JP4729138B2 - スカッフィング検出 - Google Patents

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Description

本発明は、大型2サイクルディーゼルエンジンにおけるスカッフィングを検出するための方法に関し、具体的には、スカッフィング前状態を検出するための方法と、スカッフィング状態を検出するための方法と、スカッフィング状態の終了を検出するための方法とに関する。
発明の背景
大型2サイクルディーゼルエンジンの動作障害は、出力低下を生じたり、シリンダやピストンの損傷を引き起したりする場合がある。著しい出力損失を生じる可能性もある。例えば外洋航行船の出力源として大型2サイクルディーゼルエンジンを使用する際に、エンジンが動作を停止しなければならないとすると、危機的な結果を招く可能性がある。
シリンダライナ面やピストンリングが関係する摩耗には、境界潤滑(Boundary Lubrication)、混合潤滑(Mixed Lubrication)、および流体潤滑(Hydrodynamic Lubrication)の領域がある。これは、「粘度・負荷・速度」を摩擦係数に関係付けるストライベック曲線によって記述される(図1)。流体潤滑は、油膜によって表面が完全に隔てられている状態である。負荷が、表面の凹凸への接触および油膜圧力の両方に支えられる場合、その状態は、混合潤滑と呼ばれる。全ての負荷が表面の凹凸によって支えられ、分子薄油膜のみでしか隔てられていない場合、その状態は、境界潤滑として知られている。
大型2サイクルディーゼルエンジンにおいて、境界潤滑は、ピストンの速度がゼロに近づく上死点(Top Dead Center; TDC)近傍で常にある程度は存在する。内径の研磨が発生する場合、境界潤滑の量は、スカッフィングが発生するレベルまで上昇し得る。
既存の対策法は、シリンダ潤滑油が比較的高価であり、また出力低下も望ましくないことから、大きなコストがかかっている。このため、対策を適時に中止できるように、スカッフィング状態の存在が終了したか否かを判断することが重要である。
我々の研究によると、境界潤滑が臨界値に達する場合、摩擦係数の変化によって、ライナ表面温度の独特な温度変動パターンがもたらされることが示された。この状態は、スカッフィングの発生前の約10分から20分の時間に存在する。この時間中、警報システムを潤滑油システムに接続することによって、スカッフィングの発生に対抗するための適切な対応を手動的または自動的に取ることが可能である。
スカッフィング前状態が検出された場合、シリンダ潤滑油の供給量を、スカッフィング状態の発生防止に必要な通常の量に比べて増加させてもよい。別の可能性として、警報システムをエンジンの電子制御システムに接続することが挙げられ、それによって該当するシリンダに対する負荷を減少させるようにしてもよい。スカッフィング前状態は、「高摩擦状態」と呼ばれる(図面参照)。適切な措置を取らなければ、この状態は、シリンダライナの摩耗が激しいスカッフィングに発展する。スカッフィング状態におけるシリンダライナの温度は高いレベルで安定する。
このような背景から、本発明の目的は、スカッフィング前状態を検出するための方法を提供することにある。
この目的は、大型多気筒ターボ過給型2サイクルディーゼルエンジンにおいてスカッフィング前状態を検出するための方法であって、シリンダの上部領域におけるシリンダ壁温度を連続的または断続的に測定することと、シリンダの温度が時間と共に変動するか否かを判断することと、測定対象のシリンダの温度変動のピーク間隔またはディップ間隔が所定の時間範囲内である場合、ならびに温度変動におけるピークとディップとの温度差が所定の閾値を超える場合に、スカッフィング前警報を発行することとを含む方法を提供することによって達成される。
発明者の研究により、シリンダ壁温度変動のピーク間またはディップ間の時間間隔と、変動の大きさとが、スカッフィング前事象の最も特徴的な側面であることが示された。温度変動のピーク間またはディップ間の時間間隔が所定の範囲内にあることを確認することによって、ならびにピークとディップとの温度差が所定の閾値を超えることを確認することによって、スカッフィング前事象の発生時にスカッフィング前事象を確実に発行することを確認することが可能になり、誤った警報が最小限になり、警報が発行されないスカッフィング前事象が最小限になる。
好ましくは、スカッフィング前警報は、前記変動が少なくとも所定数連続して発生した場合にのみ発行される。したがって、誤ったスカッフィング前警報の数をさらに減少させることが可能である。
