JP2007289089A - 改質澱粉およびそれを原料とする麺類 - Google Patents

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【課題】本発明により、麺類の素材の食味を損なうことなく、滑らかでのど越しが良く、適度な硬さと粘弾性、すなわちもちもち感、ぷりぷり感を付与する改質澱粉を提供し、およびこの改質澱粉を原料とする麺類、およびその麺類の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、原料澱粉に対してのRVA最終粘度比率が105〜200%であり、かつ原料澱粉に対しての沈降容積比率が105〜350%であることを特徴とする改質澱粉に関する。
【選択図】なし

Description

本発明は、麺類の素材の食味を損なうことなく、滑らかでのど越しが良く、適度な硬さと粘弾性、すなわちもちもち感、ぷりぷり感を付与する改質澱粉、およびこの改質澱粉を原料とする麺類、およびその麺類の製造方法に関する。
麺類は、一般に小麦粉を主体とし、必要に応じて、そば粉、米粉、澱粉類などの穀類を配合してなる穀粉類に、食塩、かん水、乳化剤、ゲル化剤、着色料などを適宜添加して製造されている。近年、麺類への要望としては、適度な硬さがあり、弾力性に富んでいて、すなわちもちもち感、あるいはぷりぷり感のある麺が求められている。更に、滑らかでのど越しの良い、ツルツルとしたものが麺への大きな要望となっている。このような要望に対して、小麦粉に乳化剤、ゲル化剤などを添加して麺類をつくることが行われている(特許文献1、および2参照)。しかしながら、乳化剤、ゲル化剤を添加した麺は食味と風味が損なわれ易いという問題があった。
麺類の品質などの改良目的のためにタピオカ澱粉を中心とした様々な化工澱粉を配合して麺類を製造する方法が記載されている(特許文献3参照)。しかしながら、エステル化、エーテル化された澱粉を配合することにより、弾力は幾らか付与されるが、べたついた食感となり、好ましくなかった。
また、エーテル化澱粉に架橋の併用を施したり(特許文献4参照)、エステル化に架橋を施したりすることも提案されている。架橋を併用することにより、茹で時の澱粉粒の崩壊を抑制し、弾力の強い食感となるが、ゴム様の弾性となり、自然な粘弾性、すなわちもちもち、ぷりぷりとした食感を付与することができない。更に、架橋澱粉を多く含む麺を茹でると、麺の煮崩れや澱粉の溶出が多くなるといった問題が生じた。
また、油脂加工澱粉を麺類に利用する方法が記載されている(特許文献5参照)。しかしながら、これらの麺の食感は多少改善されるものの、その効果は十分なものではなく、油独特の臭味がそのまま残り、好ましいものではなかった。
特開2002−238484号 特開2004−024155号 特公昭62−62137号 特開2000−93104号 特開昭54−23145号
食品市場の要望としては、乳化剤やゲル化剤を使用しない、あるいは軽減したものであるが、麺類の食感的な要望は既存の澱粉だけで満たすことができなかった。そのような背景のもと、上記従来技術に鑑み、本発明は改質澱粉をそれらに替えて、または加えて使用することにより、麺類の素材の食味を損なうことなく、滑らかでのど越しが良く、適度な硬さと粘弾性、すなわちもちもち感、ぷりぷり感を付与する改質澱粉、およびこの改質澱粉を原料とする麺類、およびその麺類の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、上記改質澱粉の原料澱粉に対してのRVA最終粘度比率と原料澱粉に対しての沈降容積比率を特定範囲内に規定することによって、麺に適度な硬さと粘弾性を付与できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、原料澱粉に対してRVA最終粘度比率が105〜200%であり、かつ原料澱粉に対しての沈降容積比率が105〜350%の範囲であることを特徴とする改質澱粉に関する。
本発明を好適に実施するためには、上記改質澱粉の原料澱粉に対してのRVA最終粘度比率が110〜160%であり、かつ原料澱粉に対しての沈降容積比率が110〜250%の範囲であることが好ましい。
