JP4710361B2 - 印刷インキ組成物 - Google Patents

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本発明は、書籍、チラシ、カタログ等の印刷物に使用されるオフセット印刷インキ(以下、「インキ」と略す。)に関するものであり、特に、耐摩擦剤によって堅牢な耐摩擦性を付与するインキに関するものであり、更に詳しくは、擦れのトラブルを低減して印刷紙面を改善し、印刷の作業効率を向上させる為のインキに関するものである。
オフセット印刷では、インキがインキ壷から複数のローラーを経由して版面に供給され、版面からブランケットを介して用紙に転移し、画像が再現される。オフセット輪転印刷の場合、ドライヤーを通過する際、180〜230℃位の熱風を受けて溶剤が蒸発する事により乾燥し、ガイドローラー、ターンバー、三角板等を経て、折り機にて折られ、結束される事が一般的であるが、ドライヤー通過後の複数のローラーを経由する間に、紙面が擦れる不具合が発生する事がある。特に近年、再生紙の活用率が向上するに伴い、紙面強度が弱い用紙が増加し、擦れが以前よりも発生し易くなっている状況がある。擦れを低減する対策としては、インキ中にワックスを適量配合する事が一般的であり、紙面上のインキ皮膜の厚みを超過する粒子径のワックスが、擦れを低減する作用を有する。
従来から存在するワックスとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、溶融製法のポリエチレン、マイクロクリスタリン等が一般的に既知であり、取り分けPTFEの耐摩擦性は堅牢ではあるが、多く配合すると滑り易くなり、折り機の中での折り不良並びに印刷物を積んだ時のスリップ事故を誘発する虞がある。このようなスリップ事故を防ぐ対策として、インキ中にワックスの他、スリップ防止剤を配合する事が挙げられる(特開2000−178493)。
近年、再生紙の増加等により、従来よりも堅牢な耐摩擦性を有するインキの要請が高まり、その上、滑り難くスリップ事故を誘発し難いインキも併せて求められている。
特開2000−178493号公報
本発明は、このような従来の技術における問題点を解決する為になされたものであり、その課題とするところは、従来よりも耐摩擦性を高めて紙面の擦れの不具合を低減し、かつ、高い耐摩擦性を維持しながらスリップ性を抑制しスリップ事故を低減するインキを提供する事である。
即ち本発明は、オフセット印刷インキ中に、耐摩擦剤として分散型ポリエチレンワックス0.1〜3重量%を含有するオフセット印刷インキ組成物において、
分散型ポリエチレンワックスが、
融点110〜150℃
および
平均粒子径が3〜6μ
であることを特徴とするオフセット印刷インキ組成物に関するものである
また、本発明は、上記オフセット印刷インキ組成物を印刷してなる印刷物に関するものである
本発明によって、オフセット印刷インキ組成物の耐摩擦性を従来より高める事が出来、且つ、高い耐摩擦性を維持しながらスリップ性を抑制しスリップ事故を低減する事が出来、印刷品質の向上と印刷作業の効率化が可能となる。
従来使用されているワックスは、PTFE、溶融製法のポリエチレン、マイクロクリスタリン等が通常である。溶融製法のポリエチレンとは、ポリエチレンとビヒクルと混合、加熱し完全に溶解した後に冷却され、目的の粒子径の段階でコンパウンド化されるものである。
これに対し、本発明のワックスは、微粉砕され目的の粒子径に調整された後、ビヒクルと混合された分散型ポリエチレンである。分散型ポリエチレンの添加量は印刷インキ組成物の全量に対して0.1から3重量%が好ましく、更に好ましくは0.2〜2重量%である。0.1重量%未満の添加量では、充分な耐摩擦性を確保出来ず、3重量%を超過する添加量では、過剰なワックスがローラー等に堆積する虞がある。
本発明に関するワックスの融点は、印刷物がドライヤーを通過する際の一般的な紙面温度と同等以上の温度が好ましく、具体的には110℃以上150℃以下が好ましい。ワックスの融点が110℃未満の場合、ワックスが融点以上の高温に暴露され、粒子の形態が著しく損壊されて耐摩擦性が低下する虞があり、150℃を超える融点の場合、好ましい粒子径を確保するのが困難となる。
本発明に関するワックスの粒子径は、3μ以上6μ以下が好ましい。ワックスの粒子径が3μ未満の場合、堅牢な耐摩擦性を付与するだけのワックス粒子が、印刷物表面に十分に現れず、6μを超える粒子径の場合は、ローラー等に堆積する虞がある。
