JP4717655B2 - 合金型温度ヒューズの使用方法 - Google Patents

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Description

本発明は合金型温度ヒューズの使用方法に関し、例えば、モーター等の電気部品の保護に有用なものである。
従来、電気機器に対する熱的保護部品として合金型温度ヒューズが汎用されている。この合金型温度ヒューズは、一対のリード導体間に所定の融点を持つ低融点可溶合金片をヒューズエレメントとして接続し、ヒューズエレメント上にフラックスを塗布し、このフラックス塗布合金片を絶縁体で包囲した構成である。
この合金型温度ヒューズの動作機構は次の通りである。
すなわち、通常、保護しようとする電子・電気機器や電気・電子部品に合金型温度ヒューズが接触して配設され、機器等が何らかの異常により発熱すると、その発生熱によりヒューズエレメントが液状化され、その溶融金属が既に溶融したフラックスとの共存下、被接合物への濡れと合金の表面張力により分断、球状化されて機器等への通電が遮断され、の通電遮断で異常部が降温することにより分断溶融合金が凝固されて非復帰のカットオフが終結されるに至る。
前記電気機器等の故障・異常状態となる内容や程度は様々である。例えばモーターの場合、構成部材である絶縁物の劣化によって、絶縁低下によるショートから発熱し(これを異常状態と定義)、発火するといった問題があり、これを回避するために熱保護素子として温度ヒューズを組み込んでいる。しかしながら、塵や異物等が混入し、回転コイルの動きが妨げられる軽い不良も起こり得る。回転コイルの動作が妨げられたり、完全にロックされると、ステーターが発熱してモーター温度が上昇されるが、その際の発熱量は前記ショートに基づく本来の異常発熱を防止する目的で搭載されている温度ヒューズを動作させるまでは至らないのが通常である。この場合、動作温度の手前までモーター温度が上昇し、その状態が長期間保持されることとなる。(これを準異常状態と定義)この準異常状態に陥ると搭載されている温度ヒューズにとっては動作温度近くでエージングされるという最も過酷な使用環境におかれることになり、その結果、温度ヒューズのフラックスが合金成分との反応や熱劣化により損じられ、フラックス作用が喪失されて温度ヒューズが動作不良状態になると想定される。また準異常状態が続けば構成部材である絶縁物(例えばE種であれば耐熱温度120℃)も加速的に劣化し、絶縁低下によるショートから発熱した場合に温度ヒューズで導通を遮断することができず、モーターが破損したり、最悪の場合には火災に繋がることもある。
合金型温度ヒューズにおいては、温度ヒューズが溶断動作されるまでには至らない長い累積時間の経過で、ヒューズエレメントの合金成分とリード導体の銅との反応によってヒューズエレメントの組成が変質され、そのヒューズエレメントの融点が変化されて、その温度ヒューズが正常に動作しなくなることが知られている。
例えば、Bi−Sn系合金をヒューズエレメントとする合金型温度ヒューズの場合、本発明者等の鋭意検討結果によれば、ヒューズエレメントの合金成分中のSnがCuリード導体側に再結晶や相変化によって移行し、その移行Snがリード導体との境面に金属間化合物相を形成すると共にSn移行後のヒューズエレメントの合金成分がBi単一相に変成されていく(図3−1参照)。
従来においては、前記移行を阻止してヒューズエレメントの変質を防止することにより、温度ヒューズの本来の動作を保証するようにしている。例えば、ヒューズエレメントに接するリード導体の表面に前記移行を防止するためのバリア層、例えば鉄メッキ層を設けることが提案されている(特許文献1)。これでは、前記したフラックス作用が喪失されて温度ヒューズが動作不良状態になることに対処できず、機器の保護を保証できない。
特公昭59−3017号公報
