JP4722507B2 - 繰り返し屈曲用途向け両面フレキシブル回路基板 - Google Patents

繰り返し屈曲用途向け両面フレキシブル回路基板 Download PDF

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Description

本発明は、携帯電話のヒンジ部等の繰り返し屈曲が頻繁になされる用途に適する両面フレキシブル回路基板に関するものである。
携帯電話は電子機器のキーコンポーネントとして重要な役割を担っているが、電子部品の小型化及び高集積化に伴い、より高性能化が要求されている。これらの要求に対して、配線回路を有する回路基板においても、高密度化、軽薄化、フレキシブル性だけではなく、大量の情報を処理するために信号の高周波化が近年注目されている。
高周波信号を伝送するためには低誘電率、低誘電正接である材料を用いることが必要である。ここで、液晶ポリマーフィルムは、高耐熱性、吸湿寸法安定性、高周波電気特性等に優れた材料として知られている。例えば、従来の回路基板では、寸法の安定性を狙うためにガラス繊維と接着剤としての樹脂を用いたプリプレグ層を絶縁体として用いており、また、微細配線を有する回路基板においても微細配線間への充填性を確保するため、接着剤を塗布したフィルムを用いてカバー材としている。しかしながら、高周波信号を伝送することに対して、上記材料は適さない。ここで、絶縁層とカバー材を同一材料とする、又は、カバー材に液晶ポリマーフィルムのみを用いることで、絶縁層及びカバー材の材料特性を考慮せず、液晶ポリマーフィルムの特性を損なわないフレキシブル回路基板を構成することができる。
フレキシブル回路基板は、可撓性に優れており、屈曲させて使用することができる材料として知られている。中でも、片面フレキシブル回路基板は、絶縁層の片側に導体層が形成され、繰り返し屈曲用途に使用されている。また、両面フレキシブル回路基板では、絶縁層の両側に導体による回路が形成され、実装時の一度のみの折り曲げ用途に使用されている。
繰り返し屈曲用途を必要とする電子回路基板では、片面フレキシブル回路基板を利用している。しかしながら、片面フレキシブル回路基板では、回路基板の実装密度が両面フレキシブル回路基板の半分になるとか、コストが割高になる等の問題がある。例えば、特許文献1には、両面フレキシブル回路基板と片面フレキシブル回路基板とを含む単一のフレキシブル回路基板で、片面フレキシブル回路基板部を折り曲げて、別の片面フレキシブル回路基板に重ねた部分を屈曲部として構成し、屈曲性を向上することが示されている。特許文献2には、フレキシブル回路基板の屈曲箇所の内側に、円筒面をもつ支持材を配した配置構造にすることで、屈曲部のつぶれや折れを防止、導体の断線や破断を抑制することが示されている他、折り畳み式携帯電話への応用も示されている。
特開平11-195850号公報 特開平15-258388号公報
しかしながら、片面フレキシブル回路基板を組み合わせて屈曲部に適用した場合、構成するフレキシブル回路基板の層自体の厚みが増すことで、単一の片面フレキシブル回路基板よりも軽薄性や可撓性が劣ってしまう。また、フレキシブル回路基板に補強構造を持たせた場合、補強構造が存在することにより、電子回路や電子部品における回路基板の高密度化の妨げとなってしまう。
本発明の目的は、高周波信号の伝送に適し、軽薄化、導体断線や破断の抑制、回路基板の高密度化を可能とした両面フレキシブル回路基板を提供することにある。
