以下、この発明による増幅回路の実施形態を、図を参照しながら説明する。
[原理的構成例]
図1は、この発明による増幅回路の実施形態の原理的構成を示す回路図である。
図1に示すように、この実施形態による増幅回路1は、差動アンプ60の差動の出力のそれぞれを、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)カレントミラーの構成を備える出力回路としての電流増幅回路701および702で増幅する増幅回路である。そして、この実施形態の増幅回路1は、カレントミラーの電流利得をプログラマブルとした増幅回路であって、かつ、カレントミラーのバイアス電流が差動アンプ60の動作電流に無関係に設定できるようにしたものである。
すなわち、差動アンプ60は、第1および第2のMOSFET61および62のソースが互いに共通に接続され、その共通接続点が、カレントミラー構成の電流源を構成するMOSFET63のドレイン−ソース間を通じて接地端に接続される。
第1および第2のMOSFET61および62のゲートには、入力信号eiが供給される。そして、ゲートバイアス電圧Ebが、抵抗器67および68をそれぞれ通じて、第1および第2のMOSFET61および62のゲートに供給される。
そして、ゲートとドレインとが接続されてダイオード接続されたMOSFET64が電流源65に直列に接続され、この電流源65とMOSFET64との直列回路が、電源電圧+Vccの電源ラインと接地端との間に接続される。そして、MOSFET64のゲートとドレインとの接続点がMOSFET63のゲートに接続されて、カレントミラー構成とされる。
また、第1のMOSFET61のドレインは、この第1のMOSFETとは逆極性(図の例では、第1のMOSFET61がnチャンネルであるので、pチャンネル)のMOSFET91のソース−ドレイン間を通じて+Vccの電源ラインに接続され、さらに、第2のMOSFET62のドレインは、この第2のMOSFETとは逆極性(図の例では、第2のMOSFET62がnチャンネルであるので、pチャンネル)のMOSFET92のソース−ドレイン間を通じて+Vccの電源ラインに接続される。
そして、これらMOSFET91および92のゲートは、互いに接続されて、後述するコモンモードフィードバック回路90に接続される。
そして、この図1の例では、差動アンプ60の差動の一方および他方の出力を、カレントミラー構成の電流増幅回路701および702のそれぞれで増幅し、電流出力として差動出力し、その差動出力(電圧出力)の一方の出力端OUT1および他方の出力端OUT2の間に、負荷ZLを接続するように構成している。
すなわち、図1の例では、差動アンプ60の差動出力の一方(MOSFET61のドレインに得られる出力)に対しては電流増幅回路701が出力増幅回路として設けられ、この電流増幅回路701から差動の一方の出力端OUT1が導出される。
また、差動アンプ60の差動出力の他方(MOSFET62のドレインに得られる出力)に対しては電流増幅回路702が出力増幅回路として設けられ、この電流増幅回路702から差動の他方の出力端OUT2が導出される。
これら電流増幅回路701および702の構成は、全く同一であるので、対応する構成要素については同一番号を付して説明をすることとする。
図1の電流増幅回路701および702においては、pチャンネルのMOSFET71のドレインとnチャンネルのMOSFET72のドレインとが接続されて、両MOSFET71,72は相補的に接続(いわゆるCMOS接続)され、その接続点から出力端OUT1が導出される。pチャンネルのMOSFET71のソースは電源電圧+Vccの電源ラインに接続され、nチャンネルのMOSFET72のソースは接地端に接続される。
また、+Vccの電源ラインと接地端間に、ダイオード接続されたpチャンネルのMOSFET73およびnチャンネルのMOSFET74、pチャンネルのMOSFET75のドレイン−ソース間の直列回路が接続される。そして、MOSFET71とMOSFET73とはカレントミラー回路を構成するように互いのゲートが接続され、同様に、MOSFET72とMOSFET74とはカレントミラー回路を構成するように互いのゲートが接続される。
そして、MOSFET73のドレインと、MOSFET74のドレインとの間に、MOSFET75のドレイン−ソース間が接続される。
そして、差動アンプ60の差動出力の一方が、電流増幅回路701のMOSFET71のゲートおよびMOSFET73と75の接続点に供給され、また、差動アンプ60の差動出力の他方が、電流増幅回路702のMOSFET71のゲートおよびMOSFET73と75の接続点に供給される。
また、図1において、+Vccの電源ラインと接地端間に接続された、ドレインとゲートが接続されてダイオード接続されたMOSFET81および82、並びに電流源83の直列回路は、カレントミラーの動作直流バイアス電流を生成するレプリカバイアス回路であり、ダイオード接続されたMOSFET82のドレインとゲートの接続点が、電流増幅回路701および702のそれぞれのMOSFET75のゲートに接続されて、カレントミラー構成とされる。
さらに、この図1の例では、電流増幅回路701の出力端OUT1と、電流増幅回路702の出力端OUT2とは、抵抗器84および85をそれぞれ通じて互いに接続され、その接続点が、コモンモードフィードバック回路90に供給される。コモンモードフィードバック回路150では、2個の抵抗器84および85の接続中点の電位と、予め定めてある所定の基準電圧とを比較し、その比較結果を、2個のpチャンネルMOSFET91および92のゲートにそれぞれ供給して、コモンモードフィードバックをかける。
そして、このコモンモードフィードバック回路90により、差動アンプ60のnチャンネルMOSFET61および62のそれぞれに流れている電流と同じ電流が、pチャンネルMOSFET91および92に流れるようにフィードバック制御される。これにより、増幅回路1の出力としては直流電流が生じないように制御される。
この図1の例においては、カレントミラー回路を構成するMOSFET73とMOSFET71とにおいて、MOSFET73に流れる電流とMOSFET71に流れる電流との比が、1:nとなるように構成され、かつ、nの値が可変(プログラマブル)とされる。
また、同様に、カレントミラー回路を構成するMOSFET74とMOSFET72とにおいて、MOSFET74に流れる電流とMOSFET72に流れる電流との比が、1:nとなるように構成され、かつ、nの値が可変(プログラマブル)とされる。
電流比が1:nとなるようにするための具体的な構成例としては、MOSFET73のサイズとMOSFET71のサイズとの比、また、MOSFET74のサイズとMOSFET72のサイズとの比、を1:nとする方法を用いることができる。サイズ比1:nにおけるnの値を、適宜に定めることにより、所望のサイズ比とすることができる。
以上の構成により、図1の例の増幅回路においては、差動アンプ60の差動出力のそれぞれは、MOSFET71と73とにより構成されたカレントミラー回路と、MOSFET72と74により構成されたカレントミラー回路とに、分流されて、電流増幅回路701,702のそれぞれにおいて入力される。そして、電流増幅回路701,702のそれぞれにおいて、MOSFET71、72とMOSFET73、74とのサイズ比に応じたn倍に電流増幅されて出力電流とされる。
この場合において、MOSFET81、82および電流源83からなるレプリカバイアス回路で定められた電圧が、電流増幅回路701および702のMOSFET73および75のそれぞれに加えられるため、MOSFET73,75のサイズとレプリカバイアス回路のMOSFET81,82のサイズとの比と、電流源83の電流Ibとにより、MOSFET73,75のバイアス電流は定まり、カレントミラーの動作直流バイアス電流は、差動アンプ60の動作電流には無関係に定めることができる。すなわち、カレントミラーの動作ポイントを、増幅回路1として要求される歪み特性により、A級、AB級、B級動作を選ぶことができ、低消費電流とすることができる。
