JP4717655B2 - 合金型温度ヒューズの使用方法 - Google Patents
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Description
この合金型温度ヒューズの動作機構は次の通りである。
すなわち、通常、保護しようとする電子・電気機器や電気・電子部品に合金型温度ヒューズが接触して配設され、機器等が何らかの異常により発熱すると、その発生熱によりヒューズエレメントが液状化され、その溶融金属が既に溶融したフラックスとの共存下、被接合物への濡れと合金の表面張力により分断、球状化されて機器等への通電が遮断され、の通電遮断で異常部が降温することにより分断溶融合金が凝固されて非復帰のカットオフが終結されるに至る。
例えば、Bi−Sn系合金をヒューズエレメントとする合金型温度ヒューズの場合、本発明者等の鋭意検討結果によれば、ヒューズエレメントの合金成分中のSnがCuリード導体側に再結晶や相変化によって移行し、その移行Snがリード導体との境面に金属間化合物相を形成すると共にSn移行後のヒューズエレメントの合金成分がBi単一相に変成されていく(図3−1参照)。
より具体的には、通常の使用環境では問題無く、フラックス作用に因る合金溶融が起こることで導通を遮断する温度ヒューズ機能を果たさせながら、使用環境が準異常状態となり、長期間、動作温度近傍のような過酷な温度条件に曝され、フラックス作用が合金成分との反応や熱劣化により失われたとしても、合金自体がCuリード導体と厚い金属間化合物を形成し、組成が偏析を起こすことで自己破断して導通を遮断することができる合金型温度ヒューズを使用して電気機器を保護する方法を提供することにある。
請求項2に係る合金型温度ヒューズの使用方法は、請求項1記載の合金型温度ヒューズの使用方法において、温度ヒューズ動作温度Tsよりも低い温度が温度ヒューズ動作温度Tsより1℃〜10℃、好ましくは5℃〜10℃低い温度であり、累積時間が5000時間以上、好ましくは5000〜10000時間であることを特徴とする。
請求項3に係る合金型温度ヒューズの使用方法は、請求項1または2記載の合金型温度ヒューズの使用方法において、銅リード導体にSnまたはAgあるいはCu溶解SnやBi溶解Snを被覆し、その被覆厚を8μm以下、好ましくは2μm以下とすることを特徴とする。
請求項4に係る合金型温度ヒューズの使用方法は、請求項1〜3何れか記載の合金型温度ヒューズの使用方法において、可溶合金片としてBi−Sn系合金片を使用することを特徴とする。
請求項5に係る合金型温度ヒューズの使用方法は、請求項4記載の合金型温度ヒューズの使用方法において、可溶合金片としてBi−Sn共晶合金片を使用することを特徴とする。
請求項6に係る合金型温度ヒューズの使用方法は、請求項4または5記載の合金型温度ヒューズの使用方法において、可溶合金片の合金にAg、Cu、In、Ni、Sbの1種以上を0.1〜10.0%添加することを特徴とする。
図1は本発明において使用される合金型温度ヒューズの一例を示している。
図1において、1,1は互いに一直線で対向する銅リード導体であり、厚み8μm以下のSnまたはAg等の被覆層が、電解メッキや無電解メッキにより設けられている。その他、Cu溶解SnやBi溶解Snを被覆することもできる。2は間にリード導体間に溶接されたヒューズエレメントであり、常温よりも高く融点よりも低い温度での所定の累積時間のもとでの加熱によりリード導体に隣接するヒューズエレメント部分をリード導体の銅との金属間化合反応により変質させてヒューズエレメントの未反応部分よりも高融点化させると共に脆弱化させ得る可溶合金組成のものが使用されている。融点よりも低い温度は、通常、融点より1℃〜10℃好ましくは5℃〜10℃低い温度とされ、所定の累積時間は5000時間以上、好ましくは5000〜10000時間とされる。
3はヒューズエレメント上に塗布したフラックスである。このフラックスには通常、融点がヒューズエレメントの融点よりも低いものが使用され、例えば、ロジン90〜60重量部、ステアリン酸10〜40重量部、活性剤0〜3重量部を使用できる。この場合、ロジンには天然ロジン、変性ロジン(例えば、水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン)またはこれらの精製ロジンを使用でき、活性剤には、ジエチルアミン等のアミン類の塩酸塩や臭化水素酸塩、アジピン酸等の有機酸を使用できる。
