以下、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述する。
図1は、本発明の実施の形態に係る駆動装置の分解斜視図である。
図1において、駆動装置100は、図中横方向に配置された平板である連結部1d(底面)と、連結部1dの両端及び中央外縁部から図中上方に夫々延設された第1の外側磁極部1a(一対の自由端の一方)、第2の外側磁極部1b(一対の自由端の他方)、及び突起部1cとを有し、軟磁性材料から成るヨーク1を備え、ヨーク1は、プレス成型によって、第1の外側磁極部1a、第2の外側磁極部1b、突起部1cが一体的に形成される。
駆動装置100は、また、中央に配設された孔2aを中心に導電線が巻回されて成る第1のコイル2及び中央に配設された孔3aを中心に導電線が巻回されて成る第2のコイル3が上面に併設され、第1のコイル2及び第2のコイル3の間に配設された孔4aと、孔4a及び外縁部の間に配設された孔4bとを有するボビン4を備え、孔2a,3a,4bに、夫々第1の外側磁極部1a、第2の外側磁極部1b、及び突起部1cが図中下側から嵌挿される。
駆動装置100は、さらに、夫々直列に配設された支持軸部7bと円柱状の第1円柱部7aと支持軸部7d、及び第1円柱部7aの上面に配設されて後述するレバー8の軸受け部8aに嵌合固定される第2円柱部7cから成り、支持軸部7bが孔4aに嵌合するように配設された軟磁性材料から成るロータ軸7と、ロータ軸7を囲繞するように配設される円筒状の永久磁石であるマグネット6と、中央において第2円柱部7cが嵌合される軸受け部8a、及び外縁部に配設されたアーム状の駆動ピン8bから成り、マグネット6及びロータ7と一体で回転可能にすべく接着や圧入等によってマグネット6及びロータ7の上部に固定され、駆動装置100の出力手段として作用するレバー8とを備える(図2)。
駆動装置100は、加えて、中央において支持軸部7dが回転可能に嵌合される軸受け部9a、及び駆動ピン8bが貫通する開口部9bとを有し、レバー8の上面を挟持して駆動装置100全体を支持するカバー9を備える。
第1のコイル2及び第2のコイル3は、通電されることによって、夫々第1の外側磁極部1a及び第2の外側磁極部1bを励磁する。
第1のコイル2及び第2のコイル3は、連結部1d上に互いに隣接して載置されるので、駆動装置100の軸方向の長さを短くすることができる。
第1のコイル2及び第2のコイル3は、さらに、互いに直列に接続されるので、コイル全体のターン数が増加させることができ、もって駆動装置100の軸方向の長さを短くしたまま、駆動装置100の出力を向上させることができる。
第1のコイル2及び第2のコイル3は、互いに直列に接続されると共に、巻線方向が異なるように接続されている。すなわち、第1のコイル2が右周りに巻回される場合は、第2のコイル3は左周りに巻回される。これにより、第1のコイル2及び第2のコイル3は、通電されると、第1の外側磁極部1aと第2の外側磁極部1bとが夫々反対の極に励磁する。
ボビン4は、第1のコイル2用と第2のコイル3用とに分離されたものではなく、第1のコイル2用のボビンと第2のコイル3用のボビンとが連結され一体化されたものであるので、コストダウンが可能であると共に、第1のコイル2及び第2のコイル3の直列接続を容易にすることができる。
本実施の形態では、第1のコイル2と第2のコイル3は、互いに直列に接続されているが、並列に接続されてもよい。同じコイルが複数接続された回路を定電圧で駆動する場合、コイルが並列接続のときは、出力が向上させることができるが消費電流が増大し、コイルが直列接続のときは、並列に比べて消費電流を抑制することができるといった違いがあるが、いずれの場合も、駆動装置100は、第1のコイル2及び第2のコイル3に通電するための回路は1つだけ備えればよく、コストを低減させることができる。
図3は、図1の駆動装置の断面図であり、ロータ軸方向に平行且つ第1のコイル及び第2のコイルを横断する面から見た場合を示す。
図3において、駆動装置100は、ボビン4に埋め込まれ、下部に2つの端子から成る導電性の端子ピン5を備え、端子ピン5が備える2つの端子は、第1のコイル2及び第2のコイル3のコイル端が夫々接続される。
マグネット6は、外周表面を円周方向に2分割され、2分割された外周表面は、夫々S極及びN極に着磁される。
マグネット6の内周面6aは、外周部に比べ弱い着磁分布を有するか、全く着磁されていないか、または外周部の着磁分布と極性が逆となるような着磁分布、例えば、外周部においてS極である範囲の内周面6aはN極に着磁されているような着磁分布を有するかのいずれの状態である。
