本発明は、主としてインピーダンスが磁場の変化に対して、ステップ状に変化する特性を有する磁界検出素子を用いた磁界検出方法及び装置であって、詳しくは磁界検出素子が磁界検出方向に対して傾斜したストライプ状磁区構造を有する薄膜磁性体であると共に、外部磁界の印加によりストライプ状磁区構造が消滅又は出現することに伴う磁気特性のステップ状変化を利用してインピーダンスがステップ状に変化することに基づいて磁界検出を行う磁界検出方法及び装置に関する。
従来、一般的な磁界検出素子として知られる磁気インピーダンス素子の場合、それに用いられる薄膜磁性体や全体の素子形状(ワイヤ等)に拘らず、磁気インピーダンスが外部磁界の強度に応じて連続的に変化する特性を有している。以下、このように外部磁界の強度に応じて連続的に変化する磁気インピーダンス特性を連続的磁気インピーダンス特性と呼ぶことにする。
又、このような磁気インピーダンス素子を用いて磁界検出装置を構成する場合、磁気インピーダンス素子に対する駆動方法として、素子にフィードバックコイルを複合化した回路構成を持たせた上で回路動作点としての素子インピーダンスが一定となるようにフィードバックを加え、このフィードバック信号の強度を外部磁界の強度として出力する第1の方法(特許文献1参照)と、素子に交流バイアスコイルを複合化した回路構成を持たせた上で交流磁場を印加し、交流バイアスで変調された素子インピーダンスの出力波形の振幅変化を用いて外部磁界の強度として出力する第2の方法(特許文献2参照)とが知られている。
特開平11−326474号公報(要約)
特開平9−33257号公報(要約)
上述した連続的磁気インピーダンス特性を持つ磁気インピーダンス素子(磁界検出素子)を用いた磁界検出方法及びそれを適用した磁界検出装置の場合、素子駆動を行うための第1の方法によれば、第2の方法によるものと比較して常時バイアス電流を流す必要があるために消費電力が大きくなってしまうという欠点があり、しかも何れの方法においても、インピーダンスが温度変化やヒステリシス特性の影響を受け易く、温度補償が不可欠となってしまうばかりでなく、出力の直線性が劣化してしまうことにより高感度にして高精度に外部磁界を検出し難いという基本性能上の問題がある他、連続的インピーダンス特性の特性曲線のばらつきの影響を受け易いことにより素子個別に動作点の設定を行う必要が生じることや、連続的磁気インピーダンス特性の特性曲線の曲率のばらつきにより出力の直線性が劣化することにより製造上の歩留まりが悪くなってしまうという問題があり、更に、薄膜磁性体を持つ磁気インピーダンス素子の場合には表皮深さが素子膜厚よりも小さいことが大きなインピーダンス変化を得るために不可欠であることにより、必要な感度を得るために駆動周波数が大きくなって回路構成上におけるコスト高を招いてしまうという問題がある。
本発明は、このような問題点を解決すべくなされたもので、その技術的課題は、磁気インピーダンス素子における磁気インピーダンス特性の温度変化やヒステリシス特性の影響を受け難くて高感度にして高精度に外部磁界を検出できると共に、温度補償が不要で出力の直線性が劣化し難い磁界検出方法、及びそれを適用した消費電力が小さくて歩留まり良く廉価に製造できる磁界検出装置を提供することにある。
本発明によれば、磁界の変化に対してインピーダンスがステップ状に変化する特性を有する磁界検出素子に電流を印加しながら該磁界検出素子に対して測定磁界の磁界検出方向に、該磁界検出素子にステップ変化を生じさせ得る振幅を持った、磁界が連続的に変化する波形の交番バイアス磁界を印加し、該磁界検出素子にあっての電圧の時間変化を時間微分することにより、該磁界検出素子のインピーダンス変化をパルス信号に変換し、前記交番バイアス磁界の強度に比例した電気信号波形を発生させ、前記パルス信号が発生するタイミングにおける前記電気信号波形の電圧値を保持し、前記電圧値として、前記交番バイアス磁界が増加して前記磁界検出素子のインピーダンスのステップ変化が増加する際の前記パルス信号の発生時における電圧値Vaと、前記交番バイアス磁界が増加して前記磁界検出素子のインピーダンスのステップ変化が減少する際の前記パルス信号の発生時における電圧値Va′と、前記交番バイアス磁界が減少して前記磁界検出素子のインピーダンスのステップ変化が増加する際の前記パルス信号の発生時における電圧値Vbと、前記交番バイアス磁界が減少して前記磁界検出素子のインピーダンスのステップ変化が減少する際の前記パルス信号の発生時における電圧値Vb′とを用い、該Va,Va′,Vb,Vb′をそれぞれ該交番バイアス磁界の強度Ha,Ha′,Hb,Hb′に変換した後、(Ha+Hb)/2,(Ha′+Hb′)/2,(Ha+Ha′+Hb+Hb′)/4の何れか一つを演算することにより外部磁界を計測することを特徴とする磁界検出方法が得られる。この磁界検出方法において、磁界検出素子は、磁界検出方向に対して傾斜したストライプ状磁区構造を有する薄膜磁性体構造であると共に、外部磁界の印加により該ストライプ状磁区構造が消滅又は出現することに伴う磁気特性のステップ状変化を利用してインピーダンスがステップ状に変化する特性を有することは好ましい。