実際的には、差動アンプ60の電流出力ioを低歪みで増幅し、出力端OUT1,OUT2に得られる出力電圧が、所定の値で歪みの要求を満足する値に定められ、差動アンプ60の動作電流の1/10〜1/20程度の電流を、MOSFET73,75に流すようにすれば良い。
以上の構成とすることにより、この実施形態の増幅回路によれば、差動アンプの出力について、バランス電流出力の構成が実現でき、出力電圧は、電源電圧いっぱいの振幅が可能となり、出力のダイナミックレンジは拡大する。さらに、負荷に同調回路を接続した場合に、その同調回路のインダクタが、差動アンプに対して直接負荷とされる場合には2個必要となるのに対して、この実施形態の増幅回路によれば1個で済み、IC化した場合の外付け部品の削減ができる。
そして、この実施形態の増幅回路によれば、入力の差動アンプは歪みとノイズから最適なトランジスタサイズと動作電流で動作をさせ、その状態を維持したまま、出力の利得をプログラマブルとすることができるので、直接、入力の差動アンプの利得を制御する場合に比較して、低歪み、低ノイズで利得を制御することができる増幅回路を実現することができる。
また、差動アンプ60の出力を増幅する回路がカレントミラー回路であるため、差動アンプ60で発生する歪みに比較して充分に小さい歪みとなり、また、バイアス電流も小さいことから、この出力段で発生するノイズは、差動アンプで発生するノイズに比較して充分に小さく、ノイズ特性の劣化の少なく、差動アンプ60に対して電流増幅回路701,702を追加したことによる特性の劣化はきわめて小さい。
[この発明による増幅回路の実施形態の具体的適用例]
この発明の増幅回路の実施形態は、例えばテレビチューナのフロントエンド回路の高周波増幅回路(AGC付き)に適用して、差動の出力端間に、インダクタンスLと容量Cとからなる同調回路を接続して、同調回路に電圧出力を印加するように場合に適する。
先ず、この発明による増幅回路の実施形態が適用されるテレビチューナの回路例について、説明する。
[実施形態の増幅回路が適用される回路の例としてのテレビチューナの具体例]
この発明による増幅回路は、テレビジョン信号を受信するチューナ部(フロントエンド回路)の高周波増幅回路に適用することができる。特に、最近は、テレビチューナとして、広い周波数バンド範囲に渡ってチャンネルを切り換えられるようにするものが考えられているが、この発明による増幅回路は、そのようなチューナ部の高周波増幅回路として好適である。
テレビ放送に使用される周波数(チャンネル)は国によって様々であり、カラー方式にも、NTSC、PAL、SECAMなどがある。さらに、アナログ放送もあれば、デジタル放送もある。
そこで、テレビ放送の受信信号系を、テレビ放送を受信して中間周波信号を出力するフロントエンド回路と、そのフロントエンド回路の出力を処理してカラー映像信号および音声信号を出力するベースバンド処理回路とに分割することが考えられている。つまり、そのようにすることにより、テレビ放送の放送方式の違いに対処するものである。
そのようにする場合において、この発明を適用できるフロントエンド回路の一例について説明する。以下に説明する例は、IC化により部品点数を減らすようにした場合の例である。
[テレビチューナのフロントエンド回路の例]
図2は、各国のテレビ放送を、その放送形式にかかわらず受信できるフロントエンド回路の一例を示す。この例においては、それぞれの国のテレビ放送で使用されている周波数を、
(A)46〜147MHz(VLバンド)
(B)147〜401MHz(VHバンド)
(C)401〜887MHz(Uバンド)
の3バンドに分割し、それぞれの受信バンドにおいて、周波数を目的とするチャンネルに対応して変更できるようにした場合である。
すなわち、図2において、鎖線で囲った部分10が、そのフロントエンド回路を示し、これは1チップICにIC化されている。また、このIC(フロントエンド回路)10は、外部接続用の端子ピンT11〜T19を有する。
そして、テレビ放送の放送波信号がアンテナANTにより受信され、その受信信号が、端子ピンT11からスイッチ回路11を通じてアンテナ同調回路12A〜12Cに選択的に供給される。この場合、アンテナ同調回路12A〜12Cは、上記(A)〜(C)項の受信バンドにそれぞれ対応するものであり、同調用コンデンサの容量をデジタルデータにより変更して同調周波数を変更し、この結果、目的とする周波数(チャンネル)の受信信号に同調するように構成されている。
そして、これら同調回路12A〜12Cからの受信信号が、この発明による増幅回路の実施形態が適用される高周波増幅回路13A〜13Cを通じ、さらに、段間同調回路14A〜14Cを通じてスイッチ回路15に供給される。このスイッチ回路15は、スイッチ回路11と連動して切り換えられるものであり、したがって、スイッチ回路15からは目的とする受信バンドの受信信号SRXが取り出される。そして、この取り出された受信信号SRXがミキサ回路12I、12Qに供給される。
なお、同調回路14A〜14Cも同調回路12A〜12Cと同様に構成されているものであるが、同調回路14Aは復同調回路とされている。また、後述するように、同調回路12A〜14Cの同調用コンデンサはIC10に内蔵され、同調用コイルはIC10に外付けとされている。
また、VCO31において、所定の周波数の発振信号が形成される。このVCO31は、局部発振信号を形成するためのものであり、PLL30の一部を構成している。すなわち、VCO31の発振信号が可変分周回路32に供給されて1/N(Nは正の整数)の周波数の信号に分周され、この分周信号が位相比較回路33に供給される。さらに、外部から端子ピンT14を通じて信号形成回路34にクロック(周波数は1〜2MHz程度)が供給されて所定の周波数f34の信号に分周され、この分周信号が位相比較回路33に基準信号として供給される。
そして、位相比較回路33の比較出力がループフィルタ35に供給されて可変分周回路32の出力信号と、形成回路34の出力信号との位相差に対応してレベルの変化する直流電圧が取り出され、この直流電圧がVCO31に発振周波数f31の制御電圧として供給される。なお、フィルタ35には、端子ピンT15を通じて平滑用のコンデンサC11が外付けされる。
したがって、VCO31の発振周波数f31は、
f31=N・f34 ・・・ (式1)
となるので、システム制御用のマイクロコンピュータ(図示せず)により分周比Nを制御すれば、VCO31の発振周波数f31を変更することができる。例えば、周波数f31は、受信バンドおよび受信周波数(受信チャンネル)に対応して1.8〜3.6GHzとされる。
そして、このVCO31の発振信号が可変分周回路36に供給されて1/M(例えば、M=2、4、8、16、32)の周波数に分周され、この分周信号が分周回路37に供給されて1/2の周波数で、かつ、位相が互いに直交する分周信号SLOI、SLOQに分周され、これら信号SLOI、SLOQがミキサ回路21I、21Qに局部発振信号として供給される。
ここで、
fLO:局部発振信号SLOI、SLOQの周波数
とすれば、
fLO=f31/(2M)
=N・f34/(2M)
=f34・N/(2M) ・・・ (式2)
となる。したがって、分周比M、Nを変更することにより、局部発振周波数fLOを、所定の周波数ステップで広い範囲にわたって変更することができる。
また、
SRX:受信を希望する受信信号
SUD:イメージ妨害信号
とし、簡単のため、
SRX=ERX・sinωRXt
ERX:受信信号SRXの振幅
ωRX=2πfRX
fRX:受信信号SRXの中心周波数
SUD=EUD・sinωUDt
