JP4708529B2 - ガスバリア性フィルムの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は高湿度下でも優れたガスバリア性を有するガスバリア性フィルムの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリアミド、ポリエステル等の熱可塑性樹脂フィルムは強度、透明性、成形性、ガスバリア性に優れていることから、包装材料として幅広い用途に使用されている。しかしながら、レトルト処理食品等の長期間の保存性が求められる用途に用いる場合には、さらに高度なガスバリア性が要求される。
【0003】
ガスバリア性を改良するために、これらの熱可塑性樹脂フィルムの表面にポリ塩化ビニリデン(PVDC)を積層したフィルムが食品包装等に幅広く使用されてきたが、PVDCは焼却時に酸性ガス等の有機物質を発生するため、近年環境への関心が高まるとともに他材料への移行が強く望まれている。
【0004】
PVDCに変わる材料として、ポリビニルアルコール(PVA)は有毒ガスの発生もなく、低湿度雰囲気下でのガスバリア性も高いが、湿度が高くなるにつれて急激にガスバリア性が低下し、水分を含む食品等の包装には用いることができない場合が多い。
【0005】
PVAの高湿度下でのガスバリア性の低下を改善したフィルムとして、ビニルアルコールとエチレンの共重合体(EVOH)からなるフィルムが知られているが、高湿度下でのガスバリア性を実用レベルに維持するためにはエチレンの含有量をある程度高くする必要がある。EVOHをコーティング材料として用いる場合には有機溶媒または水と有機溶媒の混合溶媒を用いて溶解させることが必要であり、環境問題の観点からも望ましくなく、また有機溶媒の回収工程などを必要とするため、コスト高になるという問題がある。
【0006】
架橋剤を用いてPVAを架橋することにより耐水化する技術は従来から種々知られており、例えばマレイン酸単位を含有するポリマーがPVAや多糖類などの水酸基と反応して耐水化されることは広く知られている。例えば、特開平8−66991号公報には、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体の25〜50%部分中和物とPVAからなる層が優れた耐水性を有することが知られている。また、特開昭49−1649号公報にはPVAにアルキルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体を混合することによりPVAのフィルムを耐水化する方法が述べられている。
【0007】
しかし、耐水化(すなわち非水溶化)とガスバリア性は異なる性質であり、一般的にポリマー分子を架橋することにより耐水化されるが、ガスバリア性は酸素等の比較的小さな分子の侵入や拡散を防ぐ性質であり、単にポリマーを架橋してもガスバリア性が得られるとは限らず、たとえば、エポキシ樹脂やフェノール樹脂などの三次元架橋性ポリマーはガスバリア性を有していない。
【0008】
また、PVAとポリアクリル酸またはポリメタクリル酸の部分中和物とからなる水溶液をフィルムにコートし熱処理することにより、両ポリマーをエステル結合により架橋する方法が提案されているが(特開10−237180号公報)、この方法ではエステル化を十分に進行させて、フィルムのガスバリア性を高めるためには高温で長時間の加熱が必要であり生産性に問題があった。さらに高温で長時間反応させることによりフィルムが着色し、外観を損ねるため食品包装用には改善が必要であった。
【0009】
また、カルボキシル基含有高水素結合樹脂と水酸基含有高水素結合性樹脂、無機層状珪酸塩からなる樹脂組成物を熱及び活性エネルギー線で変性する方法が提案されているが(特開平10−231434)、活性エネルギー線を必要とするため、経済性の観点からさらなる改善が必要であった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、上記のような問題に対して、生産性を向上させた反応性の高いバリア性コート剤を熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片面に塗布することにより、高湿度下でも高いガスバリア性を有し、着色も少ないバリア性フィルムの製造方法を提供しようとするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究の結果、特定の樹脂組成物を含有するコート剤をフィルムの表面に塗布し、この樹脂組成物からなる層を形成させることにより、上記の課題が解決できることを見出し本発明に到達した。
すなわち本発明の要旨は、次のとおりである。
