JP4735595B2 - 油揚げ及び乾燥味付き油揚げの製造法 - Google Patents

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本発明は、食感良好な大豆たん白油揚げ及び乾燥味付き油揚げを提供するものである。
油揚げには、丸大豆から抽出した豆乳を使用して油揚げを製造する丸大豆油揚げと、大豆たん白原料、油脂、水の乳化物に凝固剤を加えた生地を揚げて作る所謂「大豆たん白油揚げ」がある。またこの大豆たん白油揚げを味付けし乾燥したものが、カップ麺等の即席具材などで使用される「乾燥味付き油揚げ」である。乾燥味付き油揚げは、湯戻しするだけで食すことができる簡便さに加え味の改良も進み、広く普及している。しかしそれを湯戻ししたものは、噛んだときに生麩のような弾力とぬるつきがあり、丸大豆油揚げを煮付けたものとは異なる好ましくない食感を有する。
本発明者らは、大豆たん白油揚げの生地に、粒子径がある範囲になるよう粉砕されたオカラを添加することで、こうした課題が解決できることを見出した。
ところでオカラを大豆たん白油揚げに添加することは、従来から提案されていた。特許文献1(特開昭55-42562)は、油揚げ類の製法として、オカラ又はオカラと同等以上に粗せんいを含有する原料を加えることを教えている。しかしその目的は丸大豆油揚げのように表面組織を強くすることであり、噛んだときの食感の悪さは課題としていない。またオカラとしては通常たん白抽出後に得られる一般的なものであり、粉砕するのが好ましいとしているが、生地中に均一に分散しダマとならない程度に粉砕するに過ぎず、粒子径を小さくするものではない。従って本願発明のコミットロールやマイコロイダー等の手段で敢えて微粉砕された、平均粒子径が50〜150μmのオカラとは異なるものである。また該粗せんいは油中加熱時の伸びを阻害するため多くは入れることができず、分離大豆たん白に対し1.95%以下であり、上記課題の食感の悪さを改善するといった効果はない。
特許文献2(特開昭54-32646)には、熱凝固性の大豆たん白物質に、おから、濃縮変性大豆たん白又はその両方を含む生地を油脂中にてマイクロ波誘電加熱することを特徴とする油揚げ用食品の製造法が開示されている。これは熱変性度を低くなるよう調製された熱凝固性たん白を用いることで、該生地をマイクロ波加熱した際の膨化を促進させるが、このとき膨化が過度となり組織が悪くなるのを防止するためにおから又は濃縮変性大豆たん白を添加するものである。一方、本発明はマイクロ波加熱による膨化を必要としない。
特開昭55-42562号公報 特開昭54-32646号公報
本発明は、食感良好な大豆たん白油揚げ及び乾燥味付き油揚げを提供することを課題とするものである。
本発明者らは上記課題に対し、分離大豆たん白や豆乳の製法過程で副生されるオカラを微粉砕したものを加えることで、大豆たん白油揚げやこれを着味・乾燥して得られる乾燥味付き油揚げの食感が大幅に改善されることを見出した。そしてその効果は、平均粒子径がある範囲となるように微粉砕することで得られること、そしてその範囲についてもつきとめた。さらに検討を重ねた結果、該オカラの配合量、配合形態、配合するタイミング等を工夫することで、さらに効果、作業性や油揚げの品質が良くなることを見出し、ついに本発明を完成させた。すなわち本発明は、
1.大豆たん白原料、油脂、水、凝固剤、オカラを含む配合原料を混合、均質化させて生地を調製し、これをフライする油揚げの製造方法において、オカラの平均粒子径が50〜150μmであることを特徴とする油揚げの製造法、
2.生地を調製するにおいて、凝固剤、オカラを除く配合原料を混合、均質化させた後に、オカラ、凝固剤の順に混合、均質化することを特徴とする1記載の油揚げの製造法、
3.オカラを水和物として配合することを特徴とする1乃至2記載の油揚げの製造法、
4.オカラの配合量が粗繊維換算で大豆たん白原料の粗たん白含量の2.5〜6重量%である1乃至3記載の油揚げの製造法、
5.1乃至4記載の製造法で得られる油揚げを、さらに着味、乾燥する乾燥味付け油揚げの製造法、
を提供するものである。
本発明により、丸大豆から抽出した豆乳を用いて伝統的製法で得られた丸大豆油揚げの様な、歯切れが良く噛みこなれの良い食感を有する大豆たん白油揚げ及びこれを着味、乾燥させた乾燥味付き油揚げが提供できる。