EUD:イメージ妨害信号SUDの振幅
ωUD=2πfUD
fUD:イメージ妨害信号SUDの中心周波数
とする。
さらに、局部発振信号SLOI、SLOQについて、
SLOI=ELO・sinωLOt
SLOQ=ELO・cosωLOt
ELO:信号SLOI、SLOQの振幅
ωLO=2πfLO
とする。
ただし、このとき、
ωIF=2πfIF
fIF:中間周波数。例えば、4〜5.5MHz(放送方式により変更する)
とすれば、アッパーヘテロダイン方式の場合には、
fRX=fLO−fIF
fUD=fLO+fIF
である。
したがって、ミキサ回路21I、21Qからは、次のような信号SIFI、SIFQが出力される。すなわち、
SIFI=(SRX+SUD)×SLOI
=ERX・sinωRXt×ELO・sinωLOt
+EUD・sinωUDt×ELO・sinωLOt
=α{cos(ωRX−ωLO)t−cos(ωRX+ωLO)t}
+β{cos(ωUD−ωLO)t−cos(ωUD+ωLO)t}
SIFQ=(SRX+SUD)×SLOQ
=ERX・sinωRXt×ELO・cosωLOt
+EUD・sinωUDt×ELO・cosωLOt
=α{sin(ωRX+ωLO)t+sin(ωRX−ωLO)t}
+β{sin(ωUD+ωLO)t+sin(ωUD−ωLO)t}
α=ERX・ELO/2
β=EUD・ELO/2
の信号SIFI、SIFQが取り出される。
そして、これら信号SIFI、SIFQが、映像中間周波信号および音声中間周波信号の占有帯域幅(例えば、6〜8MHz)に比べて広帯域のローパスフィルタ22に供給され、この結果、ローパスフィルタ22において、和の角周波数(ωRX+ωLO)、(ωUD+ωLO)の信号成分(および局部発振信号SLOI、SLOQ)が除去され、ローパスフィルタ22からは、
SIFI=α・cos(ωRX−ωLO)t+β・cos(ωUD−ωLO)t
=α・cosωIFt+β・cosωIFt ・・・(式3)
SIFQ=α・sin(ωRX−ωLO)t+β・sin(ωUD−ωLO)t
=−α・sinωIFt+β・sinωIFt ・・・ (式4)
が取り出される。
そして、これら信号SIFI、SIFQが、後述する振幅位相補正回路23を通じて複素バンドパスフィルタ(ポリフェイズ・バンドパスフィルタ)24に供給される。この複素バンドパスフィルタ24は、
(a) バンドパスフィルタの周波数特性を有する。
(b) 移相特性も有し、信号SIFIを値φ(φは任意の値)だけ移相する。
(c) 同じく、信号SIFQを値(φ−90°)だけ移相する。
(d) 周波数軸上において、零周波数に対して対称の周波数f0と周波数−f0とを中心周波数とする2つのバンドパス特性を有するものであり、入力信号の相対位相によりこれを選択することができる。
の特性を有するものである。
したがって、複素バンドパスフィルタ24において、上記(b)、(c)項により信号SIFQが信号SIFIに対して90°遅相され、
SIFI=α・cosωIFt+β・cosωIFt ・・・ (式5)
SIFQ=−α・sin(ωIFt−90°)+β・sin(ωIFt−90°)
=α・cosωIFt−β・cocωIFt ・・・ (式6)
とされる。つまり、信号SIFIと、信号SIFQとの間では、信号成分α・cosωIFtは互いに同相であり、信号成分β・cocωIFtは互いに逆相である。
そして、この信号SIFI、SIFQがレベル補正用のアンプ25に供給されて信号SIFIと信号SIFQとが加算され、レベル補正アンプ25からは以下のような信号SIFが取り出される。
すなわち、
SIF=SIFI+SIFQ
=2α・cosωIFt
=ERX・ELO・cosωIFt ・・・ (式7)
が取り出される。この取り出された信号SIFは、信号SRXをアッパーヘテロダイン方式で受信したときの中間周波信号にほかならない。そして、この中間周波信号SIFには、イメージ妨害信号SUDは含まれていない。なお、振幅位相補正回路23は、この(式7)が十分に成立するように、すなわち、イメージ妨害信号SUDが最小となるように、信号SIFI、SIFQの振幅および位相を補正するものである。
さらに、このとき、レベル補正用のアンプ25において、放送方式の違いにより信号SIFI、SIFQのレベルが異なっても、後述するAGC特性(特に、AGCの開始レベル)などが変化しないように、信号SIFのレベルが補正される。
そして、この中間周波信号SIFが、AGC用の可変利得アンプ26を通じ、さらに、直流分のカット用およびエリアジング用のバンドパスフィルタ27を通じて端子ピンT12に出力される。
したがって、分周比M、Nを変更すれば、(式2)にしたがって目的とする周波数(チャンネル)を選択することができ、端子ピンT12に出力された中間周波信号SIFを放送方式に対応して復調すれば、目的とする放送を視聴することができることになる。
こうして、このフロントエンド回路10によれば、46〜887MHzという広い周波数範囲に対して、1チップICで対応できる。また、広い周波数範囲に対して妨害特性を低下させることなく、より少ない部品点数で、フロントエンド回路10を実現できる。さらに、デジタル放送およびアナログ放送の放送方式の違いや、世界的な地域による放送方式の違いに対して、1つのフロントエンド回路10で対応することができる。
また、クロック信号の高調波などによる受信妨害が少なくなり、結果として受信感度が上昇する。さらに、PLL30は、コンデンサC11を除き、すべての回路部品のオンチップ化ができるので、外乱に強く、妨害発生の少ないPLLとすることができる。
また、高周波増幅回路13A〜13Cには、同調回路14A〜14Cがそれぞれ接続されるだけなので、負荷が軽く、高周波増幅回路13A〜13Cを低歪みとすることができる。
〔AGCの例〕
AGC電圧VAGCが、フロントエンド回路の後段の、図示を省略するベースバンド処理回路において形成され、このAGC電圧VAGCが端子ピンT16を通じてAGC用の可変利得アンプ26にその利得の制御信号として供給される。したがって、これにより通常のAGC(中間周波数信号でのAGC)が行われる。
また、例えば、目的とする受信信号SRXのレベルが大きすぎたり、受信信号SRXに大きなレベルの妨害波信号が混在したりしている場合には、上記の通常のAGCでは対応しきれなくなる。そこで、ローパスフィルタ22から出力される信号SIFI、SIFQがレベル検出回路41に供給され、AGC用アンプ26においてAGCを行う以前の信号SIFI、SIFQのレベルが所定値を越えたか否かが検出される。そして、この検出信号と、端子ピンT16のAGC電圧VAGCとが加算回路42に供給され、その加算出力が遅延AGC電圧形成回路43に供給されて遅延AGC電圧VDAGCが形成され、この遅延AGC電圧VDAGCが高周波増幅回路13A〜13Cに利得の制御信号として供給され、遅延AGCが行われる。
したがって、希望する受信信号の強さと、受信を希望しない多くの信号の強さとのD/Uから最適なAGC動作ができるので、デジタル放送とアナログ放送、あるいはそれらが混在していても、希望する放送を良好に受信することができる。
〔テスト用・調整用電圧の例〕
ローパスフィルタ22から出力される信号SIFI、SIFQがリニア検波回路44に供給され、検波および平滑されることにより信号SIFI、SIFQのレベルを示す直流電圧V44とされ、この電圧V44が端子ピンT13に出力される。
この端子ピンT13に出力された直流電圧V44は、フロントエンド回路10のテスト時や調整時などに使用される。例えば、入力信号(受信信号)のレベルを広い周波数範囲にわたってチェックするときに使用することができ、すなわち、狭帯域の中間周波フィルタを通した出力と違い、アンテナ端子ピンT11からミキサ回路21I、21Qまでの信号ラインについて広帯域の減衰特性を直接チェックすることができる。
