本発明の第1実施形態に係る車両側部構造について、図1〜図9に基づいて説明する。なお、各図に適宜記す矢印FR、矢印UP、矢印INは、それぞれ本発明が適用された自動車の車体前方向、車体上方向、及び車幅方向内側方向を示している。
図9に示される如く、本実施形態における自動車の車体10の側部(図9では、車体右側部を車室内側から示している)には、フロントドア開口部12とリヤドア開口部14とが形成されている。フロントドア開口部12にはフロントサイドドア16がフロントドア開口部12を開閉可能に取付けられており、リヤドア開口部14にはリヤサイドドア18がリヤドア開口部14を開閉可能に取付けられている。
なお、フロントドア開口部12は、フロントピラー23、ルーフサイドレール24、センタピラー22、ロッカ(サイドシル)26に囲まれて構成されており、リヤドア開口部14は、リヤドア開口部14を形成する周縁部としてのセンタピラー22、ルーフサイドレール24、クォータピラー28、ロッカ(サイドシル)26に囲まれて構成されている。また、以下、前後方向、車幅方向を用いて説明する場合には、リヤサイドドア18がリヤドア開口部14を閉止している状態における各方向を示すものとする。
図1には、図9の1−1線断面に沿った拡大断面図が示されている。図1に示される如く、クォータピラー28は、クォータピラー28の車幅方向外側部を構成するクォータピラーアウタパネル30を備えている。クォータピラーアウタパネル30の車幅方向外側壁部30Aの前端部からは車幅方向内側へ向かって前壁部30Bが形成されており、前壁部30Bの車幅方向内側端30Cからは車両前方へ向かって段差部32が突出形成されている。
段差部32は、前壁部30Bの車幅方向内側端30Cから車両前方へ向かって延びる側壁部32Aと、側壁部32Aの前端部32Bから車幅方向内側へ延びる前壁部32Cとを備えている。また、段差部32の前壁部32Cの車幅方向内側端部32Dからは車両前方へ向かってクォータピラーアウタパネル30の前フランジ30Dが形成されている。
なお、クォータピラーアウタパネル30の前フランジ30Dは、図示を省略したクォータピラーインナパネルの前フランジやリインホースメントの前フランジと接合され、クォータピラー28の前フランジ28Aを構成している。また、クォータピラー28の前フランジ28Aには、ウエザストリップ34が取付けられており、リヤサイドドア18の閉止状態で、ウエザストリップ34はドアトリム37とクォータピラー28との隙間をシールするようになっている。
リヤサイドドア18は、リヤサイドドア18の車外側を構成し車外に露出するドアアウタパネル38と、リヤサイドドア18の車内側を構成するドアインナパネル40とを周縁部で互いに結合した中空状のドア本体を有する構造となっている。また、ドア本体内には図示を省略したドアガラスやドアガラス昇降装置等が配置されており、ドアアウタパネル38の外周縁部38Aとドアインナパネル40の外周縁部40Aはヘミング加工によって結合されている。
リヤサイドドア18における後端部(外周縁部)18Aの車幅方向の幅W1は、リヤサイドドア18における前後方向中間部(外周縁部の内側部)18Bの車幅方向の幅W2に比べて薄く形成されている。また、リヤサイドドア18の後端部(外周縁部)18Aは、クォータピラー28におけるクォータピラーアウタパネル30の段差部32を車幅方向外側から覆うようになっている。より具体的に説明すると、ドアインナパネル40の後端部には、リヤサイドドア18によるリヤドア開口部14の閉止状態で、クォータピラーアウタパネル30の段差部32と対向する段部(ドア段差部)42が形成されている。段部42の側壁部42Aは段差部32の側壁部32Aに対向しており、段部42の前壁部42Bは段差部32の前壁部32Cに対向している。なお、段部42の側壁部42Aと前壁部42Bとの連結部42Cは略直角に屈曲されており、連結部42Cに設けられたドアウエザストリップ44が連結部42Cと、段差部32における側壁部32Aの前端部32Bと、の隙間をシールしている。また、ドアインナパネル40における段部42の側壁部42Aの車幅方向内側面には、係合部材としての係合ブラケット48が設けられている。
図5には係合ブラケット48の車両後方内側から見た斜視図が示されている。図5に示される如く、係合ブラケット48は3角形の板材で構成されており、周縁部にはフランジ48Aが形成されている。
