JP4705530B2 - 光記録媒体とその基板、及び該基板の成形用スタンパ - Google Patents
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トラッキングサーボは、グルーブで反射回折された光から得られるプッシュプル信号に基づいて行われる。プッシュプル信号は、グルーブで反射回折された光を、トラック中心に対して対称に配置した2つの光検出器により検出し、それらの光検出器からの出力の差を取ることにより得られる。
しかし、情報がピットとして記録されている再生専用光記録媒体においては、半径方向に比べて円周方向の密度が約半分であるため、プッシュプル信号の振幅が1/2になる。このため、記録型の光記録媒体と等しいトラックピッチの再生専用光記録媒体では、安定したトラッキングを行えないという問題があった。
一方、特許文献2には、ピットが形成された基板上に、超解像近接場構造を有するマスクを形成することにより、再生光の短波長化や対物レンズの高NA化をすることなく、高密度再生専用光ディスクを得る発明が開示されている。この発明によれば、再生分解能より小さい記録マークを再生することができるが、半径方向については言及されていない。
記録密度の向上には、当然ながら、円周方向だけでなく半径方向も重要であり、トラックピッチを狭くした方が、より記録密度を大きくできる。しかしながら、トラックピッチを再生分解能より狭くすると、トラッキングエラー信号であるプッシュプル信号が発生しなくなるため、トラッキングできないという問題が生じる。
1) 記録情報に対応する、トラックピッチが2TPでピット深さがd1の第1のピット列と、トラックピッチが2TPでピット深さがd2の第2のピット列とがトラックに沿って形成されており、d1<d2、第1のピット列中心と第2のピット列中心の間隔がTPで、該TPは再生光スポットの再生分解能以下であり、且つ、0.335λ/(NA・n)≦TP≦0.59λ/(NA・n)、(但し、λは再生光の波長、NAは対物レンズの開口数、nは再生光の入射面側にある媒質の屈折率)であって、超解像膜を設けることなく、前記λ、NAで得られる再生光スポットを用いてトラッキングできることを特徴とする光記録媒体用基板。
2) 第1及び第2のピット列の何れか一方のピットが基板表面に対して凹であり、他方のピットが基板表面に対して凸であることを特徴とする1)記載の光記録媒体用基板。
3) 0.16λ/n≦d1≦0.21λ/n、d2=(0.5+m)λ−d1(但し、mは自然数)であることを特徴とする1)又は2)記載の光記録媒体用基板。
4) ピット周期が0.63λ/(NA・n)以下であることを特徴とする1)〜3)の何れかに記載の光記録媒体用基板。
5) 4)記載の光記録媒体用基板上に、少なくとも、超解像膜として作用する相変化膜と誘電体膜が順次積層されていることを特徴とする光記録媒体。
6) 記録情報に対応する第1及び第2のピット列が形成された、1)〜4)の何れかに記載の光記録媒体用基板を成形により製造するためのスタンパであって、前記ピット列の凹凸を反転させた状態の凹凸(但し、ここでいう凹凸には、凹又は凸のみの場合も含む)を有することを特徴とするスタンパ。
本発明の光記録媒体用基板の例を図1〜図3に示す。図1(1)〜図3(1)は、部分平面拡大図であり、図1(2)〜図3(2)は、AA′断面図である。
図のように、基板にはトラックピッチが2TPでピット深さがd1の第1のピット列と、トラックピッチが2TPでピット深さがd2の第2のピット列が形成されており、第1のピット列中心と第2のピット列中心の間隔はTPである。ピット列は螺旋状に形成されており、第1のピット列と第2のピット列は、1スパイラルでも2スパイラルでも良い。TPは、再生光スポット径の4/5程度とする。
ここで、ピットとは、記録情報に対応して基板表面に形成された窪み又は突起のことを意味する。またピット深さとは、ピットが窪みの場合には基板表面から窪みの底面までの距離を意味し、ピットが突起の場合には基板表面から突起の上面までの距離を意味する。
第1及び第2のピット列の組み合わせは、ピット深さの差が所定の範囲にあれば、図1のような基板表面に対して凹であるピット列と凸であるピット列、図2のような基板表面に対して凸である深さの異なるピット列、図3のような基板表面に対して凹である深さの異なるピット列の何れでも構わない。
