JP5540180B2 - 磁界検出素子および磁界検出装置 - Google Patents

磁界検出素子および磁界検出装置 Download PDF

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Description

本発明は、磁界が印加されたという事象を記憶するするとともに、この記憶状態をリセットするために、ある定められた方向と強度の磁場をリセット信号とする磁界検出素子および検出装置に関するものである。
磁界検出装置の磁界検出素子としては、外部磁界に対し連続的にインピーダンスが変化する磁気インピーダンス素子が使用されている。しかし最近、磁界に対してステップ状にインピーダンスが変化するステップ状インピーダンス変化特性を有する磁気インピーダンス素子が発明され、研究されている。この磁界検出素子については、特開2004-340953(特許文献1)、特開2006-058236(特許文献2)で新規に発明されている。特許文献1,2では、薄膜磁性体に傾斜したストライプ状磁区構造を形成してステップ状インピーダンス変化特性を発現させた磁界検出素子が開示されている。ストライプ状磁区構造とは、磁性体の磁区がストライプ状に配位した磁区構造であり、素子磁性体の幅方向端部に還流磁区を有する磁区構造を含むものである。
このステップ状インピーダンス特性を有した磁界検出素子の利用方法として、所定の閾値磁界以上の磁界をON−OFF的に検出する、磁気スイッチがある。特許文献1に示すように、閾値磁界以下では磁界検出素子は低いインピーダンス値を示し、閾値磁界以上では高いインピーダンス値を示す(図1参照)。
地磁気と同等レベルの磁界強度を検出可能な磁界検出素子としてその構成方法と駆動方法が特許文献2で開示されている。この素子を用いた磁界検出の基本的な原理は図2に示される。図2に示される曲線は、素子の磁界検出方向に印加するバイアス磁界(磁場)と素子インピーダンスの関係図である。なお、バイアス磁界とは、センサ素子に印加する制御磁界のことである。図2の破線は、測定すべき物理量である外部磁界が−164(mOe)の場合であり、図2の実線は、外部磁界が+240(mOe)の場合である。これらの図のように外部磁界が存在する状態でバイアス磁界を掃引した場合、ステップ状インピーダンス変化が発生するバイアス磁界強度が変化する。このステップ状インピーダンス変化が発生するバイアス磁界強度は、測定量である外部磁界に比例して変化するため、これを計測することで外部磁界の計測を可能にするものである。
一方、磁性体を用いた記憶素子を利用した装置としては、ハードディスク、MRAM、垂直磁気記録、MOなど様々なものが知られている。ハードディスク、垂直磁気記録、MOは、記録メディア内部の微小領域の磁気モーメントの方向を任意に変化させこれを保持することで情報を記録している。MRAMは、微小形状の磁性体を1つの記録セルとして、この記録セルに保持される磁気モーメントの方向で情報を記憶している。
しかし、従来の記憶素子は、磁気モーメントの2極性に起因して、2値状態の記憶が一般的である。この場合、記憶状態を変化させるには、元の記憶状態である磁気モーメントの方向とは逆の磁界を印加することで記憶状態の書き換えが可能である。このような2値記憶の磁性素子を本発明の課題解決に用いた場合、外部磁界の方向によっては、素子の磁気状態転位が起こらず、過去の磁場履歴を記憶するという機能として不十分なものになる。例えば、右方向に磁化した状態に対し、右方向磁界を印加しても磁気モーメントの方向転位は生じない。
一方、磁性体を用いた3値状態の記憶については、特開2002-151660(特許文献3)に示されるように磁性薄膜を十字状星形パターンあるいは鼓状パターンに成形し、ピンド層とフリー層の帯磁方向を対角線方向にする方法が開示されている。この場合も、外部磁界の方向によっては、素子の磁気状態転位が起こらず、過去の磁界履歴を記憶するという機能として不十分なものになる。また、ピンド層の磁化方向と平行な方向の磁界に対しては、ピンド層の影響で非対称な特性を有することになる。この構造の素子は、薄膜の積層構造を有しており作製が困難である。
特開2004−340953号公報 特開2006−058236号公報 特開2002−151660号公報 T. Nakai, H. Abe, K. I. Arai: The Physics of Metals and Metallography, 101, S41 (2006). T. Nakai, K. Ishiyama, J. Yamasaki: J. Appl. Phys, 101, 09N106, (2007).
