JP4728515B2 - 光路素子、空間光変調器および画像表示装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光路素子、該光路素子を用いた空間光変調器及び画像表示装置、より詳細には、構造が簡単で、耐久性が高く、部材コストを低減でき、光利用効率の高い光路素子、空間光変調器、およびそれを用いた画像表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
入射光の反射方向を変化させることによって光をスイッチングするデバイスおよびそれを用いた空間光変調器として、例えば特開平5−196880号公報に示されるような微小な回転鏡を二次元状に多数配列したものが知られている。
【0003】
図19は、従来(特開平5−196880号公報に記載)の空間光変調器の平面図であり、平面上では、図19に示すように、方形トーションビーム反射表面11とビーム支持ポスト12のみが観察される。図20は、図19に示した空間光変調器のひとつの回転鏡の断面図で、図20(A)はヒンジに沿っての断面図、図2(B)はそれと直角方向の断面図である。ビーム支持ポスト12は、ポスト15に連結されたヒンジ13の捻れによって、ビーム11を接地電極14に向けて回転可能にする。その駆動力はポスト16によって支持されたアドレス電極17に印加される電圧で与えられる。アドレス電極17への電圧印加は、基板層19に設けられたCMOS回路(図示せず)の信号を金属層18を介して伝達することにより行われる。ビーム11の回転状態を回転鏡ごとに変えることによって、入射した光を二次元的に空間変調することができる。
【0004】
上記方式においては、大きな回転角を得るために回転鏡の構造が複雑になっており、製造コストが高くなるという問題がある。
【0005】
その他の光スイッチング素子として、例えば特開平11−202222号公報に開示されている光スイッチング素子がある。図21は、前記特開平11−202222号公報で提案されている光スイッチング素子の動作説明図である。この光スイッチング素子は、光を全反射して伝達可能な全反射面22を備えた導光部材21と、全反射面22に対し抽出面32を接近させてエバネッセント光を捉え、それを反射して出射することができるプリズム31と、このプリズム31を導光部材21に接近させ又は離すように駆動する駆動部40とを、光の出射方向に対してこの順番で積層した構成となっている。図21の右側のセルは、駆動部40を動作させることによってプリズム31がエバネッセント光の漏出する抽出距離以上離れた位置にある状態を示している。この時には、導光部材21中を伝搬してきた光線1は、図21に示されるように、全反射面22で全反射され図の右方向へと出射2していく。駆動部40を動作させない時には、図21の左側のセルのように、プリズム31はエバネッセント光が漏出する抽出距離以下に近接しているので、導光部材21中を伝搬してきた光線1は、図21左側のセルに示されるように、全反射面22で反射することなくプリズム31に進入する。プリズム31に進入した光線はプリズムの反射面31aで反射して、図21に示した光線3のように導光部材21を透過して出射される。
【0006】
上記の方式において、エバネッセント光の抽出・非抽出という2つの状態をスイッチングするには、光の波長程度以下の微小な変位でよいため比較的簡単な駆動機構を採用することができるが、図21に示したようなプリズム31は、その構造が複雑であるため、複数個を微小なサイズで基板上に均一に形成するのは困難であり、そのため、製造歩留まりが低下し、コストアップにつながるという問題がある。また、プリズム31を導光部材21,全反射面22に近接させるとファンデルワールス力あるいは液架橋力が作用して、引き剥がしが困難になるという問題もある。
【0007】
さらに、別の光スイッチング素子として、特開2000−171813号公報に開示されている光スイッチング素子がある。図22は、前記特開2000−171813号公報で提案されている光スイッチング素子の概略構成を示す図である。全反射により光を伝えている導光体50に接触させた液晶60に電圧を印加することにより、液晶分子の配向をコントロールし、それにより実効的な屈折率を異常光に対する値と常光に対する値の間で変化させる。この結果、入射光(直線偏光)1が全反射光2として出射される状態と、透過光となったのち反射膜61によって向きを変えられて反射光3として出射させる状態とをスイッチングすることができる。なお、図22において、51は透明電極、70は液晶駆動用IC基板、71は電極端子である。
【0008】
この方式においては、機械的な駆動部を持たないため、前述のような問題は生じないが、導光体と液晶との界面で全反射させるために、導光体を屈折率の高い材料で作製する必要がある、あるいは光の入射角を大きくしなければならないという制約があり、材料コストが高くなる、あるいは光学系が複雑になったり、光利用効率が低下するなど実用上好ましくない問題が生じる可能性がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点を解決し、構造が簡単で、耐久性が高く、部材コストを低減でき、光利用効率の高い光路素子、空間光変調器、およびそれを用いた画像表示装置を提供することを目的とする。より具体的には、(1)構造が簡単で耐久性が高く、部材コストを低減でき、光利用効率が高く、かつS/N比を高くできる光路素子を提供すること(請求項1)、(2)さらに、S/N比を高くできる光路素子を提供すること(請求項2)、(3)上記に加え、製造が容易な光路素子を提供すること(請求項3)、(4)上記に加え、駆動エネルギーを小さくできる光路素子を提供すること(請求項4)、(5)さらに、駆動エネルギーを小さくできる光路素子を提供すること(請求項5)、(6)構造が簡単で耐久性が高く、部材コストを低減でき、光利用効率の高い空間光変調器を提供すること(請求項6)、(7)上記に加え、低コストな空間光変調器を提供すること(請求項7)、(8)耐久性が高く、低コストで光利用効率の高い画像表示装置を提供すること(請求項8)、(9)さらに、低コストな画像表示装置を提供すること(請求項9)、をその目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、導光部材を介した光入射部と、該光入射部から入った入射光を反射する反射部と、該反射部で反射した光を、前記導光部材を介して出射光として外部へ出す光出射部とよりなる光路素子において、前記反射部を含む光路中に屈折率可変物質を封入し、該屈折率可変物質に情報に応じて信号を与え屈折率変化を生じせしめる信号入力手段を具備するとともに、前記信号による前記屈折率可変物質の屈折率変化を、前記入射光が前記導光部材と屈折率可変物質との界面で全反射しない範囲で行い、前記光路素子は、前記光入射部と光出射部とが互いに平行でない面で構成され、前記信号による前記屈折率可変物質の屈折率変化を、前記反射部で反射した光が前記光出射部において前記導光部材とそれに接触する外部物質との界面で全反射する第一の状態と、全反射しない第二の状態とを取ることができる範囲で行うことを特徴としたものである。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記出射光を第二の導光部材を介して外部へ出すことができる第二の光出射部を設けたことを特徴としたものである。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1または2の発明において、前記光入射部に光学的接合し、前記導光部材と屈折率が概略等しい平板導光体を設けたことを特徴としたものである。
