JP4704792B2 - 薄膜付きガラス基板、その製造方法およびそれを用いた半導体装置 - Google Patents
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本発明の別の観点によれば、基板の反りを低減するための溝を表面に1つ以上有するガラス基板と、このガラス基板の表面および溝内面に形成された薄膜とを備え、前記溝は、溝の深さ/溝底部の幅の比で表されるアスペクト比が1〜10であり、前記薄膜は、溝内面に形成された薄膜部分の最小膜厚/ガラス基板表面に形成された薄膜部分の膜厚の比で表される段差被覆係数が0である薄膜付きガラス基板が提供される。
また、本発明のさらに別の観点によれば、上記薄膜付きガラス基板と、この薄膜付きガラス基板に接着部を介して接合された複数の半導体素子を有する半導体ウェハとを備えた半導体装置モジュールが提供される。
また、本発明のさらに別の観点によれば、上記半導体装置モジュールを薄膜付きガラス基板の溝の位置で切断してなる半導体装置が提供される。
また、例えばSi基板とガラス基板とIRカットフィルタ膜等の膜は熱膨張係数が異なり、一般的にIRカットフィルタ膜は金属酸化膜系で高温で成膜される場合が多く、その場合にガラス基板に圧縮応力がかかり、同様にSi基板にも応力がかかり、その影響でSi基板に形成されている素子にダメージが加わるが、本発明によればこのような素子へのダメージを低減することができる。
図1および2に示すように、本発明の薄膜付きガラス基板1は、基板の反りを低減するための溝2を表面に1つ以上有するガラス基板3と、このガラス基板3の表面および溝内面に形成された薄膜4とを備え、前記溝2は、溝の深さ/溝底部の幅の比で表されるアスペクト比が1〜10であり、前記薄膜4は、溝内面に形成された薄膜部分の最小膜厚/ガラス基板表面に形成された薄膜部分の膜厚の比で表される段差被覆係数が0.5以下であることを特徴としている。
この薄膜付きガラス基板1は、ガラス基板3の表面に該基板の反りを低減するための溝2を1つ以上形成する工程と、前記溝2を有するガラス基板3の前記表面に薄膜4を成膜する工程とを有し、前記ガラス基板3に溝2を形成する工程において、溝の深さ/溝底部の幅の比で表されるアスペクト比が1〜10の溝を形成し、前記薄膜4を形成する工程において、溝の内面に形成される薄膜部分の最小膜厚/ガラス基板表面に形成される薄膜部分の膜厚の比で表される段差被覆係数が0.5以下の薄膜を形成する薄膜付きガラス基板の製造方法により製造することができる。
このようにガラス基板3の表面に溝2を設け、溝2を有する面に薄膜4を成膜する目的は、ガラス基板3の反り量の低減と、薄膜4の溝2での被覆性を低下させることによる応力緩和を図り、従来問題となっていた切断時のダイシング作業における薄膜部分のラテラルクラックの発生を溝部分で防止し、あるいはスクライブ−ブレーク処理による切断工程において薄膜の展延を防止して、薄膜にダメージを与えずに切断できるようにすると共に、ガラスに新たなストレスがかからないようにすること等にある。これについて、詳しくは後述する。
ここで、半導体ウェハ7としては、例えば、シリコン基板に複数のイメージセンサや、トランジスタ、メモリ等の素子が形成されたものを挙げることができる。したがって、本発明の薄膜付きガラス基板1は、イメージセンサを有する半導体ウェハに貼り合わせる場合には、薄膜4が例えば赤外線カットフィルターである保護ガラスに適用される。また、イメージセンサに加え発光ダイオード等の素子を有する半導体ウェハに貼り合わせる場合には、薄膜4が例えば金属配線であるプリント基板に適用することができる。この場合、金属配線を素子に対向させてガラス基板を半導体ウェハに貼り合せることができる(図示省略)。
