以下、本発明の実施形態に係る防振装置について図面を参照して説明する。なお、図中、符号Sは装置の軸心を表しており、この軸心Sに沿った方向を装置の軸方向として以下の説明を行う。
(第1の実施形態)
図1及び図2には本発明の第1の実施形態に係る防振装置が示されている。この防振装置10には、その外周下端側に円筒状の第1外筒12が設けられると共に、この第1外筒12の上側に円筒状の第2外筒14が連結固定されている。第1外筒12には、その上端部に外周側に延出するフランジ部16が屈曲形成されている。第2外筒14には、軸方向中間部に周方向に延在する環状の段差部18が形成されると共に、この段差部18を介して下側及び上側にそれぞれ大径円筒部20及び小径円筒部22が設けられている。また第2外筒14には、その下端部に外周側へ延出するフランジ部24が屈曲形成されており、このフランジ部24の下側には、第1外筒12のフランジ部16が当接している。防振装置10では、フランジ部16の外周側がフランジ部24の外周側を挟み込みむように内周側へ屈曲されることにより、第1外筒12と第2外筒14とが互いにかしめ固定されている。防振装置10は、第1外筒12又は第2外筒14がカップ状のホルダ金具(図示省略)内へ嵌挿され、このホルダ金具を介して車両のエンジン側へ連結固定される。
第2外筒14には、その小径円筒部22の内周面に略円筒形状に形成されたゴム弾性体26の外周部が加硫接着されると共に、大径円筒部20の内周面にゴム弾性体26の外周部から下方へ延出する薄肉円筒状の被覆部28が加硫接着されている。ゴム弾性体26は、その断面形状が外周側から内周側へ向って下方へ傾斜する略逆V字状に形成されている。防振装置10には、第2外筒14の内周側に円柱状の取付金具30が配置されており、この取付金具30の外周面にはゴム弾性体26の内周面が加硫接着されている。取付金具30には、その上端面から軸心Sに沿ってねじ穴32が穿設されている。防振装置10は、ねじ穴32にねじ込まれたボルト(図示省略)を介して取付金具30が車体側へ連結固定される。
防振装置10内には、全体として略肉厚円板状に形成された仕切金具34が外筒12,14の内周側に嵌挿されている。仕切金具34は、外筒12,14の内周側の空間を軸方向に沿って2個の小空間に区画しており、これら2個の小空間はそれぞれ水、エチレングリコール等の液体が封入される主液室36及び副液室38とされる。ここで、主液室36は、ゴム弾性体26を隔壁の一部としており、その内容積がゴム弾性体26の弾性変形に伴って変化(拡縮)する。また副液室38は、後述するダイヤフラム40を隔壁の一部としており、ダイヤフラム40の変形により内容積が拡縮可能とされている。
図1に示されるように、第1外筒12には、その内周面及び外周面に薄膜状に形成されたゴム製の被覆部42が加硫接着されており、この被覆部42の下端部には、上方へ向って開いた椀状に形成されたゴム製のダイヤフラム40の周縁部が全周に亘って接合されている。ダイヤフラム40は第1外筒12の下端側を閉止しており、十分に小さい荷重(液圧)により副液室38を拡縮するように変形可能とされている。
図5に示されるように、仕切金具34には、その下端側に樹脂材料やアルミニウム等の金属材料により形成された略肉厚円筒状の第1オリフィス部材44が設けられると共に、この第1オリフィス部材44の上側にアルミニウム等の金属材料により形成された略円板状の第2オリフィス部材46が配置されている。第1オリフィス部材44は、下端側が底板部45により閉止された有底円筒状に形成されており、この底板部45には、その径方向中間部に複数個(本実施形態では、4個)の流通開口48が円形に穿設されると共に、中心部に軸心Sに沿って上方へ突出する丸棒上のガイドロッド49が形成されている。また第1オリフィス部材44には、その外周面における上端側に外周側へ延出する環状のフランジ部52が一体的に形成されている。
第2オリフィス部材46には、その中央部に下方へ向かって突出する円筒状に形成された嵌挿部50が形成されると共に、外周部に第1オリフィス部材44のフランジ部52に対応する環状のフランジ部55が形成されている。また第2オリフィス部材46には、径方向に沿って嵌挿部50とフランジ部55との間に周方向へ延在する樋状部56が全周に亘って形成されている。この樋状部56は、その断面が下方へ向って開いた略U字状(図3参照)とされており、その頂板部には、周方向に沿った所定の部位に略矩形状の上部連通穴58が穿設されている。
