JP4714965B2 - 気体および/または液体バリア部品用強化樹脂組成物および成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、気体及び/または液体の耐透過性をはじめとし、表面外観、ウエルド強度、制振性および高湿度下での使用において高剛性を保持しうる気体および/または液体バリア部品用強化樹脂組成物および成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ガスバリア性が要求される樹脂成形品が増加してきており、その中でポリアミド樹脂は、優れた機械的特性、耐熱性、耐薬品性を有することから、エンジニアリングプラスチックスとして様々な成形品に用いられている。しかしながら、アルコール、フロンガス、ガソリン等の薬液あるいは気体の耐透過性が必ずしも十分ではなく、特に高湿下では著しくその特性が低下してしまう。そこでポリアミド単体の耐透過性を向上させる試みとして層状珪酸塩を分散させる技術が特開平2−105856号公報、特開平6−80873号公報、特開平8−199062号公報等に開示されている。
【0003】
しかしながら、これらの方法では確かにポリアミド単体に比較し、耐透過性は向上するものの、必ずしも満足するものではない。また、耐透過性および剛性が必要な部材に用いる場合に剛性が十分とはいえず、特に高湿度下の使用においては薬液および気体の耐透過性が低下するばかりでなく、本来保持していた剛性をも低下してしまい、使用が限定されてしまうという問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は上述の問題を解消すること即ち、薬液およびガスの耐透過性向上をはじめとし、さらに成形品の表面外観、ウエルド強度、制振性および高湿度下での使用において高剛性を保持しうる気体および/または液体バリア部品用強化樹脂組成物および成形品を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記問題点を解決するために鋭意検討を重ねた結果、非液晶性樹脂と液晶性樹脂を特定量配合し、さらに充填材を配合することにより、課題を解決できることを見出し本発明に至った。
【0006】
すなわち本発明は、
(1)(A)下記一般式(1)と(2)
【化2】
(式中、xとyはポリマー中のモル%を表す。)で表される繰り返し単位からなるポリケトン共重合体50〜92重量%(対(A)および(B)の合計)および(B)液晶性樹脂50〜8重量%(対(A)および(B)の合計)からなる樹脂組成物100重量部ならびに充填材(C)5〜200重量部を含有してなり、かつ該液晶性樹脂の分散粒子の60%以上が0.5α〜1.5αの分散径(αは重量平均分散径)を有し、該樹脂組成物を灰化した後、残存した充填材(C)300本以上に対して顕微鏡観察により測定した長径あるいは繊維長が60μm以下の存在割合が全充填量の5〜50重量%であることを特徴とする気体および/または液体バリア部品用強化樹脂組成物、
【0008】
(2)該ポリケトン共重合体のy/xが0.01〜0.10であることを特徴とする上記(1)記載の気体および/または液体バリア部品用強化樹脂組成物、
(3)上記(1)または(2)記載の気体および/または液体バリア部品用強化樹脂組成物を加工してなる薬液および/またはガスの搬送チューブ、薬液および/またはガスの貯蔵用容器またはそれらの付属部品に用いられる成形品、
(4)加工が射出成形によるものである上記(3)記載の成形品、
(5)加工が押出成形によるものである上記(3)記載の成形品、
(6)加工が吹込成形によるものである上記(3)記載の成形品を提供するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本発明において「重量」とは「質量」を意味する。
【0010】
本発明で用いられる非液晶性樹脂(A)は、加熱しても異方性溶融相を形成しない、成形加工できる合成樹脂のことである。その具体例としては、例えば、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリオキシメチレン、全芳香族ポリアミド、全芳香族ポリエステル、ポリイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリケトン共重合体、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、フェノキシ樹脂、ポリフェニレンスルフィド、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレンなどのオレフィン系重合体、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1−ブテン共重合体、エチレン/プロピレン/非共役ジエン共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/酢酸ビニル/メタクリル酸グリシジル共重合体およびエチレン/プロピレン−g−無水マレイン酸共重合体、ABSなどのオレフィン系共重合体、ポリエステルポリエーテルエラストマー、ポリエステルポリエステルエラストマー等のエラストマーから選ばれる1種または2種以上の混合物が挙げられる。さらにポリエステル樹脂の具体例としてはポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリ1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレートおよびポリエチレン−1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレートなどのほか、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリブチレンテレフタレート/デカンジカルボキシレートおよびポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート/イソフタレートなどの共重合ポリエステル等から選ばれる1種または2種以上の混合物である。
【0011】
なかでも好ましく用いられるのは、ポリアミド、ポリケトン共重合体である。具体的にポリアミドは、アミノ酸、ラクタムあるいはジアミンとジカルボン酸を主たる原料とするナイロンである。その原料の代表例としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタム、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどの脂肪族、脂環族、芳香族のジアミン、およびアジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの脂肪族、脂環族、芳香族のジカルボン酸が挙げられ、本発明においては、これらの原料から誘導されるナイロンホモポリマーまたはコポリマーを各々単独または混合物の形で用いることができる。
【0012】
本発明において、特に有用なポリアミドは、190℃以上の融点を有する耐熱性や強度に優れたポリアミドであり、具体的な例としてはポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6/66)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)、ポリドデカミド/ポリヘキサメチレンテレフタラミドコポリマー(ナイロン12/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリカプロアミドコポリマー(ナイロン6T/6)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6I)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6/6I/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ(2−メチルペンタメチレンテレフタルアミド)コポリマー(ナイロン6T/M5T)、ポリキシリレンアジパミド(ナイロンXD6)およびこれらの混合物ないし共重合体などが挙げられる。
【0013】