図3には図1の3−3線断面に沿った拡大断面図が示されている。また、図6には図5の6−6線断面に沿った拡大断面図が示されており、図7には図5の7−7線断面に沿った拡大断面図が示されている。図3、図6及び図7に示される如く、フランジ48Aの長手方向から見た断面形状は、車幅内側方向(ドアインナパネル40の係合ブラケット取付け面と反対方向)へ凸の半円形状となっており、フランジ48Aの先端部とドアインナパネル40との間には隙間57が形成されている。
従って、フランジ48Aの長手方向から見た断面形状を、車幅内側方向へ凸の半円形状としたことで、乗員乗降時の乗員の足や洗車時の作業者の手がフランジ48Aに引っ掛かるのを防止できるようになっている。
また、フランジ48Aの先端部のエッジが隙間57を挟んでドアインナパネル40における段部42の側壁部42Aに対向する。この結果、フランジ48Aの先端部のエッジが目視され難くなるため、ドアインナパネル40における係合ブラケット48の外観品質を向上できるようになっている。また、フランジ48Aの先端部とドアインナパネル40との間に隙間57を形成したことで、フランジ48Aの先端部のエッジとドアウエザストリップ44との接触を防止できるため、ドアウエザストリップ44の耐久性能を向上できるようになっている。
また、電着塗装の塗料が隙間57から係合ブラケット48とドアインナパネル40との間に入り易く塗装し易い。更に、係合ブラケット48とドアインナパネル40との間に水が入った場合には、隙間57を通して排水されるため、排水性能が向上すると共に防錆性能も向上するようになっている。
図8には本実施形態の車両側部構造を示す車両後方内側から見た斜視図が示されている。図8に示される如く、係合ブラケット48の上下方向中間部には係合凸部56が形成されている。また、図3に示される如く、係合凸部56は車幅内側方向へ凸となっており、その車両前後方向から見た断面形状は開口部を車幅方向外側へ向け、開口部側に向かって上下に開いたコ字状となっている。
図8に示される如く、係合凸部56は長手方向をリヤサイドドア18の中央側から外周側へ向け配置されており、係合凸部56は車体前側上方向から車体後側下方に向かって傾斜している。また、係合凸部56はドア外周側となるドア後方側からドア中央側となるドア前方側に向かって突出高さが高くなっており、係合凸部56の傾斜部としての傾斜壁部56Aはリヤサイドドア18の中央側から外周側へ向かって低くなる(車幅方向に沿った幅が小さくなる)傾斜部となっている。即ち、図1に示される如く、係合凸部56の傾斜壁部56Aは車幅方向外側後方から車幅方向内側前方へ向かって傾斜している。
従って、乗員が乗車する場合には、係合凸部56によって乗員の足が、リヤサイドドア18のドア外周下方からドア中央へ向かってガイドされるため、乗車性能が向上するようになっている。また、電着塗装の塗料が係合凸部56の下方から上方に向かって入り易くなっている。また、係合ブラケット48とドアインナパネル40との間に水が入った場合には、係合凸部56の傾斜に沿って排水されるため、係合凸部56内に水が溜まり難く、排水性能が向上すると共に防錆性能も向上するようになっている。
図2には本実施形態の車両側部構造の車両側突状態を示す図1に対応する断面図が示されている。図2に示される如く、車両側突時には、リヤサイドドア18によるリヤドア開口部14の閉止状態で、リヤサイドドア18に設けた係合ブラケット48の係合凸部56がクォータピラーアウタパネル30の段差部32の側壁部32Aと係合する。この際、係合凸部56は長手方向をリヤサイドドア18の中央側から外周側へ向け配置されており、係合凸部56の傾斜壁部56Aはリヤサイドドア18の中央側から外周側へ向かって低くなる傾斜部となっている。
従って、他車両等がリヤサイドドア18に車幅方向外側から車幅方向内側に向って衝突し、側突荷重(図2の矢印F1)によって、リヤサイドドア18の中央部が車幅方向内側へ変形して、リヤサイドドア18の後端部18Aがドア中央方向且つ車幅内側方向(図2の矢印F2方向)へ引っ張られる場合には、側突荷重F2の方向に長手方向が沿っている係合凸部56の傾斜壁部56Aによって、側突荷重F2を支持することができるようになっている。このため、大きな側突荷重F2が作用した場合にも係合凸部56が変形せず、側突荷重F2がリヤサイドドア18から係合凸部56を介して車体側へ確実に伝達され、リヤサイドドア18の変形が抑制されるようになっている。
図1に示される如く、係合凸部56の傾斜壁部56Aの後端は係合ブラケット48のフランジ48Aの前端に連続している。
