JP4719726B2 - 多層フィルム及び多層フィルムを用いた薬剤容器 - Google Patents
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しかし、ある種の薬剤は、ポリエチレンやポリプロピレンに吸着されやすく、薬剤容器に保存されている薬剤の濃度低下が問題となっている。
環状オレフィン系樹脂は、耐熱性、耐滅菌性、及び耐薬品性に優れ、薬剤溶液の吸収が少ないほか、蒸気透過率が低くガスバリア性に優れており、薬剤容器の多層フィルムにおいて、ガスの出入りを防ぐバリア層での使用が注目されている。
本発明の多層フィルム4は、図1に示すように、バリア層3と、シール層1との間に、接着層2を少なくとも有する多層フィルムである。
また、該多層フィルムは、上記シール層を、最内面とした、医療容器の形成に使用され、薬液等を封入することが好ましい。
バリア層3は、環状オレフィン系樹脂と、熱可塑性エラストマーとを含む混合樹脂を用いてなるものである。
また、環状オレフィン樹脂の市販品として、ティコナ社製の「TOPAS(登録商標)」等が挙げられる。
中でも、水素添加をしたポリスチレン系エラストマーである、水素添加スチレン−ブタジエンエラストマーや、水素添加スチレン−イソプレンエラストマー等は、柔軟性、接着性、透明性、上記した環状オレフィン系樹脂への分散性、耐薬品性などに優れており、本発明での使用が好ましい。
接着層2は、環状オレフィン系樹脂と、熱可塑性エラストマーとを含む混合樹脂を用いてなるものである。
該接着層2においては、環状オレフィン系樹脂の含有率が5〜70質量%である。環状オレフィンの含有率が5質量%以上であると、シール層との密着性が良好であり、また70質量%以下であると、医療容器製造過程において行われる121℃高圧蒸気滅菌後に層間剥離を起こさない。更に、環状オレフィン系樹脂の含有率が60質量%以上であると、環状オレフィン系樹脂の有するバリア性能が確保される。従って、接着層2における環状オレフィン系樹脂の含有率は特に60質量%以上70質量%以下であることが好ましい。
該接着層2においては、熱可塑性エラストマーの含有率は30〜95質量%である。熱可塑性エラストマーの含有率が30質量%以上であると接着層としての好適な接着性を得ることができ、含有率が95質量%以下であれば、バリア層と接着層との親和性を失うことなく、接着が可能である。特に、環状オレフィン系樹脂との関係を考慮すると、熱可塑性エラストマーの含有率は30〜40質量%であることが好ましい。
シール層1は、オレフィン系樹脂を用いてなるものである。
シール層1に使用されるオレフィン系樹脂としては、医薬的に認可されており、薬剤との接触時に溶出する成分を含有しないこと、高温での滅菌操作に耐えうる耐ブロッキング性を有すること等の観点より、プロピレンとエチレン又はα−オレフィンとの共重合体、ポリプロピレンとポリエチレンのブレンド等を使用することが好ましい。
シール層の厚みが5μm以上であるとシール層として好適なシール性を得られ、80μm以下であると、薬剤がシール層1に吸着される量が抑制され、多層フィルムにおいての薬剤吸着抑制性能を維持することが可能である。
多層フィルムは、共押出しインフレーション法、共押出しTダイ法等、公知の方法を採用して成形することができる。
本発明の薬剤容器は、前記多層フィルムにより製造され、多層フィルムにおけるオレフィン系樹脂からなるシール層が最内面に配置されているものである。
一例を図2に示す。薬剤容器5は、本発明の多層フィルム2枚を通常の方法で断裁し、それぞれのシール層が最内面となるように重ね合わせて、その周縁部6をヒートシールにより接着し、その際、該周縁部6に口部材7をヒートシール等の手段を用いて取り付けることにより、製造される。
本発明の薬剤容器の製造法は、前記の方法に限定するものではなく、例えば、多層フィルムのシール層を最内面としたチューブ状フィルムを成形した上で、周縁部6をヒートシールすることで製造することも可能である。
