JP4728544B2 - 樹脂組成物の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂組成物の製造方法に関し、特に無機粉体を高充填する場合に好適に用いられる難燃性に優れた樹脂組成物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリオレフィン系樹脂は、近年、廃プラスチックの処理や環境ホルモンの問題から、環境に優しい材料として注目されている。具体的には、ポリ塩化ビニル系樹脂の代替材料として、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂が検討されている。
【0003】
しかし、ポリオレフィン系樹脂は最も燃焼性の高い樹脂の一つであり、難燃性を発現させることは最も困難な課題となっている。現状では、含ハロゲン難燃剤をポリオレフィン系樹脂中に練り込むことによって対処している例が多い。
【0004】
含ハロゲン難燃剤は、難燃化の効果も高く、成形性の低下や成形体の機械的強度の低下も比較的少ないが、これを使用した場合、成形加工時や燃焼時に多量のハロゲン系ガスを発生するおそれがあり、発生したガスにより機器が腐食したり、人体への影響があるため、安全性の面からハロゲン含有化合物を使用しない所謂ノンハロゲン難燃化処理方法が強く望まれている。
【0005】
上記問題を解決する方法として、特開平11−228748号公報には、有機処理された特定の粘度鉱物等の充填剤が高充填されてなる樹脂組成物が開示されている。また、一般に、無機充填剤として、タルク等の粘度鉱物類を用いることは、非ハロゲン系の難燃化処理として極めて有効であった。
【0006】
しかしながら、上記のような樹脂組成物は、高い難燃性を発揮し、燃焼時や成形加工時にハロゲン系ガスを発生することがない点では極めて優れた樹脂組成物ではあるが、該樹脂組成物の製造方法としては、例えば、押し出し成型などにより混練し、ペレット化しようとした場合、必ずしも容易とはいえない場合があった。特に充填剤として、粒径の小さなタルクを多量に充填しようとする場合は、押し出し機への負荷が過大となりやすく、時間当たり押し出し量等の押し出し効率が非常に低下するというような問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、無機粉体が高充填された高い難燃性を有するポリオレフィン系樹脂組成物を効率よく製造することができる樹脂組成物の製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の樹脂組成物の製造方法は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、平均粒子径5〜20μmかつ嵩比容積1.0〜2.0ml/gのタルクを20重量部以上と、有機化層状珪酸塩とが添加された樹脂組成物の製造方法であって、前記タルクの全量と有機化層状珪酸塩との体積比が1:0.2〜1:5の範囲となるように予めドライブレンドした混合物とポリオレフィン系樹脂とを押し出し機にフィードして押し出すことを特徴とする。
請求項2記載の樹脂組成物の製造方法は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、平均粒子径5〜20μmかつ嵩比容積1.0〜2.0ml/gのタルクを20重量部以上と、有機化層状珪酸塩とが添加された樹脂組成物の製造方法であって、前記タルクの全量と、前記ポリオレフィン系樹脂の全量のうちの10重量%以下のポリオレフィン系樹脂とを、体積比が1:0.05〜1:0.5の範囲となるように予めドライブレンドした混合物を、サイドフィーダーで押し出し機にフィードし、残りのポリオレフィン樹脂と有機化層状珪酸塩とをメインフィーダーで押し出し機にフィードして押し出すことを特徴とする。
【0009】
本発明で用いられるポリオレフィン系樹脂とは、分子内に重合性二重結合を有するオレフィン系単量体を単独重合もしくは主成分として共重合して得られる樹脂である。
【0010】
上記オレフィン系単量体としては、特に限定されるものではないが、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンなどのα−オレフィン類;ブタジエンやイソプレンなどの共役ジエン類等が挙げられる。これらのオレフィン系単量体は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0011】