また、アンテナ同調回路12A〜12Cおよび段間同調回路14A〜14Cを調整する場合には、入力テスト信号をアンテナ端子ピンT11に加え、端子ピンT16に供給されるAGC電圧VAGCを所定値に固定すれば、直流電圧V44の変化からトラッキング調整を行うことができる。さらに、フロントエンド回路10の各機能の調整や特性の測定がデジタルデータにより行うことができ、自動調整および自動測定ができる。
〔定電圧回路〕
IC10には、定電圧回路53が設けられ、端子ピンT17から電源電圧+Vccが供給される。この定電圧回路53は、PN接合のバンドギャップを利用して電源電圧+Vccから所定の値の定電圧を形成するものであり、その形成された定電圧はIC10のそれぞれの回路に供給される。なお、定電圧回路53の出力電圧は微調整可能とされる。
したがって、各回路をMOS−FETにより構成した場合でも、それらの回路に供給される電圧を高めに設定することができ、MOS−FETの性能を最大限に引き出すことができる。
〔初期設定〕
上述の振幅位相補正回路23の補正量、複素バンドパスフィルタ24の中心周波数および通過帯域幅、レベル補正用アンプ25の利得は、受信するテレビ放送の放送方式に対応する必要があるので、可変とされるとともに、外部から設定できるようにされている。例えば、複素バンドパスフィルタ24の中心周波数は3.8〜5.5MHz、通過帯域は5.7〜8MHzの範囲で可変とされている。
そして、組み立て時や工場出荷時などに、これら回路23〜25の設定値が、端子ピンT18から不揮発性メモリ51に書き込まれる。また、同調回路12A〜12C、14A〜14Cのトラッキング用のデータ(同調周波数を微調整するデータ)や定電圧回路53の出力電圧を微調整するデータも、同様に端子ピンT18から不揮発性メモリ51に書き込まれる。したがって、それぞれの回路の特性を、受信するテレビ放送の放送方式に対応したものに設定することができる。
〔使用時の動作〕
このIC10を使用した受信機の電源が投入されたときも、不揮発性メモリ51の設定値がバッファメモリ52にコピーされ、このコピーされた設定値が回路12A〜12C、14A〜14C、23〜25、53のそれぞれにデフォルト値として供給される。
そして、ユーザがチャンネルを選択したときには、そのためのデータが、システム制御用のマイクロコンピュータ(図示せず)から端子ピンT19を通じてバッファメモリ52に供給されていったん保存され、この保存されたデータがスイッチ回路11、15、同調回路12A〜12C、14A〜14C、可変分周回路32、36に供給され、目的とするチャンネル(周波数)を含む受信バンドが選択されるとともに、その選択された受信バンドにおいて、目的とするチャンネルが選択される。
〔この例のフロントエンド回路の特徴〕
図2に示すフロントエンド回路10によれば、前述した(A)〜(C)項に示したように、46〜887MHzの周波数帯におけるテレビ放送を受信することができる。そして、そのとき、複素バンドパスフィルタ24の中心周波数および通過帯域幅が可変とされているの、国内の地上デジタルテレビ放送や地上アナログテレビ放送だけでなく、国外のデジタルテレビ放送やアナログテレビ放送にも対応できる。
〔高周波段の例〕
図3は、フロントエンド回路10におけるスイッチ回路11からスイッチ回路15までの高周波信号系の一例を示す。なお、この高周波信号系もバランス型に構成されている。
すなわち、アンテナANTの受信信号が、バランBLNにより平衡な受信信号とされてから端子ピンT11、T11を通じてスイッチ回路11に供給される。このスイッチ回路11は、等価的に図2に示すように構成され、端子ピンT11、T11を通じて供給された受信信号をアンテナ同調回路12A〜12Cに選択的に供給するものである。
このため、スイッチ回路11の第1の出力端TAが、高周波アンプ13Aの入力端に接続されるとともに、その第1の出力端TAと高周波アンプ13Aの入力端との間の信号ラインに、アンテナ同調回路12Aが並列接続される。この場合、同調回路12Aは、同調用コイルL12Aが端子ピンを通じてIC10に外付けされるとともに、同調用コンデンサC12AがIC10に内蔵されて構成される。なお、後述するように、コンデンサC12Aの容量はデジタルデータにより変更されて同調周波数が変更される。
さらに、高周波アンプ13Aの出力端が、同調用コンデンサC143、C144を通じて入力バッファ回路15Aの入力端に接続されるとともに、高周波アンプ13Aの出力端に、同調用コイルL141および同調用コンデンサC141が並列接続され、入力バッファ回路15Aの入力端に、同調用コイルL142および同調用コンデンサC142が並列接続されて、段間同調回路14Aが復同調形式に構成される。
なお、このとき、コイルL141、L142は、端子ピンを通じてIC10に外付けされる。また、コンデンサC141〜C144は、IC10に内蔵されるとともに、それらの容量はデジタルデータにより変更されて同調周波数が変更される。こうして、(A)項に示したVLバンドの高周波段が構成される。
さらに、スイッチ回路11の第2の出力端TBが、高周波アンプ13Bの入力端に接続されるとともに、その第2の出力端TBと高周波アンプ13Bの入力端との間の信号ラインに、アンテナ同調回路12Bが並列接続される。
また、高周波アンプ13Bの出力端が入力バッファ回路15Bの入力端に接続されるとともに、これらの間の信号ラインに、同調用コイルL14Bおよび同調用コンデンサC14Bが並列接続されて、段間同調回路14Bが構成される。なお、このとき、コイルL12B、L14Bは端子ピンを通じてIC10に外付けされ、コンデンサC12B、C14BはIC10に内蔵されるとともに、それらの容量はデジタルデータにより変更されて同調周波数が変更される。こうして、(B)項に示したVHバンドの高周波段が構成される。
さらに、スイッチ回路11の第3の出力端TCが、高周波アンプ13Cを通じて入力バッファ回路15Cの入力端に接続されるとともに、高周波アンプ13Cの入力端アンテナ同調回路12Cが並列接続され、入力バッファ回路14Cの入力端に段間同調回路14Cが並列接続される。この場合、同調回路12Cは、同調用コイルL12Cが端子ピンを通じてIC10に外付けされるとともに、同調用コンデンサC12CがIC10に内蔵されて構成される。また、同調回路14Cは、同調用コイルL14Cが端子ピンを通じてIC10に外付けされ、同調用コンデンサC14CがIC10に内蔵されて構成される。こうして、(C)項に示したUバンドの高周波段が構成される。
そして、入力バッファ回路15A〜15Cの出力端が接続点P15、P15に共通に接続されるとともに、ミキサ回路21I、21Qの入力端に接続される。また、形成回路43から高周波アンプ13A〜13Cに遅延AGC電圧VDAGCが供給される。
さらに、バッファメモリ52からスイッチ回路11に受信バンドの切り換え信号SBANDが供給されるとともに、この切り換え信号SBANDが、入力バッファ回路15A〜15Cにそれらの動作の許可・禁止の制御信号として供給され、入力バッファ回路15A〜15Cは、スイッチ回路11の切り換えに連動して制御される。つまり、入力バッファ回路15A〜15Cにより、スイッチ回路15が構成される。
このような構成によれば、切り換え信号SBANDにより、例えば(A)項に示すVLバンドの受信が選択されている場合には、スイッチ回路11から同調回路12Aに受信信号が供給されるとともに、入力バッファ回路15Aの動作が許可されるが、同調回路12B、12Cに受信信号は供給されず、かつ、入力バッファ回路15B、15Cは動作が禁止される。
したがって、(A)項に示したVLバンドの受信が可能となり、同調回路12A、14Aにより選択されたチャンネル(周波数)が接続点P15、P15に出力され、ミキサ回路21I、21Qに供給される。そして、(B)項および(C)項の受信バンドについても同様の動作が行われる。