而るに、本発明者等においては、Bi−Sn系合金をヒューズエレメントとする合金型温度ヒューズにおいては、温度ヒューズ動作温度Tsよりも5℃程度低い温度での5000時間以上の累積時間のもとでの加熱によりリード導体に隣接するヒューズエレメント部分がリード導体の銅との金属間化合反応により変質されてヒューズエレメントの未反応部分よりも高融点化されると共に脆弱化されることに着目し、前記累積時間の経過後は、前記変質ヒューズエレメント部分の熱応力破断で通電を遮断させ、経過前は前記温度ヒューズ動作温度Tsのもとでのヒューズエレメントの溶断で通電を遮断させることにより、前記準異常状態になって温度ヒューズ中のフラックスが劣化しフラックス作用を奏し得なくなっても、合金型温度ヒューズの破断動作で機器を安全に保護し得ることを確認した。
本発明の目的は、設定動作温度を超えることなくその近傍にまで達する発熱が発生するような準異常状態となって温度ヒューズ中のフラックスが劣化しフラックス作用を奏させ得なくなっても、温度ヒューズの設定動作温度近傍での通電遮断を保証する合金型温度ヒューズの使用方法を提供することにある。
より具体的には、通常の使用環境では問題無く、フラックス作用に因る合金溶融が起こることで導通を遮断する温度ヒューズ機能を果たさせながら、使用環境が準異常状態となり、長期間、動作温度近傍のような過酷な温度条件に曝され、フラックス作用が合金成分との反応や熱劣化により失われたとしても、合金自体がCuリード導体と厚い金属間化合物を形成し、組成が偏析を起こすことで自己破断して導通を遮断することができる合金型温度ヒューズを使用して電気機器を保護する方法を提供することにある。
請求項1に係る合金型温度ヒューズの使用方法は、銅リード導体間に所定融点の可溶合金片をヒューズエレメントとして接続し、ヒューズエレメントにフラックスを塗布した合金型温度ヒューズの使用方法であり、常温よりも高く温度ヒューズ動作温度Tsよりも低い温度での所定の累積時間のもとでの加熱によりリード導体に隣接するヒューズエレメント部分をリード導体の銅との金属間化合反応により変質させてヒューズエレメントの未反応部分よりも高融点化させると共に脆弱化させ、前記累積時間の経過後は、前記変質ヒューズエレメント部分の熱応力破断で通電を遮断し、経過前は前記温度ヒューズ動作温度Tsのもとでのヒューズエレメントの溶断で通電を遮断することを特徴とする。
請求項2に係る合金型温度ヒューズの使用方法は、請求項1記載の合金型温度ヒューズの使用方法において、温度ヒューズ動作温度Tsよりも低い温度が温度ヒューズ動作温度Tsより1℃〜10℃、好ましくは5℃〜10℃低い温度であり、累積時間が5000時間以上、好ましくは5000〜10000時間であることを特徴とする。
請求項3に係る合金型温度ヒューズの使用方法は、請求項1または2記載の合金型温度ヒューズの使用方法において、銅リード導体にSnまたはAgあるいはCu溶解SnやBi溶解Snを被覆し、その被覆厚を8μm以下、好ましくは2μm以下とすることを特徴とする。
請求項4に係る合金型温度ヒューズの使用方法は、請求項1〜3何れか記載の合金型温度ヒューズの使用方法において、可溶合金片としてBi−Sn系合金片を使用することを特徴とする。
請求項5に係る合金型温度ヒューズの使用方法は、請求項4記載の合金型温度ヒューズの使用方法において、可溶合金片としてBi−Sn共晶合金片を使用することを特徴とする。
請求項6に係る合金型温度ヒューズの使用方法は、請求項4または5記載の合金型温度ヒューズの使用方法において、可溶合金片の合金にAg、Cu、In、Ni、Sbの1種以上を0.1〜10.0%添加することを特徴とする。
電気部品の故障が小規模で、温度ヒューズの動作温度の手前まで機器温度が上昇し、その状態が長期間保持されて温度ヒューズ中のフラックス作用が合金成分との反応や熱劣化により失われるような準異常状態となっても、ヒューズエレメントのリード導体近傍部分の合金組織の脆弱化によるその部分の熱応力破断でヒューズ機能が得られ、長期的な安全性を得ることができる。
