JP4707998B2 - フレキシブルプリント回路基板用エポキシ樹脂系接着剤組成物、フレキシブルプリント回路基板用カバーレイ、フレキシブルプリント回路基板用銅張積層板およびフレキシブルプリント回路基板 - Google Patents
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Description
通常、FPC基板は、ポリイミド等の絶縁性樹脂からなり可撓性を有する絶縁層が銅箔に積層されてなる銅張積層板(CCL=copper−clad laminate)を材料として用い、銅張積層板の銅箔をエッチングして回路パターンを形成し、その上に、可撓性を有するカバーレイ(CL=cover lay)を接着して回路パターンを覆うことにより製造されている。ここで、銅張積層板は、ポリイミド等からなるベースフィルムに銅箔を接着剤で接着するか、銅箔の片面にポリイミドワニスを塗布して乾燥する等の方法により製造されている。また、カバーレイとしては、ポリイミド等からなる絶縁フィルムの片面に接着剤層を設けたものが多用されている。すなわち、FPC基板においては、銅張積層板側の銅回路間の銅箔除去面にカバーレイ側の接着剤が入り込み、該接着剤によって銅回路間が絶縁された構造となっている。
ところで、NBRを用いたエポキシ系接着剤は、マイグレーション特性が悪いことが知られていたが、回路基板における回路間隔が比較的広い場合には、実用上問題がなかった。しかし、近年の急速な高精細化に伴う回路間隔の狭ピッチ化(ピッチが100μm以下)により、マイグレーションは大きな問題となっている。ここで、マイグレーションとは、回路基板に電圧を印加した状態において、配線の銅が接着剤中をプラス側からマイナス側に移行して、そこで銅が樹木状析出物(デンドライト)として析出することにより、回路間の絶縁抵抗が著しく低下してしまう現象のことをいう。さらに、マイグレーションは高温、高湿下で促進されるので、使用環境の過酷化によっても、マイグレーション特性は大きな問題となる。
(1) 接着剤塗膜の凝集力を高めることにより、マイグレーションを抑制しようというもの(例えば特許文献1、2参照)。
(2) Na+、K+、Cl−などのイオン性不純物が少ないラジカル重合により合成されたアクリル系エラストマを用いることにより、マイグレーションを抑制しようというもの(例えば特許文献3参照)。
ジカルボン酸を含有するフレキシブルプリント回路基板用エポキシ樹脂系接着剤組成物であって、前記エラストマがカルボキシ化アクリロニトリル―ブタジエンゴムであり、前記ジカルボン酸がコハク酸またはマレイン酸であり、前記ジカルボン酸の含有量が、前記エポキシ樹脂系接着剤組成物中の固形分の総量を1として、10〜50000ppmの範囲内であることを特徴とするフレキシブルプリント回路基板用エポキシ樹脂系接着剤組成物を提供する。
本発明のフレキシブルプリント回路基板用銅張積層板によれば、上述の接着剤組成物からなる接着剤層によってベースフィルムと銅回路とが接着されているので、マイグレーション特性の優れたフレキシブルプリント回路基板を得ることができる。
本発明のエポキシ系樹脂組成物に用いられるエポキシ系樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、アクリル酸変性エポキシ樹脂(エポキシアクリレート)、リン含有エポキシ樹脂、およびこれらのハロゲン化物(臭素化エポキシ樹脂など)や水素添加物などが挙げられる。これらのエポキシ系樹脂は、1種類を単独で用いても良いし、または複数種類を適宜の配合比で組み合わせて使用しても良い。臭素化エポキシ樹脂などは、接着剤に難燃性が要求される場合に、特に有効である。
アクリル酸変性エポキシ樹脂(エポキシアクリレート)は、感光性を有するので、エポキシ系樹脂組成物に光硬化性を付与するために有効である。
本発明のエポキシ系樹脂組成物は、ジカルボン酸を含有するので、デンドライトの形成を抑制し、マイグレーション特性に優れたものとなる。ジカルボン酸がマイグレーションを抑制する機構は明らかではないが、本発明者は、電子回路を構成する金属のイオン(例えばCu2+やNi2+などの二価金属イオン)をキレート形成によって捕捉する作用や、カルボン酸の酸性による電子回路の金属表面を改質する作用などを推測している。
前記ジカルボン酸の含有量は、エポキシ系樹脂組成物中の固形分の総量を1として、10〜50000ppmの範囲内であることが好ましい。これにより、ジカルボン酸によるマイグレーションの抑制効果を高く発揮することができる。ジカルボン酸の含有量が過多であると、金属(CuやNi等)が溶解されてしまい、かえってマイグレーションを促進するおそれがあるので、好ましくない。