従って、車両側突時には係合ブラケット48の係合凸部56がクォータピラーアウタパネル30から受けた荷重をフランジ48Aによって係合ブラケット48の外周部に分散できるようになっている。このため、係合ブラケット48とクォータピラーアウタパネル30との間の効率的な荷重伝達が可能になる。また、車両側突時には車幅内側方向へ凸の半円形状となっているフランジ48Aもクォータピラーアウタパネル30に当たるため、更に効率的な荷重伝達が可能になる。
図5に示される如く、係合ブラケット48の上部48Bは、ドアインナパネル40への取付部となっており、貫通孔49に挿入されたリベット50と、接着剤とによってドアインナパネル40における段部42の側壁部42Aに接合されている。また、係合ブラケット48の下部48Cは、ドアインナパネル40への取付部となっており、前後に離間した2との貫通孔52にそれぞれ挿入されたリベット54と、接着剤とによってドアインナパネル40における段部42の側壁部42Aに接合されている。なお、係合凸部56は係合ブラケット48の上下方向中間部48Dの下部に形成されている。
従って、係合ブラケット48によって、ドアインナパネル40における係合ブラケット48を取付けた部位を補強できるようになっている。また、係合ブラケット48のフランジ48Aを車幅内側方向へ凸の半円形状としたことで、係合ブラケット48の上部48Bから飛び出したリベット50や、係合ブラケット48の下部48Cから飛び出したリベット54に、乗降する乗員の足に引っかかるのを防止できるようになっている。
また、係合ブラケット48の上部48Bと下部48Cとに塗布した接着剤が、係合ブラケット48の上部48B又は下部48Cからはみ出した場合には、はみ出した接着剤をフランジ48Aの凸部の内側へ溜めることで、接着剤が係合ブラケット48の周縁部から出るのを防止できるようになっている。また、はみ出した接着剤が硬化して乗降する乗員の足に引っかかるのを防止できるようになっている。
また、車両側突時には係合ブラケット48からドアインナパネル40への荷重伝達を、係合ブラケット48の上部48Bと下部48Cと、ドアインナパネル40における段部42の側壁部42Aとの当接部を介して効率良く伝達できるようになっている。また、接着剤によって、係合ブラケット48とドアインナパネル40との間をシールできるため、この部位の防錆性能が向上するようになっている。また、係合ブラケット48が鉄、ドアインナパネル40をアルミ等で構成し、異種金属接合となって場合には接着剤によって電食(接触腐食)を防止できるようになっている。
また、リベット50、54による係合ブラケット48とドアインナパネル40との結合部にドア開閉時の応力が集中するのを、接着剤による面接着よって防止できる。このため、ドアインナパネル40の耐久性能が向上するようになっている。また、ドアインナパネル40における係合ブラケット48の接合部近傍において、ドアウエザストリップ44の取付面(シール面)の剛性が向上する。このため、リヤサイドドア18のシール性能が向上すると共に、リヤサイドドア18を閉める際の運動エネルギがドアウエザストリップ44に効率良く伝達され、リヤサイドドア18が閉まり易くなる(ドア閉まり性能が向上する)ようになっている。
図5に示される如く、係合凸部56の傾斜壁部56Aには円形の貫通孔58が形成されている。この貫通孔58にはドアストッパ60が挿通しており、ドアストッパ60の頂部60Aが傾斜壁部56Aの車幅方向内側へ突出している。なお、ドアストッパ60は円錐台形の弾性体で構成されており、根元部60Bはドアインナパネル40における段部42の側壁部42Aに形成した取付孔62に固定され、係合凸部56で覆われている。
従って、ドアストッパ60の根元部60B側を係合凸部56によって覆うことで、図4に示される如く、乗員乗降時に乗員の足Kがドアストッパ60に引っ掛かるのを抑制できるようになっている。また、ドア閉時には、ドアストッパ60によって、リヤサイドドア18の閉方向の移動を確実に停止できるため、係合凸部56とクォータピラーアウタパネル30の段差部32との干渉を防止するための間隔を狭くできる。この結果、車両側突時の初期に係合凸部56をクォータピラーアウタパネル30の段差部32に確実に当てることができるようになっている。
また、貫通孔58の周縁部にドアストッパ60の外周部が当たることで、ドアストッパ60の倒れ(転び)を防止できる。また、係合凸部56によってドアインナパネル40におけるドアストッパ60の取付部の被水防止が可能となるため、ドアインナパネル40のドアストッパ60の取付部の防錆性を向上できるようになっている。
また、ドアインナパネル40におけるドアストッパ60の取付部に係合ブラケット48を配置するため、ドアインナパネル40におけるドアストッパ60の取付部以外の部位に係合ブラケット48を配置する構成に比べ、取付部品の点数が少なく見える。この結果、係合ブラケット48を設けたことによるドアインナパネル40の外観品質の低下を抑制できるようになっている。
