JP4736160B2 - 曲げ加工性に優れたステンレス鋼板 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、優れた表面性状を有し、しかも、生産性を悪化させることなく、曲げ加工性を向上させたステンレス鋼板に関するものであって、特に、曲げ加工性のうち、圧延方向に対して垂直な方向、いわゆるC方向の曲げ加工性に優れたステンレス鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】
ステンレス鋼板は、通常、優れた耐久性を具備していることから、近年、機械・電気製品の一般部品だけでなく精密・小型部品にわたる範囲にまでも適用が拡大される傾向にあり、それに伴って、180°密着曲げなどの厳しい曲げ加工を施した場合であっても、割れ等の欠陥が全く発生しないことが必要とされるなど、ステンレス鋼板に要求される加工特性は著しく厳しくなってきている。
【0003】
また、ステンレス鋼板は、通常は無塗装のまま使用されるのが一般的であるため、優れた表面性状を有することもまた必要となる。
【0004】
さらに、曲げ加工に関し、圧延方向に対して垂直方向、いわゆるC方向の曲げ(図3に示すように、鋼板を点線で示す位置から実線で示す位置への曲げであり、折り目が圧延方向と平行に現われる曲げを意味する。)における加工性の確保が特に重要である。すなわち、C方向曲げは、圧延方向に対して平行方向、いわゆるL方向の曲げに比べて、曲げ加工性が悪いのが一般的であり、図4に示すような割れ等の欠陥が発生しやすいからである。この主な理由としては、通常の製鋼工程を経て製造されたステンレス鋼板では、非金属介在物が残存しているのが一般的であり、この非金属介在物の一部、特にA系介在物は熱間圧延時にL方向に延ばされやすく、この延ばされた非金属介在物を起点として、C方向の曲げ加工の際に、割れ等の欠陥が発生しやすくなるためと考えられる。
【0005】
曲げ加工性に影響を及ぼすと従来から考えられている鋼中の主な非金属介在物としては、精錬及び連続鋳造工程で使用するスラグが懸濁混入したスラグ系介在物、溶鋼中の酸素を適切に減少させるため一般に行われる脱酸処理の際に生じる脱酸生成物、並びに、鋼中のSが凝固過程でMnと結合してマンガン硫化物(MnS)が挙げられ、良好な曲げ加工性を確保するには、これらの介在物を極力低減することが有効である。
【0006】
また、ステンレス鋼の脱酸処理は、Alを用いて脱酸する方法か、あるいは、Siを用いて脱酸する方法で行うのが一般的である。
【0007】
ステンレス鋼中に残存する脱酸生成物は、Alを用いて脱酸する場合には、高融点で硬質なアルミニウム酸化物(Al2O3)が主体となり、一方、Siを用いて脱酸する場合には、ステンレス鋼中には通常0.1mass%以上のMnを含有させるのが一般的であるため、比較的低融点で軟質な複合酸化物(MnO・SiO2)が主体となる。
【0008】
鋼中のAl2O3は、一般に熱間圧延時にL方向に延ばされ難く、A系介在物には該当しないことから、C方向の曲げ加工性に対しては、Alを用いて脱酸を行ったステンレス鋼板の方が、Siを用いて脱酸を行ったものよりも有利であることも知られている。
【0009】
しかしながら、Alを用いて脱酸を行った場合には、Al2O3は、クラスター状の形状を採りやすいことから、溶鋼との見掛けの比重差が小さく、浮上分離しにくくなるため、鋼中には数100μm以上のクラスター状のAl2O3介在物が残留する傾向がある。 このクラスター状のAl2O3介在物が連続鋳造のモールド内で鋳片表層部に存在していた場合には、表面性状が損なわれ、ヘゲ、スリバーのような表面欠陥の発生の恐れがある。
【0010】
また、C方向の曲げ加工性を向上させるための手段としては、鋼中に残存し熱間圧延時に容易に延伸してA系介在物として振舞うような、スラグ系介在物、脱酸生成物及びMnS(すなわち鋼中のS)を低減することが有効であり、そのような技術は、例えば特開平10−53843号公報に開示されている。
【0011】