ビニルアルコール単位を40モル%以上含有するビニル系ポリマー(A)と、マレイン酸または無水マレイン酸単位を10モル%以上含有するオレフィン−マレイン酸共重合体(B)、及び無機層状化合物(C)を含有し、(A)と(B)の重量比が97/3〜20/80であり、(A+B)/(C)=10000/1〜1/2(重量比)である水系コート剤を、熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片面に塗布し、温度120℃以上で熱処理して架橋反応を行ってガスバリア層を形成することを特徴とするガスバリア性フィルムの製造方法。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0013】
本発明において用いられる熱可塑性樹脂フィルムとしては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン樹脂またはそれらの混合物よりなるフィルムまたはそれらのフィルムの積層体が挙げられ、未延伸フィルムでも延伸フィルムでも良い。
【0014】
フィルムを製造する方法としては、熱可塑性樹脂を押出機で加熱溶融してTダイより押し出し、冷却ロールなどにより冷却固化させて未延伸フィルムを得るか、もしくは円形ダイより押し出して水冷あるいは空冷により固化させて未延伸フィルムを得る。
延伸フィルムを製造する場合は、未延伸フィルムを一旦巻き取った後、または連続して同時2軸延伸法または逐次2軸延伸法により延伸する方法が好ましい。フィルム機械的特性や厚み均一性能面からはTダイによるフラット式製膜法とテンター延伸法を組み合わせる方法が好ましい。
【0015】
また、フィルムとコート層の接着性を向上させるために、フィルム表面にコロナ放電処理をしたり、アンカーコートをしてもよい。
【0016】
本発明における、ビニル系ポリマー(A)とオレフィン−マレイン酸共重合体(B)の重量比は97/3〜20/80、好ましくは、90/10〜25/75の範囲であることが必要である。この範囲を外れる場合には、特に高湿度雰囲気下でのフィルムのガスバリア性を発現させるために必要な架橋密度を得ることができず、本発明の目的とするガスバリア性フィルムを得ることができない。
【0017】
本発明におけるコート剤は水溶性であることが生産上好ましく、疎水性の共重合成分を多量に含有させると水溶性が損なわれるので好ましくない。
また、ビニル系ポリマー(A)中のビニルアルコール単位は40モル%以上含有されていることが必要であり、この比率が低すぎると、マレイン酸共重合体(B)とのエステル結合反応率が低下し、本発明の目的とするガスバリアフィルムを得ることができない。
【0018】
本発明において用いられるビニル系ポリマー(A)の代表的な化合物としてはポリビニルアルコールである。ポリビニルアルコールは、ビニルエステルの重合体を完全または部分ケン化するなどの公知の方法を用いて得ることができる。ビニルエステルとしては、ぎ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられ、中でも酢酸ビニルが工業的に最も好ましい。
【0019】
ケン化方法としては公知のアルカリケン化法や酸ケン化法を用いることができ、中でもメタノール中で水酸化アルカリを使用して加アルコール分解する方法が好ましい。
ケン化度は100%に近いほどガスバリア性の観点からは好ましいが、水溶液の温度が低くなるとゲル化する懸念があり、保存には温度管理が必要である。ケン化度を若干低下させて、例えば97%程度にすると溶液の安定性は格段に増し、またバリア性能の低下もほとんどないが、ケン化度が低すぎるとバリア性能が低下し、ポリマーの水溶性が失なわれてくる。好ましいケン化度は約80%以上である。
【0020】
次に、本発明において使用されるオレフィン−マレイン酸共重合体(B)は、無水マレイン酸とオレフィンモノマーを溶液ラジカル重合などの公知の方法で重合することにより得られる。
共重合可能なオレフィンモノマーとしては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどの炭素数3〜30までのアルキルビニルエーテル類、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル類、ぎ酸ビニル酢酸ビニルなどのビニルエステル類、スチレン、p−スチレンスルホン酸、エチレン、プロピレン、イソブチレンなどの炭素数2〜30のオレフィンなどが挙げられ、これらの混合物を用いることもできる。
このうち、アルキルビニルエーテル類、低級オレフィン類などがガスバリア性の向上の点で最も好ましい。
【0021】
本発明におけるポリマー(B)中のマレイン酸単位は10モル%以上含有されていることが必要である。マレイン酸単位が10モル%より少ないと、ポリマー(A)中のビニルアルコール単位との反応による架橋構造の形成が不十分でありガスバリア性が低下する。また、マレイン酸単位は部分的にエステル化もしくはアミド化されていてもよい。
【0022】