本発明の他の態様には、上記改質澱粉を原料とすることを特徴とする麺類がある。
本発明の別の態様には、上記改質澱粉を原料とすることを特徴とする麺類の製造方法がある。
本発明は、麺類の素材の食味を損なうことなく、滑らかでのど越しが良く、適度な硬さと粘弾性、すなわちもちもち感、あるいはぷりぷり感を付与できる改質澱粉、およびこの改質澱粉を原料とする麺類、およびその麺類の製造方法を提供するものである。
以下、本発明の改質澱粉、およびこの改質澱粉を原料とする麺類、およびその麺類の製造方法について詳細に説明する。
本発明の改質澱粉は、原料澱粉に対して8重量%の澱粉スラリーのRVA(ラピッド・ビスコ・アナライザー NEWPORT SCIENTIFIC社製)での最終粘度の比率(RVA最終粘度比率)が、105〜200%を満たすことを要件とするが、RVA最終粘度比率は、好ましくは110〜160%であり、更に好ましくは110〜150%であり、最も好ましくは110〜140%である。上記RVA最終粘度比率が105%未満であると、麺に十分な粘弾性が付与されない。あるいは澱粉が分解されており、麺自体が柔らかくなると同時に、麺表面が溶けてべとついた食感となり美味しくない。また、上記RVA最終粘度比率が200%より大きいと、硬くなり過ぎるので麺に適さない。上記の範囲内の改質澱粉を使用することで麺に適度な硬さと十分な粘弾性が付与できる。
ここでRVAとは、澱粉スラリーを任意の温度条件で加熱、あるいは冷却、あるいは保持させて、測定容器内の羽根に加わる澱粉糊液の抵抗を測定する装置であり、澱粉の性質を表す分析方法としてよく用いられる。上記のRVAの最終粘度の測定には、22メッシュの標準篩(目開き710μm)を通過した澱粉を使用する。具体的に、澱粉のRVA最終粘度とは、無水換算で8重量%となる澱粉スラリーを調製し十分に分散させた後、RVAにおいて羽根の回転速度が160rpmの攪拌条件の下、35℃より1分間に5℃ずつ昇温して95℃とし、更に95℃で10分間保持し、その後1分間に5℃ずつ降温し50℃に到達して1分間保持した時の粘度である。上記「RVA最終粘度比率」とは、下記式により求める。
Figure 2007289089
また、本発明の改質澱粉は、原料澱粉に対しての5重量%の澱粉スラリー沈降容積の比率(沈降容積比率)が105〜350%を満たすことを要件とするが、沈降容積比率は、好ましくは110〜250%であり、更に好ましくは110〜200%であり、最も好ましくは110〜180%である。上記沈降容積比率が105%未満であると、澱粉の分解により可溶成分が増加しているので、麺に利用した際に硬さと粘弾性の付与効果は期待できない。上記沈降容積比率が350%より大きいと、麺に粘弾性は付与されず、ぼそぼそとした食感となり適さない。上記の範囲内の改質澱粉を使用することで麺類に適した状態で、適度な硬さと十分な粘弾性が付与できる。
上記の沈降容積の測定には、22メッシュの標準篩(目開き710μm)を通過した澱粉を使用する。ここで沈降容積とは、800rpmの回転速度で攪拌した25℃の蒸留水140g中に、無水換算で5重量%となる澱粉を徐々に投入し、5分間分散させた後、200ml容のメスシリンダーに移して、容器内の澱粉を蒸留水で洗い流しながら、195gに調整後、上部にパラフィルムを被せてメスリンダーを5回上下にひっくり返し、壁面に付いた澱粉を蒸留水で洗い流し200gとして、2時間静置した時の澱粉の沈降した体積である。上記「沈降容積比率」とは、下記式により求める。
Figure 2007289089
本発明の改質澱粉の原料澱粉および加工方法としては、上記の条件を満たすものであれば、どのようなものでも採用することができる。
原料澱粉としては、例えばコメ澱粉、モチゴメ澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ、モロコシ澱粉、コムギ澱粉、オオムギ澱粉、サトイモ澱粉、リョクトウ澱粉、馬鈴薯澱粉、ユリ澱粉、カタクリ澱粉、チューリップ澱粉、カンナ澱粉、エンドウ澱粉、シワエンドウ澱粉、クリ澱粉、クズ澱粉、ヤマノイモ澱粉、カンショ澱粉、ソラマメ澱粉、インゲンマメ澱粉、サゴ澱粉、タピオカ澱粉、ワラビ澱粉、ハス澱粉、ヒシ澱粉等の天然澱粉、およびこれらの化工澱粉、例えばエステル化処理、エーテル化処理、酸処理、架橋処理した澱粉等が挙げられる。好ましくは、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、ワキシーコーンスターチ、ワキシーモロコシ澱粉、ワキシー馬鈴薯澱粉、ワキシー小麦澱粉である。地下澱粉、あるいはアミロペクチン含量が多い澱粉を原料澱粉とすることにより、麺に滑らかさと弾力性を付与する効果が十分に得られ易いためである。