とりわけ好ましいものとしては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン9T、ナイロン6/66コポリマー、ナイロン66/610、ナイロン6/12コポリマー、ナイロン12/6Tコポリマー、ナイロン6T/6コポリマー、ナイロン66/6Tコポリマー、ナイロン66/6Iコポリマー、ナイロン6/6I/6Tコポリマー、ナイロン66/6I/6Tコポリマー、ナイロン6T/6Iコポリマー、ナイロン6T/M5Tコポリマー、ナイロンXD6などの例を挙げることができ、更にこれらのナイロンに成形性、耐熱性、靱性、表面外観などの必要特性に応じてナフタレンジカルボン酸、ジカルボキシビフェニルなどのカルボン酸を少量共重合するかあるいは上記ナイロンを1種あるいは2種の混合物として用いることも実用上好適である。
【0014】
これらポリアミドの重合度にはとくに制限がないが、1%の濃硫酸溶液中、25℃で測定した相対粘度が、2.0〜8.0の範囲のものが好ましく、2.5〜7.0の範囲のものがより好ましく、さらに2.7〜6.0の範囲のものが最も好ましい。
【0015】
これらポリアミドは公知の方法で得られる。例えば重合方法としては溶融重合、界面重合、溶液重合、塊状重合、固相重合などの方法が利用され、一般的には溶融重合が最も適当である。さらに前記のポリアミドを押出機又は射出成形機に投入し、完全又は部分的に交換反応を行わせることによって共重合体を得ることができる。
【0016】
また、ポリケトン共重合体としては、下記一般式(1)と(2)で表される繰り返し単位を有するものが挙げられる。
【0017】
【化3】
【0018】
(x、yはポリマー中のモル%を表す。)
上記式中、x、yはポリマー中のそれぞれの繰り返し単位のモル%を表し、得られる液晶性樹脂組成物の機械特性、衝撃強度の面でy/xは0.01〜0.10であり、好ましくは0.03〜0.10、特に好ましくは0.05〜0.10である。
【0019】
また本発明におけるポリケトン共重合体の分子量は特に制限はないが、通常、標準細管粘度測定装置で、m−クレゾール中、60℃で測定したポリマーの極限粘度数(LVN)は0.5〜10.0のものを使用することができ、好ましくは0.8〜4.0、特に好ましくは1.5〜2.0である。
【0020】
このようなポリケトン共重合体の融点は175℃〜300℃であり、好ましくは210℃〜270℃である。
【0021】
このようなポリケトン共重合体の製造方法は、特に制限はないが、通常一酸化炭素とエチレンおよびプロピレンとを、パラジウム化合物、pKaが約6以下(18℃の水溶液中で測定)のハロゲン化水素酸でない酸のアニオンおよび燐二座配位子から生成する触媒組成物の存在下で接触させるものである。
【0022】
ここでパラジウム化合物としては、パラジウムを含有する化合物であれば特に制限はないが、例えば、酢酸パラジウム、パラジウムアセチルアセトネートを使用することができる。またこれらの化合物は、炭素上に担持させてもあるいはイオン交換体、例えばスルホン酸基を含むイオン交換体に結合させたものも使用することができる。
【0023】
パラジウム化合物の使用量は特に制限はないが、通常重合すべきモノマー総モル数に対して、10-8〜10-1倍モルであることが好ましい。
【0024】
pKaが約6以下(18℃の水溶液中で測定)のハロゲン化水素酸でない酸のアニオンの具体例として、スルホン酸のアニオン、例えば、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ならびにカルボン酸、例えば、トリクロロ酢酸、ジフロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、モノクロロ酢酸、ジフルオロプロピオン酸、酢酸、酒石酸および2,5−ジヒドロキシ安息香酸、その他塩酸、フッ化水素酸、臭化水素酸等からなるアニオンが挙げられる。これらの中で、特にp−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸からなるアニオンが好ましく使用することができる。
【0025】
pKaが6以下の酸のアニオンの量はパラジウム化合物中、パラジウム金属1g原子当たり、0.5〜200当量、特に1.0〜100当量が好ましい。
【0026】
また2座配位子の構造は特に制限はないが、通常1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,3−ビス[ジ(2−メトキシフェニル)ホスフィノ]プロパン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、2,3−ジメチル−1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,5−ビス(メチル−フェニル−ホスフィノ)ペンタン、1,4−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)ブタン、1,5−ビス(ナフチルホスフィノ)ペンタン、1,3−ビス(ジp−トリルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジ−p−メトキシフェニルホスフィノ)プロパン、1,2−ビス(フェニルホスフィノ)エテン、2,3−ビス(フェニルホスフィノ)−2−オキサプロパン、2−メチル,2−(メチルジフェニルホスフィノ)−1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、0,0’−ビス(ジフェニルホスフィノ)ビフェニル、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン、2,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)ナフタレン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)シクロヘキサン、2,2−ジメチル−4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)ジオキソランおよび
【0027】
【化4】
【0028】
等が挙げられるが、好ましくは1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,3−ビス[ジ(2−メトキシフェニル)ホスフィノ]プロパンである。
【0029】
このような二座配位子の使用量は特に制限はないが、通常、パラジウム化合物1モル当たり、0.1〜10モル使用することができ、好ましくは0.2〜5モル、特に好ましくは0.33〜3モルである。
【0030】
重合は、実質的に反応希釈剤を含まない気相中、またはアルカノール(例えばメタノールまたはエタノール)などの反応希釈剤を含む液相中で行うことができる。反応剤は重合条件において、触媒組成物の存在下、反応容器中で振盪または撹拌するなどの常法により接触させことができる。好適な反応温度は20〜150℃、好ましくは50〜135℃である。典型的な反応圧力は0.1〜10MPaであり、1〜10MPaが好ましい。反応後ポリマーをデカンテーションまたは濾過により回収することができる。ポリマー生成物は触媒組成物残さを含んでいてもよいが、所望ならば、溶媒または残さに対して選択的な錯化剤によって処理することにより除去する。
【0031】
また本発明で使用されるポリケトン共重合体は、液晶性樹脂(B)との相溶性および接着性の面から、ポリマー分子中あるいはポリマー末端に水酸基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、カルボン酸金属塩基、カルボン酸無水物基、イミド基などの内、少なくとも一種の官能基を有するポリケトン共重合体(変性ポリケトン共重合体)が好ましく使用することができる。この様な変性ポリケトン共重合体の製造方法は特に制限はないが、例えば、重合時、重合終了時あるいは溶融混練時に、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、メチルマレイン酸、メチルフマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタル酸およびこれらカルボン酸の金属塩、マレイン酸水素メチル、イタコン酸水素メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸ヒドロキシエチル、メタアクリル酸アミノエチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸ジメチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、エンドビシクロ−(2,2,1)−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸、エンドビシクロ−(2,2,1)−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物、マレイミド、N−エチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジルなどを添加することにより製造することができる。