本発明者は、上記のような課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、携帯電話等の繰り返し屈曲用途向け両面フレキシブル回路基板のカバー材に液晶ポリマーフィルムのみを用いることで、片面フレキシブル回路基板と同等の可撓性が得られることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、絶縁層の両側に、導体回路とカバー材とが設けられた両面フレキシブル回路基板において、絶縁層は厚み10〜100μmのポリイミドフィルムからなり、カバー材は絶縁層とは熱変形温度の異なる液晶ポリマーフィルムのみからなるものであって、下記計算式(1)によって算出される銅箔歪み値Yが0.5〜3%の範囲で使用され、該両面フレキシブル回路基板が、屈曲部と非屈曲部を有し、屈曲部が、周回されて使用されていることを特徴とする周回部を有する両面フレキシブル回路基板である。
Y(%)=(tCu + 1/2 tLI)/(r + tCL. + tCu + 1/2 tLI )×100 (1)
(但し、tLIは絶縁層フィルム厚み(μm)、tCL. はカバー材の液晶ポリマーフィルム厚み(μm)、tCu は銅箔厚み(μm)、r は周回部の屈曲半径(μm、但し、屈曲半径rは2.0〜5.0mm)を示す)
ここで、上記両面フレキシブル回路基板は、次のいずれか1以上の要件を満足することは、よりよい性能を有する両面フレキシブル回路基板を与える。
1)絶縁層が、液晶ポリマーフィルムからなり、その熱変形温度が270〜330℃の範囲にあり、カバー材としての液晶ポリマーフィルム熱変形温度が、それより低いこと、2)導体回路が銅箔から形成されたものであり、その厚みが5〜30μmの範囲にあること、3)カバー材厚みが、10〜100μmの範囲にあること、4)屈曲部と非屈曲部を有する両面フレキシブル回路基板の屈曲部が、周回されて使用されていること、5)周回部の屈曲半径rが、2.0〜5.0mmの範囲にあること。
上記両面フレキシブル回路基板は、折り畳み式携帯電話の折り畳み部に有利に使用される。また、本発明は、上記両面フレキシブル回路基板を、折り畳み式携帯電話の折り畳み部に使用したことを特徴とする折り畳み式携帯電話である。更に、本発明は、折り畳み式携帯電話の閉じた状態を0°とした場合、開いた状態の角度が10〜180°の範囲にある上記の折り畳み式携帯電話である。
以下、本発明の両面フレキシブル回路基板について、更に説明する。
本発明の両面フレキシブル回路基板は、携帯電話のヒンジ部等の屈曲箇所に使用するために好適であり、例えば携帯電話のヒンジ部に使用された場合、その繰り返し屈曲寿命が30万回以上となることが可能である。
本発明の両面フレキシブル回路基板は、回路加工などの公知の方法で得られるが、液晶ポリマーフィルム又はポリイミドフィルムからなる絶縁層の両面に導体回路が設けられ、その外側に液晶ポリマーフィルムのみからなるカバー材が設けられた構造となっている。
絶縁層又はカバー材で使用する液晶ポリマーフィルムは、光学的異方性の溶融相を形成しうる任意の液晶ポリマーフィルムであり、サーモトロピック液晶高分子とも呼ばれている。光学的に異方性の溶融相を形成しうる高分子とは、当業者にはよく知られているように加熱装置を備えた偏光顕微鏡直行ニコル下で溶融状態の試料を観察したときに偏光を透過する性質を有する高分子である。
液晶ポリマーフィルムは、耐熱性、加工性の点で200〜400℃、特に250〜350℃の範囲内に光学的に異方性の溶融相への転移温度を有するものが好ましい。また、フィルムの特性を損なわない範囲で、滑剤、酸化防止剤、充填剤などが配合されていても良い。本発明で使用する液晶ポリマーフィルムは、フィルム状もしくは溶液を塗布して使用することができるが、フィルム状として、銅箔に接着させることが有利である。
