JP4704557B2 - リフレアー成形性に優れたアルミニウム合金フィン材とその製造方法 - Google Patents
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【発明が属する技術分野】
本発明はドロー方式、ドローレス方式およびドロー・ドローレス複合方式で成形するAl−Mn系合金フィン材に関するもので、詳細には粗大および微細金属間化合物のサイズやその分散状態、旧結晶粒のバンド幅や亜結晶粒サイズを適切に制御することによって優れたリフレアー成形性を有するAl−Mn系合金フィン材とその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
アルミニウム合金フィン材の成形法には、ドロー方式、ドローレス方式およびドロー・ドローレス複合方式がある。
ドロー方式は張出し、絞り、打ち抜き(バーリング)、リフレアーの工程、ドローレス方式はバーリング、しごき、リフレアー成形の工程、ドロー・ドローレス複合方式は張出し、絞り、バーリング、しごき、リフレアーの工程から成る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
時代の流れ伴い、様々な成形法が開発され利用されてきたが、何れのプロセスでも打ち抜き(バーリング)とリフレアー成形はAl-Mn系合金フィン材にとって必要不可欠な成形工程である。
中でも、リフレアー成形は過酷な成形であるため、成形中にしばしば割れが生じることがある。割れが生じた場合、通風抵抗が劣化するなど熱交特性を低下させるばかりでなく、成形フィンの外観を損ね、製品としての価値を低下させてしまう。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本第一発明は、Mn0.15〜0.50%、Si0.25%以下、Fe0.40%以下、Ti0.15%以下で残部がAl及び不可避的不純物からなる組成を有し、最大径3μm以上の粗大金属間化合物数が1500個/mm2以下、旧結晶粒の平均バンド幅が500μm以下、最大径0.3μm以下の微細金属間化合物数が50個/100μm2以上かつ500個/100μm2以下、平均亜結晶粒サイズが2.5μm以下である特徴を持つアルミニウム合金フィン材である。
また本第二発明は、Mn0.15〜0.50%、Si0.25%以下、Fe0.40%以下、Ti0.15%以下で、残部がAl及び不可避的不純物からなるAl合金鋳塊を、330〜540℃の温度範囲で保持1〜12時間の加熱処理を施した後、熱間粗圧延の終了温度を300〜490℃、熱間仕上げ圧延の終了温度を200〜350℃になるよう制御し、冷延率90%以上の最終冷延を行い、180〜300℃で保持0.5〜8時間の調質焼鈍を行い、最大径3μm以上の粗大金属間化合物数が1500個/mm2以下、旧結晶粒の平均バンド幅が500μm以下、最大径0.3μm以下の微細金属間化合物数が50個/100μm2以上かつ500個/100μm2以下、平均亜結晶粒サイズが2.5μm以下である特徴を持つアルミニウム合金フィン材の製造方法である。
【0005】
【発明の実施の形態】
先ず、この発明において用いられるアルミニウム合金の成分組成の限定理由を説明する。
【0006】
Mn:Mn添加量が0.15%未満では、フィン材としての剛性を保つだけの必要な強度を得ることができない。また、調質焼鈍時の亜結晶粒の合体・消滅の繰り返しを強固に抑制するだけの十分なAl−Mn−(Si)、Al−Fe−Mn−(Si)系微細金属間化合物量を得ることができず、結果として、良好なリフレアー成形性を得ることができない。一方、添加量が0.50%を超えると、Al−Mn−(Si)、Al−Fe−Mn−(Si)系粗大金属間化合物の生成数が多くなりすぎるため、リフレアー成形中に割れが生じてしまう。そのため、Mn添加量は0.15〜0.50%と規定した。
【0007】
Si:不可避元素のSiによって形成するAl−Mn−Si、Al−Fe−Mn−Si系粗大金属間化合物は、リフレアー成形性に多大な影響を及ぼす。添加量が0.25%を超えると、これらの粗大金属間化合物の生成数が多くなるため、リフレアー成形中に割れが生じてしまう。そのため、Si量は0.25%以下とした。
【0008】
Fe:Fe添加によって形成するAl−Fe−Mn−(Si)、Al−Fe系粗大金属間化合物は、リフレアー成形性に多大な影響を及ぼす。添加量が0.40%を超えると、これらの粗大金属間化合物の生成数が多くなるため、リフレアー成形中に材料の割れが生じてしまう。そのため、Fe量は0.40%以下とした。
