JP4722048B2 - N−デアセチラーゼ/n−スルホトランスフェラーゼ2を発現するベクター - Google Patents
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Description
一方、バキュロウイルスの系を用いて細胞外にタンパク質を産生させる方法が知られている。例えば、Marchal I,Cerutti M,Mir AM,Juliant S,Devauchelle G,Cacan R,Verbert A.Expression of a membrane−bound form of Trypanosoma cruzi trans−sialidase in baculovirus−infected insect cells:a potential tool for sialylation of glycoproteins produced in the baculovirus−insect cells system.Glycobiology.11,593−603(2001)には、バキュロウイルスの系においてgp67シグナル配列を用いてTrypanosoma cruziのtrans−sialidaseを発現させることが記載されている。Vlase H,Matsuoka N,Graves PN,Magnusson RP,Davies TF.Folding−dependent binding of thyrotropin(TSH)and TSH receptor autoantibodies to the murine TSH receptor ectodomain.Endocrinology.138,1658−1666(1997)には、バキュロウイルスの系においてgp67シグナル配列を用いてマウスのTSHレセプターを発現させることが記載されている。Kretzschmar T,Aoustin L,Zingel O,Marangi M,Vonach B,Towbin H,Geiser M.High−level expression in insect cells and purification of secreted monomeric single−chain Fv antibodies.J.Immunol.Methods.195,93−101(1996)には、バキュロウイルスの系においてgp67シグナル配列を用いて一本鎖抗体を発現させることが記載されている。Rupp B,Rossler U,Lowel M,Werenskiold AK.High level expression of the IL−1 receptor related T1 receptor in insect cells.Biochem.Biophys.Res.Commun.216,595−601(1995)には、バキュロウイルスの系においてgp67シグナル配列を用いてインターロイキン1関連T1レセプターを発現させることが記載されている。また、Murphy CI,McIntire JR,Davis DR,Hodgdon H,Seals JR,Young E.Enhanced expression,secretion,and large−scale purification of recombinant HIV−1 gp120 in insect cell using the baculovirus egt and p67 signal peptides.Protein Expr.Purif.4,349−357.(1993).Erratumin:Protein Expr.Purif.5,103(1994)には、バキュロウイルスの系においてgp67シグナル配列を用いてヒトAIDSウイルスの外皮タンパク質gp120を発現させることが記載されている。
また、特開2002−325579号、及び平成13年度 理研研究年報、681−687、構造生物化学研究室 4.昆虫細胞を用いた高効率タンパク質発現系の構築、(1)発現増強因子(佐野,前田(雄);前田(佳)(細胞情報伝達研))には、バキュロウイルス・昆虫培養細胞系を用いてポリペプチドを発現させる際に、ポリペプチドのコーディング配列の上流に、ロブスター由来の非翻訳リーダー配列L21を挿入すると、ポリペプチドの発現量の大幅な上昇が見られることが記載されている。
さらに、最近、ヒトN−デアセチラーゼ/N−スルホトランスフェラーゼ2のアミノ酸をHisタグとの融合タンパク質としてバキュロ系で発現した例が紹介されている(Balagurunathan Kuberan,et al.,Nature Biotechnology 01 Nov 2003;21,1343−1346)。
本発明者らは、ヒトN−デアセチラーゼ/N−スルホトランスフェラーゼ2(ヒトNDST2とも称する)をバキュロウイルスの系を用いることにより大量生産することを目的として鋭意検討した結果、ヒトN−デアセチラーゼ/N−スルホトランスフェラーゼ2の79番目以降のアミノ酸をコードするDNA断片に、バキュロウイルスgp67、メリチン、ボンビキシン等のシグナル配列を直接連結することにより、脱N−アセチル化酵素活性とN−硫酸転移酵素活性の両方を所持するタンパク質を培地中に安定的に大量に分泌することが可能になることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明によれば、(1)以下の(a)または(b)の膜貫通領域のN末側配列を除去したヒトN−デアセチラーゼ/N−スルホトランスフェラーゼ2が提供される。
(a)配列番号2記載の79番から883番までのアミノ酸配列からなるタンパク質、
(b)(a)のタンパク質において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入または転位したアミノ酸配列からなり、かつ、N−デアセチラーゼ活性とN−スルホトランスフェラーゼ活性とを有するタンパク質。
本発明の別の側面によれば、(2)少なくともバキュロウイルス発現ベクター内で機能しうる、シグナルペプチドをコードするDNAと、その下流に連結された上記(1)記載のタンパク質をコードするDNAとを含むトランスファーベクターが提供される。上記バキュロウイルス発現ベクター内で機能しうる、シグナルペプチドをコードするDNAとしては、バキュロウイルス由来、カイコ由来またはミツバチ由来のシグナルペプチドをコードするDNAであることが好ましい。また、該トランスファーベクターは、さらにコーディング配列の発現を促進させる機能を有する非翻訳リーダー配列を含むことが好ましく、バキュロウイルス由来のシグナルペプチドはgp67であり、カイコ由来のシグナルペプチドはボンビキシン・シグナルペプチドであり、ミツバチ由来のシグナルペプチドはメリチン・シグナルペプチドであり、非翻訳リーダー配列はロブスターL21DNAであることが、より好ましい。また、上記(1)記載のタンパク質をコードするDNAの下流に、さらにヒスチジン・タグに対応するDNAを有することが好ましい。
本発明のさらに別の側面によれば、(3)少なくともバキュロウイルス由来のシグナルペプチドをコードするDNA、及びヒトN−デアセチラーゼ/N−スルホトランスフェラーゼ2の79番から883番までのアミノ酸をコードするDNA又は該DNAにおいて1若しくは数個のヌクレオチドの欠失、挿入若しくは置換を有するDNAであって、ヒトN−デアセチラーゼ/N−スルホトランスフェラーゼ2と同等の酵素活性を示すタンパク質をコードするDNAを、この順で5’から3’方向に有するDNA断片をバキュロウイルスDNAへ組み込んで得られる、組換えバキュロウイルス発現ベクターが提供される。DNA断片のバキュロウイルスDNAへの組み込みが、該DNA断片とバキュロウイルスDNAの多核体遺伝子との相同組換えによって行なわれることが好ましい。
本発明のさらに別の側面によれば、(4)上記した本発明の組換えバキュロウイルス発現ベクターを有する昆虫細胞が提供される。昆虫細胞は、好ましくは、ヨトウガ細胞である。
本発明のさらに別の側面によれば、(5)上記した本発明の組換えバキュロウイルス発現ベクターを有する昆虫細胞を培養し、膜貫通領域のN末側配列を除去したヒトN−デアセチラーゼ/N−スルホトランスフェラーゼ2を分泌発現させることを含む、ヒトN−デアセチラーゼ/N−スルホトランスフェラーゼ2の製造方法が提供される。好ましくは、昆虫細胞は血清含有培地で培養される。
本発明のさらに別の側面によれば、(6)上記した製造方法により製造される、79番から883番までのアミノ酸から成るヒトN−デアセチラーゼ/N−スルホトランスフェラーゼ2が提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、(7)上記(1)に記載のヒトN−デアセチラーゼ/N−スルホトランスフェラーゼ2と、ヒトN−デアセチラーゼ/N−スルホトランスフェラーゼ2と免疫学的に反応しうる抗体とを反応させる工程を含む、ヒトN−デアセチラーゼ/N−スルホトランスフェラーゼ2の検出方法が提供される。好ましくは、抗体は、配列番号2の任意の連続した11〜13個のアミノ酸を含む抗原ペプチドを哺乳動物または鳥類に免疫して得られたポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体である。
図2は、精製抗ヒトNDST2抗体を用いてヨトウガ細胞中のヒトNDST2を検出した結果を示す。
