JP4443561B2 - 舶用ディーゼルエンジンおよびその異常検出装置ならびに異常検出方法 - Google Patents
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また非特許文献2では、スカッフィング(シリンダーの異常磨耗)を早期に発見するため、予兆として現れる温度パターンを検出して異常検知判断を行う装置が示されている。
いずれの文献に記載の技術も、シリンダとピストン間の異常磨耗を、シリンダライナ外壁部に組み込んだ温度検出器で検出して異常状態の判定を行うものである。特許文献1では「高温燃焼ガス温度を検出する」と記載された部分もあるが、外壁に埋め込んだ温度検出器で測定する温度を燃焼ガスの温度として扱っているにすぎない。
また上記各文献の技術では、外壁の金属部の温度を検出していることから、ガス温度を直接的には検出できていない。そのため、ピストン周りに設置しているピストンリングの異常磨耗によるシール不良に基づくブローバイ現象(ピストンリングとシリンダライナ間からのガス漏れ)は検出することが難しい。
上述の技術では、検出器の耐久性の点でも好ましくない。すなわちシリンダライナ部は爆発力を直接的に受ける部分であるため、それに埋め込んだ検出器は常時大きな振動を受けることになり、耐久性が低下しやすい。
a) シリンダーとピストンとの摺動異常を検出するため、掃気室内のうち掃気口付近にてガス温度を検出する掃気口温度検出器を、ブローバイ発生時の高温ガスが漏れ出る掃気口に面したすぐ外側に感温部を位置させて有すること。
b) 掃気室内のうち掃気口付近にてガス温度を検出する上記の掃気口温度検出器と、掃気管内のガス温度を検出する掃気管温度検出器と、エンジンの負荷を検出する負荷検出器とを有するとともに、それらの温度検出器および負荷検出器の信号を受け、上記双方の温度検出器の信号が示す温度の差が、負荷検出器の信号が示すエンジンの負荷に対応づけられる基準値を超えたとき異常信号を発する判定器を有すること。
1) 掃気室内のうち掃気口付近のガス温度である掃気口温度と、掃気管内のガス温度である掃気管温度と、エンジンの負荷とを検出し、検出される掃気口温度と掃気管温度との温度差が、検出されるエンジンの負荷に対応づけられる基準値を超えることをもって異常とすること。
2) 検出される掃気口温度と掃気管温度との温度差を平均化処理するとともに、検出されるエンジンの負荷を平均化処理したうえで上記基準値への対応づけを行うこととし、検出されるエンジンの負荷が整定された段階で、平均化処理した上記の温度差が上記の対応づけによる基準値を超えるか否かを判定し、当該基準値を超えることをもって異常とすること。
3) 上記の負荷検出器として過給器回転数の検出器を用い、上記のエンジンの負荷を、当該検出器が検出する過給器回転数で代用すること。
シリンダライナやピストンリングの異常摩耗によってブローバイが発生すると、掃気ポートから漏れ出る高温ガスにより掃気口付近のガス温度が上昇する。上記異常検出装置によれば、ブローバイによって掃気口付近へ漏れ出る高温ガスを、掃気口付近に設置した上記の温度検出器(掃気口温度検出器)によって直接検出することができる。スカッフィングが起こる前の初期段階ではブローバイが必ず発生するため、こうしてブローバイを検出することで、スカッフィングをも事前に検知できることになる。
また、上記異常検出装置では、加工の難しいシリンダライナ外壁部に温度検出器を埋め込む必要がないので、検出器設置のための加工コストが低減できる。ディーゼル機関の最大の振動源であるシリンダライナから離れているため、温度検出器の耐久性の観点からも望ましい。
上記エンジンの負荷については、変動が一定範囲内にある状態が30分以上経過した場合をもって整定されたとし、上記の判定を行うとよい。
温度検出器を、加工の難しいシリンダライナ外壁部にではなく、より一般的な材料が使用される掃気室の壁に設けられた穴に取り付けることとすると、検出器設置のための加工コストがとくに低減される。温度検出器を、掃気室の壁の外側から挿入され当該壁の外側において固定される形で取り付けるなら、その取り付けおよび取り外しも容易である。異常時に漏れ出てくる高温ガスを当該検出器が直接検出できるうえ、検出器の耐久性の面でも好ましい、といった点は上記と同様である。なお、掃気口付近に点検用の開閉ハッチ等があれば、掃気室の壁として当該ハッチ等に温度検出器を設置するのも好ましい。