本方法は、前記警報が発行されたシリンダについて、通常動作レベルを上回るレベルにシリンダ潤滑レベルを上昇させることをさらに含んでもよい。
本方法は、前記警報が発行されたシリンダについて、通常動作レベルを下回るレベルに負荷レベルを低下させることをさらに含んでもよい。
本発明の別の目的は、いずれかのシリンダについてスカッフィング前警報が発行された後に対策を取った場合に、通常動作に戻す時を判断するための、大型多気筒2サイクルディーゼルエンジンにおいて使用される方法であって、前記対策の開始から経過した時間を判断することと、前記時間が所定の閾値を超えた後に前記スカッフィング前警報を発行したシリンダを通常動作に自動的に戻すこととを含む方法を提供することにある。
通常動作状態に自動的に戻すことによって、前記スカッフィング前警報状態に関連するコストおよび不便さを最小限に維持することが可能である。
好ましくは、通常動作に戻すことは、徐々に実行される。
本発明の別の目的は、大型多気筒ターボ過給型2サイクルディーゼルエンジンにおいてスカッフィング状態を検出するための方法であって、シリンダの上部領域におけるシリンダ壁温度を連続的または断続的に測定することと、シリンダのシリンダ壁温度が、所定の値を上回って他のシリンダの平均温度よりも高い場合か、またはシリンダのシリンダ壁温度が、所定の警報温度を超える場合に、シリンダへスカッフィング警報を発行することとを含む方法を提供することにある。
スカッフィング状態を検出するための方法を提供することによって、エンジンに対するさらなる損傷を回避するための対策を取ることが可能になる。
好ましくは、スカッフィング警報は、シリンダのシリンダ壁温度の温度上昇勾配が所定の閾値を超える場合にのみ発行される。
本方法は、前記警報が発行された前記シリンダについて、シリンダ潤滑を通常レベルから上昇レベルに自動的に上昇させることと、該当する前記シリンダの負荷を通常レベルから低下レベルに低下させることとをさらに含んでもよい。
本発明の別の目的は、大型多気筒2サイクルディーゼルエンジンにおけるスカッフィング事象が終了したことを判断するための方法であって、シリンダの上部領域におけるシリンダ壁温度を連続的または断続的に測定すること、他のシリンダの平均シリンダ壁温度に対する、スカッフィング警報が発行されたシリンダのシリンダ壁温度の超過温度が既定の閾値未満であるか、またはスカッフィング警報が発行されたシリンダのシリンダ壁温度が、所定の値だけ既定のシリンダ壁警報温度を下回るかを判断することと、を含む方法を提供することにある。
スカッフィングが終了したことを自動的に検出することによって、通常動作状態に戻すための対策を取ることが可能になり、前記スカッフィング前警報状態に関連する費用および不便さを最小限に維持することが可能である。
好ましくは、前記スカッフィング事象の終了の判断からの所定の遅延を含んで、前記スカッフィング警報が発行された前記シリンダの通常動作に自動的に戻すことをさらに含む。
本発明の別の目的は、大型2サイクルディーゼルエンジンにおいてスカッフィング前状態を検出するための方法を実行する装置を提供することにある。本装置は、シリンダの温度が時間と共に変動するか否かを判断すると共に、測定対象のシリンダの温度変動のピーク間隔またはディップ間隔が所定の時間範囲内である場合、ならびに温度変動におけるピークとディップとの温度差が所定の閾値を超える場合に、スカッフィング前警報を発行するように構成されるプロセッサに接続される温度センサを、各シリンダについてシリンダ壁の上部領域に少なくとも1つ備える。
本発明のさらに別の目的は、スカッフィング前警報に関連して対策が発行された後に通常動作状態に戻すための方法を実行する装置であって、前記対策の開始から経過した時間を判断すると共に、前記時間が所定の閾値を超えた後に通常動作に自動的に戻すように構成されるプロセッサに接続される温度センサを、各シリンダについてシリンダ壁の上部領域に少なくとも1つ備える装置を提供することにある。
本発明のさらなる目的は、大型多気筒2サイクルディーゼルエンジンにおいてスカッフィング警報を発行するための方法を実行する装置であって、シシリンダのシリンダ壁温度が、所定の値を上回って他のシリンダの平均温度よりも高い場合か、またはシリンダのシリンダ壁温度が所定の警報温度を超える場合に、シリンダへスカッフィング警報を発行するように構成されるプロセッサに接続される温度センサを、各シリンダについてシリンダ壁の上部領域に少なくとも1つ備える、装置を提供することにある。
