JP4525814B2 - 溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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(A)図1は,NbOとSi量の関係を示すグラフである。NbOは、酸化物系介在物中のNb酸化物の含有量(質量%)を意味し、Si量は鋼中のSi含有量(質量%)を意味する。同図に示されるように、Si量の増加に伴いNbOが低下することが分かる。なお、図1はsol.Ti含有量(酸可溶性のTi量を意味する。)が0.0030%未満であるものについてのグラフである。
N*=max[N−(14/48)×sol.Ti,0] (3)
N*=max[N−(14/48)×sol.Ti−(14/11)×B,0] (4)
ここで、各式中の元素記号は、鋼中での各元素の含有量を質量%にて表したものであり、max[ ]は[ ]内の引数の最大値を返す関数である。
平均r値=(r0°値+2×r45°値+r90°値)/4 (5)
(1)質量%で、C:0.0005%以上0.010%未満、Si:0.020%超0.40%以下、Mn:2.50%以下、P:0.10%以下、S:0.010%未満、sol.Al:0.0050%未満、N:0.005%以下、sol.Ti:0.020%以下、Nb:0.010%以上0.20%以下およびO:0.015%以下を含有し、さらにsol.TiおよびNbの含有量が下記式(1)〜(3)を満足し、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、酸化物系介在物中のTi酸化物の含有量がTiO2換算で50.0質量%以上でありNb酸化物の含有量がNbO換算で1.0質量%未満である鋼板の表面に溶融亜鉛めっき層を備えることを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板。
1.0<(Ti*/48+Nb/93)/(C/12+N*/14) (1)
Ti*=max[sol.Ti−(48/14)×N,0] (2)
N*=max[N−(14/48)×sol.Ti,0] (3)
ここで、各式中の元素記号は、鋼中での各元素の含有量を質量%にて表したものであり、max[ ]は[ ]内の引数の最大値を返す関数である。
ここで、式中の元素記号は、鋼中での各元素の含有量を質量%にて表したものであり、max[ ]は[ ]内の引数の最大値を返す関数である。
C:0.0005%以上0.010%未満
C含有量が0.010%以上になると、鋼板の延性および深絞り性が著しく損なわれる。一方、過度に極低炭素化することは、製鋼コストの上昇を伴うだけでなく、NbCの析出が不十分となり、固溶Cが残存し、深絞り性の劣化を招く。したがって、含有量の範囲を0.0005%以上0.010%未満とする。望ましい範囲は、0.0010%以上0.0040%未満であり、さらに望ましい範囲は、0.0010%以上0.0030%以下である。
Siは本発明における重要な構成成分であり、酸化物系介在物中のNb酸化物の含有率を下げ、鋼板の深絞り性を向上させるので、0.020%を超えて含有させる。一方、鋼板のめっき性を劣化させるので、含有量の上限を0.40%とする。好ましい範囲は、0.030%超0.20%未満であり、さらに好ましい範囲は、0.035%超0.10%未満である。
Mnは、不純物であるSと結合してMnSを形成し,Sの弊害を抑制するほか,鋼板を強化する作用を有する。一方、過度に含有させると延性および深絞り性が劣化するので、含有量の上限を2.50%とする。好ましい範囲は、0.05%以上1.00%未満であり、さらに好ましい範囲は、0.15%超0.50%未満である。また、めっき性の観点からは含有量が少ないほどよく、上限を0.31%未満とすることが好ましい。
Pは、深絞り性を損なうことなく鋼板を強化する作用を有する。しかし、過度に含有させると耐二次加工脆性が極端に劣化するので、 0.10%以下とする。好ましい範囲は0.005%以上0.050%未満であり、さらに好ましい範囲は、0.010%以上0.015%未満である。
Sは鋼中に不可避的に含有される不純物であり、粒界に偏析して鋼を脆化させるため、その含有量は少ないほど好ましく、0.010%未満とする。好ましい上限は0.008%未満であり、さらに好ましい上限は0.006%未満である。ただし、含有量を過度に低下させることは、製造コストの上昇を招くため、0.001%を超えて含有させることが望ましい。