本発明のN末側配列を除去したヒトN−デアセチラーゼ/N−スルホトランスフェラーゼ2は、配列番号2記載のアミノ酸配列において、膜貫通領域のN末側配列である1番から78番までのアミノ酸を除去し、79番から883番までのアミノ酸配列からなるタンパク質であることを特徴とする。本発明によって得られる、79番から883番までのアミノ酸配列からなる短縮型ヒトNDST2は、現在までに知られている最も短い、活性を有するヒトNDST2ポリペプチドであり、可溶性であり、高活性であるという優れた効果を有する。なお、上記短縮型ヒトNDST2において、1もしくは数個(好ましくは1個から3個、より好ましくは1個から2個)のアミノ酸が欠失、置換、挿入または転位した配列を有するタンパク質(このようなタンパク質を「変異型タンパク質」または「変異体」ともいう。)であって、N−デアセチラーゼ活性とN−スルホトランスフェラーゼ活性とを有するものは、配列番号2に記載のアミノ酸配列及び配列番号1記載の塩基配列の情報に基づいて当業者であれば本明細書の記載に基づいて適宜調製することができるので、本発明に包含される。また、「1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入または転位した配列を有するタンパク質」とは、換言すれば配列番号2記載の79番から883番までのアミノ酸配列と高い相同性を有し、N−デアセチラーゼ活性とN−スルホトランスフェラーゼ活性とを有するものと言うこともできる。ここで、「高い相同性」とは、例えば75%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上であり、以下順次、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%に例示されるより高いパーセンテージがより好ましい。例えば、配列番号1に記載の塩基配列を有するDNAに対し、変異原となる薬剤と接触作用させる方法、紫外線を照射する方法、遺伝子工学的手法等を用いて行うことができる。
遺伝子工学的手法の一つである部位特異的変異誘発法は特定の位置に特定の変異を導入できる手法であることから有用であり、モレキュラークローニング第2版、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー、Nucleic Acids Research,10,6487,1982、Nucleic Acids Research,12,9441,1984、Nucleic Acids Research,13,4431,1985、Nucleic Acids Research,13,8749,1985、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,79,6409,1982、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82,488,1985、Gene,34,315,1985、Gene,102,67,1991等に記載の方法に準じて行うことができる。上記した方法により、配列番号1に記載の塩基配列において変異を有する塩基配列を有するDNAを入手し、このDNAを発現させることにより、目的タンパク質を製造することができる。
本発明のトランスファーベクターは、少なくともバキュロウイルス発現ベクター内で機能しうる、シグナルペプチド、好ましくはバキュロウイルス由来のシグナルペプチド、カイコ由来のシグナルペプチド、ミツバチ由来のシグナルペプチドをコードするDNAと、その下流に連結された上記のヒトN−デアセチラーゼ/N−スルホトランスフェラーゼ2をコードするDNAとを含む。また、シグナルペプチドをコードするDNAの上流には、翻訳効率を上昇させ、目的タンパク質の発現効率を上昇させるために、コーディング配列の発現を促進させる機能を有する非翻訳リーダー配列を挿入することが好ましい。バキュロウイルス由来のシグナルペプチドとしてはgp67が、カイコ由来のシグナルペプチドとしてはボンビキシン・シグナルペプチドが、ミツバチ由来のシグナルペプチドとしてはメリチン・シグナルペプチドがそれぞれ例示され、該非翻訳リーダー配列としてはロブスターL21DNAが例示され、かつ好ましい。なお、シグナルペプチドとしては、バキュロウイルスgp67が最も好ましい。このようなトランスファーベクターの製造方法の詳細については後述する。
本発明の組み換えバキュロウイルス発現ベクターは、少なくともバキュロウイルス由来のシグナルペプチドをコードするDNA、及びヒトN−デアセチラーゼ/N−スルホトランスフェラーゼ2の79番から883番までのアミノ酸をコードするDNAまたは該DNAにおいて1又は数個のヌクレオチドの欠失、挿入または置換を有するDNAであって、ヒトN−デアセチラーゼ/N−スルホトランスフェラーゼ2と同等の酵素活性を示すタンパク質をコードするDNAを、この順で5’から3’方向に有するDNA断片をバキュロウイルスDNAへ組み込んで得られる。
本発明の組み換えバキュロウイルス発現ベクターにおいては、最大限の活性を得ることを目的として、ロブスターL21配列(翻訳効率の上昇)、gp67シグナルペプチド(分泌効率の上昇)、及びヒトN−デアセチラーゼ/N−スルホトランスフェラーゼ2の79番から883番までのアミノ酸配列(現在知られている酵素活性に必要な最小領域)をそれぞれ連結してバキュロウイルス発現ベクターに組み込んだものであることが最も好ましい。
本発明では、ヒトN−デアセチラーゼ/N−スルホトランスフェラーゼ2の79番から883番までのアミノ酸をコードするDNAを使用する。ヒトN−デアセチラーゼ/N−スルホトランスフェラーゼ2としては野生型のみならず、遺伝子操作によって作製した変異体を使用してもよい。このような変異体としては、当業者に周知の遺伝子組み換え技術によって野生型のDNA配列において1又は数個(好ましくは1から10個、より好ましくは1から6個、さらに好ましくは1〜3個程度)のヌクレオチドの欠失、挿入または置換を有するDNAあるいは野生型のDNA配列と相同性(例えば75%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の相同性)を有するDNAであって、天然に存在する野生型のヒトN−デアセチラーゼ/N−スルホトランスフェラーゼ2と同等またはそれ以上の生物学的活性を有するタンパク質をコードするDNAが挙げられる。
ヒトN−デアセチラーゼ/N−スルホトランスフェラーゼ2の79番から883番までのアミノ酸としては、具体的には、配列番号:2で表わされるアミノ酸配列の79番目から883番目が挙げられる。また、配列番号:2で表わされるアミノ酸配列をコードする塩基配列の具体例としては、配列番号:1で表わされる塩基配列が挙げられる。これらのDNAは、それ自体公知の遺伝子工学的手法を用いてクローニングすることができ、あるいは市販の核酸合成装置を用いて製造することもできる。
本発明では、ロブスターL21DNAは、翻訳効率を上昇させるために用いられる。ロブスターL21DNAとしては、AACTCCTAAAAAACCGCCACC(配列番号7)を使用することができる。
本発明のトランスファーベクター及び組換えバキュロウイルス発現ベクターでは、シグナルペプチドをコードするDNAを使用する。シグナル配列とは、細胞外タンパク質が細胞内より細胞外へ分泌する時に必要とするアミノ酸配列である。本発明で用いるシグナルペプチドをコードするDNAは、分泌タンパク質のN末端に連結しており、細胞外へのタンパク質の分泌に伴い切断除去される。このようなシグナルペプチドをコードするDNAとしては、バキュロウイルス発現ベクター内で機能しうるDNAであれば、特に限定されるものではない。例えば、バキュロウイルス由来のシグナルペプチドであるgp67シグナルペプチド、カイコ30Kタンパク質のシグナルペプチド(Sakai et al.,1988:Biochim.Biophys.Acta 949,224−232、特開2002−300886号参照)、Bombyxin(ボンビキシン)、Melittin(メリチン)等をコードする公知のDNA(特表平11−505410号、米国特許第6,582,691号、米国特許第6,911,204号)が挙げられるが、gp67シグナルペプチドをコードするDNAが好ましい。
昆虫に感染して病気を起こすウイルスであるバキュロウイルスは、環状の二本鎖DNAを遺伝子としてもつエンベロープウイルスで、鱗翅目、膜翅目および双翅目などの昆虫に感受性を示す。バキュロウイルスの中で、感染細胞の核内に多角体(ポリヒドラ)と呼ばれる封入体を大量につくる一群のウイルスが核多角体病ウイルス(NPV)である。多角体は、分子量31kDaのポリヘドリンタンパクより構成され、感染後期に大量につくられその中に多数のウイルス粒子を埋め込んでいる。多角体はウイルスが自然界で生存するためには必須であるが、ウイルスの増殖そのものには必要ないので、多角体遺伝子の代わりに発現させたい外来遺伝子を挿入してもウイルスは全く支障なく感染し増殖する。
ヒトN−デアセチラーゼ/N−スルホトランスフェラーゼ2の79番から883番までのアミノ酸をコードするDNAを昆虫細胞に導入し、それらを効率よく発現させるためには、該DNAを昆虫細胞を宿主とするバキュロウイルスに属する核多角体病ウイルス(nuclear polyhedrosis virus;NPV)などのポリヘドリンプロモーターの下流に組み込むのが好ましい。ベクターとしては、キンウワバ亜科のAutographa californica NPV(AcNPV)とカイコのBombyx mori NPV(BmNPV)などのウイルスが用いられる。