第1円柱部7aの外周部は、マグネット6の内周面6aと、マグネット6の上部端面が第1円柱部7aの上面と同一面となるように接着等によって密着固定される。
支持軸部7bは、第1のコイル2及び第2のコイル3の間に隣接して配置される。
第1の外側磁極部1aと第2の外側磁極部1bは、マグネット6の外周部との間に所定距離の隙間をとりつつ、マグネット6を挟んで互いに対向するように配置される(図5)。
ここで、第1円柱部7aにおいて第1の外側磁極部1aに対向する部分及び支持軸部7bにおいて第1のコイル2の外周に隣接する部分を第1の内側磁極部とし、第1円柱部7aにおいて第2の外側磁極部1bに対向する部分及び支持軸部7bにおいて第2のコイル3の外周に隣接する部分を第2の内側磁極部とする。
第1のコイル2が通電されることによって、第1の外側磁極部1aと第1の内側磁極部は励磁され、第1のコイル2及び第1の外側磁極部1aの間にマグネット6を横切る磁束が発生し、発生した磁束が効果的にマグネット6に作用する。このとき、第1の外側磁極部1aと第1の内側磁極部は、夫々反対の極に励磁される。同様に、第2のコイル3が通電されることによって、第2の外側磁極部1bと第2の内側磁極部は励磁され、第2のコイル3及び第2の外側磁極部1bの間にマグネット6を横切る磁束が発生し、発生した磁束が効果的にマグネット6に作用する。このとき、第2の外側磁極部1bと第2の内側磁極部は、夫々反対の極に励磁される。
前述したように、第1のコイル2及び第2のコイル3は、通電されると、第1の外側磁極部1aと第2の外側磁極部1bとが夫々反対の極に同時に励磁するので、駆動装置100は、第1のコイル2、第1の外側磁極部1a、及び第1の内側磁極部によって形成される第1の磁気回路(第1の磁路)と、第2のコイル3、第2の外側磁極部1b、及び第2の内側磁極部によって形成される第2の磁気回路(第2の磁路)と、第1のコイル2及び第2のコイル3、第1の外側磁極部1a、第1の内側磁極部及び第2の内側磁極部、及び第2の外側磁極部1bとによって形成される第3の磁気回路(第3の磁路)との3つの磁気回路を備えることになり、出力を大幅に向上させることができる。
ヨーク1の突起部1cは、マグネット6の外周部に所定の隙間をもって対向して配置される。また、マグネット6の着磁極数をnとすると、第1の外側磁極部1a及び第2の外側磁極部1bがマグネット6に対向する位相は、突起部1cがマグネット6に対向する位相と、約180/n度(本実施の形態1ではn=2なので90度)ずれている。
前述したように、第1円柱部7a及びマグネット6の内周面6aは、密着固定されるので、強度を低下させることなく円筒形状のマグネット6の半径方向の厚さを非常に薄くすることができる。
また、マグネット6の内周面に対向して内側磁極部を成す第1円柱部7aとマグネット6の内周面との間に空隙を設ける必要がないので、第1の外側磁極部1aと第1円柱部7aとの距離及び第2の外側磁極部1bと第1円柱部7aとの距離を非常に小さくすることができ、もって第1の磁気回路、第2の磁気回路、及び第3の磁気回路における磁気抵抗を抑え、駆動装置100の出力を向上させることができる。
さらに、マグネット6の内周部は、ロータ軸7によって埋められるので、ロータ軸7がマグネット6の内周部に現れるS及びN極との間の磁気抵抗を小さくするいわゆるバックメタルとして作用し、これにより、磁気回路のパーミアンス係数を小さくして、高温下の環境で使用されても減磁による磁気的劣化を抑えることができる。
加えて、第1の外側磁極部1a、第2の外側磁極部1b、及び突起部1cは、ロータ軸7に平行且つ図中上向きに延出する櫛歯状に形成されているので、駆動装置100の組み立て作業において、第1のコイル2及び第2のコイル3から成るコイルユニットと、マグネット6とロータ軸7から成るロータとを全て同一方向、つまり図中上側から下向きに組み込むことができ、もって組み立て作業の効率を向上させることができる。
このとき、ロータ軸7は、レバー8に設けられる軸受け部8aが第2円柱部7cに嵌合することによって、位置決め固定される。
駆動装置100における出力手段となるレバー8は、開口部9bを介してカバー9の外側に突き出しているので、出力手段を含めた駆動装置100全体の軸方向長さをより短くすることができる。