液晶ポリマーフィルムは、押出成形等の公知の方法で得られる。押出成形の場合、任意の押出成形法が適用できるが、周知のTダイ法、ラミネート体延伸法、インフレーション法などが工業的に有利である。特に、インフレーション法やラミネート体延伸法では、フィルムの機械軸方向(以下、MD方向)だけでなく、これと直行する方向(以下、TD方向)にも応力が加えられるため、MD方向とTD方向における機械的性質のバランスのとれたフィルムが得られる。
絶縁層に使用されるフィルムは液晶ポリマーフィルムであってもよいが、ポリイミドフィルムであってもよい。ポリイミドフィルムは広くFPC用として知られているものが使用でき、ポリイミドフィルム層は2層以上のポリイミドフィルム層からなってもよい。
カバー材には、絶縁層に使用される液晶ポリマーフィルム又はポリイミドフィルムは熱変形温度が異なる液晶ポリマーフィルムを使用する。熱変形温度は10〜100℃の範囲で異なることが好ましい。絶縁層に液晶ポリマーフィルムを使用する場合は、その熱変形温度が270〜330℃の範囲にあり、カバー材の液晶ポリマーフィルムはそれより低いこと、好ましくは10〜100℃低いことがよい。
本発明の両面フレキシブル回路基板を製造する方法においては、絶縁層の両面に導体層を積層する工程、導体層を回路とする工程、両面にある各導体回路層の上にカバー材を積層する工程とがある。導体層を形成する材料としては銅箔(銅合金箔を含む)が適する。以下、導体層を銅箔で代表して説明することもあるが、銅箔に限定されない。
例えば、絶縁層が液晶ポリマーフィルムである場合は、銅箔の両面を粗化処理して液晶ポリマーフィルムと積層し、加熱、加圧下で積層する。次に、公知の方法により銅箔の回路加工を行う。次に、カバー材となる液晶ポリマーフィルムを両面に配置した後、加熱、加圧下で積層する。カバー材として、液晶ポリマーフィルムを導体回路上に配置する場合、上記のように1)液晶ポリマーフィルムのみを配置して、加熱、加圧する方法や、また、2)液晶ポリマーフィルムと銅箔との積層物の液晶ポリマーフィルム面を、導体回路上に配置して加熱、加圧し、その後エッチングにより銅箔を除去する方法とがある。本発明によっては、いずれの方法を用いてもよい。
絶縁層がポリイミドフィルムである場合は、ポリイミドフィルムと接する銅箔面の粗化処理は必ずしも必要ではなく、ポリイミドフィルムは、ポリイミド溶液又はその前駆体溶液の形で塗布、乾燥又は硬化させることにより形成させることができる。
銅箔粗化処理はブラスト処理、研磨等の乾式の粗化方法、薬液による湿式の粗化方法が存在するが、特に黒化処理を用いることが望ましい。
絶縁層の好ましい厚み範囲は、200μm以下であり、特に好ましくは10〜100μmである。フィルム厚みが、10μmに満たないと容易に裂けるため取り扱いが困難となり、100μmを超えるとフィルムが剛直になりロール状に巻き取ることが困難になるなど取り扱いが困難となる。
熱変形温度の異なる液晶ポリマーフィルムを重ね合わせて、両面フレキシブル回路基板を製造する際、絶縁層とカバー材間で、その熱変形温度が10℃以上異なることが望ましい。この熱変形温度の差が10℃未満であると、液晶ポリマーフィルムからなる絶縁層とカバー材を用いて両面フレキシブル回路基板とした場合、積層時の加圧により、液晶ポリマーフィルムが同時に熱変形し、全ての導体回路が動きやすくなり、導体回路の位置決め制御が困難となる恐れがあるからである。ここで、絶縁層が液晶ポリマーフィルムの場合その熱変形温度を260℃以上、特に好ましくは270〜330℃の範囲とする。熱変形温度が270℃未満であると、絶縁層に使用する液晶ポリマーフィルムとカバー材としての液晶ポリマーフィルムのみの熱変形が区別できなくなる恐れがある。一方、熱変形温度が330℃以上であると、液晶ポリマーフィルムの融点を超え、回路基板の形状維持が困難となる。絶縁層がポリイミドの場合においても、絶縁層とカバー材との熱変形温度は異なることが必要であり、絶縁層の熱変形温度よりも10℃以上カバー材の熱変形温度が低いことが望ましい。