また、バリア層及び接着層に、環状オレフィン系樹脂を使用することで、各層に薬剤吸着抑制効果が得られるだけでなく、高いガスバリア性を発現し、且つ、熱可塑性エラストマーを使用することで、各層に柔軟性を付与した。
更に、薬剤容器において最内面に配置され、溶液等に触れるシール層には、耐熱性に優れ、医薬的に認可されているオレフィン系樹脂を使用しており、耐熱性及び医療材料としての適合性にも優れている。
なお、本発明の多層フィルムは、所望の物性を付与するために、柔軟層、耐熱層等、別の層を追加することもできる。例えば、柔軟層であれば、オレフィン系樹脂とエラストマーとを主成分とし、耐熱層であれば、融点が110℃以上のオレフィン系樹脂を主成分とするのが好ましい。
また、各実施例、比較例での諸物性の測定は次の方法による。
高圧蒸気滅菌前、及び後の多層フィルムから25mm×150mmの短冊状に切り出し、両面に同じ大きさの二軸延伸PETフィルム(厚さ50μm)を接着したものをサンプルとした。引張試験機を用い、サンプルを常温にて300mm/分のスピードで180°剥離し、引張応力と剥離面の目視観察により、以下の基準で判定した。
○:最大引張応力1kgf/25mm以上、かつ、剥離面が凝集剥離している。
×:最大引張応力1kgf/25mm未満、又は、剥離面が界面剥離している。
―:測定不能
多層フィルムを袋状にヒートシールし、内部に酢酸を封止して、更にアルミバッグに封入した。常温で1カ月間放置した後アルミバッグを開封して、酢酸臭の有無を官能試験にて確認し、以下の基準で判定した。
○:酢酸臭を感じなかった。
×:刺激的な酢酸臭を感じた。
特開2001−327575号公報記載の方法に倣って行った。
まず、多層フィルムシートをヒートシールして貼り合わせ、袋状の容器を作成した。
次に、酢酸ブロムヘキシン0.2%、パラオキシ安息香酸メチル(安定剤)0.15%、プロピレングリコール(溶解補助剤)3.0%、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油−60(界面活性剤)0.1%を混合して製剤をつくり、クエン酸を用いて、pHを2.5又は3.0に調整し、0.45μmのフィルターで濾過して、市販の塩酸ブロムヘキシン吸入液剤と同様の液剤を調製した。
上記で作成した容器に、各々塩酸ブロムヘキシン含有液剤を2mLずつ封入し、40℃で3週間保存した。これら各サンプル中における塩酸ブロムヘキシンの含量を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定した。HPLCは以下の測定条件で行った。
検出器 ・・・紫外吸光光度計(測定波長:254nm)
カラム ・・・Develosil Packed Column ODS−HG−5(4.6×150mm)
カラム温度 ・・・40℃付近の一定温度
移動相 ・・・25mMリン酸−ナトリウム緩衝溶液(リン酸でpH2.5に調整。5mMラウリル酸ナトリウムを含む):アセトニトリル(1:1)
移動相流量 ・・・1.0mL/min
内部標準物質 ・・・パラオキシ安息香酸ブチル
○:塩酸ブロムヘキシン含量が95%以上
×:塩酸ブロムヘキシン含量が95%以下
樹脂(A):環状オレフィン系樹脂系樹脂「TOPAS(ティコナ社製)」(Tg80℃、密度1.02g/cm3、メルトフローレート(MFR)32g/10mim(260℃))
樹脂(B):水素添加スチレン−ブタジエンエラストマー(Tg80℃、密度0.89g/cm3、MFR3.5g/10min(230℃))
樹脂(C):線状低密度ポリエチレン樹脂(MP115℃、密度0.921g/cm3、MFR2.5g/min(190℃))
樹脂(D):プロピレン−αオレフィン樹脂「ゼラス7023(三菱化学製)」(密度0.89g/cm3、MFR2g/min(230℃))
バリア層として、樹脂(A)と樹脂(B)が、樹脂(A)80質量%、樹脂(B)20質量%の割合で含有される混合樹脂を用い、接着層として、樹脂(A)と樹脂(B)が、樹脂(A)10質量%、樹脂(B)90質量%の割合で含有される混合樹脂を用い、シール層として、樹脂(D)を用い、以上の樹脂を押出機を用いて溶融させ、インフレーション装置を用いて、多層フィルムを成形し、評価を行った。