また、薄膜4は、公知のスパッタ法により形成することができ、その膜厚は、薄膜の目的、溝の形状、大きさ等によっても異なるが、溝深さの50%より厚いと溝に巣が生じ、上部で薄膜がつながってしまうので好ましくない。
具体的に、薄膜が赤外線カットフィルターである場合の膜厚は3〜5μmとすることができる。その形成方法は、公知のスパッタ法により例えば厚さ0.1μm程度の金属酸化膜と絶縁膜(例えばSiO2)を交互に5〜50層にわたって積層して形成することができる。また、薄膜が金属配線である場合、スパッタ法により例えば厚さ0.1〜1μm程度の銅膜またはアルミニウム膜を形成することができる。
ガラス基板と薄膜のストレスは、薄膜自身が持つ真性応力およびガラスと薄膜との熱的性質(熱膨張係数)の差に依存するところが大きい。図5は、それを表すグラフである。すなわち、図5は、溝無しのガラス基板に薄膜を形成した場合の、正方形のガラス基板の大きさと反り量(●)、曲率半径(◆)および一辺が100mmの正方形ガラス基板に溝有りの反り量(◎)についてのグラフを示す。なお、図5における曲率半径(◆)を示すグラフは、溝無しのガラス基板と溝有りのガラス基板の両方に共通のグラフである。
なお、この場合、薄膜付きガラス基板は以下の条件で作製されたものが使用された。
ガラス基板:厚さ0.5mm
溝:縦横の各ピッチ5mmの格子状、溝底部の幅:20μm、溝深さ:20μm、アスペクト比:1
薄膜:厚さ0.1μmの金属酸化膜と厚さ0.1μmの絶縁膜をスパッタ法により交互に積層した赤外線カットフィルター
溝無しのガラス基板では、一辺の長さが100mmの場合に2mm以上も反っているため、図4で示したごとくイメージセンサを複数有する半導体ウェハと貼り合わせると、センター部と周辺部で2mmのギャップ長が生じてしまう。また、2mmの反り量はアークタンジェントより1°以上の角度であり、一辺が100mmに対する水平方向の位置ずれは20μmの位置ずれとなる。ガラス基板が一辺5mmの場合は反り量は1/20の0.1mmであり、位置ずれも1μmで収まる。
これに対し、溝有りのガラス基板は、図5に示すように一辺の長さが大きくなっても曲率半径はほぼ一定であり、正方形の一辺が100mmの場合の反り量は0.2mm(溝無しの場合の1/10)に収まることが確認でき、理論上の0.1mmに近い結果が得られ、実用できるレベルであることが確認できた。今回の実験ではアスペクト比が1のトレンチに対するスパッタ法による成膜形成であり、全ての溝で完全に薄膜が切断されてないこともあり、完全に切断された場合には理論上の0.1mmになると推測される。このように、薄膜付きガラス基板の反り量の低減には、ガラス基板の一面に溝を形成し、かつ、溝を有する表面に薄膜を形成することが有効であり、反り量の低減により、半導体ウェハと貼り合わせる場合の精度を大幅に向上することができると共に、薄膜をパターニングする場合(例えば金属配線の形成)においても高精度で行なうことが可能となる。
また、図7からは、溝底面に対して溝側面が垂直からテーパ状に傾斜していくにつれて段差被覆性がよく(段差被覆係数が大きく)なることが判る。この結果より、ガラス基板の表面に形成される薄膜を溝部分で切断(断線)させるためには、テーパ角θはできるだけ小さい方が好ましく、さらには図8(実施の形態3)に示すように、蟻溝のような逆テーパ状(アンダーカット形状)にすることが有効である。なお、図8において、12は薄膜、13はガラス基板、14は溝である。
また、溝の深さ/溝底部の幅で表される溝のアスペクト比は1以上が好ましく、アスペクト比が大きいほど好ましい。なお、アスペクト比が1より小さいと段差被覆係数が大きくなり過ぎるため、上記ラテラルクラックまたは展延の問題が発生しやすくなる。一方、アスペクト比が10より大きくするのは、溝形成の工程時間が長くなり好ましくない。
また、薄膜を形成する工程において、スパッタリング法により薄膜材料をガラス基板面に対して垂直または斜めに入射させて薄膜を形成することができるが、斜めに入射させるのが好ましい。特に、溝がテーパ状である場合は、溝側面のテーパ角以上の入射角とするのが好ましい。