【0015】
請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれか一項の発明において、前記反射部が一辺を共有する2つの面によって構成され、前記屈折率可変物質に進入した入射光と前記光入射部を構成する面の法線とのなす角度の動作範囲における最大値をθ2maxとすると、前記反射部を構成する少なくとも1つの面の法線と前記光入射部を構成する面の法線とのなす角度が90°−θ2max以下であることを特徴としたものである。
【0016】
請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれか一項の発明において、前記反射部が、前記屈折率可変物質に信号を印加する単位要素に対して、複数組の面を有していることを特徴としたものである。
【0021】
請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の光路素子が二次元アレイ状に配列されていることを特徴としたものである。
【0022】
請求項7の発明は、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の光路素子が一次元アレイ状に配列されていることを特徴としたものである。
【0023】
請求項8の発明は、請求項6記載の空間光変調器と、該空間光変調器に光線を入射させる手段と、該空間光変調器により形成した画像をスクリーンに投影し表示する手段とを有することを特徴としたものである。
【0024】
請求項9の発明は、請求項7記載の空間光変調器と、該空間光変調器に光線を入射させる手段と、該空間光変調器から出射した光線を該空間光変調器の光路素子の整列方向に対して垂直な方向に走査する走査機構と、走査機構から出射した光線をスクリーンに投影し表示する手段とを有することを特徴としたものである。
【0025】
【発明の実施の形態】
(構成・動作)
本発明は、導光部材を介した光入射部と、該光入射部から入った入射光を反射する反射部と、該反射部で反射した光を、前記導光部材を介して出射光として外部へ出す光出射部とよりなる光路素子において、前記反射部を含む光路中に屈折率可変物質を封入し、該屈折率可変物質に情報に応じて信号を与え屈折率変化を生じせしめる信号入力手段を具備するとともに、前記信号による前記屈折率可変物質の屈折率変化を、前記入射光が前記導光部材と屈折率可変物質との界面で全反射しない範囲で行うことを特徴とする光路素子にある。
【0026】
ここで、導光部材の屈折率をn1、屈折率可変物質の屈折率をn2とし、導光部材中を透過する光が光入射部を構成する面の法線とのなす角度(入射角)をθ1、入射光が屈折率可変物質中に進入する際に前記光入射部を構成する面の法線とのなす角度(屈折角)をθ2とすると、スネルの法則により、以下の式が成り立つ。
sinθ2/sinθ1=n1/n2 …(1)
【0027】
外部信号によってn2が変化すると、(1)式に従ってθ2が変化し、その結果、反射部での反射角が変わり、出射光の光路(出射角)が変化する。その変化量は、概略θ2の変化量程度であるが、導光部材の屈折率n1が導光部材に接触している外部物質の屈折率na(通常外部物質は空気であり、na=1)より大きい場合には、出射面から出射する際に屈折が生じ、出射光と出射面とのなす角度(出射角)の変化量はθ2の変化量よりも大きくなる。これにより、所定の位置で光出力を検出すれば、n2の変化に伴って光出力が変化することになり、外部信号による光スイッチングが可能となる。本発明の光路素子においては、原理的に導光部材の屈折率n1や入射角θ1に対する制約が少ないため、安価な部材を用いたデバイスおよびシステムを実現することができる(請求項1)。
【0028】
上記において、光入射部と光出射部とが互いに平行でない面で構成されていることが好ましく、このようにすることにより、出射角の変化量をより大きくすることができるので、より高いS/N比が得られる(請求項1)。
【0029】
また、信号による屈折率可変物質の屈折率変化を、反射部で反射した光が光出射部において導光部材とそれに接触する外部物質との界面で全反射する第一の状態と、全反射しない第二の状態とを取ることができる範囲で行うことが好ましい。この場合、θ2の変化量に比べて出射角の変化量が非常に大きくなり、さらに高いS/N比が得られる(請求項1)。
【0030】
さらには、出射光を第二の導光部材を介して外部へ出すことができる第二の光出射部を設けることが好ましい。光出射部から出射した光は、再び第二の導光部材に入射し、第二の光出射部から出射する。この時の出射角の変化量は第二の導光部材がない時よりも大きくすることが可能であり、より高いS/N比を得ることができる(請求項2)。
【0031】
上記において、光入射部に光学的接合し、導光部材と屈折率が概略等しい平板導光体を設けることが製造の容易さから好ましい。この場合、平板導光体と反射部材とこの間に狭持された屈折率可変物質とによって構成されるデバイスを作製した後に、導光部材を光学的に接触させればよいので、複雑な形状の導光部材を用いてデバイスを作製するよりは格段に製造が容易となる(請求項3)。
【0032】
反射部が一辺を共有する2つの面によって構成され、光入射部から屈折率可変物質に進入した入射光と光入射部を構成する面の法線とのなす角度の動作範囲における最大値をθ2maxとすると、反射部を構成する少なくとも1つの面の法線と光入射部を構成する面の法線とのなす角度が90°−θ2max以下であることが好ましい。このようにすることによって反射部から光入射部までの距離を小さくすることができるので、屈折率可変物質に与えるエネルギー(駆動エネルギー)を小さくすることができる(請求項4)。