鋼中Alは、分析時に使用する酸に溶解しない酸化物等の形態と、酸に溶解する窒化物等や固溶の形態があり、酸可溶性のAl含有量をsol.Alと表記する。sol.Al量は溶鋼段階での溶解Al量と関連付けられるため、鋼の脱酸に強く影響する。本発明ではTi酸化物を50.0%以上含む酸化物系介在物の分散を必要とし、Alはこれを阻害するので、sol.Alの含有量を0.0050%未満とする。好ましい上限は0.0030%未満である。一方、Al自体は、溶鋼の製造工程で予備脱酸や温度調整に使用できるので、sol.Alを0.0002%以上含有させることが好ましい。さらに好ましい範囲は0.0005%以上0.0020%未満である。
Nは、鋼中に不可避的に含有される元素であり、含有量の増加は延性、深絞り性および耐常温時効性を劣化させるため、0.005%以下とする。好ましい範囲は0.003%以下である。ただし、過度に極低窒素化することは、製鋼コストの上昇を伴うだけでなく、窒化物の析出が不十分となり、固溶Nが残存し、深絞り性の劣化を招くので、含有量を0.001%以上とすることが望ましい。
鋼中Tiは、分析時に使用する酸に溶解しない酸化物等の形態と、酸に溶解する炭窒化物等や固溶の形態があり、酸可溶性のTi含有量をsol.Tiと表記する。sol.Tiは本発明における重要な構成成分であり、溶融亜鉛めっき鋼板表面に筋模様が発生することを防止するために、含有量の上限を0.020%以下とする。好ましい上限は0.015%以下、さらに好ましい上限は0.004%未満である。また、鋼中のC、NをTiC、TiN等として固定し、深絞り性を向上させる作用を有するので、上記式(1)、(2)および(3)または上記式(1)、(2)および(4)を満たす範囲で含有させる。
Nbは、本発明における重要な構成成分であり、鋼中のCをNbCとして固定するとともに熱延板の組織を微細化し、深絞り性に好ましい再結晶集合組織を発達させる作用を有しており、筋模様の発生を伴うことなく深絞り性を向上させる。Nb含有量が少ないと、上記作用による所望の効果が十分に得られず、深絞り性が損なわれるので、0.010%以上であり、かつ、上記式(1)、(2)および(3)または上記式(1)、(2)および(4)を満たす範囲で含有させる。好ましい含有量の下限は、0.026%以上である。一方、Nb含有量が過剰となると、再結晶温度が上昇しすぎて深絞り性が劣化するので、0.20%以下とする。好ましいのは、1.0<(Ti*/48+Nb/93)/(C/12+N*/14)<10.0を満足させることであり、さらに好ましいのは、2.0<(Ti*/48+Nb/93)/(C/12+N*/14)<5.0を満足させることである。
O含有量が0.015%を超えると、酸化物系介在物の生成量が多くなりすぎ、表面疵が発生しやすくなるので、0.015%以下とする。好ましい範囲は、0.010%未満である。一方、Ti酸化物の含有率が50.0%以上でありNb酸化物の含有量が1.0%未満である酸化物系介在物を適正量生成させ、深絞り性を向上させるため、0.0020%以上含有させることが好ましい。0.0030%以上含有させるとさらに好ましい。
Bは、結晶粒界に偏析して粒界を強化し、耐二次加工脆性を向上させる効果を有するので、0.0002%以上含有させても良い。一方、含有量が0.0020%を上回ると、再結晶温度が上昇して、深絞り性が劣化する。したがって、0.0002%以上0.0020%以下とする。好ましい範囲は、0.0003%超0.0010%未満である。
これらの元素は、鋼板を強化する作用を有するので、必要に応じて1種または2種以上含有させても良い。ただし、含有量の合計が2.0%を超えると延性が著しく劣化する。したがって、合計の含有量を2.0%以下とする。なお、鋼板を強化する作用を確実に発揮させるには合計の含有量を0.05%以上とすることが好ましい。
本実施の形態の溶融亜鉛めっき鋼板は、以上の鋼組成を有する。
(1)酸化物系介在物
本発明に係る溶融亜鉛めっき鋼板は、酸化物系介在物中のNb酸化物の含有量が1.0%未満であり、Ti酸化物の含有量が50.0%以上であることとする。
鋼板の任意の位置から試験片を採取し、鋼板の圧延方向に平行な縦断面を研磨した後、SEMを用いて長径1μm以上の酸化物系介在物を観察し、EDSを用いて、Feを除く上記元素について定量分析を行う。得られた各元素の原子数比に基づいて、検出された各元素について予め規定された化学量論組成の酸化物換算の化学組成(単位:質量%)を求める。ここで、介在物を構成する主要元素についての化学量論組成の酸化物は次のとおりである。Ti:TiO2、Nb:NbO、Al:Al2O3、Si:SiO2、Mn:MnO。また、不純物元素についての化学量論組成の酸化物は次のとおりである。Mg:MgO、Ca:CaO。この化学組成の測定を複数の酸化物系介在物に対して行い、その平均値をその鋼板における酸化物系介在物の含有量とする。測定する酸化物系介在物の数は10個以上とし、測定数は多いほど好ましい。