上掲公報記載の技術は、A系およびB1系の介在物密度を10個/cm2以下に制限したものであるが、このように介在物を過度に低減することは、精錬処理時間の増大による生産性の低下、原料選定の制限や製造コストの増大のような製造上の問題が生じる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、この発明の目的は、上記の問題を有利に解決するもので、優れた表面性状を有し、しかも、生産性を悪化させることなく、曲げ加工性、特に、曲げ加工性のうち、圧延方向に対して垂直な方向、いわゆるC方向の曲げ加工性に優れたステンレス鋼板を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意研究を行った結果、下記の知見を得てこの発明を完成させるに至った。以下、この発明に至った経緯を説明する。
【0014】
発明者らは、まず脱酸方法としてAlによる脱酸方法を採用した場合には、先に述べたように鋼板の表面欠陥が発生して、ステンレス鋼にとって重要な性能である表面性状を損ないやすく、特に、鋼中のAl含有量が0.005mass%を超えるときにその傾向が顕著になることを見出した。また、特にAlによる脱酸を行わない場合(例えばSiによる脱酸の場合)であっても、スラグ中のAl23がSi等の脱酸元素によって還元され、結果的に鋼中に0.005mass%を超えてAlが含有されることとなったときにも同様な傾向になることを見出した。
【0015】
このため、発明者らは、脱酸方法としてSiを用いた脱酸方法を採用しかつ、鋼中のAl含有量が0.005mass%を超えないようにスラグ組成を調整することとし、Si脱酸における鋼板中の成分と介在物及びC方向の曲げ加工性について調査した。C方向曲げ加工性は、厚さ2mmの鋼板に対し、C方向に20%の引張り加工を加え、その後、C方向に180°密着曲げを実施するストレッチベンド試験(以下、単に「曲げ試験」という。)を行い、試験後、割れのないものを合格、割れの発生したものを不合格として評価した。
【0016】
そして、C方向の曲げ加工性の劣化要因である鋼中に残存する非金属介在物であるスラグ系介在物、脱酸生成物及びMnSに着目し、鋼板中に占めるそれら介在物の体積割合の総和と、曲げ試験結果との関係について調査したところ、スラグ系介在物、脱酸生成物及びMnSの前記体積割合の総和が、あるしきい値を超えると、曲げ試験で割れが発生することを見出した。
【0017】
この発明は、上記の知見に基づき完成されたものであって、すなわち、この発明のステンレス鋼板は、VOD真空脱ガス装置によるスラグ精錬及びSiを用いた脱酸処理を経て製造された、Al:0.005mass%以下、Mn:0.1〜0.8mass%及びSi:0.1〜0.8mass% を含有し、かつ非金属介在物として、スラグ系介在物、脱酸生成物及びMnSを含有する、フェライト系、オーステナイト系、2相系あるいはマルテンサイト系のステンレス鋼板において、該スラグ系介在物の体積割合をVslag、該脱酸生成物の体積割合をVoxide及び該MnSの体積割合をVMnSとするとき、これら非金属介在物の体積割合の総和VTが下記(1)式の関係を満足することを特徴とするC方向曲げ加工性に優れたステンレス鋼板である。また、この発明のステンレス鋼板の製造方法は、VOD真空脱ガス装置によるスラグ精錬により、スラグ中のAl含有量を調整するとともに、Siを用いた脱酸処理、および成分調整を行ってステンレス鋼を溶製する工程と、スラブ連続鋳造機を用いた連続鋳造により、溶製したステンレス鋼からスラブを製造する工程と、該スラブを加熱する工程と、加熱したスラブに圧延を施してフェライト系、オーステナイト系、2相系あるいはマルテンサイト系のステンレス鋼板とする工程とを含み、該ステンレス鋼板は、非金属介在物として、スラグ系介在物、脱酸生成物及びMnSを含有し、前記溶製工程は、前記ステンレス鋼板中の、スラグ系介在物の体積割合をVslag、脱酸生成物の体積割合をVoxide、MnSの体積割合をVMnS、及びこれら非金属介在物の体積割合の総和(Vslag+Voxide+VMnS)をVTとするとき、溶鋼中のAl含有量が0.005mass%を超えないようにスラグ組成を調整しつつ、溶鋼中のMnとSiの含有量を、前記体積割合の総和VTとの関係で下記(1)式を満足するように制御して、Al:0.005mass%以下、Mn:0.1〜0.8mass%及びSi:0.1〜0.8mass%を含有するステンレス鋼を溶製することを特徴とするC方向曲げ加工性に優れたステンレス鋼板の製造方法である。