【0033】
さらに、反射部が、屈折率可変物質に信号を印加する単位要素に対して、複数組の面を有していることが好ましい。このようにすることによって反射部から光入射部までの距離をさらに小さくすることができるので、駆動エネルギーをより小さくすることができる(請求項5)。
【0034】
屈折率可変物質としては、外部からエネルギーを与えることによって屈折率が変化するものであれば使用可能であるが、制御のしやすさから電界によって屈折率が変化する、いわゆる電気光学材料が好適に使用できる。電気光学材料としては、ポッケルス効果を示すLiNbO3やカー効果を示すBaTiO3やPLZTなどの固体結晶、液晶などが知られているが、中でも電界強度当たりの屈折率変化量が大きいことおよび流動性があることから液晶が好ましい。屈折率変化量が大きいことにより、θ2の変化量を大きくすることができ、その結果、出射角の変化量を大きくすることができるので、高いS/N比を得ることができる。また、流動性があることにより導光部材(あるいは平板導光体)および反射部材への光学的接触を容易に実現することができる。
【0035】
屈折率可変物質として、液晶/高分子複合体を用いることが応答速度の点から好ましい。このような液晶/高分子複合体として、液晶ドロップレットを高分子マトリクス中に分散した、いわゆる高分子分散液晶が好適に使用できる。高分子分散液晶の応答速度は液晶ドロップレットの粒径を小さくするにつれて速くなることが実験的にわかっており、特に、入射光の波長の1/5以下の粒径にすることが、散乱が減少し光透過率が高くなる、すなわち光損失が著しく小さくなることから好ましい。なお、ここでいう粒径とは構造体を代表する粒径であって、通常は電子顕微鏡写真等によって計測された平均粒径が好適に使用される。
【0036】
上記の液晶は電圧無印加時に全ての液晶分子が概略一方向に配列していることが好ましい。この方向を電圧印加時に液晶分子が揃う方向(電界方向)とほぼ直交させることにより大きな屈折率差が得られるため、θ2の変化量を大きくすることができ、その結果、出射角の変化量を大きくすることができるので、高いS/N比を得ることができる。
【0037】
本発明による光路素子を一次元もしくは二次元に配列することで空間光変調器を構成することができる。このような空間光変調器は構造が簡単であり、また使用する部材の制約が少ないために、耐久性が高く安価なものとなる。一次元に配列した空間光変調器は光路素子の配列方向に垂直な方向に走査する走査機構を用いることで二次元の空間光変調ができるが、一次元の空間光変調器は二次元の空間光変調器に比べて安価であるため、より低コストとなる(請求項6,7)。
【0038】
上記の空間光変調器と、光線入射手段および空間光変調器により形成した画像をスクリーンに拡大投影する手段を設けることにより、耐久性が高く安価な画像表示装置を構成することができる(請求項8,9)。
【0039】
実施の形態1
図1は、本発明の第1の実施の形態を説明するための図で、図中、101は、ガラス、プラスチック等からなる光学的に透明な導光部材で、該導光部材101は光源からの光線を屈折率可変物質105に入射させる光入射部103、反射部115で反射した光線を導光部材101の外部へと出射させる光出射部104を有している。この例では光入射部を構成する面と光出射部を構成する面とは平行となっている。反射部115を含む反射部材106はSi、ガラス等からなる基板109上にガラス、プラスチックまたは酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム等のセラミックス等からなる絶縁体108で傾斜面を形成した後、傾斜面にAl、Ag等からなる高反射率の金属膜107を真空蒸着、スパッタリング等の公知の方法で形成して得ることができる。また、必要に応じてフォトリソエッチングによりパターンニングしてもよい。この金属膜107は電極としても作用する。基板109には金属膜107に信号電圧を印加するための駆動素子等を形成するのが望ましい。
【0040】
反射部材106としては、絶縁体108が基板109を兼ねる構成や金属板を基板として直接傾斜面を形成する構成等も可能である。好適な傾斜面形成方法の一例を挙げれば、面積階調もしくは濃度諧調のパターンを形成したフォトマスクを用いてパターンニングしてドライエッチングを行う異方性エッチング法がある。屈折率可変物質105としては、液晶が好適に使用できる。液晶材料としてはネマティック液晶、スメクティック液晶、コレステリック液晶等を用いることができ、単一もしくは2種類以上の液晶性化合物や液晶性化合物以外の物質も含んだ混合物であってもよい。
【0041】
光入射部103には屈折率可変物質105に電圧を印加するためのITO等からなる透明電極110が設けられている。屈折率可変物質が液晶のように流動性のある材料からなる時には、エポキシ樹脂等からなるシール剤111を形成して、保持するのがよい。作製工程の一例を示せば、導光部材(もしくは反射部材)の周辺部に熱硬化性のエポキシ樹脂を一部に開口部(注入孔)を残して印刷した後、反射部材(もしくは導光部材)を貼り合わせて加熱硬化する。注入孔から液晶を注入した後、孔を接着剤で塞げば完成する。
【0042】
図1(A)は、屈折率可変物質105の屈折率n2が導光部材の屈折率n1より大きい場合で、屈折角θ2は式(1)に従って入射角θ1より小さくなる。反射部を構成する面の法線と光入射部を構成する面の法線とのなす角度=反射部を構成する面の傾斜角αをα=θ2/2に設定しておけば、反射光は光出射部104に垂直に入射し出射する。図1(B)は、n2がn1と概略同程度の場合で、θ2はθ1にほぼ等しいため図1(A)の時よりも反射角が大きくなり、反射光は光出射部に対して概略φ1=θ1−θ2の角度で入射し、導光部材に接触している外部物質102が空気(na=1)の場合には、出射角φ2=sin-1(n1sinφ1)で出射する。出射光のビーム径をrとすると光出射部からr/tanφ2以上の距離で光出力を測定すると、図1(A)の場合には検出されるが、図1(B)の場合にはほとんど検出されず、良好なS/N比が得られる。
【0043】
具体的な例として、導光部材101をクラウンガラスBK7(nd=1.517)で作製し、屈折率可変物質105をネマティック液晶E7(常光屈折率no=1.522,異常光屈折率ne=1.746)とし、予め図示しない配向膜を用いて液晶分子112を、図1(A)に示すように、光入射部103に対して水平で紙面に垂直な方向に配向しておく。配向膜としてはSiO、ポリイミド等の公知の材料が使用でき、少なくとも透明電極110および金属膜107の表面に形成するのが好ましい。
【0044】
