JP2010521626A5 - - Google Patents
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Description
本発明は、大型2サイクルディーゼルエンジンにおけるスカッフィング(Scuffing;凝着摩耗による局部的表面損傷)を検出するための方法に関し、より具体的には、スカッフィングが生じる前状態を検出するための方法と、スカッフィングが生じる前状態を検出するための装置とに関する。
大型2サイクルディーゼルエンジンの異常動作は、出力低下やシリンダおよびピストンへの損傷をもたらしうる。かなりの出力損失は発生する可能性があり、例えば、大型2サイクルディーゼルエンジンを外洋航行船の出力源として使用する場合、エンジンを停止しなければならないとすると、重大な問題を引き起こす可能性がある。
ピストンリングおよびピストンライナ表面は、全部で3つの型の摩耗にさらされる。これらの摩耗の型は、「粘度、負荷、速度」を摩擦係数に関係付けるストライベック曲線(Stribeck curve;図1参照)によって表される。これらの3つの型は、境界潤滑(Boundary Lubrication)、混合潤滑(Mixed Lubrication)、流体潤滑(Hydrodynamic Lubrication)という。流体潤滑は、油膜によって表面が完全に分離している状態である。負荷が油膜圧力により部分的にのみ支えられ、かつ表面の凹凸による接触により部分的に支えられる場合、この状態は、混合潤滑と呼ばれる。全負荷が表面の凹凸(asperity)によって支えられ、分子薄油膜のみによって隔てられている場合、この状態は、境界潤滑として知られている。
大型2サイクルディーゼルエンジンにおいて、境界潤滑は、ピストンの速度がゼロに近づく上死点(Top Dead Center; TDC)周囲にいくらか常に存在する。内孔の研磨が起こる場合、境界潤滑の量は、スカッフィングが発生するレベルまで上昇しうる。
上死点近傍のシリンダライナ壁における温度センサは、スカッフィングの前事象を検出するために使用されることで知られている。しかしながら、凝着接触(Adhesive Contact;センサの位置とは状況により異なる位置において、またはセンサの上もしくは下で発生する)が生じる位置に近い場合に限り、凝着接触により引き起こされる局所的温度上昇が、センサ領域の温度を上昇させる。したがって、初期の温度上昇の検出可能性は、凝着接触が生じる位置からセンサまでの距離にかなり依存する。各センサは、大きな摺動面の一点のみにしか存在し得ないため、センサからいくらか離れた位置で凝着接触が発生する場合、スカッフィング前事象の検出は大幅に遅れる。シリンダライナを保護するためには迅速な措置が必要とされるため、この遅れは致命的でありうる。
我々の研究によると、境界潤滑が臨界値に達する場合、摩擦係数の変化によって、ライナ表面温度に独特の温度変動パターンが生じることが示された。この状態は、どのようなスカッフィングにおいても発生前約10分から20分の期間に存在する。警報システムをシリンダ潤滑システムに接続することによって、この期間中に適切な対応を手動的または自動的に取ることが可能である。
スカッフィング前状態が検出された場合、シリンダ潤滑油の注油量を、スカッフィング状態の発生防止に必要な通常の注油量に比べて増加させることが可能である。別の可能性として、警報システムをエンジンの電子制御システムに接続することが挙げられ、この電子制御システムは、該当するシリンダに対する負荷を減少させることが可能である。この状態は、「高摩擦状態」と呼ばれる(図面参照)。適切な措置を取らなければ、この状態は、シリンダライナの激しい摩耗を伴うスカッフィングに発展する。スカッフィング状態におけるライナ温度は、高いレベルで安定する。この状態は、図5において「スカッフィング状態」と呼ばれる。
このような背景から、本発明の目的は、スカッフィング発生の前状態(スカッフィング前状態)を検出するための方法を提供することにある。
本目的は、大型マルチシリンダターボ過給型2サイクルディーゼルエンジンにおけるスカッフィング前状態を検出するための方法であって、全てのシリンダのシリンダ壁温度を連続的または断続的に測定することと、全てのシリンダの掃気ボックスの気体温度を連続的または断続的に測定することと、シリンダ壁温度および前記掃気ボックスの前記気体温度を組み合わせた情報に基づいて、シリンダの温度進行(temperature development)がスカッフィング前事象を示すか否かを判断することと、スカッフィング前事象であると判断する場合はスカッフィング前警報を発令することとを含む、方法を提供することによって達成される。