こうして、図3に示す高周波段によれば、(A)〜(C)項の受信バンドが選択されるとともに、その選択された受信バンドにおけるチャンネルを選択することができる。そして、この場合、高周波アンプ13A〜13Cには、同調回路14A〜14Cがそれぞれ接続されるだけなので、負荷が軽く、高周波アンプ13A〜13Cを低歪みとすることができる。
〔高周波アンプ13A〜13Cとしての具体例〕
この発明の実施形態の増幅回路は、上述したテレビチューナの高周波アンプ(RF AGCアンプ)13A〜13Cのそれぞれとして、適用可能である。
ところで、図2および図3を用いて説明したフロントエンド回路の高周波アンプ13A〜13Cでは、直接負荷として、固定インダクタとしての同調用コイルと、可変容量としての同調用コンデンサとを、その入出力に使用している。このため、前述したように、高周波アンプ13A〜13Cでは、同調周波数、つまり、入力信号周波数に対して、利得偏差が生じるものとなる。
同調回路を入出力に備える高周波アンプ13A〜13Cにおいて、出力の利得を固定(例えば、図1において、電流増幅回路701,702での電流比1:n=1:1に固定した場合などに相当)とし、同調回路のQを一定としたときの、当該高周波アンプの同調周波数対利得の特性は、図4に示すようなものとなる。
すなわち、前述したように、同調回路のQを一定とすると、高周波アンプの利得は、同調周波数(入力信号周波数)に比例するため、図4の例では、最低周波数での利得と最高周波数での利得とで、差が10dBほど生じることが分かる。
この利得偏差は、一つの受信バンドでカバーする周波数比と、高周波アンプの回路構成とで異なる。また、使用するデバイスの動作電流の変化と、デバイスの特性の製造上の変化による利得の違いは、通常、±2〜3dB程度あるので、トータルとして、高周波アンプとしては、15dB前後の利得変化を考慮する必要がある。
そこで、この例においては、高周波アンプ13〜13Cのそれぞれとして、この発明の実施形態の増幅回路を用い、かつ、利得を同調周波数に応じて可変制御して、最低周波数から最高周波数まで、ほぼ一定の利得とすることができるように構成する。
図5〜図11は、高周波アンプ13A〜13Cのうちの、例えば高周波アンプ13Aに適用した場合における、この発明の実施形態の増幅回路の構成および説明のための図である。この例の増幅回路は、図5に示すように、可変利得増幅回路200と、この可変利得増幅回路200の出力を電流増幅する電流増幅回路300とを備えて構成される。
[可変利得増幅回路200の構成例]
可変利得増幅回路200は、同一構成の3個の可変利得アンプ、すなわち、可変利得アンプ121と、可変利得アンプ122と、可変利得アンプ123により3段の構成としている。このような多段の可変利得アンプを用いることにより、図2の例のような広範囲の入力信号レベルの変化範囲に対して利得可変制御可能な構成としている。
可変利得アンプ121,122,123のそれぞれは、同一の構成を備えるので、図5では、対応する回路素子については同一番号を付してある。図6に、この可変利得アンプ121,122,123の原理的構成を示す等価回路図を示し、この等価回路図を用いて、可変利得アンプ121,122,123について説明する。
図6に示すように、この原理的構成の等価回路図に示す可変利得アンプ100は、カスコード(Cascode)接続されたMOSFET101〜104を用いた差動アンプによる構成である。
すなわち、図6に示すように、第1および第2のMOSFET101および102のソースが互いに共通に接続され、その共通接続点が、カレントミラー構成の電流源を構成するMOSFET105のドレイン−ソース間を通じて接地端に接続される。
第1および第2のMOSFET101および102のゲートには、入力信号eiがそれぞれコンデンサ111および112のそれぞれ通じて供給される。そして、可変電圧源109からのゲートバイアス電圧E1が、抵抗器113および114をそれぞれ通じて、第1および第2のMOSFET101および102のゲートに供給される。
ゲートとドレインとが接続されてダイオード接続されたMOSFET106が可変電流源107に直列に接続され、この可変電流源107とMOSFET106との直列回路が、電源電圧+Vccの電源ラインと接地端との間に接続される。そして、MOSFET106のゲートとドレインとの接続点がMOSFET105のゲートに接続されて、カレントミラー構成の電流源が形成される。
また、第1のMOSFET101のドレインが、第3のMOSFET103のソース−ドレイン間を通じて負荷108の一端に接続されると共に、第2のMOSFET102のドレインが、第4のMOSFET104のソース−ドレイン間を通じて負荷108の他端に接続される。すなわち、第3および第4のMOSFET103および104のドレインは、この可変利得アンプ100の差動の出力端の一方および他方となる。
そして、第3および第4のMOSFET103および104のゲートに、可変電圧源110からの利得制御電圧E2が共通に供給される。
この図6の可変利得アンプ100は、最大利得の状態から、利得制御電圧E2に応じて利得が低減制御される。この利得制御の動作を次に説明する。
この可変利得アンプ100の最大利得状態でのバイアス関係を見ると、ゲートバイアス電圧E1の値は、MOSFET105を流れる電流Ioの1/2の電流(Io/2)を、MOSFET101,102に流した状態での、当該MOSFET101,102のゲート−ソース間電圧(Vgso)と、電流源MOSFET105が飽和領域になっているときの当該MOSFET105のドレイン電圧(すなわち、MOSFET101および102のソースの共通接続点の電圧Es)との和の電圧となる。例えば、E1=0.85+0.5=1.35Vとなる。
また、このときの利得制御電圧E2は、MOSFET101および102のドレイン−ソース間電圧が、MOSFET101および102が飽和領域になり、利得が安定する値になるように選定される。すなわち、MOSFET101および102のドレイン電圧をEdとすると、電圧E2は、Ed−Es(>0.5〜0.7V)と、ドレイン電圧Edと、MOSFET103,104のゲート−ソース電圧との和となるようにされる。例えば、E2=1+0.9+0.5=2.4Vとされる。
図6の可変利得アンプ100では、最大利得状態であるこの初期状態から利得を減衰させるためには、ゲートバイアス電圧E1を上昇させ、利得制御電圧E2を低下する動作を行う。
このとき、可変利得アンプ100では、MOSFET101および102のソース共通接続点の電位Esが低下して、電流源のMOSFET105の動作領域が3極管領域に入らない限り、殆ど動作電流は変わらない。MOSFET105の動作領域が3極管領域に入ると、MOSFET105のドレイン−ソース間のインピーダンスが低下し、差動増幅器としての動作を満足せず、偶数次の歪が発生し易くなる。このために、この電位Esは略一定であることが望まれる。
利得制御電圧E2を下げ、電位差Ed−Esが、MOSFET101,102が3極管領域になるような値となると、可変利得アンプ100の利得が低下し始める。このときのMOSFET101および102のソース共通接続点の電位Esの値は、
Es=Ed−(Io/2×Ro)
(ただし、RoはMOSFET101,102の出力抵抗である。)
と表されるから、電位Esの値を略一定とするには、ドレイン電圧Edの低下に応じて、出力抵抗Roが小さくならなければならない。そのために、MOSFET101および102の動作領域が3極管領域に入るタイミングでは、ゲートバイアス電圧E1の値は、初期状態よりも大きくなるように変化をさせるようにする。
