ところが、上記の各電圧測定装置には、以下のような問題点がある。すなわち、特開平4−305171号公報の電圧測定装置では、測定対象体との間に静電容量を形成するために、検出電極が、プローブユニットに形成されている孔から外部に露出するようにして、振動体に取り付けられた状態でプローブユニット内に配設されている。また、特開平7−244103号公報の電圧測定装置では、入力孔から入力される電気力線を遮蔽・開放すべく、導体セクターが入力孔から露出するようにしてプローブケース内に配設されている。つまり、両電圧測定装置では、検出電極や導体セクターのような可動部材がプローブユニットなどに形成されている孔から露出する構成となっている。したがって、両電圧測定装置には、この孔を介してプローブユニット内に異物が誤って挿入されたときに、高速に可動している状態の検出電極や導体セクターに異物が衝突することに起因して検出電極や導体セクターが破損するおそれがあり、信頼性が低下しているという問題点が存在している。
本発明は、上記の問題を解決すべくなされたものであり、信頼性の高い電圧測定装置を提供することを主目的とする。また、信頼性の高い電力測定装置を提供することを他の主目的とする。
上記目的を達成すべく請求項1記載の電圧測定装置は、測定対象体の電圧を測定可能に構成された電圧測定装置であって、前記測定対象体に対向可能な検出電極と、前記検出電極と参照電位との間に接続されてその静電容量を変化可能に構成された可変容量回路と、前記参照電位を生成する電圧生成回路と、制御部とを備え、前記制御部は、前記可変容量回路が前記静電容量を変化させているときに、前記電圧生成回路に対して前記参照電位の電圧を変化させる。
また、請求項2記載の電圧測定装置は、請求項1記載の電圧測定装置において、前記可変容量回路は、互いに接合されたP型半導体およびN型半導体を有する第1素子および当該第1素子に逆バイアスを印加する直流電源を互いに直列に接続してそれぞれ構成した第1および第2の容量回路を備えると共に、前記各第1素子が逆向きとなるように前記各容量回路が前記検出電極と前記参照電位との間に直列に配設されて構成され、互いの位相が反転した駆動信号を前記各容量回路に印加して前記可変容量回路を駆動する駆動回路を備えている。
また、請求項3記載の電圧測定装置は、請求項2記載の電圧測定装置において、前記各第1素子は、前記P型半導体および前記N型半導体で形成されたダイオードで構成されている。
また、請求項4記載の電圧測定装置は、請求項2または3記載の電圧測定装置において、前記駆動回路は、互いの一次巻線が並列に接続された第1および第2のトランスと、前記第1のトランスの二次巻線に直列に接続された第1の容量性素子と、前記第2のトランスの二次巻線に直列に接続された第2の容量性素子とを備え、前記第1のトランスの前記二次巻線および前記第1の容量性素子の直列回路が前記第1の容量回路に並列に接続されると共に、前記第2のトランスの前記二次巻線および前記第2の容量性素子の直列回路が前記第2の容量回路に並列に接続されている。
また、請求項5記載の電圧測定装置は、請求項4記載の電圧測定装置において、前記第1の容量性素子および前記第2の容量性素子はコンデンサで構成されている。
また、請求項6記載の電圧測定装置は、請求項1から5のいずれかに記載の電圧測定装置において、前記制御部は、前記静電容量の変化時において、前記可変容量回路を介して前記検出電極と前記参照電位との間に流れる電流、または前記可変容量回路における前記検出電極側の端部と前記基準電極側の端部との間に発生する電圧が減少するように前記電圧生成回路に対して前記参照電位の電圧を変化させる。
また、請求項7記載の電圧測定装置は、請求項6記載の電圧測定装置において、前記検出電極と前記参照電位との間に前記可変容量回路と直列に配設されたインピーダンス素子を備え、前記制御部は、前記インピーダンス素子に前記電流が流れたときに当該インピーダンス素子に発生する電圧が減少するように前記電圧生成回路に対して前記参照電位の電圧を変化させる。
また、請求項8記載の電圧測定装置は、請求項6記載の電圧測定装置において、前記検出電極と前記参照電位との間に前記可変容量回路と直列に配設された共振回路を備え、前記制御部は、前記共振回路に前記電流が流れたときに当該共振回路に発生する電圧が減少するように前記電圧生成回路に対して前記参照電位の電圧を変化させる。
また、請求項9記載の電圧測定装置は、請求項6記載の電圧測定装置において、前記制御部は、前記電流の値、または前記検出電極側の端部と前記基準電極側の端部との間に発生する前記電圧の値に応じて電圧値が変化する検出信号を入力してディジタルデータに変換するA/D変換回路を備え、当該ディジタルデータに基づいて前記検出信号の電圧値が減少するように前記電圧生成回路に対して前記参照電位の電圧を変化させる。
また、請求項10記載の電力測定装置は、測定対象体に流れている電流を測定する電流測定装置と、前記測定対象体の電圧を測定する請求項1から9のいずれかに記載の電圧測定装置とを備え、前記電流測定装置によって測定された前記電流と前記電圧測定装置によって測定された前記電圧とに基づいて電力を測定する電力測定装置。
請求項1記載の電圧測定装置では、測定対象体に検出電極を対向させることによって測定対象体と検出電極との間に一定の(固定の)静電容量が形成される状態とし、この状態において、可変容量回路が自らの静電容量を変化させているときに、制御部が電圧生成回路に対して参照電位の電圧を変化させる。このため、静電容量変化時において可変容量回路に発生する電流または可変容量回路の両端間電圧を検出しつつ、この電流またはこの両端間電圧が所定値以下となったときの参照電位を測定対象体の電圧として測定することができる。したがって、この電圧測定装置によれば、例えば、検出電極をケースの表面に配設し、可変容量回路をケースの内部に配設した状態で測定対象体の電圧を測定できるため、可変容量回路を測定対象体と直接対向させるための孔をケースに設ける必要がなくなる。この結果、この孔を介して異物がケース内に誤って挿入される事態、およびこの誤挿入に起因した装置内の部品の破損を確実に回避することができるため、装置の信頼性を十分に向上させることができる。
また、請求項2記載の電圧測定装置によれば、互いに接合されたP型半導体およびN型半導体を有する第1素子およびこの第1素子に逆バイアスを印加する直流電源を互いに直列に接続してそれぞれ構成した第1および第2の容量回路を備えると共に、各第1素子が逆向きとなるように各容量回路を検出電極と参照電位との間に直列に配設して可変容量回路を構成し、駆動回路が各容量回路に互いの位相が反転した駆動信号を印加して可変容量回路を駆動するようにしたことにより、直列に配設された各容量回路に発生する駆動信号の電圧成分同士が打ち消されるため、可変容量回路における検出電極側の端部と基準電極側の端部との間に駆動信号の電圧成分を発生させないようにすることができる。このため、静電容量変化時において可変容量回路に発生する電流または可変容量回路の両端間電圧への駆動信号の影響を排除できる結果、この電流または両端間電圧をより正確に検出することができる。したがって、この電圧測定装置によれば、測定対象体の電圧をより正確に測定することができる。