上記の通り、昆虫細胞を宿主細胞とするバキュロウイルスとしては、例えば、核多角体病ウイルス(nuclear polyhedrosis virus;NPV)などが挙げられる。昆虫細胞としては、例えば、ウイルスがAcNPVの場合は、ヨトウガの幼虫由来株化細胞(Spodoptera frugiperda cell;Sf細胞)、Trichoplusia niの中腸由来のMG1細胞、Trichoplusia niの卵由来のHigh FiveTM細胞、Mamestrabrassicae由来の細胞、Estigmena acrea由来の細胞、またはDrosophila melanogaster由来の細胞(例えば、Schneider細胞)などが挙げられる。上記の中でも、特に、Sf9細胞やSf21細胞〔Vaughn,J.L.ら、イン・ヴィトロ(In Vitro),13,213−217,(1977)〕は静置培養と浮遊培養ができる。また、ウイルスがBmNPVの場合は、蚕由来株化細胞(Bombyx mori N;BmN細胞)などの他、カイコ幼虫個体などが挙げられる。該Sf細胞としては、例えば、Sf9細胞(ATCCCRL1711)、Sf21細胞〔以上、Vaughn,J.L.ら、イン・ヴィトロ(In Vitro),13,213−217,(1977)〕などが挙げられる。
バキュロウイルスの昆虫細胞への感染方法としては、m.o.i.(multiplicity of infection)が約0.1〜100、望ましくは約1〜10になるようにバキュロウィルスを昆虫細胞の培養液に添加する方法が用いられる。
本発明の組換え発現バキュロウイルスベクターの構築は、常法に従って行えばよく、例えば次の手順で行うことができる。先ず、発現させたい遺伝子であるヒトN−デアセチラーゼ/N−スルホトランスフェラーゼ2の79番から883番のアミノ酸をコードするDNA(なお、このDNAには、好ましくはロブスターL21DNA及びgp67シグナルペプチド、ボンビキシン・シグナルペプチドもしくはメリチン・シグナルペプチドをコードするDNAが連結している)をトランスファーベクターに挿入して組換えトランスファーベクターを構築する。トランスファーベクターの全体の大きさは一般的には数kb〜10kb程度である。例えば、トランスファーベクターのうちの約3kbはプラスミド由来の骨格であり、アンピシリン等の抗生物質耐性遺伝子と細菌のDNA複製開始のシグナルを含んでいてもよい。通常のトランスファーベクターではこの骨格以外に、多角体遺伝子の5’領域と3’領域をそれぞれ数kbずつ含み、以下に述べるようなトランスフェクションを行った際に、この配列間で目的遺伝子と多角体遺伝子との間で相同組換えが引き起こる。また、トランスファーベクターにはタンパク質遺伝子を発現させるためのプロモーターを含むことが好ましい。プロモーターとしては、多角体遺伝子のプロモーター、p10遺伝子のプロモーター、キャプシド遺伝子のプロモーターなどが挙げられる。
トランスファーベクターの種類は特に限定されないが、具体例としては、AcNPV系トランスファーベクターとしては、pEVmXIV2、pAcSG1、pVL1392/1393、pAcMP2/3、pAcJP1、pAcUW21、pAcDZ1、pBlueBacIII、pAcUW51、pAcAB3、pAc360、pBlueBacHis、pVT−Bac33、pAcUW1、pAcUW42/43、pAcC4などが挙げられ、BmNPV系トランスファーベクターとしては、pBK283、pBK5、pBB30、pBE1、pBE2、pBK3、pBK52、pBKblue、pBKblue2、pBFシリーズ(以上、フナコシ株式会社、藤沢薬品工業株式会社等から入手可能)などが挙げられる。
次に、組換えウイルスを作製するために、上記の組換えトランスファーベクターをウイルスと混合した後、宿主として用いる培養細胞に移入するか、あるいは予めウイルスで感染させた宿主として用いる培養細胞に上記のトランスファーベクターを移入し、組換えトランスファーベクターとウイルスゲノムDNAとの間に相同組み換えを起こさせ、組み換えウイルスを構築することができる。
また、バキュロウイルスを用いたタンパク質の発現を目的として、様々なキットが市販されており、本発明においてはそれらを用いることができる。多くの系ではウイルスのゲノムDNAと発現させる遺伝子をサブクローニングしたトランスファーベクターを昆虫細胞にコトランスフェクションした後、β−galによるblue/white選択を行うことによりクローニングを行うものである。また、Gibco BRL社から市販されているBAC−TO−BACは、バキュロウイルスのDNAへの目的タンパク質のcDNAの組換えを大腸菌の中で行わせ、昆虫細胞レベルでのクローニングを行う必要のないシステムである。130kbのウイルスDNAはDH10BACというホストの大腸菌の中に入っており、これにトランスファーベクターであるpFASTBACに目的のcDNAを挿入したものを通常の大腸菌の形質転換と同様に導入し、大腸菌のblue/white選択により組換え体を選別できる。組換えウイルスDNAは通常のアルカリミニプレップにより抽出し、細胞にトランスフェクションすることができる。トランスファーベクターであるpFASTBACとしては、タグなしのpFASTBAC1、6xHISタグ付きのpFASTBAC−HTa,b,c、2つのタンパクを共発現するためのpFASTBAC−DUALなどがあり、本発明においてもその目的に応じて適宜選択して使用することができる。
本発明のヒトN−デアセチラーゼ/N−スルホトランスフェラーゼ2の79番から883番までのアミノ酸から成るタンパク質は、ヒトN−デアセチラーゼ/N−スルホトランスフェラーゼ2の79番から883番までのアミノ酸をコードするDNAを導入したバキュロウイルスを感染させた昆虫細胞を、ヒトN−デアセチラーゼ/N−スルホトランスフェラーゼ2の79番から883番までのアミノ酸をコードするDNAの発現が可能な条件下で培養することにより製造することができる。すなわち、上記DNAを導入したバキュロウイルスを感染させた昆虫細胞を静地培養または浮遊培養することにより、該細胞にヒトN−デアセチラーゼ/N−スルホトランスフェラーゼ2の79番から883番までのアミノ酸配列から成るタンパク質を大量発現させることができる。
昆虫細胞を培養するための培地としては、グレース昆虫細胞用培地サプリメント入り、IPL−41昆虫細胞用培地、Sf−900昆虫細胞用無血清培地、TC−100昆虫細胞用培地(いずれもGIBCO−BRL社)などが挙げられる。またこれらの培地に約5%〜20%の牛胎児血清、ペニシリンG、ストレプトマイシン、ゲンタマイシンなどの抗生物質、約0.1%のプルロニックF−68(GIBCO−BRL社)などを添加してもよい。
培養は約20℃から30℃、望ましくは約26℃から28℃で、約12時間から144時間、望ましくは約24時間から96時間行うことができる。シャーレやフラスコの中で静置してもよいし、スピナーフラスコを用いて約50rpm〜200rpmで撹拌してもよい。
上記の通り、本発明の組換えバキュロウイルス発現ベクターを、適当な宿主(例えば、Spodoptera Frugiperda細胞系統Sf9およびSf21などの培養細胞、又は昆虫幼虫など)に感染させ、宿主を好適な条件下で培養してヒトN−デアセチラーゼ/N−スルホトランスフェラーゼ2を分泌発現させ、一定時間後(例えば、72時間後等)に培養物を遠心分離等に付して培養上清を回収することにより、目的とするN−デアセチラーゼ/N−スルホトランスフェラーゼ2を入手することができる。
組換えN−デアセチラーゼ/N−スルホトランスフェラーゼ2の培養上清からの回収及び精製は、必要に応じて、公知の分離・精製法を適宜組み合わせて行うことができる。分離、精製法の具体例としては、硫安等による塩析や溶媒沈澱法などの溶解度を利用する方法、透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、およびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの主として分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーなどの荷電の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動法などの等電点の差を利用する方法などが用いられる。
さらに、本発明によれば、本発明のヒトN−デアセチラーゼ/N−スルホトランスフェラーゼ2と、ヒトN−デアセチラーゼ/N−スルホトランスフェラーゼ2と免疫学的に反応しうる抗体とを反応させる工程によって、ヒトN−デアセチラーゼ/N−スルホトランスフェラーゼ2を検出することができる。好ましくは、抗体としては、配列番号2の任意の連続した11〜13個のアミノ酸を含む抗原ペプチドを哺乳動物または鳥類に免疫して得られたポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を使用することができる。
本発明で用いる抗体は、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体の何れでもよく、これらの抗体の作製は定法により行なうことができる。
抗体は、例えば、配列番号2の任意の連続した11〜13個のアミノ酸を含む抗原ペプチドまたはKeyhole limpet hemocyanin等と抗原ペプチドとの複合体を用いて哺乳動物を免疫感作し、該哺乳動物から血液を採取し、採取した血液から抗体を分離・精製することにより得ることができる。本発明では、例えば、マウス、ハムスター、モルモット、ニワトリ、ラット、ウサギ、イヌ、ヤギ、ヒツジ、ウシ等の哺乳動物または鳥類を免疫することができる。免疫感作の方法としては、当業者に公知の通常の免疫感作の方法を用いて、例えば抗原を1回以上投与することにより行うことができる。