本発明の両面フレキシブル回路基板の式(1)から計算される銅箔歪み値Yは0.5〜3%の範囲である。銅箔歪み値が0.5%に満たないと絶縁層厚み、それと接する銅箔厚み及びカバー材厚みが薄くなることで、導体回路の断線が生じる恐れがある。一方、銅箔歪み値が3%を超えると、両面フレキシブル回路基板を形成する各層厚みの増加、屈曲半径が大きくなることで、軽薄化、フレキシブル性を特徴とする携帯電話繰り返し屈曲用途への実用上の適用が困難となる。
導体層の好ましい厚さ範囲は、100μm以下である。導体層が銅箔である場合、その厚みは5〜30μmであることが望ましい。銅箔厚みを薄くすることは、ファインパターンを形成可能であるという点からは好ましいが、その厚さが薄くなりすぎると、製造工程上銅箔にしわが生じたりする他、配線基板として回路形成した場合にも配線の破断が生じたり、回路基板の信頼性が低下する恐れがある。一方、銅箔厚みが増すと、銅箔をエッチングする際、回路側面にテーパーが生じ、ファインパターン形成上好ましくなくなる。
本発明で使用する銅箔としては、圧延法や電気分解法によって製造されるいずれのものでも使用することができる。銅箔には絶縁層としての液晶ポリマーフィルムとの接着力を確保することなどを目的として、粗化処理などの物理的表面処理あるいは酸洗浄などの化学的表面処理を本発明の効果が損なわない範囲で施していても良い。
液晶ポリマーフィルムのみからなるカバー材の好ましい厚み範囲は、300μm以下であり、特に好ましくは10〜100μmである。カバー材厚みが、10μmに満たないと銅箔歪み値が著しく大きく、カバー材としての役割である導体回路保護が困難となる恐れがある。一方、カバー材厚みが、100μmを超えると総厚が厚すぎ、軽薄化、フレキシブル性を特徴とする繰り返し屈曲用途への実用上の適用が困難となる。
本発明の両面フレキシブル回路基板を携帯電話等の繰り返し屈曲用途に適用することで、高周波信号の伝送、軽薄化、導体断線や破断の抑制及び回路基板の高密度化に寄与する。
以下、本発明の両面フレキシブル回路基板及びその使用例について、図面により説明する。図1は、両面フレキシブル回路基板の層構造の一例を説明するための断面図であり、液晶ポリマーフィルムからなる絶縁層3の両面に導体回路層2を有し、更にその上に液晶ポリマーフィルム1のカバー材が設けられている。図2は、両面フレキシブル回路基板の他の層構造の一例を説明するための断面図であり、ポリイミドフィルムからなる絶縁層4の両面に導体回路層2を有し、更にその上に液晶ポリマーフィルム1のカバー材が設けられている。
図3は、両面フレキシブル回路基板の層構造の他一例を説明するための断面図であり、液晶ポリマーフィルムからなる絶縁層3の両面に導体回路層2を有し、更にその上に、エポキシ系接着層6付きポリイミドフィルム5をカバー材としている。図4は、図3の絶縁層3を、ポリイミドフィルムからなる絶縁層4とした例である。図5は、ポリイミドフィルムからなる絶縁層4に、液晶ポリマーフィルム1及びポリイミド系接着フィルム6からなる複合フィルムをカバー材とした例である。なお、図3〜5は本発明の範囲外の両面フレキシブル回路基板を示す。
図6は、本発明の両面フレキシブル回路基板をヒンジ部に使用する場合の一例を説明するための模式図であり、(A)に示すようなS字型に屈曲した屈曲部8を有する両面フレキシブル回路基板7が、(B)に示すように、屈曲部付近において断面が円形状になるように巻かれて、周回している。また、周回させることにより、上から見た場合、周回部の両側の非屈曲部9の表面は同じ面となる。周回させる際、その周回軸10となる部分に円筒形体を使用してもよい。