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
図1は本発明において使用される合金型温度ヒューズの一例を示している。
図1において、1,1は互いに一直線で対向する銅リード導体であり、厚み8μm以下のSnまたはAg等の被覆層が、電解メッキや無電解メッキにより設けられている。その他、Cu溶解SnやBi溶解Snを被覆することもできる。2は間にリード導体間に溶接されたヒューズエレメントであり、常温よりも高く融点よりも低い温度での所定の累積時間のもとでの加熱によりリード導体に隣接するヒューズエレメント部分をリード導体の銅との金属間化合反応により変質させてヒューズエレメントの未反応部分よりも高融点化させると共に脆弱化させ得る可溶合金組成のものが使用されている。融点よりも低い温度は、通常、融点より1℃〜10℃好ましくは5℃〜10℃低い温度とされ、所定の累積時間は5000時間以上、好ましくは5000〜10000時間とされる。
3はヒューズエレメント上に塗布したフラックスである。このフラックスには通常、融点がヒューズエレメントの融点よりも低いものが使用され、例えば、ロジン90〜60重量部、ステアリン酸10〜40重量部、活性剤0〜3重量部を使用できる。この場合、ロジンには天然ロジン、変性ロジン(例えば、水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン)またはこれらの精製ロジンを使用でき、活性剤には、ジエチルアミン等のアミン類の塩酸塩や臭化水素酸塩、アジピン酸等の有機酸を使用できる。
4はフラックス塗布ヒューズエレメントを包囲する筒状絶縁体であり、例えばセラミックスを使用できる。
5は筒状絶縁体の各端と各リード導体との間を封止せる封止材であり、例えばエポキシ樹脂組成物を使用できる。
この温度ヒューズが保護しようとする電気・電子機器または電気・電子部品に熱的に接触して使用される。温度ヒューズには、機器または部品がほぼ上限温度に達したときに温度ヒューズのヒューズエレメントの温度が融点に達するものが使用され、機器または部品の上限温度に応じて温度ヒューズの動作温度が設定される。機器が前記したモーターの場合、温度ヒューズのヒューズエレメントの合金には、図2に示す温度状態を呈するBi−Sn系合金を好適に使用できる。
ヒューズエレメントのBi−Sn系合金組成には、通常共晶乃至は共晶近傍組成が使用される。
このヒューズエレメント組成の温度Xにおける組織は、図2において点a’で与えられる状態のβSnまたはαSn(曲線oaに従ってBiが若干溶解されたSn)相と点c’で与えられる状態のBi単一相との混合相であり、その混合割合は、βSnまたはαSnが線長b’c’/線長a’c’、単一Biが線長a’b’/線長a’c’で与えられる。
図2に示すBi/Sn二元状態図からも明らかな通り、Bi−Sn系合金ヒューズエレメントでは、Biに対するSnの溶解度が非常に低く、合金中の組織がBiを若干含むSn相とBi単一相との混合相で構成されてている。従って、リード導体切断端面の露出のCuに接触していても、通常の使用環境ではその組織が大きく変化することはない。而して、機器が異常に発熱して温度ヒューズのヒューズエレメントの温度が融点(共晶点)に達すると、温度ヒューズが溶断動作して機器のそれ以上の昇温が防止される。
しかしながら、動作温度、即ちほぼ低融点合金の融点手前まで温度が上昇したまま長期間経過すれば,合金成分中のSnはCuリード導体側に再結晶化、相変態によって大きく移行し、Cuと大きな金属間化合物相(Cu6Sn5)を形成するに至る。この際、BiはCuと化合物相を形成しないのでSnとの混合相から排出され、寄り集まって大きなBi単一相を形成し、図3−1、図3−2に示すように元の低融点合金組織と金属間化合物相(Cu6Sn5)との間にBi単一相が介在するようになる。このBi単一相中はSnの早い移動によって空孔が多数残存し、それが集まったことによるカーケンダルボイドが多く存在し、これが集中してかかる熱応力に耐えられない脆弱組織となる。