なお、通常のドア閉止状態では、係合凸部56がクォータピラーアウタパネル30における段差部32の側壁部32Aの前部に形成された凹部64に所定の間隔を開けて対向している。また、凹部64の底部64Aの前端からは、車幅方向外側前方へ向って傾斜した前壁部64Bが形成されている。
係合凸部56における傾斜壁部56Aの前端56Bからは、車幅方向外側前方へ向かって傾斜前壁部56Cが形成されている。即ち、傾斜前壁部56Cは係合凸部56におけるドア中央側に形成されており、リヤサイドドア18の外周側から中央側へ向かって低くなる(車幅方向に沿った幅が小さくなる)。また、傾斜前壁部56Cの前端はフランジ48Aに連結されている。なお、ドアウエザストリップ44はドアインナパネル40における係合凸部56のドア中央側となる前方側に設けられている。
図6に示される如く、ドアインナパネル40における段部42の側壁部42Aに対する傾斜前壁部56Cの傾斜角β1は、ドアインナパネル40における段部42の側壁部42Aに対する傾斜壁部56Aの傾斜角β2に比べて大きくなっている(β1>β2)。
図1に示される如く、係合凸部56の傾斜壁部56Aの前端56Bにおける、傾斜壁部56Aと傾斜前壁部56Cとの開き角θ1は略90度となっており、洗車時に作業者の手が係合凸部56の傾斜壁部56Aの前端56Bに引っ掛かり難くなっていると共に、係合ブラケット48の成形性が向上するようになっている。
図9に示される如く、リヤサイドドア18のドア本体内となるドアインナパネル40の車幅方向外側(図9における紙面裏側)の上下方向中間部には、図9に破線で示すように、インパクトビーム70が車体前後方向に沿って配設されている。インパクトビーム70の後端部70Aには、剛性部材であるインパクトビーム取付部材としてのインパクトビームエクステンション(以下、エクステンションという)72が固定されており、エクステンション72を介してドアインナパネル40の後部に結合されている。
なお、剛性部材とはドアインナパネル40に比べて強度及び剛性が高いブラケット、リインフォースメント等の部材である。
なお、インパクトビーム70は断面円形のパイプ材で構成されており、外周部がドアアウタパネル38に接着剤76によって接着されている。また、エクステンション72におけるインパクトビーム取付部72Aは、断面形状が半円形状の車幅内側方向へ凹の溝部となっており、インパクトビーム70の後端部70Aはエクステンション72のインパクトビーム取付部72Aの円弧状内周部に挿入された状態で接着、溶接等によって固定されてている。
図8にはリヤサイドドア18の後端下部を車幅方向内側後方から見た斜視図が示されている。図8に示される如く、エクステンション72は板材によって構成されており、エクステンション72の取付部72Bはドアインナパネル40における段部42の側壁部42Aに取付けられている。このため、ドアインナパネル40における段部42の側壁部42Aがエクステンション72と係合ブラケット48とによって挟持されている。
従って、図2に示される如く、車両側突時に、側突荷重(図2の矢印F1)によってリヤサイドドア18が二点鎖線で示される位置から実線で示される車幅方向内側位置へ移動した場合には、インパクトビーム70の後端部70Aとともにリヤサイドドア18の後端部(外周縁部)18Aがクォータピラーアウタパネル30の段差部32が当るようになっている。この際、平面視において車幅方向内側へ凸の三角形状(楔形状)となっている係合凸部56の傾斜壁部56Aの前端56Bが、クォータピラーアウタパネル30の凹部64の底部64Aに当り、底部64Aを車幅方向内側へ押込むようになっている。即ち、係合ブラケット48の係合凸部56が、クォータピラーアウタパネル30の凹部64の底部64Aに食い込むようになっている。この結果、車両側突時の初期にインパクトビームに70に作用する側突荷重を車体側へ迅速に伝達し、リヤサイドドア18がドア中央方向且つ車幅内側方向(図2の矢印F2方向)へ変形するのを抑制できるようになっている。
また、係合ブラケット48の係合凸部56が、クォータピラーアウタパネル30の凹部64の底部64Aに食い込む際に、係合凸部56の傾斜前壁部56Cと、クォータピラーアウタパネル30の凹部64の前壁部64Bとの摺動によって、リヤサイドドア18をドア外周方向且つ車幅外側方向(図2の矢印F2方向と反対方向)へ引き戻す。この結果、リヤサイドドア18の変形を更に抑制できるようになっている。