また、請求項3記載の電圧測定装置によれば、第1素子をP型半導体およびN型半導体で形成されたダイオードで構成したことにより、簡易、かつ安価に可変容量回路を構成することができる。
また、請求項4記載の電圧測定装置によれば、互いの一次巻線が並列に接続された第1および第2のトランスと、第1のトランスの二次巻線に直列に接続された第1の容量性素子と、第2のトランスの二次巻線に直列に接続された第2の容量性素子とを備え、第1のトランスの二次巻線および第1の容量性素子の直列回路を第1の容量回路に並列に接続すると共に、第2のトランスの二次巻線および第2の容量性素子の直列回路を第2の容量回路に並列に接続して駆動回路を構成したことにより、各トランスの一次巻線に1つの信号を印加するだけで、互いの位相が反転した駆動信号を生成して各容量回路に印加することができる。また、各容量性素子の直流遮断機能により、測定対象体から可変容量回路を介して参照電位側に直流電流が流れる事態を確実に回避することができる。
また、請求項5記載の電圧測定装置によれば、コンデンサで第1の容量性素子および第2の容量性素子を構成したことにより、駆動回路を安価に構成することができる。
また、請求項6記載の電圧測定装置では、静電容量の変化時において、可変容量回路を介して検出電極と参照電位間に流れる電流または可変容量回路における検出電極側の端部と基準電極側の端部との間に発生する電圧が減少するように制御部が電圧生成回路に対して参照電位の電圧を変化させることにより、つまり、制御部が上記の電流または電圧に基づいて電圧生成回路をフィードバック制御することにより、測定対象体の電圧を測定している。このため、この電圧測定装置によれば、例えば、可変容量回路の静電容量を静的に既知の静電容量に変えつつ、各静電容量のときにおいて可変容量回路に加わる電圧を検出して、測定対象体の電圧および測定対象体と検出電極との間の静電容量を含む未知数と同数の方程式を作成し、これらの方程式から未知数を求めて測定対象体の電圧を算出する構成と比較して、高い精度で測定対象体の電圧を測定することができる。
また、請求項7記載の電圧測定装置によれば、検出電極と参照電位との間に可変容量回路と直列にインピーダンス素子を配設すると共に、インピーダンス素子に電流が流れたときにこのインピーダンス素子に発生する電圧が減少するように制御部が電圧生成回路に対して参照電位の電圧を変化させることにより、インピーダンス素子のインピーダンス値を変えることで電流が流れたときにインピーダンス素子に発生する電圧の値を任意に変更することができる。このため、低電圧から高電圧までの広い電圧範囲に亘って測定対象体の電圧を測定することができる。
また、請求項8記載の電圧測定装置では、検出電極と参照電位との間に可変容量回路と直列に共振回路を配設すると共に、共振回路に電流が流れたときにこの共振回路に発生する電圧が減少するように制御部が電圧生成回路に対して参照電位の電圧を変化させている。したがって、この構成によれば、共振回路の共振時におけるインピーダンス値を変えることで電流が流れたときに共振回路に発生する電圧の値を任意に変更することができるため、低電圧から高電圧までの広い電圧範囲に亘って測定対象体の電圧を測定することができる。しかも、共振回路の共振周波数で可変容量回路の静電容量を変化させることで、共振回路に流れる電流をより大きな電圧として検出することができる。この結果、耐ノイズ性能を高めることができるため、誤動作の少ない状態で測定対象体の電圧を測定することができる。
また、請求項9記載の電圧測定装置によれば、可変容量回路に流れる電流の値または可変容量回路に発生する電圧の値に応じて電圧値が変化する検出信号を入力してディジタルデータに変換するA/D変換回路を備え、制御部が、このディジタルデータに基づいて、検出信号の電圧値が減少するように電圧生成回路に対して参照電位の電圧を変化させることにより、CPUやDSP(Digital Signal Processor)を用いたディジタル回路で制御部を簡易に構成することができる。
また、請求項10記載の電力測定装置は、測定対象体に流れている電流を測定する電流測定装置と、測定対象体の電圧を測定する請求項1から9のいずれかに記載の電圧測定装置とを備え、電流測定装置によって測定された電流と電圧測定装置によって測定された電圧とに基づいて、例えば測定対象体に供給されている電力を測定する。したがって、この電力測定装置によれば、信頼性の高い電圧測定装置を備えたことで、電力測定装置自体の信頼性を十分に向上させることができる。
以下、添付図面を参照して、本発明に係る電圧測定装置および電力測定装置の最良の形態について説明する。
最初に、本発明に係る電圧測定装置1について、図面を参照して説明する。
電圧測定装置1は、図1に示すように、プローブユニット2および本体ユニット3を備え、測定対象体4の電圧V1を非接触で測定可能に構成されている。この場合、電圧V1とは、グランド電位(基準電位)に対する電圧をいう。
プローブユニット2は、図1に示すように、ケース11、検出電極12、可変容量回路13、駆動回路14、電流検出器15およびプリアンプ16を備えている。ケース11は、導電性材料(例えば金属材料)を用いて構成されている。検出電極12は、例えば、平板状に形成されると共に、その一方の面側がケース11の外表面に露出し、かつ他方の面側がケース11の内部に露出するようにしてケース11に固定されている。一例として、検出電極12は、ケース11に設けられている孔(図示せず)に、この孔を閉塞し、かつケース11に対して電気的に絶縁された状態で取り付けられている。また、本例では、一例として、ケース11は、その表面が樹脂材などで形成された絶縁被膜で覆われている。この場合、検出電極12は、この絶縁被膜で覆われていてもよいし、絶縁被膜から露出していてもよい。
可変容量回路13は、駆動回路14から後述する駆動信号S2を入力したときに、その静電容量C1を連続的に変化させる機能を備え、検出電極12と、参照電位(基礎出願における基準電位)となる部位(本例ではケース11)との間に接続(配設)されている。本例では、一例として、可変容量回路13は、図1に示すように、互いに接合されたP型半導体およびN型半導体を有する第1素子13aおよび第1素子13aに逆バイアスを印加する直流電源13bを互いに直列に接続して構成した第1の容量回路13cと、互いに接合されたP型半導体およびN型半導体を有する第1素子13dおよび第1素子13dに逆バイアスを印加する直流電源13eを互いに直列に接続して構成した第2の容量回路13fとを備え、各第1素子13a,13dが逆向きとなるように第1および第2の容量回路13c,13fが検出電極12とケース11との間に直列に配設されて構成されている。本例では、一例として、各第1素子13a,13dは、1つのダイオードで構成されている(以下、ダイオード13a,13dともいう)。この場合、各ダイオード13a,13d、および各直流電源13b,13eとしては、それぞれ同じ仕様のものを使用するのが好ましい。