ロータ軸7は、カバー9がヨーク1に固定された状態で、軸受け部9a及びボビン4の軸受け部4aに回転可能に嵌合される。このとき、ロータ軸7に固定されたマグネット6の外周部は、第1の外側磁極部1a及び第2の外側磁極部1bと所定の隙間を保ち、マグネット6の軸方向の一端に固定されるレバー8は、カバー9の裏面と所定の隙間を保ち、且つ、マグネット6の軸方向の他端は、第1のコイル2及び第2のコイル3と所定の隙間を保つ。これにより、マグネット6は、第1のコイル2及び第2のコイル3と、軸方向に関して隣接して配置されると共に軸方向に垂直な平面においても隣接して配置されるので、駆動装置100の軸方向の長さを短くすることができる。
特許文献1において提案されている駆動装置では、マグネットの外径部と外側磁極部との隙間を精度良く保って組み立てる必要があるだけではなく、マグネットの内周部に対向する位置にある内側磁極部を、マグネットに対して所定の隙間を設けて配置する必要があるので、部品精度及び組み立て精度が悪い場合には、この隙間を確保できず、もって、内側磁極部のマグネットへの接触等の不良が生じる可能性が高い。
しかしながら、駆動装置100によれば、駆動装置100を組み立てる際、マグネット6の外側の隙間のみを管理すればよいので、組み立てを容易にすることができる。
特許文献1において提案されている駆動装置では、また、内側磁極部がマグネットと軸とをつなぐ部分に接触しないようにする必要があり、内側磁極部とマグネットとが対向する軸方向の長さを十分に長くすることができない。
しかしながら、図3の駆動装置100によれば、ロータ軸7が内側磁極部を兼ねているので、内側磁極部とマグネット6とが対向する軸方向の長さを十分長く確保することができ、もって第1の外側磁極部1a及び第2の外側磁極部1bとマグネット6を有効に利用することができ、駆動装置100の出力を高めることができる。
第1の外側磁極部1a及び第2の外側磁極部1bは、ロータ軸7と平行方向に延出する櫛歯状に形成されているので、駆動装置100のロータ軸7に垂直な方向の最外径を最小限に抑えることができる。
特許文献2又は特許文献4において提案されている構成によれば、外側磁極部は、マグネットの半径方向(軸に垂直な方向)に延びるヨーク板で構成されており、コイルが、マグネットの半径方向に隣接して配置されているので、軸方向の長さは短くても駆動装置の軸に垂直な方向の最外径は増大する。
しかしながら、図3の駆動装置100によれば、駆動装置100の軸に垂直な方向の最外径は、マグネット6の直径と、第1の外側磁極部1a及び第2の外側磁極部1bの厚みと、第1のコイル2及び第2のコイル3の巻き線幅とでほぼ決定することができる。
図6は、図1の駆動装置のコギングトルクを示すグラフである。
図6のグラフにおいて、縦軸は、第1の外側磁極部1a及び第2の外側磁極部1bとの間で発生しマグネット6に作用する磁力(以下、「コギングトルク」という。)を示し、横軸は、マグネット6の円周方向における位置(以下、「位相」という。)を示す。
図6のグラフにおいて、マグネット6の位相を増大させる回転方向を正回転及び位相を減少させる回転方向を逆回転とし、正回転させるトルクの大きさを正、及び逆回転させるトルクの大きさを負とする。
図6のグラフによれば、マグネット6が点E1,点E2の状態にあるとき、マグネット6は、正回転しようとしても、逆回転方向のコギングトルクによって元の位相に戻され、逆回転しようとしても、正回転方向のコギングトルクによって元の位相に戻される。つまり、マグネット6は、コギングトルクによって点E1又は点E2の位相に安定的に保持されるので、点E1,E2はコギング安定点である。
また、マグネット6が点F1の状態にあるとき、マグネット6は、位相が少しでも正回転方向又は逆回転方向にずれると、夫々逆回転方向又は正回転方向のコギングトルクによって点E1又は点E2の位相まで戻される。つまり、点F1の状態にあるマグネット6は、振動や姿勢の変化によりその位置の状態に静止することが難しい不安定な均衡状態にある。
このように、第1のコイル2及び第2のコイル3が通電されないときは、マグネット6は、振動や姿勢の変化により、点F1に静止していることはできず、コギング安定点である点E1又は点E2の位相まで戻される。
点E1,E2のようなコギング安定点は、一般的に、マグネットの着磁極数をnとすると、360/n度(本実施の形態においては、n=2なので180度)の周期で存在し、各コギング安定点の中間である点F1のような点が不安定点になる。
ここで、駆動装置100は、マグネット6の回転可能な位相範囲を物理的に制限するストッパーを備え、マグネット6は、当該ストッパーによって所定の位相範囲(以下、「回転位相範囲」という。)においてのみ回転可能とされる場合を考える。