上記したようにステップ状インピーダンス特性を備えた磁界検出素子や、磁性体を用いた記憶素子に関して上記文献がある。しかしステップ状インピーダンス特性を備えた磁界検出素子は、新しい素子であり、磁区構造の転位や、その利用方法について更なる検討が必要である。本発明は、この磁界検出素子の磁区構造の転位状態を解明し、この磁界検出素子の利用方法を提供するものである。具体的には、磁界方向にかかわらず閾値以上の磁界が磁界検出素子に印加された場合に、この事象を記憶する機能を有した磁界検出素子である。さらに定められた強度と方向の磁界がリセット信号(磁界)として素子に印加されるまで記憶状態を保持することができる磁界検出素子である。本発明は、これらの特性を備えた磁界検出素子、あるいは、この磁界検出素子を利用した記憶素子および磁界検出装置を提供するものである。
本発明の磁界検出素子は、長手方向に対し傾斜した方向の磁化容易軸を有する薄膜磁性体を備え、外部磁界を印加することにより、ストライプ状磁区構造、前記薄膜磁性体の長手方向に対し平行あるいは反平行な磁気モーメントを主成分とする磁区構造に転位する特性を有し、外部磁界零において磁気モーメントの状態が前記ストライプ状磁区構造、前記薄膜磁性体の長手方向に対し平行あるいは反平行の3つの磁区構造をとりうることを特徴とする。
本発明の磁界検出素子においては、前記薄膜磁性体の長手方向に対し平行あるいは反平行な方向に閾値磁界以上の磁界を印加することで、その磁気モーメントを前記薄膜磁性体の長手方向に対し平行あるいは反平行にある磁区構造に転位し、磁気モーメントと逆方向のリセット磁界を印加することで、磁気モーメントが前記薄膜磁性体の長手方向に対し平行あるいは反平行にある磁区構造からストライプ状磁区構造に転位することを特徴とする。
本発明の磁界検出素子においては、外部磁界として零からプラスまたはマイナス方向のリセット磁界を印加し、さらに逆方向のマイナスまたはプラス方向のリセット磁界を印加したときの素子インピーダンスのダウンステップ現象の発生を検出し、その磁区構造が前記ストライプ状磁区構造、前記磁界検出素子の長手方向に対し平行あるいは反平行の3つの磁区構造のうちのいずれか1つの磁区構造であることを識別することを特徴とする。
さらに本発明の磁界検出素子は、磁界検出素子を構成する薄膜磁性体の長手方向に磁界方向がマイナス方向からプラス方向に変化させつつ印加した場合に、磁界強度が零を超えた点において、素子インピーダンスが高インピーダンス状態から低インピーダンス状態に転位する第1のインピーダンスステップが発生し、その後、磁界強度を更に増した際に素子インピーダンスが低インピーダンス状態から高インピーダンス状態に転位する第2のインピーダンスステップが発生する磁界検出素子であって、前記第1のインピーダンスステップが発生する前および前記第2のインピーダンスステップが発生した後では、薄膜磁性体長手方向に対し平行あるいは反平行な磁気モーメントを主成分とする磁区構造であり、前記第1と第2のインピーダンスステップ現象が生ずる磁界強度の範囲では、長手方向に対して傾斜した磁区がストライプ状に薄膜磁性体の長手方向に並んだ磁区構造であり、前記第1と第2のインピーダンスステップ現象が生ずる磁界強度範囲の磁界から磁界を零にした際に、低インピーダンス状態であることを特徴とする。
本発明の記憶素子は上記した磁界検出素子を用いて、外部磁界零において生じ得る前記ストライプ状磁区構造、前記薄膜磁性体の長手方向に対し平行あるいは反平行の3つの磁区構造の状態を記憶情報とすることを特徴とする。さらに、薄膜磁性体の磁区構造をその高周波インピーダンスを計測することで検出し、読み出し動作とすることを特徴とする。
本発明の記憶検出装置は上記した磁界検出素子を用いて、薄膜磁性体長手方向に対し平行あるいは反平行な磁気モーメントを主成分とする磁区構造が磁界零で存在する前記磁界検出素子に対して、薄膜磁性体長手方向で磁気モーメントと逆方向のリセット磁界を前記磁界検出素子に印加することでストライプ状磁区構造に転位させる機能、ならびに、ストライプ状磁区構造を前記磁界検出素子の初期状態とし、薄膜磁性体長手方向に対し平行あるいは反平行の磁区構造への転位を検出することで、前記磁界検出素子に印加された閾値以上の磁界の有無を事後に判定する機能を有することを特徴とする。
さらに磁界検出装置においては、磁区構造を薄膜磁性体に通電する高周波電流に対する高周波インピーダンスで検出することができる。
すなわち、磁界検出素子に印加された、所定の閾値磁界以上の磁界印加の事象を記憶できて、必要に応じてこの記憶状態をリセットできる、記憶機能とリセット機能を有した磁界検出素子が可能となる。
なお、本発明の説明におけるリセットとは、本発明の磁界検出素子の磁区構造をストライプ状磁区構造にし、低インピーダンス状態にすることを言う。また、閾値磁界とは、印加磁界を変化させた際にインピーダンスがupステップ現象(すなわち、低インピーダンス状態から高インピーダンス状態に転位する現象)を生じる磁界を言う。
本発明の磁界検出素子は、絶対値として閾値以上の磁界が素子に印加された場合に、この事象を記憶する機能を有した磁界検出素子であり、定められた強度と方向の磁界がリセット信号として素子に印加されるまで記憶状態を保持することができるという従来に無い優れた効果が得られる。
本発明の磁界検出素子は、長手方向に対し傾斜した方向の磁化容易軸を有する薄膜磁性体を備え、絶対値として閾値以上の磁界が印加された場合に特定の磁区構造に転位し、この状態を維持、記憶することを特徴とする。その磁界検出素子の磁区構造は、外部磁界零の状態において、磁気モーメントが磁性体の長手方向に対し平行方向、反平行方向、ストライプ状磁区構造である3種類である。磁気モーメントが素子の長手方向に対し平行方向、反平行方向の場合には高インピーダンス状態となり、ストライプ状磁区構造の場合には低インピーダンスとなる。これらの3つの磁気モーメントは印加される磁界強度によりステップ的に変化する。