また、ドア開閉時にインパクトビーム70からドアインナパネル40に作用する車幅方向の応力を、ドアインナパネル40における、エクステンション72と、係合ブラケット48との接合部に分散できる。この結果、ドア開閉時にインパクトビーム70からドアインナパネル40に作用する車幅方向の応力をドアインナパネル40のみで支持する構成に比べて、ドアインナパネル40の板厚を低減し、軽量化が図れるようになっている。特に、ドアインナパネル40をアルミ、マグネシューム、樹脂等のヤング率の低い材料とした場合には、大幅な板厚のアップが不要となる。
また、ドアインナパネル40における段部42の側壁部42Aがエクステンション72と係合ブラケット48とによって挟持されているため、リヤサイドドア18において質量の重いインパクトビーム70の取付部の面剛性が高くなり、ドア開閉等によるインパクトビーム70からドア内の各部品に伝わる振動を抑制できると共に、ドア閉まり音や走行時の異音を低減できるようになっている。また、インパクトビーム70、エクステンション72、係合ブラケット48の各質量がこれらの取付部となる部位に集中する。このため、ドア閉時の車両正面から見たリヤサイドドア18のねじれ弾性変形が安定化し、ドア閉まり性能が向上するようになっている。更に、ドアガラスの重心と上下方向においてドアロックに対して対称となるドア下端部にインパクトビーム70、エクステンション72、係合ブラケット48の各質量を集中させることができる。この結果、重いドアガラスとバランスがとれ、ドア閉まり性能が更に向上するようになっている。
また、図4に示される如く、乗降時に乗員の足Kの移動方向となるドア前後方向に対して、図1に示される如く、係合ブラケット48における係合凸部56の傾斜壁部56Aと傾斜前壁部56Cとが傾斜面となっている。この結果、乗降時に乗員の足Kが係合ブラケット48に引っ掛かるのを防止できるようになっている。また、係合ブラケット48における係合凸部56によって、リヤサイドドア18における後端部(外周縁部)18Aの車幅方向の幅W1と、前後方向中間部(外周縁部の内側部)18Bの車幅方向の幅W2との差を小さくできるため、乗降時、特に乗車時に乗員の足Kが段部42の前壁部42Bに引っ掛かるのを防止できるようになっている。また、ドアウエザストリップ44が係合凸部56のドア中央側となる前方側に設けられている。この結果、ドアウエザストリップ44によって、降車時に乗員の足が係合凸部56に当たるのを防止できる。このため、乗降性能が向上するようになっている。また、乗車時には係合ブラケット48によって乗員の足とドアウエザストリップ44との干渉を防止できるようになっている。
図3に示される如く、係合凸部56の傾斜壁部56Aの下端56Dからは、車幅方向外側下方へ向かって下壁部56Eが形成されており、下壁部56Eの下端は係合ブラケット48の下部48Cの上端に連結されている。また、係合凸部56の傾斜壁部56Aの上端56Fからは、車幅方向外側上方へ向かって上壁部56Gが形成されており、上壁部56Gの上端は係合ブラケット48の上下方向中間部48Dの上部66に連結されている。更に、係合ブラケット48における上下方向中間部48Dの上部66は、車幅方向内側下方から車幅方向外側上方へ向かって傾斜しており、上端66Aは係合ブラケット48の上部48Bの下端に連結されている。
図9に示される如く、インパクトビーム70の前端部70Bもエクステンション72を介してドアインナパネル40の前部に結合されている。
次に、本実施形態の作用を説明する。
上記構成の本実施形態では、図2に示される如く、車両側突時に、側突荷重(図2の矢印F1)によって、リヤサイドドア18の中央部が車幅方向内側へ変形して、リヤサイドドア18の後端部18Aがドア中央方向且つ車幅内側方向(図2の矢印F2方向)へ引っ張られた場合には、側突荷重F2の方向に長手方向が沿っている係合凸部56の傾斜壁部56Aによって、側突荷重F2を支持することができる。この結果、大きな側突荷重F2が作用した場合にも係合凸部56が容易に変形せず、側突荷重F2がリヤサイドドア18から係合凸部56を介してクォータピラー28へ確実に伝達され、リヤサイドドア18の変形が抑制される。
また、係合ブラケット48とエクステンション72とによって、ドアインナパネル40における係合ブラケット48を取付けた部位を補強できる。