不安定点である点F1をほぼ中央とするP度を回転位相範囲とすると、マグネット6が回転位相範囲の一端である点Gの状態にあるとき、マグネット6は、T1のトルク(無通電コギング保持トルク)を受け、マグネット6が回転位相範囲の他端である点Hの状態にあるとき、マグネット6は、T2のトルク(無通電コギング保持トルク)を受ける。
有限要素法による数値シミュレーションの結果、後述する図7のグラフに示すように、ヨーク1に設けられた突起部1cの有無によって、コイルへの通電がない状態における外側磁極とマグネットとの吸引状態の様子が変化することが明らかになった。
図7は、図1の駆動装置における突起部の有無とマグネットに係るコギングトルク及び通電トルクとの関係を表すグラフである。
図7のグラフにおいて、実線10は、ヨーク1に突起部1cが設けられない場合のコギングトルクを示し、実線11は、ヨーク1に突起部1cを設けられない場合の通電トルクを示し、破線12は、ヨーク1に突起部1cを設けられた場合のコギングトルクを示し、破線13は、ヨーク1に突起部1cを設けられた場合の通電トルクを示している。
図7のグラフにおいて、縦軸は、マグネット6に作用するトルクを示し、横軸は、マグネット6の回転位相を示す。
ここで、マグネット6の回転位相範囲はP度とする。
まず、ヨーク1が突起部1cを備えない場合について考える。
第1のコイル2及び第2のコイル3が通電されていない無通電状態において、マグネット6が回転位相範囲の一端である点Gの状態にあるとき、マグネット6は、T1のコギングトルクを受け、マグネット6が回転位相範囲の他端である点Hの状態にあるとき、マグネット6は、T2のコギングトルクを受ける。
次に、第1のコイル2及び第2のコイル3が正通電されると、無通電状態において点Gの状態にあったマグネット6の状態は、点Iの状態に遷移して、マグネット6は、T3の通電トルクを受け、無通電状態において点Hの状態にあったマグネット6の状態は、点Jの状態に遷移して、マグネット6は、T4の通電トルクを受ける。
すなわち、第1のコイル2及び第2のコイル3が正通電されると、無通電状態においてマグネット6が位置していた位相に応じて、マグネット6は、曲線IJ上のいずれかの点に対応する通電トルクを受ける。逆通電時も同様である。
次に、マグネット6の回転位相範囲をQ度(Q>P)とする。
第1のコイル2及び第2のコイル3が正通電された通電状態において、マグネット6が回転位相範囲の一端である点Rの状態にあるとき、マグネット6は、T9の通電トルクを受ける。このとき、T9は負の値であるので、T9は、マグネットが点Sの状態になるようにマグネット6を正回転させるトルクではなく、マグネット6を逆回転させるトルクであり、これにより、マグネット6は、点Rの状態で静止する。
これは、コギングトルクが過大であるので、第1のコイル2及び第2のコイル3から受けるトルクと第1の外側磁極部1a及び第2の外側磁極部1bから受けるコギングトルクの合成値である通電トルクが、マグネット6の動き出し時において負の値となってしまう現象である。
この場合、マグネット6は、第1のコイル2及び第2のコイル3への通電電圧が上げられない限り回転し始めない。
続いて、ヨーク1が突起部1cを備える場合について考える。
図7の実線10及び破線12によれば、ヨーク1cが突起部1cを備える場合(破線12)は、ヨーク1cが突起部1cを備えない場合(実線10)に比べ、マグネット6に係るコギングトルクは小さくなる。
これは、第1の外側磁極部1a及び第2の外側磁極部1bと、突起部1cの、マグネット6に対する位相が、夫々約180/n度(本実施の形態ではn=2なので90度)ずれているので、第1の外側磁極部1a及び第2の外側磁極部1bから受けるコギングトルクと、突起部1cから受けるコギングトルクとが打ち消し合うからである。
ここで、回転位相範囲をQ度とする。
第1のコイル2及び第2のコイル3が正通電されていない無通電時において、マグネット6が回転位相範囲の一端である点Lの状態にあるとき、マグネット6は、T6のコギングトルクを受け、マグネット6が回転位相範囲の他端である点Mの状態にあるとき、マグネット6は、T7のコギングトルクを受ける。
次に、第1のコイル2及び第2のコイル3が正通電されると、無通電状態において点Lの状態にあったマグネット6の状態は、点Nの状態に遷移して、マグネット6は、T3の通電トルクを受ける。