一方、本発明によれば、磁界の変化に対してインピーダンスがステップ状に変化する特性を有する磁界検出素子と、前記磁界検出素子に電流を供給する電流供給手段と、前記磁界検出素子に測定磁界の磁界検出方向に、前記磁界検出素子にステップ変化を生じさせ得る振幅を持った、磁界が連続的に変化する波形の交番バイアス磁界を印加するバイアス磁界印加手段と、前記磁界検出素子にあっての電圧の時間変化を時間微分して該磁界検出素子のインピーダンス変化をパルス信号に変換する微分処理手段と、前記交番バイアス磁界の強度に比例した電気信号波形を発生する信号発生手段と、前記パルス信号が発生するタイミングにおける前記電気信号波形の電圧値を保持する電圧保持手段と、前記電圧値として、前記交番バイアス磁界が増加して前記磁界検出素子のインピーダンスのステップ変化が増加する際の前記パルス信号の発生時における電圧値Vaと、前記交番バイアス磁界が増加して前記磁界検出素子のインピーダンスのステップ変化が減少する際の前記パルス信号の発生時における電圧値Va′と、前記交番バイアス磁界が減少して前記磁界検出素子のインピーダンスのステップ変化が増加する際の前記パルス信号の発生時における電圧値Vbと、前記交番バイアス磁界が減少して前記磁界検出素子のインピーダンスのステップ変化が減少する際の前記パルス信号の発生時における電圧値Vb′とを用い、該Va,Va′,Vb,Vb′をそれぞれ該交番バイアス磁界の強度Ha,Ha′,Hb,Hb′に変換した後、(Ha+Hb)/2,(Ha′+Hb′)/2,(Ha+Ha′+Hb+Hb′)/4の何れか一つを演算することにより外部磁界を計測する演算手段と、を備えたことを特徴とする磁界検出装置が得られる。この磁界検出装置において、磁界検出素子は、磁界検出方向に対して傾斜したストライプ状磁区構造を有する薄膜磁性体構造であると共に、外部磁界の印加により該ストライプ状磁区構造が消滅又は出現することに伴う磁気特性のステップ状変化を利用してインピーダンスがステップ状に変化する特性を有することは好ましい。
加えて、本発明によれば、上記何れかの磁界検出装置において、前記パルス信号の発生時間間隔を計測する時間計測手段を備え、前記演算手段は、前記パルス信号にあっての前記交番バイアス磁界が増加して前記磁界検出素子のインピーダンスのステップ変化が減少する際に発生するものと、前記交番バイアス磁界が減少して前記磁界検出素子のインピーダンスのステップ変化が減少する際に発生するものとにおける時間間隔から前記外部磁界を計測することを特徴とする磁界検出装置が得られる。
他方、本発明によれば、上記磁界検出装置を利用した磁界検出方法であって、パルス信号にあっての交番バイアス磁界が増加して磁界検出素子のインピーダンスのステップ変化が減少する際に発生するものと、交番バイアス磁界が減少して磁界検出素子のインピーダンスのステップ変化が減少する際に発生するものとにおける時間間隔から外部磁界を計測する磁界検出方法、或いはパルス信号にあっての交番バイアス磁界が増加して磁界検出素子のインピーダンスのステップ変化が増加する際に発生するものと、交番バイアス磁界が減少して磁界検出素子のインピーダンスのステップ変化が増加する際に発生するものとにおける時間間隔から外部磁界を計測する磁界検出方法が得られる。更に、前者の磁界検出方法で計測された時間間隔と後者の磁界検出方法で計測された時間間隔との相加平均を演算すると共に、時間計測にあっての基準点を交番バイアス磁界の振幅が最大となる時点とすること、或いは前者の磁界検出方法による計測と後者の磁界検出方法による計測とを連続して行うことで得られる時間間隔の差分を演算すると共に、時間計測にあっての基準点を交番バイアス磁界の振幅が最大となる時点から2パルス目とすることは、それぞれ好ましい。
本発明の磁界検出方法の場合、磁界検出素子としてのステップ状磁気インピーダンス素子に対して交番バイアス磁界を印加するようにした上、外部磁界が印加されたときのステップ状磁気インピーダンス素子におけるインピーダンスのステップ状変化をパルス信号に変換するために微分処理して得られたパルス信号を利用して外部磁界を検出することを基本とし、バイアス磁界の強度に同期した電気的な同期信号を発生させながらパルス信号が発生するタイミングにおける同期信号の強度を利用して外部磁界を検出するようにするか、或いはバイアス磁界が増加する際に発生するバイアス増加時微分パルスとバイアス磁界が減少する際に発生するバイアス減少時微分パルスとにおける時間間隔を利用して外部磁界を検出するようにしているので、従来の連続的磁気インピーダンス特性が素子毎にばらつきを有する特性曲線の形状の影響を受けるものであるのに対し、不連続点の検出により外部磁界が検出されるために特性曲線の曲率のばらつきの問題が生じず、ステップ点の位置が安定し、交番バイアス印加時におけるステップ点のタイミング検出のみで外部磁界の検出が可能となり、従来素子で問題となっていたような動作点設定を個別に行わなければならないという問題や直線性の誤差による歩留まり劣化の問題が発生せず、ステップ状に変化するインピーダンスを微分処理でパルス信号に変換して検出するためにノイズレベルより非常に大きなパルスを発生させることができることによりステップ点の検出が高感度にして高精度に行い得るようになり、しかも交番バイアス磁界を利用するために駆動時の消費電力を低く抑えられるようになる。この結果、薄膜磁性体のヒステリシス特性に起因する出力オフセットのばらつきを改善する効果を持たせる演算処理を行わせることが可能であり、外部磁界の検出精度の向上を顕著に図り得るものとなる他、素子に通電する高周波電流の周波数を低下させ得るという長所や後段の信号処理を簡易に行い得るという長所を奏する。