また、本例では、各ダイオード13a,13dとして、可変容量ダイオード(バリキャップやバラクタダイオードともいう)を使用しているが、可変容量ダイオードは、電圧を逆方向に印加したときにダイオードのPN接合における空乏層の厚みが変化することによる静電容量(接合容量)の変化を利用したものであり、この静電容量の変化を大きくしたものをいう。他方、PN接合で構成される一般的なダイオード(シリコンダイオード)においても、可変容量ダイオードと比べて少ないものの、上記した静電容量(接合容量)の変化は発生する。このため、各ダイオード13a,13dとして、一般的なダイオードを使用することもできる。また、一例として、第1の容量回路13cを検出電極12側に配設すると共に、第2の容量回路13fをケース11側に配設したが、各容量回路13c,13fの位置を逆にすることもできる。また、容量回路13cにおいて、ダイオード13aと直流電源13bとの位置関係を逆にしてもよいし、容量回路13fにおいて、ダイオード13dと直流電源13eとの位置関係を逆にしてもよい。このように構成された可変容量回路13は、駆動信号S2に同期して駆動信号S2の周期で連続的(周期的)にその静電容量C1を変化させる。つまり、本例の可変容量回路13では、その容量変調周波数が駆動信号S2の周波数と一致している。また、可変容量回路13は、ケース11の外部に露出しない状態で、ケース11内部に配設されている。
なお、可変容量回路は、上記のようにダイオードなどを使用した構成に限定されるものではなく、上記した特開平4−305171号公報に開示されている構成、すなわち、検出電極および振動体を備えた構成(図示せず)を利用して構成することもできる。この構成の可変容量回路(可変容量機構)では、振動体によって検出電極(検出電極12とは別の電極)が検出電極12に対して接離動されることにより、その静電容量C1、つまり検出電極と検出電極12との間の静電容量C1が変化する。また、可変容量回路は、特開平7−244103号公報に開示されている構成、すなわち、導体セクターおよび検出電極(検出電極12とは別の電極)を備えた構成(図示せず)を利用して構成することもできる。この構成の可変容量回路(可変容量機構)では、検出電極を検出電極12に対向させて配設すると共にこの両電極間に導体セクターを配置して、この状態において導体セクターが検出電極12から検出電極に達する電気力線に対して遮蔽と開放とを繰り返すことにより、その静電容量C1、つまり検出電極12と検出電極との間の静電容量C1が変化する。さらに、特開平8−181038号公報や特開平9−153436号公報にそれぞれ開示されている可変容量コンデンサ、すなわち、近接して配設した一対の電極の少なくとも一方を弾性変形させることによって両電極間の距離を変化させて静電容量C1を変化させる可変容量コンデンサ(いずれも図示せず)を可変容量回路として用いることもできる。
駆動回路14は、例えば、トランスおよび光絶縁素子(例えばフォトカプラ)などの絶縁用電子部品を用いて構成されて、本体ユニット3から入力した駆動信号S1を、この駆動信号S1と電気的に絶縁されると共に駆動信号S1と同一の周波数であって互いの位相が反転し、かつ振幅が同一の駆動信号S2a,S2b(以下、特に区別しないときには駆動信号S2ともいう)に変換して可変容量回路13に出力(印加)する。具体的には、本例では、駆動回路14は、図1に示すように、同一に構成された第1および第2のトランス14a,14b(以下、トランス14a,14bともいう)と、第1および第2の容量性素子14c,14d(以下、容量性素子14c,14dともいう)とを備えている。この場合、各トランス14a,14bは、互いの一次巻線W1,W3が並列に接続されている。また、各トランス14a,14bは、各一次巻線W1,W3に駆動信号S1が入力されたときに、それぞれの二次巻線W2,W4に互いに位相の反転した(逆極性の)駆動信号S2a,S2bが発生するように構成されている。各容量性素子14c,14dは、一例としてコンデンサで構成されている。また、容量性素子14cはトランス14aの二次巻線W2に直列に接続され、容量性素子14dはトランス14bの二次巻線W4に直列に接続されている。
また、容量性素子14cおよびトランス14aの二次巻線W2の直列回路は、容量回路13cに並列に接続されて、駆動信号S2aを容量回路13cに印加する。また、容量性素子14dおよびトランス14bの二次巻線W4の直列回路は、容量回路13fに並列に接続されて、駆動信号S2bを容量回路13fに印加する。この場合、駆動信号S2aは、直流電源13bから出力される直流電圧に重畳した状態でダイオード13aに印加され、同様にして、駆動信号S2bは、直流電源13eから出力される直流電圧(直流電源13bの直流電圧と同一電圧)に重畳した状態でダイオード13dに印加されるが、いずれの駆動信号S2も、各ダイオード13a,13dが直流電源13b,13eからの直流電圧によって常時逆バイアスされるように、その振幅が予め規定されている。なお、本例の各直列回路では、各容量回路13c,13fにおけるダイオード13a,13d側にコンデンサ14c,14dを配設したが、直流電源13b,13e側に配設することもできる。このコンデンサ14c,14dは、検出電極12とケース11とがトランス14a,14bの各二次巻線W2,W4を介して直流的に接続されるのを防止する。
電流検出器15は、本発明における電圧変換回路であり、一例として抵抗で構成されて、可変容量回路13とケース11との間に接続されている。これにより、電流検出器15は、可変容量回路13と直列に接続された状態で検出電極12とケース11との間に配設されて、可変容量回路13に流れている電流i(物理量)を検出すると共に、この電流iの電流値に比例した値で、かつ電流iの向きに対応した極性の電圧V2をその両端間に発生させる。プリアンプ16は、不図示の直流遮断用の一対のコンデンサ、不図示の増幅回路(演算増幅器など)、および不図示の絶縁用電子部品(トランスおよびフォトカプラなど)を備えて構成されている。また、プリアンプ16は、本例では、一例として差動型の演算増幅器で構成されて、コンデンサを介して入力した電圧V2を増幅回路で増幅すると共に、増幅した電圧を絶縁用電子部品によって増幅回路に対して電気的に絶縁された検出信号S3に変換して出力する。この場合、電圧V2は電流iの値に比例して変化するため、この電圧V2を増幅して生成された検出信号S3も電流iの値に比例して変化する。また、上記した駆動回路14、電流検出器15およびプリアンプ16は、可変容量回路13と共にケース11内部に配設されている。
