JP4503806B2 - 位置検出装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、交流励磁されるコイルとこのコイルに対して相対的に変位する磁性体又は導電体とを含んで構成される位置検出装置に関し、所定範囲での直線位置または回転位置の検出に適したものであり、特に、1相の交流で励磁される1次コイルのみを使用して複数相の振幅関数特性を示す出力交流信号を検出対象位置に応じて生成するものに関する。
【0002】
【従来の技術】
LVDTといわれる誘導型直線位置検出器が知られている。2ワイヤタイプLVDTは、1個の1次コイルと1個の2次コイルとからなり、磁性体からなる可動部のコイル部への侵入量に応じて1次2次コイル間の誘導結合が変化し、それに応じた電圧レベルの誘導出力信号を2次コイルに生成する。3ワイヤタイプLVDTは、1個の1次コイルと逆相直列接続された2個の2次コイルとからなる差動トランス構成であり、この場合は、所定長の磁性体からなる可動部が逆相2次コイルのどちらかへの侵入量に応じて1次2次コイル間の誘導結合がバランス的に変化し、それに応じた電圧レベルの誘導出力信号を2次コイルに生成する。このLVDTの2次出力信号をアナログ的に加算または減算する演算を行うことで、可動部の位置に応じたサイン特性の出力信号とコサイン特性の出力信号とを生成し、これらのサイン特性の出力信号とコサイン特性の出力信号とをRDコンバータで処理して、可動部の位置を検出したディジタルデータを生成する。また、別のタイプの位置検出器として、励磁コイルのみを設け、可動磁性体コアの変位に応じたその自己インダクタンスの変化をR−L回路による移相量を測定することで検出するようにしたものも知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来知られたLVDTは、1次コイルと2次コイルが必要であるため、部品点数が多くなり、製造コストを低廉にするのに限界があった。また、小型化するにも限界があった。また、可動部の位置に応じたサイン特性及びコサイン特性の出力信号における利用可能な位相角範囲は、2ワイヤタイプLVDTでは45度程度、3ワイヤタイプLVDTでは90度程度と比較的狭く、検出可能位相角範囲を拡大することは困難であった。また、3ワイヤタイプLVDTでは、可動部がコイル部の中央に位置する状態を基準にしてその左右に変位する位置しか検出することができないため、応用の際に、使い勝手が悪いという問題があった。また、検出対象の微小変位に対する検出分解能が悪かった。一方、励磁コイルの自己インダクタンスを測定するタイプの位置検出器では、コイル数を減らすことができるが、検出対象の変位に応じた移相量が狭い範囲でしか得られないため、実際はその移相量の測定が困難であり、また、検出分解能が悪く、実用化には不向きであった。また、周辺環境温度の変化に付随してコイルのインピーダンスが変化すると、移相量も変化してしまうため、温度特性の補償を行うことができなかった。
【0004】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、小型かつシンプルな構造を持つと共に、温度特性の補償も容易な、位置検出装置を提供しようとするものである。また、位相検出方式で検出を行なう場合は利用可能な位相角範囲を広くとることができ、また、検出対象の変位が微小でも高分解能での検出が可能な、位置検出装置を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る位置検出装置は、交流信号で励磁される少なくとも1つのセンサ用コイルを配置してなるコイル部と、前記センサ用コイルに対して磁気的に結合し、検出対象の変位に応じて該コイルとの相対的位置が変化するように配置されてなり、これに応じて該センサ用コイルのインピーダンスを変化させるようにした磁気応答部材と、前記センサ用コイルに直列接続された温度補償用コイルと、前記センサ用コイルと前記温度補償用コイルとの接続点より、前記センサ用コイルのインピーダンス変化に基づき変化する該センサ用コイルの出力電圧を取り出す回路と、交流信号からなる基準電圧を発生する回路と、前記センサ用コイルの出力電圧と前記基準電圧と演算することで、所定の周期的振幅関数を振幅係数として持つ交流出力信号を少なくとも2つ生成する演算回路であって、前記各交流出力信号の前記周期的振幅関数はその周期特性においてサイン及びコサイン関数に相当する所定位相だけ異なっているものとを具えたものである。
【0006】
磁気応答部材は、典型的には、磁性体及び導電体の少なくとも一方を含んでなるものである。磁気応答部材が磁性体からなる場合は、該部材のセンサ用コイルに対する近接の度合いが増すほど、該コイルの自己インダクタンスが増加して、該コイルの電気的インピーダンスが増加し、該センサ用コイルに生じる電圧、つまり端子間電圧(若しくは電圧降下)、が増加する。反対に、該磁気応答部材のコイルに対する近接の度合いが減少するほど、該センサ用コイルのインダクタンスが減少して、該センサ用コイルの電気的インピーダンスが減少し、該コイルに生じる電圧、つまり端子間電圧、が減少する。こうして、検出対象の変位に伴い、センサ用コイルに対する磁気応答部材の相対的位置が所定の範囲にわたって変化する間で該コイルに生じる電圧、つまり端子間電圧は、増加若しくは減少変化することになる。
【0007】