また、本発明において、ワックスは粉体として使用する事も可能であるが、予めビヒクルに分散してコンパウンド化した物を使用しても良い。
本発明に関するワックスは、かねてより使用されてきたPTFE, 溶融製法のポリエチレン, マイクロクリスタリン等と併用する事が出来る。
本発明におけるインキの製造例としては、顔料5〜30重量%、バインダー樹脂20〜50重量%、植物油類1〜40重量%、溶剤1〜45重量%、耐摩擦剤として分散型ポリエチレンワックス0.1から3重量%からなるインキが挙げられる。インキの種類としては、オフセット輪転印刷機用インキ、枚葉印刷機用インキが主なものであるが、これに限定されるものではない。
本発明において使用される顔料としては、一般的な無機顔料及び有機顔料を示すことができる。無機顔料としては黄鉛、亜鉛黄、紺青、硫酸バリウム、カドミムレッド、酸化チタン、亜鉛華、弁柄、アルミナホワイト、炭酸カルシウム、群青、カーボンブラック、グラファイト、アルミニウム粉、などを示すことができる。有機顔料としては、アゾ系として、C系(βナフトール系)、2B系および6B系(βオキシナフトエ系)などの溶性アゾ顔料、βナフトール系、βオキシナフトエ酸アニリド系、モノアゾイエロー系、ジスアゾイエロー系、ピラゾロン系などの不溶性アゾ顔料、アセト酢酸アリリド系などの縮合アゾ顔料、フタロシアニン系として、銅フタロシアニン(αブルー、βブルー、εブルー)、塩素、臭素などのハロゲン化銅フタロシアン、金属フリーのフタロシアニン顔料、多環顔料としてペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系顔料を挙げることができる。顔料の添加量は、印刷インキ組成物の全量に対して5〜30重量%である。
本発明で使用されるバインダー樹脂とはロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂及び石油樹脂等を示し、それらは任意に単独または2種類以上を組み合わせて使用できる。またバインダー樹脂は新日本石油(株)製AFソルベント6の10%希釈状態において白濁温度が40〜140℃が好ましい。(白濁温度はNOVOCONTROL社製、CHEMOTRONICにて測定した。)40℃未満だとワニスにした状態で充分なゲル弾性が得られず、140℃を超えると溶剤との親和性が悪くなる。
本発明で使用されるバインダー樹脂は、植物油類及び/または溶剤とアルミニウムキレート化合物のようなゲル化剤を添加して、190℃以上で溶解してワニス化したものを使用することができる。バインダー樹脂の添加量は印刷インキ組成物の全量に対して20〜50重量%である。
本発明における植物油類とは植物油並びに植物油由来の化合物であり、グリセリンと脂肪酸とのトリグリセリドにおいて、少なくとも1つの脂肪酸が炭素−炭素不飽和結合を少なくとも1つ有する脂肪酸であるトリグリセリドと、それらのトリグリセリドから飽和または不飽和アルコールとをエステル反応させてなる脂肪酸モノエステル、あるいは植物油の脂肪酸とモノアルコールを直接エステル反応させた脂肪酸モノエステル、エーテル類が挙げられる。
植物油として代表的ものは、アサ実油、アマニ油、エノ油、オイチシカ油、オリーブ油、カカオ油、カポック油、カヤ油、カラシ油、キョウニン油、キリ油、ククイ油、クルミ油、ケシ油、ゴマ油、サフラワー油、ダイコン種油、大豆油、大風子油、ツバキ油、トウモロコシ油、ナタネ油、ニガー油、ヌカ油、パーム油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、ヘントウ油、松種子油、綿実油、ヤシ油、落花生油、脱水ヒマシ油などが挙げられる。
脂肪酸モノエステルは上記植物油とモノアルコールとをエステル交換したものや植物油の脂肪酸とモノアルコールを直接エステル反応させた脂肪酸モノエステルである。モノアルコールの代表的なものは、メタノール、エタノール、n−又はiso−プロパノール、n,sec又はtet−ブタノール、ヘプチノール、2−エチルヘキサノール、ヘキサノール、オクタノール、デカノール、ドデカノール等の飽和アルコール、オレイルアルコール、ドデセノール、フイセテリアルコール、ゾンマリルアルコール、ガドレイルアルコール、11−イコセノール、11−ドコセノール、15−テトラコセノール等の不飽和脂肪族系アルコールが挙げられる。