つまり、マグネット6が点Nの状態にあるときにマグネット6が受ける通電トルクT3は、ヨーク1に突起部1cが設けられない場合において回転位相範囲をQよりも小さいP度としたときの回転位相範囲の一端である点Iの状態にあるときにマグネット6が受ける通電トルクと等しい。
また、第1のコイル2及び第2のコイル3が正通電されると、無通電状態において点Mの状態にあったマグネット6の状態は、点Oの状態に遷移して、マグネット6は、T8の通電トルクを受ける。
すなわち、第1のコイル2及び第2のコイル3が正通電されると、無通電状態においてマグネット6が位置していた位相に応じて、マグネット6は、曲線NO上のいずれかの点に対応する通電トルクを受ける。
このように、駆動装置100のヨーク1に突起部1cが設けられることによって、回転位相範囲を拡大させた場合でも、第1のコイル2及び第2のコイル3が正通電されたときのマグネット6の動き出し時の通電トルクが負の値とならず、マグネット6は、安定的に回転し始めることができる。逆通電時も同様である。
また、マグネット6が回転位相範囲の中央の状態にあるときは、マグネット6が受けるコギングトルクは0であるので、マグネット6が受ける通電トルクは、突起部1cの有無に関わらず、点Kに対応するT5となる。つまり、第1のコイル2及び第2のコイル3から受けるトルクは、突起部1cの有無に関係おらず、突起部1cは、第1のコイル2及び第2のコイル3が発生するトルクに悪影響を与えることなくコギングトルクを下げることができる。
以上のように、ヨーク1に突起部1cが設けられない場合、マグネット6が受けるコギングトルクは大きいので、マグネット6の回転位相範囲が拡大すると、マグネット6は、動き出し時に容易に回転することができないが、ヨーク1に突起部1cが設けられた場合、マグネット6が受けるコギングトルクは小さいので、マグネット6の回転位相範囲が拡大しても、マグネット6は、動き出し時に容易に回転することができる。つまり、駆動装置100において、ヨーク1は突起部1cを備えるので、マグネット6は、回転位相範囲の広さに関係なく、動き出し時に容易に回転することができる。
有限要素法による数値シミュレーションの結果、突起部1cのマグネット6に対する対向角度を変化させることによって、マグネット6が受けるコギングトルクの調整が可能であることが分かり、これによると、対向角度が増大するほどコギングトルクは小さくなる。
図8及び図9は、図1の駆動装置におけるマグネット、第1の外側磁極部、及び第2の外側磁極部の位置関係を説明するのに用いられる上面図である。
図8及び図9において、カバー9とレバー8は省略されている。
図8の駆動装置100において、マグネット6は、その外周表面に着磁部を備え、当該着磁部は、円周方向に2分割され、2分割された外周表面が夫々S極、N極に着磁されている。
ここで、第1の外側磁極部1a及び第2の外側磁極部1bとマグネット6との位置関係について説明する。
第1の外側磁極部1aと第2の外側磁極部1bは、マグネット6の回転中心を基準にすると、互いに180度位相がずれた位置に配置されている。
よって、マグネット6のS極に着磁されている外周部が第1の外側磁極部1aに対向しているときには、マグネット6のN極に着磁されている外周部は第2の外側磁極部1bに対向し、マグネット6のN極に着磁されている外周部が第1の外側磁極部1aに対向しているときには、マグネット6のS極に着磁されている外周部は第2の外側磁極部1bに対向する。
また、突起部1cは、マグネット6の回転中心を基準にすると、第1の外側磁極部1a及び第2の外側磁極部1bに対して、夫々90度位相がずれた位置に配置されている。
よって、第1の外側磁極部1aの中心がマグネット6のS極の中心に対向し、第2の外側磁極部1bの中心がマグネット6のN極の中心に対向しているとき、及び第1の外側磁極部1aの中心がマグネット6のN極の中心に対向し、第2の外側磁極部1bの中心がマグネット6のS極の中心に対向しているときは、突起部1cの中心は、マグネット6のS極とN極との境界に対向し、第1の外側磁極部1aの中心がマグネット6のS極とN極の境界に対向し、第2の外側磁極部1bの中心がマグネット6のS極とN極の境界に対向しているときには、突起部1cの中心は、マグネット6のS極又はN極の中心に対向する。
第1のコイル2及び第2のコイル3の通電時において、第1の外側磁極部1aと第2の外側磁極部1bは、夫々反対の極に励磁される。
すなわち、第1のコイル2及び第2のコイル3への通電により発生する磁力は、ともにマグネット6を同一方向に回転させる力となる。