また、ジカルボン酸がアミノ基や置換アミノ基を含む場合、アミノ基や置換アミノ基の塩基性のためにカルボン酸の反応性が影響を受けるおそれがあるため、アミノ基も置換アミノ基も含まないジカルボン酸が好ましい。
また、エポキシ系樹脂への分散性が良いジカルボン酸が好ましく、この点では、分子内の炭素原子数が2〜6の範囲である脂肪族のジカルボン酸が好ましい。
エラストマとしては、エポキシ樹脂中に分散するものであれば特に制限はないが、アクリロニトリル―ブタジエンゴム(NBR)やアクリルゴム(AER)などが挙げられる。特に、これらをカルボキシ化したエラストマが好ましく、とりわけ、カルボキシ化アクリロニトリル―ブタジエンゴム(カルボキシ化NBR)が好ましい。カルボキシ化NBRの例としては、日本ゼオン社製のニポール1072やニポールFN3703、バイエル社製のテルバンXTなど(以上、いずれも商品名)が挙げられる。
充填剤としては、例えばシリカ、マイカ、クレー、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウムなどが挙げられる。難燃剤としては、一般に知られているものは特に制限なく使用できるが、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモンなどの無機系難燃剤、リン酸エステル系難燃剤、含ハロゲンリン酸エステル系難燃剤、無機臭素系難燃剤、有機臭素系難燃剤、有機塩素系難燃剤等が挙げられる。
その他の添加剤としては、シランカップリング剤やイミダゾール等が挙げられる。
本発明の接着剤組成物中のエラストマ(B)の添加量は、特に限定されるものではないが、熱硬化性ベースポリマー(A)100質量部に対して20〜100質量部の範囲内が好ましい。エラストマ(B)の配合量が上記の範囲内であることにより、優れたマイグレーション特性が得られるとともに、接着強度も充分強いものとなる。
硬化剤(C)は、1種類を単独で用いても良いし、または複数種類を適宜の配合比で組み合わせて使用しても良い。硬化剤の種類や配合量などは、通常の使用範囲内において、成形条件や特性などに応じて選択される。
充填剤としては、例えばシリカ、マイカ、クレー、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウムなどが挙げられる。難燃剤としては、一般に知られているものは特に制限なく使用できるが、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモンなどの無機系難燃剤、リン酸エステル系難燃剤、含ハロゲンリン酸エステル系難燃剤、無機臭素系難燃剤、有機臭素系難燃剤、有機塩素系難燃剤等が挙げられる。
その他の添加剤としては、回路との接着力を向上させるために、シランカップリング剤やイミダゾール等が挙げられる。
接着剤溶液の調製に用いられる有機溶剤(D)としては、例えば、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、トルエン、トリクロロエチレンなどが挙げられる。接着剤溶液中の固形分濃度は、好ましくは5〜70質量%の範囲内であり、より好ましくは、10〜50質量%の範囲内である。接着剤溶液の固形分濃度が5質量%未満では、塗工むら(接着剤層厚さのばらつき)が発生しやすくなる。一方、70質量%を超えると、粘度が上昇し、また、固形分と有機溶剤との相溶性低下によって塗布性が劣化するおそれがある。
本発明の接着剤組成物は、有機溶剤を加えて得られる接着剤溶液を対象物に塗布し、乾燥および硬化させることで、対象物の接着や封止などを行うために用いることができる。この接着剤組成物の乾燥および硬化に際しては、例えば20〜200℃程度の温度下で行うことができる。
カバーレイ用の絶縁フィルムとしては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂(例えばポリエチレンテレフタレート樹脂)などからなる厚み10μm〜150μm程度のフィルムなどを用いることができる。カバーレイ側の接着剤層の厚み(乾燥後)は、例えば1μm〜100μm程度とすることができる。本発明の接着剤組成物から接着剤層を形成する方法は、上述したように、塗布などの方法によることができる。
ベースフィルムとしては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂などからなる厚み10μm〜150μm程度のフィルムなどを用いることができる。