ここで、センサ用コイルに直列接続された温度補償用コイルを具備し、前記センサ用コイルと前記温度補償用コイルとの接続点より、前記センサ用コイルのインピーダンス変化に基づき変化する該センサ用コイルの出力電圧を取り出すようにしているので、同じコイルであることにより温度ドリフトを適正に相殺し、温度ドリフト補償済みの出力電圧を取り出すことができる。
【0008】
一例として、第1及び第2の磁気応答部材は、所定ピッチの凹凸又はパターンを有し、前記第1及び第2の軸の相対的回転位置に応じて該第1及び第2の磁気応答部材の前記凹凸又はパターンの対応関係が変化し、これに応じて前記コイルの自己インダクタンスすなわちインピーダンスが変化するようにしたものである。このインピーダンスに対応する振幅レベルを持つ交流電圧が1個のセンサ用コイルに生じる。
【0009】
例えば、典型的には、1対の磁気応答部材の相対的位置が所定の範囲にわたって変化する間で該コイルに生じる電圧が示す漸増変化カーブは、サイン関数における0度から90度までの範囲の関数値変化になぞらえることができる。ここで、交流信号成分をsinωtで示し、センサ用コイルの端子間電圧が示す漸増変化カーブにおける適当な区間の始まりの位置に対応して得られるセンサ用コイル出力電圧Vxの振幅係数レベル値をPaとすると、該区間の始まりの位置に対応するコイル出力電圧Vxは、Pa sinωtと表わせる。そして、該区間の終わりの位置に対応して得られるセンサ用コイル出力電圧Vxの振幅係数レベル値をPbとすると、該区間の終わりの位置に対応するセンサ用コイル出力電圧は、Pb sinωtと表わせる。ここで、始まりの位置に対応するコイル出力電圧Vxの値Pa sinωtと同じ値の交流電圧を基準電圧Vaと定めて、これをセンサ用コイル出力電圧Vxから減算すると、センサ用コイル出力電圧Vxの振幅係数を関数A(x)で示すと、
となる。前記区間の始まりの位置では、A(x)=Paであることから、この演算結果の振幅係数「A(x) −Pa 」は「0」となる。一方、前記区間の終わり位置では、A(x)=Pbであることから、この演算結果の振幅係数「A(x) −Pa 」は「Pb −Pa 」となる。よって、この演算結果の振幅係数「A(x) −Pa 」は、前記区間の範囲内において、「0」から「Pb −Pa 」まで漸増する関数特性を示す。ここで、「Pb −Pa 」は最大値であるから、これを等価的に「1」と考えると、前記式(1)に従う交流信号の振幅係数「A(x) −Pa 」は、前記区間の範囲内において、「0」から「1」まで変化することになり、この振幅係数の関数特性は、サイン関数の第1象限(つまり0度から90度の範囲)の特性になぞらえることができる。よって、前記式(1)に従う交流信号の振幅係数「A(x) −Pa 」は、等価的にsinθ(ただし、大体、0°≦θ≦90°)と表わせる。
【0010】
一例として、前記基準電圧を発生する回路は、交流信号が印加されるように直列接続された2つのコイルを含み、該コイルの接続点より前記基準電圧を取り出すようにしたものである。これにより、基準電圧の温度ドリフト補償も行なうことができ、出力電圧及び基準電圧が共に温度ドリフト補償された正確なアナログ演算を行なうことができる。
【0011】
好ましい一実施形態は、前記所定の基準電圧を発生する回路は、第1及び第2の基準電圧を発生し、前記演算回路は、前記1つのコイルから取り出した電圧と前記第1及び第2の基準電圧とを用いて所定の第1の演算及び第2の演算をそれぞれ行うことで、第1の振幅関数を振幅係数として持つ第1の交流出力信号と、第2の振幅関数を振幅係数として持つ第2の交流出力信号とをそれぞれ生成するものである。この場合、コイル部は、ただ1つのセンサ用コイルを持つだけでよいので、構成を最小限に簡略化することができる。上記第1の基準電圧として上記Vaを使用することで、上記第1の振幅関数として、サイン関数のほぼ第1象限(つまり0度から90度の範囲)の特性を持つものを得ることができる。
【0012】
また、前記区間の終わりの位置に対応するコイル出力電圧Vxの値Pb sinωtと同じ値の交流電圧を第2の基準電圧Vbと定め、これとコイル出力電圧Vxとの差を求めると、
となる。前記区間の始まりの位置では、A(x)=Paであることから、この演算結果の振幅係数「Pb −A(x) 」は「Pb −Pa 」となる。一方、前記区間の終わり位置では、A(x)=Pbであることから、この演算結果の振幅係数「Pb −A(x) 」は「0」となる。よって、この演算結果の振幅係数「Pb −A(x) 」は、前記区間の範囲内において、「Pb −Pa 」から「0」まで漸減する関数特性を示す。前記と同様に、「Pb −Pa 」を等価的に「1」と考えると、前記式(2)に従う交流信号の振幅係数「Pb −A(x) 」は、前記区間の範囲内において、「1」から「0」まで変化することになり、この振幅係数の関数特性は、コサイン関数の第1象限(つまり0度から90度の範囲)の特性になぞらえることができる。よって、前記式(2)に従う交流信号の振幅係数「Pb −A(x) 」は、等価的にcosθ(ただし、大体、0°≦θ≦90°)と表わせる。なお、式(2)の減算は「Vx−Vb」であってもよい。
【0013】