本体ユニット3は、図1に示すように、発振回路21、増幅回路22、同期検波回路23、積分器24、電圧生成回路25および電圧計26を備えて構成されている。発振回路21は、一定の周波数の駆動信号S1を生成してプローブユニット2および同期検波回路23に出力する。この場合、本例では、発振回路21は、駆動信号S1として正弦波信号を生成する。増幅回路22は、プローブユニット2から入力した検出信号S3を予め設定された電圧レベルまで増幅して、検出信号S4として出力する。本例では、可変容量回路13の容量変調周波数は、後述するように駆動信号S2の周波数と同一になる。このため、この静電容量C1の変化によって生じる電流iの周波数は駆動信号S1の周波数と同一となり、プリアンプ16で生成される検出信号S3の周波数も駆動信号S1の周波数と同一となる。したがって、本例では、同期検波回路23は、検出信号S4を駆動信号S1で同期検波することにより、パルス信号S5を生成するように構成されている。この場合、パルス信号S5は、その振幅が可変容量回路13を流れる電流iの値に比例して変化し、かつその極性が可変容量回路13を流れる電流iの向きに応じて変化する。積分器24は、パルス信号S5を連続的に積分することで直流電圧V3を生成して、電圧生成回路25に出力する。本例では、一例として、積分器24は、積分動作を開始した後に、最初のパルス信号S5が入力されるまでの間、ゼロボルトの直流電圧V3を出力するように設定されている。これらの増幅回路22、同期検波回路23および積分器24は、制御部CNTを構成して、電圧生成回路25を制御する。電圧生成回路25は、制御部CNTの制御下で、フィードバック電圧V4を生成してプローブユニット2のケース11に印加する。具体的には、電圧生成回路25は、入力した直流電圧V3を増幅することにより、フィードバック電圧V4を生成する。これにより、参照電位であるケース11の電圧は、フィードバック電圧V4と等しく維持される。電圧計26は、グランド電位(基準電位)を基準としたフィードバック電圧V4を測定して、その電圧値を表示する。
次いで、電圧測定装置1を使用した測定対象体4の電圧V1の測定方法と共に、電圧測定装置1の測定動作について説明する。なお、発明の理解を容易にするため、一例として、電圧V1が正の定電圧であるとして説明するが、電圧V1が負の定電圧であるときにも、対応する信号や電圧の極性が逆になる以外は、正の定電圧のときと同様にして測定される。また、電圧V1が交流のときにも、原理的には正の定電圧や負の定電圧のときと同様にして測定される。
まず、電圧V1の測定に際して、検出電極12が非接触な状態で測定対象体4に対向するように、プローブユニット2を測定対象体4の近傍に配設する。これにより、図1に示すように、検出電極12と測定対象体4との間に静電容量C0が形成された状態となる。この場合、静電容量C0の容量値は、検出電極12と測定対象体4の距離に反比例して変化するが、プローブユニット2を配設し終えた後は、湿度などの環境条件が一定のもとでは一定となる(変動しない)。ただし、静電容量C0は、湿度等の環境条件が変化したときには変動する。
次いで、電圧測定装置1の起動状態において、本体ユニット3では、発振回路21が駆動信号S1の生成を開始して、駆動信号S1をプローブユニット2と同期検波回路23に出力する。プローブユニット2では、駆動回路14が、入力した駆動信号S1を、位相が反転すると共に振幅が同一の駆動信号S2a,S2bに変換して可変容量回路13の各容量回路13c,13fに出力する。この場合、各容量回路13c,13fは、同一の振幅の駆動信号S2a,S2bが同じタイミングで印加されるため、それぞれの静電容量が同じ値で、しかも同一タイミングで変化する。したがって、可変容量回路13は、入力した駆動信号S2の周期に同期してその静電容量C1(各容量回路13c,13fの静電容量の直列合成容量)を容量変調周波数(駆動信号S2の周波数と同一)で周期的に変化させる動作を開始する。この際に、各駆動信号S2a,S2bは位相が反転すると共に振幅が同一であるため、可変容量回路13は、その両端間(検出電極12側の端部とケース11側の端部との間)に各駆動信号S2a,S2bの電圧成分が発生しない状態で、その静電容量C1を周期的に変化させる。この場合、上記したように、可変容量回路13は、電流検出器15を介在させた状態でケース11と検出電極12との間に直列に接続されているため、その静電容量C1と、測定対象体4および検出電極12の間に形成される静電容量C0とは、測定対象体4とケース11との間に直列に接続された状態になっている。このため、静電容量C1が周期的に変化することにより、測定対象体4とケース11との間の静電容量C2(各静電容量C0,C1の直列合成容量)も周期的に変化する。
また、積分器24は、電圧測定装置1の動作開始直後において、ゼロボルトの直流電圧V3を出力するため、電圧生成回路25は、所定電圧のフィードバック電圧V4(一例として、電圧V1よりも低電圧であって、ほぼゼロボルトとする)を生成してプローブユニット2のケース11に印加する。このため、測定対象体4とケース11との間には電位差(V1−V4)が生じた状態になっている。したがって、上記したように、静電容量C1の周期的な変化に基づいて測定対象体4とケース11との間の静電容量C2が周期的に変化することにより、可変容量回路13には、測定対象体4およびケース11の各電圧V1,V4の電位差(V1−V4)に応じた振幅の電流i(容量変調周波数)が流れる。この場合、電流iは、電位差(V1−V4)が大きいときにはその振幅(電流値)が大きくなり、電位差(V1−V4)が小さいときにはその電流値が小さくなる。すなわち、電流iは、図示はしないが、その周期が駆動信号S2の周期と同一であって、その振幅が電位差(V1−V4)に応じて変化する交流信号として流れる。プリアンプ16は、この電流iに起因して電流検出器15の両端に発生する電圧V2を増幅することにより、正極性の検出信号S3として本体ユニット3に出力する。この場合、上記したように、各駆動信号S2a,S2bは位相が反転すると共に振幅が同一であるため、各容量回路13c,13fに発生する駆動信号S2a,S2bの電圧成分同士が打ち消される。したがって、可変容量回路13の両端間(検出電極12側の端部とケース11側の端部との間)には、各駆動信号S2a,S2bの電圧成分は殆ど発生しない。他方、各容量回路13c,13fの静電容量、つまり可変容量回路13の静電容量C1は駆動信号S2a,S2bによって変化させられるため、静電容量C1についての容量変化の周波数(容量変調周波数)および容量変化に起因して発生する電流iの周波数は、駆動信号S2a,S2bの周波数と一致する。したがって、検出信号S3の周波数も電流iと同様にして、駆動信号S2a,S2bの周波数と同一になる。
本体ユニット3の制御部CNTでは、増幅回路22が、検出信号S3を増幅して検出信号S4を生成して同期検波回路23に出力する。次いで、同期検波回路23は、入力した検出信号S4を駆動信号S1で同期検波することにより、パルス信号S5を生成して、積分器24に出力する。続いて、積分器24は、パルス信号S5を連続的に積分することで直流電圧V3を生成して、電圧生成回路25に出力する。この場合、上記したように、本例では、電圧測定装置1の動作開始後からフィードバック電圧V4が電圧V1に達するまでは、検出信号S3が常に正極性の信号となり、同様にして検出信号S4も正極性の信号となるため、パルス信号S5は、常に正極性のパルス信号となる。この結果、積分器24、つまり制御部CNTから出力される直流電圧V3は徐々にその電圧値が上昇する。したがって、電圧生成回路25で生成されるフィードバック電圧V4も、図2に示すように、その電圧値が徐々に上昇する。この結果、電流検出器15、プリアンプ16、増幅回路22、同期検波回路23、積分器24および電圧生成回路25で構成されるフィードバックループ内では、測定対象体4とケース11との間の電位差(V1−V4)が徐々に低下(減少)するように負のフィードバックが行われる。したがって、電流iは、電流値が徐々に低下(減少)していく。