【0018】

T≦0.011×{[Mn]/[Si]}+0.035 -‐‐‐(1)
但し、[Mn]及び[Si]は、それぞれ溶鋼中のMn及びSiの含有量(mass%)である。
【0019】
尚、この発明が対象とするステンレス鋼板は、16%クロム鋼で代表されるフェライト系ステンレス鋼、18−8ステンレス鋼で代表されるオーステナイト系ステンレス鋼、22%クロム鋼で代表される2相系ステンレス鋼あるいは13%クロム鋼で代表されるマルテンサイト系ステンレス鋼等で、かつ、Al含有量が0.005mass%以下、Mn:0.1〜0.8mass%及びSi:0.1〜0.8mass%を含有するステンレス鋼の厚鋼板及び薄鋼板である。また、鋼板中に含有する非金属介在物とは、具体的には、スラグ系介在物、脱酸生成物、MnSが挙げられる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を上記構成に限定した理由について説明する。
まず、鋼板中のAl含有量を0.005mass%以下に限定した理由は、Al含有量が0.005mass%よりも多い場合(例えば、Alを用いて脱酸を行ったステンレス鋼板の場合、鋼板中のAl含有量は通常は0.005mass%よりも多くなる。)、溶鋼中にAl2O3介在物が顕著に生成されるようになり、連続鋳造時にイマ−ジョンノズル詰まりが生じやすくなって操業が阻害されるとともに、クラスター状のAl2O3が連続鋳造の鋳型内で鋳片表層部に捕捉される確率が高くなって、表面性状が損なわれ、鋼板表面疵が発生しやすくなるからである。尚、この発明では、鋼板中のAl含有量を0.005mass%以下にするため、Siを用いて脱酸する方法を適用することが好ましい。
【0021】
次に、鋼板中のMn含有量を0.1〜0.8mass%に制限したのは、0.1mass%未満だと強度低下が著しくなるからであり、0.8mass%超えだと耐食性の劣化が顕著になるからである。
【0022】
また、鋼板中のSi含有量を0.1〜0.8mass%に制限したのは、0.1mass%未満だと脱酸不良となり、鋼中の清浄度が著しく劣化するからであり、0.8mass%超えだと、鋼板酸洗時の脱スケール性が悪くなり、スケール残り欠陥が発生するおそれがあるからである。
【0023】
そして、この発明の構成上の主な特徴は、鋼板中に主として含有する非金属介在物の体積割合の総和VT、近似的には、スラグ系介在物の体積割合Vslag、脱酸生成物の体積割合Voxide及びMnSの体積割合VMnSの総和Vslag+Voxide+VMnS(≒VT)が下記(1)式を満足することにある。
【0024】

T≦0.011×{[Mn]/[Si]}+0.035 -‐‐‐(1)
【0025】
鋼板中の上記非金属介在物の体積割合の総和VTを、(1)式の右辺に溶鋼中のMnとSiの含有量を代入したときの値以下に限定した理由は、発明者らの実験結果に基づくものであり、以下に説明する。
【0026】
図1は、先に述べた曲げ試験の結果を、スラグ系介在物の体積割合Vslag(vol%)、脱酸生成物の体積割合Voxide(vol%)及びMnSの体積割合VMnS(vol%)の総和VT(vol%)(≒Vslag+Voxide+VMnS)を縦軸とし、溶鋼中の[Mn]/[Si]の比を横軸としてプロットした図である。
【0027】
図1から、一次式:0.011×{[Mn]/[Si]}+0.035)を境界線として、前記体積割合の総和VTが前記境界線以下であるステンレス鋼板は、いずれもC方向曲げ加工性が合格レベルにあることが判る。
【0028】
従って、この発明では、前記非金属介在物の体積割合の総和VTが下記(1)式を満足することを必須の発明特定事項とした。
【0029】