抗原投与は、例えば、7から30日、特に12から16日間隔で2または3回投与することができる。投与量は1回につき、例えば抗原約0.05から2mg程度を目安とすることができる。投与経路も特に限定されず、皮下投与、皮内投与、腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与等を適宜選択することができるが、静脈内、腹腔内もしくは皮下に注射することにより投与することが好ましい。また、抗原は適当な緩衝液、例えば完全フロイントアジュバント、RAS〔MPL(Mono phosphoryl Lipid A)+TDM(Synthetic Trehalose Dicorynomycolate)+CWS(Cell Wall Skeleton)アジュバントシステム〕、水酸化アルミニウム等の通常用いられるアジュバントを含有する適当な緩衝液に溶解して用いることができるが、投与経路や条件等によっては、上記したアジュバントは使用しない場合もある。ここでアジュバントとは抗原とともに投与したとき、非特異的にその抗原に対する免疫反応を増強する物質を意味する。
免疫感作した哺乳動物等を0.5から4ケ月間飼育した後、該哺乳動物等の血清を耳静脈等から少量サンプリングし、抗体価を測定することができる。抗体価が上昇してきたら、状況に応じて抗原の投与を適当回数実施する。例えば10μg〜1000μgの抗原を用いて追加免疫を行なうことができる。最後の投与から1〜2ケ月後に免疫感作した哺乳動物から通常の方法により血液を採取して、該血液を、例えば遠心分離、硫酸アンモニウムまたはポリエチレングリコールを用いた沈澱、ゲルろ過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー等のクロマトグラフィー等の通常の方法によって分離・精製することにより、ポリクローナル抗血清として、ポリクローナル抗体を得ることができる。なお抗血清は、たとえば、56℃で30分間処理することによって補体系を不活性化してもよい。
モノクローナル抗体の作製は、当業者に既知の方法により行うことができ、例えば、ハイブリドーマを用いた方法により行うことができる。モノクローナル抗体を産生する細胞株は特に制限されないが、例えば、抗体産生細胞とミエローマ細胞株との細胞融合によりハイブリドーマとして得ることができる。モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、以下のような細胞融合法によって得ることができる。
抗体産生細胞としては、免疫された動物からの脾細胞、リンパ節細胞、Bリンパ球等を使用する。抗原としては、ポリクローナル抗体の場合と同様に配列番号2の任意の連続した11〜13個のアミノ酸を含む抗原ペプチドを使用することができる。免疫される動物としてはマウス、ラット等が使用され、これらの動物への抗原の投与は常法に従って行う。例えば完全フロインドアジュバント、不完全フロインドアジュバントなどのアジュバントと抗原(配列番号2の任意の連続した11〜13個のアミノ酸を含む抗原ペプチド)との懸濁液もしくは乳化液を調製し、これを動物の静脈、皮下、皮内、腹腔内等に数回投与することによって動物を免疫化する。免疫化した動物から抗体産生細胞として例えば脾細胞を取得し、これとミエローマ細胞とをそれ自体公知の方法(G.Kohler et al.,Nature,256 495(1975))により融合することにより、ハイブリドーマを作製することができる。
細胞融合に使用するミエローマ細胞株としては、例えばマウスではP3X63Ag8、P3U1株、Sp2/0株などが挙げられる。細胞融合を行なうに際しては、ポリエチレングリコール、センダイウイルスなどの融合促進剤を用い、細胞融合後のハイブリドーマの選抜にはヒポキサンチン・アミノプテリン・チミジン(HAT)培地を常法に従って使用することができる。細胞融合により得られたハイブリドーマは限界希釈法等によりクローニングすることができる。更に、酵素免疫測定法(ELISA)等によりスクリーニングを行なうことにより、ヒトN−デアセチラーゼ/N−スルホトランスフェラーゼ2と免疫学的に反応しうるモノクローナル抗体を産生する細胞株を得ることができる。
このようにして得られたハイブリドーマから目的とするモノクローナル抗体を製造するには、通常の細胞培養法や腹水形成法により該ハイブリドーマを培養し、培養上清あるいは腹水から該モノクローナル抗体を精製すればよい。培養上清もしくは腹水からのモノクローナル抗体の精製は、常法により行なうことができる。例えば、硫安分画、ゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどを適宜組み合わせて使用できる。
また、抗体がモノクローナル抗体の場合、該モノクローナル抗体のグロブリンタイプは特に限定されず、例えばIgG、IgM、IgA、IgE、IgD等が挙げられる。また、上記したような各種抗体の断片を使用することもできる。抗体の断片としては、F(ab’)2フラグメント、Fab’フラグメント等が挙げられる。
本発明においては、ヒトN−デアセチラーゼ/N−スルホトランスフェラーゼ2と、ヒトN−デアセチラーゼ/N−スルホトランスフェラーゼ2と免疫学的に反応しうる抗体とを反応させることによって、酵素抗体法、免疫組織染色法、免疫ブロット法、直接蛍光抗体法又は間接蛍光抗体法等の分析を行い、ヒトN−デアセチラーゼ/N−スルホトランスフェラーゼ2を検出することができる。これらの分析は、当業者に周知の方法で行なうことができ、その実験条件も当業者ならば適宜選択することができる。
本明細書に引用された文献中の記載は、引用によって本明細書を構成するものとする。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
(方法)
反応系50μl中に、ヒト成人胎盤cDNAライブラリー(Clontech社、U.S.A.)5μ1、5’−CCATGCTCCAGTTGTGGAAGGTGGTAC−3’(配列番号3)の配列を有する短鎖DNA5pmolと5’−GCATTTTGCTGGTATGGGAGGCTGG−3’(配列番号4)の配列を有する短鎖DNA5pmol、PfuTurbo(Stratagene社、U.S.A.)2.5unitsによるPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)を、20mM Tris−HCl(pH8.8)、2mM MgSO4、10mM KCl、10mM(NH4)2SO4、0.1% Triton X−100(登録商標)、0.1mg/ml nuclease−free BSA(ウシ血清アルブミン)、200μM dNTP(2’−デオキシリボヌクレオシド 5’−トリリン酸/dATP、dCTP、dGTP、dTTPの等モル混合)存在下、サーマルサイクラーを用いて、94℃1分を1サイクル、94℃1分−55℃1分−72℃6分を30サイクル、72℃10分を1サイクル行わせ、ヒトNDST2(NCBI/DDBJ/EMBO登録番号#36001)のヌクレオチド番号26から2708までの領域の特異的増幅を行った。反応産物をTris−Acetate−EDTA(TAE)アガロース電気泳動に供し、目的の2683bpの大きさのDNA断片を切り出し、GenecleanIIkit(Qbiogene社、U.S.A.)を用いて精製し、0.1mM EDTA(pH8.0)を含む10mM Tris−HCl(pH7.6)(TE緩衝液)10μl中に回収した。10μlの反応系を用いて、回収したDNA4μlをプラスミドDNA、pPCR−Script Amp SK(+)(Stratagene社、U.S.A.)10ngにStratagene社のプロトコールに従い、ライゲーションした。反応液2μlを用いて、常法により大腸菌XL10−Gold Kanコンピテントセル(Stratagene社、U.S.A.)40μlを形質転換し、50μg/mlアンピシリンを含む1.5%寒天含有LB培地上で、形質転換体のコロニーを選択した。得られた大腸菌のコロニーを50μg/mlアンピシリンを含むLB培地1.5mlに接種し、37℃20時間の振盪培養を行った。得られた培養液を遠心後、大腸菌菌体より、QIAprep Spin Miniprep Kit(Qiagen社、U.S.A.)を用いて、大腸菌が保持するプラスミドDNAを10mM Tris−HCl(pH8.5)100μlに回収した。ベクターDNAに挿入されたDNA断片の塩基配列を常法によりヒトNDST2に特異的な短鎖DNAを用いて確認した。
(結果)
上記の通り、ヒトNDST2のヌクレオチド番号26から2708までの領域の特異的増幅の結果得られた2683bpの大きさのDNA断片をpPCR−Script Amp SK(+)にライゲーション後、大腸菌を形質転換させ、薬剤耐性コロニーの選択を行った。得られた大腸菌のコロニー12個からプラスミドDNAを回収し、目的の2683bpを保持するクローン、pCRhNDST2#5及びpCRhNDST2#7を同定した。ベクターDNAに挿入されたDNA断片の塩基配列の解析を常法によりヒトNDST2に特異的な短鎖DNAを用いて行い、登録されているヒトNDST2(NCBI/DDBJ/EMBO登録番号#36001)の塩基配列と完全に一致していることを確認した。
実施例2:ロブスターL21配列とgp67シグナルペプチドのDNAの調製