その後、フィードバック電圧V4が電圧V1に達したときには、電位差(V1−V4)がゼロボルトになる。この状態では、測定対象体4とケース11との間の静電容量C2が周期的に変化していたとしても、電流iが流れない。また、電流iが流れないため、電流検出器15において電圧V2が発生しない(電圧V2がゼロボルトになる)結果、プリアンプ16から検出信号S3が出力されなくなる。また、検出信号S3が出力されないため、増幅回路22からも検出信号S4が出力されない状態となり、同期検波回路23からのパルス信号S5の出力も停止し、この結果、積分器24から出力される直流電圧V3の上昇も停止して一定の電圧に維持される。このため、電圧生成回路25から出力されるフィードバック電圧V4の上昇が停止して、図2に示すように、フィードバック電圧V4が一定の電圧に維持される。したがって、電圧計26で表示されている電圧値(フィードバック電圧V4)を継続して観察し、その電圧値の上昇が停止して一定になったとき(すなわち、電流iがゼロアンペアになったときに)、そのときの電圧計26で表示されている電圧値(フィードバック電圧V4)を測定対象体4の電圧V1として測定する。以上により、測定対象体4の電圧V1が完了する。なお、増幅回路22や電圧生成回路25などのゲイン(利得)を上げることにより、電圧測定装置1における上記フィードバックループの応答速度を十分に高速にすることができる。この場合には、変動する電圧V1に対しても、フィードバック電圧V4を十分に追従させることができるため、値が安定するのを待つことなく電圧計26に表示されている電圧値を測定対象体4の電圧V1として測定することができる。
このように、この電圧測定装置1では、測定対象体4に検出電極12を対向させることによって測定対象体4と検出電極12との間に一定の(固定の)静電容量C0を形成した状態とし、この状態において、可変容量回路の静電容量C1を周期的に変化させているときに、制御部CNTが電圧生成回路25に対してフィードバック電圧V4(参照電位)の電圧を変化させる。このため、可変容量回路13の周期的な容量変化時において可変容量回路13に発生する(流れる)電流iを検出しつつ、この電流iがゼロアンペアまたはほぼゼロアンペアとなったときのこのフィードバック電圧V4を測定対象体4の電圧V1として測定することができる。したがって、この電圧測定装置1によれば、検出電極12をケース11の表面に配設し、可変容量回路13をケース11の内部に配設した状態で測定対象体4の電圧V1を測定できるため、可変容量回路13を測定対象体4と直接対向させるための孔をケース11に設ける必要がなくなる。この結果、この孔を介して異物がケース11内に誤って挿入される事態、およびこの誤挿入に起因したケース11内の部品の破損を確実に回避することができるため、電圧測定装置1の信頼性を十分に向上させることができる。
また、この電圧測定装置1によれば、上記のように構成した各容量回路13c,13fを、各ダイオード13a,13eが逆向きとなるように検出電極12とケース11との間に直列に配設して可変容量回路13を構成し、駆動回路14が各容量回路13c,13fに互いの位相が反転した駆動信号S2a,S2bを印加して可変容量回路13を駆動するようにしたことにより、各容量回路13c,13fに発生する駆動信号S2a,S2bの電圧成分同士が打ち消されるため、可変容量回路13における検出電極12側の端部とケース11側の端部との間に駆動信号S2の電圧成分を発生させないようにすることができる。このため、静電容量変化時において可変容量回路13に発生する電流i(または可変容量回路13の両端間電圧)への駆動信号S2の影響を排除できる結果、この電流i(または両端間電圧)をより正確にプリアンプ16で検出することができる。したがって、この電圧測定装置1によれば、測定対象体4の電圧V1をより正確に測定することができる。また、第1素子13a,13dとしてダイオードを使用したことにより、簡易、かつ安価に可変容量回路13を構成することができる。
また、この電圧測定装置1によれば、上記のように互いに接続された2つのトランス14a,14bおよび容量性素子14c,14dを備えて駆動回路14を構成したことにより、各トランス14a,14bの一次巻線W1,W3に共通の駆動信号S1を印加するだけで、互いの位相が反転した2つの駆動信号S2a,S2bを生成して各容量回路13c,13fに印加することができる。また、各容量性素子14c,14dの直流遮断機能により、測定対象体4から可変容量回路13を介してケース11側に直流電流が流れる事態を確実に回避することができる。さらに、容量性素子14c,14dとしてコンデンサを用いたことにより、駆動回路14を安価に構成することができる。
また、この電圧測定装置1によれば、可変容量回路13に発生する電流iが減少するように制御部CNTが電圧生成回路25に対してフィードバック電圧V4を変化させることにより、つまり、制御部CNTが電流iに基づいて電圧生成回路25をフィードバック制御することにより、例えば、可変容量回路の静電容量を静的に既知の静電容量に変えつつ、各静電容量のときにおいて可変容量回路に加わる電圧を検出して、測定対象体の電圧および測定対象体と検出電極との間の静電容量を含む未知数と同数の方程式を作成し、これらの方程式から未知数を求めて測定対象体4の電圧V1を算出する構成と比較して、高い精度で測定対象体4の電圧V1を測定することができる。
特に、この電圧測定装置1では、検出電極12を用いた構成を採用することにより、測定対象体4との間に静電容量を直接的に形成することができない可変容量ダイオードを可変容量コンデンサとして用いて可変容量回路13を構成することができる。この場合、検出電極および振動体を利用して可変容量回路13を形成する構成(特開平4−305171号公報に開示されている構成)や、導体セクターおよび検出電極(検出電極12とは別の電極)を利用して可変容量回路13を形成する構成(特開平7−244103号公報に開示されている構成)と比較して、可変容量ダイオードを用いた可変容量回路13では、通常、より短い周期で(つまり、より高い周波数で)その静電容量C1を変化させることができる。したがって、電流検出器15〜電圧生成回路25のフィードバックループの応答速度を高速化できる結果、短時間で測定対象体4の電圧V1を測定することができると共に、測定対象体4の電圧V1が時間的に変動するときや、測定対象体4の電圧V1が周期的に変化する交流電圧のときにも、その電圧V1を正確に測定することができる。