MOSFET101,102の動作領域が、3極管領域に入った状態での可変利得アンプ100の利得は、このときのMOSFET101,102のドレイン−ソース間の電圧、すなわち、(Io/2)×Roの値に対応して決まる。つまり、入力信号で、出力抵抗Roが変化し、これが出力電流変化として現れる。そのため、ゲートバイアス電圧E1を大きくし、出力抵抗Roを小さくすることは、同時に、差動増幅器としての利得を更に低下させる効果があり、大きな減衰量が得られる。
以上のようにして、この実施形態の可変利得アンプ100によれば、シングルエンド回路では実績のある低歪みの利得可変方式が、差動増幅器構成においても可能となり、低歪みを維持しながら、動作電流、延いては消費電流を減らすことが可能となる。
ところで、前述したように、差動増幅器としての動作を満足させるには、MOSFET101,102のソース共通接続点の電位Esを一定に保つようにすることが重要であるが、このことは、同時に、利得制御電圧E2の値に下限があることを意味し、
E2>Vgs+Es (条件式1)
が条件で、これ以下の利得制御電圧E2では、ソース共通接続点の電位Esが低下し、さらには動作電流Ioの低下が発生する。なお、Vgsは、MOSFET103,104のゲート−ソース間電圧である。
したがって、入力信号レベルの可変範囲が広く、大きい減衰量が必要となる場合には、1段の可変利得アンプでは低歪みでAGCをかけることは困難となる。そのためには、この実施の形態の可変利得アンプ100を多段に構成して、それら多段の可変利得アンプを切り替えるようにするとよい。
なお、歪の発生を出来るだけ少なくするには、多段の可変利得アンプを切り替えるタイミングとして、電流源MOSFET105が3極管領域となる領域はできるだけ使用せずに次の可変利得アンプに切り替え、切り替わった後には、増幅回路の全体として、速やかに利得が低下することが望まれる。
〔高周波アンプ13A〜13Cとしての実施例〕
図5の例は、図6に示した可変利得アンプ100と実質的に同じ構成の可変利得アンプを3段に構成し、2段目以降の各段の可変利得アンプに、順次に入力信号レベルを減衰して供給すると共に、各段を順次に切り替えるようにした場合の例である。この図5の例は、3段の可変利得アンプ121,122,123を用いて構成した可変利得増幅回路200を備える増幅回路、例えば高周波アンプ13Aに適用した場合としての構成例を示している。
すなわち、この図5の例の可変利得増幅回路200においては、同調用コイルL12Aと同調用コンデンサC12Aとからなるアンテナ同調回路12Aを通じた入力信号は、第1段目の可変利得増幅器121にはそのまま供給されるが、第2段目の可変利得増幅器122には、コンデンサ131,132,133からなる減衰器を通じて、容量分割により減衰されて供給され、さらに、第3段目の可変利得増幅器123には、コンデンサ134,135,136からなる減衰器を通じて、容量分割により減衰されて供給される。
そして、3段の可変利得アンプ121,122,123のそれぞれのMOSFET103および104のドレインに得られる差動の出力が、前述したようなカレントミラー回路からなる電流増幅回路300で増幅されて、出力端O1,O2に導出される。そして、出力端O1,O2間に同調回路14Aが接続される。
また、出力端O1およびO2は、それぞれ抵抗器351および352を通じて互いに接続され、その接続点がコモンモードフィードバック回路150の入力端に接続される。そして、前述と同様にして、このコモンモードフィードバック回路150により、2個のpチャンネルMOSFET151および152のゲートに、コモンモードフィードバックがかけられる。
すなわち、コモンモードフィードバック回路150の出力により、pチャンネルMOSFET151および152のゲート電圧が制御されて、第1段目〜第3段目の可変利得増幅器121〜123のMOSFET103,101、また、MOSFET104,102のそれぞれに流れている電流と同じ電流が、pチャンネルMOSFET151および152に流れるようにフィードバック制御され、高周波アンプ13Aの出力としては直流電流が生じないように制御される。
そして、この実施例においては、遅延AGC電圧形成回路43で、この遅延AGC電圧形成回路43に入力されるベースバンド回路からのAGC電圧VAGCに基づいて、可変利得アンプ121,122,123のMOSFET103および104のゲートに供給する利得制御信号E21,E22,E23、MOSFET101および102のゲートバイアス電圧E11,E12,E13および電流源用のMOSFET105のゲートに供給する電流源制御電圧Ec1,Ec2,Ec3が生成され、第1段目、第2段目、第3段目の可変利得アンプ121,122,123のそれぞれに供給される。
第1段目、第2段目および第3段目の可変利得アンプ121,122および123の電流源MOSFET105の電流源制御電圧Ec1、Ec2およびEc3は、第1段目、第2段目および第3段目の電流源MOSFET105を流れる電流値Io1、Io2およびIo3を定めるもので、第1段目、第2段目および第3段目の可変利得アンプ121、122および123の切り替え信号ともなる。
前述したように、遅延AGC電圧形成回路43は、端子ピンT16を通じて入力されるAGC電圧VAGCと、レベル検出回路41からの、信号SIFI、SIFQのレベルが所定値を越えたか否かの検出信号との加算信号を受けて、AGC用アンプ26でAGCがかかる信号レベルよりもさらに大きい信号レベルになったときに、まず、第1段目の可変利得増幅器121の利得を減衰させ、さらに、信号レベルが大きくなると、第2段目の可変利得増幅器122に切り替えて、その利得を減衰させ、またさらに、信号レベルが大きくなると、第3段目の可変利得増幅器123に切り替えて、その利得を減衰させるようにする利得制御信号E21,E22,E23およびゲートバイアス電圧E11,E12,E13を生成し、それぞれ可変利得増幅器121,122,123に供給するようにする。
そして、この図5の例では、可変利得増幅回路200は、入力信号レベルが、ある所定値Eth1以下であるときには、第1段目の可変利得増幅器121のみが主として動作し、かつ、その利得は固定となる。そして、入力信号レベルが、この所定値Eth1より大きいときには、AGC制御電圧E21により第1段目の可変利得増幅器121の利得が減衰するように制御される。このとき、ゲートバイアス電圧E11は、上述したように、上昇させられる。
また、入力信号レベルが、前記所定値Eth1よりも大きい所定値Eth2よりも大きくなったときからは、利得制御電圧E21,E22および電流源制御電圧Ec1,Ec2により、第1段目の可変利得増幅器121から第2段目の可変利得増幅器122が主として利得制御する状態に切り替えられる。
さらに、入力信号レベルが、前記所定値Eth2よりも、さらに、大きい所定値Eth3よりも大きくなったときからは、利得制御電圧E22,E23および電流源制御電圧Ec2,Ec3により、第2段目の可変利得増幅器122から第3段目の可変利得増幅器123が主として利得制御する状態に切り替えられる。
以上のように、図6に等価回路図を示した可変利得アンプ100を3段分として、図5に示したように、可変利得アンプ121,122,123のように設けて、これらの可変利得アンプを切り替えるようにした増幅回路の場合における、AGC制御電圧VAGCに対する、利得の変化、各段の電流変化の様子、歪み特性を、それぞれ図7、図8、図9に示す。
すなわち、図7は、3段構成の場合の増幅回路におけるAGC制御電圧VAGCに対する利得の変化を示すもので、GA1は第1段目の可変利得アンプ121の利得変化、GA2は第2段目の可変利得アンプ122の利得変化、GA3は第3段目の可変利得アンプ123の利得変化、をそれぞれ示している。ここで、各アンプ121,122,123の利得変化は、それぞれに供給する利得制御電圧E21,E22,E23の変化に対応するものとなっている。そして、GAsは、この場合の3段構成の可変利得増幅回路200の総合の利得変化を示しており、利得可変範囲は45dB以上あり、しかも、可変利得アンプの切り替えにかかわらず、滑らかに利得が低下している様子が分かる。