尚、図1において、溶鋼中の[Mn]/[Si]の比が大きいほど、前記総和VTの適正範囲の幅が広く(適正範囲の上限値が大きく)なっているが、この理由は、脱酸生成物の組成変化に起因するものと考えられる。すなわち、先に述べたように、Siを用いて脱酸を行った場合の脱酸生成物はMnO・SiO2主体であるが、[Mn]/[Si]の比が大きい場合には、脱酸生成物中に占めるCr2O3の体積割合が増大し、このCr2O3は、融点が高く、硬質で熱間で変形しにくいという性質を有するため、脱酸生成物の熱間圧延時の変形能が低下する結果、C方向の曲げ加工性が改善されるものと考えられる。
【0030】
図2は、脱酸生成物中に占めるCr2O3の体積割合(vol%)を、溶鋼中の[Mn]/[Si]の比に対してプロットした図であり、[Mn]/[Si]の比が大きくなるほど、脱酸生成物中に占めるCr2O3の体積割合が増大しているのがわかる。
【0031】
さて、この発明を実施するに当たり、鋼板中に占める前記非金属介在物、すなわち、スラグ系介在物、脱酸生成物及びMnSの各体積割合(vol%)は、鋼板サンプルを酸その他の溶液を用いて溶解あるいは電解し、介在物のみを抽出する、いわゆるスライム抽出法によって介在物を取り出して、その体積を計測する方法によるほか、簡便法として、溶鋼の化学分析データから容易に算出することができる。以下に、その算出方法の一例を説明する。
【0032】
(I)スラグ系介在物の体積割合:Vslag(vol%)
溶鋼中に積極的に金属Ca又はCa合金の添加を行っていない場合には、溶鋼中に含有する全Caが、鋼板中に残存するスラグ系介在物中のCaOの形成に使用されたものとみなすことができる。よって、この場合には、スラグ系介在物の体積割合は、溶鋼中のトータルCa含有量:[Ca](mass%)から推定することができる。
【0033】
すなわち、精錬工程で使用されるスラグの平均組成を、例えば、[CaO]=47mass%、[SiO2]=36mass%、[MgO]=12mass%、[Al2O3]=5mass%である場合を仮定すれば、1カルシウム(Ca)原子質量に対するスラグの質量の比は2.98であるから、鋼板中のスラグ系介在物の含有量をCslag(mass%)は、Cslag=2.98×[Ca]となる。そして、スラグの比重:ρslag(上記組成の場合、ρslag =3.035 g/cm3)と、メタルの比重:ρmetal(例えばSUS430鋼の場合、ρmetal =7.7 g/cm3)から、Vslagは下記(2)式によって算出することができる。
【0034】

slag=100×(Cslag×ρmetal)/(100×ρslag+Cslag×ρmetal−Cslag×ρslag)----(2)
【0035】
(II)脱酸生成物の体積割合:Voxide(vol%)
脱酸生成物の体積割合は、溶鋼中のトータル酸素含有量:[O](mass%)と、上記(I)で算出したスラグ系介在物の含有量Cslagとから算出することができる。すなわち、固体ステンレス鋼中のフリー酸素は皆無であると考えられるので、溶鋼中のトータル酸素含有量:[O](mass%)は、スラグ及び脱酸生成物中の酸素分とみなすことができる。
【0036】
そして、スラグに占める酸素分の割合は、上記(I)記載のスラグ組成の場合、0.404である。脱酸生成物中の酸素分は、トータル酸素含有量[O]から、スラグ中の酸素分0.404×Cslagを差し引いたものであり、すなわち、[O]−0.404×Cslagで計算できる。
【0037】
Siを用いて脱酸を行った場合、脱酸生成物の主体はMnO・SiO2であることから、
トータル酸素含有量[O]から、スラグ中の酸素分0.404×Cslagを差し引いた酸素分は、全てMnO・SiO2の形成に使用されたものとみなすことができ、1酸素(O)原子質量に対するMnO・SiO2脱酸生成物の質量の比は2.73であるから、鋼板中のMnO・SiO2の含有量Coxide(mass%)は、Coxide=2.73×{[O]−0.404×Cslag}となる。
【0038】
そして、MnO・SiO2の比重ρoxide(ρoxide =3.035 g/cm3)と、メタルの比重:ρmetal(例えばSUS430鋼の場合、ρmetal =7.7 g/cm3)から、Voxideは下記(3)式によって算出することができる。