上記のような基板を成形するためのスタンパには、上記ピットの凹凸を反転させた状態の凹凸が形成されている。
例えば、d1を0.2λに設定し(図9中の○)、d2をRFが極大になる深さ0.25λに対して対称な0.3λにすれば(図9中の◇)、各々のピットの再生信号振幅RFとして、極大値の約90%の値が得られる。このときプッシュプル信号振幅としては、深さの差|d1−d2|=0.1λに相当するプッシュプル信号振幅が得られるから、図9より極大値の約85%の振幅(図9中の●)になる。したがって、変調度を確保しつつ、かつ再生限界以下のトラックピッチであっても安定してトラッキングを行なえる光記録媒体が得られる。上記d1、d2の設定を式で記述すると、d1を、変調度が確保できる深さに設定し、d2を、変調度が極大になる深さ(0.25+0.5m)λに対してd1と対称な深さ、即ち、d2={(0.25+0.5m)λ−d1}+(0.25+0.5m)λ=(0.5+m)λ−d1に設定するということになる。
まず、第1及び第2のピット列を一度に露光する方法について図4を参照しつつ説明する。
研磨された基板を洗浄した後〔図4(1)〕、光吸収層とレジスト層を順にスパッタリング法で形成してレジスト原盤を作製する〔図4(2)〕。ピットの高さは、レジスト層の膜厚によって設定されるので、適用する記録再生システムに応じて必要な高さに合わせた膜厚とする。
光吸収層の材料は、光を吸収し発熱する機能を持ち、レジスト層より光透過性が低い材料であればどのような材料でも構わない。例えば、Si、Ge、GaAsなどの半導体材料、Bi、Ga、In、Snなどの低融点金属を含む金属間化合物材料、BiTe、BiIn、GaSb、GaP、InP、InSb、InTeなどの材料、C、SiCなどの炭化物材料、V2O5、Cr2O3、Mn3O4、Fe2O3、Co3O4、CuOなどの酸化物材料、AlN、GaNなどの窒化物材料、SbTeなどの2元系の相変化材料、GeSbTe、InSbTe、BiSbTe、GaSbTeなどの3元系の相変化材料、AgInSbTeなどの4元系の相変化材料を用いることができる。
光吸収層の膜厚は3〜20nmの範囲に設定する。光吸収層を薄膜化することにより、層内における熱の拡がりが抑制でき微細な円柱が形成できる。
また、ZnS、CaS、BaSなどの硫化物材料を用いることができる。これらの材料は、レーザ光の照射に伴う光吸収層の発熱で材料密度が変化し、レーザ照射部分が緻密化する。また、レーザ光照射部分では硫黄が解離し材料組成が変化する。エッチング工程においては、材料の緻密化及び材料組成の変化に伴って、レーザ照射部分のエッチング速度が低下する。その結果、レーザ照射部分を構造体として残すことができる。
また、ZnSe、BaSeなどのセレン化物材料を用いることができる。これらの材料は、レーザ光の照射に伴う光吸収層の発熱で材料密度が変化し、レーザ照射部分が緻密化する。レーザ光照射部分ではセレンが解離し材料組成が変化する。エッチング工程においては、材料の緻密化及び材料組成の変化に伴って、レーザ照射部分のエッチング速度が低下する。その結果、レーザ照射部分を構造体として残すことができる。
原盤用の基板としては、ガラス、石英などを用いることができる。また、Si、SOI(シリコンオンインシュレーター)などの半導体製造に用いられる基板、Alや不透明ガラス基板などのHDD(ハードディスク)用の基板、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルエステル樹脂、ポリエステル樹脂、紫外線硬化樹脂などの樹脂基板を用いることもできる。
図8に原盤露光機の一例の概略図を示す。この原盤露光機は、レーザビームを出射するレーザ光源と、レーザビームを分離するビームスプリッタと、レーザビームを反射するミラーと、図示しない原盤露光機の制御装置からの変調信号に応じてレーザビームを変調する光変調器と、2本のレーザビームを合成する偏光ビームスプリッタ(PBS)と、レジスト原盤上にレーザビームを集光する対物レンズ及びフォーカスユニットを備えた光ヘッドと、レジスト原盤を保持するターンテーブルと、それを回転させるモータとを備えている。光ヘッドは光学移動台に設置されており、ターンテーブルの回転とともに、光学移動台が移動することによって、ガラス原盤上に螺旋状の潜像が形成される。