また、この電圧測定装置1によれば、検出電極12とケース11との間に可変容量回路13と直列にインピーダンス素子で構成された電流検出器15を配設すると共に、この電流検出器15に電流iが流れたときに発生する電圧V2が減少するように制御部CNTが電圧生成回路25に対してフィードバック電圧V4(ケース11の電圧)を変化させる構成を採用したことにより、インピーダンス素子のインピーダンス値を変えることで電流iが流れたときに発生する電圧V2の値を任意に変更することができる。このため、低電圧から高電圧までの広い電圧範囲に亘って測定対象体4の電圧V1を測定することができる。
なお、本発明は、上記の構成に限定されない。例えば、上記した電圧測定装置1では、駆動回路14において、容量性素子14c,14dとしてコンデンサを使用しているが、図3に示す駆動回路14Aのように、可変容量ダイオードなどのダイオードを容量性素子14c,14dとして同図に示す極性で接続して用いることもできる。この場合、容量回路13c、容量性素子14cおよびトランス14aの二次巻線W2で構成される電流ループにおいて、直流電源13bから逆バイアスが印加されるように、容量性素子14cおよび容量回路13cのダイオード13aの極性を揃える。これは、容量回路13f等で構成される電流ループについても同様である。また、上記した電圧測定装置1では、I(比例)制御でフィードバック電圧V4を制御しているが、さらにフィードバックループ内に積分回路および微分回路(いずれも図示せず)のうちの少なくとも1つを追加することにより、PI(比例・積分)制御、PD(比例・微分)制御およびPID(比例・積分・微分)制御のいずれかでフィードバック電圧V4を制御することもできる。このPID制御を採用することにより、電圧V1への追従性を高めることができるため、特に、測定対象体4の電圧V1が変化するときにおいて、その電圧V1を精度良く測定することができる。
また、図4に示す電圧測定装置1Aのように、可変容量回路13の両端間電圧(可変容量回路13における検出電極12側の端部と可変容量回路13におけるケース11側の端部との間に発生する電圧)V5をプリアンプ16で検出して検出信号S3として出力し、両端間電圧V5に比例して変化する検出信号S3に基づいて制御部CNTが電圧生成回路25を制御して、測定対象体4の電圧V1を測定する構成を採用することもできる。この場合、プリアンプ16における一対の入力端子のうちの一方の入力端子は、同図に示すように、コンデンサ17を介して可変容量回路13における検出電極12側の端部に接続され、他方の入力端子は、可変容量回路13におけるケース11側の端部に接続されている。なお、この構成以外の構成については、電圧測定装置1Aは電圧測定装置1と同一のため、図4では、電圧測定装置1の各構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付して重複する説明を省略する。この電圧測定装置1Aでは、電位差(V1−V4)が静電容量C0と可変容量回路13の静電容量C1とによって分圧される。このため、電位差(V1−V4)の増減に応じて両端間電圧V5も増減するため、両端間電圧V5は、電位差(V1−V4)の増減に応じて、電圧測定装置1における電流iと同じく増減する傾向を示す。したがって、この電圧測定装置1Aにおいても、両端間電圧V5の変化状態を示す検出信号S3に基づいてケース11の電位(フィードバック電圧V4)を制御することにより、電圧測定装置1と同様にして、測定対象体4の電圧V1を測定することができる。さらに、この電圧測定装置1Aによれば、電圧測定装置1と比較して、電流検出器15を省くことができるため、装置の構成を簡略化することができる結果、装置コストを低減することができる。
また、電圧測定装置1,1Aでは、可変容量回路13に流れている電流iや可変容量回路13の両端間電圧V5を検出するために同期検波方式を採用しているが、これに限定されるものではなく、図示はしないが、同期検波方式に代えて、公知の包絡線検波方式などを採用することもできる。
また、電圧測定装置1では、可変容量回路13とケース11との間に電流検出器15を配設しているが、図5に示す電圧測定装置1Bのように、検出電極12Aと可変容量回路13との間に電流検出器15を配設することもできる。また、電圧測定装置1では、アナログ信号で作動する増幅回路22、同期検波回路23および積分器24を用いて電圧生成回路25をアナログ的にフィードバック制御しているが、電圧測定装置1Bのように、検出信号S3をディジタルデータに変換することによって電圧生成回路25をディジタル的にフィードバック制御することもできる。
以下、この電圧測定装置1Bについて、この電圧測定装置1Bを用いて構成した電力測定装置31と共に、図5を参照して説明する。なお、この電圧測定装置1Bの構成要素のうち、電圧測定装置1と同一の構成要素については同一の符号を付して重複する説明を省略する。
電力測定装置31は、直流および交流の電力を測定可能に構成されており、電圧測定用のクランプ式プローブユニット2B、電流測定用のクランプ式プローブユニット5、および本体ユニット3Aを備えて構成されている。この場合、電力測定装置31では、プローブユニット2Bと本体ユニット3Aに含まれている後述の構成要素とで、測定対象体4(一例として電線。以下、「電線4」ともいう)の電圧V1を測定する電圧測定装置1Bが構成されている。また、プローブユニット5と本体ユニット3Aに含まれている後述の構成要素とで、電線4に流れている電流I1を測定する電流測定装置41が構成されている。電力測定装置31は、電圧測定装置1Bによって測定された電圧V1の電圧値と電流測定装置41によって測定された電流I1の電流値とに基づいて、電線4に供給されている電力W1を測定する。
電圧測定装置1Bは、プローブユニット2Bと、本体ユニット3A内に配設されている発振回路21、A/D変換回路32、CPU33、D/A変換回路34、電圧生成回路25および電圧計26Aとを備えて構成されている。この場合、プローブユニット2Bは、ケース11、検出電極12A、可変容量回路13、駆動回路14、電流検出器15、プリアンプ16および一対のコンデンサ18a,18bを備えている。検出電極12Aは、各々が樹脂材などで形成された絶縁被膜RE1によって全体的に被覆されると共に各々の一端側がケース11において回動自在に連結され、これによって各々の他端側同士が接離自在に構成された一対の弧状電極P1,P2で構成されている。この構成により、検出電極12Aは、電線4をクランプすることが可能となっている。また、可変容量回路13、駆動回路14、電流検出器15、プリアンプ16および一対のコンデンサ18a,18bは樹脂材などで形成された絶縁被膜RE2で被覆されたケース11内に配設されている。また、可変容量回路13および電流検出器15は、互いに直列に接続された状態で、検出電極12Aとケース11との間に配設されている。また、電圧測定装置1Bでは、電圧測定装置1とは異なり、電流検出器15が検出電極12に接続されて、可変容量回路13がケース11に接続されている。また、電流検出器15を検出電極12側に配設したことによってプリアンプ16を介して検出電極12Aが直流的に参照電位側に接続されるのを回避するため、電圧V2を検出するプリアンプ16の各入力端子と電流検出器15の各端部との間に直流遮断用のコンデンサ18a,18bがそれぞれ配設されている。なお、電圧測定装置1と同様にして、可変容量回路13および電流検出器15の順序でこれらを検出電極12Aとケース11との間に直列に接続することもでき、この構成ではプリアンプ16の各入力端子と電流検出器15の各端部との間へのコンデンサ18a,18bの配設が不要となる。