次に、図8は、3段構成の場合の可変利得増幅回路200におけるAGC制御電圧VAGCに対する各段の電流変化の様子を示すもので、Io1は第1段目の可変利得アンプ121の電流源用MOSFET105を流れる電流の変化を、Io2は第2段目の可変利得アンプ122の電流源用MOSFET105を流れる電流の変化を、Io3は第3段目の可変利得アンプ123の電流源用MOSFET105を流れる電流の変化を、それぞれ示している。
そして、IoSは、この場合の3段構成の可変利得増幅回路200の総合の電流変化を示しており、消費電流は1段分の可変利得アンプの電流のピーク時に対して20%増加程度に抑えられていることが分かる。
次に、図9は、3段構成の場合の可変利得増幅回路200におけるAGC制御電圧VAGCに対する利得変化と歪み特性を示すもので、Gvは利得変化を示し、IIP3は3次インタセプトポイントの歪み特性を示している。
この図9から分かるように、この実施形態によれば、利得Gvが減少するに従い、3次インタセプトポイントIIP3は、20dB以上上昇し、大きな入力でも低歪の可変利得増幅回路200が、消費電流の僅かの増加で実現できる。
以上説明した図5の例によれば、3段の可変利得増幅器200を用いることで、入力信号レベルの許容変化範囲を広くすることができ、図2の例のような広帯域のテレビジョン信号であって、入力信号レベルの変化範囲の広い信号であっても、低歪みで、AGC制御が可能な高周波アンプを提供することができる。
そして、この例においては、高周波アンプの入力側と出力側とに、可変容量を使用した可変同調回路を使用し、いわゆるトラッキングフィルタとして動作させることにより、可変利得増幅回路で利得を減衰させた信号を扱うことでの低歪みと同時に、不要な妨害信号をできるだけ、排除することが可能である。
[電流増幅回路300]
以上のような広レベル範囲で可変利得制御が可能な可変利得増幅回路200においては、前述したようにトラッキングフィルタを備えるので、図4のような同調周波数に応じた利得偏差が生じる。この実施形態では、電流増幅回路300において、同調周波数に応じた利得偏差を補正して、同調周波数に関係なく一定の利得とすることができるようにしている。
図10に、この例における電流増幅回路300の構成例の回路図を示す。この例においては、図10に示すように、電流増幅回路300は、電流増幅器301と、電流増幅器302と、レプリカバイアス回路303からなり、可変利得増幅回路200の差動の出力の一方を電流増幅器301で受け、他方を電流増幅器302で受ける構成となっている。これら電流増幅器301および電流増幅器302の基本的な構成は、図1に示した電流増幅回路701,702と同様の構成である。
この図10の例では、電流増幅器301と電流増幅器302とは、全く同一の構成であるので、対応する素子には同一番号を付してその詳細を説明することとする。
電流増幅器301および電流増幅器302においては、それぞれ、pチャンネルのMOSFET311のドレインとnチャンネルのMOSFET312のドレインとが接続されて、両MOSFET311,312は相補的に接続(いわゆるCMOS接続)される。そして、電流増幅器301のMOSFET311と322のドレインの接続点から出力端O1が導出され、また、電流増幅器302のMOSFET311と322のドレインの接続点から出力端O2が導出される。pチャンネルのMOSFET311のソースは電源電圧+Vccの電源ラインに接続され、nチャンネルのMOSFET312のソースは接地端に接続される。
また、電流増幅器301および電流増幅器302においては、それぞれ、+Vccの電源ラインと接地端間に、ダイオード接続されたpチャンネルのMOSFET313およびnチャンネルのMOSFET314、pチャンネルのMOSFET315のドレイン−ソース間の直列回路が接続される。そして、MOSFET311とMOSFET313とはカレントミラー回路を構成するように互いのゲートが接続され、同様に、MOSFET312とMOSFET314とはカレントミラー回路を構成するように互いのゲートが接続される。そして、MOSFET313のドレインと、MOSFET314のドレインとの間に、MOSFET315のドレイン−ソース間が接続される。
また、図10において、+Vccの電源ラインと接地端間に接続された、ドレインとゲートが接続されてダイオード接続されたpチャンネルのMOSFET321および322、並びに電流源323の直列回路は、電流増幅器301および302のそれぞれのMOSFET311,313およびMOSFET312,314のカレントミラーの動作直流バイアス電流を生成するレプリカバイアス回路303であり、ダイオード接続されたMOSFET322のドレインとゲートの接続点が、電流増幅器301および302のそれぞれのMOSFET315のゲートに接続されて、それぞれカレントミラー構成とされる。
この図10の例においては、電流増幅器301および302のそれぞれにおいて、カレントミラー回路を構成するMOSFET313とMOSFET311とにおいて、MOSFET313に流れる電流とMOSFET311に流れる電流との比が、1:nとなるように構成され、かつ、nの値が可変(プログラマブル)とされる。
また、同様に、カレントミラー回路を構成するMOSFET314とMOSFET312とにおいて、MOSFET314に流れる電流とMOSFET312に流れる電流との比が、1:nとなるように構成され、かつ、nの値が可変(プログラマブル)とされる。
なお、電流増幅器301および302のそれぞれのMOSFET315のソース−ドレイン間には、コンデンサ316が接続されるが、これは、多段の可変利得アンプの切り換えにより、増幅段数が変化することによる周波数特性のアンバランスを補正するためのもので、特に、高域の特性が補正される。また、同様の理由により、ダイオード接続されているMOSFET321と322との直列回路に並列に、周波数特性補正用のコンデンサ324が接続されている。
さらに、この図10の例では、電流増幅器301の出力端O1と、電流増幅器302の出力端O2とは、抵抗器351および352をそれぞれ通じて互いに接続され、その接続点が、コモンモードフィードバック回路150に供給され、前述したコモンモードフィードバックが行なわれるように構成されている。
この図10の例においては、電流増幅器301および電流増幅器302におけるMOSFET313と311、また、MOSFET314と312、において、電流比が1:nで、かつnの値を可変とすれば、nの値を大きくしたときには出力電流が大きくなるので、利得が上がり、nの値を小さくしたときには出力電流が小さくなるので、利得が下がる。
したがって、前記nの値を、同調周波数に応じて可変とすることにより、高周波アンプ13Aとして、最低同調周波数から最高同調周波数までの間で、利得をほぼ一定とすることができる。
図10の構成例は、前記nを可変とする具体的な構成ではなく、原理的な構成例を示している。図11に、前記nを可変とすると共に、同調周波数に応じて、当該nの値を制御することができる具体的構成例を示す。
この図11は、レプリカバイアス回路303と電流増幅器301との部分の具体構成例であり、電流増幅器302についても、この図11の電流増幅器301と同様に構成され、同様の動作をするものであるので、ここでは、電流増幅器301に関する部分のみを説明して、電流増幅器302に関する部分についての説明は省略する。
すなわち、図11に示すように、電流増幅器301において、この例では、MOSFET311およびMOSFET312のそれぞれは、複数個、図11の例では5個のMOSFET3111〜3115およびMOSFET3121〜3125により構成する。