また、係合ブラケット48の係合凸部56が、クォータピラーアウタパネル30の凹部64の底部64Aに食い込む際に、車幅方向外側から車幅方向内側へ向かって、リヤサイドドア18の中央側から外周側へ傾斜した傾斜前壁部56Cが、段差部32の側壁部32Aに形成した凹部64の前壁部64Bに当たる。この結果、係合凸部56の傾斜前壁部56Cと、クォータピラーアウタパネル30の凹部64の前壁部64Bとの摺動によって、リヤサイドドア18をドア外周方向且つ車幅外側方向(図2の矢印F2方向と反対方向)へ引き戻すことができる。このため、リヤサイドドア18の変形を更に抑制できる。
また、本実施形態では、係合凸部56がドアインナパネル40におけるインパクトビーム70の後端部70Aが固定された部位に設けらている。この結果、側突時にインパクトビーム70に作用した側突荷重がインパクトビーム70の後端部70Aから係合凸部56を介して車体側へ迅速に伝達される。このため、リヤサイドドア18の変形が効果的に抑制される。
また、本実施形態では、図4に示される如く、乗員乗降時に乗員の足Kの移動方向となるドア前後方向に対して、図1に示される如く、係合ブラケット48における係合凸部56の傾斜壁部56Aと傾斜前壁部56Cとが傾斜面となっている。この結果、乗降時に乗員の足Kが係合ブラケット48に引っ掛かるのを防止できる。
また、係合ブラケット48における係合凸部56によって、リヤサイドドア18における後端部(外周縁部)18Aの車幅方向の幅W1と、前後方向中間部(外周縁部の内側部)18Bの車幅方向の幅W2との差を小さくできる。このため、乗降時、特に乗車時に乗員の足Kが段部42の前壁部42Bに引っ掛かるのを防止できるようになっている。
また、ドアウエザストリップ44が係合凸部56のドア中央側となる前方側に設けられている。この結果、ドアウエザストリップ44によって、降車時に乗員の足が係合凸部56に当たるのを防止できる。また、乗車時には係合ブラケット48によって乗員の足とドアウエザストリップ44との干渉を防止できる。このため、乗降性能が更に向上する。
また、ドアインナパネル40をプレス形成する際にしわが発生し易いドアインナパネル40における後端下部を係合ブラケット48で覆うことができるため、ドアインナパネル40の見栄えを向上できる。
なお、本実施形態では、図1に示される如く、通常のドア閉止状態で、係合凸部56と対向するクォータピラーアウタパネル30の側壁部32Aに凹部64を形成したが、凹部64に代えて開口部を形成し、側突時に係合凸部56が開口部に入る構成としても良い。また、図1に二点鎖線で示される如く、クォータピラーアウタパネル30の側壁部32Aに凹部64や開口部を形成せず、側突時に係合凸部56が側壁部32Aに当たる構成としても良い。更に、図5に二点鎖線で示すように、係合ブラケット48におけるフランジ48Aの下部に水抜き用の切欠59を形成しても良い。
また、図7に示される如く、係合ブラケット48の板厚T1をドアインナパネル40の板厚T2に比べて厚く(T1>T2)することで、係合ブラケット48によるドアインナパネル40の補強効果を増加させる構成としても良い。
次に、本発明の第2実施形態に係る車両側部構造について図10に基づいて説明する。
なお、第1実施形態と同一部材に付いては、同一符号を付してその説明を省略する。
図10には図5に対応する斜視図が示されている。図10に示される如く、本実施形態では、係合ブラケット48における周縁部に形成されたフランジ48Aの少なくとも下部に切欠80が形成されており、車両側突時に、フランジ48Aの下部に前後方向から作用する荷重によって、図10に二点鎖線で示すように、フランジ48Aの下部が切欠80を形成した部位を起点にして車幅内側方向へ凸となるように屈曲し凸部84が形成されるようになっている。
従って、本実施形態においても第1実施形態と同様の作用効果が得られると共に、車両側突時に、側突荷重によってリヤサイドドア18が車幅方向内側位置へ移動した場合には、係合ブラケット48におけるフランジ48Aの凸部84が、クォータピラーアウタパネル30の凹部64の底部64Aに当り、底部64Aを車幅方向内側へ押込むようになっている。この結果、車両側突時に、リヤサイドドア18がドア中央方向且つ車幅内側方向へ変形するのを係合ブラケット48の係合凸部56に加えて、係合ブラケット48のフランジ48Aに形成した凸部84によっても抑制できる。
また、係合ブラケット48における周縁部に形成されたフランジ48Aの少なくとも下部に切欠80が形成されているため、電着塗装の塗料が切欠80から係合ブラケット48とドアインナパネル40との間に入り易く塗装し易い。更に、係合ブラケット48とドアインナパネル40との間に水が入った場合には、切欠80を通して排水されるため、排水性能が向上すると共に防錆性能も向上する。