25μlの反応系で、バキュロウイルスgp67シグナルペプチドを保持するベクターDNA、pAcSecG2T(Pharmingen社、U.S.A.)250ngを鋳型に5’−GATCGGATCCAACTCCTAAAAAACCGCCACCATGCTGCTAGTAAATCAG−3’(配列番号5)の配列を有する短鎖DNA5pmolと5’−CACGGGTTCAGTTCGAGCTGTCTCCGCAAAGGCAGAATGCGCCGC−3’(配列番号6)の配列を有する短鎖DNA5pmol、Pyrobest(Takara社、日本)1.25unitsによるPCRを20mM Tris−HCl(pH8.3)、10mM KCl、6mM(NH4)2SO4、2mM MgSO4、0.1%Triton X−100、0.001%BSA、200μM dNTP存在下、サーマルサイクラーを用いて、95℃2分を1サイクル、95℃30秒−52.5℃30秒−72℃1分を10サイクル、72℃10分を1サイクル行わせ、ロブスターL21配列(AACTCCTAAAAAACCGCCACC)(配列番号7)とgp67シグナルペプチド38アミノ酸をコードするDNAの特異的増幅を行った。
実施例3:ヒトNDST2の79番から883番までをコードするDNAの調製
25μlの反応系で、ベクター中にヒトNDST2を保持するプラスミドDNA pCRhNDST2#5 250ngを鋳型に5’−GAGACAGCTCGAACTGAACCCGTGG−3’(配列番号8)の配列を有する短鎖DNA 5pmolと5’−CTGGTATGGCGGCCGCAATTGTCAGCCCAGACTGGAATGCTGCAGTTC−3’(配列番号9)の配列を有する短鎖DNA 5pmol、Pyrobest(Takara社、日本)1.25unitsによるPCRを20mM Tris−HCl(pH8.3)、10mM KCl,6mM(NH4)2SO4、2mM MgSO4、0.1%Triton X−100、0.001%BSA、200μM dNTP存在下、サーマルサイクラーを用いて、95℃2分を1サイクル、95℃30秒−52.5℃30秒−72℃5分を20サイクル、72℃10分を1サイクル行わせ、ヒトNDST2の805アミノ酸(79番から883番まで)をコードするDNAの特異的増幅を行った。
実施例4:ロブスターL21配列、gp67シグナルペプチドとヒトNDST2の融合DNAの調製
25μlの反応系で、実施例2で得られた反応液2μlと実施例3で得られた反応液0.5μl中のDNAを鋳型に5’−GATCGGATCCAACTCCTAAAAAACCGCCAC−3’(配列番号10)の配列を有する短鎖DNA5pmolと5’−CTGGTATGGCGGCCGCAATTGTCAGCCCAGACTGGAATGCTGCAGTTC−3’(配列番号11)の配列を有する短鎖DNA5pmol、Pyrobest(Takara社、日本)1.25unitsによるPCRを20mM Tris−HCl(pH8.3)、10mM KCl、6mM(NH4)2SO4、2mM MgSO4、0.1%Triton X−100、0.001%BSA、200μM dNTP存在下、サーマルサイクラーを用いて、95℃2分を1サイクル、95℃30秒−52.5℃30秒−72℃6分を30サイクル、72℃10分を1サイクル行わせ、ロブスターL21配列、gp67シグナルペプチド38アミノ酸とヒトNDST2 805アミノ酸をコードする融合DNAの特異的増幅を行った。
実施例5:ロブスターL21配列、gp67シグナルペプチドとヒトNDST2の融合DNAのベクターDNAへの組み込み
(方法)
実施例4で得られた融合DNAを含む反応液10μl及びベクターDNA、pFastBac−1(Invitrogen社、U.S.A.)1μgに制限酵素BamHIとNotIを10unitsずつ加え、37℃で2時間反応させた。反応産物を実施例1に示した方法に従い、TAEアガロース電気泳動に供し、目的の大きさのDNA断片をGeneclean II kitを用いて精製し、TE緩衝液10μl中に回収した。得られたDNA1μlずつを、DNA Ligation Kit ver.2(Takara社、日本)を用いた4℃、20時間、10μlの反応系で、BamHIとNotIで同時に消化したpFastBac−1に、BamHIとNotIで同時に消化したロブスターL21配列、gp67シグナルペプチド38アミノ酸とヒトNDST2 805アミノ酸をコードする融合DNAをライゲーションした。反応液2μlを用いて、常法により大腸菌DH5αコンピテントセル(Invitrogen社、U.S.A.)40μlを形質転換し、50μg/mlアンピシリンを含む1.5%寒天含有LB培地上で、形質転換体のコロニーを選択した。得られた大腸菌のコロニーから実施例1に示した方法に従い、大腸菌が保持するプラスミドDNAを、10mM Tris−HCl(pH8.5)100μlに回収した。ベクターDNAに挿入されたDNA断片の塩基配列の解析を常法によりヒトNDST2に特異的な短鎖DNAを用いて行った。
(結果)
ロブスターL21配列、gp67シグナルペプチド38アミノ酸とヒトNDST2 805アミノ酸をコードする融合DNAをBamHI及びNotIで消化した断片2577bpとBamHI及びNotIで消化したpFastBac−1のライゲーション産物で形質転換した大腸菌128クローンより目的のDNA断片を保持すると考えられる2クローン(pFB1−GP67hNDST2SOL(79E)#5及びpFB1−GP67hNDST2SOL(79E)#123)を同定した。DNAの塩基配列解析を行い、前記2クローンが予想されるDNAの塩基配列と完全に一致することを確認した。
実施例6:ロブスターL21配列、gp67シグナルペプチドとヒトNDST2の融合DNAのバキュロウイルスゲノムDNAへの組み込み
(方法)
実施例5で得られたDNAを大腸菌DH10BAC(Invitrogen社、U.S.A.)に導入し、Invitrogen社のプロトコールに従い、50μg/mlカナマイシン、7μg/mlゲンタマイシン、10μg/mlテトラサイクリンを含む1.5%寒天含有LB培地上で、形質転換体のコロニーを選択した。
得られた大腸菌のコロニーを50μg/mlカナマイシンを含むTerific−Broth培地(Beckton Dickinson社、U.S.A.)1.5mlに接種し、37℃で20時間の振盪培養を行った。得られた培養液を容量1.5mlのエッペンドルフチューブに移した後、冷却遠心機を用いて、4℃にて8000回転で、2分間遠心して大腸菌菌体を沈澱として回収した。この菌体を10mM EDTA、100μg/ml RNaseAを含む50mM Tris−HCl(pH8.0)150μlに懸濁したのち、1%(w/v)SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)を含む200mM NaOH150μlを加え、緩やかに混和し室温で5分間静置した。次に、3.0M potassium acetate(pH5.5)150μlを加え、良く混和した後、冷却遠心機を用いて、4℃にて15000回転で、10分間遠心して上清画分を回収した。上清450μlにあらかじめTE緩衝液で飽和されているフェノール(Invitrogen社、U.S.A.)450μlを加えて、ボルテックスミキサーにより激しく混和した後、冷却遠心機を用いて、4℃にて、15000回転で、5分間遠心して上層画分を回収した。上層画分400μlにエタノール1mlを加え混和した後、室温で10分間静置した。その後、冷却遠心機を用いて、4℃にて、15000回転で、5分間遠心して上清を除去した後、沈澱に70%(v/v)エタノール1mlを加え混和した後、冷却遠心機を用いて、4℃にて15000回転で、5分間遠心して上清を除去した。残った沈澱に、10mM EDTA、100μg/ml RNaseAを含む50mM Tris−HCl(pH8.0)150μlを加え、懸濁したのち、37℃で20分間反応させた。次に、あらかじめTE緩衝液で飽和されているフェノール(Invitrogen社、U.S.A.)100μlを加えて、ボルテックスミキサーにより激しく混和した後、冷却遠心機を用いて、4℃にて15000回転で、5分間遠心して上層画分を回収した。上層画分100μlにエタノール250μlと3M酢酸ナトリウム(pH5.2)10μlを加え混和した後、冷却遠心機を用いて、4℃にて、15000回転で、5分間遠心して上清を除去した。次に、沈澱に70%(v/v)エタノール1mlを加え混和した後、冷却遠心機を用いて、4℃にて15000回転で、5分間遠心して上清を除去した。残った沈澱に、TE緩衝液100μlを加え、懸濁した。
(結果)
実施例5で得られたDNA pFB1−GP67hNDST2SOL(79E)#123を大腸菌DH10BACに導入し、薬剤耐性及びPCR法を指標に目的のクローン(pFB1−GP67hNDST2SOL(79E)#123−4)を得た。
実施例7:ロブスターL21配列、gp67シグナルペプチドとヒトNDST2の融合DNAを組み込んだバキュロウイルスゲノムDNAのヨトウガ細胞への導入
まず、ヨトウガSf9細胞100万個をSF−900II無血清培地(Invitrogen社、U.S.A.)2mlに懸濁した後、6wellのプレートに移し、28℃で1時間静置し、細胞をプレートに接着させた。次に、実施例6で得られたDNA(バキュロウイルスゲノムDNAに組み込まれたロブスターL21配列、gp67シグナルペプチドとヒトNDST2)10μgをSf−900II無血清培地100μlに希釈したものと、cellfectin(Invitrogen社、U.S.A.)6μlをSf−900II無血清培地100μlに希釈したものを混和し、室温で30分間静置した。あらかじめプレートに接着させたSf9細胞をSf−900II無血清培地2mlで洗浄した後、DNAとcellfectinの混和液200μlにSf−900II無血清培地800μlを混ぜたものを加えた。28℃で5時間静置した後、培地を吸引除去して、新しいSf−900II無血清培地2mlを加えて、さらに28℃で3日間培養したのち、培養上清を回収し、バキュロウイルスのストック液とした。