本発明は、食感の良好な大豆たん白油揚げ及び味付き乾燥油揚げを提供するものであり、大豆たん白油揚げの生地に平均粒子径が50〜150μmのオカラを配合することを特徴とする。そうすることで、噛んだときに麩のような弾力やぬるつきがなく、歯切れ良く噛みこなれ易い大豆たん白油揚げ及び味付き乾燥油揚げが調製できる。具体的には、大豆たん白原料、水、油脂、凝固剤、調味料等と上記オカラを含む配合原料を均質化させ大豆たん白油揚げの生地(以下、単に生地と記載する)を調製し、これをフライして大豆たん白油揚げが得られる。さらにこれを着味した後に乾燥させて乾燥味付き油揚げが得られる。
本発明における大豆たん白原料は、好ましくは乾燥固形分中の粗たん白質含量が60重量%以上のものであり、中でも分離大豆たん白が好ましい。大豆たん白原料の生地への配合量は、従来公知の大豆たん白油揚げと特に変わりない。
本発明におけるオカラは、その平均粒子径が50〜150μm、好ましくは70〜100μmのものである。豆乳や分離大豆たん白の製法過程で副生するもの等を、コミットロールやマイコロイダー、ジェットミル、パルべライザ等で微粉砕して得られる。平均粒子径が大きすぎると油中加熱時の伸びを阻害してしまい、組織を悪くする。また小さすぎても食感の改善効果が少なくなる。尚、平均粒子径は水和状態で測定したものであり、例えば粒度分布計(堀場製作所製、LA-500)で測定できる。
配合原料の混合順序は問わない。全原料を同時に混合、均質化をしても良いし、順々に混合していってもよい。オカラを配合するタイミングも特に問わず、他の配合原料と同時に混合、均質化しても良いが、予め他の配合原料を均質化させた後に添加すると好ましい。さらに好ましくは予めオカラと凝固剤を除く他の配合原料を均質化させた後に、オカラを混合し、その後に凝固剤を添加、混合すると油中加熱時の伸びが安定して好ましい。
またオカラは乾燥物をそのまま配合することも可能だが、オカラの分散に時間がかかり均一な生地にするのが困難になるため、オカラを適量配合できない場合がある。オカラを予め水和させておくと生地を調製し易く好ましい。オカラの乾燥固形分の5〜10倍量の水、好ましくは6〜9倍量の水を加水して均一に水和させる。水和に用いる水は、生地に配合する水分量から割り当てる。すなわちオカラを乾燥状態で加える場合も、オカラを水和させてから加える場合も最終の生地中の水分量は変わらず、概ね60-70重量%となる。
油揚げの弾力ある食感は、主に大豆たん白原料に起因する。オカラの生地中への配合量は、オカラの粗繊維換算で大豆たん白原料の粗たん白量に対して2.5〜6重量%であるのが好ましく、より好ましくは2.5〜4.5重量%である。多すぎると油中加熱時の伸びを阻害するし、少なすぎても食感の改善効果が小さくなってしまう。オカラ中の粗繊維含量の測定は、科学技術資源調査会編「日本食品標準成分表」の方法で行った。
本発明における油脂は特に指定は無く、大豆油、菜種油、パーム油、ヤシ油などの植物性油脂、豚脂、牛脂などの動物性油脂を自由に単独で或いは組み合わせて用いることができる。油脂の生地への配合量は、従来公知の大豆たん白油揚げと特に変わりない。
また、本発明における凝固剤は従来公知のものを用いることができ、例えばアルカリ土類金属塩、特にカルシウム塩やマグネシウム塩が挙げられ、塩化マグネシウム、硫酸カルシウム、塩化カルシウムやにがり等がある。またグルコノデルタラクトンのように水に溶解するとグルコン酸を生成し酸性化することにより凝固させるタイプのものも使用できる。なかでも塩化マグネシウムは、水溶性が高くて反応性が速いので好ましい。凝固剤の配合量はものにより異なるが、例えば塩化マグネシウムの場合、大豆たん白原料に対して0.5〜5重量%であり、1〜3重量%が好ましい。凝固剤を生地に配合するタイミングは特に問わないが、生地調製の最終に加えると、スワリによる生地の経時変化が小さく油加熱時の伸びが安定して好ましい。
大豆たん白原料、オカラ、油脂、水、凝固剤以外に、生地には必要に応じて従来公知の副原料を加えることができる。例えば糖アルコール、味材である塩、砂糖、酵母エキス、澱粉類や小麦粉類を加えても構わない。
上記原料を混合し、均質化(乳化)させ生地を調製する。乳化機としては従来公知のものが使えるが、乳化効率の高いサイレントカッター、ステファンカッター等が好ましい。こうして得られた生地を成型機で好みの大きさに成型し、フライして油揚げにする。フライは油揚げ類製造の際の公知の方法でよく、通常は2段、または3段の多段フライを行う。フライの好ましい方法は3段フライであり、例えば第1段:60℃以上100℃未満、第2段:100℃以上150未満、第3段150℃〜200℃とする。また第2〜3段のフライは温度勾配により連続的に油温を上昇させることも出来る。