銅張積層板側の接着剤層の厚み(乾燥後)は、例えば1μm〜50μm程度とすることができる。導体層としての銅箔としては、特に限定されるものではないが、電解銅箔、圧延銅箔などの厚み5μm〜100μm程度のものを用いることができる。
本発明のフレキシブルプリント回路基板の製造に用いられる銅張積層板としては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリイミド等からなるベースフィルムに銅箔を接着剤で接着してなる3層CCLや、銅箔の片面にポリイミドワニスを塗布して乾燥してなる2層CCL等を用いることができる。3層CCLに用いられる接着剤は特に限定されるものではないが、ジカルボン酸を含有する本発明のエポキシ樹脂系接着剤組成物を用いると、信頼性の一層の向上が期待されるので、好ましい。
銅箔に回路や配線を構成する導体パターンを形成する方法は特に限定されるものではないが、例えばエッチングなどにより行うことができる。
カバーレイと回路板との積層は、カバーレイの接着剤層側と回路板の銅箔面側とが向かい合うように対向させて重ね合わせ、熱プレスなどにより一体化させる。熱プレス条件としては、例えば、加熱温度を140〜200℃程度、加熱時間を0.1〜3時間程度とすることができる。
このようにしてカバーレイと回路板とを積層一体化することにより、本発明のフレキシブルプリント回路基板を得ることができる。
本発明のフレキシブルプリント回路基板用銅張積層板によれば、ジカルボン酸を含有する接着剤層によって、ベースフィルムと銅回路とが接着されているので、マイグレーション特性の優れたフレキシブルプリント回路基板を得ることができる。
本発明のフレキシブルプリント回路基板によれば、ジカルボン酸を含有するカバーレイ側接着剤層によって銅回路間が絶縁保護されるので、デンドライトの形成による回路間の絶縁抵抗の低下を抑えることができる。特に、回路間ピッチが100μmである狭ピッチ回路を用いた場合でもマイグレーションの発生を防止することができ、高密度の回路パターンを備えたFPC基板を製造することができる。この結果、電子機器の小型化が可能となるため、産業の発展に寄与することができる。
本発明のプリプレグは、本発明のエポキシ系樹脂組成物を、ガラスクロスに含浸させ、加熱により半硬化させることにより製造することができる。
本発明の銅張積層板は、本発明のプリプレグを複数枚積層するとともに、該プリプレグ積層体の両面または片面に銅箔を貼付し、加熱加圧してエポキシ系樹脂組成物を硬化させ一体化することにより、製造することができる。本発明の銅張積層板は、リジッドタイプのプリント配線板の製造に利用することができる。
本発明のプリプレグおよび銅張積層板は、ジカルボン酸を含有するエポキシ系樹脂組成物が含浸されているので、マイグレーション特性の優れたプリント配線板を得ることができる。
本発明の感光性ドライフィルム(ドライフィルムレジストともいう。)および感光性液状レジストは、感光性レジストとして使用されるものであり、エポキシ樹脂として、感光性を有するエポキシアクリレートを含有することが好ましい。
本発明のエポキシ系樹脂組成物は、未硬化状態のものを液状レジストとして利用することが可能である。また、本発明のエポキシ系樹脂組成物を乾燥させてフィルム状とすることにより、ドライフィルムとして利用することができる。ドライフィルムを製造する際、適当なプラスチックフィルムや金属板等の支持体上に塗布し、乾燥後、支持体より剥がして単独のフィルムとして取り扱ってもよいし、PET等のフィルムの上に積層された状態のままとすることもできる。
本発明の感光性ドライフィルムおよび感光性液状レジストは、例えば、プリント配線板にオーバーコートする用途に利用することができる。
本発明の感光性ドライフィルムおよび感光性液状レジストは、ジカルボン酸を含有するエポキシ系樹脂組成物から得られるので、マイグレーション特性の優れたプリント配線板を得ることができる。
以下の手順により、各実施例および比較例に係る接着剤溶液を調製した。
エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、商品名「エピコート828EL」)100質量部、エラストマとして、カルボキシ化NBR(日本ゼオン社製、商品名「ニポール1072」)を50質量部、硬化剤として4,4′−ジアミノジフェニルスルホン30質量部からなる接着剤組成物を調製し、これをメチルエチルケトン(MEK)に溶解分散させて、固形分濃度が30質量%の接着剤溶液を作製した。