本発明に係る鋼板の酸化物系介在物に含まれるNb酸化物の含有量は1.0%未満とする。これは、Tiを用いた脱酸工程を経て製造された冷延鋼板の深絞り性を安定して向上させるためである。Nb酸化物には、NbOやNbO2等の存在形態が考えられるが、Nb酸化物の含有量は、上記のようにSEM/EDSを用いて元素分析し、NbOに換算して求める。深絞り性向上のためにはNb酸化物の含有量は低いほど良いが、0.1%未満にまで低下させるためには、Tiを多量に添加する必要があり、溶融亜鉛めっき鋼板表面に筋模様が発生しやすくなるため、含有量の下限を0.1%以上とすることが好ましい。
本発明に係る鋼板の酸化物系介在物に含まれるTi酸化物の含有量は50.0%以上とする。これは、含有量が50.0%を下回ると、酸化物系介在物が、圧延中に伸展した形状を呈し、深絞り性が損なわれるばかりか、個々の酸化物系介在物がクラスター化する傾向を示し、表面疵が発生しやすくなるからである。好ましいのは、Ti酸化物の含有量を60.0%以上とすることである。一方、Ti酸化物の含有量が高くなりすぎると、溶鋼段階で液相を含まない状態となり、連続鋳造工程において浸漬ノズルの閉塞が起こりやすくなるため、Ti酸化物の含有量を95.0%未満とすることが好ましく、90.0%未満とするとさらに好ましい。なお、Ti酸化物の含有量は、Nb酸化物の含有量と同様にSEM/EDSを用いて元素分析し、TiO2に換算して求める。
ところで、大規模製鉄所の大量生産工程で、本発明に係る鋼板を製造する場合は、酸化物系介在物に、Nb酸化物、Ti酸化物以外の酸化物が含有されうる。具体的には、溶鋼にTiを添加する前に、予備的にAlを添加し鋼中酸素を部分的に除去することは、生産性および製造安定性の向上のために好ましいが、結果としてAl酸化物が生成するようになる。酸化物系介在物におけるAl酸化物の含有量の範囲は特に規定しないが、Al添加による生産性および製造安定性の向上という利点を享受するためには3.0%以上とすることが好ましい。一方、多量に含有されると、Ti酸化物の含有量が低下して深絞り性が損なわれたり、浸漬ノズルの閉塞が起こりやすくなったりするので、35.0%未満であることが好ましい。さらに好ましいAl酸化物の含有量の範囲は、5.0%以上30.0%未満である。
本実施の形態の溶融亜鉛めっき鋼板は、以上の酸化物系介在物組成を有する。
本発明に係る溶融亜鉛めっき鋼板は、上記の化学組成を有し、酸化物系介在物について上記の関係が満足できるのであれば、いかなる製造方法により製造されてもよい。ただし、以下の製造方法を採用することによって、本発明に係る溶融亜鉛めっき鋼板をより効率的かつ安定的に製造することが実現される。
本発明に係る製造方法においては、製鋼工程では、転炉などの製鋼炉で粗脱炭した後、RH装置等の真空脱ガス装置で真空脱炭処理を行う。続いて、Ti以外の元素の成分調整を行い、その後、TiまたはTi合金を添加して脱酸処理し、連続鋳造する。TiまたはTi合金を添加して脱酸処理するのは、鋼板中に、Ti酸化物の含有量が50.0%以上でありNb酸化物の含有量が1.0%未満である酸化物系介在物を分散させ、鋼板の深絞り性を向上させるのに必要なためである。
連続鋳造工程では、介在物に起因する表面欠陥の発生を抑制するために、鋳型内にて電磁攪拌等の外部付加的な流動を溶鋼に生じさせることが好ましい。
連続鋳造によって得られた鋼塊を再加熱するか、または連続鋳造後の高温の鋼塊をそのまま、もしくは補助加熱を行ってから、熱間圧延を行う。鋼塊は、表面性状を良好に保つために、加熱前に冷間または温間で表面手入れすることが好ましい。加熱温度が低いと、圧延荷重が増大して圧延が困難となるため、加熱温度を1150℃超にすることが好ましい。
冷間圧延は、酸洗等により脱スケールした後に、常法に従って行われる。冷間圧延後に行われる再結晶焼鈍によって深絞り性に好ましい再結晶集合組織を発達させるために、圧下率を70%以上とすることが好ましい。圧下率を過度に高くすると、圧延設備への負荷が高まり、生産性の低下を招く。したがって、圧下率は90%未満とし、最終板厚を0.40mm以上とすることが好ましい。さらに好ましい圧下率は85%未満である。
(実施例1)