特に磁気インピーダンス素子は、通電電流の周波数を低下させると素子インピーダンスの変化量が低下して素子感度が低下してしまうという原理的な宿命があり、ステップ状磁気インピーダンス素子においても駆動周波数を低下させると同様に素子インピーダンスの変化量が減少してしまうが、本発明の磁界検出方法の場合、交番バイアスと微分処理との組み合わせによる不連続点検出手法を用いることにより、素子インピーダンスの変化量は小さいものの急峻な変化をするステップ点の検出が容易に可能となり、しかも後段の信号処理ではステップ点の発生タイミングのみを用いるために素子インピーダンスの変化量は小さくてもステップ点で発生するパルス信号を抽出できれば外部磁界の検出を適確にして簡易に行うことができるため、結果として、本発明の磁界検出方法によれば、磁気インピーダンス特性の温度変化やヒステリシス特性の影響を受け難くて高感度にして高精度に外部磁界を検出できると共に、温度補償が不要で出力の直線性が劣化し難いという従来に無く優れた長所を奏するものとなる。
本発明の磁界検出装置においては、ステップ点の温度変化を補正する簡単な演算処理により、電気回路的な温度補償を省略可能なレベルまで磁界検出に際しての出力温度ドリフトの影響を小さくできる信号処理の演算が可能となり、ステップ状磁気インピーダンス素子を駆動する電気回路を個別に調整することなくステップ点のばらつきを有する複数の素子の中から同じ特性の出力を得ることが可能となるために製造コストを従来よりも格段に削減し得るという効果を奏する他、後段の信号処理をデジタル回路で簡素に構築できて素子特性のばらつきであるステップ点位置の個々の素子毎のばらつきを補正できるという効果も同時に奏することにより、消費電力を小さくして製造時の歩留りを大幅に改善できるようになる。
更に、使用する磁界検出素子は、外部磁界の変化に対してインピーダンスがステップ状に変化する特性を有するものであれば、本発明の効果を奏することが可能である。磁界検出素子として、外部磁界の変化による素子自体のインピーダンスの変化を検知するタイプのGMI,TMR,GMRや、或いは外部磁界の変化による磁性体の特性の変化を間接的に検知するインダクタを採用することが可能である。中でも、傾斜したストライプ状磁区構造のGMIは、小型で外部磁界に起因するステップ状インピーダンスの変化が大きく、しかもステップ現象を発生させるために必要なバイアス磁界強度が100A/m以下と小さいことにより駆動電力を小さくできるというメリットを有しており、特に効果的である。
本発明の磁界検出方法については、本発明者等により提案された前提となる技術として、薄膜磁性体に傾斜したストライプ状磁区構造を形成することによりステップ状にインピーダンスの変化特性を発現させたステップ状磁気インピーダンス素子を用いる旨のものが特願2003−115667号、特願2004−122662号で提案されている。即ち、これらの本発明の前提的技術に係る磁界検出方法は、ステップ状磁気インピーダンス素子が備える磁界検出方向に対して傾斜したストライプ状磁区構造を有する薄膜磁性体に対する外部磁界の印加によりストライプ状磁区構造が消滅又は出現することに伴う磁気特性のステップ状変化を利用してインピーダンスがステップ状に変化することに基づいて磁界検出を行うものである。
ところが、このステップ状磁気インピーダンス素子を用いた磁界検出方法では、必要な素子感度を維持するためにはキャリア周波数(高周波電流の周波数)に下限がある上、連続的磁気インピーダンス特性が素子毎にばらつきを有する特性曲線の形状の影響を受けるものであり、連続点の検出により外部磁界が検出されるために特性曲線の曲率のばらつきの問題が生じるためにステップ点の位置が安定せず、交番バイアス印加時におけるステップ点のタイミング検出で外部磁界の検出を行うことができないことにより、動作点設定を個別に行わなければならないという問題や直線性の誤差による歩留まり劣化の問題が発生する。
そこで、こうした問題を解決するための本発明の最良の形態に係る磁界検出方法は、磁界の変化に対してインピーダンスがステップ状に変化する特性を有する磁界検出素子に電流を印加しながら磁界検出素子に対して測定磁界の方向と平行又は非平行の方向に交番バイアス磁界を印加し、磁界検出素子にあっての電圧の時間変化を時間微分することにより、磁界検出素子のインピーダンス変化をパルス信号に変換するものである。但し、この磁界検出方法における磁界検出素子は、磁界検出方向に対して傾斜したストライプ状磁区構造を有する薄膜磁性体構造であると共に、外部磁界の印加によりストライプ状磁区構造が消滅又は出現することに伴う磁気特性のステップ状変化を利用してインピーダンスがステップ状に変化する特性を有するものとする。
又、同様に係る問題を解決するための本発明の最良の形態に係る磁界検出装置は、磁界の変化に対してインピーダンスがステップ状に変化する特性を有する磁界検出素子と、磁界検出素子に電流を供給する電流供給手段と、磁界検出素子に測定磁界の方向と平行又は非平行の方向に交番バイアス磁界を印加するバイアス磁界印加手段と、磁界検出素子にあっての電圧の時間変化を時間微分して該磁界検出素子のインピーダンス変化をパルス信号に変換する微分処理手段とを備えたものである。但し、この磁界検出装置における磁界検出素子についても、磁界検出方向に対して傾斜したストライプ状磁区構造を有する薄膜磁性体構造であると共に、外部磁界の印加によりストライプ状磁区構造が消滅又は出現することに伴う磁気特性のステップ状変化を利用してインピーダンスがステップ状に変化する特性を有するものとする。又、係る磁界検出装置において、交番バイアス磁界の強度に比例した電気信号波形を発生する信号発生手段と、パルス信号が発生するタイミングにおける電気信号波形の電圧値を保持する電圧保持手段とを備えることは好ましい。