上記ポリオレフィン系樹脂の具体例としては、特に限定されるものではないが、例えば、エチレンの単独重合体、エチレンと該エチレンと共重合可能なエチレン以外のα−オレフィンとの共重合体、エチレンと(メタ)アクリル酸との共重合体、エチレンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体、エチレンとスチレンとの共重合体などのポリエチレン系樹脂;プロピレンの単独重合体、プロピレンと該プロピレンと共重合可能なプロピレン以外のα−オレフィンとの共重合体、プロピレンとエチレンとのランダム共重合体又はブロック共重合体などのポリプロピレン系樹脂;ブテンの単独重合体;ブタジエンやイソプレンなどの共役ジエンの単独重合体又は共重合体等が挙げられる。尚、本発明で言う「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」又は「メタクリル酸」を意味する。
【0012】
又、本発明においては、例えば無水マレイン酸変性エチレンオリゴマーなどの酸変性オレフィン系オリゴマー類や、例えばエチレンとプロピレンとの共重合ゴムなどの熱可塑性オレフィン系エラストマー類も上記ポリオレフィン系樹脂の範疇に包含される。
【0013】
上記ポリオレフィン系樹脂のなかでも、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、酸変性オレフィン系オリゴマー類等が好適に用いられ、とりわけ、エチレンの単独重合体、エチレンと該エチレンと共重合可能なエチレン以外のα−オレフィンとの共重合体、エチレンとアクリル酸エステルとの共重合体、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体、プロピレンの単独重合体、プロピレンと該プロピレンと共重合可能なプロピレン以外のα−オレフィンとの共重合体、無水マレイン酸変性エチレンオリゴマー等がより好適に用いられる。これらのポリオレフィン系樹脂は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0014】
本発明で用いられるポリオレフィン系樹脂の分子量及び分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)は、特に限定されるものではないが、重量平均分子量が5000〜500万であることが好ましく、より好ましくは2万〜30万であり、分子量分布が1.1〜80であることが好ましく、より好ましくは1.5〜40である。
【0015】
本発明で用いられるポリオレフィン系樹脂には、所望の物性を得るために適宜添加剤が添加されてもよい。上記添加剤としては特に限定されず、例えば、酸化防止剤、耐光剤、紫外線吸収剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤等が挙げられる。
また、上記ポリオレフィン系樹脂には、物性を均一化する補助として結晶核剤となりうるものを少量添加して、結晶を微細化してもよい。
【0016】
上記難燃剤としては、難燃性を付与するものであれば特に限定されないが、非ハロゲン系難燃剤であることが好ましく、例えば水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ドーソナイト、アルミン酸化カルシウム、2水和石こう、水酸化カルシウムなどの金属水酸化物が挙げられる。中でも水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムが特に好適に用いられる。
【0017】
上記金属水酸化物は、一種でも、二種以上を混合して用いてもよい。この場合、各々が異なる温度で分解脱水反応を開始することから、より高い難燃効果が得られる。さらに上記金属水酸化物は表面処理剤などにより表面処理がされているものであってもよい。
【0018】
上記表面処理剤としては、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、PVA系表面処理剤、エポキシ系表面処理剤などが挙げられるが特に限定されるものではない。
【0019】