なお、本発明で用いられるポリマー(B)中のマレイン酸単位は、乾燥状態では隣接カルボキシル基が脱水環化した無水マレイン酸構造となりやすく、湿潤時や水溶液中では開環してマレイン酸構造となる。
【0023】
本発明における無機層状化合物とは、単位結晶層が重なって層状構造を形成する無機化合物であり、溶媒中で膨潤、劈開するものが好ましい。
【0024】
無機層状化合物としては、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、バーミキュライト、フッ素雲母、白雲母、パラゴナイト、金雲母、黒雲母、レピドライト、マーガライト、クリントナイト、アナンダイト、緑泥石、ドンバサイト、スドーアイト、クッケアイト、クリノクロア、シャモサイト、ニマイト、テトラシリリックマイカ、タルク、パイロフィライト、ナクライト、カオリナイト、ハロイサイト、クリソタイル、ナトリウムテニオライト、ザンソフィライト、アンチゴライト、ディッカイト、ハイドロタルサイトなどが挙げられ、膨潤性フッ素雲母やモンモリロナイトが特に好ましい。
【0025】
これらの無機層状化合物は、天然に産するものであっても、人工的に合成あるいは変性されたものでもよく、またそれらをオニウム塩などの有機物で処理したものであってもよい。
【0026】
膨潤性フッ素雲母系鉱物は透明性に優れている点で最も好ましく、次式で示されるものである。
α(MF)・β(aMgF2 ・bMgO)・γSiO2
(式中、Mはナトリウム又はリチウムを表し、α、β、γ、a及びbは各々係数を表し、0.1 ≦α≦2、2≦β≦3.5 、3≦γ≦4、0≦a≦1、0≦b≦1、a+b=1である。)
【0027】
このような膨潤性フッ素雲母系鉱物の製造法としては、例えば、酸化珪素と酸化マグネシウムと各種フッ化物とを混合し、その混合物を電気炉あるいはガス炉中で1400〜1500℃の温度範囲で完全に溶融し、その冷却過程で反応容器内にフッ素雲母系鉱物を結晶成長させる、いわゆる溶融法がある。
【0028】
また、タルクを出発物質として用い、これにアルカリ金属イオンをインターカレーションして膨潤性フッ素雲母系鉱物を得る方法がある(特開平2-149415号公報)。この方法では、タルクに珪フッ化アルカリあるいはフッ化アルカリを混合し、磁性ルツボ内で約700〜1200℃で短時間加熱処理することによって膨潤性フッ素雲母系鉱物を得ることができる。
【0029】
この際、タルクと混合する珪フッ化アルカリあるいはフッ化アルカリの量は、混合物全体の10〜35重量%の範囲とすることが好ましく、この範囲を外れる場合には膨潤性フッ素雲母系鉱物の生成収率が低下するので好ましくない。
【0030】
珪フッ化アルカリ又はフッ化アルカリのアルカリ金属は、ナトリウムあるいはリチウムが好ましい。また、膨潤性フッ素雲母系鉱物を製造する工程において、アルミナを少量配合し、生成する膨潤性フッ素雲母系鉱物の膨潤性を調整することも可能である。
【0031】
また、本発明において用いることができる無機層状化合物の中で、モンモリロナイトは、次式で示されるもので、天然に産出するものを精製することにより得ることができる。
MaSi4(Al2-aMga)O10(OH)2・nH2O
(式中、Mはナトリウムのカチオンを表し、aは0.25〜0.60である。また、層間のイオン交換性カチオンと結合している水分子の数は、カチオン種や湿度等の条件に応じて変わりうるので、式中ではnH2Oで表す。)
またモンモリロナイトには次式群で表される、マグネシアンモンモリロナイト、鉄モンモリロナイト、鉄マグネシアンモンモリロナイトの同型イオン置換体も存在し、これらを用いてもよい。
MaSi4(Al1.67-aMg0.5+a)O10(OH)2・nH2O
MaSi4(Fe2-a 3+Mga)O10(OH)2・nH2O
MaSi4(Fe1.67-a 3+Mg0.5+a)O10(OH)2・nH2O
(式中、Mはナトリウムのカチオンを表し、aは0.25〜0.60である。)
【0032】
通常、モンモリロナイトは、その層間にナトリウムやカルシウム等のイオン交換性カチオンを有するが、その含有比率は産地によって異なる。本発明においては、イオン交換処理等によって層間のイオン交換性カチオンがナトリウムに置換されていることが好ましい。また水ひ処理により精製したモンモリロナイトを用いることが好ましい。
【0033】
本発明におけるコート剤を構成する樹脂組成物には、その特性を大きく損わない限りにおいて、熱安定剤、酸化防止剤、強化材、顔料、劣化防止剤、耐候剤、難燃剤、可塑剤、離型剤、滑剤などが添加されていてもよい。
【0034】
熱安定剤、酸化防止剤及び劣化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール類、リン化合物、ヒンダードアミン類、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0035】