本発明のさらなる目的は、大型多気筒2サイクルディーゼルエンジンにおけるスカッフィング事象が終了したことを自動的に検出するための方法を実行する装置であって、他のシリンダの平均シリンダ壁温度に対する、スカッフィング警報が発行されたシリンダのシリンダ壁温度の超過温度が既定の閾値未満であるか、またはスカッフィング警報が発行されたシリンダのシリンダ壁温度が、所定の値だけ既定のシリンダ壁警報温度を下回るかを判断するように構成されるプロセッサに接続される温度センサを、各シリンダについてシリンダ壁の上部領域に少なくとも1つ備える、装置を提供することにある。
本発明に従う方法および装置に関するさらなる目的、特徴、利点、および特性は、詳細な説明により明らかになるであろう。
本説明の以下の詳細部分において、図面に示す例示的実施形態を参照して、本発明についてより詳細に説明する。
種々の潤滑領域を図示するグラフである。 多気筒エンジンにおける1つのシリンダの上部の詳細断面図である。 本発明のある実施形態に従うエンジンのシリンダ、噴射システム、シリンダ潤滑システム、温度検知システム、および電子制御システムの概略図である。 スカッフィング前事象を示すシリンダ壁温度の時間経過を図示するグラフである。
好適な実施形態の詳細な説明
図1は、いわゆるストライベック曲線を図示する。シリンダライナ面やピストンリングが関係する摩耗には、境界潤滑(Boundary Lubrication)、混合潤滑(Mixed Lubrication)、および流体潤滑(Hydrodynamic Lubrication)の領域がある。これは、「粘度・負荷・速度」を摩擦係数に関係付けるストライベック曲線によって記述される(図1)。流体潤滑は、油膜によって表面が完全に隔てられている状態である。負荷が、表面の凹凸への接触および油膜圧力の両方に支えられる場合、その状態は、混合潤滑と呼ばれる。全ての負荷が表面の凹凸によって支えられ、分子薄油膜のみでしか隔てられていない場合、その状態は、境界潤滑として知られている。
大型2サイクルディーゼルエンジンにおいて、境界潤滑は、ピストンの速度がゼロに近づく上死点(Top Dead Center; TDC)近傍で常にある程度は存在する。内径の研磨が発生する場合、境界潤滑の量は、スカッフィングが発生するレベルまで上昇し得る。
内径研磨の発生は、本明細書において、スカッフィング前事象として示される。
図2は、クロスヘッド式大型多気筒2サイクルディーゼルエンジンにおけるシリンダ10のうちの1つを示す。ピストン12は、シリンダ10内を上下に運動する。シリンダの上部はシリンダカバー14で覆われる。シリンダカバー14には、排気弁16および燃料噴射装置18が設けられる。
温度センサ20および20'は、ピストン12の運動が反転する領域、いわゆる上死点(Top Dead Center; TDC)に設けられる。温度センサ20、20'は、シリンダライナ壁に位置し、信号ケーブル22を介してエンジンの電子制御システム(Electronic Control System; ECS)(図3)に接続される。温度センサ20、20'は、それぞれのシリンダの上部におけるシリンダ壁温度を測定し、温度センサの信号は、データケーブル22によって電子制御システムに転送される。図示する実施形態では、2つの正反対の温度センサ20、20'が存在する。しかし、シリンダ毎に1つだけ温度センサ20を設けてもよいし、リンダの外周に沿って2つ以上の温度センサを配してもよい。
また、シリンダ潤滑ポート26も、シリンダの外周に沿って設けられる。典型的には、シリンダ毎に3つのシリンダ潤滑ポート26が設けられるが、このポート数は別の数でもありうる。シリンダ潤滑ポート26には、シリンダ毎に関連付けられるシリンダ油ポンプ24によってシリンダ油が供給される。シリンダ油ポンプ24は、シリンダ油の供給量をエンジンの動作条件に合わせて調整する。シリンダ油は比較的高価であるため、通常動作中、供給量は、適量以下であるように設定される。供給量は、燃料品質の影響を受け、硫黄含有量の多い低品質燃料の使用時に多くなり、また、エンジンの負荷や動作速度、特定のシリンダの負荷に依存する。
図3は、5つのシリンダを備える本発明のある実施形態に従うエンジンを示す。本実施形態におけるシリンダの数は、単に例示的であり、任意の他の数のシリンダを備える多気筒大型2サイクルディーゼルエンジンに本発明を使用してもよい。