本発明で用いられるタルクとしては、平均粒子径が5〜20μmであり、かつ嵩比容積が1.0〜2.0ml/gのものが用いられる。
平均粒子径が5μm未満であると本発明における効果が不十分となり、20μmを超えると樹脂組成物の難燃性が低下するという問題がある。
また、嵩比容積が1.0ml/g未満であると樹脂組成物の難燃性が低下するとことがあり、2.0ml/gを超えると本発明における効果が不十分となる。
【0020】
上記タルクの添加量は、少なすぎると樹脂組成物の流動性が低下することがあるので、20重量部以上とされる。添加量の上限は特に認められないが、多すぎると樹脂組成物の柔軟性が極度に低下することがあるので通常50重量部以下とされることが好ましい。
【0021】
本発明に用いられる、有機化層状珪酸塩とは、層状珪酸塩に対して後に詳述するような有機化処理がなされたものであり、層状珪酸塩とは、層間に交換性陽イオンを有する珪酸塩鉱物を意味する。
【0022】
上記珪酸塩鉱物としては特に限定されず、例えば、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、スティブンサイト、ノントロナイト等のスメクタイト系粘土鉱物、バーミキュライト、ハロイサイト、膨潤性マイカ等が挙げられる。これらのなかでも、モンモリロナイト、膨潤性マイカが好ましい。上記層状珪酸塩は天然物又は合成物のいずれであってもよい。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されても良い。
【0023】
上記層状珪酸塩としては、下記関係式で定義される形状異方性効果の大きいスメクタイト類、膨潤性マイカを用いることが、複合材料の機械強度の点からより好ましい。
形状異方性効果=層状結晶表面(B)の面積/結晶側面(A)の面積
【0024】
上記層状珪酸塩の層間に存在する交換性陽イオンとは、結晶表面上のナトリウムやカルシウム等のイオンであり、これらのイオンは、カチオン性物質とイオン交換性を有するため、カチオン性を有する種々の物質を上記層状珪酸塩の層間に挿入(インターカレート)することができる。
【0025】
上記層状珪酸塩の陽イオン交換容量としては特に限定されないが、50〜200ミリ等量/100gであるのが好ましい。50ミリ等量/100g未満であると、イオン交換により結晶層間に挿入(インターカレート)されるカチオン性物質の量が少ないために、層間が充分に非極性化されない場合がある。一方、200ミリ等量/100gを超えると、層状珪酸塩の層間の結合力が強固となり、結晶薄片が剥離し難くなる場合がある。
【0026】
本発明における有機化層状珪酸塩は、先にのべたように層状珪酸塩に対して有機化処理がなされたものであり、具体的には、層状珪酸塩の層間に存在する交換性陽イオンをカチオン性界面活性剤でカチオン交換して有機化処理したものである。
予め層状珪酸塩の層間を有機化しておくことにより、層状珪酸塩とポリオレフィン系樹脂との親和性が高まり、層状珪酸塩をポリオレフィン系樹脂中により均一に微分散させることができる。
【0027】
上記カチオン性界面活性剤としては特に限定されず、例えば、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩等が挙げられる。中でも炭素数6以上のアルキル鎖を有する4級アンモニウム塩(アルキルアンモニウム塩)は、層状珪酸塩の層間を充分に非極性化し得るので好適に用いられる。
【0028】
上記4級アンモニウム塩としては、例えば、ラウリルトリメチルアンモニウム塩、ステアリルトリメチルアンモニウム塩、トリオクチルアンモニウム塩、ジステアリルジメチルアンモニウム塩、ジ硬化牛脂ジメチルアンモニウム塩、ジステアリルジベンジルアンモニウム塩等が挙げられる。
【0029】
また、上記4級ホスホニウム塩としては、例えば、ドデシルトリフェニルホスホニウム塩(DTPB)、メチルトリフェニルホスホニウム塩、ラウリルトリメチルホスホニウム塩、ステアリルトリメチルホスホニウム塩、トリオクチルホスホニウム塩、ジステアリルジメチルホスホニウム塩、ジステアリルジベンジルホスホニウム塩等が挙げられる。
【0030】
上記有機化処理は、上記のような(1)カチオン性界面活性剤によるカチオン交換法(以下、「化学修飾(1)法」と記す)に限定されるものではなく、例えば、以下(2)〜(6)に示す有機化処理方法も含まれるものである。
【0031】