シリンダライナ温度およびシリンダ壁以外の場所の温度を測定する追加のセンサを設けることによって、シリンダライナの温度進行に関する追加の情報源が得られ、それによって、スカッフィング前事象検出の信頼性およびそれに対する対応が改善可能になる。
前記方法は、全てのシリンダについて、シリンダ壁および掃気ボックスの気体温度とは異なる位置において別のシリンダ関連温度を連続的にまたは断続的に測定することと、シリンダ壁温度、掃気ボックスの気体温度、およびその他のシリンダ関連温度を組み合わせた情報に基づいて、スカッフィング前事象の判断を行うこととをさらに含んでもよい。
あるシリンダの温度が変動するとき、そのシリンダの温度変動のピーク間またはディップ間の時間間隔が所定の範囲内に収まり、温度変動におけるピークとディップの温度の違いが所定の閾値を上回る場合に、警報が発令されてもよい。
前記変動が少なくとも所定数連続する場合に、スカッフィング前警報が発令されてもよい。
前記方法は、シリンダ潤滑レベルを、警報が発令されるシリンダの通常動作のレベルを上回るレベルに増加させることをさらに含んでもよい。
前記方法は、負荷レベルを、警報が発令されるシリンダの通常動作のレベルを下回るレベルに減少させることをさらに含んでもよい。
好ましくは、前記方法において測定可能および使用可能であるさらなるシリンダ関連温度は、液体媒体において測定される。
前記方法において測定および使用されるその他のシリンダ関連温度は、シリンダライナ冷却水温度であってもよい。
その他のシリンダ関連温度は、気体媒体において測定されてもよい。
異なる媒体は異なる方式で反応するので、種々の媒体を使用することによって、スカッフィング前事象を迅速に検出するための情報を確実に入手可能となる。
その他のシリンダ関連温度は、シリンダの排ガス温度であってもよい。
本発明の別の目的は、大型マルチシリンダターボ過給型2サイクルディーゼルエンジンにおけるスカッフィング前状態を検出するための装置であって、前記装置は、シリンダ壁温度を測定する温度センサおよび掃気ボックスの気体温度を測定する別の温度センサをシリンダ毎に少なくとも各1つ有し、これらの温度センサは、組み合わせた情報に基づいて、シリンダの温度進行がスカッフィング前事象を示すか否かを判断するように構成されるプロセッサに接続され、前記プロセッサは、スカッフィング前事象であると判断する場合はスカッフィング前警報を発令するように構成される装置を提供することである。
本発明に従う方法および装置に関するさらなる目的、特徴、利点、および特性は、詳細な説明より明らかになるであろう。
本説明の以下の詳細部分において、図面に示される例示的実施形態を参照して、本発明についてより詳細に説明する。
種々の潤滑領域を示すグラフである。
本発明のある実施形態に従う、マルチシリンダエンジンの単一のシリンダの上部の詳細断面図である。
図2に示されるシリンダほど若干詳細ではない図である。
本発明のある実施形態に従う、シリンダ、噴射システム、シリンダ潤滑システム、温度感知システム、およびエンジンの電子制御システムの概略図である。
スカッフィング前事象を示すシリンダの様々なシリンダ関連温度進行を示すグラフである。
スカッフィング前事象を示すシリンダの様々なシリンダ関連温度進行を示すグラフである。
スカッフィング前事象を示すシリンダの様々なシリンダ関連温度進行を示すグラフである。
スカッフィング前事象を示すシリンダの様々なシリンダ関連温度進行を示すグラフである。
図1は、いわゆるストライベック曲線を示す。ピストンリングおよびピストンライナ表面は、「粘度、負荷、速度」を摩擦係数に関係付けるこの曲線によって表されるように、全3つの型の摩耗に直面する。これらの3つの領域は、境界潤滑、混合潤滑、および流体潤滑である。流体潤滑は、油膜によって表面が完全に分離している状態である。負荷が油膜圧力により部分的にのみ支えられ、かつ表面の凹凸による接触により部分的に支えられる場合、この状態は、混合潤滑と呼ばれる。全負荷が表面の凹凸によって支えられ、かつ分子薄油膜のみによって隔てられている場合、この状態は境界潤滑として知られている。
大型2サイクルディーゼルエンジンにおいて、境界潤滑は、ピストンの速度がゼロに近づく上死点(Top Dead Center; TDC)近傍でいくらか常に存在する。内孔の研磨が生じる場合、境界潤滑の大きさは、スカッフィングが発生するレベルまで上昇しうる。