図6(B)は、携帯電話繰り返し屈曲用途において用いられる使用形態の一例であるが、屈曲部の両面フレキシブル回路基板が周回部で一回転しており、周回部での屈曲半径は2.0〜5.0mmの範囲である。これを、折り畳み携帯電話に使用する場合、開閉角度10°〜180°の範囲である。なお、図6(B)は、屈曲部と非屈曲部を有する両面フレキシブル回路基板の屈曲部8が一回転して周回しているものを示し、この部分をα巻という。
周回部での屈曲半径(周回軸10の半径にほぼ等しい)の好ましい半径範囲は、2.0〜5.0mmの範囲である。屈曲半径が2.0mmに満たないと屈曲形状を維持することが困難となる恐れがある。一方、屈曲半径が5.0mmを超えると、軽薄化、フレキシブル性を特徴とする携帯電話繰り返し屈曲用途への実用上の適用が困難となる。
図7は折り畳み携帯電話の模式図を示し、両面フレキシブル回路基板7がヒンジ部11で周回されて、本体(ボタン部)12とフタ部(表示部)13間を接続している。本体12とフタ部13が作る開閉角度の好ましい角度範囲は、10〜180°の範囲である。開閉角度が、10°に満たないと開閉できないといった実用上の支障が生じる恐れがある。一方、開閉角度が180°を超えると、携帯電話繰り返し屈曲用途ではなく折り曲げ用途となる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
*銅箔回路加工
液晶ポリマーフィルムからなる両面銅張積層板にドライフィルムをラミネートし、レジスト幅100μm、回路幅100μmのパターンフィルムを使用してUV露光により回路パターンを形成した。次に、塩化銅エッチング液を用いて、銅箔エッチングした。得られた両面導体回路基板を、光学顕微鏡を用いて回路の剥れや回路間の残銅の有無を確認した。
*厚み測定
JISC5016に準じ、膜厚測定器(ミツトヨ社製 ダイヤルゲージ215-153)を使用して、絶縁層、カバー材及び銅箔厚みを測定した。
*初期抵抗値測定
JISC5016に準じ、抵抗測定器(カスタム社製 CX-180N)を使用して、カバー材をプレス前の両面導体回路基板の抵抗値を測定した。
*銅箔歪み値の計算
両面フレキシブル回路基板に使用する銅箔厚み、絶縁層厚み、カバー材厚み及び屈曲半径から銅箔歪み値から、式(1)により計算した。
*携帯電話繰り返し屈曲試験
耐ヒンジ屈曲試験機(プロス社製 PIS-FPJ310)を使用して、両面フレキシブル回路基板の携帯電話繰り返し屈曲試験を行った。両面フレキシブル回路基板の破断条件は、初期抵抗値から5%の抵抗値上昇とした。
実施例1(参考例)
厚さ25μmの液晶ポリマーフィルム280(クラレ社製ベクスター、熱変形温度280℃)を絶縁層とし、その両面に厚さ18μmの圧延銅箔(日鉱マテリアルズ社製BHY-22B-T)を有する両面銅張積層板にドライフィルムをラミネートし、レジスト幅100μm、回路幅100μmのパターンフィルムを使用してUV露光により回路パターンを形成した。次に、塩化銅エッチング液を用いて、銅箔エッチングし、両面導体回路基板Wを作成した。次に、厚さ25μmの液晶ポリマーフィルム260(クラレ社製ベクスター、熱変形温度260℃)を両面導体回路基板Wのカバー材とするため、その片面に厚さ18μmの上記圧延銅箔を有する片面銅張積層板Sを準備した。