(2)化学修飾(1)法で有機化処理された有機化層状珪酸塩の結晶表面に存在する水酸基を、これと化学結合し得る官能基、又は、化学結合はしなくとも化学的親和性の大きい官能基を分子末端に1個以上有する化合物で化学処理する方法(以下、「化学修飾(2)法」と記す)。
【0032】
(3)化学修飾(1)法で有機化処理された有機化層状珪酸塩の結晶表面に存在する水酸基を、これと化学結合し得る官能基、又は、化学結合はしなくとも化学的親和性の大きい官能基及び反応性官能基を分子末端に1個以上有する化合物で化学処理する方法(以下、「化学修飾(3)法」と記す)。
【0033】
(4)化学修飾(1)法で有機化処理された有機化層状珪酸塩の結晶表面を、アニオン性界面活性を有する化合物で化学処理する方法(以下、「化学修飾(4)法」と記す)。
【0034】
(5)化学修飾(4)法において、アニオン性界面活性を有する化合物の分子鎖中のアニオン部位以外に反応性官能基を1個以上有する化合物で化学処理する方法(以下、「化学修飾(5)法」と記す)。
【0035】
(6)上記化学修飾(1)法〜化学修飾(5)法のいずれかの方法で化学処理された有機化層状珪酸塩に、さらに、例えば、無水マレイン酸変性ポリプロピレン系樹脂などの層状珪酸塩と反応可能な官能基を有する重合体を添加した組成物を用いる方法(以下、「化学修飾(6)法」と記す)等が挙げられる。これらの化学修飾法は、単独で用いられても良いし、2種類以上の方法が併用されても良い。
【0036】
上記化学修飾(2)法において、水酸基と化学結合し得る官能基、又は、化学結合はしなくとも化学親和性が大きい官能基としては特に限定されず、例えば、アルコキシ基、エポキシ基、カルボキシル基(二塩基性酸無水物を含む)、水酸基、イソシアネート基、アルデヒド基、その他水酸基と化学親和性が高い官能基等が挙げられる。
【0037】
水酸基と化学結合し得る官能基を有する化合物、又は、化学結合はしなくとも化学的親和性の大きい官能基を有する化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、上記に例示した官能基を有するシラン化合物、チタネート化合物、グリシジル化合物、カルボン酸類、アルコール類等が挙げられ、好適に用いられる。これらの化合物は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0038】
上記シラン化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0039】
また、化学修飾(4)及び(5)法において、アニオン性界面活性性能を有する試剤及び/又はアニオン性界面活性性能を有し、分子鎖中のアニオン部位以外に反応性官能基を1個以上含有する試剤としては、イオン相互作用により、上記層状珪酸塩を化学修飾できるものであれば特に限定されないが、例えば、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、高級アルコール硫酸エステル塩、第2級高級アルコール硫酸エステル塩、不飽和アルコール硫酸エステル塩等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0040】
本発明において、有機化処理されて用いられる層状珪酸塩は、広角X線回折測定法により測定した(001)面の平均層間距離が3nm以上であり、5層以下に分散しているものを有しているものが好ましい。平均層間距離が3nm以上であり、5層以下に分散していることは、難燃性、機械物性、耐熱性等の性能発現に有利となる。この理由は、3nm以上に層間が開裂し、5層以下で存在しているものを含んで分散している状態は、層状珪酸塩の積層体の一部又は全てが分散していることを意味しており、層間の相互作用が弱まっていることによると推定される。
【0041】
更に、層状珪酸塩の平均層間距離が6nm以上であると、難燃性、機械物性、耐熱性等の機能発現に特に有利である。平均層間距離が6nm以上であると、層状珪酸塩の結晶薄片層が層毎に分離し、層状珪酸塩の相互作用がほとんど無視できるほどに弱まるので、層状珪酸塩を構成する結晶薄片の樹脂中での分散状態が離砕安定化の方向に進行する。
【0042】