本体ユニット3A内に配設されたA/D変換回路32は、CPU33およびD/A変換回路34と共に、本発明における制御部CNT1を構成し、アナログ信号としての検出信号S3をディジタルデータD1に変換してCPU33に出力する。CPU33は、入力したディジタルデータD1から例えば駆動信号S1の周波数と同じ周波数の信号についてのデータを抽出する検波処理と、この検波処理によって抽出されたデータを積分する積分処理とを実行する。また、CPU33は、この積分処理によって得られた積分データD2をD/A変換回路34に出力する。また、CPU33は、後述するように、電流測定装置41の一部としても機能して、A/D変換回路35から出力されたディジタルデータD4に基づいて、測定対象体4に流れている電流I1の電流値を算出(測定)する電流算出処理も実行する。さらに、CPU33は、算出した電流I1の電流値と、電圧計26Aから出力されたフィードバック電圧V4の電圧値(ディジタルデータD3で示される値)とに基づいて、電線4に供給されている電力W1を算出(測定)する電力算出処理も実行する。D/A変換回路34は、積分データD2をアナログ信号としての直流電圧V3に変換して電圧生成回路25に出力する。電圧計26Aは、フィードバック電圧V4を測定して、その電圧値を表示すると共に、測定したフィードバック電圧V4の電圧値をディジタルデータD3に変換してCPU33に出力する。
電流測定装置41は、図5に示すように、プローブユニット5と、本体ユニット3A内に配設されているA/D変換回路35、CPU33および表示装置36とを備えて構成されている。この場合、プローブユニット5は、クランプした電線4に流れる電流I1の電流値を非接触で検出すると共に、電流値に応じて振幅が変化する検出信号S6をA/D変換回路35に出力する。A/D変換回路35は、入力した検出信号S6をディジタルデータD4に変換してCPU33に出力する。CPU33は、上述した電流算出処理を実行することにより、ディジタルデータD4に基づいて電流I1の電流値を算出して表示装置36に表示させる。
このように構成された電力測定装置31では、電圧測定装置1Bが、制御部CNT1を構成するA/D変換回路32、CPU33およびD/A変換回路34が検出信号S3をディジタルデータD1に変換すると共にそのディジタルデータD1に基づいて電圧生成回路25をディジタル的にフィードバック制御する以外は、電圧測定装置1の制御部CNTの各構成要素と同様にして電圧生成回路25をフィードバック制御して、フィードバック電圧V4を電圧V1に一致させる。
他方、電流測定装置41は、A/D変換回路35がプローブユニット5で検出された検出信号S6をディジタルデータD4に変換してCPU33に出力し、CPU33がこのディジタルデータD4に基づいて電流算出処理を実行することによって電線4に流れている電流I1の電流値を算出する。
また、CPU33は、電圧計26Aから入力したディジタルデータD3で示されるフィードバック電圧V4の電圧値(つまり電圧V1の電圧値)と、電流算出処理によって算出した電流I1の電流値とに基づいて電力算出処理を実行することにより、電線4に供給されている電力W1を算出(測定)して、表示装置36に表示させる。これにより、電力W1の測定が完了する。この場合、CPU33は、電力W1および電流I1の電流値と共に、電圧V1の電圧値を表示装置36に表示させる。なお、これらの電流値や電圧値を表示装置36に表示させる構成に代えて、ストレージ装置(図示せず)に記憶させたり、データ伝送装置(図示せず)を介して外部に伝送する構成を採用することもできる。
このように、この電圧測定装置1Bでは、測定対象体4としての電線4の電圧V1を測定する際に、可変容量回路13に流れている電流iを示す検出信号S3をディジタルデータD1に変換し、このディジタルデータD1に基づいて電圧生成回路25をディジタル的にフィードバック制御する。したがって、制御部CNT1(A/D変換回路32、CPU33およびD/A変換回路34)をCPUやDSPを用いて簡易に構成することができる。また、電圧測定装置1Bでは、絶縁被膜RE1によって全体的に被覆された一対の弧状電極P1,P2で検出電極12Aが構成され、かつ可変容量回路13、駆動回路14、電流検出器15、プリアンプ16および一対のコンデンサ18a,18bが絶縁被膜RE2で被覆されたケース11内に配設されている。したがって、検出電極12A、可変容量回路13、駆動回路14、電流検出器15、プリアンプ16および一対のコンデンサ18a,18bが外部に露出していないため、これらの回路および部品と、装置外部の異物との接触を確実に回避することができる。したがって、電圧測定装置1Bの信頼性を十分に向上させることができる。また、これにより、この電圧測定装置1Bを用いた電力測定装置31についても、信頼性を十分に向上させることができる。
また、ディジタル的にフィードバック制御する電圧測定装置1Bを用いた電力測定装置31について説明したが、図6に示すように、アナログ的にフィードバック制御する電圧測定装置1Cを用いて電力測定装置51を構成することもできる。以下、この電力測定装置51について説明する。なお、電圧測定装置1と同一の構成要素、および電力測定装置31と同一の構成要素については同一の符号を付して重複する説明を省略する。
電力測定装置51は、直流および交流の電力を測定可能に構成されており、図6に示すように、プローブユニット2B,5、および本体ユニット3Bを備えて構成されている。この場合、電力測定装置51では、プローブユニット2Bと本体ユニット3Bに含まれている後述の構成要素とで、測定対象体4(一例として電線4)の電圧V1を測定する電圧測定装置1Cが構成されている。また、プローブユニット5と本体ユニット3Bに含まれている後述の構成要素とで、電線4に流れている電流I1を測定する電流測定装置41が構成されている。電力測定装置51は、電圧測定装置1Cによって測定された電圧V1の電圧値と電流測定装置41によって測定された電流I1の電流値とに基づいて、電線4に供給されている電力W1を測定する。