レーザ光源は、波長351nmのKrレーザである。レーザ光源から出射されたレーザビームは、ビームスプリッタによりレーザビーム1とレーザビーム2に分離される。レーザビーム1は、光変調器1を通過し、ミラー1で反射した後、PBSに入射する。一方、レーザビーム2は、光変調器2を通過後、PBSに入射する。PBSで合成されたレーザビーム1及び2は、ミラー3で反射した後、光ヘッドを通過し、レジスト原盤上に集光される。光変調器は、ピット列に対応する入力信号を受けて、レーザ光をオン又はオフする。信号レーザビーム1及びレーザビーム2のレジスト原盤上における集光位置は、対物レンズへの入射角を調整することによって容易に調整できる。
レーザビーム1で第1のピット列に対応したレーザ光を、レーザビーム2で第2のピット列に対応したレーザ光を照射する〔図4(3)〕。このとき、レーザビーム1のレーザパワーを、レーザビーム2より高く設定する。
この後の工程は図示していないが、高さの異なる第1及び第2のピット列が形成されたレジスト原盤上に、Ni薄膜等の導電膜を形成し、Ni等を電鋳した後、レジスト原盤から剥離し、更に外形加工してスタンパを得る。
続いて、このスタンパを金型として射出成形法により光記録媒体基板を作製する。
研磨された基板を洗浄した後〔図5(1)〕、光吸収層と第1のレジスト層を順にスパッタリング法で形成したレジスト原盤〔図5(2)〕に対し、原盤露光機を用いて、第2のピット列に対応する記録情報を露光する〔図5(3)〕。
次いで、レジスト原盤をフッ酸水溶液に浸漬して、ウエットエッチングにより未露光部の第1のレジスト層を除去し、第2のピット列を形成する〔図5(4)〕。
次いで、第2のピット列を形成したレジスト原盤上に第2のレジスト層を形成し〔図5(5)〕、トラッキング機能を有する露光機を用い、第2のピット列のランドトラックにトラッキングしながら、第1のピット列に対応する記録情報を露光する〔図5(6)〕。
次いで、レジスト原盤を再びフッ酸水溶液に浸漬して、ウエットエッチングにより未露光部の第2のレジスト層を除去し、第1のピット列を形成する〔図5(7)〕。
上記一連の工程により、ピット高さが第1のレジスト層の膜厚である第2のピット列と、ピット高さが第2のレジスト層の膜厚である第1のピット列を形成できる。
研磨された基板を洗浄した後〔図6(1)〕、フォトレジスト層をスピンコート法で形成したレジスト原盤〔図6(2)〕に対し、原盤露光機を用いて、第1のピット列を露光する〔図6(3)〕。フォトレジスト材料としては、周知のものを用いればよい。
次いで、レジスト原盤を現像し、フォトレジスト層に第1のピット列を形成する〔図6(4)〕。
次いで、フォトレジスト層をマスク層として、RIE(反応性イオンエッチング)法により基板をエッチングした後、残ったフォトレジスト層を除去する〔図6(5)〕。
以上で、基板に凹状の第1のピット列が形成される。ピットの深さは、エッチング処理時間により設定できる。
次いで、凹状の第1のピット列が形成された基板上に光吸収層とレジスト層を順に形成した後〔図6(6)〕、トラッキング機能を有する露光機を用い、第1のピット列を利用してトラッキングしながらランドトラック上に第2のピット列を露光する〔図6(7)〕。
次いで、フッ酸水溶液でウエットエッチングを行って未露光部のレジスト層を除去した後〔図6(8)〕、Arスパッタエッチングにより光吸収層を除去することにより、基板上に凸状の第2のピット列を形成する〔図6(9)〕。
この後のスタンパ作製工程及び光記録媒体基板成形工程は、図4の場合と同様である。
研磨された基板を洗浄した後〔図7(1)〕、第1のフォトレジスト層をスピンコート法で形成したレジスト原盤〔図7(2)〕に対し、原盤露光機を用いて、第1のピット列を露光する〔図7(3)〕。
次いで、レジスト原盤を現像し、第1のフォトレジスト層に第1のピット列を形成する〔図7(4)〕。
次いで、第1のフォトレジスト層をマスク層として、RIE(反応性イオンエッチング)法によりエッチングした後、残った第1のフォトレジスト層を除去する〔図7(5)〕。