こうして、1つのコイルと2つの基準電圧を用いるだけで、検出対象位置に応じてサイン及びコサイン関数特性に従う振幅をそれぞれ示す2つの交流出力信号を生成することができる。例えば、検出対象位置を、所定範囲を360度分の位相角に換算した場合の位相角θにて示すと、概ね、サイン関数特性を示す振幅を持つ交流出力信号は、sinθsinωtで示すことができるものであり、コサイン関数特性を示す振幅を持つ交流出力信号は、cosθsinωtで示すことができるものである。これは、レゾルバといわれる位置検出器の出力信号の形態と同様のものであり、極めて有用なものである。例えば、前記演算回路で生成された前記2つの交流出力信号を入力し、該2つの交流出力信号における振幅値の相関関係から該振幅値を規定する前記サイン及びコサイン関数における位相値を検出し、検出した位相値に基づき前記検出対象の位置検出データを生成する振幅位相変換部を具備するようにするとよい。なお、上記サイン及びコサイン関数は、ほぼ1象限分(90度)の範囲の特性を示すので、検出可能な位置範囲がほぼ90度の範囲の位相角に換算されて検出されることになる。勿論、このような位相検出方式に限らず、振幅係数成分sinθ及び/又はcosθの直流電圧レベルをアナログ電圧値で示すデータを位置検出データとして出力するようにしてもよい。また、このアナログ電圧値に応じたパルス幅のパルス信号を出力するようにしてもよい。
【0014】
なお、磁気応答部材として、銅のような良導電体を使用した場合は、渦電流損によってコイルの自己インダクタンスが減少し、磁気応答部材のコイルに対する近接に伴い該コイルの端子間電圧が漸減することになる。この場合も、上記と同様に検出することが可能である。また、磁気応答部材として、磁性体と導電体を組合わせたハイブリッドタイプのものを用いてもよい。
【0015】
別の実施形態として、磁気応答部材として永久磁石を含み、コイルは磁性体コアを含むようにしてもよい。この場合は、コイルの側の磁性体コアにおいて永久磁石の接近に応じて対応する箇所が磁気飽和又は過飽和となり、該磁気応答部材すなわち永久磁石のコイルに対する相対的変位に応じて該コイルの端子間電圧が漸減することになる。
【0016】
かくして、この発明によれば、1次コイルのみを設ければよく、2次コイルは不要であるため、小型かつシンプルな構造の位置検出装置を提供することができる。また、1つのセンサ用コイルを用いることにより、検出対象位置に応じて所定の周期関数特性に従う振幅をそれぞれ示す複数の交流出力信号(例えばサイン及びコサイン関数特性に従う振幅をそれぞれ示す2つの交流出力信号)を容易に生成することができ、利用可能な位相角範囲として少なくともほぼ1象限(90度)分をとることができる。従って、少ないコイルでありながら比較的広い位相角範囲で検出を行うことができ、検出分解能を向上させることができる。また、検出対象の変位が微小でも高分解能での位置検出が可能である。更に、出力電圧及び基準電圧が共に温度ドリフト補償された正確なアナログ演算を行なうことができることとなり、温度変化の影響を排除した位置検出を容易に行うことができる。勿論、基準電圧を発生する回路は、コイルに限らず、抵抗等、その他適宜の構成からなる電圧生成回路を使用してよい。なお、コイルと基準電圧の数は1又は2に限定されず、それ以上であってもよく、これに伴い、利用可能な位相角範囲を、ほぼ1象限(90度)分に限らず、更に拡大することも可能である。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。図1(A)はこの発明の一実施の形態に係る直線位置検出装置の一例を略示する斜視図であって、コイル部10については断面で示したものである。同図(B)は同装置におけるコイルに関連する電気回路図である。
【0018】
コイル部10は1個のセンサ用コイルL1を含んでいる。磁気応答部材11は例えば棒状の鉄のような強磁性体からなる。コイル部10又は磁気応答部材11の一方が検出対象位置の変化に連動して移動し、他方が固定される。例えばコイル部10が固定され、磁気応答部材11が変位するとする。図の例では、棒状の磁気応答部材11の先端11aがセンサ用コイルL1の空間内に侵入し、センサ用コイルL1の空間内における該磁気応答部材11の先端11aの位置が検出対象位置に応じて変化する。よって、センサ用コイルL1の空間内での磁気応答部材11の侵入量が検出対象位置xに応じて変化し、コイルL1の自己インダクタンスつまり電気的インピーダンスが該検出対象位置xに応じて変化する。図の例の場合、磁気応答部材11の先端11aはセンサ用コイルL1のコイル長の範囲内でのみ移動し、検出可能範囲はセンサ用コイルL1のコイル長に相当する長さである。コイル部10においては、センサ用コイルL1の近傍に温度補償用コイルL2が設けられるが、両コイルは磁気的にシールドして、磁気応答部材11の変位の影響が温度補償用コイルL2に及ぼされないようにする。
【0019】
センサ用コイルL1は、交流発生源30から発生される所定の1相の交流信号(仮にsinωtで示す)によって定電圧又は定電流で励磁される。上述のように、センサ用コイルL1のインダクタンスは検出対象位置xに応じた磁気応答部材11の変位に応じて変化するため、図1(B)の回路では等価的に可変インダクタンス要素として示している。温度補償用コイルL2がセンサ用コイルL1に直列接続されており、その接続点からセンサ用コイルL1の出力電圧Vxが取り出される。前述のとおり、温度補償用コイルL2は、磁気応答部材11の変位には応答せず、一定のインピーダンス(インダクタンス)を示すものであるので、図1(B)の回路では等価的に固定インダクタンス要素として示している。温度補償用コイルL2は、できるだけセンサ用コイルL1と同等の温度ドリフト特性を示すように、センサ用コイルL1とできるだけ同一条件のコイル素子であることが好ましく、また、できるだけ同一環境下に配置されることが好ましい。センサ用コイルL1と温度補償用コイルL2の分圧比により、センサ用コイルL1の出力電圧Vxが取り出されるので、両コイルL1,L2の温度ドリフト特性が相殺され、センサ用コイルL1の出力電圧Vxは正確に温度補償されたものとなる。
