前記モーターの制駆動トルクを制御するモータートルク制御手段と、
ABS作動時に前記モーターのトルク制御範囲を正負両側に確保するためのモータートルク目標値Tm0を設定するモータートルク目標値設定手段と、
前記モーターのトルクTmsを検出するトルク検出手段と、
ABS作動決定後に、前記モーターのトルク検出値Tmsが前記モータートルク目標値Tm0に一致するようにフィードバック制御を行い、前記モータートルク検出値T ms と前記モータートルク目標値T m0 との偏差にPID演算を施して得た値T ffb から前記モータートルク目標値T m0 を減じて摩擦ブレーキトルク指令値T f を求め、前記機械式ブレーキの摩擦ブレーキトルクを制御する摩擦ブレーキトルク制御手段とを備えることを特徴とする自動車の制動力制御装置。 - 請求項1に記載の自動車の制動力制御装置において、
前記摩擦ブレーキトルク制御手段のフィードバック制御の応答速度を前記モータートルク制御手段のフィードバック制御の応答速度よりも遅くしたことを特徴とする自動車の制動力制御装置。 - 請求項1または請求項2に記載の自動車の制動力制御装置において、
ABS作動決定前のモータートルク指令値TmとABS作動決定後のモータートルク目標値Tm0との差分Tff0を演算し、その差分Tff0をABS作動決定後に所定時間で0まで徐々に低減してモータートルクから摩擦ブレーキトルクへ置き換えるフィードフォワードトルクTffを演算するフィードフォワードトルク演算手段を備え、
前記モータートルク制御手段は、ABS作動決定後に、前記車輪のスリップ率μと目標スリップ率μ 0 との偏差にPID演算を施して得た値T mfd にフィードフォワードトルクT ff を加算してモータートルク指令値T m を演算するとともに、
前記摩擦ブレーキトルク制御手段は、ABS作動決定後に、前記値TffbからフィードフォワードトルクTff を減じて摩擦ブレーキトルク指令値Tfを演算することを特徴とする自動車の制動力制御装置。 - 請求項1〜3のいずれかの項に記載の自動車の制動力制御装置において、
前記モータートルク目標値設定手段は、モータートルク目標値Tm0を0または負の値とすることを特徴とする自動車の制動力制御装置。 - 請求項4に記載の自動車の制動力制御装置において、
前記モータートルク目標値設定手段は、モータートルク目標値Tm0を0とすることを特徴とする自動車の制動力制御装置。 - 請求項4に記載の自動車の制動力制御装置において、
前記モーターの回転速度N m を検出するモーター回転速度検出手段を備え、
前記モータートルク目標値設定手段は、モーター回転速度N m が所定値N m 1以下の範囲ではモータートルク目標値T m0 を0とし、モーター回転速度N m が所定値N m2 (>N m1 )を越える範囲では前記モーターの最小トルクT min に所定値T plus (>0)を加算した値 と0との小さい方をモータートルク目標値T m0 に設定し、モーター回転速度N m がN m1 からN m2 までの範囲では、所定値N m1 のときのモータートルク目標値T m0 (=0)と所定値N m2 のときのモータートルク目標値T m0 とを結んだ値をモータートルク目標値T m0 に設定することを特徴とする自動車の制動力制御装置。 - 請求項4に記載の自動車の制動力制御装置において、
前記モータートルク目標値設定手段は、モータートルク目標値T m0 を、前記モーターの最大トルクT max と最小トルクT min との間の中央値としたことを特徴とする自動車の制動力制御装置。 - 請求項4に記載の自動車の制動力制御装置において、
前記モーターの回転速度N m を検出するモーター回転速度検出手段を備え、
前記モータートルク目標値設定手段は、モーター回転速度N m が所定値N m 1以下の範囲ではモータートルク目標値T m0 を0とし、モーター回転速度N m が所定値N m2 (>N m1 )を越える範囲では、スリップ率μに応じて増加する値T plus1 と、モータートルク検出値T ms と摩擦ブレーキトルク指令値T f との和(T ms +T f )に応じて増加する値T plus2 との和(T plus1 +T plus2 )を前記モーターの最小トルクT min に加算した値(T plus1 +T plus2 +T min )と、0との小さい方をモータートルク目標値T m0 に設定し、モーター回転速度N m がN m1 からN m2 までの範囲では、所定値N m1 のときのモータートルク目標値T m0 (=0)と所定値N m2 のときのモータートルク目標値T m0 とを結んだ値をモータートルク目標値T m0 に設定することを特徴とする自動車の制動力制御装置。 - 請求項6に記載の自動車の制動力制御装置において、
モーター回転速度N m の代わりに前記車輪の滑り0を実現する仮想モーター回転速度N m ’を用いることを特徴とする自動車の制動力制御装置。 - 請求項9に記載の自動車の制動力制御装置において、
前記モータートルク目標値設定手段は、仮想モーター回転速度N m ’が所定値N m ’ 1 以下の範囲ではモータートルク目標値T m0 を0とし、仮想モーター回転速度N m ’が所定値N m ’ 2 (>N m ’ 1 )を越える範囲では、モータートルク検出値T ms と摩擦ブレーキトルク指令値T f との和(T ms +T f )に応じて増加する値T plus2 を前記モーターの最小トルクT min に加算した値と0との小さい方をモータートルク目標値T m0 に設定し、仮想モーター回転速度N m ’がN m ’ 1 からN m ’ 2 までの範囲では、所定値N m ’ 1 のときのモータートルク目標値T m0 (=0)と所定値N m ’ 2 のときのモータートルク目標値T m0 とを結んだ値をモータートルク目標値T m0 に設定することを特徴とする自動車の制動力制御装置。 - 請求項1〜10のいずれかの項に記載の自動車の制動力制御装置において、
前記摩擦ブレーキトルク制御手段は、前記モーターのトルク検出値T ms を前記モータートルク目標値T m0 に一致させるフィードバック制御の出力T ffb が駆動トルクになったときはフィードバック制御を停止し、フィードバック制御の出力T ffb を0にするようにフィードバック制御系の積分要素をリセットすることを特徴とする自動車の制動力制御装置。
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