実験用真空溶解炉を用いて、表1に示される化学組成を有する鋼を溶解し、鋳造した。これらの鋼塊を熱間鍛造により厚さ20mmの鋼片とし、電気加熱炉を用いて1250℃に加熱し、30分間保持した。鋼片を炉から抽出した後、実験用熱間圧延機を用いて、910℃以上の温度範囲で熱間圧延し、厚さ4mmの熱延鋼板を得た。熱間圧延後、直ちに水スプレー冷却により650℃まで冷却してこれを巻取り温度とし、同温度に保持された電気加熱炉中に装入して30分間保持した後、20℃/hの冷却速度で炉冷却して巻取り後の徐冷処理とした。得られた鋼板を酸洗して冷間圧延母材とし、圧下率82.5%で冷間圧延し、厚さ0.7mmの冷延鋼板を得た。連続溶融亜鉛めっきシミュレーターを用いて、得られた冷延鋼板を、20℃/sの加熱速度で850℃まで加熱し50秒間保持した後、460℃まで冷却し、溶融亜鉛浴に3秒間浸漬して溶融亜鉛めっきを行った。めっき後、500℃で20秒間保持する合金化処理を施し、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を得た。
溶鋼290tonを転炉で脱炭精錬し、その未脱酸溶鋼を収容した取鍋をRH装置へ移送し、RH装置で真空脱炭を行った。真空脱炭が終了した後、未脱酸溶鋼の予備脱酸と溶鋼の昇温操作を兼ねてAlを添加した。Al添加後に真空槽内の溶鋼に酸素を38Nm3/minで供給して適宜酸化反応による溶鋼への熱付与を実施した。その後溶鋼に酸素濃度が含有される状態で既に含有されている濃度を勘案してTi以外の各種合金を添加調整し、最後にTiを添加調整し、表3に示される化学組成になるように調整した。Alキルド鋼(鋼P、Q)では、この工程でAlを0.04%以上含有する状態として、その後Tiを添加し化学組成を調整した。
Claims (5)
- 質量%で、C:0.0005%以上0.010%未満、Si:0.020%超0.40%以下、Mn:2.50%以下、P:0.10%以下、S:0.010%未満、sol.Al:0.0050%未満、N:0.005%以下、sol.Ti:0.020%以下、Nb:0.010%以上0.20%以下およびO:0.015%以下を含有し、さらにsol.TiおよびNbの含有量が下記式(1)〜(3)を満足し、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、酸化物系介在物中のTi酸化物の含有量がTiO2換算で50.0質量%以上でありNb酸化物の含有量がNbO換算で1.0質量%未満である鋼板の表面に溶融亜鉛めっき層を備えることを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板。
1.0<(Ti*/48+Nb/93)/(C/12+N*/14) (1)
Ti*=max[sol.Ti−(48/14)×N,0] (2)
N*=max[N−(14/48)×sol.Ti,0] (3)
ここで、各式中の元素記号は、鋼中での各元素の含有量を質量%にて表したものであり、max[ ]は[ ]内の引数の最大値を返す関数である。 - 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、B:0.0002%以上0.0020%以下を含有し、かつ、前記式(3)に代えて下記式(4)を満足するものであることを特徴とする請求項1に記載の溶融亜鉛めっき鋼板。
N*=max[N−(14/48)×sol.Ti−(14/11)×B,0] (4)
ここで、式中の元素記号は、鋼中での各元素の含有量を質量%にて表したものであり、max[ ]は[ ]内の引数の最大値を返す関数である。 - 前記化学組成が、Feの一部に代えて、Cr,Mo,WおよびNiからなる群から選択される1種または2種以上を、合計で2.0質量%以下含有するものであることを特徴とする請求項1または2に記載の溶融亜鉛めっき鋼板。
- 真空脱ガス装置を用いて脱炭精錬した溶鋼にTiを添加し、連続鋳造して請求項1ないし3のいずれかに記載の化学組成および酸化物系介在物組成を有する鋼塊とし、該鋼塊を熱間圧延し、冷間圧延し、再結晶焼鈍し、溶融亜鉛めっき処理を行うことを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
- 真空脱ガス装置を用いて脱炭精錬した溶鋼にAlを添加して溶存酸素濃度を0.003質量%以上に制御した後、さらにTiを添加し、連続鋳造して請求項1ないし3のいずれかに記載の化学組成および酸化物系介在物組成を有する鋼塊とし、該鋼塊を熱間圧延し、冷間圧延し、再結晶焼鈍し、溶融亜鉛めっき処理を行うことを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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