そして、MOSFET3111〜3115の互いのドレインは共通に接続すると共に、互いのゲートも共通に接続する。そして、MOSFET3111〜3115のそれぞれのソースは、それぞれスイッチ用チャンネルのMOSFET3611〜3615のドレイン−ソース間を通じて+Vccの電源ラインに接続する。ここで、MOSFET3111〜3115と、スイッチ用MOSFET3611〜3615とは、同じpチャンネルのMOSFETとされる。
また、nチャンネルのMOSFET3121〜3125の互いのドレインは共通に接続すると共に、互いのゲートも共通に接続する。そして、MOSFET3121〜3125のそれぞれのソースは、それぞれスイッチ用MOSFET3621〜3625のドレイン−ソース間を通じて接地する。ここで、MOSFET3121〜3125と、スイッチ用MOSFET3621〜3625とは、同じnチャンネルのMOSFETとされる。
そして、MOSFET3111および3121に接続されるスイッチ用MOSFET3611および3621のゲートは、それぞれ接地および+Vccの電源ラインに接続されて、常時、オンとなるように制御される。
また、この例では、スイッチ用MOSFET3612〜3615および3622〜3625のゲートのそれぞれには、バッファメモリ52からの4ビットのデータの各1ビットのデータが、スイッチング制御信号として供給される。
すなわち、図11の例では、バッファメモリからのデータを、[B1,B2,B3,B4]の4ビットとしたとき、ビットB1のデータは、インバータ371を通じてスイッチ用MOSFET3112のゲートに供給されると共に、スイッチ用MOSFET3122のゲートに供給される。また、ビットB2のデータは、インバータ372を通じてスイッチ用MOSFET3113のゲートに供給されると共に、スイッチ用MOSFET3123のゲートに供給される。ビットB3のデータは、インバータ373を通じてスイッチ用MOSFET3114のゲートに供給されると共に、スイッチ用MOSFET3124のゲートに供給される。ビットB4のデータは、インバータ374を通じてスイッチ用MOSFET3115のゲートに供給されると共に、スイッチ用MOSFET3125のゲートに供給される。
そして、スイッチ用MOSFET3611〜3615およびMOSFET3621〜3625を設けたことに対応して、MOSFET313,314,315からなる電流路においては、スイッチ用MOSFET3616のドレイン−ソース間がMOSFET313のソースと+Vccの電源ラインとの間に接続されると共に、スイッチ用MOSFET3626のドレイン−ソース間がMOSFET314のソースと接地間に接続され、かつ、それらのゲートが接地または+Vccの電源ラインに接続されて、スイッチ用MOSFET3616および3626が、常時、オンとなるようにされている。
また、レプリカバイアス回路を構成するMOSFET321,322,電流源323からなる電流路においても、スイッチ用MOSFET3611〜3615を設けたことに対応して、スイッチ用MOSFET3617のドレイン−ソース間がMOSFET321のソースと+Vccの電源ラインとの間に接続される。
ここで、この例において、MOSFET313および314のサイズ(ゲートサイズ)を[1]としたとき、MOSFET3111〜3115およびMOSFET3121〜3125のサイズもすべて[1]としたときには、スイッチ用MOSFET3612〜3615および3622〜3625を、オン・オフ制御することにより、電流比nの値は、1〜5まで、5段階までしか制御することができず、利得も同様に制御することができるだけである。
これに対して、この例では、バッファメモリ52からの制御データのビット数に対応して、より詳細な分解能で多段階の利得制御をすることができるように工夫している。
すなわち、この例においては、MOSFET3111および3121のサイズは[1]であるが、MOSFET3112および3122のサイズは[1]、MOSFET3113および3123のサイズは[2]、MOSFET3114および3124のサイズは[4]、MOSFET3115および3125のサイズは[8]、というように、4ビットのデータの各ビットの重みに対応したサイズのMOSFETを使用するようにする。
したがって、4ビットのデータ[B1,B2,B3,B4]のうち、「1」が立つビットがゲートに供給されているスイッチ用MOSFETがオンになることにより、当該4ビットに応じた電流比nを得ることができ、出力電流の利得制御が可能となる。
ここで、スイッチ用MOSFET3611〜3615および3621〜3625をスイッチング制御する4ビットのデータは、この例の高周波アンプ13Aにおいて、同調周波数が最低同調周波数と最高同調周波数との間で変わっても、利得がほぼ一定となるように、各同調周波数に応じて予め定められて、不揮発性メモリ51に蓄えられている。
例えば、図4の利得特性において、最低同調周波数では、高周波アンプ13Aの利得を最も高く、最高同調周波数での利得に合わせるように利得制御するための4ビットデータを生成して、不揮発性メモリ51に記憶する。そして、他の各同調周波数では、その周波数に応じて、最高同調周波数での利得に合わせるように利得制御するための4ビットデータを生成して、不揮発性メモリ51に記憶する。
もちろん、同調周波数が最低と最高の中間のときの利得に合わせるようにすることもできる。なお、この実施例の高周波アンプ13Aでは、電流利得n=1で、カバーしているバンドの中央付近の同調周波数での利得は満足するようになされ、カレントミラーの前記nは1/3〜3(−10dB〜10dB)程度の範囲で使用される。
そして、テレビチューナの同調周波数が、そのときに、どの周波数になっているかは、図2のPLL回路30の可変分周回路32や35に設定する分周比から分かる。そこで、図示は省略したが、CPU(Central Processing Unit)などの制御部が、ユーザの同調操作(選局操作)に応じて変化する可変分周回路32や35に設定する分周比を監視して同調周波数を認識し、その認識結果に基づく制御データCTLにより、不揮発性メモリ51から、そのときの同調周波数に対応する4ビットのデータを読み出して、バッファメモリ52に供給して、利得制御するようにすることができる。
[その他の変形例]
上述の説明における実施例は、IC化回路の場合について説明したが、この発明は、IC化回路のみに適用されるものではない。しかし、上述したように、IC化回路の場合に適用したときに、その効果が大きい。
なお、上述の説明では、3段までの多段可変利得増幅回路について説明したが、3段以上であっても、この発明が適用できることは言うまでもない。
また、上述の説明は、テレビチューナの高周波アンプに、この発明による増幅回路を適用した場合であるが、この発明の実施形態が適用される機器は、テレビチューナに限られるものではないことは言うまでもない。
したがって、上述の例では、同調周波数に応じて電流利得を制御する場合であったが、使用するデバイスの特性の違いによる利得偏差を制御する場合など、種々の場合に適用可能であることはもちろんである。
〔上述の実施の形態および実施例における効果〕
1.種々の理由によるアンプの利得の変動を、プログラマブル利得可変機能で補正が可能な、増幅回路が実現できる。
2.利得をプログラムで可変しても、特性の劣化が少ない増幅回路が実現出来る。
3.低電圧動作、低電流動作が可能となる。
4.可変容量を使用した、トラッキングフィルタを使用した高周波増幅器をIC化し易くなる。
5.受信機の高周波増幅器として使用すると、利得が安定し、AGCのタイミングのズレが無く、安定したレベル制御が可能となり、歪の劣化やS/Nの劣化が発生し難くなる。
1,200…増幅回路、13A,13B,13C…高周波アンプ、60…差動アンプ、121,122,123…可変利得アンプ、300,301,302,701,702…電流増幅回路