シリンダ10の各温度センサ20、20'は、信号ケーブル22を介してエンジンの電子制御システムECSに接続される。シリンダ10のためのシリンダ潤滑ポンプ24も、電子制御システムに接続される。同じことが、信号ケーブル28を介して電子制御システムECSに接続される燃料噴射システムにも当てはまる。
シリンダ10の温度センサ20、20'により供給されるシリンダ壁温度値は、電子制御システムにより測定および評価される。電子制御システムは、シリンダ壁温度信号を測定および分析するように構成される少なくとも1つのプロセッサを含む。シリンダ壁温度の測定は、例えば、1秒に1回のように断続的であってもよく、または連続的であってもよい。
プロセッサは、シリンダ10の各々のシリンダ壁温度を分析し、シリンダ10の各々のシリンダ壁温度に関する温度の時間経過を分析する。いずれかのシリンダの温度経過がスカッフィング前事象に典型的な形を示す場合、プロセッサは、スカッフィング前警報を発行する。
図4は、シリンダ番号4の典型的なスカッフィング前事象と、後続する仮想スカッフィング事象とを図示する。スカッフィング前事象は、約25℃から約65℃の間の範囲の変動の大きさを有するシリンダ壁温度変動により開始する。
シリンダ壁温度変動のピーク間の時間間隔(または、ディップ間の時間間隔)は、典型的には、約6分から約18分の間の範囲である。これらの事象が発生する期間は、図4において「高摩擦状態」と示されている。この状態において、摩擦は増加しているが、本当のスカッフィング中に発生する摩擦レベルまで増加しない。
シリンダ壁温度変動の大きさの範囲は、エンジンによって異なることがあり、エンジンのサイズおよび設計にも依存することがあり、経験的に判断することができる。温度変動のピーク間の時間間隔の範囲にも同じことが言える。
プロセッサは、温度変動がスカッフィング事象の特徴と一致すると判断した場合に、スカッフィング前警報を発行するように構成される。したがって、プロセッサは、変動のピーク間の時間間隔が所定の範囲内にあるか否かを判断し、また温度変動が所定の大きさを超えるか否かを判断する。
この判断が肯定的である場合、プロセッサは、スカッフィング前警報を発行する。実施形態によっては、プロセッサは、スカッフィング前事象対策も自動的に開始する。これらのスカッフィング前事象対策は、シリンダ潤滑油の供給量を通常動作の供給量を上回るレベルに上昇させることを含んでもよい。この上昇は、電子エンジン制御システムECSから、スカッフィング前警報が発行されたシリンダのシリンダ潤滑ポンプ24への信号によりもたらされる。また、スカッフィング前事象対策は、警報が発行されたシリンダに対する負荷を減少させることも含んでもよい。この対策は、信号ケーブル28を介して燃料噴射の量および/またはタイミングを変更することによって、電子制御システムECSにより制御される。また、スカッフィング前事象対策は、エンジン速度を低下させることも含んでもよい。
プロセッサは、ある実施形態において、スカッフィング前事象の検出に、より厳密な制御を適用するように構成される。追加の制限は、警報の発行前に、シリンダ壁の相対温度の変動が連続して発生しなければならないものとすることができる。連続変動の最小数は、2つまたは3つの変動(3つのピークのうちの少なくとも2つ)に設定されてもよい。
ある実施形態では、プロセッサは、シリンダ10のうちの1つについてスカッフィング前シリンダ警報が発行された後に対策が取られる場合に、通常動作に戻る時を自動的に判断するようにも構成される。本実施例において、プロセッサは、対策の開始から経過した時間を判断し、その時間が所定の閾値を超えた後に、スカッフィング前警報が発行されたシリンダ10の通常動作に自動的に戻す。通常動作への復帰は徐々に行われる。
対策を取らない場合、スカッフィング前事象は、最終的にスカッフィング状態に至る。スカッフィング事象を呈するシリンダの温度の経過は、図4の破線によって図示される。(例えば、スカッフィング前事象が検出されなかったこと、またはスカッフィング前警報対策が不十分であったことにより)スカッフィング事象が発生する場合、該当するシリンダの温度勾配Δt/ΔTが、短い所定の時間の間、既定の閾値を超え続ける際に、プロセッサは、スカッフィング警報を発行するように構成される。また、既定のシリンダのシリンダ壁温度が最大警報設定点を超える場合に、スカッフィング状態警報が発行される。