【0009】
Ti:Al-Ti系粗大金属間化合物は、リフレアー成形性に多大な影響を及ぼす。添加量が0.15%を超える場合には、この粗大金属間化合物の生成数が多くなるため、リフレアー成形中に割れが生じてしまう。そのため、Ti量は0.15%以下に規制した。
【0010】
次に、本発明における組織の限定理由について説明する。
【0011】
最大径3μm以上の粗大金属間化合物数が1500個/mm2以下:
粗大金属間化合物は、アルミニウムマトリックスよりも非常に硬くて脆く、且つ、殆ど延性を持たない。
最大径3μm以上の粗大金属間化合物数が1500個/mm2を超える場合には材料の延性が低下し、リフレアー成形中にアルミニウムマトリックスと粗大金属間化合物の界面に亀裂が生じて、それが伝播し材料
の割れを引き起こしてしまう。そのため、これを規定した。
【0012】
旧結晶粒の平均バンド幅が500μm以下:
旧結晶粒とは、圧延前に存在していた結晶粒が圧延によって引き伸ばされたもので、そのバンド幅とは圧延方向に対して直角方向から見た場合の旧結晶粒界の幅を云う。
種々実験を積み重ねた結果、旧結晶粒の平均バンド幅が500μmを超えると、単位面積あたりの粒界密度が小さくなりすぎるために、隣接粒界の拘束が極端に弱くなり充分な延性を得ることができず、リフレアー成形中に割れが生じてしまうことが判明した。そのため、旧結晶粒の平均バンド幅を500μm以下と規定した。
【0013】
最大径0.3μm以下の微細金属間化合物数が50個/100μm2以上かつ500個/100μm2以下:
最大径0.3μm以下の微細金属間化合物が50個/100μm2未満であると、調質焼鈍時に起こる亜結晶粒の合体・消滅の繰り返しを充分に阻止することができない。そのため、充分な延性を得る前に粗大再結晶粒が生成して、良好なリフレアー成形性を得ることができない。一方、最大径0.3μm以下の微細金属間化合物が500個/100μm2以上であると、調質焼鈍時に起こる亜結晶粒の合体・消滅の繰り返しを充分に阻止することができる。しかし、規定内の合金組成ではこれを満足することは困難であり、更にMnなどの添加量を増やす必要がある。添加量が増えると、微細金属間化合物量も増えるが、一方では粗大金属間化合物量も増え、逆にリフレアー成形時にアルミニウムマトリックスと粗大金属間化合物の界面に亀裂が生じて伝播し材料の割れが生じてしまう。そのため、これを規定した。
【0014】
平均亜結晶粒サイズが2.5μm以下:
平均亜結晶粒サイズが大きい場合には、粗大結晶粒の場合と同様、亜結晶粒界の拘束が弱くなる。そのため、リフレアー成形中に拘束の弱い亜結晶粒に応力集中が生じ、そこに局部ネッキングが生じ、その延長として割れに到る。
平均亜結晶粒サイズが2.5μm以下であれば、応力集中の場所的不均一性による局部ネッキングが起こらず、その延長である割れに到らないことが種々実験を積み重ねた結果明らかになった。そのため、良好なリフレアー成形性を得るには平均亜結晶粒サイズを2.5μm以下にする必要がある。
【0015】
次に本発明の製造工程について説明する。
【0016】
Al合金鋳塊を330〜540℃の温度で保持1〜12時間の加熱処理を施し、熱間圧延を行う。加熱温度が330℃未満では熱間加工性の低下を招き、540℃を越えると加熱中で析出する微細金属間化合物が粗大化し、その数密度が低下する。そのため、本発明の特徴である最大径0.3μm以下の微細金属間化合物数が50個/100μm2未満となり良好なリフレアー成形性を得ることができない。
また、保持時間が1時間未満では、微細金属間化合物の析出が不十分で、微細析出物に関する規定値を満たすことはできない。一方、12時間を越えると、微細析出物が粗大化し数密度が減少し規定値を満たすことができなかったり、粗大金属間化合物が大きくなるためリフレアー成形性を低下させてしまう。更に生産性の低下を引き起こす。そのため、加熱温度は330〜540℃の温度範囲、保持1〜12時間とした。
【0017】
続いて熱間粗圧延と熱間仕上げ圧延を行う。尚、熱間粗圧延の終了温度が300℃未満では、熱間仕上げ圧延時の加工性を低下させてしまう。一方、490℃を超えると、粗大再結晶粒が生成するためリフレアー成形性を低下させてしまう。また、加熱時や熱間粗圧延中に析出した微細金属間化合物が粗大化し、微細金属間化合物に関する規定値を満たすことができない。更に、熱間仕上げ圧延の終了温度が200℃未満であると、圧延性が低下する。一方、350℃を超えると、粗大再結晶粒が生成する場合がある。そのため、熱間粗圧延の終了温度は300〜490℃、熱間仕上げ圧延の終了温度は200〜350℃と規定した。