すなわちストライプ状磁区構造を初期状態として、閾値磁界以上の磁界印加により磁区構造は磁性体素子長手方向に対し平行あるいは反平行方向に磁気モーメント主成分が揃った磁区構造に転位する。その後外部磁界が除去された後もこの磁区状態を記憶する素子が可能になる。さらに磁界検出素子は、所定の閾値磁界以上の磁界が印加されたという事象を記憶できて、必要に応じてこの記憶状態をリセットできる。このように記憶機能とリセット機能を有した磁界検出素子が可能となる。この特性を生かして、磁界検出素子の磁性体の長手方向に対し磁界の方向によらず閾値磁界を閾値として動作する磁気スイッチが可能になる。この磁気スイッチは、絶対値としての閾値磁界を越える磁界が素子に印加された場合、その事象を記憶する機能を有する。
本発明の磁界検出素子は上記した特徴を備え、これらの特徴を生かして記憶素子や、磁界検出装置の磁界検出素子として利用できる。以下に実施例として、本発明の磁界検出素子の素子特性や動作原理、磁界検出素子を利用した記憶素子や磁界検出装置について、詳細に説明する。
実施例1として、本発明の記憶機能とリセット機能を有した磁界検出素子の素子特性および動作原理について図3〜8を参照して説明する。図3に磁界検出素子の概略図を示し、図4に一例としての素子特性図を示す。図5に磁界検出素子をリセット状態にするリセット方法を説明するための特性図を示す。図6に高インピーダンス状態に転位するときの特性図、図7に高インピーダンスに転位させた後、外部磁界を零にしたときの特性図を示す。図8には本発明の磁界検出素子の特性図と磁区構造の模式図(a)、(b)、(C)を示す。
図3に示す磁界検出素子10は、基板11上に磁性体12と、その磁性体12の両端に設けられた電極13から構成されている。磁性体12としては、例えばCoZrNb薄膜で作製することができる。磁性体の基板面形状のアスペクト比(長さ/幅)は大きく、その長さ(紙面の左右)方向に流れる電流を検出することで磁性体の磁区構造を検出できる。磁界検出素子の作製方法は、特許文献1および2に詳細に説明されていることから、ここでは簡単に説明する。素子形状に成形した短冊形状軟磁性薄膜に、高周波電流通電方向から所定の角度傾斜した方向に一軸磁気異方性の磁化容易軸を形成する。この結果として、磁性薄膜に傾斜したストライプ状磁区構造を形成することでステップ状インピーダンス変化特性を発現させることができる。以下の実施例では、ここで示した素子インピーダンスと磁区構造の対応関係に基づき説明する。
図4に、CoZrNb薄膜で作製した本発明の磁界検出素子におけるステップ状磁気インピーダンス特性の一例を示す。ここでの磁界検出素子は、磁性体12として素子幅20μm、膜厚3μm、素子長3000μmの寸法である。磁化としては、素子短軸方向を基準として磁化容易軸を膜面内方向に65度に傾けた方向に磁気異方性を誘導した磁界検出素子である。図は、磁界検出素子に周波数500MHzの高周波電流を通電した際の磁界と素子インピーダンスの関係である。ステップ状磁気インピーダンス特性とは、磁界検出素子に特有の閾値的磁界であるステップ点において素子インピーダンスが急激に増加あるいは減少する特性である。
このインピーダンス変化現象は、素子磁性体の磁区構造と対応していることが非特許文献1で明らかにされている。素子磁性体の磁区構造は、ステップ点を介してインピーダンスが一段低い領域ではストライプ状磁区構造を有している。またインピーダンスが一段高い領域では磁界検出方向に平行あるいは反平行方向に磁気モーメントが向いた磁区構造になっている。また図4に示されるように、この特性は、磁界の増加時と減少時でヒステリシスを有した特性を有する。
さらにステップ点によりインピーダンスが変化することを利用して、磁界を測定することができる。本ステップ特性を用いた磁界測定方法としては、素子インピーダンスのステップ的変化を発生させる磁界を閾値として、この閾値を超える外部磁界の存在を検出する。閾値の検出としては、例えば素子インピーダンスのステップ的変化に対応した電気信号を検出する方法や、その電気信号を微分処理することで発生するパルス信号を用いることができる。
図4に示す本発明の磁界検出素子の素子特性について詳細に説明する。磁界検出素子のインピーダンス特性は、素子に加わる磁界が増加する場合には、+250(mOe)付近で素子のインピーダンスがステップ的に減少してすぐに増加している。また磁界が減少する場合には、−250(mOe)付近でこのインピーダンスの減少増加が発生する。図4に示すインピーダンス特性は、インピーダンスの減少と増加するステップ点に挟まれた低インピーダンス領域が磁界零の点を挟んで左右に分離して存在する。これらの低インピーダンス領域の幅が、50(mOe)程度と狭い特性であることが特徴である。なお、本明細書の図における、磁界のプラス方向とマイナス方向とは、絶対的な方向ではなく相対的な方向であるが、素子の長手方向の一方をプラス方向とした場合に、その逆方向をマイナス方向ということとして説明する。
ここで、図4の特性を示した磁界検出素子において、磁界を負の領域から増加させ、+250(mOe)の低インピーダンス領域に入るように制御し、ここから磁界を零に戻すように制御した場合の素子特性を図5に示す。このような磁界の経路で素子を制御した場合、素子インピーダンスは、磁界零の状態において低インピーダンスとすることができる。このようにして実現した零磁界近傍で低インピーダンスを示す状態は、素子に印加される外部磁界が図4に示す2つの低インピーダンス領域で挟まれた磁界範囲では維持される。すなわち、低インピーダンス状態からステップ状に高インピーダンス状態に変化するまでの外部磁界範囲、すなわちおおよそ絶対値250(mOe)以下の外部磁界範囲において磁界変動する場合には、素子は低インピーダンス状態に維持される特性を有する。