4はフラックス塗布ヒューズエレメントを包囲する筒状絶縁体であり、例えばセラミックスを使用できる。
5は筒状絶縁体の各端と各リード導体との間を封止せる封止材であり、例えばエポキシ樹脂組成物を使用できる。
このヒューズエレメント組成の温度Xにおける組織は、図2において点a’で与えられる状態のβSnまたはαSn(曲線oaに従ってBiが若干溶解されたSn)相と点c’で与えられる状態のBi単一相との混合相であり、その混合割合は、βSnまたはαSnが線長b’c’/線長a’c’、単一Biが線長a’b’/線長a’c’で与えられる。
図2に示すBi/Sn二元状態図からも明らかな通り、Bi−Sn系合金ヒューズエレメントでは、Biに対するSnの溶解度が非常に低く、合金中の組織がBiを若干含むSn相とBi単一相との混合相で構成されてている。従って、リード導体切断端面の露出のCuに接触していても、通常の使用環境ではその組織が大きく変化することはない。而して、機器が異常に発熱して温度ヒューズのヒューズエレメントの温度が融点(共晶点)に達すると、温度ヒューズが溶断動作して機器のそれ以上の昇温が防止される。
図4−1ははケ−スタイプラジアル型を示し、並行リ−ド導体1,1の先端部間に前記ヒュ−ズエレメント2を接続し、例えば溶接により接続し、ヒュ−ズエレメント2にフラックス3を塗布し、このフラックス塗布ヒュ−ズエレメントを一端開口の絶縁ケ−ス4、例えばセラミックスケ−スで包囲し、この絶縁ケ−ス4の開口を封止剤5、例えば常温硬化型エポキシ樹脂等で封止してある。
図4−2は樹脂ディッピングタイプラジアル型を示し、並行リ−ド導体1,1の先端部間に前記のヒュ−ズエレメント2を接合し、例えば溶接により接合し、ヒュ−ズエレメント2にフラックス3を塗布し、このフラックス塗布ヒュ−ズエレメントを樹脂液ディッピングにより絶縁封止剤、例えばエポキシ樹脂5で封止してある。
図4−3は基板タイプを示し、絶縁基板4、例えばセラミックス基板上に一対の膜電極1,1を導電ペ−ストの印刷焼付けにより形成し、各電極1にリ−ド導体11を接続し、例えば溶接やはんだ付け等により接続し、電極1,1間に前記のヒュ−ズエレメント2を接合し、例えば溶接等により接合し、ヒュ−ズエレメント2にフラックス3を塗布し、このフラックス塗布ヒュ−ズエレメントを封止剤5例えばエポキシ樹脂で被覆してある。この導電ペ−ストには、金属粒体とバインダーを含有し、金属粒体に例えば、CuやCu系合金等を用い、バインダーに例えばガラスフリット、熱硬化性樹脂等を用いたものを使用できる。
すなわち、最初に実使用条件に合わせた初期動作温度−20℃の温度環境で10000時間のエージングを経た後、試料を抜き取って昇温速度1℃/分のオイル溶断試験を行って動作確認をした。次に残りの試料を準異常状態をシュミレートした初期動作温度−5℃の温度環境で20000時間迄のエージングを行って動作するかどうかを調査した。なお、試料数は200本とし、うち50本は抜き取り動作確認用とした。
次で、同じエージングを経た試料を動作温度−5℃(125℃)の温度環境に曝すと、5000時間を経過した辺りから動作するものがで始め、10000時間迄には全ての試料が動作した。
確認のため、通常状態で10000時間エージングした後の試料及び準異常環境で最終的に動作した試料について、組織断面を観察したところ、通常の使用環境では組織的に大きな変化は見られなかったが(図5−1参照)、準異常状態をシュミレートした動作温度−5℃(125℃)の温度環境に長期間曝されれば、合金成分中のSnがCuリード導体側に再結晶化、相変態によって大きく移行し、Cuと大きな金属間化合物相(Cu6Sn5)を形成し、BiはCuと化合物相を形成しないのでSnとの混合相から排出され、寄り集まって大きなBi単一相を形成するようになり、且つBi単一相中はカーケンダルボイドが多く存在し、これが集中して熱応力に耐えられなくなって合金が機械的破断するか、または異なる組織の境界では熱膨張係数の差が大きくなって歪みが生じ、これに熱応力が加わることで合金が機械的破断していることが判明した(図5−2参照)。