以上で、基板に凹状の第1のピット列が形成される。ピットの深さは、エッチング処理時間により設定できる。
次いで、凹状の第1のピット列が形成された基板上に、第2のフォトレジスト層をスピンコート法で形成した後〔図7(6)〕、トラッキング機能を有する露光機を用い、第1のピット列を利用してトラッキングを行いながら、ランドトラック上に、第2のピット列を露光する〔図7(7)〕。
次いで、現像を行うことにより、第2のピット列が第2のフォトレジスト層に形成される〔図7(8)〕。
次いで、第2のフォトレジスト層をマスク層として、RIE法により基板をエッチングした後〔図7(9)〕、残った第2のフォトレジスト層を除去する〔図7(10)〕。このときのエッチング時間を、第1のピット列と異なる時間に設定することにより、基板に、深さの異なる凹状の第1及び第2のピット列が形成される。
この後のスタンパ作製工程及び光記録媒体基板成形工程は、図4の場合と同様である。
本発明2によれば、隣接トラックのピットと重なることなく容易にピット列を形成できる。
本発明3〜4によれば、再生分解能より狭いトラックピッチにおいても、安定したトラッキングが行えるとともに、十分な再生信号振幅が得られる。
本発明5によれば、再生分解能より小さいピットでも再生できるので、更に記録密度を向上させることができる。
本発明6によれば、本発明1〜4の光記録媒体基板の成形用スタンパを提供できる。
図4に示す工程によりスタンパを作製した。
研磨されたガラス基板上に、AgInSbTeからなる膜厚20nmの光吸収層、及びZnS−SiO2からなる膜厚138nmのレジスト層を順に形成してレジスト原盤を作製した。
次いで、図8の原盤露光機を用い、パワー2.2mWのレーザビーム1とパワー1.8mWのレーザビーム2を照射した。
次いで、露光したレジスト原盤をフッ酸水溶液に浸漬し、未露光部のレジスト層を除去して、高さの異なる第1及び第2のピット列を光吸収層上に形成した。このときの第2のピット列の高さは138nm、第1のピット列の高さは65nmである。
次いで、このレジスト原盤上に、Niの導電膜を形成し、Niを電鋳した後、レジスト原盤から剥離し、更に外形加工してNiスタンパを得た。
次いで、このNiスタンパを金型として射出成形法によりポリカーボネート樹脂基板を作製し、この基板上にAlからなる膜厚100nmの反射膜を形成して光記録媒体を得た。
図5に示す工程によりスタンパを作製した。
研磨されたガラス基板上に、AgInSbTeからなる膜厚20nmの光吸収層、及びZnS−SiO2からなる膜厚138nmの第1のレジスト層を順に形成してレジスト原盤を作製した。
次いで、図8の原盤露光機を用いて第2のピット列に対応する記録情報を露光した後、レジスト原盤をフッ酸水溶液に浸漬して、未露光部の第1のレジスト層を除去し、第2のピット列を光吸収層上に形成した。
次いで、このレジスト原盤上に、ZnS−SiO2からなる膜厚65nmの第2のレジスト層を形成し、図8の原盤露光機を用いて、第2のピット列のランドトラックにトラッキングしながら、第1のピット列に対応する記録情報を露光した後、再びレジスト原盤をフッ酸水溶液に浸漬して、未露光部の第2のレジスト層を除去し、第1のピット列を光吸収層上に形成した。このとき第2のピット列の高さはレジスト層膜厚に相当する138nmであり、第1のピット列の高さは65nmである。
次いで、実施例1と同様にして、このレジスト原盤から得たNiスタンパを用いてポリカーボネート樹脂基板を作製し、この基板上にAlからなる膜厚100nmの反射膜を形成して光記録媒体を得た。
図6に示す工程によりスタンパを作製した。
研磨された石英基板を洗浄し、スピンコート法により膜厚80nmのフォトレジスト層(東京応化社製iP3300)を形成してレジスト原盤を作製した。
次いで、図8の原盤露光機を用いて、第1のピット列を露光した後、現像し、フォトレジスト層に第1のピット列を形成した。
次いで、フォトレジスト層をマスク層として、RIE法により石英基板をエッチングし、残ったフォトレジスト層を除去して、石英基板に凹状の第1のピット列を形成した。エッチングガスにはCHF3を使用し、このとき第1のピット列の深さが65nmになるようにエッチングを行なった。