プロセッサは、スカッフィング状態が存在することを検出し、スカッフィング警報を自動的に発行するように構成される。さらに、プロセッサは、実施形態において、スカッフィング事象の検出時に、シリンダ潤滑油の供給量を有意に、例えば、最大レベルまで増加させる等の対策を自動的に適用するように構成される。対策には、該当するシリンダの燃料噴射の操作によって、警報が発行されるシリンダの負荷を減少させることがさらに含まれ得る。プロセッサは、スカッフィング警報の発行後に、対策としてエンジン速度を自動的に低下させるようにさらに構成されてもよい。
また、プロセッサは、実施形態において、スカッフィング事象が終了した時を判断するようにも構成されてもよい。この場合、プロセッサは、警報が発行されたシリンダのシリンダ温度が最大警報設定点を所定の値下回って低下する場合に、スカッフィング警報を中止するように構成される。また、プロセッサは、スカッフィング事象が終了したことをプロセッサが判断した時点からの所定の遅延後に、スカッフィング対策を自動的に終了させるようにも構成可能である。プロセッサによるスカッフィング対策の自動的終了は、徐々にまたは段階的に行ってもよい。
本発明は、多数の利点を有する。異なる実施形態または実装によって、以下の利点のうちの1つ以上がもたらされてもよい。これが、包括的なリストではなく、本明細書に記載されない他の利点も存在し得ることに留意されたい。本発明の一利点として、スカッフィング前事象を検出するための確実な方法を提供することが挙げられる。本発明の別の利点として、スカッフィング前事象の検出時に、対策の自動的開始を提供することが挙げられる。本発明のさらなる利点として、スカッフィング前事象に対する対策の自動的終了を提供することが挙げられる。本発明の別の利点として、スカッフィング事象を検出するための確実な方法を提供することが挙げられる。本発明の別の利点として、スカッフィング事象の検出時に対策を自動的に開始するための方法を提供することが挙げられる。本発明のさらなる利点として、スカッフィング事象の終了の自動的な検出を提供することが挙げられる。
用語の「備える」は、請求項において使用する際、他の要素またはステップを除外しない。単数形の用語は、請求項において使用する際、複数形を除外しない。
前述の明細書において、特別に重要であると考えられる本発明の特徴に留意するよう試みたが、本明細書において参照および/または図示されたいかなる特許可能な特徴または特徴の組み合わせに関しても、それに関して特に強調されたか否かに関わらず、本出願人は保護を主張することを理解されたい。さらに、当業者が、本開示を考慮して、本発明の機器に修正および/または改善を加えてもよいが、依然として以下の請求項に記載されるような本発明の範囲および思想の内にあることを理解されたい。
本願の出願当初の特許請求の範囲の記載は次の通りである。
(1)大型多気筒ターボ過給型2サイクルディーゼルエンジンにおいてスカッフィング前状態を検出するための方法であって、
シリンダの上部領域におけるシリンダ壁温度を連続的または断続的に測定することと、
シリンダの温度が時間と共に変動するか否かを判断することと、
測定対象のシリンダの温度変動のピーク間隔またはディップ間隔が所定の時間範囲内である場合、ならびに温度変動におけるピークとディップとの温度差が所定の閾値を超える場合に、スカッフィング前警報を発行することと、
を含む、方法。
(2)スカッフィング前警報は、前記変動が少なくとも所定数連続して発生した場合に発行される、(1)に記載の方法。
(3)前記警報が発行されたシリンダについて、通常動作レベルを上回るレベルにシリンダ潤滑レベルを上昇させることをさらに含む、(1)または(2)に記載の方法。
(4)前記警報が発行されたシリンダについて、通常動作レベルを下回るレベルに負荷レベルを低下させることをさらに含む、(1)から(3)のいずれかに記載の方法。
(5)いずれかのシリンダについてスカッフィング前警報が発行された後に対策を取った場合に、通常動作に戻す時を判断するための、大型多気筒2サイクルディーゼルエンジンにおいて使用される方法であって、
前記対策の開始から経過した時間を判断することと、
前記時間が所定の閾値を超えた後に前記スカッフィング前警報を発行した前記シリンダを通常動作に自動的に戻すことと、
を含む、方法。
(6)前記通常動作に戻すことは徐々に行われる、(6)に記載の方法。
(7)大型多気筒ターボ過給型2サイクルディーゼルエンジンにおいてスカッフィング状態を検出するための方法であって、
シリンダの上部領域におけるシリンダ壁温度を連続的または断続的に測定することと、
シリンダのシリンダ壁温度が、所定の値を上回って他のシリンダの平均温度よりも高い場合か、またはシリンダのシリンダ壁温度が所定の警報温度を超える場合に、シリンダへスカッフィング警報を発行することと、