【0032】
あるいはまた重合時あるいは重合終了時に水、メタノール、エタノール、ブタノールなどのアルコール類、酢酸、酢酸メチル、酢酸エチルなどのカルボン酸あるいはカルボン酸エステル、エチレングリコール、ブタンジオールなどのグリコールを添加することにより製造することができる。
【0033】
本発明の液晶性樹脂(B)は、異方性溶融相を形成し得る樹脂であり、エステル結合を有するものが好ましい。例えば芳香族オキシカルボニル単位、芳香族ジオキシ単位、芳香族および/または脂肪族ジカルボニル単位、アルキレンジオキシ単位などから選ばれた構造単位からなり、かつ異方性溶融相を形成する液晶性ポリエステル、あるいは、上記構造単位と芳香族イミノカルボニル単位、芳香族ジイミノ単位、芳香族イミノオキシ単位などから選ばれた構造単位からなり、かつ異方性溶融相を形成する液晶性ポリエステルアミドなどである。
【0034】
芳香族オキシカルボニル単位としては、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸などから生成した構造単位、芳香族ジオキシ単位としては、例えば、4,4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルなどから生成した構造単位、芳香族および/または脂肪族ジカルボニル単位としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、1,2−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸および4,4’ジフェニルエーテルジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸などから生成した構造単位、アルキレンジオキシ単位としてはエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等から生成した構造単位(なかでもエチレングリコールから生成した構造単位が好ましい。)、芳香族イミノオキシ単位としては、例えば、4−アミノフェノールなどから生成した構造単位が挙げられる。
【0035】
液晶性ポリエステルの具体例としては、p−ヒドロキシ安息香酸および6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から生成した構造単位、芳香族ジヒドロキシ化合物および/または脂肪族ジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、テレフタル酸および/またはアジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、テレフタル酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、テレフタル酸およびイソフタル酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、テレフタル酸および/またはアジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボンから生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した構造単位、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステルなどが挙げられる。
【0036】
なかでも異方性溶融相を形成する液晶性ポリエステルの例としては、下記(I)、(II)、(III) および(IV)の構造単位からなる液晶性ポリエステル、または、(I)、(III) および(IV)の構造単位からなる液晶性ポリエステルなどが好ましく挙げられる。
【0037】
特に好ましいのは(I)、(II)、(III)および(IV)の構造単位からなる液晶性ポリエステルである。
【0038】
【化5】
【0039】
(ただし式中のR1は
【0040】
【化6】
【0041】
から選ばれた1種以上の基を示し、R2は
【0042】
【化7】
【0043】
から選ばれた1種以上の基を示す。ただし式中Xは水素原子または塩素原子を示す。)。
【0044】
上記構造単位(I)はp−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位であり、構造単位(II)は4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルから選ばれた一種以上の芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した構造単位を、構造単位(III)はエチレングリコールから生成した構造単位を、構造単位(IV)はテレフタル酸、イソフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、1,2−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸および4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸から選ばれた一種以上の芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位を各々示す。これらのうちR1が
【0045】
【化8】
【0046】
であり、R2が
【0047】
【化9】
【0048】
であるものが特に好ましい。
【0049】
本発明に好ましく使用できる液晶性ポリエステルは、上記したように、構造単位(I)、(III)、(IV)からなる共重合体および上記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)からなる共重合体から選択される1種以上であり、上記構造単位(I)、(II)、(III)および(IV)の共重合量は任意である。しかし、本発明の特性を発揮させるためには次の共重合量であることが好ましい。
【0050】
すなわち、上記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)からなる共重合体の場合は、上記構造単位(I)および(II)の合計は構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して30〜95モル%が好ましく、40〜85モル%がより好ましい。また、構造単位(III)は構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して70〜5モル%が好ましく、60〜15モル%がより好ましい。また、構造単位(I)の(II)に対するモル比[(I)/(II)]は好ましくは75/25〜95/5であり、より好ましくは78/22〜93/7である。また、構造単位(IV)は構造単位(II)および(III)の合計と実質的に等モルであることが好ましい。
【0051】
一方、上記構造単位(II) を含まない場合は流動性の点から上記構造単位(I)は構造単位(I)および(III)の合計に対して40〜90モル%であることが好ましく、60〜88モル%であることが特に好ましく、構造単位(IV)は構造単位(III)と実質的に等モルであることが好ましい。
【0052】
ここで実質的に等モルとは、末端を除くポリマー主鎖を構成するユニットが等モルであるが、末端を構成するユニットとしては必ずしも等モルとは限らないことを意味する。
【0053】
また液晶性ポリエステルアミドとしては、上記構造単位(I)〜(IV)以外にp−アミノフェノールから生成したp−イミノフェノキシ単位を含有した異方性溶融相を形成するポリエステルアミドが好ましい。