この異常検出装置では、エンジンを搭載した船舶は広い領域を航海しており、外気温度が高い地域や低い地域があるうえ天候も大幅に変化することに基づき、外気温度が上昇するとそれに応じて掃気管温度も上昇し、ひいては掃気口温度も上昇すること、さらには、ディーゼルエンジンの負荷に応じて燃焼ガス温度が変化することを考慮して、以下のごとくさらに判定判断を改善できる。
ディーゼルエンジンでは、運転負荷が大きくなると一般に燃焼室ガス温度が上昇してくる。そのため、掃気口温度検出器と掃気管温度検出器出力との間の温度差が、船舶の運転負荷状態によって基準づけられる値を超えたときに異常と判定することで、検出された当該温度差の拡大が、シリンダ摺動の異常によるものか単にエンジン負荷が変化したことによるものかを判断することができる。なお、掃気口温度と掃気管温度との温度差に基づいて判断するので、外気温度の変化による影響を受けないようにできることはいうまでもない。
そのようなエンジンでは、温度検出器の取り付けに要するコストを抑えながら、上述した好ましい異常検出を行うことができる。
このようにすることにより、a)ブローバイの段階からシリンダライナ等の異常摩耗を検出できる、b)温度を検出するために、特殊な材料でできたシリンダライナ等に困難な加工をして温度検出器を取り付ける必要がない、c)温度を検出するための手段について耐久性を向上させられる、といったメリットに加えて、エンジンの負荷による温度変化の影響を矯正して、さらに高精度な異常検出を行うことが可能になる。
この方法によれば、掃気口温度や掃気管温度、さらにはエンジンの運転負荷が時間的に変化している場合においても、好ましい異常検出が行える。つまり、エンジンの運転については、起動から順次出力を上昇させ、定常運転時においてもその運転状況に応じて出力が変化することがある。検出される掃気口温度と掃気管温度との温度差、および検出されるエンジンの負荷をそれぞれ平均化処理するとともに、上記温度差が上記基準値を超えるか否かを判定するタイミングをエンジン負荷が整定されたときとすることで、瞬時的なあるいは継時的な変化を誤って異常と判定しないようにすることができる。
またとくに、瞬時的・継時的な変化による誤差をなくしてディーゼルエンジンの異常検出の精度向上をはかることができる。
図1には二サイクルの舶用ディーゼルエンジン1を示している。エンジン1の上部にはシリンダ2とその中を移動するピストン3があり、シリンダ2内に噴射された燃料と吸入された空気とが混合されて爆発し、ピストン3を押し下げる。ピストン3の動きはコネクティングロッド4を介してクランク5を動かし、主軸6に回転運動を与える。主軸6の回転運動がディーゼルエンジン1の出力となる。主軸6の長さ方向に複数のシリンダ2が配置され、それぞれに対してピストン3やコネクティングロッド4が設けられている。
シリンダ2とピストン3との摺動部において、保守不良や潤滑油の不足などにより摺動異常が生じると、摺動面の摩擦が増大し、ブローバイ現象が生じるとともにその後にスカッフィングが発生しがちである。ブローバイが生ずると高温の排気ガスがピストン3の下に漏れ、それが掃気口7に流出してきて、付近の温度が上昇する。この事例では、掃気口温度検出器10によって、ブローバイにより漏れてくる高温の燃焼ガスを直接温度測定することで、摺動異常を早期に検出するようにしたものである。
掃気口7の外側付近に点検用途などの蓋があれば、温度検出器10の取り付け用の穴をその蓋に加工することも可能である。そのような蓋に加工をすることができれば、温度検出器10の取り付けやそのメンテナンス等がさらに容易となる。
掃気口温度検出器10には測温抵抗体を使用しているが、熱電対を用いても同様に実施できる。
ディーゼルエンジン1の燃焼ガス温度は、エンジンの負荷が増加すると高くなるなど、負荷に応じて変化する。そこで、掃気口温度検出器10の出力と掃気管温度検出器12の出力との差が、エンジンの負荷に応じて正常とされる基準値と比較して一定以上逸脱しているか否かによって異常を判定する。この例ではエンジン負荷検出器16として過給器の回転数検出器を使用し、エンジン負荷を過給機回転数で代用しているが、ガバナのラック位置信号や、動力計の出力、またはエンジンの回転数をもって代用することもできる。