また、本発明の改質澱粉は、好ましくは33%スラリーのpHが4〜7の範囲である原料澱粉を混合処理後、加熱処理することにより製造される。上記pHは、より好ましくは4.2〜6.0、更に好ましくは4.4〜5.5の範囲である。上記pHが4より小さいと、加熱の際に澱粉が分解してしまい、麺類の原料とした時に柔らかくなり、麺の表面が溶けてほぐれ難くなる。上記pHが7より大きい場合には、澱粉が着色するため麺の原料として適しておらず、十分な弾力性も付与されない。いずれにしても上記範囲内の条件を満たしていれば、麺に適度な硬さと十分な粘弾性を付与できる改質澱粉が得られ易くなる。
原料澱粉のpHを上記範囲内にするために、pH調整剤を適宜使用することができる。
pH調整剤は食品添加物であれば、特に決まったものでなくてもよい。pHを下げるのであれば、例えばクエン酸、グルコン酸、コハク酸、酢酸、酒石酸、フマル酸、リンゴ酸などを使用する。pHを上げるのであれば、例えばクエン酸三ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウムなどを使用する。
また、本発明の改質澱粉は、好ましくは原料澱粉に食用油脂、および/または食用タンパクを混合処理後、加熱処理することにより製造される。原料澱粉100重量部に食用油脂0.01〜0.30重量部、および/または食用タンパク0.01〜0.30重量部を混合処理後、加熱処理することがより好ましい。更に好ましくは食用油脂0.01〜0.20重量部、および/または食用タンパク0.01〜0.20重量部であり、最も好ましくは食用油脂0.01〜0.05重量部、および/または食用タンパク0.01〜0.10重量部である。
原料澱粉と食用油脂、および/または食用タンパクを加熱処理により強固に結合させるためには、使用する原料澱粉の種類にもよるが、加熱処理の条件は50℃〜180℃、10分〜600分の範囲であり、より好ましくは70℃〜150℃、30分〜360分の範囲であり、更に好ましくは80℃〜130℃、60分〜240分の範囲である。
食用油脂が0.01重量部、あるいは食用タンパクが0.01重量部未満であれば、澱粉と結合する為の食用油脂あるいは食用タンパクの量が不十分であるため、RVA最終粘度比率、あるいは沈降容積比率は105%未満となる。また、加熱処理条件が上記範囲の下限未満であれば、澱粉粒子と食用油脂、あるいは食用タンパクの結合が不十分であるため、RVA最終粘度比率、あるいは沈降容積比率は105%未満となる。これらの改質澱粉を麺に利用しても十分な改良効果は得られない。
食用油脂が0.30重量部、あるいは食用タンパクが0.30重量部より多ければ、油脂による酸化臭が生じたり、タンパクによる着色が発現したりするので好ましくない。
加熱処理条件が上記範囲の上限より大きく、澱粉が分解された場合には、可溶成分が増加することからRVA最終粘度比率あるいは沈降容積比率は105%未満となり、麺表面が溶けてべたついた食感となるばかりか、麺線のほぐれも悪くなる。また、澱粉の分解はほとんどなく、過剰な食用油脂あるいは食用タンパクが澱粉と結合した場合には、RVA最終粘度比率は200%より大きく、あるいは沈降容積比率は350%より大きくなり、麺は硬くなるが粘弾性は付与されない為、ぼそぼそとした食感となり不適である。
上記条件は既知の技術と比較して、食用油脂あるいは食用タンパクの添加割合が少ないので、油脂の酸化臭はほとんどなく、タンパクによる着色の問題が生じない。また、澱粉に対して食用油脂、あるいは食用タンパクの添加量が少ないことで、改質澱粉の流動性も改善されるため、麺を製造する際の作業性は一段と向上する。