更に、この磁界検出装置を利用した本発明の一形態に係る磁界検出方法は、電圧値として、交番バイアス磁界が増加して磁界検出素子のインピーダンスのステップ変化が増加する際のパルス信号の発生時における電圧値Vaと、交番バイアス磁界が増加して磁界検出素子のインピーダンスのステップ変化が減少する際のパルス信号の発生時における電圧値Va′と、交番バイアス磁界が減少して磁界検出素子のインピーダンスのステップ変化が増加する際のパルス信号の発生時における電圧値Vbと、交番バイアス磁界が減少して磁界検出素子のインピーダンスのステップ変化が減少する際のパルス信号の発生時における電圧値Vb′とを用い、これらの電圧値Va,Va′,Vb,Vb′をそれぞれ交番バイアス磁界の強度Ha,Ha′,Hb,Hb′に変換した後、(Ha+Hb)/2,(Ha′+Hb′)/2,(Ha+Ha′+Hb+Hb′)/4の何れか一つを演算することにより外部磁界を計測するものである。
加えて、上述した何れかの磁界検出装置では、パルス信号の発生時間間隔を計測する時間計測手段を備えることが好ましい。係る磁界検出装置を利用した本発明の他形態に係る磁界検出方法は、パルス信号にあっての交番バイアス磁界が増加して磁界検出素子のインピーダンスのステップ変化が減少する際に発生するものと、交番バイアス磁界が減少して磁界検出素子のインピーダンスのステップ変化が減少する際に発生するものとにおける時間間隔から外部磁界を計測するか、或いはパルス信号にあっての交番バイアス磁界が増加して磁界検出素子のインピーダンスのステップ変化が増加する際に発生するものと、交番バイアス磁界が減少して磁界検出素子のインピーダンスのステップ変化が増加する際に発生するものとにおける時間間隔から外部磁界を計測するものである。更に、前者の磁界検出方法で計測された時間間隔と後者の磁界検出方法で計測された時間間隔の相加平均を演算すると共に、時間計測にあっての基準点を交番バイアス磁界の振幅が最大となる時点とすること、或いは前者の磁界検出方法による計測と後者の磁界検出方法による計測とを連続して行うことで得られる時間間隔の差分を演算すると共に、時間計測にあっての基準点を交番バイアス磁界の振幅が最大となる時点から2パルス目とすることは、それぞれ好ましい。
以下は、本発明の磁界検出装置の幾つかの実施例について、磁界検出の原理並びにその製造工程を含めて具体的に説明する。
図1に、本発明の実施例1に係る磁界検出装置に備えられるCoZrNb薄膜で作製した磁界検出方向に対して傾斜したストライプ状磁区構造の薄膜磁性体を持つステップ状磁気インピーダンス素子の外部磁界Hext(A/m)に対する素子インピーダンスZ(Ω)の関係で示される特性曲線を示したものである。
図1からは、ステップ状磁気インピーダンス素子に特有の閾値磁界であるステップ点において素子インピーダンスZが急激に増加したり、或いは減少するステップ状磁気インピーダンス特性を示している様子が判る。これはストライプ状磁区構造の薄膜磁性体が交番磁界をバイアス磁界として印加された条件下にあって、バイアス増加時とバイアス減少時とでヒステリシスを有した特性を持つことによる。
図2は、本発明の実施例1に係る磁界検出装置の基本構成を示した回路ブロック図である。
この実施例1に係る磁界検出装置は、磁界検出方向に対して傾斜したストライプ状磁区構造の薄膜磁性体を持つ磁界検出素子としてのステップ状磁気インピーダンス素子1と、このステップ状磁気インピーダンス素子1に対して交番磁界をバイアス磁界として磁界検出方向に印加するバイアス磁界印加手段としての交番バイアス電源回路2と、ステップ状磁気インピーダンス素子1に対して高周波電流(キャリア電流)を通電供給させるために直列接続された電流供給手段としての高周波電源3及び抵抗器4と、交番バイアス電源回路2によるバイアス磁界、並びに外部磁界が印加されたときのステップ状磁気インピーダンス素子1における高周波キャリア成分を除去するための高周波キャリア成分除去回路5と、ステップ状磁気インピーダンス素子1から高周波キャリア成分除去回路5経由で得られる高周波キャリア成分が除去された素子インピーダンスのステップ状変化をパルス信号に変換するための微分処理を行う微分処理手段としての微分処理回路6とを備えて構成される。尚、図2に示す磁界検出装置では、抵抗器4及び高周波キャリア成分除去回路5の間とステップ状磁気インピーダンス素子1の出力側との交点を中間点T1,微分処理回路6における出力側の出力端子をT2としている。
この磁界検出装置の場合、ステップ状磁気インピーダンス素子1に対し、高周波電源3から高周波電流を通電させ、更に交番バイアス電源回路2から交番バイアスを磁界検出方向に印加することにより、磁気インピーダンス効果に起因した信号変化を利用し、外部磁界が印加されたときの強度を高周波キャリア成分除去回路5でキャリア信号成分を除去した後に素子インピーダンスがステップ状に変化する現象を微分処理回路6により信号の微分処理を行うことでパルス信号として検出するものであるが、予め高周波電流の周波数よりも交番バイアスの周波数を十分に低く設定しておき、後段の高周波キャリア成分除去回路5で弁別可能な条件が得られるようにしておくことが望ましい。ここでは、高周波電源3から供給される高周波電流を周波数50MHzのものとし、交番バイアス電源回路2から印加される交番バイアスを振幅319.2(A/m)で周波数1kHzのものとした。
図3は、この磁界検出装置における回路局部における交番磁界一周期分に対応する信号のオシロスコープ波形を示したもので、同図(a)は中間点T1に関するもの,同図(b)は出力端子T2に関するものである。
図3(a)では、外部磁界一定の条件で交番バイアスの変化のみによる中間点T1にあっての素子端信号の波形を示しており、オシロスコープ波形には素子インピーダンス変化に伴うステップ変化が交番磁界増加部,交番磁界減少部における信号波形上でそれぞれ発現している。