実施例8:ウイルスの増幅
1000万個のSf9細胞をSF−900II無血清培地10mlに懸濁した後、T−75フラスコにまき、1時間静置した。培地2mlを残して吸引除去し、実施例7で得られたバキュロウイルスのストック液1mlを添加、1時間ゆるやかに震盪させた。その後、SF−900II無血清培地8mlを加え、28℃で3日間培養した。回収した培地を遠心して、細胞を除いた画分をウイルス増幅液とした。
実施例9:ヒトNDST2のヨトウガ細胞における分泌発現
1000万個のSf9またはSf21細胞をSF−900II無血清培地あるいは10%血清含有Grace Insect Medium(Invitrogen社)10mlに懸濁した後、T−75フラスコにまき、1時間静置した。培地2mlを残して(あるいは全て)吸引除去し、実施例7で得られたバキュロウイルスのストック液あるいは実施例8で得られたウイルス増幅液1ml(あるいは3ml)を添加、1時間ゆるやかに震盪させた。その後、SF−900II無血清培地あるいは10%血清添加 Grace Insect Medium(Invitrogen社)8mlを加え、28℃で3日間培養した。
実施例10:培養上清の濃縮
回収した培地を遠心して、細胞を除いた画分を培養上清とした。培養上清をアミコンUltra−15 30000MWCO(Millipore社、U.S.A.)にかけ、冷却遠心機を用いた遠心により分子量3万以上の画分を回収し、濃縮培養上清とした。
より詳細には、ウイルスストック液をSf9(無血清培地)、Sf9(血清含有培地)、Sf21(血清含有培地)に感染させ、感染後得られた培養上清を、アミコンUltra−15 30000MWCOにより、20.4倍、20.0倍、16.4倍に濃縮した。また、コントロールとして挿入DNA断片を保持しないpFastBac−1に由来するウイルスストック液をそれぞれの細胞に感染させ、15.2倍、21.7倍、16.7倍に濃縮した培養上清を得た。
比較例1:ヒトNDST2のプロテインA含有ベクターへの組み込み
25μlの反応系で、ベクター中にヒトNDST2を保持するプラスミドDNA pCRhNDST2#5 250ngを鋳型に5’−CACGAATTCCAAGGCCAAGGAACCCTTGCC−3’(配列番号12)の配列を有する短鎖DNA5pmolと5’−CTGGTATGGCGGCCGCAATTGTCAGCCCAGACTGGAATGCTGCAGTTC−3’(配列番号13)の配列を有する短鎖DNA5pmol、Pyrobest(Takara社、日本)1.25unitsによるPCRを20mM Tris−HCl(pH8.3)、10mM KCl、6mM(NH4)2SO4、2mM MgSO4、0.1%Triton X−100、0.001%BSA、200μM dNTP存在下、サーマルサイクラーを用いて、95℃2分を1サイクル、95℃30秒−52.5℃30秒−72℃5分を25サイクル、72℃10分を1サイクル行わせ、ヒトNDST2の(43番から883番までの)841アミノ酸をコードするDNAの調製を行った。得られたDNAを含む反応液10μlに制限酵素EcoRIとMunIを10unitsずつ加え、37℃で2時間反応させた。またベクターDNA、pRK5F10PROTA1μgに制限酵素EcoRIを10units加え、37℃で2時間反応させたのちに、牛腸由来のAlkaline−phosphataseを1.4unitsを加え、37℃で30分間脱リン酸化反応を行った。反応産物を実施例1に示した方法に従い、TAEアガロース電気泳動に供し、目的の大きさのDNA断片をGenecleanII kitを用いて精製し、TE緩衝液10μl中に回収した。得られたDNA1μlずつを用いて、DNA Ligation Kit ver.2(TAKARA社、日本)を用いて、4℃20時間でEcoRI消化後、脱リン酸化されたpRK5F10PROTAに、EcoRIとMunIで同時に消化したヒトNDST2の(43番から883番までの)841アミノ酸をコードするDNAを挿入した。反応産物を常法に従い、大腸菌DH5αコンピテントセル(Invitrogen社、U.S.A.)に形質転換し、アンピシリン耐性コロニーを選択したのち、振盪培養で得られた大腸菌菌体より、プラスミド溶液を回収した。ベクターDNAに挿入されたDNA断片の塩基配列の解析を常法によりヒトNDST2に特異的な短鎖DNAを用いて行った。
比較例2:ヒトNDST2のサル細胞COS−7における分泌発現
100万個のサルCOS−7細胞を10%非働化牛胎児血清、0.1mg/mlストレプトマイシン、20units/mlペニシリンを含むDMEM(high−glucose)培地(血清含有DMEM培地)12mlに懸濁した後、10cmの培養ディッシュに移し、5%CO2存在下37℃で24時間培養した。
次に、比較例1で得られたDNA4μgをDMEM(high−glucose)培地300μlに希釈したものに、Polyfect(Qiagen社、U.S.A.)25μlを混和し、室温で10分間静置した。COS−7細胞をPBS(リン酸緩衝生理食塩水)(日水製薬株式会社、日本)12mlで洗浄し、除去した後、DNAとPolyfectの混和液325μlに血清含有DMEM培地11mlを混ぜたものを加え、5%CO2存在下37℃で72時間培養した。培養終了後、培養液を15mlのポリプロピレン製コニカル・チューブ35−2196(Beckton Dickinson社、U.S.A.)に移したのち、冷却遠心機を用いて、9500回転で10分間遠心した後、培養上清10mlを新しい15mlのコニカル・チューブに移した。そこへ、IgG−Sepharose(Amersham−Bioscience社、Sweden)100μlを加え、小型回転攪拌機RT−5(タイテック社、日本)により、4℃で16時間の回転攪拌を行った。攪拌終了後、冷却遠心機を用いて、2400回転で5分間の遠心をした後、上清をピペットにより除去した。沈澱しているIgG−Sepharoseに、20%グリセロールを含む50mM Tris−HCl(pH7.4)10mlを加え、小型回転攪拌機により、4℃で5分間の回転攪拌を行った。攪拌終了後、冷却遠心機を用いて、2400回転で5分間の遠心をした後、上清をピペットにより除去した。そこへ、20%グリセロールを含む50mM Tris−HCl(pH7.4)10mlを加え、小型回転攪拌機により、4℃で5分間の回転攪拌を行った。
攪拌終了後、冷却遠心機を用いて、2400回転で5分間の遠心をした後、上清をピペットにより除去し、最終的にIgG−Sepharoseを20%グリセロールを含む50mM Tris−HCl(pH7.4)100μlに懸濁した。
実施例10:酵素活性の測定
実施例9で得られた濃縮培養上清と比較例2で得られたIgG−Sepharose懸濁液の酵素活性を以下の方法で検出した。
脱N−アセチル化酵素活性:濃縮培養上清10μlあるいはIgG−Sepharose懸濁液10μlをあらかじめ準備してあるトリチウム化N−アセチルヘパロザン(260000cpm)と50mM MES(2−モルホリノエタンスルホン酸)(pH6.5)、10mM MnCl2、1%Triton X−100存在下、50μlの反応系で37℃で1時間反応させた。0.2N塩酸25μl、0.1N酢酸50μl、水50μlの混合液を加えて反応を停止させた後、酢酸エチル250μlを使った抽出を3回行い、反応産物である「トリチウム」酢酸を回収した。
N−硫酸転移酵素活性:濃縮培養上清10μlあるいはIgG−Sepharose懸濁液10μlを脱N−硫酸化ヘパリン(Sigma社、U.S.A.)25μgと2.5nmol 35S−PAPS(3’−phosphoadenylyl sulfate)(110000cpm)を50mM HEPES(N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N‘−2−エタンスルホン酸)(pH7.2)、10mM MgCl2、1mM MnCl2、1%Triton X−100存在下、50μlの反応系で37℃1時間反応させた。100mM EDTA950μlを加えて反応を停止させた。次に、カラムに充填後、あらかじめ250mM塩化ナトリウムを含む20mM酢酸ナトリウム(pH6.0)2.5mlで平衡化してあるDEAE−Sepharose(Amersham−Bioscience社、Sweden)0.5ml(ベッドボリューム)に前記サンプルを供し、同カラムを250mM塩化ナトリウムを含む20mM酢酸ナトリウム(pH6.0)14mlで洗浄後、1M塩化ナトリウムを含む20mM酢酸ナトリウム(pH6.0)2mlで35S−硫酸が転移したヘパリンを溶出した。
上記の方法により酵素活性の検出を行った。コントロールとしてpFastBac−1に由来するウイルス由来の培養上清の活性を差分し、培養上清1ml当たりの活性を算出した。結果を以下の表1に示す。表1に示す結果より本発明の発現系を用いることにより目的の酵素を大量に製造できることが分かる。