図1に示されるように、仕切金具34では、第2オリフィス部材46の嵌挿部50が上方から第1オリフィス部材44の内周側に嵌挿されると共に、第2オリフィス部材46のフランジ部55が第1オリフィス部材44のフランジ部52へ突き当てられた状態とされ、これらのフランジ部52,55が第1外筒12のフランジ部16と第2外筒14のフランジ部24との間に挟持される。これにより、第1オリフィス部材44と第2オリフィス部材46とが互いに固定されて一体化されると共に、仕切金具34が第1外筒12及び第2外筒14に対して固定される。
図3に示されるように、第1オリフィス部材44の上端側が第2オリフィス部材46のフランジ部55の内周側により閉塞されることにより、第1オリフィス部材44の内部には、外部から区画された円柱状の空間であるシリンダ室60が形成される。このシリンダ室60内にも、主液室36及び副液室38と同一の液体が充填される。また第1オリフィス部材44には、その外周面における上端部がL字状に切り欠かれることにより、周方向へ延在する上端溝部62が形成されている。この上端溝部62は、第1オリフィス部材44の外周面を一周近くに亘って周回するC字状に形成されており、その周方向に沿った両端部が第1オリフィス部材44の上端部により閉塞されている。
仕切金具34では、第1オリフィス部材44の上端側に第2オリフィス部材46が固定されると、第1オリフィス部材44の上端部が第2オリフィス部材46の樋状部56内へ嵌挿されると共に、第1オリフィス部材44の上端溝部62の外周側及び頂面側がそれぞれ樋状部56の内壁により閉塞される。これにより、第1オリフィス部材44の上端溝部62内には、外部から区画された周方向へ細長い有端状の空間である上段オリフィス通路64が形成される。この上段オリフィス通路64の一端部は、上部連通穴58を介して主液室36と連通する。
図5に示されるように、第1オリフィス部材44には、その外周面に軸心Sを中心として螺旋状に延在する外周溝66が形成されている。外周溝66は、その周方向両端部がそれぞれ第1オリフィス部材44の内壁部により閉塞されている。また外周溝66には、図3に示されるように、その副液室38側の一端部から周方向中間部までの部分に軸方向に沿った幅が相対的に狭い専用オリフィス部68が設けられると共に、この専用オリフィス部68の終端部から主液室36側の他端部までの部分に軸方向に沿った幅が相対的に広く、かつ専用オリフィス部68よりも路長が短い共用オリフィス部70が設けられている。
第1オリフィス部材44には、図5に示されるように、外周溝66(専用オリフィス部68)の一端部と第1オリフィス部材44の下面部との間を貫通する下部連通穴72が形成されると共に、外周溝66(共用オリフィス部70)の他端部を樋状部56の他端部に接続する中間接続穴74が穿設されている。また第1オリフィス部材44には、図3に示されるように、外周溝66における専用オリフィス部68と共用オリフィス部70との境界部付近に外周溝66の内周側の底面部とシリンダ室60の内周面との間を貫通したオリフィス開口76が形成されている。このオリフィス開口76は、その開口形状が周方向に細長いスロット状に形成されている。
図1に示されるように、防振装置10では、仕切金具34が外筒12,14の内周側へ嵌挿された状態で、第1オリフィス部材44の外周面が被覆部42を介して第1外筒12の内周面に圧接する。これにより、第1オリフィス部材44の外周溝66(専用オリフィス部68及び共用オリフィス部70)の外周側が被覆部42の内周面により閉塞される。このとき、上段オリフィス通路64と外周溝66(共用オリフィス部70及び専用オリフィス部68)内の空間は、中間接続穴74を通して互いに接続され、1本の細長い空間であるシェイクオリフィス118を形成する。この第1の制限通路であるシェイクオリフィス118は、その一端部が第1オリフィス部材44の下部連通穴72を通して副液室38に接続されると共に、他端部が第2オリフィス部材46の上部連通穴58を通して主液室36に連通する。