図3(b)では、この信号波形から例えばローパスフィルタやピークホールド回路等による高周波キャリア成分除去回路5で高周波キャリアの信号成分を除去することで中間点T1の信号波形を包絡線的波形に整形した後、微分処理回路6で微分処理を施すことによって得られる出力端子T2にあっての信号波形を示しており、オシロスコープ波形には急峻な変化を示すステップ点で大きなパルスが発生している。
図4は、この磁界検出装置に対して外部磁界が印加された場合のパルス波形の変化を交番磁界一周期分に対応する信号のオシロスコープ波形で示したものである。即ち、ここでは外部磁界の印加による図3(b)に示す出力端子T2の信号波形の変化を示すもので、交番磁界としてのバイアス磁界の振幅を一定とした場合、外部磁界の印加に伴って交番磁界増加部のパルスと交番磁界減少部のパルスとが外部磁界によるパルス間隔の変化及びパルス位置の変化を受けて各々オシロスコープ波形上で左右逆方向に移動している様子を示している。そこで、実施例1に係る磁界検出装置では、この移動量に基づいて磁界検出を行う。尚、バイアス磁界の振幅は、ステップ状変化が発生する磁界強度の1.5倍以上の振幅であることが望ましい。
図5は、本発明の実施例2に係る磁界検出装置の基本構成を示した回路ブロック図である。この磁界検出装置の場合、図2に示した実施例1に係る装置と比べ、パルス信号が発生するタイミングにおけるバイアス磁界に比例した電気信号の強度を利用して外部磁界を検出できるようにした点が相違している。
具体的に言えば、この磁界検出装置の場合、図2に示した実施例1に係る装置の各部構成を備えることを基本とした上、更に交番バイアス電源回路2に対してバイアス磁界に比例した電気信号を発生する信号発生手段としての電気信号発生器8を備える他、微分処理回路6で得られるパルス信号が発生するタイミングにおける電気信号の強度を利用して外部磁界を検出可能とするために、パルス信号を成形して弁別したパルス成形弁別信号を出力するパルス成形・弁別回路7と、パルス成形弁別信号をトリガとして電気信号発生器8からの電気信号をサンプルホールドしてサンプルホールド信号を出力する電圧保持手段としてのサンプルホールド回路9と、素子インピーダンスのステップ状変化の方向が同じ方向(増加ステップ又は減少ステップ)に対応するパルスの発生タイミングに応じたサンプルホールドされたそれぞれのバイアス磁界に比例した電気信号の強度の相加平均を演算することにより外部磁界を検出する演算手段としての演算回路10とを備えて構成される。
このうち、パルス成形・弁別回路7は、微分処理回路6で生じた微分パルスをそれ以降のデジタル信号処理機能を持つ電子回路部分で処理可能とするためにパルス波形の成形(整形)を行う波形整形機能と、成形後のパルス信号にあってのパルス種別としてインピーダンス増加の際に発生するパルス、インピーダンス減少の際に発生するパルス、並びにノイズパルスの信号弁別を行う信号弁別機能とを合わせ持っている。因みに、ここでの信号弁別は周知のデジタル信号処理技術を用いれば波形整形と同時に行わせることも可能である。
図6は、この磁界検出装置における磁界検出原理を説明するために示したバイアス磁界印加を要してのパルス信号及びバイアス磁界に比例した電気信号間にあってのタイミングチャートである。即ち、ここでは、外部磁界によるパルス位置の変化を受け、外部磁界の強度に応じて微分処理で得られたパルス信号が時間軸上を移動するが、このときにバイアス磁界に比例した電気信号をそのパルスタイミングで保持することで上述したパルス信号の時間軸上における移動量を電気信号に変換した出力が得られることを示している。
この磁界検出原理は、以下に示すように発展させることができる。即ち、上述した演算回路10が持つ機能であり、素子インピーダンズのステップ状変化の方向がバイアス磁界一周期内の増加ステップ又は減少ステップに対応する2本の微分パルスにおける発生タイミングに応じたバイアス磁界に比例した電気信号の強度の相加平均を演算することにより、外部磁界を演算するものである。
図7は、この磁界検出装置における磁界検出の演算に要する複数のパルス信号とバイアス磁界に比例した電気信号との関係を示したタイミングチャートである。ここでは、外部磁界によるパルス間隔の変化及びパルス位置の変化を受けてバイアス磁界に比例した電気信号における(A+B)/2又は(A′+B′)/2を演算した結果、オフセットの小さい外部磁界にほぼ比例した出力が得られ、ステップ点の温度ドリフトを打ち消し合うようになるため、温度補償回路を省き得ること(細部は後述する実施例4で説明する)を示している。
因みに、上述した磁界検出原理は、以下に示すように発展させることもできる。即ち、図7の電気信号における(A+B)/2及び(A′+B′)/2の2つの演算結果を更に相加平均した演算式、即ち、(A+B+A′+B′)/4を演算しても有効であり、更なるステップ点の誤差や出力オフセットの低減化を可能とする。
図8は、この磁界検出装置における外部磁界(A/m)に対する出力電圧(mV)の関係による出力特性を例示したものである。但し、図8中の出力特性は、上述した(A+B)/2の演算を採用し、特にオフセット調整を行っていない結果であり、ここではCoZrNb薄膜で作製した磁界検出方向に対して傾斜したストライプ状磁区構造の薄膜磁性体を持つステップ状磁気インピーダンス素子について、素子長を1mm、素子幅を20μm、素子厚2.1μmとした上、高周波電源3から供給される高周波電流を周波数50MHzのものとし、交番バイアス電源回路2から印加される交番バイアスを振幅319.2(A/m)で周波数400Hzとして駆動した場合の出力特性を示している。
図8からは、測定範囲±79.8(A/m)とした場合、測定精度359.1mA/mで出力電圧の直線性誤差が0.5%以下であることが判った。因みに、ここでの測定の場合、測定環境における地磁気の測定方向成分が約7182mA/mあったが、測定値の横軸原点の出力値は約185mVであり、磁場に換算すると7421.4mA/mであるので、優れた一致性を示している。