磁界検出素子に印加される外部磁界が、図4に示す低インピーダンス状態から高インピーダンス状態にステップ的に変化する磁界強度を絶対値として超えた場合、素子のインピーダンスは高インピーダンスに変化する。この様子を図6に示す。図6においては磁界を零から負の領域に変化させる。素子インピーダンスは、零の磁界から−250(mOe)になったときに、低インピーダンス状態から高インピーダンス状態にステップ的に変化している。この低インピーダンス状態から高インピーダンス状態に変化させる磁界が、閾値磁界である。この後、反対方向に負の磁界領域から零磁界に変化させても、磁界検出素子は図7のように高インピーダンス状態を保持している。
このような、高インピーダンスと低インピーダンスの状態がインピーダンスステップ点を介して存在する現象の原理は、非特許文献2にて説明されている。非特許文献2では、ストライプ状磁区構造と検出方向に磁気モーメントが揃った状態のエネルギー状態の対応関係から高インピーダンスと低インピーダンスの状態を説明している。非特許文献2の原理に基づき、磁界検出素子が示すそれぞれのインピーダンス特性における磁性体の磁気モーメントの磁区構造の模式図を図8に示す。
図8には磁界と素子インピーダンスの特性図と、それぞれのインピーダンス状態における磁区構造の模式図(a)、(b)、(C)を示す。(a)は還流磁区を有したストライプ状磁区構造であり、低インピーダンス状態となる。(b)あるいは(C)は磁区の方向が一方向(長手方向に反平行あるいは平行)にまとまった単磁区構造であり、高インピーダンス状態となる。図8に示すように、ストライプ状磁区構造と長手方向に反平行あるいは平行にまとまった単磁区構造では、インピーダンスが大きく違っている。そして、これら3つの状態が外部磁界零の近傍でいずれの状態も存在し得ることが本発明の原理となる。本発明においては、例えば図8(c)のように磁界のプラス方向に主として磁区(磁気モーメント)がまとまった状態を長手方向に対し平行、図8(b)のように磁界のマイナス方向に主として磁区がまとまった状態を長手方向に対し反平行として説明する。また単に長手方向、長手方向の逆方向とも呼称することがある。
上記したような特性を備えた磁界検出素子は、所定の閾値磁界以上の強度を有する外部磁界を印加した場合には、素子磁性体の磁区構造が初期状態と異なる磁区構造に転位する。ここで、初期状態とは外部磁界零でストライプ状磁区構造の低インピーダンスとなる素子状態である。その後外部磁界を零に戻した後も、転位後の磁区構造を維持する特性を有する磁界検出素子が実現する。さらに、磁界印加後の磁区状態を初期状態に戻すためには、所定の方向と強度を有した制御可能なバイアス磁界(リセット磁界)を素子に印加することで状態をリセットすることが可能になる。
本発明の磁界検出素子を駆動するアルゴリズムを示すと以下のようになる。はじめに、素子にリセット磁界を印加して、ストライプ状磁区構造の低インピーダンス状態(初期状態)にしておく。磁界検出素子に所定の閾値以上の磁界が印加されると、素子の磁区構造が転位して、素子インピーダンスが高インピーダンスになる。この高インピーダンスの状態は、外部磁界が零近傍のバックグラウンド状態に戻っても維持される。従って、磁界検出素子のインピーダンス状態あるいは磁区構造を測定することで磁界検出素子に閾値以上の外部磁界が印加されたか否かが検出できる。検出後の高インピーダンス状態は、リセット磁界を印加することによって低インピーダンス状態に初期化できる。なお、リセット磁界とは、インピーダンスがdownステップ現象を生ずる磁界からupステップ現象を生ずる間の範囲の磁界である。この間の磁界を本発明に係る磁界検出素子に印加し、その後磁場を零に戻した場合に、磁界検出素子がストライプ状磁区構造になる磁界を言う。
また、本発明の磁界検出素子は、長手方向に対し傾斜した方向の磁化容易軸を有した薄膜磁性体構造を有する。その磁界検出素子の特性として、外部磁界の印加により、ストライプ状磁区構造と素子長手方向に対し平行あるいは反平行な磁気モーメントを主成分とする磁区構造に構造転位することができる。しかも、このインピーダンスステップの生じる磁場強度の安定性が高い。そのためリセット磁場を印加した際にリセットできないという問題がなく、安定したリセット動作が得られる。あるいは、閾値以上の磁場を印加したが磁区構造が転位せずインピーダンスステップが発生しないなどの誤作動の生じる可能性が低く、安定した動作が期待できる。本発明によれば、インピーダンスステップの生じる磁場強度の安定性が高く、安定した動作可能な磁界検出素子が得られる。
実施例2として、本発明の磁界検出素子の作製方法と、その素子特性について図9、10を参照して説明する。図9、10には、磁性体の大きさおよび作製方法が異なる磁界検出素子のそれぞれの素子特性図を示す。
図9に磁界と素子インピーダンスの関係を示した磁界検出素子は、その磁性体の大きさとして素子幅20μm、膜厚3μm、素子長3000μmの寸法である。その磁区構造は素子短軸方向を基準として磁化容易軸を膜面内方向に角度制御した素子である。パラメータとして磁化容易軸角度を55度、65度、75度に磁気異方性を誘導した素子の特性を、図の上段、中段、下段に示す。磁気異方性は真空磁界中熱処理で誘導した。熱処理条件は400℃、3k(Oe)の回転磁界中熱処理を2時間行い、その後に、400℃、3k(Oe)の静磁界中熱処理を1時間行った。静磁界中熱処理における磁界印加方向は素子短軸方向を基準として55度、65度、75度とした。
図9は、磁界を−4000(mOe)から+4000(mOe)まで増加させ、連続して+4000(mOe)から−4000(mOe)まで減少させた場合の素子インピーダンスの変化を示す。素子に通電した高周波の周波数は500MHzである。図9から得られるように、磁化容易軸の方向制御で素子特性の制御が可能である。磁化容易軸角度が55度の場合は、インピーダンスが一段低い領域の幅が広く、この場合リセット磁界の強度範囲を大きく取れることから好ましい特性である。一方、磁化容易軸角度が65度の場合は、インピーダンスが一段低い領域の幅が狭いため、外部磁界の変動が原因で素子が誤ってリセットされてしまう危険性が小さいことから好ましい特性である。磁化容易軸角度が75度の場合は、インピーダンスが一段低い領域の幅が狭く、高インピーダンス状態と低インピーダンス状態のインピーダンス差が小さくなる。