【0020】
前述のとおり検出対象位置xに応じて磁気応答部材11のセンサ用コイルL1内への侵入量が変化することで、センサ用コイルL1に対する磁気結合の度合いが変化し、該コイルL1の自己インダクタンスが変化し、電気的インピーダンスが変化する。よって、このインピーダンスに応じてセンサ用コイルL1に生じる電圧(端子間電圧)は、検出対象位置xに対応するものとなる。
【0021】
図2(A)は、検出対象位置x(横軸x)に対応してセンサ用コイルL1に生じる電圧(たて軸)を例示するグラフである。横軸xに記したa,bは、磁気応答部材11のセンサ用コイルL1内への侵入位置を例示しており、aは侵入量ゼロ若しくは最小侵入量に相当する位置、bは最大侵入量に相当する位置、である。最小侵入量に相当する位置aでは、インピーダンス最小のため、コイルL1に生じる電圧は最小レベル(最小振幅係数)である。また、最大侵入量に相当する位置bでは、インピーダンス最大のため、コイルL1に生じる電圧は最大レベル(最大振幅係数)である。
【0022】
センサ用コイルL1に生じる電圧は、磁気応答部材11がaからbまで動く間で、最小値から最大値まで漸増変化する。この位置aにおいて最小値をとるコイルL1の出力電圧VxがPa sinωtであるとすると(Paは最小インピーダンス)、これを第1の基準電圧Vaとして設定する。すなわち、
Va=Pa sinωt
である。また、位置bにおいて最大値をとるコイルL1の出力電圧VxがPb sinωtであるとすると(Pbは最大インピーダンス)、これを第2の基準電圧Vbとして設定する。すなわち、
Vb=Pb sinωt
である。
【0023】
図1(B)に示すように、各基準電圧Va,Vbを発生するための回路として、2つのコイルLa1,La2を直列接続した回路と、2つのコイルLb1,Lb2を直列接続した回路とが設けられており、これらも交流発生源30からの交流信号によって駆動される。基準電圧VaはコイルLa1,La2の接続点から取り出され、基準電圧VbはコイルLb1,Lb2の接続点から取り出される。コイルLa1,La2,コイルL1,L2の各対は、所望の基準電圧Va,Vbが得られるように、そのインピーダンス(インダクタンス)が適切に調整される。
コイルLa1,La2の分圧比により基準電圧Vaが取り出されるので、コイルLa1,La2の温度ドリフト特性が相殺され、基準電圧Vaは正確に温度補償されたものとなる。同様に、コイルLb1,Lb2の分圧比により基準電圧Vbが取り出されるので、コイルLb1,Lb2の温度ドリフト特性が相殺され、基準電圧Vbは正確に温度補償されたものとなる。
【0024】
演算回路31Aは、センサ用コイルL1の出力電圧Vxから第1の基準電圧Vaを減算するもので、前記式(1)のように、コイル出力電圧Vxの振幅係数を関数A(x)で示すと、
なる演算を行う。第1の基準電圧Vaによって設定した検出対象区間の始まりの位置aでは、A(x)=Paであることから、この演算結果の振幅係数「A(x)−Pa 」は「0」となる。一方、該検出対象区間の終わりの位置bでは、A(x)=Pbであることから、この演算結果の振幅係数「A(x) −Pa 」は「Pb−Pa 」となる。よって、この演算結果の振幅係数「A(x) −Pa 」は、該検出対象区間の範囲内において、「0」から「Pb −Pa 」まで漸増する関数特性を示す。ここで、「Pb −Pa 」は最大値であるから、これを等価的に「1」と考えると、前記式に従う交流信号の振幅係数「A(x) −Pa 」は、検出対象区間の範囲内において、図2(B)に示すように、「0」から「1」まで変化することになり、この振幅係数の関数特性は、図2(C)に示すようなサイン関数sinθの第1象限(つまり0度から90度の範囲)の特性になぞらえることができる。よって、前記式に従う交流信号の振幅係数「A(x) −Pa 」は、等価的にsinθ(ただし、大体、0°≦θ≦90°)を用いて表わせる。なお、図2(B)、(C)では、位置xに対するサイン関数特性の振幅係数のカーブsinθのみを示しているが、実際の演算回路31Aの出力はこの振幅係数sinθに対応する振幅レベルを持つ交流信号sinθsinωtである。
【0025】
演算回路31Bは、検出用コイルL1の出力電圧Vxと第2の基準電圧Vbとの差を求めるもので、前記式(2)のように、
なる演算を行う。検出対象区間の始まりの位置aでは、A(x)=Paであることから、この演算結果の振幅係数「Pb −A(x) 」は「Pb −Pa 」となる。一方、第2の基準電圧Vbによって設定した該区間の終わりの位置bでは、A(x)=Pbであることから、この演算結果の振幅係数「Pb −A(x) 」は「0」となる。よって、この演算結果の振幅係数「Pb −A(x) 」は、該検出対象区間の範囲内において、「Pb −Pa 」から「0」まで漸減する関数特性を示す。前記と同様に、「Pb −Pa 」を等価的に「1」と考えると、前記式に従う交流信号の振幅係数「Pb −A(x) 」は、検出対象区間の範囲内において、図2(B)に示すように、「1」から「0」まで変化することになり、この振幅係数の関数特性は、図2(C)に示すようなコサイン関数の第1象限(つまり0度から90度の範囲)の特性になぞらえることができる。よって、前記式に従う交流信号の振幅係数「Pb −A(x) 」は、等価的にcosθ(ただし、大体、0°≦θ≦90°)を用いて表わせる。この場合も、図2(B)では、位置xに対するコサイン関数特性の振幅係数のカーブcosθのみを示しているが、実際の演算回路31Bの出力はこの振幅係数cosθに対応する振幅レベルを持つ交流信号cosθsinωtである。なお、演算回路31Bでの減算は「Vx−Vb」であってもよい。