澱粉が改質されていると、澱粉粒子と食用油脂、および/または食用タンパクが結合した状態であることから、親油性になった澱粉同士が凝集することでネットワークを形成し、見かけ上の沈降した澱粉体積が増える。沈降容積比率が105〜350%範囲内にある改質澱粉を麺に利用した場合には、澱粉と適量の食用油脂、および/または食用タンパクが強固に結合しているので水が浸透し難くなり、適度な水分下にある澱粉は崩壊することなく、膨潤した状態で維持されるため、麺に粘弾性が付与されると推察される。また、改質澱粉の油脂とタンパクが小麦粉のグルテンと強固に作用し、それらが緻密な構造を形成するため、麺に硬さも付与される。
原料澱粉は、加熱処理の前に混合処理をおこなう。ここでいう混合処理とは、原料澱粉に必要に応じてpH調整剤、食用油脂、食用タンパクを加えて、均一に混合することである。
原料澱粉と食用油脂、および/または食用タンパクを混合する場合には、予め水か他の溶媒に溶解、または分散させておけば、加熱処理する際に、原料澱粉と食用油脂、および/または食用タンパクが、より均一に混合し易くなり好適である。
混合処理方法としては、I型混合機、V型混合機、W型混合機、流動式混合機、ダブルコーン型混合機、擂潰式混合機、ドラム式混合機、リボン式混合機、剪断式混合機、三次元流動混合機、スクリーン式粉砕機、衝撃スクリーン式微粉砕機、機械式粉砕機、エクストルーダーなどの方法が挙げられる。これらの中では擂潰式混合機、あるいは三次元流動混合機による混合処理が均一でかつ容易であるため好適である。
加熱処理方法としては、従来知られている方法が使用でき、例えば流動層乾燥機、棚式乾燥機、コンベア式乾燥機、真空乾燥機、気流乾燥機、伝導伝熱乾燥機、振動乾燥機、近赤外線乾燥機、ロータリー式乾燥機、ドラム式乾燥機などの装置が挙げられる。具体的には、流動層乾燥機内で原料澱粉を均一分散させた状態で、必要に応じてpH調整剤を加えた食用油脂、および/または食用タンパク溶解液、あるいは分散液をスプレー噴霧し、澱粉表面に塗布させながら加熱し乾燥する方法や、原料澱粉と必要に応じてpH調製剤、食用油脂、および/または食用タンパクの溶解液、あるいは分散液を混合して澱粉表面に塗布させた後、棚式乾燥機で加熱処理する方法が挙げられる。これらの方法で加熱処理をすることにより、均一に、より強固に澱粉と食用油脂、および/または食用タンパクを結合させることができる。これらの中では棚式乾燥機による加熱処理方法が容易であるため好適である。
本発明に用いることができる食用油脂としては、食品に用いられる油脂であればいずれでもよく、豚油、牛脂、羊油、鯨油、魚油などの動物油脂、オリーブ油、カポック油、かや油、からし油、くるみ油、けし油、ごま油、米糠油、サフラワー油、大豆油、茶油、つばき油、とうもろこし油、なたね油、パーム油、ハイオレイックサフラワー油、ハイオレイック菜種油、ハイオレイックとうもろこし油、ハイオレイックひまわり油、ひまわり油、綿実油、やし油、落花生油などの植物油脂などが挙げられる。更には食品の分野で食用油脂と同様に使用されるモノグリセリドなどの油脂類縁物質、油脂の構成成分である脂肪酸、およびその誘導体等も使用できる。これらは1種、または2種以上を組み合わせて使用しても良い。
本発明に用いることができる食用タンパクとしては、食品に用いられる蛋白質であればいずれでもよく、植物蛋白質、動物蛋白質などを高含有する天然蛋白質素材、天然蛋白質素材に由来する粗精製蛋白質、精製蛋白質などが使用できる。動物蛋白質としては、食肉蛋白質、魚肉蛋白質などの筋肉蛋白質、血球蛋白質、血漿蛋白質などの血液蛋白質、卵白蛋白質、卵黄蛋白質などの卵蛋白質、カゼインなどの乳蛋白質、ホエー蛋白質などが挙げられる。植物蛋白質としては、小麦蛋白質、大豆蛋白質、トウモロコシ蛋白質などの種子蛋白質などが挙げられる。なお、本発明においては、蛋白質として単純蛋白質、複合蛋白質、誘導蛋白質のいずれも用いられる。単純蛋白質としては、アルブミンなどが挙げられる。複合蛋白質としては、血漿リポ蛋白質などのリポ蛋白質、ヘモグロビンなどのヘム蛋白質、カゼインなどのリン蛋白質などが挙げられる。誘導蛋白質とは、天然蛋白質を化学処理、酵素処理、物理処理などが施された蛋白質であり、例えばゼラチンなどが挙げられる。これらは1種、または2種以上を組み合わせて使用しても良い。