図1(A)の状態でレーザー光(波長633nm)をS偏光としてθ1=60°で入射させると、この光に対しては液晶の屈折率はn2=ne=1.746となるので、式(1)に従ってθ2=49°となる。α=24.5°に設定すると反射光は光出射部104から垂直に出射する。一方、透明電極110と金属膜107の間に電圧を印加すると、図1(B)に示すように、液晶分子が電界方向に配列し、同様の入射光に対して液晶の屈折率はn2=no=1.522となるので、入射光および反射光はほぼ直進し、光出射部104に対してφ1=11°で入射し、出射角φ2=17°で出射する。
【0045】
上記においては、入射光をS偏光としたが、P偏光であってもよく、その場合には電圧印加時と無印加時の光の振る舞いが逆になる。P偏光を用いると界面反射損失が減少するので、光利用効率の点ではより好ましい。また、αをθ2/2に設定したがθ1/2でもよく、その場合には、図1(B)の時に、反射光が光出射部104から垂直に出射し、図1(A)の時には、図1(B)とは逆の方向に17°より若干大きい角度で出射する。なお、ここに示したような変形は後述の他の実施形態においても同様に許容されるものである。
【0046】
上記の場合、単素子で、出射ビーム径が小さい場合には比較的近距離で検出しても充分なS/N比を得ることができるが、出射エリアの大きい場合(例えば空間光変調器として用いるような場合)には漏れ光(図1(B)に破線で示した光線)を検出して、S/N比の低下を招くことがある。
【0047】
実施の形態2
図2は、本発明の第2の実施の形態を説明するための図で、この場合、第1の実施の形態と異なり、光入射部103を構成する面と光出射部104を構成する面が平行ではない。その他の設定は第1の実施形態と同様である。光出射部を構成する面と光入射部を構成する面とのなす角βをβ=40°に設定すると、図2(A)の時には、反射光は光出射部104に対してφ1=40°で入射し、出射角φ2=77°で出射する。図2(B)の時には、φ1=29°で入射し、出射角φ2=47°で出射する。この場合、図2(A)と図2(B)とで出射角の差が30°と、第一の実施形態に比べて大きくなるので、出射エリアが大きい場合でも漏れ光(図2(A)の破線の光線)が検出されることが少なくなり、S/N比の低下を少なくすることができる。
【0048】
実施の形態3
図3は、本発明の第3の実施の形態を説明するための図で、基本的な構成は第2の実施の形態と同様であるが、光出射部を構成する面と光入射部を構成する面とのなす角βをβ=45°と大きくしている。図3(A)の時には反射光は光出射部104に対してφ1=45°で入射する。この時外部物質102が空気(na=1)の場合には下式(2)を満たすので、反射光は光出射部において全反射する。
sinφ1≧na/n1 …(2)
図3(B)の時には、φ1=34°で入射し、出射角φ2=58°で出射する。この場合、出射角の差は180°−(45°+58°)=77°となるので、ほとんど漏れ光を検出することはなく、高いS/N比を得ることができる。
【0049】
実施の形態4
図4は、本発明の第4の実施の形態を説明するための図で、図4において、114は導光部材101と同じ材質からなる第二の導光部材で、116は出射光を第二の導光部材を介して外部へ出すことができる第二の光出射部である。この例では光出射部104と第二の導光部材114(ともに入射光の波長程度の平滑度で仕上げている)をラフに密着させることによって、入射光の波長程度の空隙(空気層)を持たせている。また、第二の光出射部116を構成する面は入射部103を構成する面とほぼ平行となるようにしている。その他の設定は第3の実施形態と同様である。
【0050】
図4(A)の時、反射光は光出射部104と空隙部の空気層との界面で全反射する。図4(B)の時、光出射部104から出射した光は、ほぼ直進(実際には波長程度平行移動する)して、再び第二の導光部材114に入射し、第二の光出射部116から出射する。この場合、図4(A)と図4(B)とで出射角の差が90°を超えるので、漏れ光を検出することはなく、非常に高いS/N比を得ることができる。
【0051】
実施の形態5
図5は、本発明の第5の実施の形態を説明するための図で、図中、117は導光部材101と屈折率が概略等しい平板導光体で、導光部材101とは光学的接合がなされている。その他の構成は第3の実施形態と同様であり、動作原理も同じである。光学的接合とは、両部材間の間隙が使用する光の波長に比べて充分に小さいほどに密着している状態であって、具体的には、流動性のある物体を両者間に介在させることによって得ることができる。流動性のある物体は両部材との密着を確保した後に固化しても構わない。より具体的には、流動性のある物体として、屈折率が概略導光部材および平板導光体と等しい揮発性の低い液体あるいは光硬化性接着剤を用いるのが好適である。この実施形態においては、屈折率可変物質と接するのは平板導光体117であるので、透明電極110は平板導光体117上に形成される。この場合導光部材の接合は最後に行えばよいので、デバイスの主要部分の作製を複雑な形状の導光部材を用いないで行うことができるため、歩留まりが向上し、コストを低減することができる。
【0052】
実施の形態6
図6は、本発明の第6の実施の形態を説明するための図で、この場合、反射部が一辺を共有する2つの面(反射面128および逆傾斜面118)によって構成され、屈折率可変物質に進入した入射光と光入射部を構成する面の法線とのなす角度(屈折角)θ2の動作範囲における最大値をθ2maxとすると、前記反射部を構成する少なくとも1つの面(この例では逆傾斜面118)の法線と前記光入射部を構成する面の法線とのなす角度=逆傾斜面の傾斜角γが90°−θ2max以下となっている。その他の構成は第3の実施形態と同様である。この場合、θ2max=θ1=60°であるので、γを30°以下に設定すると、光入射部103における入射光の照射エリアAは第3の実施形態と同じであるため、反射面128の底辺から導光部材101の光入射部103までの距離、すなわち屈折率可変物質層の最大厚tmaxxを小さくすることができ、駆動電圧を低くすることができる。
【0053】
実施の形態7
図7は、本発明の第7の実施の形態を説明するための図で、この場合、図6の実施形態における照射エリアAに対向する領域に反射面128および逆傾斜面118を複数組(図7では2組)設けている。図7から明らかなように、照射エリアAが図6と等しい場合には、tmaxがさらに小さくなり、より駆動電圧を低減できる。