【0054】
上記好ましく用いることができる液晶性ポリエステル、液晶性ポリエステルアミドは、上記構造単位(I)〜(IV)を構成する成分以外に3,3’−ジフェニルジカルボン酸、2,2’−ジフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸などの脂環式ジカルボン酸、クロルハイドロキノン、3,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,4’−ジヒドロキシビフェニル等の芳香族ジオール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族、脂環式ジオールおよびm−ヒドロキシ安息香酸、2,6−ヒドロキシナフトエ酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸およびp−アミノ安息香酸などを液晶性を損なわない程度の範囲でさらに共重合せしめることができる。
【0055】
本発明において使用する上記液晶性樹脂(B)の製造方法は、特に制限がなく、公知のポリエステルの重縮合法に準じて製造できる。
【0056】
例えば、上記液晶性ポリエステルの製造において、次の製造方法が好ましく挙げられる。
(1)p−アセトキシ安息香酸および4,4’−ジアセトキシビフェニル、ジアセトキシベンゼンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物のジアシル化物と2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸から脱酢酸縮重合反応によって液晶性ポリエステルを製造する方法。
(2)p−ヒドロキシ安息香酸および4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物と2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸に無水酢酸を反応させて、フェノール性水酸基をアシル化した後、脱酢酸重縮合反応によって液晶性ポリエステルを製造する方法。
(3)p−ヒドロキシ安息香酸のフェニルエステルおよび4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物と2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸のジフェニルエステルから脱フェノール重縮合反応により液晶性ポリエステルを製造する方法。
(4)p−ヒドロキシ安息香酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸に所定量のジフェニルカーボネートを反応させて、それぞれジフェニルエステルとした後、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物を加え、脱フェノール重縮合反応により液晶性ポリエステルを製造する方法。
(5)ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルのポリマー、オリゴマーまたはビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレートなど芳香族ジカルボン酸のビス(β−ヒドロキシエチル)エステルの存在下で(1)または(2)の方法により液晶性ポリエステルを製造する方法。
【0057】
また、液晶性樹脂(B)の溶融粘度は特に限定されないが、本発明の効果をより発揮するために、液晶性樹脂の融点+10℃で測定した値が、100Pa・s以下であることが好ましく、より好ましくは0.1〜50Pa・sであり、最も好ましくは0.5〜30Pa・sである。なお、ここで溶融粘度は、剪断速度1,000(1/秒)の条件下でノズル径0.5mmφ、ノズル長10mmのノズルを用い高化式フローテスターによって測定した値である。
【0058】
ここで融点とは示差熱量測定において、重合を完了したポリマーを室温から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1 )の観測後、Tm1 +20℃の温度で5分間保持した後、20℃/分の降温条件で室温まで一旦冷却した後、再度20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm2)を融点とする。
【0059】
本発明で用いる非液晶樹脂(A)と液晶性樹脂(B)の配合比は耐透過性、表面外観、制振性の点から(A)と(B)の合計に対し、(A)92〜50重量%、(B)8〜50重量%である。
【0060】
本発明の組成物は、通常、マトリックス樹脂である非液晶性樹脂(A)中に、液晶性樹脂(B)が分散する構造を有している。非液晶性樹脂(A)中に分散する液晶性樹脂(B)の分散径分布幅が本発明の効果である液体および気体の耐透過性、制振性および高湿度下での使用において高剛性などの本発明の効果を最大限に引き出すには、液晶性樹脂の分散粒子の60%以上が0.5α〜1.5αの分散径(αは重量平均分散径)を有することであり、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上が上記範囲内であることである。
【0061】
非液晶性樹脂(A)中の液晶性樹脂(B)の数平均分散径の測定方法は、組成物の配向方向に切削して得られたコア層部分の切片を電子透過型顕微鏡(TEM)により観察・写真撮影し、分散粒子100個の平均値をそれぞれ数平均分散径として求めた。なお、分散粒子径は長径方向で測定する。
【0062】
本発明に用いる充填材(C)としては、特に限定されるものではないが、繊維状、板状、粉末状、粒状などの充填材を使用することができる。具体的には例えば、ガラス繊維、PAN系やピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、芳香族ポリアミド繊維などの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ほう酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカーなどの繊維状、ウィスカー状充填剤、マイカ、タルク、カオリン、シリカ、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスマイクロバルーン、クレー、二硫化モリブデン、ワラステナイト、酸化チタン、酸化亜鉛、ポリリン酸カルシウム、グラファイトなどの粉状、粒状あるいは板状の充填剤が挙げられる。上記充填剤中、ガラス繊維および導電性が必要な場合にはPAN系の炭素繊維が好ましく使用される。ガラス繊維の種類は、一般に樹脂の強化用に用いるものなら特に限定はなく、例えば長繊維タイプや短繊維タイプのチョップドストランド、ミルドファイバーなどから選択して用いることができる。また、上記の充填剤は2種以上を併用して使用することもできる。なお、本発明に使用する上記の充填剤はその表面を公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤など)、その他の表面処理剤で処理して用いることもできる。
【0063】
また、ガラス繊維はエチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被覆あるいは集束されていてもよい。
【0064】
上記の充填剤の添加量は、非液晶性樹脂(A)および液晶性樹脂(B)の合計量100重量部に対し、0.5〜200重量部であり、好ましくは5〜150重量部、より好ましくは10〜100重量部である。
【0065】
本発明においては(C)成分として用いられる充填材は非液晶性樹脂と液晶性樹脂との溶融混練後の状態、特に1回の溶融混練を受けた状態で長径あるいは繊維長60μm以下の充填材の割合が全充填材中5〜50重量%の範囲に制御されている。なぜならば長径あるいは繊維長60μm以下の充填材が特定量存在することにより樹脂組成物の成形品の表面外観が特に良好な成形品が得られるからである。
【0066】
長径あるいは繊維長60μm以下の充填材の特に好ましい割合は10〜40重量%の範囲である。60μm以下の充填材の割合が少なすぎると好適条件より表面外観が若干低く、逆に多すぎると機械強度への悪影響が出ることが懸念される。
【0067】