を含む、方法。
(8)スカッフィング警報は、シリンダのシリンダ壁温度の温度上昇勾配が所定の閾値を超える場合にのみ発行される、(7)に記載の方法。
(9)前記警報が発行された前記シリンダについて、シリンダ潤滑を通常レベルから上昇レベルに自動的に上昇させることと、該当する前記シリンダの負荷を通常レベルから低下レベルに低下させることとをさらに含む、(7)または(8)に記載の方法。
(10)大型多気筒2サイクルディーゼルエンジンにおけるスカッフィング事象が終了したことを判断するための方法であって、
シリンダの上部領域におけるシリンダ壁温度を連続的または断続的に測定することと、
他のシリンダの平均シリンダ壁温度に対する、スカッフィング警報が発行されたシリンダのシリンダ壁温度の超過温度が既定の閾値未満であるか、またはスカッフィング警報が発行されたシリンダのシリンダ壁温度が、所定の値だけ既定のシリンダ壁警報温度を下回るかを判断することと、
を含む、方法。
(11)前記スカッフィング事象の終了の判断から所定の時間後に、前記スカッフィング警報が発行されたシリンダを通常動作に戻すことをさらに含む、(10)に記載の方法。
(12)大型多気筒ターボ過給型2サイクルディーゼルエンジンにおいてスカッフィング前状態を検出する装置であって、シリンダの温度が時間と共に変動するか否かを判断すると共に、測定対象のシリンダの温度変動のピーク間隔またはディップ間隔が所定の時間範囲内である場合、ならびに温度変動におけるピークとディップとの温度差が所定の閾値を超える場合に、スカッフィング前警報を発行するように構成されるプロセッサに接続される温度センサを、各シリンダについてシリンダ壁の上部領域に少なくとも1つ備える、装置。
(13)いずれかのシリンダについてスカッフィング前警報が発行された後に対策を取った場合に、通常動作に戻す時を判断するための、大型多気筒2サイクルディーゼルエンジンにおいて使用される装置であって、前記対策の開始から経過した時間を判断すると共に、前記時間が所定の閾値を超えた後に通常動作に自動的に戻すように構成されるプロセッサに接続される温度センサを、各シリンダについてシリンダ壁の上部領域に少なくとも1つ備える、装置。
(14)大型多気筒ターボ過給型2サイクルディーゼルエンジンにおいてスカッフィング前状態を検出する装置であって、シリンダのシリンダ壁温度が、所定の値を上回って他のシリンダの平均温度よりも高い場合か、またはシリンダのシリンダ壁温度が所定の警報温度を超える場合に、シリンダへスカッフィング警報を発行するように構成されるプロセッサに接続される温度センサを、各シリンダについてシリンダ壁の上部領域に少なくとも1つ備える、装置。
(15)大型多気筒2サイクルディーゼルエンジンにおけるスカッフィング事象が終了したことを判断する装置であって、他のシリンダの平均シリンダ壁温度に対する、スカッフィング警報が発行されたシリンダのシリンダ壁温度の超過温度が既定の閾値未満であるか、またはスカッフィング警報が発行されたシリンダのシリンダ壁温度が、所定の値だけ既定のシリンダ壁警報温度を下回るかを判断するように構成されるプロセッサに接続される温度センサを、各シリンダについてシリンダ壁の上部領域に少なくとも1つ備える、装置。
(16)(13)から(16)のいずれかに記載の装置を備える大型2サイクルディーゼルエンジン。

Claims (3)

  1. いずれかのシリンダについてスカッフィング前警報が発行された後に対策を取った場合に、通常動作に戻す時を判断するための、大型多気筒2サイクルディーゼルエンジンにおいて使用される装置の動作方法であって、
    前記対策の開始時からの経過時間を判断することと、
    前記時間が所定の閾値を超えた後に前記スカッフィング前警報を発行した前記シリンダを通常動作に自動的に戻すことと、
    を含む、方法。
  2. 前記通常動作に戻すことは徐々に行われる、請求項に記載の方法。
  3. いずれかのシリンダについてスカッフィング前警報が発行された後に対策を取った場合に、通常動作に戻す時を判断するための、大型多気筒2サイクルディーゼルエンジンにおいて使用される装置であって、前記対策の開始時からの経過時間を判断すると共に、前記時間が所定の閾値を超えた後に通常動作に自動的に戻すように構成されるプロセッサに接続される温度センサを、各シリンダについてシリンダ壁の上部領域に少なくとも1つ備える、装置。
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