【0039】

oxide=100×(Coxide×ρmetal)/(100×ρoxide+Coxide×ρmetal−Coxide×ρoxide)----(3)
【0040】
(III)MnSの体積割合:VMnS(vol%)
MnSの体積割合は、溶鋼中の硫黄含有量:[S](mass%)から推定できる。
一般に、ステンレス鋼にはMnを0.1mass%以上含有させており、溶鋼中のSのほとんどが、鋼板中ではMnと結合してMnSとして残存するものと考えられ、1硫黄(S)原子質量に対するMnS質量の比は2.72であるので、鋼板中のMnSの含有量CMnS(mass%)は、CMnS=2.72×[S]となる。
そして、MnSの比重ρMnS(ρMnS =5.23 g/cm3)と、メタルの比重:ρmetal(例えばSUS430鋼の場合、ρmetal =7.7 g/cm3)から、VMnSは下記(4)式によって算出することができる。
【0041】

MnS=100×(CMnS×ρmetal)/(100×ρMnS+CMnS×ρmetal−CMnS
×ρMnS)----(4)
【0042】
以上のように、上記(2)〜(4)式によってそれぞれ算出されたスラグ系介在物の体積割合Vslag、脱酸生成物の体積割合Voxide、及びMnSの体積割合VMnSから、それらの体積割合の総和VTは容易に求めることができる。
【0043】
尚、上記(2)〜(4)式は、いずれも、着目する非金属介在物以外の介在物の量は極めて少ないと考え、それらの量を無視した場合の近似式である。例えば、上記(2)式は、スラグ系介在物以外の非金属介在物(脱酸生成物やMnS等の非金属介在物)については無視したときの近似式である。
【0044】
次に、この発明に従うステンレス鋼板の代表的な製造方法を説明する。
転炉による精錬を行い、出鋼した後、VOD真空脱ガス装置にて、スラグ中のAl23含有量を調整すると共に、Siを用いた脱酸処理、成分調整を行って、(1)式を満足するように溶鋼中のMnとSiの含有量を制御し、この発明に従う化学組成(Al:0.005mass%以下、Mn:0.1 〜0.8 mass%及びSi:0.1〜0.8mass%)のステンレス鋼を溶製する。次いで、スラブ連続鋳造機を用いて連続鋳造を行ってスラブを製造し、さらに、スラブを加熱してから熱間圧延を施した後、焼鈍及び酸洗を行ってから冷間圧延を施し、その後、仕上げ焼鈍及び仕上げ酸洗を行うことによって、ステンレス鋼板を製造することができる。また、板厚の厚いステンレス鋼板については、上記の冷間圧延及びその後の工程なしに製品板としてもよい。
【0045】
上述したところは、この発明の実施形態の一例を示したにすぎず、請求の範囲において種々の変更を加えることができる。
【0046】
【実施例】
180トン上底吹き転炉により出鋼後、VOD真空脱ガス装置にて、スラグ中のAl23含有量を調整すると共に、脱酸処理、成分調整を行い、表1に示すような化学組成のSUS430ステンレス鋼を溶製した。次いで、1ストランドスラブ連続鋳造機を用いて連続鋳造を行って、板厚が200mm、板幅が1040〜1280mmのスラブを製造した。さらに、このスラブを手入れすることなく、温度1150〜1180℃で加熱してから熱間圧延を施して4mm厚の熱延板とし、焼鈍及び酸洗を行ってから冷間圧延を施して2mm厚とし、その後、仕上げ焼鈍及び仕上げ酸洗を行うことによって最終製品であるステンレス鋼板を製造した。かくして得られた最終製品鋼板の表面欠陥の有無を検査するとともに、所定寸法のサンプルを採取して、C方向の曲げ試験を実施し、C方向の曲げ加工性を評価した。表1にそれらの評価結果を示す。
【0047】
【表1】
Figure 0004736160
【0048】
表1に示す評価結果から、発明例であるNo.1〜8はいずれも、表面性状及びC方向曲げ加工性に優れている。
一方、比較例であるNo.9〜12のうち、No.9〜11は、表面疵の発生はなく表面性状が良好であるものの、C方向曲げ加工性が合格レベルにはなく、また、No.12は、C方向曲げ加工性については合格レベルにあるものの、表面疵の発生が認められ表面性状が不良であった。
【0049】