【0026】
こうして、検出対象位置xに応じてサイン及びコサイン関数特性に従う振幅をそれぞれ示す2つの交流出力信号sinθsinωtとcosθsinωtを生成することができる。これは一般にレゾルバといわれる位置検出器の出力信号の形態と同様のものであり、有効に活用することができる。例えば、演算回路31A,31Bで生成されたレゾルバタイプの2つの交流出力信号を位相検出回路(若しくは振幅位相変換手段)32に入力し、該2つの交流出力信号における振幅値の相関関係から該振幅値を規定する前記サイン及びコサイン関数sinθ及びcosθの位相値θを計測することで、検出対象位置をアブソリュートで検出することができる。この位相検出回路32としては、例えば本出願人の出願に係る特開平9−126809号公報に示された技術を用いて構成するとよい。例えば、第1の交流出力信号sinθsinωtを電気的に90度シフトすることで、交流信号sinθcosωtを生成し、これと第2の交流出力信号cosθsinωtを加減算合成することで、sin(ωt+θ)およびsin(ωt−θ)なる、θに応じて進相および遅相方向に位相シフトされた2つの交流信号(位相成分θを交流位相ずれに変換した信号)を生成し、その位相θを測定することで、ストローク位置検出データを得ることができる。位相検出回路32は、専用回路(例えば集積回路装置)で構成してもよいし、プログラム可能なプロセッサまたはコンピュータを使用して所定のソフトウェアを実行することにより位相検出処理を行うようにしてもよい。あるいは、公知のレゾルバ出力を処理するために使用されるR−Dコンバータを、この位相検出回路32として使用するようにしてもよい。また、位相検出回路32における位相成分θの検出処理は、ディジタル処理に限らず、積分回路等を使用したアナログ処理で行ってもよい。また、ディジタル位相検出処理によって回転位置θを示すディジタル検出データを生成した後、これをアナログ変換して回転位置θを示すアナログ検出データを得るようにしてもよい。勿論、位相検出回路32を設けずに、演算回路31A,31Bの出力信号sinθsinωt及びcosθsinωtをそのまま出力するようにしてもよい。
【0027】
なお、図2(B)に示すように、サイン及びコサイン関数特性の交流出力信号sinθsinωt及びcosθsinωtにおける振幅特性は、位相角θと検出対象位置xとの対応関係が線形性を持つものとすると、図2(C)に示すような真のサイン及びコサイン関数特性を示していない。しかし、位相検出回路32では、見かけ上、この交流出力信号sinθsinωt及びcosθsinωtをそれぞれサイン及びコサイン関数の振幅特性を持つものとして位相検出処理する。その結果、検出した位相角θは、検出対象位置xに対して、線形性を示さないことになる。しかし、位置検出にあたっては、そのように、検出出力データ(検出した位相角θ)と実際の検出対象位置との非直線性はあまり重要な問題とはならない。つまり、所定の反復再現性をもって位置検出を行なうことができればよいのである。また、必要とあらば、位相検出回路32の出力データを適宜のデータ変換テーブルを用いてデータ変換することにより、検出出力データと実際の検出対象位置との間に正確な線形性を持たせることが容易に行なえる。よって、本発明でいうサイン及びコサイン関数の振幅特性とは、真のサイン及びコサイン関数特性を示していなければならないものではなく、図2(B)に示されるように、実際は三角波形状のようなものであってよいものであり、要するに、そのような傾向を示していればよい。つまり、サイン等の三角関数に類似した関数であればよい。なお、図2(B)の例では、観点を変えて、その横軸の目盛をθと見立ててその目盛が所要の非線形目盛からなっているとすれば、横軸の目盛をxと見立てた場合には見かけ上三角波形状に見えるものであっても、θに関してはサイン関数又はコサイン関数ということができる。
【0028】
ここで、更なる温度ドリフト特性の補償について説明する。前述した通りセンサ用コイルL1の出力電圧Vxと基準電圧Va,Vbはそれぞれ温度ドリフト補償されているものであるが、演算回路31A,31Bにおける差演算によって、同一方向のレベル変動誤差がもしあったとしてもこれも相殺されることになり、温度ドリフト特性がより一層確実に補償されることになる。
【0029】
基準電圧発生用の各コイルLa1,La2,Lb1,Lb2は、センサ用コイルL1と同等の特性のコイルを使用し、かつ、これらのコイルLa1,La2,Lb1,Lb2とセンサ用コイルL1と同様の温度環境に置く(つまりセンサ用コイルL1の比較的近くに配置する)のがよいが、これに限らず、別の配置でもよい。何故ならば、図1(B)のような各対のコイルの直列接続とその接続点からの電圧取り出しによって、温度ドリフト補償が達成されているからである。よって、基準電圧発生用の各コイルLa1,La2,Lb1,Lb2は、演算回路31A,31Bの回路基板側に設けてもよい。
【0030】