次に、本発明の第3実施形態に係る車両側部構造について図11に基づいて説明する。
なお、第1実施形態と同一部材に付いては、同一符号を付してその説明を省略する。
図11には図5に対応する斜視図が示されており、図12には図11の12−12線断面に沿った拡大断面図が示されている。
図11に示される如く、本実施形態では、係合ブラケット48の係合凸部56における前部56Hが、上下方向へ延長されている。また、係合凸部56の前部56Hの上端部56Jは係合ブラケット48のフランジ48Aにおける上端部に達しており、係合凸部56の前部56Hの下端部56Kは係合ブラケット48のフランジ48Aにおける下上端部に達している。
従って、本実施形態においても第1実施形態と同様の作用効果が得られると共に、係合ブラケット48の係合凸部56における前部56Hを上下方向へ延長したため、車両側突時に係合ブラケット48の係合凸部56とドアインナパネル40との係合部が拡大する。この結果、側突荷重がリヤサイドドア18から車体側へ確実に伝達され、リヤサイドドア18の変形が確実に抑制される。
なお、本実施形態では、図12に示される如く、係合ブラケット48における前方縁部のフランジ48Aの内部に接着剤85を充填して、ドアインナパネル40における段部42の側壁部42Aに結合させた構成としても良い。また、接着剤85に代えてシールゴムやパッキンを係合ブラケット48における前方縁部のフランジ48Aの内部に設けても良い。
次に、本発明の第4実施形態に係る車両側部構造について図13に基づいて説明する。
なお、第1実施形態と同一部材に付いては、同一符号を付してその説明を省略する。
図13には図5に対応する斜視図が示されている。図13に示される如く、本実施形態では、係合ブラケット48の上部と下部とにそれぞれ係合凸部56が形成されており、係合ブラケット48の上下方向中間部48Dの下部がドアインナパネル40への取付壁部48Eとなっている。この取付壁部48Eの中央部には、ボルト等の締結部材88を挿通するための取付孔90が形成されており、締結部材88によって係合ブラケット48がドアインナパネル40に取付けられている。
従って、本実施形態においても第1実施形態と同様の作用効果が得られると共に、係合ブラケット48の上部と下部とにそれぞれ係合凸部56を形成したため、車両側突時に係合ブラケット48の係合凸部56とドアインナパネル40との係合部が拡大する。この結果、側突荷重がリヤサイドドア18から車体側へ確実に伝達され、リヤサイドドア18の変形が確実に抑制される。
次に、本発明の第5実施形態に係る車両側部構造について図14に基づいて説明する。
なお、第4実施形態と同一部材に付いては、同一符号を付してその説明を省略する。
図14には図13に対応する斜視図が示されている。図14に示される如く、本実施形態では、係合ブラケット48の上下の係合凸部56における傾斜壁部56Aの前端56Bの高さH1が第4実施形態に比べて高くなっていると共に、傾斜壁部56Aの前端56Bにおける傾斜壁部56Aと傾斜前壁部56Cとの開き角度θ2が第4実施形態に比べて鋭角になっている。
従って、本実施形態においても第4実施形態と同様の作用効果が得られると共に、係合ブラケット48の上下の係合凸部56における傾斜壁部56Aの前端56Bの高さH1が第4実施形態に比べて高くなっていると共に、傾斜壁部56Aの前端56Bにおける傾斜壁部56Aと傾斜前壁部56Cとの開き角度θ2が第4実施形態に比べて鋭角になっているため、車両側突時に係合ブラケット48の係合凸部56とドアインナパネル40との係合がより確実に行われる。この結果、側突荷重がリヤサイドドア18から車体側へ確実に伝達され、リヤサイドドア18の変形が確実に抑制される。
次に、本発明でない参考例としての第6実施形態に係る車両側部構造について図15に基づいて説明する。
なお、第1実施形態と同一部材に付いては、同一符号を付してその説明を省略する。
図15には図5に対応する斜視図が示されている。図15に示される如く、本実施形態では、係合ブラケット48に上下方向に所定の間隔を開けて複数(図15では3本)の係合凸部56が形成されており、各係合凸部56の上方及び下方にドアインナパネル40への取付壁部48Fが形成されている。また、各係合凸部56は三角錐形状となっており、下壁部56Eと上壁部56Gとの連結部である稜線56Mが傾斜部となっている。
従って、本実施形態においても第1実施形態と同様の作用効果が得られると共に、係合ブラケット48に上下方向に所定の間隔を開けて複数(図15では3本)の係合凸部56形成したため、車両側突時に係合ブラケット48の各係合凸部56とドアインナパネル40との係合部が拡大する。この結果、側突荷重がリヤサイドドア18から車体側へ確実に伝達され、リヤサイドドア18の変形が確実に抑制される。