内孔の研磨の発生は、本書においてスカッフィング前事象に分類される。
図2は、クロスヘッド式大型マルチシリンダ2サイクルディーゼルエンジンのシリンダ10のうちの1つを示す。ピストン12は、シリンダ10の中を上下に運動する。シリンダの上部はシリンダカバー14によって覆われる。シリンダカバー14には、排気弁16および燃料噴射器18が設けられる。
温度センサ20および20'は、ピストン12の運動が反転する領域、いわゆる上死点領域(Top Dead Center; TDC)(つまり、シリンダの上部領域)に設けられる。温度センサ20、20'は、シリンダライナ壁に位置し、信号ケーブル22を介してエンジンの電子制御システム(Electronic Control System; ECS)(図3)に接続される。温度センサ20、20'は、シリンダの上部近傍のシリンダ壁温度を測定し、温度センサの信号は、データケーブル22によって電子制御システムECSに転送され、ここで信号がプロセッサによって処理される。図示される実施形態においては、2つの対向する温度センサ20、20'が存在する。しかしながら、シリンダ毎に1つだけ温度センサ20を使用したり、シリンダ毎に2つ以上の温度センサをシリンダの外周に沿って配して用いたりしてもよい。
排気弁ハウジングに位置する温度センサ23は、シリンダを出る排ガスの温度を測定する。データケーブル25は、温度センサ23を電子制御システムECSに接続する。
また、シリンダ注油ポート26もシリンダの外周に沿って設けられる。典型的には、3個から10個のシリンダ注油ポート26がシリンダ毎に設けられるが、主にシリンダ内径に依存して、シリンダ注油ポートの数は異なっていてよい。シリンダ注油ポート26には、シリンダ毎に関連付けられるシリンダ油ポンプ24が設けられる。シリンダ油ポンプ24は、シリンダ油の注油量をエンジンの動作条件に合うように調整する。シリンダ油が比較的高価であるため、通常動作中は、注油量は適量以下であるように設定される。注油量は燃料品質の影響を受け、硫黄含有量の多い低品質燃料の使用時に多くなる。また注油量は、エンジンの負荷および運転速度または特定のシリンダの負荷に依存する。
図3は、スカッフィング前事象をタイミングよくかつ正確に検出するためにより良好で多くの情報を入手できるように、シリンダの周囲の種々の位置におけるシリンダ関連温度を測定するための、シリンダの各々に関連付けられるさらなる温度センサを示す。
温度センサ30は、好ましくは、シリンダライナ冷却水ジャケットの出口管において、シリンダライナ冷却ジャケットの温度を測定する。温度センサ30の信号は、データケーブル32によって電子制御システムECSに転送される。壁センサと違って、冷却水センサ30は、スカッフィング前事象中の摩擦係数の増加の大幅な影響に起因する任意の局所的過熱が進行する場合に即座に反応する。この熱進行は、ライナの上部における接触損傷の位置にかかわらず、一貫して温度に影響を及ぼす。温度上昇はそれでもかなり小さいため、ある実施形態において、トリガ状態を検出するためのプロセッサは温度勾配をも使用する。
温度センサ50は、好ましくは、シリンダライナ冷却油の出口管において、シリンダ冷却油温度を測定する。温度センサ50の信号は、データケーブル52によって電子制御システムECSに転送される。壁センサと違って、ピストン冷却油センサ50は、スカッフィング前事象中の部品間の凝着接触の大きく影響される、任意の局所的な過熱進行に即座に反応する。この熱進行は、ライナの上部における接触損傷の位置にかかわらず、一貫して温度に影響を及ぼす。
エンジン全体の温度変化(例えば、低温始動後)の測定に対するいかなる悪影響をも避けるため、ある実施形態において、プロセッサにより、あるシリンダのシリンダライナ冷却水ジャケットの温度進行を、残りのシリンダの一部または全部のシリンダライナ冷却水ジャケット温度の平均温度の温度進行と比較する。ある実施形態において、あるシリンダのシリンダライナ冷却水ジャケットの温度進行は、残りのシリンダの全部の平均温度の進行と比較される。
温度センサ34は、掃気ボックス5内の気体温度を測定する。この測定は、好ましくは、掃気ボックス5内の掃気ポート付近で行われる。温度センサ34の信号は、データケーブル36によって電子制御システムECSに転送される。ピストンリングとシリンダライナとが凝着する場合、燃焼ガスに対して部品間を密封するという潤滑油の役割は、適切に果たされない。これは、燃焼ガスの局所的なブローバイ(blow-by)のリスクが高まることを意味する。局所的ブローバイによって、掃気ボックス5において気体温度が上昇する。したがって、この3つ目のシリンダ関連温度は、スカッフィング前事象の発生に関する追加の情報に寄与し、スカッフィング前事象の発生を判断するために、電子制御システムECSにおけるプロセッサによって使用可能である。