ここで、シェイクオリフィス118は、入力振動のうち相対的に低周波域の振動であるシェイク振動(例えば、9〜15Hz)に対応するように、その路長及び断面積、すなわち液体の流通抵抗が設定(チューニング)されている。
図3に示されるように、第1オリフィス部材44のシリンダ室60には、略円板状(図5参照)に形成されたプランジャ部材78が軸方向に沿って移動可能に収納されている。プランジャ部材78は、シリンダ室60を軸方向に沿って主液室36側の小空間である液圧空間112と副液室38側の小空間であるオリフィス空間114(図4参照)とに区画している。またプランジャ部材78は、その外周面における上端側及び下端側のエッジ部がオリフィス開口76の長手方向と平行に延在している。
図5に示されるように、プランジャ部材78は、頂面側が頂板部80により閉止された底の浅い有底円筒状に形成されており、頂板部80の中心部には肉厚円筒状のボス部81が下方へ突出するように一体的に形成されている。ボス部81には、その中心部に軸方向へ貫通する軸受穴82が軸心Sに沿って穿設されている。またボス部81の基端部には、先端側よりも外径が拡大された座受突起84が一体的に形成されており、この座受突起84は、後述するコイルスプリング86上端部の内周側に嵌挿される。またプランジャ部材78には、その頂板部80における径方向中間部に軸方向へ貫通する液圧解放路126が穿設されている。
図3に示されるように、仕切金具34では、プランジャ部材78が第1オリフィス部材44のシリンダ室60内へ挿入されると共に、このプランジャ部材78の軸受穴82内に第1オリフィス部材44のガイドロッド49が相対的に摺動可能に挿入される。これにより、プランジャ部材78は、ガイドロッド49により軸方向へ案内されつつ、所定の範囲(後述する開放位置と閉塞位置との間)で移動可能となる。また仕切金具34内には、プランジャ部材78と第1オリフィス部材44の底板部45との間に圧縮状態とされたコイルスプリング86が介装されている。このコイルスプリング86は、その上端部をプランジャ部材78の座受突起84の外周側に嵌挿すると共に、その上端面及び下端面をそれぞれプランジャ部材78の頂板部80及び第1オリフィス部材44の底板部45に圧接させている。これにより、コイルスプリング86はプランジャ部材78を常に上方(開放位置側)へ付勢する。
第2オリフィス部材46は、その嵌挿部50の底板部が後述する逆止弁116の弁座部88として構成されており、この弁座部88には、図5に示されるように、それぞれ円形に形成された複数個(本実施形態では、4個)の弁座開口90が穿設されている。これらの弁座開口90は、それぞれ弁座部88の軸心Sを中心とする径方向に沿った中央部付近に配置されており、周方向へは等ピッチ(90°ピッチ)で配列されている。また弁座部88には、その下面中心部に円形凸状の突起部92が形成されている。
図3に示されるように、第1オリフィス部材44は、そのシリンダ室60に対して上側の内径が拡大されており、シリンダ室60の上端部から外周側へ延出する環状の段差部94が形成されている。仕切金具34では、第1オリフィス部材44の内周側における段差部94と第2オリフィス部材46の弁座部88との間に略円板状の弁体95が配設されている。弁体95には、図5に示されるように、その外周部にステンレス、アルミ合金等の金属材料により形成された支持リング96が配置されると共に、この支持リング96の内周側にNR、NBR等のゴム材料により弁本体98が設けられている。支持リング96は、径方向に沿った肉厚が一定とされ軸方向へ扁平な円筒状に形成されており、その軸方向に沿った寸法が弁本体98の肉厚よりも厚くなっている。また支持リング96の外径は、第1オリフィス部材44における段差部94の上側の内径よりも僅かに小さくなっている。
弁本体98は、図7(A)に示されるように、その断面における肉厚が略一定とされた円板状に形成されており、その中心部には円形の流通穴100が貫通している。この流通穴100の内径は、弁座部88の突起部92の外径よりも僅かに大きくなっている。弁本体98には、流通穴100の周縁部から外周側へ向って下方へ傾斜するテーパ状に形成された可撓部102が形成されている。可撓部102は、径方向に沿って弁本体98における流通穴100の周縁部からの中央部付近までの部分に設けられている。ここで、弁本体98は、その外周面が支持リング96の内周面に全周に亘って加硫接着されて支持リング96に連結固定されている。