また、原料澱粉に食用油脂、および食用タンパクを含有する物質を添加して加熱処理することが簡便で好適である。例えばあさ粉、あわの精白粒、いんげんの全粒、えごま、えんばくのオートミール、きびの精白粒、コーンフラワー、コーンミール、ごま、米粉、米ぬか、小麦の胚芽、乾燥卵黄、全粉乳、大豆粉、調整粉乳、粉末落花生、もろこしフラワーなどの素材を原料澱粉に添加する方法により、簡便で同様の効果が得られる。
本発明の改質澱粉は、製品の素材の食味を損なうことなく、麺類の原料として使用することができる。更に、麺類に利用する際に本改質澱粉だけで、滑らかでのど越しが良く、適度な硬さと粘弾性の付与効果を達成することができる。
本発明の麺類とは、小麦粉に水を加えて麺帯を作製し、切り出したり、押し出したり、薄く延ばしたりしてできるものを指し、麺製品類(うどん、中華麺、焼きそば用麺、蕎麦、そうめんなど)、パスタ類(スパゲッティ、リングイネ、ブカティーニ、フェットチーネ、ペンネ、マカロニなど)、麺帯製品類(ワンタンの皮、ギョウザの皮、シューマイの皮など)を含む。
麺製品類は、生茹で麺、乾麺、および即席麺に大別される。その中の生茹で麺の商品形態は、常温流通麺(ロングライフ麺)、低温流通麺(チルド麺、調理麺、流水麺)、冷凍流通麺(冷凍麺)などに分類されるが、本発明はこれらの全てに適用できる。
本発明の改質澱粉を原料とする麺類は、改質澱粉を小麦粉、食塩、水など他の原料素材と混合し、混練することで麺帯を作製して、その麺帯を成形、調理するものである。なお、一般に麺類の製造に際して用いられている乳化剤、ゲル化剤、油脂類、糖類、香料、香辛料、調味料、着色料、酒類、保存料などを適宜配合してもよい。
麺類の製造において、本発明の改質澱粉を原料として使用すると、小麦粉だけで製造した場合に比べ、加水量を1〜12%増やすことができる。また、本改質澱粉の麺類への配合割合は、50重量%以下、好ましくは1〜45重量%、より好ましくは5〜40%である。本改質澱粉を麺類に50%より多く使用した場合には、小麦粉内のグルテンが希釈されるので、作業に支障をきたし、麺帯、および麺線にすることが難しい。ただし、上記範囲内で本発明の改質澱粉を麺類に使用した場合、麺製造時の作業性が維持されて、製品の素材の食味を損なうことなく、滑らかでのど越しが良く、適度な硬さと粘弾性の付与効果が得られ、更に麺線のほぐれにも有効である。
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されることはない。
(改質澱粉の作製)
(実施例1)
原料澱粉として、pH調整をしていないpH4.8のアセチル化タピオカ(置換度DS0.01)を使用し、流動層乾燥装置を用いて、原料澱粉を常温下にて均一に分散させて、原料澱粉に対して0.2重量部の大豆粉(油脂成分が20%、タンパク成分が40%)を水で分散した大豆粉分散液をスプレー噴霧した後、110℃で120分間の加熱処理をおこない、サンプルAを作製した。
(実施例2)
原料澱粉に、pH調整剤としてクエン酸を添加したpH4.5のワキシースターチを使用し、原料澱粉に対して0.2重量部の上記成分の大豆粉を水で分散してから、分散液を加えて擂潰式混合機で混合した後、棚式乾燥機にて100℃で240分間の加熱処理をおこない、サンプルBを作製した。
(実施例3)
原料澱粉として、pH調整をしていないpH4.8のワキシースターチを使用し、原料澱粉に対して0.2重量部の上記成分の大豆粉と0.1重量部のサフラワー油を水で分散してから、分散液を加えて擂潰式混合機で混合した後、棚式乾燥機にて110℃で240分間の加熱処理をおこない、サンプルCを作製した。
(比較例1)
原料澱粉として、pH調整をしていないpH4.8のワキシースターチを使用し、原料澱粉に対して1.0重量部の上記成分の大豆粉と0.2重量部のサフラワー油を水で分散してから、分散液を加えて擂潰式混合機で混合した後、棚式乾燥機にて120℃で240分間の加熱処理をおこない、サンプルDを作製した。
(比較例2)
原料澱粉として、pH調整をしていないpH4.8のワキシースターチを使用し、流動層乾燥装置を用いて、原料澱粉を常温下にて均一に分散させて、原料澱粉に対して0.2重量部の上記成分の大豆粉を水で分散してから、分散液をスプレー噴霧した後、40℃で30分間の加熱処理をおこない、サンプルEを作製した。
(比較例3)