したがって、特許文献1において提案されている駆動装置では、外側磁極部は、マグネットの着磁極数の1/2(特許文献1において提案されている駆動装置におけるマグネットは2極で外側磁極部は1つ)となるので、マグネットの回転バランスが悪くなるか又は回転角度を大きくすることができないが、図1の駆動装置100によれば、マグネット6は2極であり、且つ、外側磁極部が2つであるので、マグネット6の回転角度を大きくすることができると共にマグネット6の回転バランスを向上させることができる。
また、突起部1cは、第1の外側磁極部1a及び第2の外側磁極部1bと共にヨーク1に一体的に備えられているので、駆動装置100の組み立て時に、コストアップすることなく部品位置精度を向上させることができ、もって駆動装置100の性能のばらつきを抑えることができる。
ここで、マグネットの極数と回転可能角度との関係について簡単に説明する。
特許文献1において提案されている駆動装置や図1の駆動装置100において、マグネットの極数をNとすると、回転可能角度は約(360/N)度となる(実際には摩擦等の影響や負荷との関係で、回転可能角度は上記より少なくなる)。これにより、マグネットが2極の場合は、マグネットは、原理的には180度近く回転することができ、マグネットが4極の場合は、原理的には90度近く回転することができる。
従って、図1の駆動装置100は、マグネットが2極であるので、回転可能角度を大きくとることができる。
なお、同じ駆動装置を用いた場合、回転角度を大きくすると、動き出しのトルクは小さくなり、回転可能角度を小さくすると、動き出しのトルクは大きくなるので、駆動装置を使用する場合の回転可能角度は、必要とされるトルクとの兼ね合いによって決定される。
図8の駆動装置100は、第1のコイル2及び第2のコイル3が正通電されることによって、第1の外側磁極部1a、第1の内側磁極部、第2の外側磁極部1b、第2の内側磁極部が、夫々N極、S極、S極、N極となるように励磁され、これによって、マグネット6は、第1の外側磁極部1aの中心とマグネット6の着磁部の中心(S極の中心)が一致するように、図中時計方向の回転力を受けると共に、第2の外側磁極部1bの中心とマグネット6の着磁部の中心(N極の中心)が一致するように、図中時計方向の回転力を受ける。
しかしながら、マグネット6と一体で回転移動する駆動ピン8bは、後述するシャッタ装置200に設けられマグネット6の回転可能な位相範囲を制限するストッパーの機能を持つ長穴14bに嵌挿されているので、駆動ピン8bは、長穴14bに沿って移動した後、長穴14bの一端に接触すると同時に静止し、これに伴ってマグネット6も静止して、図8の状態になる。
次に、第1のコイル2及び第2のコイル3への通電が止められると、マグネット6は、第1の外側磁極部1a、第2の外側磁極部1b、及び突起部1cから受けるコギングトルクによって、図8の位置で静止する。
続いて、第1のコイル2及び第2のコイル3が逆通電されることによって、第1の外側磁極部1a、第1の内側磁極部、第2の外側磁極部1b、第2の内側磁極部が夫々S極、N極、N極、S極となるように励磁されると、マグネット6は、第1の外側磁極部1aの中心とマグネット6の着磁部の中心(N極の中心)が一致するように、図中反時計方向の回転力を受けると共に、第2の外側磁極部1bの中心とマグネット6の着磁部の中心(S極の中心)が一致するように、図中半時計方向の回転力を受け、マグネット6は、図中反時計方向に回転する。
しかしながら、駆動ピン8bは、長穴14bに沿って移動した後、長穴14bの他端に接触すると同時に静止し、これに伴ってマグネット6も静止して、図9の状態になる。
次に、第1のコイル2及び第2のコイル3への通電を止められると、マグネット6は、第1の外側磁極部1a、第2の外側磁極部1b、及び突起部1cから受けるコギングトルによって、図9の位置で静止する。
このように、図1の駆動装置100によれば、第1のコイル2及び第2のコイル3への通電方向を切り換えられることによって、マグネット6は、レバー8とともにストッパーによって決められた範囲を往復回転することができる。
図10は、図1の駆動装置を備えるシャッタ装置の分解斜視図である。
図10において、シャッタ装置200は、中央に設けられた開口部14a、開口部14a及び外縁部の間に設けられた長穴14b、及び長穴14bに隣接する位置に図中上方に突出するように突起14c,14dを有する地板14を備え、突起14c,14dは地板14と一体的に形成され、駆動装置Mは、地板14に接着剤等により取り付けられる。