温度ヒューズの動作温度、即ちほぼ低融点合金の融点の手前まで温度が上昇したまま長期間経過するのは、例えば、前記したようにモーターにおいて、塵や異物等が混入し、回転コイルの動きが妨げられる軽い不良が起こって回転コイルの動作が妨げられたり、完全にロックされ、ステーターが発熱してモータ温度が上昇するが、温度ヒューズを動作させるまでには至らず、その状態が長期間保持されるケースである(これを準異常状態と定義)。この準異常状態に陥ると搭載されている温度ヒューズにとっては動作温度近くでエージングされるという最も過酷な使用環境におかれることになり、その結果、フラックスが合金成分との反応や熱劣化により損じられ、フラックス作用が喪失されて温度ヒューズの動作不良状態になる。
しかしながら、このようにフラックス作用が喪失された状態で機器が上限温度に達しても、カーケンダルボイドが多く存在する単一Bi相の脆弱性のために、その部分が熱応力により機械的破断するか、または異なる組織の境界において熱膨張係数の差が大きくなって歪みが生じ、これに熱応力が加わることで異なる組織の境界相が機械的破断して機器への通電が遮断される結果、準異常状態になった後でも、機器を熱的に安全に保護できる。
上記では、ヒューズエレメントの低融点合金にBi及びSn主要成分とするものを使用しているが、更にこれに対し、ヒューズエレメントの融点調整や抵抗値調整のために、Ag、Cu、In、Ni、Sbの1種以上を0.1〜10.0重量%添加することもできる。
銅リード導体には、保存時でのCuの酸化を防止するためにSnやAg或いはCu添加SnやBi添加Snのメッキ被覆が施されているが、この被覆厚みが厚くなると、ヒューズエレメントのリード導体の銅との金属間化合物反応に加え、メッキ組成とリード導体の銅との金属間化合物反応が進行し、メッキ被覆からも反応金属が供給されるので、メッキ被覆厚みを8μm以下、好ましくは5μm以下、より好ましくは1〜2μmと薄くして反応金属の供給源がほぼヒューズエレメントとなるようにすることが有効である。
本発明では、前記の筒型温度ヒューズに代えて、ケースタイプラジアル型、樹脂ディッピングタイプラジアル型、基板タイプを使用することもできる。
図4−1ははケ−スタイプラジアル型を示し、並行リ−ド導体1,1の先端部間に前記ヒュ−ズエレメント2を接続し、例えば溶接により接続し、ヒュ−ズエレメント2にフラックス3を塗布し、このフラックス塗布ヒュ−ズエレメントを一端開口の絶縁ケ−ス4、例えばセラミックスケ−スで包囲し、この絶縁ケ−ス4の開口を封止剤5、例えば常温硬化型エポキシ樹脂等で封止してある。
図4−2は樹脂ディッピングタイプラジアル型を示し、並行リ−ド導体1,1の先端部間に前記のヒュ−ズエレメント2を接合し、例えば溶接により接合し、ヒュ−ズエレメント2にフラックス3を塗布し、このフラックス塗布ヒュ−ズエレメントを樹脂液ディッピングにより絶縁封止剤、例えばエポキシ樹脂5で封止してある。
図4−3は基板タイプを示し、絶縁基板4、例えばセラミックス基板上に一対の膜電極1,1を導電ペ−ストの印刷焼付けにより形成し、各電極1にリ−ド導体11を接続し、例えば溶接やはんだ付け等により接続し、電極1,1間に前記のヒュ−ズエレメント2を接合し、例えば溶接等により接合し、ヒュ−ズエレメント2にフラックス3を塗布し、このフラックス塗布ヒュ−ズエレメントを封止剤5例えばエポキシ樹脂で被覆してある。この導電ペ−ストには、金属粒体とバインダーを含有し、金属粒体に例えば、CuやCu系合金等を用い、バインダーに例えばガラスフリット、熱硬化性樹脂等を用いたものを使用できる。