このように磁化容易軸角度が55度、65度、75度の磁界検出素子における磁界と素子インピーダンス特性は異なっている。しかし磁化容易軸角度が55度、65度、75度のいずれの場合にも、外部磁界零の近傍において高インピーダンス特性を有している。これらは、いずれも本発明の磁界検出素子としての要求を満たすものである。
図10は、素子幅40μm、膜厚3μm、素子長3000μmの寸法で、素子短軸方向を基準として磁化容易軸を膜面内方向に角度制御した素子特性である。パラメータは図9と同じく、磁化容易軸角度を55度、65度、75度に磁気異方性を誘導した素子の特性である。測定方法も図9と同じである。この場合、磁界零の近傍において、全ての条件で低インピーダンスとなる。このことは、外部磁界の履歴を高インピーダンス状態で記憶保持できないことを示しており、本寸法条件の素子は、本発明に使用することが出来ない。
この結果から、本発明の磁界検出方法と装置に適用する素子の特性は、磁化容易軸の方向で制御できる。本発明に係る磁界検出素子は上記の形状等のパラメータに限られるものではなく、少なくとも、本材料組成の素子において概ね、幅10〜30μm、厚み2〜4μm、磁化容易軸角度55〜75度とすることにより本発明に係る磁界検出素子を得る事ができる。素子の膜厚条件にもよるが、本材料組成の素子においては、概略素子幅20μm以下がより望ましい。
第3実施例として、本発明の磁界検出素子を利用した磁界検出装置を、図11を参照して説明する。図11には1例として、磁界検出装置の回路構成図を示す。
図11に示す磁界検出装置において、1は本発明の磁界検出素子からなるセンサ素子、2はセンサ素子にリセット磁界を印加するバイアス磁界発生コイル、3はバイアス磁界を制御する電気回路、4はセンサ素子に高周波信号を通電する高周波電源あるいはパルス信号発生装置、5は素子インピーダンスに対応した電気信号を検出する電圧検出器である。センサ素子1に、バイアス磁場制御回路3により制御されたバイアス磁場発生コイル2からの磁界を印加する。この状態で高周波発信器4から高周波電流を通電し、センサ素子1の電圧を電圧検出器5で検出する。このようにして磁界と素子インピーダンスの関係をもとめることができる。ここでセンサ素子1としては、上記した実施例1,2の磁界検出素子を使用することができる。
本磁界検出装置は、実施例1に示したアルゴリズムに従い制御される。すなわち、はじめに、センサ素子1にバイアス磁界発生コイル2でリセット磁界を印加して、ストライプ状磁区構造の低インピーダンス状態(初期状態)にしておく。この状態で素子インピーダンスを電圧検出器5でモニタすることで外部磁界を測定する。素子に所定の閾値以上の磁界が印加されると、素子の磁区構造が転位して素子インピーダンスが高インピーダンスになる。
この高インピーダンスの状態は、外部磁界が零近傍のバックグラウンド状態に戻っても維持される。従って、素子のインピーダンス状態を測定することで素子に閾値以上の外部磁界が印加されたか否かが検出できる。検出後の高インピーダンス状態は、リセット磁界を印加することによって低インピーダンス状態に初期化できる。本装置において、高周波電源4は、連続的に通電する必要がなく、間歇的な通電による素子インピーダンスのモニタリングでも素子の記憶機能のため瞬間的に発生した強磁界であっても見逃すことなく検出できる。
上記は、素子の磁区構造あるいは磁区構造の転位の有無をインピーダンス値の高低で判断し、閾値以上の磁界の印加があったか否かを判断する例である。しかし、素子にリセット磁界を印加した場合のインピーダンスステップの有無により判断しても良い。この場合にはリセット磁界を印加した際に、インピーダンスステップが発生した場合は閾値以上の磁界が印加されていたことが判断できる。また発生しなかった場合は閾値以上の磁界の印加がなかったことが判断できる。
さらに、閾値以上の磁界を印加した場合のインピーダンスステップを検出し、この発生パターンを検出することにより判断しても良い。この場合には、例えばプラス方向の閾値以上の磁界を印加した際に、インピーダンスのdownステップとupステップとが発生した場合はマイナス方向の閾値以上の磁界が印加されていたことが判断できる。インピーダンスステップが発生しなかった場合はプラス方向の閾値以上の磁界が印加されていたことが判断できる。インピーダンスのupステップのみ発生した場合は閾値以上の磁界の印加がなかったことが判断できる。
逆方向にマイナス方向の閾値以上の磁界を印加した際に、インピーダンスのdownステップとupステップとが発生した場合はプラス方向の閾値以上の磁界が印加されていたことが判断できる。インピーダンスステップが発生しなかった場合はマイナス方向の閾値以上の磁界が印加されていたことが判断できる。インピーダンスのupステップのみ発生した場合は閾値以上の磁界の印加がなかったことが判断できる。この結果から、本発明の磁界検出装置によりセンサ素子(磁界検出素子)のインピーダンス状態を測定することで素子に閾値以上の外部磁界が印加されたか否かが検出できる。
磁界検出装置は本発明の磁界検出素子を備え、初期状態として磁界検出素子の磁区構造をストライプ状磁区構造とする。この磁界検出素子は素子特有の閾値磁界以上の磁界を印加されることに伴い磁気モーメントが素子長手方向に平行、あるいは反平行方向にある状態に転位する。磁界検出素子は、その後外部磁界が零になった際に磁気モーメントが平行方向、あるいは反平行方向にある状態であることを維持する。磁界検出装置は、その素子インピーダンスを測定する機能を有し、閾値以上の外部磁界が印加されたか否かが検出することができる。
さらに磁界検出装置は、磁気モーメントが素子長手方向に対し平行あるいは反平行方向にある状態において、その磁気モーメントと逆方向で素子に特有な磁界強度範囲である磁界(リセット磁界)を印加することでストライプ状磁区構造に転位させる機能を有した装置である。このようにリセット磁界を印加し、そのときのインピーダンス変化から磁区構造が検出でき、素子に印加された閾値以上の磁界の有無を事後に判定することができる。