生地のフライ時の「伸び」は、油揚げの品質に影響する。油揚げの好ましい伸び率(評価方法は後述)の範囲は1.30〜1.75、より好ましくは1.38〜1.67である。伸びが足りないと油揚げ内層の膨化状態が悪く密な組織となり硬くなるし、続く着味工程で着味液を吸いにくい。伸びすぎても内層組織が粗く且つ表皮が硬くなり、着味液を保持できなくなる。
フライ後の油揚げは、さらに着味、乾燥を行い乾燥味付け油揚げにすることができる。着味液、着味の方法は問わず、従来公知のものを自由に用いることができる。例えば油揚げに着味液をもみこむ所謂揉み込み法(特開平5-292912号広報)や、油揚げを着味液に浸漬する方法が例示できる。揉み込み法は、型枠に入れた油揚げに一定量の着味液を添付し、蒸し加熱後、穴開きプレス板で圧縮する。蒸しから圧縮の工程を繰り返すことによって、油揚げに着味液を浸透させる方法であり、一定量の着味液をロスなく油揚げに浸透させることができる。また浸漬法は着味液を張った槽に油揚げを潜らせて着味液を染み込ませる方法である。染み込ませる量は、着味液の濃度や浸漬時間、着味液に潜らせる深さや、その後のローラー等による脱液の工程によって制御することが可能である。本発明の油揚げは、着味液についても特に制限なく、従来公知のものを自由に用いることができる。
乾燥はマイクロ波や熱風乾燥等の従来公知の方法で良く、乾燥と膨化をかねてマイクロ波乾燥後、熱風乾燥の順に乾燥を行うことが好ましい。
以下、本発明の有効性を実施例と共に示すが、その例示によって本発明の技術思想が限定されるものではない。
以下に本発明で用いた評価方法を記す。
*伸び率 : 成型した生地のフライ時の伸びを評価した。成型した生地と、それをフライした油揚げの長辺と短辺の長さをノギスで測定して平均値(mm)を出し、以下の式より伸び率を算出した。伸び率が1.38〜1.67のものを◎、1.30〜1.75のものを○、それ以外のものを×とした。伸び率=油揚げの長辺/成型生地の長辺、又は、油揚げの短辺/成型生地の短辺
*食感の評価:どんぶりに乾燥味付き油揚げを入れて、沸騰したお湯450gを注ぎ1分間静置し(ふたをしないで)、裏返してさらに1分間静置し(ふたをしないで)、食感を評価した。食感は麩のような弾力やぬるつきが低減されており、豆乳由来の丸大豆油揚げに近い食感かどうかを評価した。弾力やぬるつきが良く低減されていて殆ど感じないものを◎、低減されているものを○、コントロール(比較例1)に比べて低減されているものを△、コントロールと同等で低減されていないものを×とした。
*平均粒子径:オカラの水和状態での粒径は粒度分布計(堀場製作所製、レーザー解析式粒度分布測定装置 LA-500)で測定した。試料を水に分散させ、液中の浮遊粒子の粒度分布を測定し、累積分布の50%に相当する粒子径を平均粒子径とした。
オカラ(ニュープロプラス1000、粗繊維含量65%:不二製油株式会社製)をパルベライザー(衝撃式微粉砕機、ホソカワミクロン(株)製)で微粉砕し、水和状態の平均粒子径を68μmにした。分離大豆たん白(フジプロE、粗たん白量85%、不二製油株式会社製)1000部、パーム油200部、水3300部、微粉砕したオカラ50部と、コーンスターチ50部、食塩10部をサイレントカッター(株式会社ヤナギヤ製)で3分間混合乳化し、その後、塩化マグネシウム25部を水30部に溶かした凝固剤を加え、さらに1分30秒混合した。乳化が充分で適度な固さの生地が調製できた。この生地を成型機(村上製作所製)で、66.5×46mm、15.5gに成型した。これを100×77mmの型枠を使用した3段フライヤー(70℃で4分、110℃で2分、170℃で4分)でフライし、油揚げを得た。フライ時の伸び率は長辺が1.4、短辺が1.5であった。さらに油揚げの外観及び食感も好ましいものであった。
粉砕したオカラを添加するタイミングを変えた以外は、実施例1と同様に油揚げを調製した。すなわち全原料(オカラと凝固剤を除く)を先に2分30秒間混合乳化した後、粉砕したオカラを加えてさらに30秒間混合した。これに凝固剤を添加してさらに1分30秒混合した。
粉砕したオカラ50部を予め6倍量の水(300部)で水和させた以外は、実施例2と同様にして油揚げを調製した。ただし水は3000部を混合した。