シャッタ装置200は、また、突起14cに回転可能に嵌合される丸穴16a及び駆動ピン8bに摺動可能に嵌合される長穴16bを有する羽根16と、突起14dに回転可能に嵌合される丸穴15a及び駆動ピン8bに摺動可能に嵌合される長穴15bを有し、羽根16の上面に配置される羽根15とを備える。
シャッタ装置200は、さらに、中央に開口部17aが形成され、羽根15及び羽根16を所定の隙間を持って間に挟んで地板14に固定される羽根押え17を備える。
このとき、駆動装置100における駆動ピン8bは、長穴14b、長穴16b、及び長穴15bを順に貫通する。
駆動ピン8bは、長穴14bの一端に当接する位置から他端に当接する位置まで移動可能であり、この限りにおいて、マグネット6は回転可能である。
マグネット6の回転に伴って、駆動ピン8bは、長穴14bに沿って移動し、駆動ピン8bは、長穴15b、16bを介して羽根15,16を夫々丸穴15a,16aを軸にして回転させて、地板14の開口部14aの通過光量を制御する。
図10のシャッタ装置200において、駆動装置100は、軸方向の長さが短いので、光軸方向に出っ張りを少なくすることができ、他のレンズや構造物に対して邪魔にならないとすることができる。
また、図10のシャッタ装置200において、駆動装置100は、小型でありながら高出力であるので、シャッタスピードを高速化することができる。
本実施の形態では、駆動装置100は、シャッタ装置200におけるシャッタ羽根15,16を駆動するアクチュエータとして用いられたが、駆動装置100は、高出力で外径が小さく且つ軸方向の長さも短いという利点を有しているので、他の用途、例えば絞り装置や、レンズ駆動のためのカム筒等を2位置に回動させる装置等にも使用可能である。
この場合、駆動ピン8bは、シャッタ装置200の光軸を中心軸にして回動可能な不図示のカム筒に連結され、レバー8の回動に伴って、カム筒が回動する。カム筒は、高さの異なる部分を光軸方向に2箇所備えたカム部を備え、当該カム部に嵌合する不図示のレンズが固定されたレンズホルダーは、カム筒の回動に伴って光軸方向に移動する。
図11は、図1の駆動装置の変形例を示す分解斜視図である。
図11の駆動装置は、構成が図1の駆動装置と基本的に同じであり、図1のものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複した説明を省略し、図1の駆動装置と異なる構成要素についてのみ以下に説明する。
図11において、駆動装置100は、図中横方向に配設された平板状の連結部21eと、連結部21eの両端において図中上方に延設された第1の外側磁極部21a及び第2の外側磁極部21bと、連結部21eの中央外縁部に図中上方に互いに対向するように延設された突起部21c,21dとを有し、軟磁性材料から成るヨーク21を備える。
駆動装置100は、また、中央に配設された孔2aを中心に導電線が巻回されて成る第1のコイル2と、中央に配設された孔3aを中心に導電線が巻回されて成る第2のコイル3とが上面に併設され、第1のコイル2及び第2のコイル3の間に配設された孔24aと、孔4a及び外縁部の間に互いに対向するように配設された孔24b,24cとを有するボビン24を備え、孔2a,2b,24b,24cに、夫々第1の外側磁極部21a、第2の外側磁極部21b、及び突起部21c,21dが図中下側から嵌合される。
そして、第1のコイル2が通電されることにより、第1の外側磁極部21aが励磁され、第2のコイル3が通電されることにより、第2の外側磁極部21bが励磁される。
また、軸受け部24aは、ロータ軸7の支持軸部7bを回転可能に支持する(図12)。
駆動装置100は、中央において支持軸部7dが回転可能に嵌合される軸受け部29a、及び駆動ピン8bが貫通する開口部29bとを有し、レバー8の上面を挟持して駆動装置300全体を支持し、ヨーク21に位置決め固定されるカバー29を備える。
レバー8のアーム部8bは、カバー29の内側から開口部29bを貫通する。
端子ピン5は、ボビン24に埋め込まれ、第1のコイル2と第2のコイル3のコイル端が接続される(図13)。
第1の外側磁極部21a及び第2の外側磁極部21bは、マグネット6の外周部に所定の隙間をもって対向して配置される。
第1円柱部7aの第1の外側磁極部21aに対向する部分、及び支持軸部7bの第1のコイル2の外周に隣接する部分に第1の内側磁極部が形成され、第1円柱部7aの第2の外側磁極部21bに対向する部分、及び、支持軸部7bの第2のコイル3の外周に隣接する部分に第2の内側磁極部が形成される。