【発明の効果】
この発明によれば、例えば、精錬途中で判明した迅速分析結果から、製品鋼板のC方向曲げ加工性の優劣を判断し、その後処理の必要性(脱S、Mn及びSiの成分調整、脱酸強化、脱スラグ処理強化等)を判断したり、製品の充当に利用することができる。この発明の実施に当たっては、格別な設備や手段を講じることもないため、生産性や経済性を損なうことなく、確実にC方向曲げ加工性の優れたステンレス鋼板が提供することができ、産業上極めて有効な効果がもたらされるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 C方向曲げ試験の結果を、スラグ系介在物の総和VT(vol%)(≒Vslag+Voxide+VMnS)を縦軸とし、溶鋼中の[Mn]/[Si]の比を横軸としてプロットした図である。
【図2】 脱酸生成物中に占めるCr2O3の体積割合(vol%)を、溶鋼中の[Mn]/[Si]の比に対してプロットした図である。
【図3】 C方向の曲げ加工を施したときのこの発明に従うステンレス鋼板の状態を示す斜視図である。
【図4】 図3のC方向曲げ加工を施した場合に割れが発生したときの従来のステンレス鋼板の状態を示す斜視図である。

Claims (2)

  1. VOD真空脱ガス装置によるスラグ精錬及びSiを用いた脱酸処理を経て製造された、Al:0.005mass%以下、Mn:0.1〜0.8mass%及びSi:0.1〜0.8mass% を含有し、かつ非金属介在物として、スラグ系介在物、脱酸生成物及びMnSを含有する、フェライト系、オーステナイト系、2相系あるいはマルテンサイト系のステンレス鋼板において、該スラグ系介在物の体積割合をVslag、該脱酸生成物の体積割合をVoxide及び該MnSの体積割合をVMnSとするとき、これら非金属介在物の体積割合の総和VTが下記(1)式の関係を満足することを特徴とするC方向曲げ加工性に優れたステンレス鋼板。

    T≦0.011×{[Mn]/[Si]}+0.035 -‐‐‐(1)
    但し、[Mn]及び[Si]は、それぞれ溶鋼中のMn及びSiの含有量(mass%)である。
  2. VOD真空脱ガス装置によるスラグ精錬により、スラグ中のAl含有量を調整するとともに、Siを用いた脱酸処理、および成分調整を行ってステンレス鋼を溶製する工程と、
    スラブ連続鋳造機を用いた連続鋳造により、溶製したステンレス鋼からスラブを製造する工程と、
    該スラブを加熱する工程と、
    加熱したスラブに圧延を施してフェライト系、オーステナイト系、2相系あるいはマルテンサイト系のステンレス鋼板とする工程と、
    を含み、
    該ステンレス鋼板は、非金属介在物として、スラグ系介在物、脱酸生成物及びMnSを含有し、
    前記溶製工程は、前記ステンレス鋼板中の、スラグ系介在物の体積割合をVslag、脱酸生成物の体積割合をVoxide、MnSの体積割合をVMnS、及びこれら非金属介在物の体積割合の総和(Vslag+Voxide+VMnS)をVTとするとき、溶鋼中のAl含有量が0.005mass%を超えないようにスラグ組成を調整しつつ、溶鋼中のMnとSiの含有量を、前記体積割合の総和VTとの関係で下記(1)式を満足するように制御して、Al:0.005mass%以下、Mn:0.1〜0.8mass%及びSi:0.1〜0.8mass%を含有するステンレス鋼を溶製することを特徴とするC方向曲げ加工性に優れたステンレス鋼板の製造方法。

    T≦0.011×{[Mn]/[Si]}+0.035 -‐‐‐(1)
    但し、[Mn]及び[Si]は、それぞれ溶鋼中のMn及びSiの含有量(mass%)である。
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JP2000001758A (ja) * 1998-06-18 2000-01-07 Kawasaki Steel Corp 表面性状が良好で、耐食性および成形加工性に優れたフェライト系ステンレス鋼

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