次いで、この石英基板上に、AgInSbからなる膜厚20nmの光吸収層(相変化膜)、及びZnS−SiO2からなる膜厚138nmのレジスト層を形成した。
次いで、図8の原盤露光機を用いて、第1のピット列を利用してトラッキングしながら、ランドトラック上に第2のピット列を露光した後、フッ酸でウエットエッチングし、更にArスパッタエッチングにより相変化膜を除去して、石英基板上に凸状の第2のピット列を形成した。
次いで、実施例1と同様にして、このレジスト原盤から得たNiスタンパを用いてポリカーボネート樹脂基板を作製し、この基板上にAlからなる膜厚100nmの反射膜を形成して光記録媒体を得た。
図7に示す工程によりスタンパを作製した。
研磨された石英基板を洗浄し、スピンコート法により膜厚80nmの第1のフォトレジスト層(東京応化製iP3300)を形成してレジスト原盤を作製した。
次いで、図8の原盤露光機を用いて、第1のピット列を露光した後、現像し、第1のフォトレジスト層に第1のピット列を形成した。
次いで、第1のフォトレジスト層をマスク層として、RIE法により石英基板をエッチングし、残った第1のフォトレジスト層を除去して、石英基板に凹状の第1のピット列を形成した。エッチングガスにはCHF3を使用し、第1のピット列の深さが65nmになるようにエッチングを行なった。
次いで、この石英基板上に、膜厚140nmの第2のフォトレジスト層(東京応化社製iP3300)を形成し、図8の原盤露光機を用いて、第1のピット列を利用してトラッキングしながら、ランドトラック上に第2のピット列を露光した後、現像して、第2のピット列を第2のフォトレジスト層に形成した。
次いで、第2のフォトレジスト層をマスク層として、RIE法により石英基板をエッチングした後、残った第2のフォトレジスト層を除去した。エッチングガスにはCHF3を使用し、第2のピット列の深さが138nmになるようにエッチングを行なった。
以上により、石英基板に、深さの異なる凹状の第1及び第2のピット列を形成した。
次いで、実施例1と同様にして、このレジスト原盤(凹凸を有する石英基板)から得たNiスタンパを用いてポリカーボネート樹脂基板を作製し、この基板上にAlからなる膜厚100nmの反射膜を形成して光記録媒体を得た。
記録再生光の波長405nm、対物レンズのNA0.85のディスクテスター(シバソク社製LM330)を用いて、実施例1で作製した光記録媒体を評価した。第1及び第2のピット列には、ピット周期が400nm(ピット長及びスペース長が各々200nm)である単周期の繰返しパターンを形成し、ピット深さ、トラックピッチを変化させたテストディスクを作製し、それらのプッシュプル信号振幅を測定した。テストディスクは、カバー層のない表面記録型の光記録媒体であり、第1及び第2のピット列の間隔は240nmである。
表1に、十分なプッシュプル信号振幅(PP)が得られ、トラッキングサーボが安定していたか否かを評価した結果を示す。表1のΔxは、d1及びd2と、変調度が極大になる深さ0.25λとの差である。前述したように、d1及びd2は、(0.25+m)λに対して対称な深さとする必要があるから、d1をある値に設定すれば、自ずとd2の深さは決まる。本実施例では、d1を0.14λ〜0.25λに相当する57〜100nmとしたから、d2はd2=0.5λ−d1に相当する0.36λ〜0.25λとなる。
表1から分るように、第1のピット列の深さd1が65〜85nmの範囲にあり、これに対応する第2のピット列の深さd2が138〜117nmの範囲にあるとき、安定してトラッキングを行うことができた。この範囲を波長単位に換算すると、0.16λ≦d1≦0.21λ、0.29λ≦d2≦0.34λになる。
カバー層やプラスチック基板を通してピットを再生する場合には、カバー層又はプラスチック基板の屈折率nを考慮して深さを設定すればよい。即ち、0.16λ/n≦d1≦0.21λ/n、d2=(0.5+m)λ−d1とする。
表2から分かるように、トラッキングが安定して行えるTPの範囲は、160〜280nmであった。この範囲を集光スポット径単位に換算すると、0.335λ/NA≦TP≦0.59λ/NAになる。d1、d2を適正な値に設定することにより、再生分解能より狭いピッチであっても、安定してトラッキングを行なうことができる。