オカラ(ニュープロプラス1000)に6倍量の水を加え水和させた後、ファイブリッチャー(油圧式押出式微細化機、日本製鋼所(株)製)で120メッシュスクリーンに通し、水和状態での平均粒子径が70μmとなるよう湿式粉砕した。これを350部用いて、実施例2と同様にして油揚げを調製した。ただし水は3000部を混合した。
オカラ(ニュープロプラス1000)に6倍量の水を加え水和させた後、ファイブリッチャー(油圧式押出式微細化機、日本製鋼所(株)製)で80メッシュスクリーンに通し、水和状態での平均粒子径が145μmになるよう湿式粉砕した。これを420部用いて実施例2と同様にして油揚げを調製した。ただし水は2940部を混合した。
オカラ(ニュープロプラス1000)に6倍量の水を加え水和させた後、ファイブリッチャー(油圧式押出式微細化機、日本製鋼所(株)製)で120メッシュスクリーン2枚に通し、水和状態での平均粒子径が53μmになるよう微粉砕した。これを420部用いて実施例2と同様にして油揚げを調製した。ただし水は2940部を混合した。
オカラ(ニュープロプラス1000)に5倍量の水を加え水和させた後、マイコロイダー(砥石式摩砕微細化機、プライミクス(株)製)で水和状態での平均粒子径が98μmになるよう微粉砕した。これを360部用いて実施例2と同様にして油揚げを調製した。ただし水は3000部、パーム油は300部を混合した。
オカラ(ニュープロプラス1000)に5倍量の水を加え水和させた後、マイコロイダー(砥石式摩砕微細化機、プライミクス(株)製)で水和状態での平均粒子径が98μmになるよう微粉砕した。これを480部用いて実施例2と同様にして油揚げを調製した。ただし水は2950部、パーム油は300部を混合した。
オカラ(ニュープロプラス1000)に5倍量の水を加え水和させた後、マイコロイダー(砥石式摩砕微細化機、プライミクス(株)製)で水和状態での平均粒子径が98μmになるよう微粉砕した。これを120部用いて実施例2と同様にして油揚げを調製した。ただし水は3100部、パーム油は300部を混合した。
大豆を一晩水に浸漬し、皮を分離した後、グラインダーで磨砕してスクリュープレス機でオカラを分離した。該オカラは水和状態で沈降しており、平均粒子径は粒度分布系で測定できる最大値200μmを大きく超えていた。これをコミットロール(衝撃式微細化機、アーシェルジャパン(株)製)で、平均粒子径が73μmになるよう微粉砕した。このオカラの水分量は87%、粗繊維含量は5%であった。これを650部用いて実施例2と同様にして油揚げを調製した。ただし水は、2700部を混合した。
「比較例1」
オカラを加えず、水の配合量を3000部とした以外は、実施例1と同様に油揚げを調製した。
「比較例2」
オカラ(ニュープロプラス1000)を微粉砕しないままで配合した以外は、実施例1と同様に油揚げを調製した。オカラの水和状態での平均粒子径は粒度分布計の測定範囲外であり、200μmを超える値であった。
「比較例3」
オカラ(ニュープロプラス1000)に6倍量の水を加え水和させた後、ファイブリッチャー(油圧式押出式微細化機、日本製鋼所(株)製)で200メッシュスクリーン2枚に通し、水和状態での平均粒子径が33μmになるよう微粉砕した。これを420部用いて実施例2と同様にして油揚げを調製した。ただし水は2940部を混合した。
これら実施例及び比較例の油揚げの食感、伸びを評価した。結果を表1に示す。
Figure 0004735595

Claims (4)

  1. 大豆たん白原料、油脂、水、凝固剤、オカラを含む配合原料を混合、均質化させて生地を調製し、これをフライする油揚げの製造方法において、生地を調製する際、凝固剤、オカラを除く配合原料を混合、均質化させた後に、オカラ、凝固剤の順に混合、均質化することを特徴とし、オカラの平均粒子径が50〜150μmであることを特徴とする食感良好な油揚げの製造法。
  2. オカラを水和物として配合することを特徴とする請求項1記載の油揚げの製造法。
  3. オカラの配合量が粗繊維換算で大豆たん白原料の粗たん白含量の2.5〜6重量%である請求項1又は2に記載の油揚げの製造法。
  4. 請求項1乃至3の何れかに記載の製造法で得られる油揚げを、さらに着味、乾燥する乾燥味付け油揚げの製造法。
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