また、組成物中の充填材の平均厚み(短径)あるいは平均繊維径は特に限定されないが5〜15μmであることが好ましい。
【0068】
特に充填材として、ガラス繊維を用いる場合に、組成物中の分布状態を上述の如くすることにより、特に好ましい効果を発揮するが、分布状態を上記範囲にするために例えば、板状あるいは塊状充填材を併用することも可能である。
【0069】
かかる長径分布あるいは繊維長分布を有する強化樹脂組成物は1回の溶融混練工程で得ることが生産効率上好ましく、それを実現するための効率的な方法の一例としてストランド長1mm以上のガラス繊維等の繊維状充填材と繊維長20〜500μmのガラス繊維等の繊維状充填材あるいは平均粒度分布5〜200μmのマイカなどの非繊維状充填材とを適正な割合の混合物として原料に使用する方法を挙げることができる。
【0070】
組合せとしては平均繊維径5〜15μm、ストランド長が1mm以上のガラス繊維と平均繊維径5〜15μm、ストランド長が20〜500μmのガラス繊維などの充填材との混合物が好ましく挙げられる。
また、ストランド長の異なるガラス繊維を2種以上併用する際には、用いるガラス繊維の平均径が2μm以上異なる種類のものを使用することも好ましい方法である。
【0071】
組成物中の充填剤の厚み(短径)あるいは繊維径および長径あるいは繊維長の測定方法は、組成物約5gをるつぼ中で灰化した後、残存した充填剤のうちから100mgを採取し、100ccの石鹸水中に分散させる。ついで、分散液をスポイトを用いて1〜2滴スライドガラス上に置き、顕微鏡下に観察して、写真撮影する。写真に撮影された充填剤の長径と厚みあるいは繊維長と繊維径を測定する。炭素繊維の繊維長を求める際には灰化条件を誤ると繊維そのものが酸化、燃焼してしまう場合があるので注意が必要であり、窒素雰囲気下で灰化することが望ましい。用いる熱可塑性樹脂が可溶の場合には、溶媒を用いて組成物を溶かし繊維を取り出して繊維長を測定することもできる。測定は300本以上行い、60μm以下の割合を算出する。
【0072】
本発明の気体および/または液体バリア部品用強化樹脂組成物に導電性を付与するために導電性フィラー及び/又は導電性ポリマーを使用することが可能であり、特に限定されるものではないが、導電性フィラーとして、通常樹脂の導電化に用いられる導電性フィラーであれば特に制限は無く、その具体例としては、金属粉、金属フレーク、金属リボン、金属繊維、金属酸化物、導電性物質で被覆された無機フィラー、カーボン粉末、黒鉛、炭素繊維、カーボンフレーク、鱗片状カーボンなどが挙げられる。
【0073】
金属粉、金属フレーク、金属リボンの金属種の具体例としては銀、ニッケル、銅、亜鉛、アルミニウム、ステンレス、鉄、黄銅、クロム、錫などが例示できる。
【0074】
金属繊維の金属種の具体例としては鉄、銅、ステンレス、アルミニウム、黄銅などが例示できる。
【0075】
かかる金属粉、金属フレーク、金属リボン、金属繊維はチタネート系、アルミ系、シラン系などの表面処理剤で表面処理を施されていても良い。
【0076】
金属酸化物の具体例としてはSnO2 (アンチモンドープ)、In2 O3 (アンチモンドープ)、ZnO(アルミニウムドープ)などが例示でき、これらはチタネート系、アルミ系、シラン系などの表面処理剤で表面処理を施されていても良い。
【0077】
導電性物質で被覆された無機フィラーにおける導電性物質の具体例としてはアルミニウム、ニッケル、銀、カーボン、SnO2 (アンチモンドープ)、In2 O3 (アンチモンドープ)などが例示できる。また被覆される無機フィラーとしては、マイカ、ガラスビーズ、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウムウィスカー、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、ホウ酸アルミニウムウィスカー、酸化亜鉛系ウィスカー、酸化チタン酸系ウィスカー、炭化珪素ウィスカーなどが例示できる。被覆方法としては真空蒸着法、スパッタリング法、無電解メッキ法、焼き付け法などが挙げられる。またこれらはチタネート系、アルミ系、シラン系などの表面処理剤で表面処理を施されていても良い。
【0078】
カーボン粉末はその原料、製造法からアセチレンブラック、ガスブラック、オイルブラック、ナフタリンブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、チャンネルブラック、ロールブラック、ディスクブラックなどに分類される。本発明で用いることのできるカーボン粉末は、その原料、製造法は特に限定されないが、アセチレンブラック、ファーネスブラックが特に好適に用いられる。またカーボン粉末は、その粒子径、表面積、DBP吸油量、灰分などの特性の異なる種々のカーボン粉末が製造されている。本発明で用いることのできるカーボン粉末は、これら特性に特に制限は無いが、強度、電気伝導度のバランスの点から、平均粒径が500nm以下、特に5〜100nm、更には10〜70nmが好ましい。また表面積(BET法)は10m2 /g以上、更には30m2 /g以上が好まし。またDBP給油量は50ml/100g以上、特に100ml/100g以上が好ましい。また灰分は0.5%以下、特に0.3%以下が好ましい。
【0079】
かかるカーボン粉末はチタネート系、アルミ系、シラン系などの表面処理剤で表面処理を施されていても良い。また溶融混練作業性を向上させるために造粒されたものを用いることも可能である。
【0080】
本発明の気体および/または液体バリア部品用強化樹脂組成物を加工して得られた成形体は、しばしば表面の平滑性が求められる。かかる観点から、本発明で用いられる導電性フィラーは、本発明で用いられる充填材(C)同様、高いアスペクト比を有する繊維状フィラーよりも、粉状、粒状、板状、鱗片状、或いは樹脂組成物中の長さ/直径比が200以下の繊維状のいずれかの形態であることが好ましい。
【0081】
本発明で用いられる導電性ポリマーの具体例としては、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリ(パラフェニレン)、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレンなどが例示できる。
【0082】
上記導電性フィラー及び/又は導電性ポリマーは、2種以上を併用して用いても良い。かかる導電性フィラー、導電性ポリマーの中で、特にカーボンブラックが強度、コスト的に特に好適に用いられる。
【0083】
本発明で用いられる導電性フィラー及び/又は導電性ポリマーの含有量は、用いる導電性フィラー及び/又は導電性ポリマーの種類により異なるため、一概に規定はできないが、導電性と流動性、機械的強度などとのバランスの点から、次のような範囲が好ましい。すなわち、導電性ポリマーの場合には、(A)および(B)成分と(C)成分の合計100重量部に対し、1〜250重量部、好ましくは3〜100重量部の範囲が好ましく選択される。導電性フィラーは、充填材(C)の一種であるので、その配合量は(C)成分の内数として考える。
【0084】
また導電性を付与した場合、十分な帯電防止性能を得る意味で、その体積固有抵抗が1010Ω・cm以下であることが好ましい。但し上記導電性フィラー、導電性ポリマーの配合は一般に強度、流動性の悪化を招きやすい。そのため目標とする導電レベルが得られれば、上記導電性フィラー、導電性ポリマーの配合量はできるだけ少ない方が望ましい。目標とする導電レベルは用途によって異なるが、通常体積固有抵抗が100Ω・cmを越え、1010Ω・cm以下の範囲である。
【0085】
本発明の気体および/または液体バリア部品用強化樹脂組成物にさらに衝撃強度の改良などの特性を付与する上で必要に応じてカルボン酸無水物基を分子内に有するオレフィン化合物またはこれらオレフィン化合物の重合体を配合してもよく、特に本発明の非液晶性樹脂(A)としてポリアミドやポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートをはじめとするポリエステルを用いた場合に有用である。具体例としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水グルタコン酸、無水シトラコン酸、無水アコニット酸、またはこれら置換オレフィン化合物の重合体などが挙げられる。なお、オレフィン化合物の重合体にはスチレン、イソブチレン、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルなど、カルボン酸無水物基を分子内に有するオレフィン化合物以外のオレフィンが本発明の効果を損なわない範囲で共重合されていても差し支えないが、実質的にカルボン酸無水物基を分子内に有するオレフィン化合物の重合体からなることが好ましい。オレフィン化合物の重合体の重合度は2〜100が好ましく、2〜50がより好ましく、さらに2〜20が最も好ましい。これらの中で、無水マレイン酸、ポリ無水マレイン酸が最も好ましく用いられる。ポリ無水マレイン酸としては、例えば J. Macromol. Sci.-Revs. Macromol. Chem., C13(2), 235(1975)等に記載のものを用いることができる。