層状珪酸塩の分散状態としては、熱可塑性樹脂組成物中で層状珪酸塩の10%以上が5層以下で存在している状態で分散していることが好ましく、層状珪酸塩の20%以上が5層以下の状態で存在していることがより好ましい。積層数は、5層以下であれば、効果的に上述の効果が得られるが、3層以下であればより好ましく、単層状に薄片化していれば更に好ましい。
【0043】
なお、本明細書において、層状珪酸塩の平均層間距離とは、微細薄片状結晶を層とした場合の平均の層間距離であり、X線回折ピーク及び透過型電子顕微鏡撮影により、即ち、広角X線回折測定法により算出できるものである。
【0044】
上記における難燃性の性能発現に対する作用機構については必ずしも明らかではないが、層状珪酸塩の平均層間距離が3nm以上であり、5層以下に分散しているものを有することによって、結晶薄片間の平均距離が小さくなり、燃焼時においては層状珪酸塩の結晶薄片の移動による焼結体を形成し易くなるためと考えられる。即ち、層状珪酸塩の結晶薄片が平均層間距離3nm以上で分散した樹脂組成物は難燃被膜となり得る焼結体を形成し易くなり、しかも、この焼結体は燃焼時の早い段階で形成されるので、外界からの酸素の供給のみならず、燃焼により発生する可燃ガスも遮断することができ、樹脂組成物は難燃性を発現することが可能となるためであると考えられる。
【0045】
請求項1記載の樹脂組成物の製造方法(本発明1)は、上記タルクの全量と有機化層状珪酸塩との体積比が1:0.2〜1:5となるような比率で、例えば、ヘンシェルミキサー、タンブラー等を用いて予めドライブレンドした混合物と、ポリオレフィン系樹脂とを、例えば、同方向2軸方式等の押し出し機にフィード(供給)して、混練押し出し等を行い、目的の組成物を得る方法である。
【0046】
上記フィード(供給)方法としては、例えば、上記混合物とポリオレフィン系樹脂とをメインフィーダーで押し出し機にフィードしてもよいし、上記混合物をサイドフィーダーで押し出し機にフィードし、ポリオレフィン系樹脂をメインフィーダーで押し出し機にフィードする方法であってもよい。
【0047】
請求項2記載の樹脂組成物の製造方法(本発明2)は、上記タルクの全量と、上記ポリオレフィン系樹脂の全量のうちの10重量%以下のポリオレフィン系樹脂とを、体積比が1:0.05〜1:0.5の範囲となるように、例えば、ヘンシェルミキサー、タンブラー等を用いて予めドライブレンドした混合物を用いる方法である。この場合は、押し出し機に対する食い込み性の点で、上記混合物をサイドフィーダーで押し出し機にフィード(供給)し、残りのポリオレフィン樹脂と有機化層状珪酸塩とをメインフィーダーで押し出し機にフィード(供給)する必要がある。
【0048】
上記のように、タルクを有機化層状珪酸塩或いは少量のポリオレフィン系樹脂と予めドライブレンドすることにより、また、必要によりサイドフィーダーでフィードすることにより、タルクとポリオレフィン系樹脂との親和性が高まり、過大な背圧を発生させることなく押し出すことが可能となる。
【0049】
本発明1において、タルクと有機化層状珪酸塩との体積比が1:0.2未満であると、背圧が高くなり過ぎることがあり、体積比が1:5を超えると樹脂組成物の流動性が低下することがある。
また、本発明2において、タルクとポリオレフィン系樹脂との体積比が1:0.05未満であると、背圧が高くなり過ぎることがあり、体積比が1:0.5を超えると、押し出し機への食い込みが低下しやすくなる。
【0050】
上記の製造方法において、押し出し機により押し出されたストランド状(棒状)等の樹脂組成物は、いわゆるペレタイザー等によりペレット化されることが一般的である。
尚、上記において用いられるポリオレフィン系樹脂の形態は、例えば、粉体であってもよいしペレット状であってもよい。
【0051】
(作用)
本発明の樹脂組成物の製造方法は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、平均粒子径5〜20μmかつ嵩比容積1.0〜2.0ml/gのタルクを20重量部以上と、有機化層状珪酸塩とを添加する樹脂組成物を用いるので、難燃性に優れた樹脂組成物が得られるとともに、前記タルクと有機化層状珪酸塩又は少量のポリオレフィンとの体積比が特定の範囲となるようにドライブレンドした混合物を、押し出し機にフィードするので、親和性が向上した混合物がポリオレフィン系樹脂に均一に分散された樹脂組成物を、押し出し機に対して過大な負荷を与えることなく高い生産性を持って製造することが可能となる。