強化剤としては、例えばクレー、タルク、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ワラストナイト、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、酸化亜鉛、ゼオライト、ハイドロタルサイト、金属繊維、金属ウィスカー、セラミックウィスカー、チタン酸カリウムウィスカー、窒化ホウ素、グラファイト、ガラス繊維、炭素繊維などが挙げられる。
【0036】
本発明におけるコート剤には、架橋剤成分を少量添加することによって得られるフィルムのガスバリア性をさらに向上させることができる。
【0037】
架橋剤としては、イソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物、ジルコニウム塩化合物などが挙げられる。
【0038】
コート液の調製方法としては、撹拌機を備えた溶解釜等を用いて公知の方法で行えばよく、撹拌機としては、ホモジナイザー、ボールミル、高圧分散装置など公知の装置を用いることができる。この時、アルカリ化合物をポリマー(B)の水溶液に加えておくことにより水溶液の安定性が向上する。
【0039】
本発明において、ガスバリアフィルムは、ポリマー(A)、ポリマー(B)および無機層状化合物(C)の混合溶液を作製し、これをフィルムの表面にコートした後、加熱乾燥することによって得られる。溶解性を高める目的や乾燥工程の短縮、溶液の安定性の改善などの目的により、水にアルコールや有機溶媒を少量添加することもできる。
【0040】
本発明における、ポリマー(A)、ポリマー(B)および無機層状化合物(C)からなる層の厚みは、フィルムのガスバリア性を十分高めるためには少なくとも0.1μmより厚くすることが望ましい。
【0041】
また、コート剤溶液をフィルムにコートする際のポリマー濃度は、液の粘度や反応性、用いる装置の仕様によって適宜変更されるものであるが、あまりに希薄な溶液ではガスバリア性を発現するのに充分な厚みの層をコートすることが困難となり、また、その後の乾燥工程において長時間を要するという問題を生じやすい。一方、溶液の濃度が高すぎると、混合操作や保存性などに問題を生じることがある。この様な観点から、ポリマー濃度は溶液全体の10〜50重量%の範囲にすることが好ましい。
【0042】
溶液をフィルムにコーティングする方法は特に限定されないが、グラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング等の通常の方法を用いることができる。
延伸に先だってコーティングを行うには、まず未延伸フィルムにコーティングして乾燥した後、テンター式延伸機に供給してフィルムを走行方向と幅方向に同時に延伸(同時2軸延伸)、熱処理するか、あるいは、多段熱ロール等を用いてフィルムの走行方向に延伸を行った後にコーティングし、乾燥後、テンター式延伸機によって幅方向に延伸(逐次2軸延伸)してもよい。また、走行方向の延伸とテンターでの同時2軸延伸を組み合わせることも可能である。
【0043】
本発明においては、ガスバリア層を架橋反応させるために、温度120℃以上の雰囲気で熱処理することが必要であり、150℃以上とすることが好ましい。熱処理温度が低いと架橋反応を充分に進行させることができず、充分なガスバリア性を有するフィルムが得ることが困難になる。
熱処理時間は、あまり短すぎると上記架橋反応を充分に進行させることができず、充分なガスバリア性を有するフィルムを得ることが困難になる。通常1秒以上、好ましくは3秒以上が良い。
【0044】
【実施例】
次に、本発明を実施例により具体的に説明する。
本発明においては、フィルムのガスバリア性は基材フィルムの種類や厚み、およびコート層の厚みにより変化するため、コート層自体の酸素透過係数を評価した。
酸素透過係数は、下記式より求めた。
1/QF=1/QB+L/PC
ただし、QF:コートフィルムの酸素透過度(ml/m2・day・MPa)
QB:熱可塑性樹脂フィルムの酸素透過度(ml/m2・day・MPa)
PC:コート層の酸素透過係数(ml・μm/m2・day・MPa)
L:コート層厚み(μm)
したがって、コートフィルムの酸素透過度は、PCおよびLが分かれば上式より見積もることができる。
酸素バリア性は、モコン社製酸素バリア測定器により20℃、相対湿度85%の雰囲気における酸素透過度を測定した。
なお、厚み12μmのPETフィルムの酸素透過度は900ml/m2・day・MPa、また、厚み15μmのナイロン6フィルムの酸素透過度は400ml/m2・day・MPaとした。
【0045】
実施例1
ポリマー(A)として、ユニチカケミカル社製ポリビニルアルコールUF040G(ケン化度99%、平均重合度400)を純水に溶解し、20重量%の水溶液を得た。