図3は、基準電圧発生用コイルLa1,La2,Lb1,Lb2のインダクタンスすなわちインピーダンスの設定法の一例を示す。1対のコイルLa1,La2に対して磁性体コアMaが可変的に挿入され、その配置を調整することで、2つのコイルLa1,La2のそれぞれに対する磁性体コアMaの侵入量が差動的に調整され、基準電圧Vaのレベルを可変調整することができる。同様に、1対のコイルLb1,Lb2に対して磁性体コアMbが可変的に挿入され、その配置を調整することで、2つのコイルLb1,Lb2のそれぞれに対する磁性体コアMbの侵入量が差動的に調整され、基準電圧Vbのレベルを可変調整することができる。
【0031】
基準電圧発生用回路は、コイルに限らず、抵抗その他の適当な定電圧発生回路を使用してもよい。図1の例では、コイルL1の空間内に棒状の磁気応答部材11が侵入する構成であるが、これに限らず、コイルL1の磁界すなわち磁気回路空間内で磁気応答部材11が相対的に変位し、磁気結合を変化させるようなものであればよい。
【0032】
本発明に係る位置検出装置は、完全にまっすぐな直線位置の検出に限らず、所定の範囲で円弧状または曲線状に変位する検出対象の位置検出にも適用することができる。図4はその一例を示すもので、センサ用コイルL1が所定の角度範囲ψにおいて円弧状に配置されており、磁気応答部材11が軸Cを中心にして該角度範囲ψにわたって揺動し、その揺動角度に応じてセンサ用コイルL1に対する磁気応答部材11の侵入量が変化する。温度補償用コイルL2も適宜の位置に設けられるが、図4では便宜上図示を省略した。
【0033】
本発明に係る位置検出装置は、回転位置検出装置として構成することもできる。図5はその一例を示すもので、(A)に示すように、センサ用コイルL1が所定の角度範囲において円弧状に配置されており、磁気応答部材11は回転軸Cに取り付けられた歯車形状のものである。この磁気応答部材11は所定ピッチで配列された複数個の凹凸歯からなっている。磁気応答部材11の1歯の凸部がコイルL1の磁界内に入ってから出ていくまでの1ピッチ分の角度変位において、コイルL1の出力電圧Vxは、図5(B)に示すように三角波状に変化する。例えば、基準電圧として上記Va,Vbのほかに、その中間のVcを用意し、図5(C)に示すように、サイン関数の振幅係数特性の出力信号sinθsinωtを得るために「Vx−Va−Vc」なる演算を行ない、コサイン関数の振幅係数特性の出力信号cosθsinωtを得るために、「Vb−Vx−Vc」なる演算を行なえばよい。温度補償用コイルL2も適宜の位置に設けられるが、図5では便宜上図示を省略した。なお、直線位置検出装置においても、複数個の磁気応答部材11を所定ピッチで順次繰り返し設けるように構成してよい。
【0034】
上記各実施例において、位置検出データを得るための構成は、図1(B)に示したような位相検出回路32を用いるものに限らず、図6(A)に示すように、電圧検出回路40を用いるようにしてもよい。図6(A)において、電圧検出回路40以外の構成は図1(B)に示したものと同様である。要するに、電圧検出回路40では、演算回路31Aから出力される等価的にサイン関数の振幅特性を持つ交流信号sinθsinωtを整流回路41に入力し、交流信号成分を除去し、振幅電圧成分sinθのみに応答する直流の検出電圧V1を発生する。また、演算回路31Bから出力される等価的にコサイン関数の振幅特性を持つ交流信号cosθsinωtを整流回路42に入力し、交流信号成分を除去し、振幅電圧成分cosθのみに応答する直流の検出電圧V2を発生する。図6(B)は、検出対象位置xに対して示す各検出電圧V1,V2の特性例を示す。このような特性が得られる理由は図2(B)を参照して既に説明した通りである。このようにちょうど逆特性の2種類の検出電圧V1,V2をアナログで得ることができる。検出対象位置xの検出のためには、どちらか一方の検出電圧V1,V2のみを得るように一系列の整流回路だけで構成すれば足りるが、逆特性の2種類の検出電圧V1,V2を並列的に発生するようにすることにより、冗長性をもたせることができる。すなわち、どちらか一方の検出系列で何らかの故障が生じた場合に、適切に対処することができる。
【0035】
図7は、位相検出用アナログ回路32Aと電圧検出回路40とを併設し、位相検出と電圧検出のどちらでも採用できるようにした構成例を示す。図7は、図6(A)において位相検出用アナログ回路32Aが付加されたものと同じである。よって、位相検出用アナログ回路32A以外の構成についての説明は、図1(B)及び図6(A)の説明を援用する。
位相検出用アナログ回路32Aにおいて、演算回路31Aから出力された等価的にサイン関数の振幅特性を持つ交流信号A=sinθsinωtは、位相シフト回路19に入力され、その電気的位相が所定量位相シフトされ、例えば90度進められて、位相シフトされた交流信号A’=sinθ・cosωtが得られる。また、位相検出用アナログ回路32Aにおいては加算回路15と減算回路16とが設けられており、加算回路15では、位相シフト回路19から出力される上記位相シフトされた交流信号A’=sinθ・cosωtと、演算回路31Bから出力される等価的にコサイン関数の振幅特性を持つ交流信号B=cosθsinωtとが加算され、その加算出力として、B+A’=cosθ・sinωt+sinθ・cosωt=sin(ωt+θ)なる略式で表わせる第1の電気的交流信号Y1が得られる。減算回路16では、上記位相シフトされた交流信号A’=sinθ・cosωtと上記演算回路31Bから出力交流信号B=cosθ・sinωtとが減算され、その減算出力として、B−A’=cosθ・sinωt−sinθ・cosωt=sin(ωt−θ)なる略式で表わせる第2の電気的交流信号Y2が得られる。このようにして、検出対象位置(x)に対応して正方向にシフトされた電気的位相角(+θ)を持つ第1の電気的交流出力信号Y1=sin(ωt+θ)と、同じ前記検出対象位置(x)に対応して負方向にシフトされた電気的位相角(−θ)を持つ第2の電気的交流出力信号Y2=sin(ωt−θ)とが、電気的処理によって夫々得られる。