尚、実施例2の磁界検出装置では、バイアス磁界(交番磁界)の波形として三角波を用いた場合を例示したが、電気信号の波形がバイアスの波形と比例関係にあれば、その他に正弦波や間欠的三角波等の様々な変形例を適用することが可能である。これは電気信号がバイアス波形と比例関係にあれば、バイアス磁界に比例した電気信号の電圧によりバイアス磁界の値を算出することができるためである。
図9は、本発明の実施例3に係る磁界検出装置の基本構成を示した回路ブロック図である。この磁界検出装置の場合、図2に示した実施例1に係る装置と比べ、交番バイアス電源回路2でバイアス磁界が増加する際に発生するバイアス増加時微分パルスとバイアス磁界が減少する際に発生するバイアス減少時微分パルスとにおける時間間隔を利用して外部磁界を検出可能できるようにした点が異なっている。
具体的に言えば、この磁界検出装置の場合、図2に示した実施例1に係る装置の各部構成を備えることを基本とした上、更にパルス信号を成形してノイズ除去やパルス振幅符号等を弁別したパルス成形弁別信号を出力するパルス成形・弁別回路7と、パルス成形弁別信号をトリガとして、素子インピーダンスのステップ状変化の方向が同じ方向(増加ステップ又は減少ステップ)に対応する2つの微分パルスの時間間隔信号を出力する時間計測手段としてのタイマ11と、タイマ11から出力される時間間隔信号を磁界強度に換算する演算手段としての演算回路10とを備えて構成される。
更に、具体的には、交番バイアス磁界の振幅が最大となった時点を時間計測にあっての基準点とする。この基準点は、バイアス磁界の方向が正方向,負方向の何れか任意の符号を選択することができる。そこで、この時間計測にあっての基準点を基点として、バイアス磁界一周期について各々2つのパルスを発生する素子インピーダンスのステップ状変化の方向が同じ方向(増加ステップ又は減少ステップ)に対応する微分パルスを利用し、これらの2パルスの発生時間間隔から磁界検出を行う。この場合、外部磁界零の場合のパルス時間間隔をt0、バイアス磁界の変化幅をHp−p、交番バイアス磁界の一周期の時間をT、外部磁界Hextの印加時に計測された時間間隔をtとしたとき、外部磁界Hextは、Hext=(t0−t)×Hp−p/Tなる関係式で演算することができる。但し、この関係式の符号は、時間計測にあっての基準点の符号に応じて適宜反転させる必要がある。又、ここでの時間間隔tとして、増加ステップ及び減少ステップの各々についての時間間隔の相加平均を用いることも有効である。
ところで、この実施例3における時間計測にあっての基準点を変形した形態として、交番バイアス磁界の振幅が最大となった時点から2パルス目を基準点とすることも可能である。ここでも同様に、得られた基準点を基点として、同様にバイアス磁界一周期について各々2つのパルスを発生する素子インピーダンスのステップ状変化の方向が同じ方向(増加ステップ又は減少ステップ)に対応する微分パルスを利用し、これらの2パルスの発生時間間隔から磁界検出を行う。この場合、バイアス磁界の変化幅をHp−p、交番バイアス磁界の一周期の時間をT、外部磁界Hextの印加時に計測された増加ステップパルスの時間間隔をtup,減少ステップパルスの時間間隔をtdownとしたとき、外部磁界Hextは、Hext=(tdown−tup)/2×Hp−p/Tなる関係式で演算することができる。但し、ここでの関係式の符号についても、基準点から開始する交番バイアス磁界の振幅の符号に応じて適宜反転させる必要がある。この方法の場合、外部磁界零の場合のパルス時間間隔の計測を不要にできるという利点がある。又、この方法の変形として、交番バイアス磁界が零となった時点を基準点とすることも可能である。
因みに、ここでの時間間隔tup,tdownとして、バイアス磁界が増加して素子インピーダンスのステップ状変化が増加する際のパルス発生時点からバイアス磁界が減少して素子インピーダンスのステップ状変化が増加する際のパルス発生時点までの時間間隔をtupとし、バイアス磁界が減少して素子インピーダンスのステップ状変化が減少する際のパルス発生時点からバイアス磁界が増加して素子インピーダンスのステップ状変化が減少する際のパルス発生時点までの時間間隔をtdownとしても良い。同様に、バイアス磁界が減少して素子インピーダンスのステップ状変化が増加する際のパルス発生時点からバイアス磁界が増加して素子インピーダンスのステップ状変化が増加する際のパルス発生時点までの時間間隔をtupとし、バイアス磁界が増加して素子インピーダンスのステップ状変化が減少する際のパルス発生時点からバイアス磁界が減少して素子インピーダンスのステップ状変化が減少する際のパルス発生時点までの時間間隔をtdownとしても良い。
尚、上述した実施例3やそれを変形した形態のものにおける磁界検出装置の場合、バイアス磁界(交番磁界)の強度変化に係る波形は、三角波や間欠的三角波のような直線的変化を示すものを採用することが望ましい。
実施例4に係る磁界検出装置は、実施例1の磁界検出装置における高周波電源3から供給される高周波電流の周波数(キャリア周波数)を低減化させたものである。即ち、本発明の前提的技術となる連続的磁気インピーダンス特性の場合、必要な素子感度を維持するためにキャリア周波数に下限があったが、ここでの磁界検出装置の場合、キャリア周波数を低下させると磁気インピーダンス効果の原理により磁界印加による素子インピーダンスの変化量が減少するため、ステップ点のタイミング検出(即ち、微分パルスの検出)ができれば、磁界検出が可能であるという検出原理により従来型で下限とされていたキャリア周波数以下まで周波数を低減化させることを可能にしたものである。