ここで、両面導体回路基板Wと片面銅張積層板Sの液晶ポリマーフィルム面に対してアルカリ水溶液による薬液処理を用い、純水で水洗後、90℃の熱風オーブンで乾燥させた。また、銅箔とカバー材としての液晶ポリマーフィルムを接着させるため、両面導体回路基板の銅表面に黒化処理をした。その後、両面導体回路基板Wを挟み込む形で、フロー温度の異なる液晶ポリマーフィルムを樹脂層とする片面銅張積層板Sを積層し、精密プレスにて、260℃、9MPaの圧力でプレスを行い、回路基板とした。プレス後、得た回路基板の最外層銅箔をエッチングして除去し、絶縁層及びカバー材が液晶ポリマーからなる両面フレキシブル回路基板(図1)とした。
上記により得られた両面フレキシブル回路基板を図6(A)に示す形状にカットし、試験片とした。この試験片の屈曲部を周回させてα巻とし、ライン/スペース=100/100(μm)の回路面を内側になるようにして耐ヒンジ屈曲試験を行った(図6(B)参照)。また、耐ヒンジ屈曲試験終了後の各試験片の銅箔歪み値を算出した。
実施例2(参考例)
カバー材として、50μm厚みの液晶ポリマーフィルム260を使用した以外は、実施例1(参考例)と同様にして両面フレキシブル回路基板を製作し、評価した。
実施例3
厚さ25μmのポリイミドの両面に厚さ18μmの圧延銅箔を有する両面銅張積層板M(新日鐵化学社製、エスパネックスMグレード)にドライフィルムをラミネートし、レジスト幅100μm、回路幅100μmのパターンフィルムを使用してUV露光により回路パターンを形成した。次に、塩化銅エッチング液を用いて、銅箔エッチングし、両面導体回路基板を作成した。次に、厚さ25μmの液晶ポリマーフィルム260を前記両面導体回路基板のカバー材とするため、その片面に厚さ18μmの圧延銅箔を有する片面銅張積層板を準備した。両面導体回路基板を挟み込む形で、液晶ポリマーフィルムを樹脂層とする片面銅張積層板を積層し、精密プレスにて、260℃、9MPaの圧力でプレスを行い、回路基板とした。プレス後、得た回路基板の最外層銅箔をエッチングして除去し、絶縁層にポリイミドフィルム、カバー材を液晶ポリマーフィルムのみとし、異種の樹脂層が積層された両面フレキシブル回路基板(図2)とした。
比較例1
絶縁層を厚さ25μmの液晶ポリマーフィルム280とし、その両面に厚さ18μmの圧延銅箔を有する両面銅張積層板にドライフィルムをラミネートし、レジスト幅100μm、回路幅100μmのパターンフィルムを使用してUV露光により回路パターンを形成した。次に、塩化銅エッチング液を用いて、銅箔エッチングし、両面導体回路基板を作成した。次に、ポリイミドフィルムK(カプトン:登録商標)にエポキシ系接着層を設けたポリイミドフィルムカバー材を使用して、両面導体回路基板を挟み込む形で、精密プレスにて、160〜170℃、2〜7MPaの圧力でプレスを行い、両面フレキシブル回路基板(図3)とした。
比較例2
カバー材として、ポリイミドフィルムKにエポキシ系接着層を設けた表1に示した厚み構成のポリイミドフィルムカバー材(3種)を使用した以外は、比較例1と同様に行い、評価した。
比較例3
厚さ25μmのポリイミドの両面に厚さ18μmの圧延銅箔を有する両面銅張積層板Mにドライフィルムをラミネートし、レジスト幅100μm、回路幅100μmのパターンフィルムを使用してUV露光により回路パターンを形成した。次に、塩化銅エッチング液を用いて、銅箔エッチングし、両面導体回路基板を作成した。次に、ポリイミドフィルムKにエポキシ系接着層を設けたポリイミドフィルムカバー材を使用して、前記両面導体回路基板を挟み込む形で、精密プレスにて、160〜170℃、2〜7MPaの圧力でプレスを行い、両面フレキシブル回路基板(図4)とした。
比較例4
カバー材として、ポリイミドフィルムKにエポキシ系接着層を設けた表1に示した厚み構成のポリイミドフィルムカバー材(3種)を使用した以外は、比較例1と同様に行い、評価した。