【0036】
加算回路15及び減算回路16の出力信号Y1,Y2は、夫々ゼロクロス検出回路17,18に入力され、それぞれのゼロクロスが検出される。ゼロクロスの検出の仕方としては、例えば、各信号Y1,Y2の振幅値が負極性から正極性に変化するゼロクロスつまり0位相を検出する。各回路17,18で検出したゼロクロス検出パルスつまり0位相検出パルスは、ラッチパルスLP1,LP2として出力される。ラッチパルスLP1,LP2は、図示しない位相ずれ測定装置に入力される。この位相ずれ測定装置では、基準交流信号源30から発生される基準交流信号sinωtの0位相時点から各ラッチパルスLP1,LP2の発生時点(立ち上がりトリガ時点)までの時間差をカウントし、ラッチパルスLP1に対応するカウント値を正方向にシフトされた位相角(+θ)の位相データとして検出し、ラッチパルスLP2に対応するカウント値を負方向にシフトされた位相角(−θ)の位相データとして検出する。これらの正方向及び負方向にシフトされた位相角+θ及び−θの位相検出データの利用方法については、前述した本出願人の出願に係る先願明細書に記載されているので、それと同様の手法で利用すればよい。
【0037】
なお、基準交流発生源30の発振回路そのものをコイル部10の側に設けた場合は、図7に示すように、基準交流発生源30から発生される基準交流信号を方形波変換回路20に入力し、基準交流信号sinωtに同期する方形波信号(パルス信号)を形成し、これを上記位相ずれ測定装置に入力してやる。その場合、位相ずれ測定装置では、入力された基準交流信号sinωtに同期する方形波信号(パルス信号)の立ち上がりに同期してクロックパルスカウントを行ない、各ラッチパルスLP1,LP2の発生時点(立ち上がりトリガ時点)でそのカウント値をラッチする構成を採用することで、上記のように正方向及び負方向にシフトされた位相角+θ及び−θの位相検出データをそれぞれ得ることができる。勿論、これに限らず、上記位相ずれ測定装置の側で、基準交流信号sinωtに同期する方形波信号(パルス信号)を発生し、この方形波信号(パルス信号)に基づきコイル部10の回路側でアナログフィルタ処理等をかけることで、アナログの基準交流信号sinωtを発生するようにしてもよい。その場合は、位相ずれ測定装置の側では、出力した基準交流信号sinωtに同期する方形波信号(パルス信号)の立ち上がりに同期してクロックパルスカウントを行ない、各ラッチパルスLP1,LP2の発生時点(立ち上がりトリガ時点)でそのカウント値をラッチする構成を採用すればよい。上記位相ずれ測定装置としては、CPUのようなソフトウェアプログラム処理可能なプロセッサを使用するとよい。なお、図7の回路において、電圧検出回路40の整流回路41に入力する信号として、演算回路31Aの出力信号A=sinθsinωtに代えて、位相シフト回路19からの出力信号A’=sinθcosωtを入力するようにしてもよい。
【0038】
なお、図6又は図7の回路において、整流回路41,42から出力されるアナログ検出電圧V1,V2を外部に直接出力せずに、図8に示すように、パルス幅変調回路43,44に各電圧V1,V2を入力し、パルス幅変調された方形波信号PW1,PW2の形態で外部に出力するようにしてもよい。パルス幅変調回路43,44は、入力された電圧V1,V2の値に対応するパルス幅を持つ方形波信号PW1,PW2を発生する。
【0039】
なお、磁気応答部材11として、強磁性体の代わりに、銅のような非磁性・良導電体(つまり反磁性体)を使用してもよい。その場合は、渦電流損によってコイルのインダクタンスが減少し、磁気応答部材11の近接に応じてコイルの端子間電圧が減少することになる。この場合も、上記と同様に位置検出動作することが可能である。また、磁気応答部材として、強磁性体と非磁性・良導電体(つまり反磁性体)を組合わせたハイブリッドタイプのものを用いてもよい。また、磁気応答部材11の形状は任意であり、例えば、適宜の漸減又は漸増形状であってよく、また所定の基材の表面上にめっき等で適宜の漸減又は漸増形状からなるパターンを形成したものであってもよい。
【0040】
また、磁気応答部材11として永久磁石を含み、コイル部10のコイルには鉄心コアを含むようにしてもよい。永久磁石が、コイルに接近するとその近接箇所に対応する鉄心コアが部分的に磁気飽和ないし過飽和状態となり、該コイルの端子間電圧が低下する。これにより、磁気応答部材11の相対的変位に応じたコイルの端子間電圧の漸減(又は漸増)変化を引き起こさせることができる。
この発明に係る位置検出装置は、微小変位の検出から長いストローク変位の検出まで様々な用途の位置検出に利用してよい。例えば、リニアモータあるいは回転モータの位置検出や、流体圧シリンダのストローク位置検出、あるいは圧力計、荷重計などに応用してもよく、変位する部材の位置検出すべてに応用できる。
【0041】
【発明の効果】