図10は、この実施例4に係る磁界検出装置におけるキャリア周波数の低減に伴う素子特性を示したもので、同図(a)はキャリア周波数10MHz,50MHzにあってのバイアス磁界(A/m)に対する素子インピーダンス(Ω)の関係に関するもの,同図(b)はキャリア周波数10MHzの場合にあっての同図(a)中に示される局部における微分パルス波形に関するものである。
図10(a)からは、従来型の磁界検出原理に従えば、CoZrNb薄膜で作製した磁界検出方向に対して傾斜したストライプ状磁区構造の薄膜磁性体を持つステップ状磁気インピーダンス素子1の場合、キャリア周波数は50MHzが下限と考えられており、キャリア周波数を50MHzから10MHzに低下させると、素子インピーダンスが桁外れに低下して磁界測定が困難になるが、実施例4に係る磁界検出装置を利用すれば、キャリア周波数10MHzでも図10(b)に示されるようにステップ点の微分パルスが明らかであるため、容易に磁界検出が可能となり、結果としてキャリア周波数10MHz以下でも駆動が可能であることが判る。
図11は、図10に示したキャリア周波数10MHzの場合の実施例4に係る磁界検出装置における外部磁界に対する出力電圧の関係による出力特性を例示したものである。
図11からは、キャリア周波数を10MHzとしてステップ状磁気インピーダンス素子1を駆動して外部磁界を検出測定するようにしても、実施例2で図8に示した場合と同等な出力特性(線形フィット)が得られ、十分に精度良く外部磁界を検出できることが判る。
実施例5に係る磁界検出装置は、実施例2や実施例3で説明した演算回路10における基本機能、即ち、微分処理回路6で得られる微分パルスについて、素子インピーダンズのステップ状変化の方向が同方向(増加ステップ又は減少ステップ)に対応する微分パルスを利用して相加平均の演算を行う演算機能を持つことにより、温度ドリフトの有効な補正を行うことができるものである。
図12は、実施例5に係る磁界検出装置が備えるステップ状磁気インピーダンス素子1におけるステップ特性温度変化の測定ステップ点を説明するためのバイアス磁界(A/m)に対する素子インピーダンスZの絶対値(Ω)の関係を示すステップ状磁気インピーダンス特性図である。但し、ここではCoZrNb薄膜で作製した磁界検出方向に対して傾斜したストライプ状磁区構造の薄膜磁性体を持つステップ状磁気インピーダンス素子1について、薄膜を幅20μm、長さ2mmにパターニングしたものを使用した上、温度20℃で高周波電源3から供給される高周波電流を周波数50MHzのものとした場合の磁気インピーダンス特性を示している。
図12では、バイアス磁界の負値から正値へ向かって4点のステップ点が出現し、素子インピーダンスZの絶対値57.6Ωにおける交点として、バイアス磁界の負値大でバイアス増加時のステップ点P1,バイアス磁界の負値小でバイアス減少時のステップ点P2,バイアス磁界の正値小でバイアス減少時のステップ点P3,バイアス磁界の正値大でバイアス増加時のステップ点P4を区別できることを示している。
図13は、図12に示される4点のステップ点P1,P2,P3,P4の特性曲線における温度ドリフトを説明するための温度(℃)変化に対するステップ状インピーダンスの磁界(A/m)の関係を示した特性図である。図12においては、各ステップ点P1,P2,P3,P4の特性曲線の何れについても、大きな温度ドリフトを有することが示されている。尚、本発明では上述した演算を実行することにより、これらの温度ドリフトを補正することができる。
図14は、図13に示される4点のステップ点P1,P2,P3,P4の特性曲線に応じて所定の演算「(P1+P4)/2なる演算」を行うことで得られる出力温度ドリフトの低下効果を説明するための温度(℃)変化に対する演算外部磁界Hext=(P1+P4)/2(A/m)の関係を示した特性図である。
図14においては、演算外部磁界Hextを得るために(P1+P4)/2なる演算を行うと、ステップ点P1の特性曲線とステップ点P4の特性曲線とは、温度(℃)変化に対して対象な変化を示すため、この演算で出力値の温度ドリフトを誤差範囲以下(≦1.596A/m)にすることが可能であることを示している。
尚、ここでの演算回路10における相加平均の演算については、その他に例えば(P2+P3)/2なる演算や(P1+P2+P3+P4)/4なる演算、上述したものを任意に適用しても有効であるが、特に(P1+P2+P3+P4)/4なる演算を適用した場合には平均化の効果が顕著になるため、ステップ点ばらつきの影響を低減化させると共に、出力オフセット誤差の低減化を図るときに有効である。
実施例6に係る磁界検出装置は、実施例2や実施例3で説明した演算回路10における基本機能、即ち、微分処理回路6で得られる微分パルスについて、素子インピーダンズのステップ状変化の方向が同方向(増加ステップ又は減少ステップ)に対応する微分パルスを利用して相加平均の演算を行う演算機能を持つことにより、温度ドリフトの有効な補正を行うことができるものである。
図15は、実施例6に係る磁界検出装置が備えるステップ状磁気インピーダンス素子1におけるステップ特性温度変化の測定ステップ点を説明するためのバイアス磁界(A/m)に対する素子インピーダンスZの絶対値(Ω)の関係を示すステップ状磁気インピーダンス特性図である。但し、ここではCoZrNb薄膜で作製した磁界検出方向に対して傾斜したストライプ状磁区構造の薄膜磁性体を持つステップ状磁気インピーダンス素子1について、薄膜を幅20μm、長さ3mmにパターニングしたものを使用した上、温度20℃で高周波電源3から供給される高周波電流を周波数50MHzのものとした場合の磁気インピーダンス特性を示している。