実施例4として、本発明の磁界検出素子のリセット方法を図12〜16を参照して説明する。本発明の磁界検出素子をリセットする方法として、例えば素子長手方向に対して平行方向を主成分とした磁気モーメントと逆方向(反平行方向)の磁界を印加する方法がある。また磁気モーメントの方向が不明である場合などにも正しくリセットする方法として、2方向にリセット磁界を印加する方法がある。この方法は、リセット前に磁気モーメントの方向を知る必要がなく実用的である。このリセット方法を、図12、図13、図14、図15、図16により説明する。
図12、図13、図14、図15、図16には、磁界検出素子のインピーダンス特性の磁界による変化を細実線で示し、リセット方法およびその際の動作(リセット時の磁界の変化と、これによるインピーダンスの変化)を太点線で示している。なお、本来、太点線は概ね細実線上を変化するのであるが、理解が容易なように太点線を若干ずらして描いている。
本発明におけるリセットとは、本発明の磁界検出素子の磁区構造をストライプ状磁区構造にし、低インピーダンス状態にすることである。またリセット磁界とは、インピーダンスがdownステップ現象を生ずる磁界からupステップ現象を生ずる間の範囲の磁界で、その後磁場を零に戻した場合に、磁気素子がストライプ状磁区構造になる磁界である。さらに閾値磁界とは、印加磁界を変化させた際にインピーダンスがupステップ現象を生じる磁界のことである。また、upステップ現象とは低インピーダンス状態から高インピーダンス状態に転位する現象であり、downステップ現象とは高インピーダンス状態から低インピーダンス状態に転位する現象である。
最初に、図12に図示したリセット方法を説明する。プラス方向に強い磁界(閾値磁界以上)が印加された磁界検出素子に対し、磁界を0からプラス方向、その後マイナス方向とし、再び0に戻すリセット方法である。プラス方向に強い磁界(閾値磁界以上)が印加された磁界検出素子の磁界を0に戻した場合に、本発明に係る磁界検出素子は図12の位置1の状態にあり、高インピーダンス状態である。この高インピーダンス値は図13の位置1’のインピーダンス値とほぼ同じである。
この状態(位置1)から磁界検出素子にプラス方向にリセット磁界を印加し位置2、その後マイナス方向にリセット磁界を印加し位置3の状態に変化させる。この位置2から位置3への過程のマイナス磁界でdownステップ現象が発生し、磁界検出素子は低インピーダンス状態となる。その後磁界を0にすることで位置4となり、低インピーダンス状態を維持する。このように磁界検出素子は、図12の位置1→2→3→4のように変化し、リセットされ低インピーダンス状態となる。このようにプラス、マイナス両方向のリセット磁界を印加することでリセットし、磁界検出素子を低インピーダンス状態とすることができる。
図13に図示したリセット方法は、プラス方向に強い磁界(閾値磁界以上)が印加された磁界検出素子に対し、磁界を0からマイナス方向、その後プラス方向とし、再び0に戻す方法である。プラス方向に強い磁界(閾値磁界以上)が印加された磁界検出素子の磁界を0に戻した場合に、本発明に係る磁界検出素子は図13の位置1’の状態にあり、高インピーダンス状態である。
位置1’の状態から磁界検出素子にマイナス方向にリセット磁界を印加し位置2’の状態に変化させる。この位置1’から位置2’の過程のマイナス磁界でdownステップ現象が発生し、磁界検出素子は低インピーダンス状態となる。その後プラス方向にリセット磁界を印加し位置3’、その後磁界を0にすることで位置4’となり、低インピーダンス状態を維持する。このように磁界検出素子は、図13の位置1’→2’→3’→4’のように変化し、リセットされ低インピーダンス状態となる。このようにマイナス、プラス両方向のリセット磁界を印加することでリセットし、磁界検出素子を低インピーダンス状態とすることができる。
図14に図示したリセット方法は、マイナス方向に強い磁界(閾値磁界以上)が印加された磁界検出素子に対し、磁界を0からプラス方向、その後マイナス方向とし、再び0に戻す方法である。マイナス方向に強い磁界(閾値磁界以上)が印加された磁界検出素子の磁界を0に戻した場合に、本発明に係る磁界検出素子は図14の位置1’’の状態にあり、高インピーダンス状態である。このインピーダンス値は図12および図13、図15の位置1,1’,1’’’とのインピーダンス値とほぼ同じである。
位置1’’の状態から磁界検出素子にプラス方向にリセット磁界を印加し位置2’’の状態に変化させる。この位置1’’から位置2’’の過程のプラス磁界でdownステップ現象が発生し、磁界検出素子は低インピーダンス状態となる。その後マイナス方向にリセット磁界を印加し位置3’’、その後磁界を0にすることで位置4’’となり、低インピーダンス状態を維持する。このように磁界検出素子は、図14の位置1’’→2’’→3’’→4’’のように変化し、リセットされ低インピーダンス状態となる。このようにプラス、マイナス両方向のリセット磁界を印加することでリセットし、磁界検出素子を低インピーダンス状態とすることができる。
図15に図示したリセット方法は、マイナス方向に強い磁界(閾値磁界以上)が印加された磁界検出素子に対し、磁界を0からマイナス方向、その後プラス方向とし、再び0に戻す方法である。マイナス方向に強い磁界(閾値磁界以上)が印加された磁界検出素子の磁界を0に戻した場合に、本発明に係る磁界検出素子は図15の位置1’’’の状態にあり、高インピーダンス状態である。
位置1’’’の状態から磁界検出素子にマイナス方向にリセット磁界を印加し位置2’’’、その後プラス方向にリセット磁界を印加し位置3’’’状態に変化させる。この位置2’’’から位置3’’’の過程のプラス磁界でdownステップ現象が発生し、磁界検出素子は低インピーダンス状態となる。その後磁界を0にすることで位置4’’’となり、低インピーダンス状態を維持する。このように磁界検出素子は、図15の位置1’’’→2’’’→3’’’→4’’’のように変化し、リセットされ低インピーダンス状態となる。このようにプラス、マイナス両方向のリセット磁界を印加することでリセットし、磁界検出素子を低インピーダンス状態とすることができる。