【0052】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1)
有機化層状珪酸塩としてジステアリルジメチル4級アンモニウム塩で有機化処理したモンモリロナイト(ホージュン社製、商品名「NewSbenD」)42.9重量部、及びタルク(日本タルク社製、商品名「ミクロエースP−2」、平均粒子径7.0μm、嵩比容積1.7ml/g)42.9重量部を入れ充分均一になるようにタンブラーミキサーを用いてドライブレンドを行った(タルクと有機化層状珪酸塩との体積比、約1:1)。
この混合物をサイドフィーダーで押し出し機にフィードし、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(日本ポリオレフィン社製、商品名「A4250」、エチレン含有量25%)14.1重量部及び無水マレイン酸変性エチレンオリゴマー(日本ポリオレフィン社製、ER507L−5)85.9重量部の混合物を、メインフィーダーで同方向2軸押し出し機にフィードし設定温度210℃にて溶融混練し、ストランド状に押し出して、目的とする樹脂組成物を得た。得られたストランドは更にペレタイザーにてペレット化した。
【0053】
(実施例2)
ドライブレンドの方法としてヘンシェルミキサーを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、目的の樹脂組成物を得た。
【0054】
(実施例3)
有機化層状珪酸塩としてジステアリルジメチル4級アンモニウム塩で有機化処理したモンモリロナイト(ホージュン社製、商品名「NewSbenD」)を21.5重量部(タルクと有機化層状珪酸塩との体積比、約1:0.33)としたこと以外は、実施例1と同様にして、目的の樹脂組成物を得た。
【0055】
(実施例4)
タルク(日本タルク社製、商品名「ミクロエースP−2」、平均粒子径7.0μm、嵩比容積1.7ml/g)25重量部と、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(日本ポリオレフィン社製、商品名「A4250」、エチレン含有量25%)8.5重量部(ポリオレフィン系樹脂全量に対して8.5重量%)とを予めタンブラーミキサーを用いてドライブレンドを行った(タルクとポリオレフィン系樹脂との体積比、約1:0.34)。
この混合物をサイドフィーダーで押し出し機にフィードし、その他のエチレン−アクリル酸エチル共重合体(日本ポリオレフィン社製、商品名「A4250」、エチレン含有量25%)5.6重量部、無水マレイン酸変性エチレンオリゴマー(日本ポリオレフィン社製、ER507L−5)85.9重量部、及び有機化層状珪酸塩(ジステアリルジメチル4級アンモニウム塩で有機化処理したモンモリロナイト、ホージュン社製、商品名「NewSbenD」)42.9重量部の混合物を、メインフィーダーで同方向2軸押し出し機にフィードし設定温度210℃にて溶融混練し、ストランド状に押し出して、目的とする樹脂組成物を得た。得られたストランドは更にペレタイザーにてペレット化した。
【0056】
(実施例5)
タルク(日本タルク社製、商品名「ミクロエースP−2」、平均粒子径7.0μm、嵩比容積1.7ml/g)を50重量部(タルクとポリオレフィン系樹脂との体積比、約1:0.17)としたこと以外は、実施例4と同様にして、目的の樹脂組成物を得た。
【0057】
(比較例1)
有機化層状珪酸塩としてジステアリルジメチル4級アンモニウム塩で有機化処理したモンモリロナイト(ホージュン社製、商品名「NewSbenD」)42.9重量部、及びタルク(日本タルク社製、商品名「ミクロエースP−2」、平均粒子径7.0μm、嵩比容積1.7ml/g)42.9重量部を予めドライブレンドせずに、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(日本ポリオレフィン社製、商品名「A4250」)14.1重量部及び無水マレイン酸変性エチレンオリゴマー(日本ポリオレフィン社製、ER507L−5)85.9重量部とともに混合し、メインフィーダーで同方向2軸押し出し機にフィードし設定温度210℃にて溶融混練し、押し出されたストランド状の樹脂組成物をペレタイザーにてペレット化した。
【0058】
(比較例2)