図4は、5つのシリンダ10を備える本発明のある実施形態に従うエンジンを示す。本実施形態におけるシリンダの数は、単に例示的であって、その他の任意の数のシリンダを備えるマルチシリンダ大型2サイクルディーゼルエンジンに本発明を使用してもよい。
シリンダ10の各々の温度センサ20、20'、30、および34は、信号ケーブル22、32、および36を介して、エンジンの電子制御システムECSに接続される。シリンダ10の各々のシリンダ潤滑ポンプ24も、電子制御システムに接続される。同じことが燃料噴射システムにも当てはまり、信号ケーブル28を介して電子制御システムECSに接続される。
シリンダ10の温度センサ20、20'、30、および34により供給されるシリンダ壁温度値、シリンダジャケット冷却水温度、および掃気ボックスの気体温度は、電子制御システムECSにより測定および評価される。電子制御システムECSは、少なくとも1つのプロセッサを含み、このプロセッサは、これらのシリンダ関連温度の信号を測定、分析、および処理するように構成される。シリンダ関連温度の測定は、例えば、1秒に1回のように断続的であってもよく、または連続的であってもよい。
プロセッサは、シリンダ10の各々のシリンダ関連温度を分析し、シリンダ10の各々のシリンダ関連温度に関するこれらの進行を分析する。構成に応じて、プロセッサは、シリンダ関連温度のうちの入手可能な3つのうちの2つを使用する。これら3つのシリンダ関連温度とは、例えば、シリンダ壁温度、シリンダジャケット冷却水温度、および掃気ボックスの気体温度である。
シリンダのいずれかが、スカッフィング前事象に典型的である温度進行を示す場合に、プロセッサは、スカッフィング前警報を発令する。
図5から8は、種々のシリンダ関連温度に関するシリンダ番号4の、典型的なスカッフィング前事象と、その後の仮想スカッフィング事象(図5の破線によって示される)とを示す。
スカッフィング前事象は、シリンダ関連温度の変動によって開始する。シリンダ壁温度に関し、これらの変動は、典型的には、約25°Cから約65°Cの間の領域における変動の大きさを有する。
シリンダジャケット冷却水温度における温度変動も、シリンダ壁温度変動と同一の、ピーク間間隔およびディップ間間隔を示す(図6)が、温度変動の大きさは、シリンダ壁温度変動の大きさより大幅に小さい(典型的には1°Cから5°C)。これは、シリンダ壁において局所的に増大する熱が高熱容量の冷却水に分配されるという影響に起因する。また、ジャケット冷却温度には、高摩擦状態事象中に徐々に増加するという傾向がある。
それにもかかわらず、冷却水温度変動は、シリンダ壁温度変動より大幅に再現性が良いため、シリンダジャケット冷却水からの温度信号は、シリンダにおける事象に関する情報に非常に大きく寄与する。
シリンダジャケット冷却水温度の変動の有用性を改善するために、ある実施形態において、プロセッサは、感受性を改善するために温度勾配Δt/ΔTを使用するように構成される。
さらに、ある実施形態において、プロセッサは、あるシリンダジャケット冷却水温度の温度進行を、残りのシリンダのシリンダジャケット冷却水温度の進行、例えば、残りのシリンダの一部または全部の平均温度の進行と比較するように構成される。したがって、例えば状態の変化や低温始動後に発生するようなエンジン温度の通常の変化は除外可能であり、スカッフィング前事象に関連する変動として間違って解釈されない。したがって、「相対的」なシリンダジャケット冷却水温度が得られる。温度進行を残りのシリンダの温度進行と比較する手順と同じことを、その他のシリンダ関連温度(シリンダ壁温度、掃気ボックスの気体温度、排ガス温度)に適用可能である。これは望ましいことである。
シリンダ関連温度変動におけるピーク間の時間間隔(またはディップ間の時間間隔)は、典型的には、約6分から約18分の間の範囲である。図5から図7におけるこれらの事象が発生する期間は、「高摩擦状態」と示される。この状態において、摩擦は増加するが、実際のスカッフィング中に発生する摩擦のレベルまで増加しない。
シリンダ壁温度変動の大きさの範囲はエンジンによって異なるであろう。またエンジンのサイズおよび設計にも依存するだろう。また、経験的に判断することが可能である。これは、温度変動におけるピーク間の時間間隔の範囲にも当てはまる。