磁気モーメントの方向と同じ方向のリセット磁界の印加だけでは図12に示す位置1→2の変化をするに過ぎず、インピーダンスは高インピーダンス状態を維持する。このようにリセットできない場合が生じうる。しかし両方向の磁界を印加することで確実にリセットを行う効果を得ることができる。
図16に図示したリセット方法は、低インピーダンス状態位置1’’’’にある磁界検出素子に対し、前記の一連のリセット動作を行った場合である。このときの磁界検出素子のインピーダンス変化を図16に示す。磁界検出素子は図16の位置1’’’’の状態にあり、低インピーダンス状態である。
磁界検出素子に位置1’’’’からプラス方向にリセット磁界を印加し位置2’’’’、その後マイナス方向にリセット磁界を印加し位置3’’’’、その後磁界を0にして位置4’’’’に変化させる。このように図16の位置1’’’’→2’’’’→3’’’’→4’’’’と変化する。しかしこの変化に対し磁界検出素子は、元々低インピーダンス状態であり、downステップ現象もupステップ現象も発生せず、その低インピーダンス状態を保つことになる。
このようにリセット前の状態が高インピーダンス状態でも低インピーダンス状態でも同じリセット動作により、どの状態でも同様にリセット状態である低インピーダンス状態にすることができる。絶対値として閾値磁界よりも小さいプラス、マイナス両方向のリセット磁界を印加することでリセットし、磁界検出素子を低インピーダンス状態とすることができる。要するに、プラス方向のリセット磁界とマイナス方向のリセット磁界を磁界検出素子に少なくとも1回ずつ印加することによって、確実に、磁界検出素子をリセット状態にすることができる。
実施例5として、本発明の磁界検出素子を記憶素子としたメモリ素子の動作について図12〜図16を参照して説明する。これらの図12〜16は、前記した実施例4のリセット動作における図であり、このときに発生するdownステップ現象を利用して読み出し動作を行うメモリ素子である。
図12、13は、磁界検出素子にプラス方向に強い磁界(閾値磁界以上)を印加した磁界検出素子の磁界を0に戻した状態からのリセット時のインピーダンスの変化である。図14、15は、磁界検出素子にマイナス方向に強い磁界(閾値磁界以上)を印加した磁界検出素子の磁界を0に戻した状態からのリセット時のインピーダンスの変化である。図16は、もともと低インピーダンス状態である磁界検出素子のリセット時のインピーダンスの変化を示す。
ここで、リセット動作時のインピーダンスの変化に着目する。図12、13に示す磁界検出素子は、プラス方向に強い磁界(閾値磁界以上)を印加され、高インピーダンス状態にある。この状態で磁界を0に戻しリセットした場合には、マイナス方向のリセット磁界印加時にdownステップ現象が発生している。一方図14、15に示す磁界検出素子は、マイナス方向に強い磁界(閾値磁界以上)を印加され、高インピーダンス状態にある。この状態で磁界を0に戻しリセットした場合には、プラス方向のリセット磁界印加時にdownステップ現象が発生している。また図16に示す磁界検出素子は、リセットされ、低インピーダンス状態にある。この状態で磁界を0に戻しリセットした場合には、プラスおよびマイナス方向のリセット磁界が印加されてもdownステップ現象は発生しない。
このように磁界検出素子は、プラスあるいはマイナス方向に磁化され高インピーダンスの場合には、マイナスあるいはプラス方向のリセット磁界でdownステップ現象が発生している。また低インピーダンスの場合には、downステップ現象は発生しない。プラスあるいはマイナス方向に磁化され高インピーダンスの場合や、低インピーダンスの場合のリセットにおける特性変化は、それぞれが異なっていることになる。したがって、この現象を利用することにより本発明に係る磁界検出素子を3値記録素子として使用することが可能である。すなわち、下記のような3値記憶素子となる。
(i)メモリへの書き込みとして、磁界検出素子にプラス方向に強い磁界(閾値磁界以上)を印加し磁界を0に戻した状態の高インピーダンス状態を「+1」とする。読み出し動作としてリセット動作を行い、マイナス方向のリセット磁界印加時にdownステップ現象が発生することを検出することにより再生(読み出し)が可能となる。
(ii)メモリへの書き込みとして、磁界検出素子にマイナス方向に強い磁界(閾値磁界以上)を印加し磁界を0に戻した状態の高インピーダンス状態を「−1」とする。読み出し動作としてリセット動作を行い、プラス方向のリセット磁界印加時にdownステップ現象が発生することを検出することにより再生(読み出し)が可能となる。
(iii)メモリへの書き込みとして、所定の磁界(リセット磁界)を印加し、磁界検出素子をストライプ状磁区構造にした状態の低インピーダンス状態を「0」とする。読み出し動作としてリセット動作を行い、downステップ現象が発生しないことにより再生(読み出し)が可能となる。
磁界検出素子にプラス方向またはマイナス方向の閾値磁界以上の磁界を印加し、+1または−1を書き込み、リセット動作で、0を書き込む。また読み出し動作としてリセット動作を行い、マイナス方向またはプラス方向の磁界印加時にステップ現象が検出された場合に+1または−1を読み出し、ステップ現象が検出されない場合に0を読み出す。このようにして+1、0、−1の3値の記録(書き込み)および読み出しが可能な磁気メモリが実現できる。すなわち、本発明に係る磁界検出素子のストライプ状磁区構造、素子長手方向に対し平行あるいは反平行な磁気モーメントを主成分とする磁区構造の3つを記録状態とすることができる。リセット時のインピーダンスステップの有無により前記3つの記録状態の識別が可能な磁気メモリを得る事ができる。