ポリマー(B)としてInternational Specialty Products社製メチルビニルエーテル−マレイン酸の等モル共重合体GANTREZ AN119をカルボキシル基に対して2モル%の水酸化ナトリウムを含む水溶液に溶解し20重量%溶液とした。
ポリマー(A)とポリマー(B)の重量比が70/30となるように両水溶液を混合し、続いて、モンモリロナイト(クニミネ工業社製クニピアF)を、(A)と(B)の固形分合計量に対して10重量%になるように添加し、攪拌してコート液を調製した。
このコート液を2軸延伸PETフィルム(ユニチカ社製エンブレットPET12、厚み12μm)上に乾燥後の塗膜厚みが約2μmになるようにメイヤーバーでコートし、100℃で2分間乾燥した後、200℃で15秒間熱処理した。
得られたフィルムの20℃、85%RHにおける酸素透過度は26ml/m2・day・MPaと優れた値を示した。
【0046】
実施例2〜6
無機層状化合物(C)の種類とコート剤の組成を変えて実施例1と同様な操作を行った。得られたフィルムの酸素透過度を表1に示した。
【0047】
比較例1
実施例1と同様の手順で無機層状化合物(C)を加えないでコート液を調整した。このコート液を実施例1と同様にしてPETフィルムにコート、乾燥、熱処理した。
得られたフィルムの酸素透過度は145ml/m2・day・MPaであった。
【0048】
比較例2〜3
ポリマー(A)またはポリマー(B)のいずれかを加えない外は、実施例1と同様の手順でコート液を調製した。このコート液を実施例1と同様にしてPETフィルムにコート、乾燥、熱処理した。得られたフィルムはラビング試験の際に水に溶解した。
【0049】
実施例7
ポリマー(B)としてイソブチレン−無水マレイン酸共重合体(クラレ社製イソバン)を使用して表1に示した条件でコーティングを行った。結果を表1に示した。
【0050】
実施例8
ナイロン6樹脂をTダイを備えた押出機(75mm径、L/Dが45の緩圧縮タイプ単軸スクリュー)を用いて、シンリンダー温度260℃、Tダイ温度270℃でシート状に押し出し、表面温度10℃に調節された冷却ロール上に密着させて急冷し、厚み150μmの未延伸フィルムとした。
続いて、未延伸フィルムをグラビアロール式コーターに導き、実施例1で示したコート液を乾燥後のコート厚みが2μmになるようにコーティングし、80℃の熱風ドライヤー中で30秒間乾燥した。次に、フィルムをテンター式同時2軸延伸機に供給し、温度100℃で2秒間予熱した後、170℃で縦方向に3倍、横方向に3.5倍の倍率で延伸した。次に、横方向弛緩率5%で、200℃で15秒間の熱処理を行い、厚み15μmの2軸延伸フィルムを巻き取った。
得られたフィルムの酸素透過度及びコート層の酸素透過係数を表1に示した。
【0051】
実施例9
実施例7のコート液を用いて、実施例8と同様にしてナイロンフィルムにコートした。 得られたフィルムの酸素透過度及びコート層の酸素透過係数を表1に示した。
【0052】
比較例4
無機層状化合物を加えない以外は、実施例8と同様にしてナイロンフィルムにコートした。
得られたフィルムの酸素透過度及びコート層の酸素透過係数を表1に示した。
【0053】
【表1】
【0054】
【発明の効果】
本発明の製造方法においては、特定組成のコート剤からなる層を熱可塑性樹脂フィルムの表面に形成させることにより、優れたガスバリア性能を有するフィルムを製造することができ、また、高湿度下でも優れたガスバリア性を保持することができる。
Claims (4)
- ビニルアルコール単位を40モル%以上含有するビニル系ポリマー(A)と、マレイン酸または無水マレイン酸単位を10モル%以上含有するオレフィン−マレイン酸共重合体(B)、及び無機層状化合物(C)を含有し、(A)と(B)の重量比が97/3〜20/80であり、(A+B)/(C)=10000/1〜1/2(重量比)である水系コート剤を、熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片面に塗布し、温度120℃以上で熱処理して架橋反応を行ってガスバリア層を形成することを特徴とするガスバリア性フィルムの製造方法。
- 水系コート剤中に含有されるビニル系ポリマー(B)中のカルボキシル基に対して0.1〜20当量%のアルカリ化合物が混合されている請求項1記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
- 熱可塑性樹脂フィルムがナイロン6である請求項1または2記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
- 熱可塑性樹脂フィルムがポリエチレンテレフタレートである請求項1または2記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
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