図3に示されるように、仕切金具34では、弁体95が第1オリフィス部材44の上側の開口端から内周側に嵌挿されてり、第1オリフィス部材44内で支持リング96が第1オリフィス部材44の段差部94と弁座部88の外周部との間に挟持されている。これにより、弁体95は、第1オリフィス部材44の内周側におけるシリンダ室60と弁座部88との間に固定される。また弁体95の支持リング96は、その下端面の内周側を段差部94から内周側へ延出させており、プランジャ部材78は、シリンダ室60内で開放位置まで移動(上昇)すると、その上端面の外周部を支持リング96の下端面へ当接して位置決めされる。
弁体95は、シリンダ室60と弁座部88との間に固定された状態で、弁本体98における可撓部102の内周端付近を弁座部88における中央部付近に圧接させると共に、可撓部102の内周端付近を所定の変形量だけ下方へ撓み変形させている。このとき、可撓部102は、その内周端付近を弁座部88の下面における複数個の弁座開口90の内周側の領域に全周に亘って圧接させており、可撓部102の内周端付近は、可撓部102の撓み方向での変形量に対応する与圧力で弁座部88へ圧接している。また弁本体98の流通穴100内には弁座部88の突起部92が装脱可能に挿入される。
防振装置10では、弁体95の可撓部102が弁座部88に圧接することにより、弁体95により複数個の弁座開口90がそれぞれ閉塞される。また、図3の2点鎖線で示されるように、主液室36内の液圧により弁体95の可撓部102が下方へ撓み変形して弁座部88から離間すると、弁座開口90が開放されて主液室36がシリンダ室60の液圧空間110内に連通する。すなわち、防振装置10では、弁体95及び第2オリフィス部材46(弁座部88)が主液室36とシリンダ室60との間で逆止弁116(図5参照)を構成しており、この逆止弁116は、主液室36からシリンダ室60(液圧空間112)内へのみ液体の流入を許容するが、液圧空間112から主液室36内への液体の流出を阻止する。
図1に示されるように、シリンダ室60のオリフィス空間114は、第1オリフィス部材44の複数の流通開口48を通して常に副液室38と連通している。また防振装置10では、上段オリフィス通路64、共用オリフィス部70及び、この共用オリフィス部70にオリフィス開口76を通して連通したオリフィス空間114が、シェイク振動に対して相対的に高周波域の振動であるアイドル振動(例えば、18〜30Hz)に対応するアイドルオリフィス120を形成している。この第2の制限通路であるアイドルオリフィス120は、その路長及び断面積、すなわち液体の流通抵抗がアイドル振動に対応するように設定(チューニング)されている。ここで、アイドルオリフィス120における液体の流通抵抗は、シェイクオリフィス118における液体の流通抵抗よりも小さくなっている。またオリフィス開口76の開口面積は、共用オリフィス部70及び上段オリフィス通路64の断面積よりも大きくなっている。
防振装置10では、図2に示されるように、プランジャ部材78が閉塞位置へ移動(下降)すると、第1オリフィス部材44のオリフィス開口76がプランジャ部材78の外周面により閉塞され、共用オリフィス部70がオリフィス空間114と非連通状態となる。これにより、主液室36と副液室38とは、シェイクオリフィス118のみを通して互いに連通する。
このとき、プランジャ部材78の外周面は、図4に示されるように、シリンダ室60の内周面におけるオリフィス開口76に対して上側及び下側の領域とそれぞれオーバラップする。このようにプランジャ部材78が閉塞位置にある状態で、プランジャ部材78の外周面とシリンダ室60の内周面とを軸方向に沿ってオーバラップさせることにより、主液室36内の液圧変化に伴ってプランジャ部材78が軸方向に沿って振動しても、プランジャ部材78によりオリフィス開口76を確実に閉塞状態に維持できる。また防振装置10では、図1に示されるように、プランジャ部材78が開放位置へ移動(上昇)すると、プランジャ部材78がオリフィス開口76から離れてオリフィス開口76が開放され、共用オリフィス部70が上段オリフィス通路64内と連通する。