このように、本発明に係る磁界検出素子を3値記録の磁気メモリとして使用する場合には、リセット動作を読み出しの際に利用するので、再生後に記録状態が初期状態(低インピーダンス状態)に戻る。そのため、1回のみ再生可能な磁気メモリとしての利用が可能である。また、読み出したデータにより磁界検出素子にプラス方向またはマイナス方向の閾値磁界以上の磁界を印加し再書き込みすることで、繰り返し使用できる磁気メモリが得られることは勿論である。
以上本願発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本願発明は前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
従来例における磁界検出素子のインピーダンス特性図である。 従来例における磁界検出方法を説明するための特性図である。 本発明における磁界検出素子の概略図である。 本発明における磁界検出素子の代表的な素子特性図である。 本発明における磁界検出素子が高インピーダンス状態から低インピーダンス状態にリセットするときの特性図である。 本発明における磁界検出素子が低インピーダンス状態から高インピーダンス状態に転位するときの特性図である。 図6に示した高インピーダンス状態に転位した後、外部磁界を零にする場合の特性図である。 本発明の磁界検出素子における特性図と、その磁区構造の模式図(a)、(b)、(C)である。 実施例2における作製方法により作製された磁界検出素子の特性図である。 実施例2における他の作製方法により作製された磁界検出素子の特性図である。 本発明の第3実施例を示す磁界検出装置の一例を示す構成図である。 本発明の磁界検出素子における第1のリセット方法を説明するための磁界と素子インピーダンスの模式図である。 本発明の磁界検出素子における第2のリセット方法を説明するための磁界と素子インピーダンスの模式図である。 本発明の磁界検出素子における第3のリセット方法を説明するための磁界と素子インピーダンスの模式図である。 本発明の磁界検出素子における第4のリセット方法を説明するための磁界と素子インピーダンスの模式図である。 本発明の磁界検出素子における第5のリセット方法を説明するための磁界と素子インピーダンスの模式図である。
符号の説明
1 センサ素子(磁界検出素子)
2 バイアス磁場発生コイル
3 バイアス磁場制御回路
4 高周波発信器あるいはパルス発信器
5 電圧検出器
10 磁界検出素子
11 基板
12 磁性体
13 電極

Claims (3)

  1. 長手方向に対し傾斜した方向の磁化容易軸を有する薄膜磁性体を備えた磁界検出素子であって、外部磁界を印加することにより、ストライプ状磁区構造、前記薄膜磁性体の長手方向に対し平行あるいは反平行な磁気モーメントを主成分とする磁区構造に転位する特性を有し、外部磁界零において磁気モーメントの状態が前記ストライプ状磁区構造、前記薄膜磁性体の長手方向に対し平行あるいは反平行の3つの磁区構造をとることができ、
    前記磁化容易軸の角度が55〜75度であり、
    前記薄膜磁性体の長手方向に対し平行あるいは反平行な方向に閾値磁界以上の磁界を印加することで、その磁気モーメントを前記薄膜磁性体の長手方向に対し平行あるいは反平行にある磁区構造に転位し、磁気モーメントと逆方向のリセット磁界を印加することで、磁気モーメントが前記薄膜磁性体の長手方向に対し平行あるいは反平行にある磁区構造からストライプ状磁区構造に転位することを特徴とする磁界検出素子を用いた磁界検出装置であって、薄膜磁性体長手方向に対し平行あるいは反平行な磁気モーメントを主成分とする磁区構造が磁界零で存在する前記磁界検出素子に対して、薄膜磁性体長手方向で磁気モーメントと逆方向のリセット磁界を前記磁界検出素子に印加することでストライプ状磁区構造に転位させる機能、ならびに、ストライプ状磁区構造を前記磁界検出素子の初期状態とし、薄膜磁性体長手方向に対し平行あるいは反平行の磁区構造への転位を検出することで、前記磁界検出素子に印加された閾値以上の磁界の有無を事後に判定する機能を有することを特徴とする磁界検出装置。
  2. 磁界検出素子を構成する薄膜磁性体の長手方向に磁界方向がマイナス方向からプラス方向に変化させつつ印加した場合に、磁界強度が零を超えた点において、素子インピーダンスが高インピーダンス状態から低インピーダンス状態に転位する第1のインピーダンスステップが発生し、その後、磁界強度を更に増した際に素子インピーダンスが低インピーダンス状態から高インピーダンス状態に転位する第2のインピーダンスステップが発生する磁界検出素子であって、前記第1のインピーダンスステップが発生する前および前記第2のインピーダンスステップが発生した後では、薄膜磁性体長手方向に対し平行あるいは反平行な磁気モーメントを主成分とする磁区構造であり、前記第1と第2のインピーダンスステップ現象が生ずる磁界強度の範囲では、長手方向に対して傾斜した磁区がストライプ状に薄膜磁性体の長手方向に並んだ磁区構造であり、前記第1と第2のインピーダンスステップ現象が生ずる磁界強度範囲の磁界から磁界を零にした際に、低インピーダンス状態であり、
    前記薄膜磁性体の長手方向に対し傾斜した方向の磁化容易軸を有し、
    前記磁化容易軸の角度が55〜75度であることを特徴とする磁界検出素子を用いた磁界検出装置であって、薄膜磁性体長手方向に対し平行あるいは反平行な磁気モーメントを主成分とする磁区構造が磁界零で存在する前記磁界検出素子に対して、薄膜磁性体長手方向で磁気モーメントと逆方向のリセット磁界を前記磁界検出素子に印加することでストライプ状磁区構造に転位させる機能、ならびに、ストライプ状磁区構造を前記磁界検出素子の初期状態とし、薄膜磁性体長手方向に対し平行あるいは反平行の磁区構造への転位を検出することで、前記磁界検出素子に印加された閾値以上の磁界の有無を事後に判定する機能を有することを特徴とする磁界検出装置。
  3. 請求項1または2に記載の磁界検出装置において、薄膜磁性体の磁区構造をその高周波インピーダンスを計測することで検出することを特徴とする磁界検出装置。
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