原料澱粉として、pH調整をしていないpH4.8のワキシースターチを使用し、原料澱粉に対して0.5重量部の上記成分の大豆粉を水で分散させてから、分散液を加えて擂潰式混合機で混合した後、棚式乾燥機にて80℃で8分間の加熱処理をおこない、サンプルFを作製した。
(比較例4)
原料澱粉に、pH調整剤として炭酸水素ナトリウムを添加したpH7.1のワキシースターチを使用し、原料澱粉に対して0.2重量部の上記成分の大豆粉を水で分散させてから、分散液を加えて擂潰式混合機で混合した後、棚式乾燥機にて130℃で360分間の加熱処理をおこない、サンプルGを作製した。
(比較例5)
原料澱粉に、pH調整剤としてクエン酸を添加したpH3.8のアセチル化タピオカ(置換度DS0.01)を使用し、原料澱粉に対して0.2重量部の上記成分の大豆粉を水で分散させてから、分散液を加えて擂潰式混合機で混合した後、棚式乾燥機にて105℃で180分間の加熱処理をおこない、サンプルHを作製した。
サンプルA〜Hについて、製造時の実際の油脂、タンパクの添加量と改質澱粉のRVA最終粘度比率、および沈降容積比率を表1に示す。
Figure 2007289089
(冷凍うどんの作製)
上記で得られたサンプルA〜Hを用いて、うどんを作製し茹で上げた。作製方法は、麺用ミキサーにて、小麦粉(中力粉)にサンプルを混合し、そこへ水に溶解した食塩の溶解液を入れ、15分間ミキシングした。その生地を製麺機でまとめて複合し、30分間熟成後、圧延し切断(切刃#10角、麺線厚み2.8mm)をおこなってうどんを得た。得られたうどんは沸騰水中で14分間茹で上げ、流水で30秒間水洗をおこない、チャック式ビニール袋に充填した後、急速冷凍庫にて速やかにマイナス25℃まで冷凍した。更に、比較として、小麦粉だけを使用したうどんも上記方法で作製し、15分間茹で上げて冷凍した。うどん作製時の上記サンプルの配合割合と加水量の増加率を表2に示す。
Figure 2007289089
改質澱粉の改良効果を確認するため、上記の方法で冷凍し茹で戻したうどんを用いて、7名のパネラーによる官能評価(喫食時の粘弾性、硬さ、滑らかさ、食味)をおこなった結果を表3に示す。試験方法は以下の通りとした。
(試験方法)
冷凍状態から沸騰水中で2分間茹で戻し、流水で30秒間水洗したうどんについて、熟練された7名のパネラーによる相対的な評価(喫食時の粘弾性、硬さ、滑らかさ、食味)を、以下の評価基準に従って5段階で評価した。
5:非常にある、あるいは非常に良い
4:ある、あるいは良い
3:普通
2:ない、あるいは悪い
1:非常にない、あるいは非常に悪い
Figure 2007289089
サンプルA、B、Cを原料としたうどんは、小麦粉だけのうどんと比較した場合、小麦の食味を損なうことなく、粘弾性と滑らかさが付与されており明らかに改良されていた。また、小麦粉だけのうどんと比較用サンプルを原料にしたうどんを比べると、サンプルDを原料とした場合には、黄色く着色し、油脂の酸化臭があり好ましくなかった。サンプルE、Fでは改良効果が不十分で、大豆粉独特の臭味が残った。サンプルGではぼそぼそとした食感となり、着色とにおいの点でも劣った。サンプルHでは柔らかくべとついた食感になり美味しいものではなかった。いずれにしてもサンプルA、B、Cの場合と比べて、粘弾性、硬さ、滑らかさ、および食味で劣るものであった。
本発明の改質澱粉は、製造時の作業性が維持されて、製品の素材の食味を損なわない。更に、本改質澱粉だけで、滑らかでのど越しが良く、適度な硬さと粘弾性を付与することができ、とりわけ麺類の原料として使用することができる。

Claims (4)

  1. 原料澱粉に対してのRVA最終粘度比率が105〜200%であり、かつ原料澱粉に対しての沈降容積比率が105〜350%であることを特徴とする改質澱粉。
  2. 原料澱粉に対してのRVA最終粘度比率が110〜160%であり、かつ原料澱粉に対しての沈降容積比率が110〜250%であることを特徴とする改質澱粉。
  3. 請求項1〜2いずれか1項に記載の改質澱粉を原料とすることを特徴とする麺類。
  4. 請求項1〜2いずれか1項に記載の改質澱粉を原料とすることを特徴とする麺類の製造方法。

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