【0086】
これらカルボン酸無水物基を分子内に有するオレフィン化合物またはこれらオレフィン化合物の重合体の添加量は(A)成分、(B)成分および(C)成分の合計100重量部に対して0.05〜10重量部が衝撃強度の向上効果、組成物の流動性の点から好ましく、さらに0.1〜5重量部の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは0.1〜3重量部である。
【0087】
なお、ここで用いるカルボン酸無水物基を分子内に有するオレフィン化合物またはこれらオレフィン化合物の重合体は実質的に非液晶性樹脂(A)と溶融混練する際に無水物の構造を取ればよく、これらオレフィン化合物またはオレフィン化合物の重合体を加水分解してカルボン酸あるいはその水溶液の様な形態で溶融混練に供し、溶融混練の際の加熱により脱水反応させ、実質的に無水酸の形で非液晶性樹脂(A)と溶融混練してもかまわない。
【0088】
例えば、気体および/または液体バリア部品用強化樹脂組成物の薬液およびガスなどの耐透過性をさらに向上させることが必要な場合、酸無水物あるいは多価エポキシ化合物を添加することが可能である。酸無水物の例としては、無水安息香酸、無水イソ酪酸、無水イタコン酸、無水オクタン酸、無水グルタル酸、無水コハク酸、無水酢酸、無水ジメチルマレイン酸、無水デカン酸、無水トリメリト酸、無水1,8−ナフタル酸、無水フタル酸、無水マレイン酸などが挙げられ、中でも無水コハク酸、無水1,8−ナフタル酸、無水フタル酸、無水マレイン酸などが好ましく用いられる。また、多価エポキシ化合物は、分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物である。好ましくは多価エポキシ化合物は、エポキシ当量100 〜1000の多官能エポキシ化合物から選択される。そのような多価エポキシ化合物としては、例えばノボラック樹脂(フェノールノボラック、クレゾールノボラック等)とエピクロルヒドリンとを反応させて得られるノボラック型エポキシ化合物が挙げられる。または、1分子に2個以上の活性水素を有する化合物とエピクロルヒドリンまたは2-メチルエピクロルヒドリンとを反応させて得られる化合物が挙げられる。1分子に2個以上の活性水素を有する化合物としては、例えば多価フェノール類(ビスフェノールA、ビスヒドロキシジフェニルメタン、レゾルシン、ビスヒドロキシジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールA等)、多価アルコール類(エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ビスフェノールA‐エチレンオキシド付加物、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート等)、アミノ化合物(例えばエチレンジアミン、アニリン等)、多価カルボキシ化合物(例えばアジピン酸、フタル酸、イソフタル酸等)が挙げられる。そのような多価エポキシ化合物の例としては、例えばテレフタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジルシアヌレート、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、N,N'- ジグリシジルアニリン等が挙げられる。その他に、線状脂肪族エポキシ化合物、例えばブタジエンダイマージエポキシド、エポキシ化大豆油など、脂環式エポキシ化合物、例えばビニルシクロヘキセンジオキシド、ジシクロペンタジエンジエポキシド等などが挙げられる。これらを単独でまたは2種以上組合せて使用する。
【0089】
本発明で用いる酸無水物あるいは多価エポキシ化合物の配合量は、耐透過性改良効果の点から非液晶性樹脂(A)100重量部に対して0.01〜5重量部が好ましく、より好ましくは0.05〜3重量部、特に好ましくは0.1〜2重量部である。酸無水物を用いることにより、非液晶性樹脂(A)中に分散する液晶性樹脂の粒径分布幅が狭くなり、結果的に液晶性樹脂添加による耐透過性がより優れた向上効果を発揮する。しかし、酸無水物量が多すぎるとコンパウンド時および吹込成形時にガスが発生し、噛み込み不良、成形品のガス焼けおよび吹込時の成形品の破裂およびガス漏れ発生の原因あるいは反応過多によるゲル化が起こり、最悪の場合は成形不可能となる。また、例えば、成形品が得られたとしても得られた成形品も表面外観のみならず、機械特性も低下する傾向にある。
【0090】
本発明において用いる酸無水物の気体および/または液体バリア部品用強化樹脂組成物中での存在状態は特に限定されず、酸無水物、水あるいは非液晶性樹脂、液晶性樹脂およびそのモノマー・オリゴマーとの反応物のいずれの状態で存在していてもかまわない。
【0091】
また、本発明の非液晶性樹脂(A)としてポリアミドを用いた場合、長期耐熱性を向上させるために銅化合物が好ましく用いられる。銅化合物の具体的な例としては、塩化第一銅、塩化第二銅、臭化第一銅、臭化第二銅、ヨウ化第一銅、ヨウ化第二銅、硫酸第二銅、硝酸第二銅、リン酸銅、酢酸第一銅、酢酸第二銅、サリチル酸第二銅、ステアリン酸第二銅、安息香酸第二銅および前記無機ハロゲン化銅とキシリレンジアミン、2ーメルカプトベンズイミダゾール、ベンズイミダゾールなどの錯化合物などが挙げられる。なかでも1価の銅化合物とりわけ1価のハロゲン化銅化合物が好ましく、酢酸第1銅、ヨウ化第1銅などを特に好適な銅化合物として例示できる。銅化合物の添加量は、通常ポリアミド100重量部に対して0.01〜2重量部であることが好ましく、さらに0.015〜1重量部の範囲であることが好ましい。添加量が多すぎると溶融成形時に金属銅の遊離が起こり、着色により製品の価値を減ずることになる。本発明では銅化合物と併用する形でハロゲン化アルカリを添加することも可能である。このハロゲン化アルカリ化合物の例としては、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、臭化ナトリウムおよびヨウ化ナトリウムを挙げることができ、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウムが特に好ましい。
【0092】
また本発明の樹脂組成物にアルコキシシラン、好ましくはエポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、水酸基、メルカプト基、ウレイド基の中から選ばれた少なくとも1種の官能基を有するアルコキシシランの添加は、機械的強度、靱性などの向上に有効である。かかる化合物の具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有アルコキシシラン化合物、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのメルカプト基含有アルコキシシラン化合物、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシシラン、γ−(2−ウレイドエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのウレイド基含有アルコキシシラン化合物、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリクロロシランなどのイソシアナト基含有アルコキシシラン化合物、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有アルコキシシラン化合物、γ−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−ヒドロキシプロピルトリエトキシシランなどの水酸基含有アルコキシシラン化合物などが挙げられる。