以上のとおり、この発明によれば、1次コイルのみを設ければよく、2次コイルは不要であるため、小型かつシンプルな構造の位置検出装置を提供することができると共に、センサ用コイルに直列接続された温度補償用コイルを具備し、前記センサ用コイルと前記温度補償用コイルとの接続点より、前記センサ用コイルのインピーダンス変化に基づき変化する該センサ用コイルの出力電圧を取り出すようにしているので、同じコイルであることにより温度ドリフトを適正に相殺し、温度ドリフト補償済みの出力電圧を取り出すことができる、という優れた効果を奏する。
【0042】
また、検出対象位置に応じて生じるコイル出力電圧の漸増(又は漸減)変化特性を利用し、これを基準電圧と演算して組み合わせることにより、検出対象位置に応じて所定の周期関数特性に従う振幅をそれぞれ示す複数の交流出力信号(例えばサイン及びコサイン関数特性に従う振幅をそれぞれ示す2つの交流出力信号)を容易に生成することができる。また、基準電圧の発生にあたっては、交流信号が印加されるように直列接続された2つのコイルを含み、該コイルの接続点より基準電圧を取り出すようにすることにより、基準電圧の温度ドリフト補償も行なうことができ、出力電圧及び基準電圧が共に温度ドリフト補償された正確なアナログ演算を行なうことができることとなり、温度変化の影響を排除した位置検出を容易に行うことができる。更に、これら複数の交流出力信号における振幅値の相関関係から該振幅値を規定する所定周期関数(例えばサイン及びコサイン関数)における位相値を検出することで、検出対象の変位が微小でも高分解能での位置検出が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る位置検出装置の一実施例を示すもので、(A)は外観斜視図、(B)は同装置のコイルに関連する電気回路図。
【図2】 図1の実施例の検出動作説明図。
【図3】 基準電圧発生用コイルのインピーダンス調整法の一例を示す略図。
【図4】 円弧状または曲線状に変位する位置検出に適用する場合の本発明の実施例を略示する図。
【図5】 回転位置検出に適用する場合の本発明の実施例を略示する図。
【図6】 検出位置に応じたアナログ直流電圧を発生するように構成してなる本発明に係る位置検出装置の実施例を示す回路図。
【図7】 電圧検出と位相検出の両機能を具備した本発明に係る位置検出装置の実施例を示す回路図。
【図8】 図6又は図7の実施例に適用可能な付加的回路の一例を示す図。
【符号の説明】
10 コイル部
L1 センサ用コイル
L2 温度補償用コイル
11 磁気応答部材
30 交流発生源
31A,31B アナログ演算回路
32 位相検出回路
La1,La2,Lb1,Lb2 基準電圧発生用のコイル
40 電圧検出回路
41,42 整流回路
Claims (6)
- 交流信号で励磁される少なくとも1つのセンサ用コイルを配置してなるコイル部と、
前記センサ用コイルに対して磁気的に結合し、検出対象の変位に応じて該コイルとの相対的位置が変化するように配置されてなり、これに応じて該センサ用コイルのインピーダンスを変化させるようにした磁気応答部材と、
前記センサ用コイルに直列接続された温度補償用コイルと、
前記センサ用コイルと前記温度補償用コイルとの接続点より、前記センサ用コイルのインピーダンス変化に基づき変化する該センサ用コイルの出力電圧を取り出す回路と、
交流信号からなる基準電圧を発生する回路と、
前記センサ用コイルの出力電圧と前記基準電圧と演算することで、所定の周期的振幅関数を振幅係数として持つ交流出力信号を少なくとも2つ生成する演算回路であって、前記各交流出力信号の前記周期的振幅関数はその周期特性においてサイン及びコサイン関数に相当する所定位相だけ異なっているものと
を具えた位置検出装置。 - 前記基準電圧を発生する回路は、交流信号が印加されるように直列接続された2つのコイルを含み、該コイルの接続点より前記基準電圧を取り出すようにした請求項1に記載の位置検出装置。
- 前記基準電圧を発生する回路は、第1及び第2の基準電圧を発生し、
前記演算回路は、前記センサ用コイルの出力電圧と前記第1及び第2の基準電圧とを用いて所定の第1の演算及び第2の演算をそれぞれ行うことで、第1の振幅関数を振幅係数として持つ第1の交流出力信号と、第2の振幅関数を振幅係数として持つ第2の交流出力信号とをそれぞれ生成するものである請求項1に記載の位置検出装置。 - 前記第1及び第2の基準電圧は、前記第1及び第2の交流出力信号における前記第1及び第2の振幅関数の周期特性における特定の位相区間を定めるものであり、この第1及び第2の基準電圧を可変することで、該特定の位相区間と前記相対的位置の変化範囲との対応関係を可変できることを特徴とする請求項3に記載の位置検出装置。
- 前記基準電圧を発生する回路は、交流信号が印加されるように直列接続された2つのコイルを含む第1の回路と、交流信号が印加されるように直列接続された2つのコイルを含む第2の回路とを含み、該第1の回路のコイルの接続点より前記第1の基準電圧を取り出し、該第2の回路のコイルの接続点より前記第2の基準電圧を取り出すようにした請求項3又は4に記載の相対的回転位置検出装置。
- 前記直列接続された2つのコイルは磁性体コアを有し、該2つのコイルのそれぞれに対する磁性体コアの配置を調整することで、コイルのインピーダンスを調整し、もって該2つのコイルの接続点より取り出される基準電圧のレベルを調整できるようにした請求項2又は5に記載の位置検出装置。
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