プランジャ部材78が開放位置に移動することにより、主液室36と副液室38とは、シェイクオリフィス118及びアイドルオリフィス120の双方を通して互いに連通するが、主液室36内の液圧が変化した際には、上段オリフィス通路64及び中間接続穴74を通して共用オリフィス部70内へ流入した液体は、専用オリフィス部68との境界部付近に達すると、専用オリフィス部68よりも液体の流通抵抗が小さいオリフィス開口76を通ってオリフィス空間114内へ優先的に流入し、またオリフィス開口76を通って共用オリフィス部70内へ流入した液体も、専用オリフィス部68よりも液体の流通抵抗が小さい共用オリフィス部70及び上段オリフィス通路64内を優先的に通って主液室36内へ抜ける。これにより、防振装置10では、プランジャ部材78が開放位置にある場合、実質的にアイドルオリフィス120のみを通って主液室36と副液室38との間で液体が流通する。
またプランジャ部材78の液圧解放路126は、コイルスプリング86の付勢力によりプランジャ部材78が開放位置側へ移動する際に、外部から閉じられた液圧空間112内の液体をオリフィス空間114内へ流出させ、液圧空間112の液圧上昇を防止してプランジャ部材78を開放位置側へ移動可能にする。
次に、本発明の第1の実施形態に係る防振装置10の作用を説明する。
防振装置10では、例えば、車両におけるエンジンが作動すると、エンジンが発生した振動が取付金具30を介してゴム弾性体26に伝達され、ゴム弾性体26が弾性変形する。このとき、ゴム弾性体26は吸振主体として作用し、ゴム弾性体26の内部摩擦等に基づく吸振作用によって振動が吸収され、外筒12,14を介して車体側へ伝達される振動が低減される。また自動車等の車両では、アイドリング運転時にエンジンが相対的に高周波域の振動であるアイドル振動を発生し、また所定速度以上での走行時にはエンジンが相対的に低周波域の振動であるシェイク振動を発生する。
また防振装置10では、シェイクオリフィス118の主液室36側の一部が、アイドルオリフィス120の一部を形成する共用オリフィス部70とされ、この共用オリフィス部70と専用オリフィス部68との境界部付近にシリンダ室60のオリフィス空間114に連通するオリフィス開口76が形成されていることから、主液室36と副液室38とがシェイクオリフィス118により互いに連通すると共に、オリフィス開口76が開放されている場合には、アイドルオリフィス120によっても互いに連通する。
更に、防振装置10では、プランジャ部材78が、シリンダ室60の液圧空間112内の液圧によりコイルスプリング86の付勢力に抗して開放位置から閉塞位置に移動するとオリフィス開口76を閉塞させ、コイルスプリング86の付勢力により閉塞位置から開放位置へ復帰するとオリフィス開口76を開放することから、シェイク振動の入力時に、開放位置にあったプランジャ部材78が閉塞位置へ移動すると、ゴム弾性体26の弾性変形に伴って、シェイクオリフィス118のみを通って主液室36と副液室38との間を液体が行き来し、またアイドル振動の入力時に、閉塞位置にあったプランジャ部材78が開放位置へ復帰すると、シェイクオリフィス118及びアイドルオリフィス120の双方が開放された状態となるが、ゴム弾性体の弾性変形に伴って、液体の流通抵抗が相対的に小さいアイドルオリフィス120を優先的に通って主液室36と副液室38との間を液体が行き来する。
すなわち、防振装置10では、相対的に周波数が低く振幅が大きいシェイク振動が入力した場合には、このシェイク振動によってゴム弾性体26が弾性変形し、主液室36内に相対的に大きな液圧変化が生じると共に、主液室36内の周期的な液圧上昇時に逆止弁116を通して主液室36から液圧空間112へ液体が流入して、液圧空間112内の液圧も主液室36内の上昇時の液圧と略平衡する平衡圧まで上昇する。
ここで、防振装置10では、プランジャ部材78に対するコイルスプリング86の付勢力がシェイク振動の入力時の液圧空間112内の液圧(平衡圧)に対応する値よりも小さく設定されており、これにより、シェイク振動の入力時には、プランジャ部材78がコイルスプリング86の付勢力に抗して開放位置から閉塞位置側へ間欠的に移動し、液圧空間112内の液圧により閉塞位置へ保持される。