試験例1〜7においては、さらに、ジカルボン酸としてコハク酸を接着剤組成物に添加した。コハク酸は、純水に溶解して、5質量%水溶液として接着剤組成物に添加した。
試験例8〜9においては、さらに、ジカルボン酸としてマレイン酸を接着剤組成物に添加した。マレイン酸は、純水に溶解して、5質量%水溶液として接着剤組成物に添加した。
試験例10〜12においては、キレート剤としてEDTA(エチレンジアミン四酢酸)を接着剤組成物に添加した。
ジカルボン酸およびキレート剤の配合量は、表1,表2に示すとおりである。
厚さ25μmのポリイミドフィルム(東レデュポン社製、商品名「K−100V」)に対して、前記接着剤溶液を乾燥後の膜厚が25μmとなるように塗布し、さらに150℃、20分間乾燥することにより、カバーレイを得た。また、銅張積層板としては、ラインピッチが80μmのマイグレーション特性評価用クシ型電極パターンを含む評価用回路パターンが形成された2層CCL(有沢製作所製、商品名「PKW1018RA」)を用いた。前記カバーレイを前記銅張積層板と重ね合わせ、160℃、60分間、圧力5MPaでプレス接着することにより、マイグレーション特性評価用FPC基板サンプルを製造した。
マイグレーション特性評価用FPC基板サンプルを、温度85℃、相対湿度85%RHの高温高湿下に置き、導体間に50Vの直流電圧を印加して、電極間の絶縁抵抗を測定した。良否の判定は絶縁抵抗値に基づいて行い、電圧の印加を試験開始後1000時間継続した後においても絶縁抵抗値が107Ω以上の場合を優良(表1,表2中、○で示す)と判定した。
表1,表2の「マイグレーション特性」の欄に示す数字は、試験開始後、絶縁抵抗値が107Ω未満に低下するまでの時間(単位h)である(ここではこの時間を「短絡時間」という場合がある)。表1,表2中、「○」と評価された試験例では、上記の評価基準によれば、短絡時間は1000時間以上ということになる。短絡時間が500時間以上1000時間未満のものは、「△」と評価した。また、短絡時間が500時間のものは、「×」と評価した。
試験例1〜5の結果から明らかなように、ジカルボン酸の含有量が接着剤組成物中の固形分の総量を1として10ppm以上50000ppm以下である場合には、1000時間電圧を印加しても絶縁抵抗の低下は認められず、極めて高いマイグレーション特性を示した。それに対して、ジカルボン酸酸の含有量が10ppm未満、あるいは50000ppmを超える場合には、やや絶縁抵抗の低下が認められるものの、従来以上に長い短絡時間を示し、ジカルボン酸を添加したことによる短絡時間の延長(すなわち長寿命化)の効果が認められた。
キレート剤であるEDTAを添加した試験例では、短絡時間は十分といえず、有効性が認められなかった。
本実施例において、絶縁抵抗の低下が、接着剤中へのジカルボン酸の添加により著しく抑制された理由については、本発明者は以下のように考えている。すなわち、実施例では接着剤中の何らかの成分により銅回路から溶出した銅イオンが、接着剤中のジカルボン酸により捕捉され、安定なキレート化合物となるなどの効果により、陰極側での銅の析出(デンドライトの生成)が抑えられたものと考えられる。
Claims (4)
- エポキシ系樹脂と、エラストマと、硬化剤と、ジカルボン酸を含有するフレキシブルプリント回路基板用エポキシ樹脂系接着剤組成物であって、
前記エラストマがカルボキシ化アクリロニトリル―ブタジエンゴムであり、
前記ジカルボン酸がコハク酸またはマレイン酸であり、
前記ジカルボン酸の含有量が、前記エポキシ樹脂系接着剤組成物中の固形分の総量を1として、10〜50000ppmの範囲内であることを特徴とするフレキシブルプリント回路基板用エポキシ樹脂系接着剤組成物。 - 絶縁フィルムの片面に接着剤層を設けてなるフレキシブルプリント回路基板用カバーレイにおいて、
前記接着剤層を構成する接着剤組成物が、請求項1に記載のフレキシブルプリント回路基板用エポキシ樹脂系接着剤組成物であることを特徴とするフレキシブルプリント回路基板用カバーレイ。 - ベースフィルムと銅箔との間に接着剤層を設けてなるフレキシブルプリント回路基板用銅張積層板において、
前記接着剤層を構成する接着剤組成物が、請求項1に記載のフレキシブルプリント回路基板用エポキシ樹脂系接着剤組成物であることを特徴とするフレキシブルプリント回路基板用銅張積層板。 - 請求項2に記載のフレキシブルプリント回路基板用カバーレイが、絶縁層上に形成された銅箔からなる回路を被覆してなることを特徴とするフレキシブルプリント回路基板。
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