また、溝は、溝側面がテーパ状の断面逆台形であってもよいが、溝の開口部の幅が底部の幅以下の断面四角形、すなわち、正方形、長方形および台形(逆テーパ形)であることが、段差被覆性を悪化させる上で好ましい。
また、溝底部の幅は、所望のアスペクト比および溝深さによって決定される。例えば、ガラス基板の厚さが、0.3〜2mm、アスペクト比が1、溝の深さが0.03〜1mmの場合、溝底部の幅は0.03〜1mmとされる。また、ガラス基板の厚さが、0.3〜2mm、アスペクト比が2、溝の深さが0.04〜0.2mmの場合、溝底部の幅は0.02〜0.1mmとされる。
2、14、17、19 溝
3、13、16、18 ガラス基板
4、12、15、17 薄膜
5 スクライブ溝
6 半導体素子
7 半導体ウェハ
8 接着部
9 半導体装置モジュール
Claims (14)
- ガラス基板の表面に該基板の反りを低減するための溝を1つ以上形成する工程と、
前記溝を有するガラス基板の前記表面に薄膜を成膜する工程とを有し、
前記ガラス基板に溝を形成する工程において、溝の深さ/溝底部の幅の比で表されるアスペクト比が1〜10の溝を形成し、
前記薄膜を形成する工程において、スパッタリング法により薄膜材料をガラス基板面に対して斜めに入射させて、溝の内面に形成される薄膜部分の最小膜厚/ガラス基板表面に形成される薄膜部分の膜厚の比で表される段差被覆係数が0の薄膜を形成することを特徴とする薄膜付きガラス基板の製造方法。 - 溝を形成する工程において、溝の開口部の幅が底部の幅以下の断面四角形に溝を形成する請求項1に記載の薄膜付きガラス基板の製造方法。
- 溝の深さが、ガラス基板の厚みの0.01〜50%である請求項1または2に記載の薄膜付きガラス基板の製造方法。
- ガラス基板の厚さが0.3〜2mmである請求項1〜3の何れか1つに記載の薄膜付きガラス基板の製造方法。
- ガラス基板の表面部分における薄膜の膜厚が、溝の深さの50%以下である請求項1〜4の何れか1つに記載の薄膜付きガラス基板の製造方法。
- 溝の底部の幅が20〜500μmである請求項1〜5の何れか1つに記載の薄膜付きガラス基板の製造方法。
- ガラス基板の裏面における溝対応位置に、外力を加えることによりガラス基板を溝の位置で分割可能とするためのスクライブ溝を形成する工程を含む請求項1〜6の何れか1つに記載の薄膜付きガラス基板の製造方法。
- 板基板の反りを低減するための溝を表面に1つ以上有するガラス基板と、このガラス基板の表面および溝内面に形成された薄膜とを備え、前記溝は、溝の深さ/溝底部の幅の比で表されるアスペクト比が1〜10であり、前記薄膜は、溝内面に形成された薄膜部分の最小膜厚/ガラス基板表面に形成された薄膜部分の膜厚の比で表される段差被覆係数が0であることを特徴とする薄膜付きガラス基板。
- 溝は、溝の開口部の幅が底部の幅以下の断面四角形である請求項8に記載の薄膜付きガラス基板。
- 薄膜が、赤外線カットフィルターまたは金属配線である請求項8または9に記載の薄膜付きガラス基板。
- 溝が、所望のチップサイズの平面視格子状に形成されて基板分割用として兼用可能である請求項8〜10の何れか1つに記載の薄膜付きガラス基板。
- 請求項10に記載の薄膜付きガラス基板と、この薄膜付きガラス基板に接着部を介して接合された複数の半導体素子を有する半導体ウェハとを備えたことを特徴とする半導体装置モジュール。
- 請求項12に記載の半導体装置モジュールを薄膜付きガラス基板の溝の位置で切断してなることを特徴とする半導体装置。
- 半導体装置モジュールの半導体素子がイメージセンサである請求項13に記載の半導体装置。
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