以下の実施例及び比較例においては、低融点合金を約600μmφの線状とし、長さ4mmに切断したものをヒューズエレメントとし、リード線には被覆厚1.5μmのSnメッキ銅線と使用し、天然ロジン80重量部、ステアリン酸20重量部、ジエチルアミン臭化水素酸塩1重量部の組成物をフラックスとして作製した筒型温度ヒューズを用い、準異常状態をシュミレートするように次の条件でエージンジグ試験を行った。
すなわち、最初に実使用条件に合わせた初期動作温度−20℃の温度環境で10000時間のエージングを経た後、試料を抜き取って昇温速度1℃/分のオイル溶断試験を行って動作確認をした。次に残りの試料を準異常状態をシュミレートした初期動作温度−5℃の温度環境で20000時間迄のエージングを行って動作するかどうかを調査した。なお、試料数は200本とし、うち50本は抜き取り動作確認用とした。
57重量%Bi/43重量%SnのBi−Sn系共晶組成100重量部に対し、Inを4重量部添加した初期動作温度約130℃の温度ヒューズを用いてエージング試験を行った。動作温度−20℃(110℃)の温度環境で10000時間のエージングを経た後の動作温度は最小温度133.0℃、最大温度134.2℃、平均温度133.7℃であって動作不良はなく、良好に動作させ得た。
次で、同じエージングを経た試料を動作温度−5℃(125℃)の温度環境に曝すと、5000時間を経過した辺りから動作するものがで始め、10000時間迄には全ての試料が動作した。
確認のため、通常状態で10000時間エージングした後の試料及び準異常環境で最終的に動作した試料について、組織断面を観察したところ、通常の使用環境では組織的に大きな変化は見られなかったが(図5−1参照)、準異常状態をシュミレートした動作温度−5℃(125℃)の温度環境に長期間曝されれば、合金成分中のSnがCuリード導体側に再結晶化、相変態によって大きく移行し、Cuと大きな金属間化合物相(Cu6Sn5)を形成し、BiはCuと化合物相を形成しないのでSnとの混合相から排出され、寄り集まって大きなBi単一相を形成するようになり、且つBi単一相中はカーケンダルボイドが多く存在し、これが集中して熱応力に耐えられなくなって合金が機械的破断するか、または異なる組織の境界では熱膨張係数の差が大きくなって歪みが生じ、これに熱応力が加わることで合金が機械的破断していることが判明した(図5−2参照)。
57重量%Bi/43重量%SnのBi−Sn系共晶組成100重量部に対し、Sbを3重量部添加した初期動作温度約146℃の合金を用いた以外実施例1と同様にして評価を行った。
動作温度−20℃(126℃)の温度環境で10000時間のエージングを経た後の動作温度は最小温度145.9℃、最大温度146.2℃、平均温度146.0℃であって動作不良はなく、良好に動作させ得た。
次いで同じエージングを経た試料を動作温度−5℃(141℃)の温度環境に曝すと7000時間を経過した辺りから動作するものが出始め、10000時間迄には全ての試料が動作した。
動作した理由は実施例1と同じであることを断面観察から確認した。
57重量%Bi/43重量%SnのBi−Sn系共晶合金(初期動作温度約140℃)を用いた以外実施例1と同様にして評価を行った。
動作温度−20℃(120℃)の温度環境で10000時間のエージングを経た後の動作温度は最小温度139.9℃、最大温度140.1℃、平均温度140.0℃であって動作不良はなく、良好に動作させ得た。
次いで同じエージングを経た試料を動作温度−5℃(135℃)の温度環境に曝すと5000時間を経過した辺りから動作するものが出始め、10000時間迄には全ての試料が動作した。動作した理由は実施例1と同じであることを断面観察から確認した。
〔比較例1〕
上記実施例1に近い初期動作温度を有する74重量%In/26重量%SnのIn−Sn系合金(初期動作温度約129℃)を用いてエージング試験を行った。