従って、防振装置10では、シェイク振動の入力時には、ゴム弾性体26の弾性変形に伴って、シェイクオリフィス118のみを通して主液室36と副液室38の間を液体が行き来することから、このシェイクオリフィス118を通過する液体の粘性抵抗や圧力損失により入力振動(低周波域振動)を吸収できるので、エンジン側から車体側へ伝達されるシェイク振動を低減できる。
このとき、シェイクオリフィス118における液体の流通抵抗がシェイク振動の周波数及び振幅に対応するように設定(チューニング)されていることから、シェイクオリフィス118を通って主液室36と副液室38との間を行き来する液体に共振現象(液柱共振)が生じ、この液柱共振の作用によってシェイク振動を特に効果的に吸収できる。
また防振装置10では、相対的に周波数が高く振幅が小さいアイドル振動が入力した場合には、このアイドル振動によってゴム弾性体26が弾性変形すると共に、主液室36内に相対的に小さな液圧変化が生じることから、主液室36内の周期的な液圧上昇時に逆止弁116を通して主液室36から液圧空間112へ液体が流入して、液圧空間112内の液圧が上昇して主液室36内の上昇時の液圧(最高値)と略平衡する平衡圧まで達する。
ただし、防振装置10では、コイルスプリング86の付勢力が、アイドル振動の入力時における液圧空間112内の平衡圧に対応する値よりも大きく設定されており、これにより、プランジャ部材78が開放位置にあるときには、コイルスプリング86の付勢力により開放位置に保持され、また閉塞位置にある場合には、コイルスプリング86の付勢力により閉塞位置から開放位置へ移動(復帰)する。
なお、プランジャ部材78が開放位置側へ移動する際には、プランジャ部材78に形成された液圧解放路126が、外部から閉じられた液圧空間112内の液体をオリフィス空間114内へ流出させることから、液圧空間112の液圧上昇を防止してプランジャ部材78を開放位置側へ円滑に、かつ低い移動抵抗で移動可能にする。
従って、防振装置10では、アイドル振動の入力時には、ゴム弾性体26の弾性変形に伴って、シェイクオリフィス118に対して液体の流通抵抗が小さいアイドルオリフィス120を優先的に通って主液室36と副液室38との間を液体が行き来することから、入力振動(アイドル振動)を吸収できるので、エンジン側から車体側へ伝達されるアイドル振動を低減できる。
このとき、アイドルオリフィス120における液体の流通抵抗がアイドル振動の周波数及び振幅に対応するように設定(チューニング)されていることから、アイドルオリフィス120を通って主液室36と副液室38との間を行き来する液体に共振現象(液柱共振)が生じ、この液柱共振の作用によってアイドル振動を特に効果的に吸収できる。
この結果、防振装置10によれば、電磁ソレノイドや空圧ソレノイド等の外部からの制御及び動力供給を受けて作動するバルブ機構を用いることなく、主液室36と副液室38とを連通するオリフィスを、入力振動の周波数に応じて、シェイクオリフィス118及びアイドルオリフィス120の何れか一方に、主液室36内の液圧変化を駆動力として用い切り換えることができる。
また防振装置10では、弁体95における弁本体98の中心部に流通穴100が穿設されると共に、この流通穴100の外周側に弁座部88に圧接する可撓部102が設けられていることにより、弁体95における可撓部102の外周側に配置された支持リング96を弁座部88と第1オリフィス部材44の段差部94との間に挟持して固定するだけで、可撓部102が弁座部88へ圧接するように弁体95を支持できるので、従来の逆止弁のように弁体の外周側を弁座部へ圧接させる場合と比較し、弁体95の中心部に圧接して弁体95を弁座部88の反対側から支持する支持部材を不要にできる。
この結果、本実施形態に係る防振装置10によれば、弁体95の中心部を支持するための支持部材を不要にできるので、逆止弁116を構成する部品の点数を減少できると共に、逆止弁116を装置へ組み付ける際の組付作業を簡略化できる。
(第2の実施形態)
図6には本発明の第2の実施形態に係る防振装置が示されている。なお、本実施形態に係る防振装置140において、第1の実施形態に係る防振装置10と同一の部分には同一符号を付して説明を省略する。