【0093】
本発明における組成物中には本発明の効果を損なわない範囲で他の成分、例えば酸化防止剤や耐熱安定剤(ヒンダードフェノール系、ヒドロキノン系、ホスファイト系およびこれらの置換体等)、耐候剤(レゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等)、離型剤及び滑剤(モンタン酸及びその金属塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミド、各種ビスアミド、ビス尿素及びポリエチレンワックス等)、顔料(硫化カドミウム、フタロシアニン、カーボンブラック等)、染料(ニグロシン等)、結晶核剤(タルク、シリカ、カオリン、クレー等)、可塑剤(p−オキシ安息香酸オクチル、N−ブチルベンゼンスルホンアミド等)、帯電防止剤(アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートのような非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等)、難燃剤(例えば、赤燐、メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化PPO、臭素化PC、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせ等)、他の重合体を添加することができる。
【0094】
本発明で規定した条件を満たす樹脂組成物が得られる限り、制限はないが、この溶融混練において、好ましい液晶性樹脂の分散状態および充填材の繊維長分布を実現するためには、たとえば2軸押出機で溶融混練する場合に充填材の一部を樹脂原料フィーダーから非液晶性樹脂と液晶性樹脂と共に供給し、残りの充填材を押出機の先端部分のサイドフィーダーから供給して充填材の受けるせん断履歴を制御する方法や原料として用いる充填材を異なる長径および繊維長のものとする方法などが挙げられる。あるいは、非液晶性樹脂を樹脂原料フィーダーから、液晶性樹脂および充填材をサイドフィーダーから供給し、混練するか、あるいは非液晶性樹脂および液晶性樹脂を樹脂原料フィーダーから、充填材をサイドフィーダーから供給し混練する方法が用いられる。
【0095】
また、その他添加剤を添加する際、前記した非液晶性樹脂(A)、液晶性樹脂(B)および充填材(C)との好ましい混練方法におけるいずれの段階で添加してもよい。具体的には、非液晶性樹脂および酸無水物あるいは多価エポキシ化合物、エラストマー等のその他の添加剤を溶融混練した後、液晶性樹脂、充填材と混練する方法、全ての成分を一括混練する方法、一度非液晶性樹脂と酸無水物あるいは多価エポキシ化合物、液晶性樹脂とを混練した後に充填材およびその他の添加剤を混練する方法、一度非液晶性樹脂と酸無水物あるいは多価エポキシ化合物、液晶性樹脂とを混練し樹脂組成物(Z)とした後、得られた樹脂組成物(Z)を用いて充填材の高濃度組成物(マスター)(M)を作成する等が挙げられ、いずれの方法でもかまわない。
【0096】
本発明の気体および/または液体バリア部品用強化樹脂組成物の成形方法に関しても制限はなく、公知の方法(射出成形、押出成形、吹込成形、プレス成形等)を利用することができるが、本発明の効果を容易に得るため、または生産上好ましい方法は、射出成形、押出成形、吹込成形である。
【0097】
また、成形温度については例えば、通常、ポリアミドの融点より10〜70℃高い温度範囲、好ましくは融点より15〜60℃高い温度範囲特に好ましくは融点より20〜40℃高い温度範囲から選択される。また、容器、チューブ等の中空成形品、シート形状などの成形品とする場合、一般的には、単層であるが、多層にしてもかまわない。
【0098】
射出成形の場合、通常の射出成形機を用い成形可能であり、多層成形品を得るために、例えば2色成形機を用いて射出成形を実施すれば良い。吹込成形の場合、通常の吹込成形機を用いパリソンを形成した後、適当な温度で吹込成形を実施すればよい。また、吹込成形の形態も単層成形体、多層成形体のいずれでもよい。押出成形(チューブ用、フィルム用)についても吹込成形と同様であり、押出機先端に所望の形状のダイを取り付け、単層成形体、多層成形体を得る。また、得られた成形品を振動溶着、超音波溶着、熱板溶着等の本発明の樹脂成形品同士あるいは他の熱可塑性樹脂の成形品とを接着させ用いても良い。
【0099】
次に、本発明の成形品の製造方法の1例である多層成形品を例にして説明するが、もちろん下記に限定されるものではない。即ち、層の数もしくは材料の数の押出機より押し出された溶融樹脂を、一つの多層用ダイスに導入し、ダイス内もしくはダイスを出た直後に接着せしめることにより、多層成形品を製造することができる。また、一旦単層成形品を製造し、その内側あるいは外側に他の層を積層し、多層成形品を製造する方法によってもよい。
【0100】
なお、三層以上の多層構成からなる多層成形体を製造する場合には、押出機を適宜に増設してそれぞれの押出機を共押出ダイに接続し、多層状のパリソンを押出すことにより得られる。
【0101】
本発明の多層成形体における各層の配置については特に制限はなく、全ての層を本発明の気体および/または液体バリア部品用強化樹脂組成物で構成してもよいし、他の層にその他の熱可塑性樹脂あるいは気体および/または液体バリア部品用強化樹脂組成物の充填材未添加品を用いて構成してもよい。本発明の気体および/または液体バリア部品用強化樹脂組成物からなる層はその耐透過性効果を十分に発揮させる上で、2層の場合は最内層であることが好ましい。
【0102】
ここで用いられる本発明の気体および/または液体バリア部品用強化樹脂組成物以外の層として用いられる熱可塑性樹脂としては、飽和ポリエステル、ポリスルホン、四フッ化ポリエチレン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリケトン共重合体、ポリフェニレンエーテル、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリチオエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、熱可塑性ポリウレタン、ポリオレフィン、ABS、ポリアミドエラストマ、ポリエステルエラストマなどが例示でき、必要に応じ、これらの一種以上の熱可塑性樹脂を配合して用いることも、それらに各種添加剤を添加して所望の物性を付与して用いることも可能である。
【0103】
また、得られた成形品同士あるいはその他の成形品と接着または溶着させてもよく、その方法は特に限定されず一般的な技術を用いることが可能である。
【0104】
本発明の気体および/または液体バリア部品用強化樹脂組成物から得られた成形品は例えば、フロン−11、フロン−12、フロン−21、フロン−22、フロン−113、フロン−114、フロン−115、フロン−134a、フロン−32、フロン−123、フロン−124、フロン−125、フロン−143a、フロン−141b、フロン−142b、フロン−225、フロン−C318、R−502、1,1,1−トリクロロエタン、塩化メチル、塩化メチレン、塩化エチル、メチルクロロホルム、プロパン、イソブタン、n−ブタン、ジメチルエーテル、ひまし油ベースのブレーキ液、グリコールエーテル系ブレーキ液、ホウ酸エステル系ブレーキ液、極寒地用ブレーキ液、シリコーン油系ブレーキ液、鉱油系ブレーキ液、パワースアリリングオイル、ウインドウオッシャ液、ガソリン、メタノール、エタノール、イソプタノール、ブタノール、窒素、酸素、二酸化炭素、メタン、プロパン、アルゴン、ヘリウム、キセノン、医薬剤等の気体および/または液体(およびその気化ガス)等の透過性が低く、また、制振性、吸水時剛性などに優れていることから、なかでも、薬液および/またはガスの搬送チューブ、気体および/または液体の貯蔵用容器またはそれらの付属部品用途に特に有効である。本発明においては、燃料タンク、オイル用リザーバータンク、その他シャンプー、リンス、液体石鹸等の各種薬剤用ボトルおよび付属ポンプなどの薬液保存容器またはその付属部品およびそれらタンク、ボトルに付属するカットオフバルブなどのバルブや継手類、付属ポンプのゲージ、ケース類などの部品、フューエルフィラーアンダーパイプ、ORVRホース、リザーブホース、ベントホースなどの各種燃料チューブ接続部品(コネクター等)、オイルチューブ接続部品、ブレーキホース接続部品、ウインドウオッシャー液用ノズル、エアコン冷媒用チューブ接続用部品、消火器および消火設備用ホース、医療用冷却機材用チューブの接続用部品およびバルブ類、その他薬液などの液体および/またはガス搬送用チューブ用途、薬品保存用容器等の薬液および耐ガス透過性が必要とされる用途、自動車部品、内燃機関用途、電動工具ハウジング類などの機械部品を始め、電気・電子部品、医療機器、食品容器、家庭・事務用品、建材関係部品、家具用部品など各種用途で気体および/または液体バリア性が要求される部品用途に有効である。