図15では、バイアス磁界の負値から正値へ向かって4点のステップ点が出現し、素子インピーダンスZの絶対値73.0Ωにおける交点として、バイアス磁界の負値大でバイアス減少時のステップ点Q1,バイアス磁界の負値小でバイアス減少時のステップ点Q2,バイアス磁界の正値小でバイアス増加時のステップ点Q3,バイアス磁界の正値大でバイアス増加時のステップ点Q4を区別できることを示している。
図16は、図15に示される4点のステップ点Q1,Q2,Q3,Q4の特性曲線における温度ドリフトを説明するための温度(℃)変化に対するステップ状インピーダンスの磁界(A/m)の関係を示した特性図である。図16においては、各ステップ点Q1,Q2,Q3,Q4の特性曲線の何れについても、大きな温度ドリフトを有することが示されている。尚、本発明では上述した演算を実行することにより、これらの温度ドリフトを補正することができる。
図17は、図16に示される4点のステップ点Q1,Q2,Q3,Q4の特性曲線に応じて所定の演算「(Q1+Q4)/2なる演算」を行うことで得られる出力温度ドリフトの低下効果を説明するための温度(℃)変化に対する演算外部磁界Hext=(Q1+Q4)/2(A/m)の関係を示した特性図である。
図17においては、演算外部磁界Hextを得るために(Q1+Q4)/2なる演算を行うと、ステップ点Q1の特性曲線とステップ点Q4の特性曲線とは、温度(℃)変化に対して対象な変化を示すため、この演算で出力値の温度ドリフトを誤差範囲以下(≦1.165A/m)にすることが可能であることを示している。
尚、ここでの演算回路10における相加平均の演算については、その他に例えば(Q2+Q3)/2なる演算や(Q1+Q2+Q3+Q4)/4なる演算、上述したものを任意に適用しても有効であるが、特に(Q1+Q2+Q3+Q4)/4なる演算を適用した場合には平均化の効果が顕著になるため、ステップ点ばらつきの影響を低減化させると共に、出力オフセット誤差の低減化を図るときに有効である。
本発明の実施例1に係る磁界検出装置に備えられるCoZrNb薄膜で作製した磁界検出方向に対して傾斜したストライプ状磁区構造の薄膜磁性体を持つステップ状磁気インピーダンス素子の外部磁界に対する素子インピーダンスの関係で示される特性曲線を示したものである。
本発明の実施例1に係る磁界検出装置の基本構成を示した回路ブロック図である。
図2に示す磁界検出装置における回路局部における交番磁界一周期分に対応する信号のオシロスコープ波形を示したもので、(a)は中間点に関するもの,(b)は出力端子に関するものである。
図2に示す磁界検出装置に対して外部磁界が印加された場合のパルス波形の変化を交番磁界一周期分に対応する信号のオシロスコープ波形で示したものである。
本発明の実施例2に係る磁界検出装置の基本構成を示した回路ブロック図である。
図5に示す磁界検出装置における磁界検出原理を説明するために示したバイアス磁界印加を要してのパルス信号及びバイアス磁界に比例した電気信号間にあってのタイミングチャートである。
図5に示す磁界検出装置における磁界検出の演算に要する複数のパルス信号とバイアス磁界に比例した電気信号との関係を示したタイミングチャートである。
図5に示す磁界検出装置における外部磁界に対する出力電圧の関係による出力特性を例示したものである。
本発明の実施例3に係る磁界検出装置の基本構成を示した回路ブロック図である。
本発明の実施例4に係る磁界検出装置におけるキャリア周波数の低減に伴う素子特性を示したもので、(a)はキャリア周波数10MHz,50MHzにあってのバイアス磁界に対する素子インピーダンスの関係に関するもの,(b)はキャリア周波数10MHzの場合にあっての(a)中に示される局部における微分パルス波形に関するものである。
図10に示したキャリア周波数10MHzの場合の実施例4に係る磁界検出装置における外部磁界に対する出力電圧の関係による出力特性を例示したものである。
実施例5に係る磁界検出装置が備えるステップ状磁気インピーダンス素子におけるステップ特性温度変化の測定ステップ点を説明するためのバイアス磁界に対する素子インピーダンスの絶対値の関係を示すステップ状磁気インピーダンス特性図である。
図12に示される4点のステップ点の特性曲線における温度ドリフトを説明するための温度変化に対するステップ状インピーダンスの磁界の関係を示した特性図である。
図13に示される4点のステップ点の特性曲線に応じて所定の演算を行うことで得られる出力温度ドリフトの低下効果を説明するための温度変化に対する演算外部磁界の関係を示した特性図である。
実施例6に係る磁界検出装置が備えるステップ状磁気インピーダンス素子におけるステップ特性温度変化の測定ステップ点を説明するためのバイアス磁界に対する素子インピーダンスの絶対値の関係を示すステップ状磁気インピーダンス特性図である。
図15に示される4点のステップ点の特性曲線における温度ドリフトを説明するための温度変化に対するステップ状インピーダンスの磁界の関係を示した特性図である。
図16に示される4点のステップ点の特性曲線に応じて所定の演算を行うことで得られる出力温度ドリフトの低下効果を説明するための温度変化に対する演算外部磁界の関係を示した特性図である。
符号の説明
1 ステップ状磁気インピーダンス素子
2 交番バイアス電源回路
3 高周波電源
4 抵抗器
5 高周波キャリア成分除去回路
6 微分処理回路
7 パルス成形・弁別回路
8 電気信号発生器
9 サンプルホールド回路
10 演算回路
11 タイマ