本実施形態に係る防振装置140が第1の実施形態に係る防振装置10と異なる点は、防振装置10では弁体95における金属製の支持リング96が弁本体98とは別体とされていたが、本実施形態では弁体142全体がゴム材料により一体的に形成されている点及び、この弁体142の外周部を支持するためにホルダ部材144が追加されている点である。
図7(B)に示されるように、本実施形態に係る弁体142には、円板状の弁本体143及び環状の支持リング支持リング150が設けられている。弁本体143には、弁体95(図7(A)参照)と同様に、その中心部に流通穴100が穿設されると共に、この流通穴100の外周側にテーパ状に傾斜した可撓部102が形成されている。また弁体142には、弁本体143の外周側に支持リング150が一体的に形成されている。この支持リング150は、径方向に沿った肉厚が一定とされ軸方向へ扁平な円筒状に形成されており、その軸方向に沿った寸法が弁本体143の肉厚よりも厚くなっている。
仕切金具34には、第1オリフィス部材44の内周側における第2オリフィス部材46とプランジャ部材78との間にホルダ部材144が配置されている。ホルダ部材144は、底面側が底板部154により閉止された有底円筒状に形成されており、その下端側に円筒状の小径部156が設けられる共に、この小径部156の上側に内外径がそれぞれ拡大された大径部158が一体的に形成されている。一方、本実施形態に係る防振装置140では、プランジャ部材78の頂板部80の外周側縁部に沿って上方へ屈曲された円筒状の周壁部146が形成されている。
ここで、小径部156の外径は、シリンダ室60の内径よりも所定長短くなっている。大径部96には、その上端部に外周側へ延出する環状のフランジ部160が屈曲形成されている。ホルダ部材144の底板部154には、その中心部に円形の連通開口162が穿設されている。またホルダ部材144の底板部154には、その外周端に沿って上方へ向って開いた略半円状の断面を有する挟持部164が全周に亘って形成されている。一方、第1オリフィス部材44の弁座部88にも、その外周端に沿ってL字状に屈曲された挟持部166が全周に亘って形成されており、この挟持部166は、軸方向に沿ってホルダ部材144の挟持部164に対向している。
ホルダ部材154は、第1オリフィス部材44の上端側から内周側に挿入されると共に、フランジ160が第1オリフィス部材44の上端面と第2オリフィス部材46の樋状部56との間に挟持されている。これにより、ホルダ部材144は、シリンダ室60内で第1オリフィス部材44及び第2オリフィス部材46に対して固定される。またホルダ部材92の小径部98の外周面とシリンダ室60の内周面との間には、プランジャ部材78の周壁部146が軸方向に沿って挿脱可能となる円筒状の隙間が形成される。
また防振装置140では、図6に示されるように、プランジャ部材78が開放位置へ移動(上昇)すると、プランジャ部材78の周壁部146がオリフィス開口76から離れてオリフィス開口76が開放され、共用オリフィス部70が上段オリフィス通路64内と連通する。このとき、プランジャ部材78は、その周壁部146をホルダ部材92の外周面とシリンダ室60との間に形成された隙間に挿入する。これにより、シリンダ室60でプランジャ部材78に必要な可動範囲(ストローク)を確保すると共に、シリンダ室60の軸方向に沿った寸法を小さいものにしている。
防振装置140では、弁体142が第2オリフィス部材46の弁座部88とホルダ部材144との間に形成される円板状の空間である収納室168内に配置されている。この収納室168内に収納された状態で、弁体142は、その支持リング150が第2オリフィス部材46の挟持部166とホルダ部材144の挟持部164により挟持される。これにより、弁体142は、可撓部102が弁座部88へ所定の圧接力(与圧力)で圧接するように支持される。また本防振装置140では、弁本体143における可撓部102の外周側の部分にホルダ部材144の底板部144が当接しており、可撓部102の外周側の部分が底板部144により支持される。これにより、第1の実施形態に係る弁体95と比較し、弁本体98にへたりや劣化が経時的に生じた場合でも、このようなへたりや劣化の影響を緩和できるので、可撓部102の弁座部88への圧接力(与圧力)を長期的に安定化できる。
次に、本発明の第2の実施形態に係る防振装置140の作用を説明する。