温度変動の大きさは、4つのシリンダ関連温度の各々について異なる。シリンダ壁温度の温度範囲は、典型的には摂氏数十度の大きさであるが、一方シリンダジャケット冷却水温度の温度範囲は、典型的には摂氏数度の大きさである。
掃気ボックスの気体温度は、典型的には変動しないが、高摩擦状態中に徐々に上昇する。掃気ボックスの気体温度の温度範囲(図7)は、典型的には、スカッフィング前事象の開始から実際のスカッフィングまでで5°Cから20°Cである。
排気弁ハウジングの排ガスの温度も典型的には変動しないが、高摩擦状態中に徐々に上昇する。排気弁ハウジングの排ガス温度の温度範囲(図8)は、典型的には、スカッフィング前事象の開始から実際のスカッフィングまでで10°Cから40°Cである。
プロセッサは、温度変動がスカッフィング事象の特徴と一致すると判断された場合に、スカッフィング前警報を発令するように構成される。ここでプロセッサは、2つ、3つ、または入手可能であれば3つを超えるシリンダ関連温度を使用してもよい。したがって、プロセッサは、変動のピーク間隔が所定の範囲内にあるか否かを判断し、温度変動が所定の大きさを超えるか否かを判断する。
ある実施形態によると、プロセッサは、入手可能なシリンダ関連温度のうちの1つだけが、スカッフィング前事象に一致する基準を満たす場合に、スカッフィング前事象警報を発令するか否かを判断するように構成される。別の実施形態によると、プロセッサは、入手可能なシリンダ関連温度のうちの少なくとも2つが、スカッフィング前事象に一致する基準を満たす場合に、スカッフィング前事象警報を発令するか否かを判断するように構成される。
スカッフィング前事象の判断が肯定的である場合、プロセッサは、スカッフィング前警報を発令し、ある実施形態において、プロセッサは、スカッフィング前事象対策をも自動的に開始する。これらのスカッフィング前事象対策は、シリンダ潤滑油注油量を通常動作における注油量を超えるレベルまで増加させることを含む。
この増加は、電子エンジン制御システムECSから、スカッフィング前警報が発令されたシリンダのシリンダ潤滑ポンプ24へ送られる信号によりもたらされ、また、スカッフィング前事象対策は、警報が発令されたシリンダに対する負荷を減少させることをも含んでもよい。この対策は、それぞれの信号ケーブル28を介して燃料噴射の量および/またはタイミングを変更することによって、電子制御システムECSによりもたらされる。スカッフィング前事象対策は、エンジン速度を低下させることも含んでもよい。
プロセッサは、ある実施形態において、スカッフィング前事象の検出により厳密な制御を適用するように構成される。例えば基準として、警報の発令前に、所定数のシリンダ関連温度変動が連続して発生しなければならないとすることができる。この所定数は、2つまたは3つの変動(3つのピークのうちの少なくとも2つ)に設定されてもよい。
本発明は、多数の利点を有する。異なる実施形態または実装によって、以下の利点のうちの1つ以上がもたらされうる。これは、包括的なリストではなく、本明細書に記載されないその他の利点も存在しうることに留意されたい。本発明の一利点として、スカッフィング前事象を検出するための確実な方法を提供することが挙げられる。本発明の別の利点として、スカッフィング前事象が検出された時に、その対策を自動的に開始可能とすることが挙げられる。本発明のさらなる利点として、いくつかのシリンダ関連温度における情報を、スカッフィング前の発生を判断するために組み合わせることが可能であることが挙げられる。本発明のまた別の利点は、固体媒体、液体媒体、および気体媒体等の異なる媒体からシリンダ温度情報を取り出すことが可能であることである。
請求項において使用される用語の「備える」は、その他の要素またはステップを除外しない。請求項における単数形の用語は、複数形を除外しない。
上の説明において、特別に重要であると考えられる本発明の特徴に留意するよう試みたが、本明細書において参照および/または図示されたいかなる特許可能な特徴または特徴の組み合わせに関しても、それに関して特に強調されたか否かに関わらず、本出願人は保護を主張することを理解されたい。さらに、当業者は、本開示を考慮して、本発明の装置に関する修正・改善を加えてもよいが、以下の請求項に記載されるような本発明の範囲および思想内にあることを理解されたい。
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