有機化層状珪酸塩としてジステアリルジメチル4級アンモニウム塩で有機化処理したモンモリロナイト(ホージュン社製、商品名「NewSbenD」)を8.6重量部、及びタルク(日本タルク社製、商品名「ミクロエースP−2」、平均粒子径7.0μm、嵩比容積1.7ml/g)を77.3重量部(タルクと有機化層状珪酸塩との体積比、約1:0.11)としたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を得た。
【0059】
(比較例3)
有機化層状珪酸塩ジステアリルジメチル4級アンモニウム塩で有機化処理したモンモリロナイト(ホージュン社製、商品名「NewSbenD」)を8.6重量部、及びタルク(日本タルク社製、商品名「ミクロエースP−2」、平均粒子径7.0μm、嵩比容積1.7ml/g)を77.3重量部(タルクと有機化層状珪酸塩との体積比、約1:0.11)としたこと以外は実施例2と同様にして、樹脂組成物を得た。
【0060】
(比較例4)
エチレン−アクリル酸エチル共重合体(日本ポリオレフィン社製、商品名「A4250」、エチレン含有量25%、)0.5重量部(ポリオレフィン系樹脂全量に対して0.5重量%、タルクとポリオレフィン系樹脂との体積比、約1:0.02)とし、その他のエチレン−アクリル酸エチル共重合体(日本ポリオレフィン社製、商品名「A4250」、エチレン含有量25%)を13.6重量部としたこと以外は実施例4と同様にして、樹脂組成物を得た。
【0061】
(評価)
上記実施例及び比較例の樹脂組成物の製造方法において、時間当たりの最大押し出し量を測定し、押し出し効率を評価した。
上記の配合、製造条件及び評価結果について表1、2及び3に示した。
【0062】
【表1】
Figure 0004728544
【表2】
Figure 0004728544
【表3】
Figure 0004728544
表3より明らかなように、本発明の実施例においては、高い最大押し出し量を発揮し、押し出し効率に優れることが判明した。
【0063】
【発明の効果】
本発明の樹脂組成物の製造方法は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、特定のタルクを20重量部以上と、有機化層状珪酸塩とが添加された樹脂組成物を用い、前記タルクと有機化層状珪酸塩又はポリオレフィン系樹脂との体積比が特定の範囲となるように予めドライブレンドした混合物を、サイドフィーダー等で押し出し機にフィードして押し出すので、ポリオレフィン系樹脂との親和性が向上した多量の無機充填剤が分散された樹脂組成物の製造が可能となり、極めて難燃性に優れた非ハロゲン系の環境に優しい樹脂組成物を得ることが可能となるとともに、タルクを用いた場合に対する過負荷の発生が解消され、時間当たりの押し出し量等の押し出し効率に優れた製造方法を提供することができる。

Claims (2)

  1. ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、平均粒子径5〜20μmかつ嵩比容積1.0〜2.0ml/gのタルクを20重量部以上と、有機化層状珪酸塩とが添加された樹脂組成物の製造方法であって、前記タルクの全量と有機化層状珪酸塩との体積比が1:0.2〜1:5の範囲となるように予めドライブレンドした混合物とポリオレフィン系樹脂とを押し出し機にフィードして押し出すことを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
  2. ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、平均粒子径5〜20μmかつ嵩比容積1.0〜2.0ml/gのタルクを20重量部以上と、有機化層状珪酸塩とが添加された樹脂組成物の製造方法であって、前記タルクの全量と、前記ポリオレフィン系樹脂の全量のうちの10重量%以下のポリオレフィン系樹脂とを、体積比が1:0.05〜1:0.5の範囲となるように予めドライブレンドした混合物を、サイドフィーダーで押し出し機にフィードし、残りのポリオレフィン樹脂と有機化層状珪酸塩とをメインフィーダーで押し出し機にフィードして押し出すことを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
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