舶用ディーゼルエンジン1においては、起動時および運行時に、負荷状態を始め種々のデータについて時間的な変動がある。そこで、瞬時的なデータ変動を異常と誤って判断しないよう、検出された出力値を平均化処理して入力値とし、瞬時あるいは短時間の経時的変化事象を除外して異常を判定できるようにする。
一方、シリンダ2内のガスの燃焼温度は負荷に応じて変化するため、負荷(たとえば過給器回転数)に応じたPBP温度の基準値を示す異常判定線(判定値関数。図5の下部に示すもの)を求め、これを判定器14に記憶させておく。
図4のエンジン負荷検出器16によってたとえば過給器の回転数Lを測定し続けるとともに、ディーゼルエンジン1の運転について整定判定S2を行い、運転が整定した時点でPBP温度T3の変化による判定を開始する。整定判定S2は、たとえば過給機回転数Lが±2%以内の変動で30分以上経過した場合をもって整定と判断する。
エンジン負荷に相当する過給器回転数Lについても、瞬時的な動作変化を排除するために平均化処理S3を行い、それによって得る平均過給器回転数を、判定器14が上記の異常判定線に当てはめて変化判定S4を行う。その結果、測定されて平均化処理S1をされたPBP温度T3が異常判定線より上にあれば、摺動異常が発生したと判定し、その旨をランプまたはブザー等で警報S5する。
こうした異常判定ロジックは、マイコン、PLC(プログラマブルロジックコントローラ)などで組むことにより容易に実現できる。
異常の判定がなされて警報が発せられると、運転員は、その状態に応じて給油量の増量や負荷の低減等を行うことができる。
エンジン負荷を考慮せずに上述のPBP温度のみを使用して判定を行うのもよい。たとえばPBP温度の平均値が30分前と比較して異常上昇(たとえば+4℃)した、といった事態が検出されると、摺動異常が発生していると判定する。
2 シリンダ
7 掃気口
8 掃気室
9 掃気管
10 掃気口温度検出器
11 掃気室外壁
12 掃気管温度検出器
14 判定器(温度異常判定装置)
16 エンジン負荷検出器
Claims (3)
- 下記a)およびb)を特徴とする舶用ディーゼルエンジンの異常検出装置を使用する異常検出方法であって、下記1)、2)および3)を特徴とする舶用ディーゼルエンジンの異常検出方法。
a) シリンダーとピストンとの摺動異常を検出するため、掃気室内のうち掃気口付近にてガス温度を検出する掃気口温度検出器を、ブローバイ発生時の高温ガスが漏れ出る掃気口に面したすぐ外側に感温部を位置させて有すること。
b) 掃気室内のうち掃気口付近にてガス温度を検出する上記の掃気口温度検出器と、掃気管内のガス温度を検出する掃気管温度検出器と、エンジンの負荷を検出する負荷検出器とを有するとともに、それらの温度検出器および負荷検出器の信号を受け、上記双方の温度検出器の信号が示す温度の差が、負荷検出器の信号が示すエンジンの負荷に対応づけられる基準値を超えたとき異常信号を発する判定器を有すること。
1) 掃気室内のうち掃気口付近のガス温度である掃気口温度と、掃気管内のガス温度である掃気管温度と、エンジンの負荷とを検出し、検出される掃気口温度と掃気管温度との温度差が、検出されるエンジンの負荷に対応づけられる基準値を超えることをもって異常とすること。
2) 検出される掃気口温度と掃気管温度との温度差を平均化処理するとともに、検出されるエンジンの負荷を平均化処理したうえで上記基準値への対応づけを行うこととし、検出されるエンジンの負荷が整定された段階で、平均化処理した上記の温度差が上記の対応づけによる基準値を超えるか否かを判定し、当該基準値を超えることをもって異常とすること。
3) 上記の負荷検出器として過給器回転数の検出器を用い、上記のエンジンの負荷を、当該検出器が検出する過給器回転数で代用すること。 - 上記エンジンの負荷については、変動が一定範囲内にある状態が30分以上経過した場合をもって整定されたとし、上記の判定を行うことを特徴とする請求項1に記載した舶用ディーゼルエンジンの異常検出方法。
- 上記の掃気口温度検出器が、掃気室の壁に設けられた穴に、当該壁の外側から挿入され当該壁の外側において固定されることにより取り付けられていることを特徴とする請求項1または2に記載した舶用ディーゼルエンジンの異常検出方法。
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