本発明においては、導光部材の屈折率は屈折率可変物質(液晶)の最小の屈折率(no)と同等もしくはそれより小さくてもよいため、上記実施形態では最も典型的な光学ガラスであるBK7を用いた例を挙げたが、特開2000−171813号公報に開示されているような導光部材と液晶との界面での全反射を利用する従来技術を用いて、上記実施形態と同じ液晶(E7)と入射角(60°)を適用した場合には屈折率が1.76以上の導光部材を用いなければならず、コストアップにつながる。
【0054】
実施の形態8
図8は、本発明の第8の実施の形態を説明するための図で、屈折率可変物質105として、高分子分散液晶を用いる以外は第6の実施形態と同様の構成である。高分子分散液晶は高分子マトリクス120中に液晶ドロップレット119が分散されてなる。液晶材料としてはネマティック液晶、スメクティック液晶、コレステリック液晶等を用いることができ、単一もしくは2種類以上の液晶性化合物や液晶性化合物以外の物質も含んだ混合物であってもよい。高分子マトリクス材料としては透明なポリマーが好ましく、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂のいずれであってもよい。
【0055】
高分子分散液晶の製法としては、
(1)液晶と熱あるいは光硬化(重合)性モノマーやオリゴマーもしくはプレポリマーで溶液を作り、重合によって相分離させる重合相分離法、
(2)液晶と高分子と溶剤で溶液を作り、溶剤を蒸発させることによって相分離させる溶媒蒸発相分離法、
(3)液晶と熱可塑性高分子を加熱溶解させた後、冷却によって相分離させる熱相分離法など、
を用いることができる。
【0056】
ポリマーとしては、製造工程の容易さ、液晶相との分離性等の点から紫外線硬化型の樹脂を用いるのが好ましい。具体的な例として、紫外線硬化性アクリル系樹脂が例示され、特に、紫外線照射によって重合硬化するアクリルモノマー、アクリルオリゴマーを含有するものが好ましい。このようなモノマーまたはオリゴマーとしては(ポリ)エステルアクリレート、(ポリ)ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリブタジエンアクリレート、シリコーンアクリレート、メラミンアクリレート、(ポリ)ホスファゼンメタクリレート等がある。その他の例として、チオール−エン系も光硬化速度が速いことから好適に使用できる。
【0057】
重合を速やかに行うために光重合開始剤を用いてもよく、この例としてジクロロアセトフェノンやトリクロロアセトフェノン等のアセトフェノン類、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイル、ベンゾインアルキルエーテル、ベンジルジメチルケタール、モノサルファイド、チオキサントン類、アゾ化合物、ジアリルヨードニウム塩、トリアリルスルフォニウム塩、ビス(トリクロロメチル)トリアジン化合物等を挙げることができる。
【0058】
この紫外線硬化性化合物中に液晶材料を均一に溶解させた液状物を反射部材と導光部材あるいは平板導光体間に注入した後、紫外線照射を行うことによって紫外線硬化性化合物を硬化させると同時に液晶材料を相分離させ、高分子分散液晶層を形成する。
具体的な高分子分散液晶の例として、ネマティック液晶BL24(no=1.513,ne=1.717,メルク社)を紫外線硬化性プレポリマーNOA81(ノーランド社)に溶解(液晶重量濃度45%)し、紫外線(400mW/cm2)を照射したもの(液晶ドロップレットの平均粒径は約60nm)を用いた場合、図8(A)の時には、液晶分子の配向したドロップレット119の向きがランダムであるため、層全体が光学的に等方な媒体になっており、その屈折率はほぼ液晶の平均屈折率(≒(2no+ne)/3≒1.58)と高分子マトリクスの屈折率(≒1.56)との体積平均(≒1.57)と見なすことができる。なお、この場合予め配向処理を行っていない。導光部材101をクラウンガラスBK7(nd=1.517)とし、入射角を75°に設定すると、屈折角は69°となるので、α=34.5°に設定すれば反射光は光入射部にほぼ垂直に入射する。β=43°に設定すると反射光は光出射部104に対してφ1=43°で入射する。この時、式(2)を満たすので、反射光は光出射部において全反射する。
【0059】
図8(B)の時には、液晶分子が電界方向に配列し、S偏光に対する高分子分散液晶層の屈折率は液晶の屈折率(≒no=1.513)と高分子マトリクスの屈折率(≒1.56)との体積平均(≒1.54)と見なすことができる。この時、屈折角は72°となり、反射光は光出射部104に対してφ1=40°で入射し、出射角φ2=77°で出射する。この場合出射角の差は180°−(43°+77°)=60°となるので、ほとんど漏れ光を検出することはなく、高いS/N比を得ることができる。また、図8(A)の状態と図8(B)の状態との間のスイッチング時間は数10μsのオーダーが得られ、この値はバルク液晶に比べ2桁程度高速になっている。
【0060】
液晶ドロップレットサイズと応答速度の関係についてさらに詳細に調べた結果を以下に示す。高分子分散液晶における液晶ドロップレットの大きさは、プレポリマーの組成、液晶の混合濃度、硬化時の紫外線強度等を変えることによって変化させることができる。
【0061】
図9は、液晶ドロップレットサイズと応答速度との関係を示したものである。液晶材料はE7およびBL24(メルク社)、プレポリマーはNOA60,65および81(ノーランド社)を適宜用いた。
【0062】
図10は、応答速度測定装置の一例を示す図で、この測定は、試料127にパルス電圧(200V)を印加した時の光出力の立ち上がり時間(Ton)と立ち下がり時間(Toff)の合計を測定した。なお、試料127は高分子分散液晶層131の厚さを20μm、光路長を1mmとした。
【0063】
図11は、高分子分散液晶に電界が印加されていない時と印加されている時の様子を模式的に示す。電界が印加されていない時には、図11(A)に示すように、液晶ドロップレットの向きはランダムであるので、x軸、y軸、z軸方向の屈折率はどれも等しく、層全体が光学的に等方な媒体になっている。z方向に電界132を印加すると、図11(B)に示すように、液晶分子の分子軸がこの方向にそろうため、z軸方向の屈折率は大きくなり、x軸およびy軸方向の屈折率はお互いに等しいまま、その大きさが小さくなる。
【0064】
図10に示すように、レーザ光源121からの光が電界方向とは垂直のx方向から入射される場合、yz平面に複屈折が生じるために偏光状態を変化させることができ、検光子125を通した光出力が変化する。本発明ではこのような複屈折現象は利用しないが、電界印加時の液晶分子の挙動とそれに伴う屈折率変化を利用するので、図9の応答速度は本発明においても同様に適用できる。図9から液晶ドロップレットサイズが小さくなるにつれて応答速度が速くなることがわかる。