実施例1において、接着層における、樹脂(A)と樹脂(B)の混合率を樹脂(A)60質量%、樹脂(B)40質量%に変えた他は同様にして、多層フィルムを成形し、評価を行った。
実施例2において、バリア層における、樹脂(A)と樹脂(B)の混合率を、樹脂(A)60質量%、樹脂(B)40質量%に変えた他は同様にして、多層フィルムを成形し、評価を行った。
実施例1において、バリア層における、樹脂(A)と樹脂(B)の混合率を、樹脂(A)80質量%、樹脂(B)20質量%の割合とし、接着層における、樹脂(A)と樹脂(B)の混合率を、樹脂(A)80質量%、樹脂(B)20質量%に変えた他は同様にして、多層フィルムを成形し、評価を行った。
実施例1において、バリア層における、樹脂(A)と樹脂(B)の混合率を、樹脂(A)90質量%、樹脂(B)10質量%の割合とし、接着層における、樹脂(A)と樹脂(B)の混合率を、樹脂(A)60質量%、樹脂(B)40質量%に変えた他は同様にして、多層フィルムを成形し、評価を行った。
実施例1において、バリア層における、樹脂(A)と樹脂(B)の混合率を、樹脂(A)50質量%、樹脂(B)50質量%の割合とし、接着層における、樹脂(A)と樹脂(B)の混合率を、樹脂(A)50質量%、樹脂(B)50質量%に変えた他は同様にして、多層フィルムを成形し、評価を行った。
実施例1において、バリア層に使用する樹脂を、樹脂(A)と樹脂(C)とし、その混合率を、樹脂(A)80質量%、樹脂(C)20質量%の割合とし、接着層における、樹脂(A)と樹脂(B)の混合率を、樹脂(A)60質量%、樹脂(B)40質量%に変えた他は同様にして、多層フィルムを成形し、評価を行った。
比較例4において、バリア層に使用する樹脂を、樹脂(A)と樹脂(D)とし、その混合率を、樹脂(A)80質量%、樹脂(D)20質量%に変えた他は同様にして、多層フィルムを成形し、評価を行った。
一方、接着層における樹脂(A)の含有率を増加させた比較例1では、接着性の低下、及び薬剤吸着抑制効果の低下が見られた。バリア層における樹脂(A)の含有率を増加させた比較例2では、製膜の際、ゲルが多く製膜性が低下し、バリア性、薬剤吸着抑制効果の低下が見られた。バリア層において樹脂(A)の含有率を減少させた比較例3でも、樹脂(A)の減少に伴い、バリア性、薬剤吸着抑制効果の低下が見られた。
また、比較例4及び5の様に、バリア層における樹脂の組成物をポリプロピレンやポリエチレンに変えたところ、環状オレフィン系樹脂とポリエチレンによる混合樹脂は、両物質の相溶性は良好であるが、シール層との接着性が悪く、環状オレフィン系樹脂とポリプロピレンによる混合樹脂は、両物質の相溶性が悪く、ゲル化をして成膜不能であった。
2:接着層
3:バリア層
4:多層フィルム
5:薬剤容器
6:周縁部
7:口部材
Claims (2)
- バリア層と、シール層との間に接着層を有する多層フィルムにおいて、
前記バリア層が、環状オレフィン系樹脂60〜85質量%と、ポリオレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ウレタン系エラストマーから選択される少なくとも1種の熱可塑性エラストマー15〜40質量%とを含む、厚さ10〜80μmの層であり、
前記接着層が、環状オレフィン系樹脂5〜70質量%と、ポリオレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ウレタン系エラストマーから選択される少なくとも1種の熱可塑性エラストマー30〜95質量%とを含む、厚さ10〜80μmの層であり、
前記シール層が、オレフィン系樹脂からなる、厚さ5〜80μmの層であることを特徴とする、多層フィルム。 - 前記シール層が最内面となるように、請求項1記載の多層フィルムを用いて形成した薬剤容器。
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