動作温度−20℃(109℃)の温度環境で10000時間のエージングを経た後(図6−1参照)の動作温度は最小温度130.2℃、最大温度134.2℃、平均温度130.9℃であって動作不良はなく、問題はなかった。
次いで同じエージングを経た試料を動作温度−5℃(124℃)の温度環境に曝しても、20000時間迄1本たりとも動作した試料はなく、この試料をオイル溶断試験にて200℃まで上昇させても全く動作しなかった。この結果から、フラックス作用が合金成分との反応や熱劣化により失われていることが判る。確認のため,通常状態で10000時間エージングした後の試料及び準異常環境で20000時間迄エージングを経た試料について,組織断面を観察した(図6−2参照)。
通常の使用環境では組織的に大きな変化は見られないが、準異常状態をシュミレートした動作温度−5℃(124℃)の温度環境に長期間曝されれば、合金成分中のIn及びSnがCuリード導体側に再結晶化、相変態によって大きく移行し、Cuと大きな金属間化合物相{Cu6(InSn)5}を形成するものの、低融点合金組織の脆弱化が生じず、動作することが不可能であることが判明した。これでは電気機器が破損したり、発火したりする懸念が払拭できない。
本発明において使用する温度ヒューズの一例を示す図面である。 Bi−Sn系合金の二元状態図である。 Bi/Sn系合金をヒューズエレメントとする温度ヒューズの融点近傍エージング後のヒューズエレメントの状態を示す写真である。 図3の写真を図解した図面である。 本発明において使用する温度ヒューズの上記とは別の例を示す図面である。 本発明において使用する温度ヒューズの上記とは別の例を示す図面である。 本発明において使用する温度ヒューズの上記とは別の例を示す図面である。 実施例1での10000時間エージング後でのヒューズエレメントの状態を示す写真である。 実施例1での融点近傍エージング後でのヒューズエレメントの状態を示す写真である。 比較例1での10000時間通常エージング後でのヒューズエレメントの状態を示す写真である。 比較例1での20000時間融点近傍エージング後でのヒューズエレメントの状態を示す写真である。
符号の説明
1 リード導体
2 ヒューズエレメント
3 フラックス
4 ケース又は絶縁被覆
5 封止材

Claims (6)

  1. 銅リード導体間に所定融点の可溶合金片をヒューズエレメントとして接続し、ヒューズエレメントにフラックスを塗布した合金型温度ヒューズの使用方法であり、常温よりも高く温度ヒューズ動作温度Tsよりも低い温度での所定の累積時間のもとでの加熱によりリード導体に隣接するヒューズエレメント部分をリード導体の銅との金属間化合反応により変質させてヒューズエレメントの未反応部分よりも高融点化させると共に脆弱化させ、前記累積時間の経過後は、前記変質ヒューズエレメント部分の熱応力破断で通電を遮断し、経過前は前記温度ヒューズ動作温度Tsのもとでのヒューズエレメントの溶断で通電を遮断することを特徴とする合金型温度ヒューズの使用方法。
  2. 温度ヒューズ動作温度Tsよりも低い温度が温度ヒューズ動作温度Tsより1℃〜10℃低い温度であり、累積時間が5000時間以上であることを特徴とする請求項1記載の合金型温度ヒューズの使用方法。
  3. 銅リード導体にSnまたはAgあるいはCu溶解SnやBi溶解Snを被覆し、その被覆厚を8μm以下とすることを特徴とする請求項1または2記載の合金型温度ヒューズの使用方法。
  4. 可溶合金片としてBi−Sn系合金片を使用することを特徴とする請求項1〜3何れか記載の合金型温度ヒューズの使用方法。
  5. Bi−Sn系合金が共晶組成であることを特徴とする請求項4記載の合金型温度ヒューズの使用方法。
  6. 可溶合金片の合金にAg、Cu、In、Ni、Sbの1種以上を0.1〜10.0%添加することを特徴とする請求項4または5記載の合金型温度ヒューズの使用方法。
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