【0065】
さらには、液晶ドロップレットの粒径を入射光の波長の1/5以下、より望ましくは1/10以下にすることが光透過率の観点から好ましい。以下に、レイリー散乱理論から光透過率を計算した結果を示す。体積Vの球形散乱体が数密度Nで存在する場合、厚さLの媒体の光透過率Tは下記式(3)のように表される。
T=exp(-NRL),R=24π3((m2-1)/(m2+2))2V2/λ4 …(3)
【0066】
式(3)において、Rは散乱断面積、mは散乱体の屈折率と媒体の屈折率の比、λは使用する光の波長である。m=1.07、L=100μmとした時の透過率Tを散乱体すなわち液晶ドロップレットの粒径d、体積分率(=NV)および波長λをパラメータとして計算した。式(3)からわかるように、dが大きくなる(すなわちVが大きくなる)ほど、またλが小さくなるほどTが減少する。また、透過率としては、90%(T=0.9)以上であることが光利用効率の点から好ましい。
【0067】
図12は、T=0.9となる粒径を体積分率が10%(d(0.1))、30%(d(0.3))および50%(d(0.5))の場合について、波長に対してプロットしたものである。体積分率が小さいと屈折率変化量が小さくS/N比がとれなくなるので、体積分率は10%以上が好ましく、50%程度がより好ましい。これ以上の体積分率では作製が極めて困難になる。この観点から、図12より、光路素子として適用される可視〜赤外領域の波長に対しては、dがλ/5以下であるのが好ましく、λ/10以下であることがより好ましい。なお、この計算ではmおよびLを固定したが、実デバイスにおいてこれ以下の値であると考えられるため、上記の粒径範囲であれば問題はない。
【0068】
実施の形態9
図13は、本発明の第9の実施の形態を説明するための図で、電圧無印加時(図13(A)の時)に、ドロップレット中の全ての液晶分子が概略一方向に配列している以外は第8の実施形態と同様の構成である。この配列方向は電圧印加時(図13(B)の時)に液晶分子が揃う方向(電界方向)とほぼ直交し、導光部材の光入射部103に対して水平で紙面に垂直な方向にするのがよい。こうすることにより、大きな屈折率差が得られるため、θ2の変化量を大きくすることができ、高いS/N比を得ることができる。具体的には、第8の実施形態と同様の材料および処方の高分子分散液晶を用いた場合、図13(A)の時に、高分子分散液晶層の屈折率は液晶の屈折率(≒ne=1.717)と高分子マトリクスの屈折率(≒1.56)との体積平均(≒1.61)と見なすことができる。第8の実施形態と同様に入射角を75°に設定すると、屈折角は66°となるので、α=33°に設定すれば反射光は光入射部にほぼ垂直に入射する。β=43°に設定すると反射光は光出射部104に対してφ1=43°で入射する。この時、式(2)を満たすので、反射光は光出射部において全反射する。
【0069】
図13(B)の時には、液晶分子が電界方向に配列し、S偏光に対する高分子分散液晶層の屈折率は液晶の屈折率(≒no=1.513)と高分子マトリクスの屈折率(≒1.56)との体積平均(≒1.54)と見なすことができる。この時、屈折率は72°となり、反射光は光出射部104に対してφ1=37°で入射し、出射角φ2=66°で出射する。この場合、出射角の差は180°−(43°+66°)=71°となり、第8の実施形態よりも大きくなる。
【0070】
さらに付言すれば、入射角を60°に設定した場合、図13(A)の時、屈折角は55°となる。α=27.5°,β=43°に設定すると、図13(B)の時、φ1=39°,φ2=73°となり、出射角の差は180°−(43°+73°)=64°となる。入射角が75°の場合に比べて出射角の差は小さくなるが、実用上充分な値である。なお、特に後述のような二次元空間光変調器やそれを用いた画像表示装置に適用する場合、入射角が小さい(好ましくは60°以下である)方が照明光学系の設計が容易になるので望ましい。
【0071】
液晶分子を予め一方向に配列させる方法として、前述のような配向膜を用いる方法以外に以下に示すような方法を用いることも可能である。高分子マトリクス材料を重合する際に電界を印加することで、液晶を一方向に配向することができる。この時、液晶に接しているプレポリマーは液晶の配向に引きずられて同じ方向に配向する。この状態でプレポリマーを重合すると液晶との界面は液晶の配向に倣った形で固定される。この界面構造は液晶に対して配向膜として機能するため、高分子マトリクス材料が硬化した後に電界を解除しても、液晶は重合時に印加していた電界方向に揃うことになる。
【0072】
実施の形態10
図14は、本発明の第10の実施の形態を説明するための図で、図14において、140は、一次元空間光変調器で、図14(A)は斜視図、図14(B)は図14(A)をb方向から見た図、図14(C)は図14(A)をc方向から見た図である。基本的な構成は第6の実施の形態と同様であるが、個別電極を兼ねる金属膜107が一次元アレイ状に配置されている。基板には各個別電極に接続され、それらに選択的に信号を供給するための駆動素子が設けられるのが好ましい。アレイ状に配列した各個別電極に選択的に電圧信号を印加することによって、選択された個別電極(金属膜107)からの反射光のみが光出射部104から出射し、ライン状の光のON/OFF(空間光変調)ができる。個別電極が配列している方向と垂直な方向に走査する走査装置と組み合わせることで二次元の空間光変調ができる。
【0073】
また、図15に示すように、空間光変調器140の個別電極(金属膜)107への駆動信号供給とガルバノミラー等からなる走査機構137の駆動を画像信号に基づいて制御し、得られた二次元空間光変調された光線を投影レンズ138によってスクリーン139に投影することで、画像表示装置を形成することができる。図15において、光源134にはレーザー、LED、ランプ等を用いることができる。また、コリメートレンズ135を光インテグレータとしてもよく、これらの後段には図示しない偏光変換光学系を付与してもよい。
【0074】
実施の形態11
図16は、本発明の第11の実施の形態を説明するための図で、図16は二次元空間光変調器150の斜視図である。基本的な構成は図14と同様であるが、個別電極を兼ねる金属膜107が二次元アレイ状に配置されている。反射部材106には各個別電極に接続され、それらに選択的に信号を供給するための駆動素子が設けられるのが好ましい。アレイ状に配列した各個別電極に選択的に電圧信号を印加することによって、選択された個別電極(金属膜107)からの反射光のみが光出射部104から出射し、面状の光のON/OFF(空間光変調)ができる。この場合、空間光変調器だけで二次元の空間光変調ができるため、図15に示したような走査機構は不要で、光出射部の外側に投影レンズを設置し、スクリーンに投影することで画像表示装置を形成することができる。