防振装置140によれば、第1の実施形態に係る防振装置10と同様に、電磁ソレノイドや空圧ソレノイド等の外部からの制御及び動力供給を受けて作動するバルブ機構を用いることなく、主液室36と副液室38とを連通するオリフィスを、入力振動の周波数に応じて、シェイクオリフィス118及びアイドルオリフィス120の何れか一方に、主液室36内の液圧変化を駆動力として用い切り換えることができる。また防振装置140では、弁体142における弁本体143と支持リング150がゴム材料により一体的に形成されていることから、第1の実施形態に係る弁体95と比較し、弁体142の構造及び製造工程を簡略化できる。
また防振装置140では、中央部に流通穴100が形成された弁体142を、十分な強度を有するホルダ部材144により外周側から支持し、このホルダ部材144と第2オリフィス部材46との間にゴム製の支持リング150を固定したので、主液室と副液室(シリンダ室)との間に逆止弁が配置された従来(特許文献1)の防振装置と比較し、弁体142の一部が弁座開口90又は流通開口162を通して主液室36又は液圧空間112側へはみ出すことを防止でき、かつ弁体142における弁座部88への圧接部付近に破損が発生することも効果的に防止できるので、逆止弁116の耐久性を向上でき、逆止弁116を長期間に亘って安定的に作動させることができる。
なお、本実施形態に係る防振装置10,140では、第1オリフィス部材44の外周溝66における主液室36側を共用オリフィス部70すると共に、副液室38側を専用オリフィス部68として、共用オリフィス部70をシェイクオリフィス118及びアイドルオリフィス120で共用していたが、第1オリフィス部材44にシェイクオリフィス118を形成する外周溝66から分離された別の溝部を形成し、この別の溝部をアイドルオリフィス120の一部とするようにしても良い。
また防振装置10では、2本のオリフィス(第1の制限通路及び第2の制限通路)の一方をシェイク振動に対応するシェイクオリフィス118とし、他方をアイドル振動に対応するアイドルオリフィス120としたが、2本の第1の制限通路及び第2の制限通路を必ずしもシェイク振動及びアイドル振動に対応させる必要はなく、第1の制限通路が相対的に低い周波域の振動に対応するものとなり、第2の制限通路が相対的に高い周波域の振動に対応するものとなれば良い。
また防振装置10では、取付金具30をエンジン側に連結すると共に、外筒12,14を車体側に連結するように構成したが、これとは逆に、取付金具30を車体側に連結すると共に、外筒12,14をエンジン側に連結するようにしても良い。
また以上の本実施形態に係る記載では、防振装置10,140における取付金具30側を装置の上側(軸方向に沿って上方)とし、第2外筒14側を装置の下側(軸方向に沿って下方)として説明したが、車両においては防振装置10,140の取付方向は限定されず、例えば、防振装置10,140を、図1、図2及び図6に示されている方向とは上下を反転した状態で、車両に取り付けても良く、また装置の軸方向を鉛直方向に対して傾けた状態で取り付けても良い。
また本実施形態に係る防振装置10,140では、主液室36内の液圧上昇時に逆止弁116を通して液体を主液室36から液圧空間112内へ供給し、この液圧空間112内の液圧を主液室36の液圧上限値に対応する平衡圧に上昇させ、シェイク振動の入力時に、液圧空間112の液圧(正圧)によりプランジャ部材78を開放位置から閉塞位置へ移動させていたが、これとは逆に、逆止弁を液圧空間112から主液室36へのみ液体が流出させ得るように構成し、主液室36内の液圧低下時に、この逆止弁を通して液体を液圧空間112から主液室36内へ流出させることにより、液圧空間112内の液圧を主液室36の液圧下限値に対応する平衡圧まで低下させ、シェイク振動の入力時に、液圧空間112の液圧(負圧)によりプランジャ部材78を開放位置から閉塞位置へ移動させるようにして良い。
上記の場合には、防振装置10,140は、プランジャ部材78がコイルスプリング86により軸方向に沿って下方へ付勢し、このプランジャ部材78が下限位置(開放位置)にある状態で、オリフィス開口76が開放され、液圧空間112内の負圧の作用によりコイルスプリング86の付勢力に抗して下限位置から上限位置(閉塞位置)へ上昇すると、オリフィス開口76が開放されるように構成される。