【0105】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の骨子は以下の実施例にのみ限定されるものではない。
【0106】
参考例1(非液晶性樹脂)
A−1
ナイロン6:アミランCM1021(東レ社製)
A−2
ポリケトン共重合体:
触媒組成物として、酢酸パラジウム0.1mmol、1,3−ビス[(ジ(2−メトキシフェニル)ホスフィノ]プロパン0.15mmolおよびトリフロロ酢酸2mmolを秤量し、250mlの耐圧オートクレーブに、投入した。その後、一酸化炭素でオートクレーブ内を置換し、20バールの圧力のエチレン、1.4バールのプロピレンおよび30バールの圧力の一酸化炭素をオートクレーブ内に投入し、90℃、1時間反応させた。反応終了後、オートクレーブを冷却した後、オートクレーブ内のポリマーを取り出した。得られたポリマーをm−クレゾールと少量の重水素化ジメチルスルホキシドに90℃に加熱し溶解させ、90MHz 1H−NMRより、x、yのモル比を測定したところ、仕込量とほぼ同じy/x=0.072のポリマー、融点221℃、m−クレゾール中、60℃で測定したLVNは1.8dl/gであった。
【0107】
なお、上記融点は、PERKIN−ELMER DSC−7を用い、窒素雰囲気下、サンプル量10mg、−100℃から20℃/minの昇温条件で測定した際に観察されるピークのトップをポリマーの融点とした。
【0108】
参考例2(液晶性樹脂)
B−1:
p−ヒドロキシ安息香酸901重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル126重量部、テレフタル酸112重量部、固有粘度が約0.6dl/gのポリエチレンテレフタレ−ト346重量部及び無水酢酸884重量部を撹拌翼、留出管を備えた反応容器に仕込み、重合を行った結果、芳香族オキシカルボニル単位72.5モル当量、芳香族ジオキシ単位7.5モル当量、エチレンジオキシ単位20モル当量、芳香族ジカルボン酸単位27.5モル当量からなる融点265℃、275℃の溶融粘度13Pa・s(オリフィス0.5mmφ×10mm、ずり速度1,000(1/秒))の液晶性樹脂が得られた。
【0109】
実施例1〜2、比較例1〜8
表1に示す配合割合でサイドフィーダー前およびサイドフィダー後にニーディングディスクを各3ブロック挿入したTEX30型2軸押出機(日本製鋼社製)を用いて非液晶性樹脂(A−1、A−2)および液晶性樹脂(B−1)を樹脂原料フィーダーから投入し、サイドフィーダーより表1に示す充填材を投入し、表1に示すシリンダー温度で溶融混練した。得られた組成物はペレタイズした後、80℃で10時間真空乾燥し、下記方法により評価した。
【0110】
(1)ガス透過性(アルコールガソリン(ガソホール)透過性)
直径40mmの押出機の先端にチューブ状に成形するダイス、チューブを冷却し寸法制御するサイジングダイ、および引取機からなるものを使用し、外径:8mm、内径:6mmのチューブを表1のシリンダー温度で成形した。さらに20cm長にカットし、チューブの一端を密栓し、内部に市販レギュラーガソリンとエタノールを75対25重量比に混合したアルコールガソリン混合物を6g精秤し内部に仕込み、残りの端部も密栓した。その後、全体の重量を測定し、試験チューブを60℃の防爆型オーブンにいれ、500時間処理し、減量した重量を測定した。
【0111】
(2)ガス透過性(酸素)
JIS K7126 A法(差圧法)に従いGTR−10(ヤナコ分析工業(株)製)を用いて測定を行った。
【0112】
(3)表面外観
住友ネスタ−ル射出成形機プロマット40/25(住友重機械工業(株)製)に供し、表1のシリンダー温度、金型温度80℃に設定し、12.7mm×127mm×3.2mmの両端にゲートがある成形品を成形し、中央の会合部(ウエルド部)の盛り上がり有無について観察した。
【0113】
評価は、○:ウエルド部盛り上がりなし、×:ウエルド部盛り上がりありとした。
【0114】
(4)ウエルド強度
上記(3)で評価した試験片を支点間距離50mmで会合部を1mm/minの速度で押し、2mm変形させたときに会合部が割れるか評価した。
評価は、○:変化なし、×:割れるとした。
【0115】
(5)制振性(振幅回数)
住友ネスタ−ル射出成形機プロマット40/25(住友重機械工業(株)製)に供し、表1のシリンダー温度、金型温度80℃に設定して成形した成形品(100mm×12.7mm×3.2mm厚)の振幅回数の測定を200〜300Hzの領域で行った(前置増幅器(B&K製2639S型)および電力増幅器(B&K製2706型)および2チャンネルFFT分析器(B&K製2034型)を用いる。)。
【0116】
(6)剛性
23℃×24時間、水中浸漬処理した127mm×12.7mm×1mm厚の成形品をASTM D790に従い、曲げ弾性率を測定した。
【0117】
(7)液晶性樹脂の分散径分布
ASTM D790に従って作成した3.2mm厚曲げ試験片の中心部を流れ方向に切削して得られた切片を電子透過型顕微鏡(TEM)により観察・写真撮影し、分散粒子100個の平均値をそれぞれ重量平均分散径として求めた。なお、分散粒子径は長径方向で測定した。また、分散径分布は上記で求めた分散粒子の各分散径から算出した。
【0118】
(8)充填材分布
組成物のペレットを550℃×8時間焼成し、光学顕微鏡で灰化したサンプルを観察し、充填材の長径方向に500個の充填材の長さを測定し、60μm以下の長さのものの割合を算出した。
【0119】
【表1】
注:GF(ガラス繊維)は、9μm径、3mm(日本電気ガラス社製)
MF(ミルドファイバー)は、平均繊維長140μm、繊維径9μm径(日本電気ガ
ラス社製)
マイカ(A−51S)(巴工業)
無機充填材の配合量は、非液晶性樹脂(A)と液晶性樹脂(B)の合計量100重量
部に対する量(重量部)を示す。
*酸素透過性の単位は、cc25μ/m2 24hr−atm,25℃
(B)の分布とは、液晶性樹脂(B)が重量平均分散径αとした場合、0.5α〜1.5αの範囲に存在する粒子の割合
【0120】
表1の結果から明らかなように本発明の気体および/または液体バリア部品用強化樹脂組成物を加工することにより、従来の熱可塑性樹脂に比較し、気体および/または液体の透過性が低いことはもちろんのこと、さらに表面外観、ウエルド強度、制振性、高湿下での剛性が高い成形品を得ることができるので、気体および/または液体バリア部品用途に特に適することが判明した。
【0121】
【発明の効果】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、気体および/または液体バリア性が良好であり、得られた成形品は、表面外観、制振性、高湿下での剛性が良好であることから各種用途に展開可能であり、例えば電気・電子関連機器、精密機械関連機器、事務用機器、自動車・車両関連部品、建材、包装材、家具、日用雑貨などに適している。
Claims (6)
- (A)下記一般式(1)と(2)
- 該ポリケトン共重合体のy/xが0.01〜0.10であることを特徴とする請求項1記載の気体および/または液体バリア部品用強化樹脂組成物。
- 請求項1または2記載の気体および/または液体バリア部品用強化樹脂組成物を加工してなる、薬液および/またはガスの搬送チューブ、薬液および/またはガスの貯蔵用容器またはそれらの付属部品に用いられる成形品。
- 加工が射出成形によるものである請求項3記載の成形品。
- 加工が押出成形によるものである請求項3記載の成形品。
- 加工が吹込成形によるものである請求項3記載の成形品。
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