次に、本発明の第7実施形態に係る車両側部構造について図16に基づいて説明する。
なお、第1実施形態と同一部材に付いては、同一符号を付してその説明を省略する。
図16には図8に対応する斜視図が示されている。図16に示される如く、本実施形態では、係合ブラケット48の係合凸部56の車両前後方向に対する車両上下方向への傾斜角度α1が第1実施形態に比べて大きくなっており、係合凸部56の傾斜壁部56Aの後端56Lが係合ブラケット48の後端下部に連結されている。
従って、本実施形態においても第1実施形態と同様の作用効果が得られると共に、係合凸部56の傾斜壁部56Aの後端56Lが係合ブラケット48の後端下部に連結されているため、乗員が乗車する場合には、係合凸部56によって乗員の足が、リヤサイドドア18のドア外周下方からドア中央へ向かってガイドされるため、乗車性能が更に向上する。
次に、本発明の第8実施形態に係る車両側部構造について図17に基づいて説明する。
なお、第1実施形態と同一部材に付いては、同一符号を付してその説明を省略する。
図17には図8に対応する斜視図が示されている。図17に示される如く、本実施形態では、係合ブラケット48における少なくとも下方側のフランジ48Aに、車幅方向内側へ凸の屈曲部92が形成されており、屈曲部92の下方側とドアインナパネル40との間の隙間から、係合ブラケット48とドアインナパネル40との間に入った水を排水できるようになっている。
従って、本実施形態においても第1実施形態と同様の作用効果が得られると共に、係合ブラケット48における少なくとも下方側のフランジ48Aに形成した車幅方向内側へ凸の屈曲部92の下方側とドアインナパネル40との間の隙間から、係合ブラケット48とドアインナパネル40との間に入った水を排水できる。この結果、排水性能が更に向上すると共に防錆性能も更に向上する。
次に、本発明の第9実施形態に係る車両側部構造について図18に基づいて説明する。
なお、第1実施形態と同一部材に付いては、同一符号を付してその説明を省略する。
図18には図1に対応する断面図が示されている。図18に示される如く、本実施形態では、係合ブラケット48の係合凸部56における傾斜前壁部56Cに開口部94が形成されており、開口部94は傾斜前壁部56Cの全域又は一部に形成されている(図18では開口部94が傾斜前壁部56Cの全域に形成されている)。
従って、本実施形態においても第1実施形態と同様の作用効果が得られると共に、係合ブラケット48の係合凸部56における傾斜前壁部56Cに形成した開口部94から、電着塗装の塗料が係合ブラケット48とドアインナパネル40との間に入り易く塗装し易い。
次に、本発明の第10実施形態に係る車両側部構造について図19に基づいて説明する。
なお、第1実施形態と同一部材に付いては、同一符号を付してその説明を省略する。
図19には図1に対応する断面図が示されている。図19に示される如く、本実施形態では、ドアストッパ60の外周部に鍔部60Cがリング状に突出形成されており、この鍔部60Cが、係合凸部56の傾斜壁部56Aに形成された貫通孔58とドアストッパ60との隙間を塞いでいる。
従って、本実施形態においても第1実施形態と同様の作用効果が得られると共に、ドアストッパ60の外周部にリング状に突出形成された鍔部60Cが、係合凸部56の傾斜壁部56Aに形成された貫通孔58とドアストッパ60との隙間を塞いでいるため、貫通孔58が目視され難くなる。この結果、係合ブラケット48の外観品質を向上できる。
以上に於いては、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記各実施形態においては、ドアインナパネル40が剛性部材としてのエクステンション72と、係合ブラケット48とによって挟持されている構成にしたが、エクステンション72に代えてドアロック等の他の剛性部材と、係合ブラケット48とによってドアインナパネル40を挟持する構成としても良い。
また、上記各実施形態においては、係合凸部56を係合ブラケット48に設けたが、係合凸部56をドアインナパネル40に形成しても良い。
また、上記各実施形態においては、後席乗員用のリヤドア開口部14を開閉するためのリヤサイドドア18に本発明が適用された例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、フロントサイドドア16等に適用されても良い。