比較例5
厚さ25μmのポリイミドの両面に厚さ18μmの圧延銅箔を有する両面銅張積層板Mにドライフィルムをラミネートし、レジスト幅100μm、回路幅100μmのパターンフィルムを使用してUV露光により回路パターンを形成した。次に、塩化銅エッチング液を用いて、銅箔エッチングし、両面導体回路基板を作成した。次に、厚さ25μmの液晶ポリマーフィルム260の片面に厚さ18μmの圧延銅箔を有する片面銅張積層板を準備した。次に、両面導体回路基板をポリイミド系接着フィルム(新日鐵化学社製 ボンディングシートSPB)を介して、液晶ポリマーフィルムを樹脂層とする片面銅張積層板を積層し、精密プレスにて、260℃、9MPaの圧力でプレスを行い、回路基板とした。プレス後、得た回路基板の最外層銅箔をエッチングして除去し、両面フレキシブル回路基板(図5)とした。
評価結果を表1に示す。なお、比較例中のカバー材厚み欄の( )内の値は、PF:ポリイミドフィルム、LCPF :液晶ポリマーフィルム、Ad:エポキシ系又はポリイミド系接着層の厚み(μm)を表す。
Figure 0004722507
両面フレキシブル回路基板の一例を説明するための断面図 両面フレキシブル回路基板他の一例を説明するための断面図 両面フレキシブル回路基板の比較例を説明するための断面図 両面フレキシブル回路基板の比較例を説明するための断面図 両面フレキシブル回路基板の比較例を説明するための断面図 両面フレキシブル回路基板の使用例を説明するための模式図 折り畳み携帯電話の一例を説明するための模式図
符号の説明
1:液晶ポリマーフィルムカバー材
2:導体回路層
3:液晶ポリマーフィルム絶縁層
4:ポリイミドフィルム絶縁層
5:ポリイミドフィルムカバー材
6:接着層
7:試験片
8:屈曲部
9:非屈曲部
10:屈曲部の周回軸
11:ヒンジ部
12:本体
13:フタ部

Claims (6)

  1. 絶縁層の両側に、銅箔から形成された導体回路とカバー材とが設けられた両面フレキシブル回路基板において、絶縁層は厚み10〜100μmのポリイミドフィルムからなり、カバー材は絶縁層とは熱変形温度の異なる液晶ポリマーフィルムのみからなるものであって、下記計算式(1)によって算出される銅箔歪み値Yが0.5〜3%の範囲で使用され、該両面フレキシブル回路基板が、屈曲部と非屈曲部を有し、屈曲部が、周回されて使用されていることを特徴とする周回部を有する両面フレキシブル回路基板。
    Y(%)=(tCu + 1/2 tLI)/(r + tCL. + tCu + 1/2 tLI )×100 (1)
    (但し、tLIは絶縁層フィルム厚み(μm)、tCL. はカバー材の液晶ポリマーフィルム厚み(μm)、tCu は銅箔厚み(μm)、r は周回部の屈曲半径(μm、但し、屈曲半径rは2.0〜5.0mm)を示す)
  2. 導体回路の厚みが5〜30μmの範囲にある請求項記載の両面フレキシブル回路基板。
  3. カバー材厚みが、10〜100μmの範囲にある請求項1又は2に記載の両面フレキシブル回路基板。
  4. 折り畳み式携帯電話の折り畳み部に使用される請求項1〜3のいずれかに記載の両面フレキシブル回路基板。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載の両面フレキシブル回路基板を、折り畳み式携帯電話の折り畳み部に使用したことを特徴とする折り畳み式携帯電話。
  6. 折り畳み式携帯電話の閉じた状態を0°とした場合、開いた状態の角度が10〜180°の範囲にある請求項記載の折り畳み式携帯電話。
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