カバー層やプラスチック基板を通してピットを再生する場合には、カバー層又はプラスチック基板の屈折率nを考慮して深さを設定すればよい。即ち、0.335λ/(NA・n)≦TP≦0.59λ/(NA・n)とする。
記録再生装置における光スポットの小径化が進み、対物レンズNAが0.85以上になった場合でも、上記の式は適用できる。例えば、再生光の波長405nm、NA1.8のSIL(Solid Immersion Lens)に適用した場合においても、上記関係式は成立する。
次に、第1及び第2のピット列のトラックピッチ2TPが560nmで、第1と第2のピット列中心の間隔TPが280nm、各々のピット深さが65nm、138nm、ピット周期が150nm、200nm、300nm、400nm、500nmであるピット列が形成された基板上に、AgInSbTeからなる膜厚10nmの相変化膜と、ZnS−SiO2からなる膜厚40nmの誘電体膜を順次形成したサンプルディスク(図10参照)と、Al反射膜を形成しただけの比較ディスク(図11参照)を作製し、再生信号のCNR(キャリア・ノイズ比)を測定した。
図12に、再生パワー1.2mWで再生したときのCNRの測定結果を示す。
図12から分かるように、比較ディスクの場合、周期が400nmより短いピットでは、再生信号の振幅が観察されないためCNRが得られなかった。400nmは、再生装置のスポット径0.85λ/NAに相当する。
これに対して、サンプルディスクでは、ピット周期が再生スポット径以下の周期200〜300nmにおいて30dB以上のCNRが得られた。これは、上記相変化膜と誘電体膜が超解像膜として作用していることを示しており、本発明のような基板のトラック構造及び膜構造を採用すれば、トラックピッチ方向と線密度方向の記録密度を両方とも向上させることができることが分かる。周期300nmは、波長λ(405nm)、対物レンズのNA(0.85)で記述すると、0.63λ/NAに相当するから、ピット周期が解像限界を超えた0.63λ/NA以下の場合であっても、再生可能であることになる。
カバー層やプラスチック基板を通してピット列を再生する場合には、カバー層又はプラスチック基板の屈折率nを考慮して、ピット周期は0.63λ/(NA・n)とする。
d1 第1のピット列の深さ
d2 第2のピット列の深さ
RF 変調度
PP プッシュプル信号振幅
CNR キャリアー・ノイズ比
Claims (6)
- 記録情報に対応する、トラックピッチが2TPでピット深さがd1の第1のピット列と、トラックピッチが2TPでピット深さがd2の第2のピット列とがトラックに沿って形成されており、d1<d2、第1のピット列中心と第2のピット列中心の間隔がTPで、該TPは再生光スポットの再生分解能以下であり、且つ、0.335λ/(NA・n)≦TP≦0.59λ/(NA・n)、(但し、λは再生光の波長、NAは対物レンズの開口数、nは再生光の入射面側にある媒質の屈折率)であって、超解像膜を設けることなく、前記λ、NAで得られる再生光スポットを用いてトラッキングできることを特徴とする光記録媒体用基板。
- 第1及び第2のピット列の何れか一方のピットが基板表面に対して凹であり、他方のピットが基板表面に対して凸であることを特徴とする請求項1記載の光記録媒体用基板。
- 0.16λ/n≦d1≦0.21λ/n、d2=(0.5+m)λ−d1(但し、mは自然数)であることを特徴とする請求項1又は2記載の光記録媒体用基板。
- ピット周期が0.63λ/(NA・n)以下であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の光記録媒体用基板。
- 請求項4記載の光記録媒体用基板上に、少なくとも、超解像膜として作用する相変化膜と誘電体膜が順次積層されていることを特徴とする光記録媒体。
- 記録情報に対応する第1及び第2のピット列が形成された請求項1〜4の何れかに記載の光記録媒体用基板を成形により製造するためのスタンパであって、前記ピット列の凹凸を反転させた状態の凹凸(但し、ここでいう凹凸には、凹又は凸のみの場合も含む)を有することを特徴とするスタンパ。
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