【0075】
なお、図14,図16に示した例では導光部材101を共通にして一つにしているが、導光部材を各光路素子ごとに分割しても構わない。また、上記一次元アレイ状の空間光変調器もしくは二次元アレイ状の空間光変調器を使った画像表示装置では、赤、緑、青など複数の波長の入射光を使い、時分割で各色の画像を表示したり(フィールドシーケンシャル方式)、複数の空間光変調器を設けて各色の画像を同時に投影することで、フルカラー画像を表示することもできる。
【0076】
実施例1
図17は、二次元空間光変調器の製作工程の一例を説明するための図で、該二次元空間光変調器は以下のようにして作製した。
(a)反射部材の作製(図17(A))
Si基板109の表面にMOSFETによる駆動素子151を複数個形成し、その上にCVD法により5μm厚の酸化シリコン108を堆積した。次に、面積階調のパターンを形成したフォトマスクを用いてパターンニングしてドライエッチングを行うことによって傾斜面およびコンタクトホール152を形成した。メタルCVDによる穴埋めを行った後、スパッタリングによりアルミニウムを0.1μm厚で堆積し、反射膜兼個別電極107となるようにパターンニングした。この上にスピンコートにより0.1μm厚のポリイミド膜を形成し、ラビングを行うことにより配向膜153を形成した。
【0077】
(b)セルの作製(図17(B))
クラウンガラス(BK7)からなる平板導光体117の片面に50nm厚のITOからなる透明電極110およびポリイミドからなる配向膜154を形成したものと図17(A)に示した反射部材とを、エポキシ樹脂からなるシール材111を用いて貼り合わせ、空セルを作製した。シール材の一部には注入孔を設けた。
【0078】
(c)液晶の注入(図17(C))
図17(C)に示した空セル内を真空排気した後、液晶(E7)105を注入し、注入孔を封止した。
【0079】
(d)導光部材の接合(図17(D))
平板導光体117の上面に光硬化性接着剤を用いて、導光部材101および第二の導光部材114を接合した。
【0080】
上述のようにして作製した空間光変調器を用いて、以下のように画像表示を行った。
断面がほぼ長方形となるように整形されたレーザー光(波長670nm)をS偏光として光入射部103より入射し、駆動素子151により画像データに応じて選択的に個別電極107に電圧(5V)を印加したところ、第二の光出射部116から空間変調された出力光が取り出され、(図示しない)投影レンズによりスクリーンに拡大投影画像(2値)を得ることができた。
【0081】
実施例2
図18は、二次元空間光変調器の製作工程の他の例を説明するための図で、該二次元空間変調器は以下のようにして作製した。
(a)反射部材の作製(図18(A))
Si基板109の表面にMOSFETによる駆動素子151を複数個形成し、その上にCVD法により5μm厚の酸化シリコン108を堆積した。次に、面積階調のパターンを形成したフォトマスクを用いてパターンニングしてドライエッチングを行うことによって傾斜面およびコンタクトホール152を形成した。メタルCVDによる穴埋めを行った後、スパッタリングによりアルミニウムを0.1μm厚で堆積し、反射膜兼個別電極107となるようにパターンニングした。この上にスピンコートにより0.1μm厚のポリイミド膜を形成し、ラビングを行うことにより配向膜153を形成した。
【0082】
(b)セルの作製(図18(B))
クラウンガラス(BK7)からなる平板導光体117の片面に50nm厚のITOからなる透明電極110およびポリイミドからなる配向膜154を形成したものと、図18(A)に示した反射部材とをエポキシ樹脂からなるシール材111を用いて貼り合わせ、空セルを作製した。シール材の一部には注入孔を設けた。
【0083】
(c)注入(図18(C))
図18(B)に示した空セル内を真空排気した後、液晶(BL24)と紫外線硬化性化合物(NOA81)の混合物(液晶濃度45wt%)155を注入し、注入孔を封止した。
【0084】
(d)硬化(図18(D))
高圧水銀ランプによりUV光(400mW/cm2)156を照射し、高分子分散液晶105を形成した。
【0085】
(e)導光部材の接合(図18(E))
平板導光体117の上面に光硬化性接着剤を用いて、導光部材101および第二の導光部材114を接合した。
【0086】
上述のようにして作製された空間光変調器を用いて、以下のように画像表示を行った。
断面がほぼ長方形となるように整形されたレーザー光(波長670nm)をS偏光として光入射部103より入射し、駆動素子151により画像データに応じて選択的に個別電極107に電圧(15V)を印加したところ、第二の光出射部116から空間変調された出力光が取り出され、(図示しない)投影レンズによりスクリーンに拡大投影画像(64諧調)を得ることができた。
【0087】
【発明の効果】
請求項1の光路素子によれば、導光部材を介した光入射部と、光入射部から入った入射光を反射する反射部との間に屈折率可変物質を封入し、信号印加によってその屈折率を入射光が導光部材と屈折率可変物質との界面で全反射しない範囲で変化させ、反射部で反射した光を導光部材を介して外部へ出射するときの光路を変えるようにしたので、構造が簡単で耐久性が高く、部材コストを低減でき、光利用効率の高い光路素子を提供することができる。
また、光入射部と光出射部とが互いに平行でない面で構成されているので、上記に加え、S/N比の高い光路素子を提供することができる。
さらに、反射部で反射した光が光出射部において導光部材とそれに接触する外部物質との界面で全反射する第一の状態と、全反射しない第二の状態とを取るようにしたので、よりS/N比の高い光路素子を提供することができる。
【0090】
請求項2の光路素子によれば、出射光を第二の導光部材を介して外部へ出すことができる第二の光出射部を設けたので、さらにS/N比の高い光路素子を提供することができる。
【0091】
請求項3の光路素子によれば、導光部材に光学的接合し、導光部材と屈折率が概略等しい平板導光体を設けたので、上記に加え、製造が容易な光路素子を提供することができる。
【0092】
請求項4の光路素子によれば、反射部が一辺を共有する2つの面によって構成され、屈折率可変物質に進入した入射光と光入射部を構成する面の法線とのなす角度の動作範囲における最大値をθ2maxとした時、反射部を構成する少なくとも1つの面の法線と光入射部を構成する面の法線とのなす角度が90°−θ2max以下であるようにしたので、駆動エネルギーを小さくできる光路素子を提供することができる。