第1のコイル2が通電されることにより、第1の外側磁極部21aと第1の内側磁極部が励磁され、その磁極間にはマグネット6を横切る磁束が発生し、発生した磁束がマグネット6に効果的に作用する。このとき、第1の外側磁極部21aと第1の内側磁極部は夫々反対の極に励磁される。同様に、第2のコイル3が通電されることにより、第2の外側磁極部21bと第2の内側磁極部が励磁され、その磁極間にはマグネット6を横切る磁束が発生し、発生した磁束がマグネット6に効果的に作用する。このとき、第2の外側磁極部21bと第2の内側磁極部は夫々反対の極に励磁される。
第1のコイル2及び第2のコイル3は、直列に且つ巻線方向が互いに異なるように接続されているので、第1の外側磁極部21a及び第2の外側磁極部21bは同時にかつ反対の極に励磁される。
これにより、第1のコイル2、第1の外側磁極部21a、及び第1の内側磁極部によって形成される第1の磁気回路(第1の磁路)と、第2のコイル3、第2の外側磁極部21b、及び第2の内側磁極部によって形成される第2の磁気回路(第2の磁路)と、第1のコイル2及び第2のコイル3、第1の外側磁極部21a、第1の内側磁極部及び第2の内側磁極部、及び第2の外側磁極部21bによって形成される第3の磁気回路(第3の磁路)との3つの磁気回路が構成され、もって大幅な出力向上を図ることができる。
ヨーク21の突起部21c,21dは、その先端部がマグネット6の一方の軸方向端面に所定の隙間をもって対向して配置される(図14)。
また、マグネット6の着磁極数をnとすると、第1の外側磁極部21a及び第2の外側磁極部21bがマグネット6に対向する位相は、突起部21c,21dがマグネット6の端面に対向する位相と、約180/n度(図1の駆動装置100ではn=2なので90度)ずれている(図15)。
図1の駆動装置100においては、突起部1cの側面がマグネット6の外周部に対向していたが、図11の駆動装置100においては、軸を中心とした両側に2つの突起部21c,21d備えており、突起部21c,21dの上端面がマグネット6の下端面に対向している。
有限要素法による数値シミュレーションの結果、図11の駆動装置300のように、ヨーク21に突起部21c,21dが設けられ、その先端部がマグネット6の下端面に対向する場合でも、図1の駆動装置100と同様に、コギングトルクが変化することが明らかになった。
これは、マグネット6の外周表面だけではなく、マグネット6の軸方向両端面もある程度着磁されているためであり、図11の駆動装置300のように、突起部の上端面がマグネット6の下端面に対向する場合は、図1の駆動装置100のように、突起部の側面がマグネット6の外周部に対向する場合よりも効果は少ないものの、コギングトルクを減少させることができる。
また、有限要素法による数値シミュレーションの結果、突起部21c及び21dのマグネット6に対する対向角度を増やすほどコギングトルクが下がることが分かっており、突起部21c,21dは、第1のコイル2及び第2のコイル3に接触しない範囲で対向角度を増やすことによって(図15)、コギングトルクの調整を行うことができる。
さらに、有限要素法による数値シミュレーションの結果、駆動装置は、軸を挟んで対向するように2つ突起部を備えるほうが、突起部を1つ備える場合よりもコギングトルクが低下することが分かっており、図11の駆動装置300は、図1の駆動装置100よりも、コギングトルクを低下させることができる。
以上から、図11の駆動装置において、突起部が2つ設けられているので、図1の駆動装置と同程度の効果を得ることができる。
ヨーク21の突起部21c,21dは、マグネット6の一方の端面に対向しているので、突起部21c,21dとマグネット6との間に吸引力が働く。
すなわち、マグネット6とロータ軸7とから成るロータ部は、常に軸方向(図14の下方向)に吸引されているので、ロータ部が回転しても軸方向のガタが発生しにくい。これにより、レバー8の駆動ピン8bは、ぶれることなく回転することができる。
また、ロータ部が吸引されることによって、軸方向の摩擦力が増えるのを抑制するために、支持軸部7bの先端は、球R形状としている。
図11の駆動装置300において、ヨーク21の突起部21c及び21dの先端部は、マグネット6の端面に対向するので、マグネット6の下部の空きスペースに突起部21c,21dを配置することができ、もって駆動装置300の幅(図14の横方向)を図1の駆動装置100の幅(図4の横方向)よりも小さくすることができ、さらに、ヨーク21に突起部が設けられていない駆動装置と同じ大きさにすることができる。