25μlの反応系で、ベクター中にヒトNDST2を保持するプラスミドDNA pCRhNDST2#5 250ngを鋳型に5’−GAGACAGCTCGAACTGAACCCGTGG−3’(配列番号8)の配列を有する短鎖DNA 5pmolと5’−GAAGCAGGGCGGCCGCAATTGCTAATGGTGATGGTGATGATGGCCCAGACTGGAATGCTGCAGTTCTTC−3’(配列番号14)の配列を有する短鎖DNA 5pmol、Pyrobest(Takara社、日本)1.25unitsによるPCRを20mM Tris−HCl(pH8.3)、10mM KCl,6mM(NH4)2SO4、2mM MgSO4、0.1%Triton X−100、0.001%BSA、200μM dNTP存在下、サーマルサイクラーを用いて、95℃2分を1サイクル、95℃30秒−52.5℃30秒−72℃5分を20サイクル、72℃10分を1サイクル行わせ、ヒトNDST2の805アミノ酸(79番から883番まで)をコードするDNAの特異的増幅を行った。
実施例12:ロブスターL21配列、gp67シグナルペプチドとC末端に6xHISタグがついたヒトNDST2の融合DNAの調製
25μlの反応系で、実施例3で得られた反応液2ulと実施例11で得られた反応液0.5μl中のDNAを鋳型に5’−GATCGGATCCAACTCCTAAAAAACCGCCAC−3’(配列番号10)の配列を有する短鎖DNA5pmolと
5’−GAAGCAGGGCGGCCGCAATTGCTAATGGTGATGGTGATGATGGCCCAGACTGGAATGCTGCAGTTCTTC−3’(配列番号14)の配列を有する短鎖DNA5pmol、Pyrobest(Takara社、日本)1.25unitsによるPCRを20mM Tris−HCl(pH8.3)、10mM KCl、6mM(NH4)2SO4、2mM MgSO4、0.1%Triton X−100、0.001%BSA、200μM dNTP存在下、サーマルサイクラーを用いて、95℃2分を1サイクル、95℃30秒−52.5℃30秒−72℃6分を30サイクル、72℃10分を1サイクル行わせ、ロブスターL21配列、gp67シグナルペプチド38アミノ酸とC末端に6xHISタグがついたヒトNDST2 805アミノ酸をコードする融合DNAの特異的増幅を行った。
実施例13:ロブスターL21配列、gp67シグナルペプチドとC末端に6xHISタグがついたヒトNDST2の融合DNAのベクターDNAへの組み込み
(方法)
実施例12で得られた融合DNAを含む反応液10μl及びベクターDNA、pFastBac−1(Invitrogen社、U.S.A.)1μgに制限酵素BamHIとNotIを10unitsずつ加え、37℃で2時間反応させた。反応産物を実施例1に示した方法に従い、TAEアガロース電気泳動に供し、目的の大きさのDNA断片をGeneclean II kitを用いて精製し、TE緩衝液10μl中に回収した。得られたDNA1μlずつを、DNA Ligation Kit ver.2(Takara社、日本)を用いた4℃、20時間、10μlの反応系で、BamHIとNotIで同時に消化したpFastBac−1に、BamHIとNotIで同時に消化したロブスターL21配列、gp67シグナルペプチド38アミノ酸とC末に6xHISタグがついたヒトNDST2 805アミノ酸をコードする融合DNAをライゲーションした。反応液2μlを用いて、常法により大腸菌DH5αコンピテントセル(Invitrogen社、U.S.A.)40μlを形質転換し、50μg/mlアンピシリンを含む1.5%寒天含有LB培地上で、形質転換体のコロニーを選択した。得られた大腸菌のコロニーから実施例1に示した方法に従い、大腸菌が保持するプラスミドDNAを、10mM Tris−HCl(pH8.5)100μlに回収した。ベクターDNAに挿入されたDNA断片の塩基配列の解析を常法によりヒトNDST2に特異的な短鎖DNAを用いて行った。
(結果)
ライゲーション産物で形質転換した大腸菌のうち、目的のDNA断片を保持すると考えられるクローンを同定し、そのDNAの塩基配列の確認を行った。
実施例14:ロブスターL21配列、gp67シグナルペプチドとC末端に6xHISタグがついたヒトNDST2の融合DNAのバキュロウイルスゲノムDNAへの組み込み
(方法)
実施例13で得られたDNAを大腸菌DH10BAC(Invitrogen社、U.S.A.)に導入し、実施例6に示した方法によりDNAを回収した。
(結果)
実施例13で得られたDNAより目的のクローン(pGP67sp−hNDST2(79E)123HIS−FB1/10B#2)を得た。
実施例15:ロブスターL21配列、gp67シグナルペプチドとC末に6xHISタグがついたヒトNDST2の融合DNAを組み込んだバキュロウイルスゲノムDNAのヨトウガ細胞への導入
実施例14で得られたDNA(バキュロウイルスゲノムDNAに組み込まれたロブスターL21配列、gp67シグナルペプチドとC末に6xHISタグがついたヒトNDST2)を用いて、実施例7に示した方法に従い、バキュロウイルスのストック液とした。
実施例16:ロブスターL21配列とミツバチメリチンシグナルペプチドのDNAの調製
25μlの反応系で、ミツバチメリチンシグナルペプチドを保持するベクターDNA、pMelBac−A(Invitrogen社、U.S.A.)250ngを鋳型に5’−AACTCCTAAAAAACCGCCACCATGAAATTCTTAGTCAACGTTG−3’(配列番号15)の配列を有する短鎖DNA 5pmolと5’−CACGGGTTCAGTTCGAGCTGTCTCCGCATAGATGTAAGAAATGTATAC−3’(配列番号16)の配列を有する短鎖DNA 5pmol、Pyrobest(Takara社、日本)1.25unitsによるPCRを20mM Tris−HCl(pH8.3)、10mM KCl、6mM(NH4)2SO4、2mM MgSO4、0.1% Triton X−100、0.001% BSA(ウシ血清アルブミン)、200μM dNTP存在下、サーマルサイクラーを用いて、95℃、2分を1サイクル、95℃、30秒→52.5℃、30秒→72℃、1分を10サイクル、72℃、10分を1サイクル行わせ、ロブスターL21配列(AACTCCTAAAAAACCGCCACC)(配列番号7)とメリチンシグナルペプチド21アミノ酸をコードするDNAの特異的増幅を行った。
実施例17:ロブスターL21配列、メリチンシグナルペプチドとヒトNDST2の融合DNAの調製
25μlの反応系で、実施例16で得られた反応液2ulと実施例3で得られた反応液0.5ul中のDNAを鋳型に実施例4に示した方法により、ロブスターL21配列、メリチンシグナルペプチド21アミノ酸とヒトNDST2 805アミノ酸をコードする融合DNAの特異的増幅を行った。
実施例18:ロブスターL21配列、メリチンシグナルペプチドとヒトNDST2の融合DNAのベクターDNAへの組み込み
(方法)
実施例17で得られた融合DNAを用いて、実施例5に示した方法によりプラスミドDNAを回収した。
(結果)
ライゲーション産物で形質転換した大腸菌のうち、目的のDNA断片を保持すると考えられるクローンを同定し、そのDNAの塩基配列の確認を行った。
実施例19:ロブスターL21配列、メリチンシグナルペプチドとヒトNDST2の融合DNAのバキュロウイルスゲノムDNAへの組み込み
(方法)
実施例18で得られたDNAを大腸菌DH10BAC(Invitrogen社、U.S.A.)に導入し、実施例6に示した方法によりDNAを回収した。
実施例20:ロブスターL21配列、メリチンシグナルペブチドとヒトNDST2の融合DNAを組み込んだバキュロウイルスゲノムDNAのヨトウガ細胞への導入
実施例19で得られたDNA(バキュロウイルスゲノムDNAに組み込まれたロブスターL21配列、メリチンシグナルペプチドとヒトNDST2)を用いて、実施例7に示した方法に従い、バキュロウイルスのストック液とした。
実施例21:抗ヒトNDST2抗体を含む血清の取得
ヒトNDST2のアミノ酸828番から840番までの配列(LGRSKGRRYPDMD)(配列番号17)及び873番から883番までの配列(LREELQHSSLG)(配列番号18)のアミノ末端にそれぞれシステイン残基を付加したペプチド1(CLGRSKGRRYPDMD)(配列番号19)及びペプチド2(CLREELQHSSLG)(配列番号20)をFmoc法により市販のペプチド合成機を用いて合成した。得られたペプチドそれぞれ5mgを100mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)4.5mlに懸濁した後、m−maleimidobenzoyl−N−hydroxy succinimide esterを使用して、keyhole limpet hemocyanin(KLH)0.5mlと4℃一晩回転攪拌により、共有結合させた。公知の方法により、得られたKLH−ペプチド複合体をウサギに免疫後、血清画分を得た。
実施例22:ヒトNDST2のペプチド固定化カラムの作成とそれを用いた抗ヒトNDST2精製抗体の取得
(方法)
DMSO(ジメチルスルホキシド)に溶解したペプチド1及び2をそれぞれ、Epoxy−activated Sepharose 6B(Amersham Bioscience社)に同製品の実験手順に従って固定化し、ペプチド固定化樹脂とする。ペプチド固定化樹脂0.4mlをTBSで平衡化した後、クロマトカラム容器に充填し、それぞれのペプチドで免疫したウサギより得られた血清10mlと混和し、4℃で一晩回転攪拌した。クロマトカラム容器を垂直に固定後、0.15M NaClを含むTris−HCl緩衝液(pH7.5)10ml、1M NaCl及び1% Triton X−100を含むTris−HCl緩衝液(pH7.5)20ml、0.15M NaClを含むTris−HCl緩衝液(pH7.5)20ml、0.15M NaCl 10mlで順次洗浄後、0.1M Glycine−HCl(pH2.5)1mlで溶出させた。溶出された画分に1M Tris 50μlを加え中和し、抗ヒトNDST2精製抗体の溶液とした。