動作温度−20℃(126℃)の温度環境で10000時間のエージングを経た後の動作温度は最小温度145.9℃、最大温度146.2℃、平均温度146.0℃であって動作不良はなく、良好に動作させ得た。
次いで同じエージングを経た試料を動作温度−5℃(141℃)の温度環境に曝すと7000時間を経過した辺りから動作するものが出始め、10000時間迄には全ての試料が動作した。
動作した理由は実施例1と同じであることを断面観察から確認した。
動作温度−20℃(120℃)の温度環境で10000時間のエージングを経た後の動作温度は最小温度139.9℃、最大温度140.1℃、平均温度140.0℃であって動作不良はなく、良好に動作させ得た。
次いで同じエージングを経た試料を動作温度−5℃(135℃)の温度環境に曝すと5000時間を経過した辺りから動作するものが出始め、10000時間迄には全ての試料が動作した。動作した理由は実施例1と同じであることを断面観察から確認した。
上記実施例1に近い初期動作温度を有する74重量%In/26重量%SnのIn−Sn系合金(初期動作温度約129℃)を用いてエージング試験を行った。
動作温度−20℃(109℃)の温度環境で10000時間のエージングを経た後(図6−1参照)の動作温度は最小温度130.2℃、最大温度134.2℃、平均温度130.9℃であって動作不良はなく、問題はなかった。
次いで同じエージングを経た試料を動作温度−5℃(124℃)の温度環境に曝しても、20000時間迄1本たりとも動作した試料はなく、この試料をオイル溶断試験にて200℃まで上昇させても全く動作しなかった。この結果から、フラックス作用が合金成分との反応や熱劣化により失われていることが判る。確認のため,通常状態で10000時間エージングした後の試料及び準異常環境で20000時間迄エージングを経た試料について,組織断面を観察した(図6−2参照)。
通常の使用環境では組織的に大きな変化は見られないが、準異常状態をシュミレートした動作温度−5℃(124℃)の温度環境に長期間曝されれば、合金成分中のIn及びSnがCuリード導体側に再結晶化、相変態によって大きく移行し、Cuと大きな金属間化合物相{Cu6(InSn)5}を形成するものの、低融点合金組織の脆弱化が生じず、動作することが不可能であることが判明した。これでは電気機器が破損したり、発火したりする懸念が払拭できない。
2 ヒューズエレメント
3 フラックス
4 ケース又は絶縁被覆
5 封止材
Claims (6)
- 銅リード導体間に所定融点の可溶合金片をヒューズエレメントとして接続し、ヒューズエレメントにフラックスを塗布した合金型温度ヒューズの使用方法であり、常温よりも高く温度ヒューズ動作温度Tsよりも低い温度での所定の累積時間のもとでの加熱によりリード導体に隣接するヒューズエレメント部分をリード導体の銅との金属間化合反応により変質させてヒューズエレメントの未反応部分よりも高融点化させると共に脆弱化させ、前記累積時間の経過後は、前記変質ヒューズエレメント部分の熱応力破断で通電を遮断し、経過前は前記温度ヒューズ動作温度Tsのもとでのヒューズエレメントの溶断で通電を遮断することを特徴とする合金型温度ヒューズの使用方法。
- 温度ヒューズ動作温度Tsよりも低い温度が温度ヒューズ動作温度Tsより1℃〜10℃低い温度であり、累積時間が5000時間以上であることを特徴とする請求項1記載の合金型温度ヒューズの使用方法。
- 銅リード導体にSnまたはAgあるいはCu溶解SnやBi溶解Snを被覆し、その被覆厚を8μm以下とすることを特徴とする請求項1または2記載の合金型温度ヒューズの使用方法。
- 可溶合金片としてBi−Sn系合金片を使用することを特徴とする請求項1〜3何れか記載の合金型温度ヒューズの使用方法。
- Bi−Sn系合金が共晶組成であることを特徴とする請求項4記載の合金型温度ヒューズの使用方法。
- 可溶合金片の合金にAg、Cu、In、Ni、Sbの1種以上を0.1〜10.0%添加することを特徴とする請求項4または5記載の合金型温度ヒューズの使用方法。
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