【0093】
請求項5の光路素子によれば、反射部が、屈折率可変物質に信号を印加する単位要素に対して、複数組の面を有しているので、さらに駆動エネルギーを小さくできる光路素子を提供することができる。
【0098】
請求項6の空間光変調器によれば、請求項1乃至5の光路素子を二次元アレイ状に配列したので、構造が簡単で耐久性が高く、部材コストを低減でき、光利用効率の高い空間光変調器を提供することができる。
【0099】
請求項7の空間光変調器によれば、請求項1乃至5の光路素子を一次元アレイ状に配列したので、上記に加え、製造歩留まりが高く低コストな空間光変調器を提供することができる。
【0100】
請求項8の画像表示装置によれば、請求項6の空間光変調器により形成した画像をスクリーンに投影するようにしたので、耐久性が高く、低コストで光利用効率の高い画像表示装置を提供することができる。
【0101】
請求項9の画像表示装置によれば、請求項7の空間光変調器から出射した光線を垂直方向に走査してスクリーンに投影し、二次元画像を得るようにしたので、低コストな画像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施の形態を説明するための図である。
【図2】 本発明の第2の実施の形態を説明するための図である。
【図3】 本発明の第3の実施の形態を説明するための図である。
【図4】 本発明の第4の実施の形態を説明するための図である。
【図5】 本発明の第5の実施の形態を説明するための図である。
【図6】 本発明の第6の実施の形態を説明するための図である。
【図7】 本発明の第7の実施の形態を説明するための図である。
【図8】 本発明の第8の実施の形態を説明するための図である。
【図9】 液晶ドロップレットサイズと応答速度との関係を示した図である。
【図10】 応答速度測定装置の一例を示す図である。
【図11】 高分子分散液晶に電界が印加されていない時と印加されている時の様子を模式的に示した図である。
【図12】 透過率が90%となる液晶ドロップレットの粒径を体積分率をパラメータとして波長に対してプロットした図である。
【図13】 本発明の第9の実施の形態を説明するための図である。
【図14】 本発明の第10の実施の形態を説明するための図である。
【図15】 本発明の第10の実施の形態を説明するための図である。
【図16】 本発明の第11の実施の形態を説明するための図である。
【図17】 二次元空間光変調器の製作工程の一例を説明するための図である。
【図18】 二次元空間光変調器の製作工程の他の例を説明するための図である。
【図19】 従来の空間光変調器の平面図である。
【図20】 ひとつの回転鏡の断面図である。
【図21】 従来の光スイッチング素子の動作説明図である。
【図22】 従来の光スイッチング素子の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
101…導光部材、102…外部物質、103…光入射部、104…光出射部、105…屈折率可変物質、106…反射部材、107…金属膜、108…絶縁体、109…基板、110…透明電極、111…シール剤、112…液晶分子、113…光検出器、114…第二の導光部材、115…反射部、116…第二の光出射部、117…平板導光体、118…逆傾斜面、119…液晶ドロップレット、120…高分子マトリクス、121…レーザ、122…偏光子、123,124…レンズ、125…検光子、126…パワーメータ、127…試料、128…反射面、129…Au電極、130…Si基板、131…高分子分散液晶層、132…電界、134…光源、135…コリメートレンズ、137…走査機構、138…投影レンズ、139…スクリーン、140,150…空間光変調器、151…駆動素子、152…コンタクトホール、153,154…配向膜、155…液晶/紫外線硬化性化合物混合体、156…紫外線。
Claims (9)
- 導光部材を介した光入射部と、該光入射部から入った入射光を反射する反射部と、該反射部で反射した光を、前記導光部材を介して出射光として外部へ出す光出射部とよりなる光路素子において、
前記反射部を含む光路中に屈折率可変物質を封入し、該屈折率可変物質に情報に応じて信号を与え屈折率変化を生じせしめる信号入力手段を具備するとともに、前記信号による前記屈折率可変物質の屈折率変化を、前記入射光が前記導光部材と屈折率可変物質との界面で全反射しない範囲で行い、
前記光路素子は、前記光入射部と光出射部とが互いに平行でない面で構成され、
前記信号による前記屈折率可変物質の屈折率変化を、前記反射部で反射した光が前記光出射部において前記導光部材とそれに接触する外部物質との界面で全反射する第一の状態と、全反射しない第二の状態とを取ることができる範囲で行うことを特徴とする光路素子。 - 前記出射光を第二の導光部材を介して外部へ出すことができる第二の光出射部を設けたことを特徴とする請求項1記載の光路素子。
- 前記光入射部に光学的接合し、前記導光部材と屈折率が概略等しい平板導光体を設けたことを特徴とする請求項1または2記載の光路素子。
- 前記反射部が一辺を共有する2つの面によって構成され、前記屈折率可変物質に進入した入射光と前記光入射部を構成する面の法線とのなす角度の動作範囲における最大値をθ2maxとすると、前記反射部を構成する少なくとも1つの面の法線と前記光入射部を構成する面の法線とのなす角度が90°−θ2max以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光路素子。
- 前記反射部が、前記屈折率可変物質に信号を印加する単位要素に対して、複数組の面を有していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光路素子。
- 請求項1乃至5のいずれか一項に記載の光路素子が二次元アレイ状に配列されていることを特徴とする空間光変調器。
- 請求項1乃至5のいずれか一項に記載の光路素子が一次元アレイ状に配列されていることを特徴とする空間光変調器。
- 請求項6記載の空間光変調器と、該空間光変調器に光線を入射させる手段と、該空間光変調器により形成した画像をスクリーンに投影し表示する手段とを有することを特徴とする画像表示装置。
- 請求項7記載の空間光変調器と、該空間光変調器に光線を入射させる手段と、該空間光変調器から出射した光線を該空間光変調器の光路素子の整列方向に対して垂直な方向に走査する走査機構と、走査機構から出射した光線をスクリーンに投影し表示する手段とを有することを特徴とする画像表示装置。
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