電圧測定装置1Cは、プローブユニット2Bと、本体ユニット3B内に配設されている発振回路21、制御部CNT、電圧生成回路25および電圧計26Aを備えて構成されている。この場合、制御部CNTは、アナログ信号としての検出信号S3に基づいて直流電圧V3を生成して電圧生成回路25に出力することにより、アナログ的にフィードバック電圧V4をフィードバック制御して、フィードバック電圧V4を電圧V1に一致させる。電流測定装置41は、プローブユニット5と、本体ユニット3B内に配設されているA/D変換回路35、CPU33および表示装置36とを備えて構成されている。この場合、CPU33は、電流算出処理を実行することにより、A/D変換回路35から入力したディジタルデータD4に基づいて電流I1の電流値を算出して表示装置36に表示させる。また、CPU33は、電圧計26Aから入力したディジタルデータD3に基づいてフィードバック電圧V4(電圧V1)の電圧値を表示装置36に表示させる。さらに、CPU33は、電圧計26Aから入力したディジタルデータD3で示されるフィードバック電圧V4の電圧値(つまり電圧V1の電圧値)と、電流算出処理によって算出した電流I1の電流値とに基づいて電力算出処理を実行することにより、電線4に供給されている電力W1を算出(測定)して、表示装置36に表示させる。
この電力測定装置51においても、電圧測定装置1Bと同様にして電圧測定装置1Cの信頼性を十分に向上させることができる結果、この電圧測定装置1Cを用いた電力測定装置51自体の信頼性を十分に向上させることができる。
また、上記した電圧測定装置1,1B,1Cでは、抵抗を用いて電流検出器15を構成しているが、インピーダンス素子であれば、抵抗に限らず、コンデンサやコイルで構成することもできるし、これらを組み合わせて構成することもできる。このようにインピーダンス素子を用いることにより、インピーダンス素子のインピーダンス値を変えることにより、電流iが流れたときに発生する電圧V2の電圧値を任意に変更することができる。このため、測定対象体4の電圧の高低に応じて電流検出器15に発生する電圧V2を適切な値に設定できる結果、低電圧から高電圧までの広い電圧範囲に亘って測定対象体4の電圧を正確に測定することができる。また、インピーダンス素子に代えて、セラミック共振器や水晶振動子などの各種共振体を含む共振回路、およびコイルとコンデンサとで構成されたLC共振回路(直列共振回路または並列共振回路)のいずれかを用いることもできる。これらの共振回路のうちの共振体を含む共振回路およびLC並列共振回路は、特定の周波数(共振周波数)においてインピーダンスが最大になるという特性を有している。このため、一例として図7に示すように、コイル15aとコンデンサ15bとで構成されたLC並列共振回路を用いて電流検出器15を構成し、この特定の周波数を可変容量回路13の容量変調周波数と一致させることにより、容量変調周波数とは異なる周波数のノイズが電流iに重畳しているときでも、電流検出器15の両端に発生する電圧V2に含まれている電圧成分のうちの電流iに起因した電圧成分をこのノイズに起因した電圧成分に対して十分に大きくすることができるため、ノイズを抑制することができる。他方、LC直列共振回路は、特定の周波数(共振周波数)において全体としてのインピーダンスが最小(ゼロ)になるという特性を有している。この場合、LC直列共振回路を構成するコンデンサ(コイルも同様)の両端電圧は最大となる。このため、一例として図8に示すように、コイル15aとコンデンサ15bとで構成されたLC直列共振回路を用いて電流検出器15を構成し、この特定の周波数を容量変調周波数と一致させると共に、コンデンサ15b(またはコイル15a)の両端電圧を電圧V2としてプリアンプ16が検出する構成を採用することにより、容量変調周波数とは異なる周波数のノイズが電流iに重畳しているときであっても、上記したLC並列共振回路と同様にして電流検出器15の両端に発生するこのノイズに起因した電圧の発生を抑制することができる。したがって、これらの共振回路で電流検出器15を構成することにより、共振回路の共振時におけるインピーダンス値を変えることで電流iが流れたときに共振回路に発生する電圧の値を任意に変更することができるため、低電圧から高電圧までの広い電圧範囲に亘って測定対象体4の電圧V1を測定することができる。しかも、共振回路の共振周波数で可変容量回路13の静電容量C1を変化させることで、共振回路に流れる電流iをより大きな電圧として検出することができるため、このノイズに起因した電圧信号の検出信号S3への混入を低減できる結果、電圧測定装置1,1B,1Cの耐ノイズ性能を高めることができる。したがって、誤動作の少ない状態で測定対象体4の電圧V1を測定することができる。また、抵抗等のインピーダンス素子や共振回路を用いて電流を電圧に変換して検出する構成に代えて、電流を直接検出する構成を採用することもできる。この構成においては、電磁誘導型の電流検出器(CT形電流検出器)を用いたり、ホール素子、磁気ブリッジ、フラックスゲートセンサ、MI(磁気インピーダンス)センサ、MR(磁気抵抗効果)センサ、GMR(巨大磁気抵抗効果)センサおよびTMR(トンネル磁気抵抗効果)センサなどの磁気センサを用いて構成することができる。
また、電圧測定装置1,1A,1B,1Cでは、プリアンプ16で生成される検出信号S3を、増幅回路22またはA/D変換回路32に直接入力する例について説明したが、フィルタ回路(図示せず)を介して検出信号S3を増幅回路22またはA/D変換回路32に直接入力することもできる。この場合、可変容量回路13の容量変調周波数と同じ周波数の信号を選択的に通過させるようにこのフィルタ回路を構成することにより、容量変調周波数とは異なる周波数のノイズが電流iに重畳しているときでも、このノイズの検出信号S3への混入を抑制することができる。したがって、電圧測定装置1,1A,1B,1Cの耐ノイズ性能を高めることができる。
また、電圧測定装置1,1A,1B,1Cを電力測定装置31に適用する例について説明したが、電圧測定装置1,1A,1B,1Cは、レーザープリンタなどの複写機における感光ドラムの表面電位を検出する表面電位計として利用することができる。また、壁内に配設されている電気配線の位置を検出する探知機として利用することもできる。これらの機器に本発明に係る電圧測定装置を用いることにより、これらの機器の信頼性(耐久性や耐候性を含む)を十分に向上させることができる。さらに、プリント基板に形成されているプリントパターンの断線等を検査する基板検査装置にも本発明を適用することができる。
また、電圧測定装置1,1A,1B,1Cでは、フィードバック電圧V4が電圧V1に達して一定になったとき、つまり、電流iがゼロアンペアになったときや両端間電圧V5がゼロボルトになったときのフィードバック電圧V4を測定対象体4の電圧V1として測定する構成を採用することにより、電圧V1を高精度で測定しているが、測定精度的に許容されるときには、電流iや両端間電圧V5が所定値(例えば数ミリアンペアや数ミリボルト)以下となったときのフィードバック電圧V4を測定対象体4の電圧V1として測定する構成を採用することもできる。また、電位差(V1−V4)が所定値(例えば数百ミリボルト)以下に達したときのフィードバック電圧V4を測定対象体4の電圧V1として測定する構成を採用することもできる。この構成を採用することにより、測定対象体4の電圧V1を許容できる精度で、より短時間に測定することができる。