(結果)
KLH−ペプチド1複合体で免疫したウサギ血清画分を、ペプチド1固定化カラムにかけ、溶出画分として、抗hNDST2#1を得た。同様にKLH−ペプチド2複合体で免疫したウサギ血清画分より、抗hNDST2#2を得た。
実施例23:精製抗ヒトNDST2抗体を用いたヨトウガ細胞中のヒトNDST2の検出
培養上清とその1/4容の5xSDS−PAGE sample bufferを混ぜ、100℃5分処理後、5%ポリアクリルアミド電気泳動に供した。泳動後、公知の方法により、ポリアクリルアミドゲル中の蛋白質をPVDF膜に転写した。転写された膜は膜洗浄液(1%スキムミルク及び0.1% Tween−20を含むリン酸緩衝液)100ml中で1時間振盪した。膜を抗ヒトNDST2精製抗体#1 12.6μgあるいは#2 16.6μgが溶解した膜洗浄液5ml中で1時間振盪した。膜は膜洗浄液100mlにて10分間3回洗浄した。膜をHorseradish Peroxidase結合型ヒツジ抗ウサギ抗体0.4μgが溶解した膜洗浄液5ml中で1時間振盪した。膜は膜洗浄液100mlにて10分間3回洗浄した。膜を蛍光発色試薬(例えば、Supersignal West Dura Substrate、Pierce社、U.S.A.)とインキュベーション後、蛍光をX線フィルムにて検出した。
上記の方法により、ウイルスのストック液を含む培養上清中でのhNDST2の検出を行った。まず、ロブスターL21配列、gp67シグナルペプチドとヒトNDST2の融合DNAのベクターに由来するウイルス増幅液約3mlを感染させたSf21細胞(血清含有培地)の培養上清1μl(レーン2)中でのhNDST2の検出を行った。コントロールとして、pFastBac−1に由来する培養上清1μl(レーン1)を用いた。抗hNDST2#1を用いた結果を以下の図1(A)に、抗hNDST2#2を用いた結果を以下の図1(B)に示す。図1に示す結果により、抗hNDST2#1を用いても抗hNDST2#2を用いても、培養上清中の目的の酵素が検出できることが分かった。次に、ロブスターL21配列、gp67シグナルペプチドとC末に6xHISタグがついたヒトNDST2の融合DNAのベクターに由来するウイルスストック液14μl(レーン2)中及びロブスターL21配列、メリチンシグナルペプチドとヒトNDST2の融合DNAのベクターに由来するウイルスストック液14μl(レーン1)中でのhNDST2の検出を行った。コントロールとして、ロブスターL21配列、gp67シグナルペプチドとヒトNDST2の融合DNAのベクターに由来するウイルスストック液14μl(レーン3)及びベクターDNAを導入していない細胞に由来するウイルスストック液14μl(レーン4)を用いた。抗hNDST2#1を用いた結果を図2に示す。図2に示す結果により、ロブスターL21配列、gp67シグナルペプチドとC末に6xHISタグがついたヒトNDST2の融合DNAのベクターに由来するウイルスストック液中及びロブスターL21配列、メリチンシグナルペプチドとヒトNDST2の融合DNAのベクターに由来するウイルスストック液中に、ロブスターL21配列、gp67シグナルペプチドとヒトNDST2の融合DNAのベクターに由来するウイルスストック液中と同様に目的の酵素が検出できることが分かった。
本発明により製造される膜貫通領域のN末側配列を除去したN−デアセチラーゼ/N−スルホトランスフェラーゼ2(NDST2)は可溶性タンパク質であり、脱N−アセチル化酵素活性とN−硫酸転移酵素活性の両方の活性を併せ持つため、種々の用途に使用しうる。
すなわち、NDST2は、生体内でN−アセチルヘパロザンからヘパリン/ヘパラン硫酸が生合成される修飾反応における最初のステップであるアセチル基を硫酸基に変換する反応を触媒するので、可溶性NDST2が本発明により容易かつ大量に得られれば、大腸菌を用いて製造できるN−アセチルヘパロザンを原料としてヘパリン/ヘパラン硫酸及びその類縁糖鎖(ヘパリン様糖鎖)を大量合成する際に利用することができる。例えば、N−アセチルヘパロザンにNDST2を作用させて、それ自身抗プロテアーゼ活性や抗凝固活性を有することが知られているN−サルファミノヘパロザンを合成することができ、さらにエピメラーゼ、0−スルフォトランスフェラーゼ等を用いてC5−エピメリ化、2−0−硫酸化、6−0−硫酸化、3−0−硫酸化を行なうことによってヘパリン/ヘパラン硫酸及びその類縁糖鎖を合成することができる。ヘパリン様糖鎖は、その抗凝固活性を利用してヘパリン/ヘパラン硫酸と同様に医薬品、医療機器・用具への抗血栓処理に利用できるばかりでなく、ヘパリン/ヘパラン硫酸結合タンパク質(例えば細胞増殖因子、細胞接着因子、血液凝固関連タンパク質など)の機能解明や、これらのタンパク質が関連した疾病の診断にも利用可能である。
Claims (10)
- 少なくともバキュロウイルス発現ベクター内で機能しうるシグナルペプチドをコードするDNAと、その下流に連結された以下の(a)または(b)の膜貫通領域のN末側配列を除去したヒトN-デアセチラーゼ/N-スルホトランスフェラーゼ2をコードするDNAとを含み、さらにコーディング配列の発現を促進させる機能を有する非翻訳リーダー配列を含むトランスファーベクターであって、
上記シグナルペプチドが、バキュロウイルス由来のシグナルペプチドであるgp67、カイコ由来のシグナルペプチドであるボンビキシン・シグナルペプチド、又はミツバチ由来のシグナルペプチドであるメリチン・シグナルペプチドであり、上記非翻訳リーダー配列がロブスターL21DNAである、上記のトランスファーベクター。
(a)配列番号2記載の79番から883番までのアミノ酸配列からなるタンパク質、
(b)(a)のタンパク質において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入または転位したアミノ酸配列からなり、かつ、N-デアセチラーゼ活性とN-スルホトランスフェラーゼ活性とを有するタンパク質: - ヒトN-デアセチラーゼ/N-スルホトランスフェラーゼ2をコードするDNAの下流に、さらにヒスチジン・タグに対応するDNAを有する、請求項1に記載のトランスファーベクター。
- コーディング配列の発現を促進させる機能を有する非翻訳リーダー配列、少なくともバキュロウイルス発現ベクター内で機能しうるシグナルペプチドをコードするDNA、並びにヒトN-デアセチラーゼ/N-スルホトランスフェラーゼ2の79番から883番までのアミノ酸をコードするDNA又は該DNAにおいて1若しくは数個のヌクレオチドの欠失、挿入若しくは置換を有するDNAであって、ヒトN-デアセチラーゼ/N-スルホトランスフェラーゼ2と同等の酵素活性を示すタンパク質をコードするDNAを、この順で5’から3’方向に有するDNA断片をバキュロウイルスDNAへ組み込んで得られる、組換えバキュロウイルス発現ベクターであって、
上記非翻訳リーダー配列がロブスターL21DNAであって、上記シグナルペプチドが、バキュロウイルス由来のシグナルペプチドであるgp67、カイコ由来のシグナルペプチドであるボンビキシン・シグナルペプチド、又はミツバチ由来のシグナルペプチドであるメリチン・シグナルペプチドである、上記の組換えバキュロウイルス発現ベクター。 - DNA断片のバキュロウイルスDNAへの組み込みが、該DNA断片とバキュロウイルスDNAの多核体遺伝子との相同組換えによって行なわれる、請求項3記載の組換えバキュロウイルス発現ベクター。
- 請求項3又は4のいずれかに記載の組換えバキュロウイルス発現ベクターを有する昆虫細胞。
- ヨトウガ細胞である、請求項5に記載の細胞。
- 請求項3に記載の組換えバキュロウイルス発現ベクターを有する昆虫細胞を培養し、膜貫通領域のN末側配列を除去したヒトN-デアセチラーゼ/N-スルホトランスフェラーゼ2を分泌発現させることを含む、ヒトN-デアセチラーゼ/N-スルホトランスフェラーゼ2の製造方法。
- 昆虫細胞を血清含有培地で培養する、請求項7に記載の方法。
- 以下の(a)または(b)の膜貫通領域のN末側配列を除去したヒトN-デアセチラーゼ/N-スルホトランスフェラーゼ2と、配列番号17又は配列番号18に記載のアミノ酸配列を含む抗原ペプチドを哺乳動物または鳥類に免疫して得られたポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体とを反応させる工程を含む、ヒトN-デアセチラーゼ/N-スルホトランスフェラーゼ2の検出方法。
(a)配列番号2記載の79番から883番までのアミノ酸配列からなるタンパク質、
(b)(a)のタンパク質において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入または転位したアミノ酸配列からなり、かつ、N-デアセチラーゼ活性とN-スルホトランスフェラーゼ活性とを有するタンパク質: - 配列番号17又は配列番号18に記載のアミノ酸配列を含む抗原ペプチドが、配列番号19又は配列番号20に記載のアミノ酸配列からなる抗原ペプチドである、請求項9に記載にヒトN-デアセチラーゼ/N-スルホトランスフェラーゼ2の検出方法。
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