エーテル類として代表的なものは、ジ−n−オクチルエーテル、ジノニルエーテル、ジへプチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジデシルエーテル、ノニルへキシルエーテル、ノニルヘプチルエーテル、ノニルオクチルエーテル等が挙げられる。
本発明で使用される溶剤は芳香族炭化水素の含有量が1重量%以下の原油由来の溶剤(石油系溶剤)である。この石油系溶剤はアニリン点が70〜110℃、沸点が230℃以上の石油溶剤が適当である。アニリン点が70℃未満の場合には樹脂を溶解させる能力が高すぎる為インキの粘度が低くなりすぎ地汚れ耐性が充分でなくなる。またアニリン点が110℃を超える場合には樹脂の溶解性が乏しい為、インキの流動性が劣り、その結果光沢、着肉性が悪い印刷物しか得ることができず好ましくない。沸点が230℃未満の場合には印刷機上でのインキ中溶剤の放出量が多くなり、インキの流動性の劣化により、ローラー、版、ブランケットへのインキの堆積が起こり易くなる為、好ましくない。
[実施例]次に、本発明を実施例に基づいて説明する。例中、「部」は「重量部」を「%」は「重量%」を示す。尚、本発明の主旨と適用範囲を逸脱しない限り、以下の実施例は本発明を限定するものではない。
(オフセット印刷インキ用のワニス製造例)撹拌機、水分離器付還流冷却器、温度計付き4つ口フラスコに、ロジン変性フェノール樹脂(ハリマ化成(株)製ハリフェノール1248)23部、石油樹脂(日石化学(株)製ニッセキネオポリマー130)20部、大豆油 12部、石油系溶剤(新日本石油(株)製AFソルベント7)44部、ゲル化剤(川研ファインケミカル(株)製ALCH)1部を190℃で1時間加熱撹拌してオフセット印刷インキ用ワニスを得た。
(オフセット印刷インキ組成物の製造例)オフセット印刷インキ用のワニス70部に、紅顔料(東洋インキ製造(株)製リオノールレッド 6B 4234−P−)17部、石油系溶剤(新日本石油(株)製AFソルベント7)13部を加え、常法に従い三本ロールを用いてオフセット印刷インキ組成物を得た。
前記オフセット印刷インキ組成物に、表1の配合割合になるよう、平均粒子径が5μであり融点が128℃である分散型ポリエチレンワックスを添加して混合し、実施例1〜3のオフセット印刷インキ組成物を得た。
前記オフセット印刷インキ組成物を、そのまま比較例1とした。
前記オフセット印刷インキ組成物に、従来使用のワックスであるPTFEを添加して混合し、比較例2を得た。
前記オフセット印刷インキ組成物に、従来使用のワックスである溶融製法のポリエチレンを添加して混合し、比較例3を得た。
Figure 0004710361
(性能評価試験)前記実施例及び比較例のオフセット印刷インキ組成物の性能評価結果を表2に示す。評価用試験片は、実施例1〜3並びに比較例1〜3で得られたオフセット輪転インキを明製作所製RIテスターにて前面ロールを用い、0.3cmのインキの盛り量にて三菱製紙製パールコートAに展色し、熱風オーブンにて紙面温度が100℃となる条件で熱風を送風し乾燥させる事により得た。
耐摩擦性の比較方法は、前記試験片に白紙の合い紙を合わせ、東洋精機製学振型耐摩擦試験機にて、荷重100g、10往復擦過させ、試験片の擦れの程度を比較した。擦れの程度が顕著なものを1、擦れの程度が良好なものを5とし、5段階で相対的に比較した。
スリップ性の比較方法は、前記試験片を展色面同士重ね合わせ、東洋精機製スリップテスターにて反復して滑らせ、7回目のスリップ角を比較した。
従来ワックスの中で耐摩擦性が堅牢であった比較例2に比べ、実施例1は少量で比較例2と同等の耐摩擦性を得る事が出来、スリップ角も比較例2以上の性能を有している。実施例2は比較例2と同量添加しているが、高い耐摩擦性の上、スリップ角も良好である。本発明に関するワックスは、同量の添加で耐摩擦性を高める事が可能となり、スリップ角も良好である。
Figure 0004710361

Claims (2)

  1. オフセット印刷インキ中に、耐摩擦剤として分散型ポリエチレンワックス0.1〜3重量%を含有するオフセット印刷インキ組成物において、
    分散型ポリエチレンワックスが、
    融点110〜150℃
    および
    平均粒子径が3〜6μ
    であることを特徴とするオフセット印刷インキ組成物。
  2. 請求項1記載のオフセット印刷インキ組成物を印刷してなる印刷物。
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