【0018】
熱間圧延終了後、90%以上の最終冷延を施す。90%未満の最終冷延ではフィン材に要求される優れた強度と延性のバランスを得ることができない。そのため、最終冷延率は90%以上と規定した。
【0019】
調質焼鈍は180〜300℃の範囲で行う。180℃未満では充分な組織の回復効果が得られない。そのため、リフレアー成形性に必要な局部延性が得られず、リフレアー成形中に割れが生じてしまう。一方、300℃を超えると、粗大再結晶粒が生成してリフレアー成形性が低下する。更に、フィン材としての必要な強度が得られない。また、保持時間が0.5時間未満では、充分な組織の回復効果が得られない。そのため、リフレアー成形性に必要な局部延性が得られない。また、8時間を超える場合には、焼鈍温度によっては粗大再結晶粒が生成したり、生産性が低下する。そのため、調質焼鈍の条件は180〜300℃、保持0.5〜8時間と規定した。
【0020】
【実施例】
表1に示す種々の化学成分のAl合金鋳塊を、表2に記載した条件で板厚100μmのフィン材を製造し、塗装・焼き付け処理した。
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】
【0023】
この塗装板の粗大金属間化合物、旧結晶粒の平均バンド幅、微細金属間化合物サイズや亜結晶粒サイズの定量評価を行った。
粗大金属間化合物の定量化は、400倍の倍率で板表面から20視野、光学顕微鏡組織観察し、画像解析処理装置ルーゼックスを用いて評価した。
旧結晶粒の平均バンド幅はバーカーエッチングを行い、50倍の倍率で板表面から20視野、光学顕微鏡組織観察し写真上から求めた。尚、製品板の板表面から光学顕微鏡組織観察した場合、旧結晶粒界が明瞭でない場合がある。そのため、この様な場合にはバンド幅が明瞭である領域間を評価対象とした。旧結晶粒の平均バンド幅が500μm以下の場合は○、500μmを超える場合を×と判定した。
微細金属間化合物や平均亜結晶粒サイズの定量化は透過電子顕微鏡を用い、10000倍の倍率で板表面から50視野観察して求めた。
フィン材としての剛性を得るための必要強度や良好な成形性を得るため、塗装板の0.2%耐力値(圧延方向と平行)は120〜170MPaが望ましい。
また、伸び(圧延方向と平行)は5%以上は必要である。
更に、リフレアー成形性の評価はドロー・ドローレス複合方式の成形法を用い、カラーハイト1.3mmに設定しカラーの内径を7.3mmφになるよう打ち抜き、その後リフレアー成形し、目視で割れの有無を調査した。割れの程度が従来材と同等、若しくはそれ以上に良好の場合には○、従来材よりも劣る場合を×とした。その結果を表3に示す。
【0024】
【表3】
【0025】
表3に示すように、製造符号A、Cは本発明合金を用い、本発明プロセスで製造した発明例であり、全ての性能を満足しており合格となった。
B、Dは本発明合金を用いたが、本発明プロセスで製造しなかったため旧結晶粒の平均バンド幅や平均亜結晶粒サイズが規定値から外れ、強度やリフレアー成形性が不合格となったものである。
Eは本発明のプロセスで製造したものだが、本発明の合金成分でないため、亜結晶粒の合体・消滅を充分に抑制できなかった。そのため、再結晶までには至らなかったものの平均亜結晶粒サイズが本発明の範囲を超え、リフレアー成形性が悪くまた強度不足となったものである。
F、G、Hは本発明プロセスで製造したが、本発明合金より合金元素の添加量が多すぎたために、粗大金属間化合物数や微細金属間化合物数が多くなりすぎ、伸びを低下させ、リフレアー成形性も不良となり不合格となったものである。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、特に優れたリフレアー成形性を有し、ドロー方式、ドローレス方式およびドロー・ドローレス複合方式で成形する際に割れの発生しにくいAl−Mn系合金フィン材に好適なフィン材を提供することができる。
Claims (2)
- Mn0.15〜0.50%(mass%、以下同じ)、Si0.25%以下、Fe0.40%以下、Ti0.15%以下で残部がAl及び不可避的不純物からなる組成を有し、最大径3μm以上の粗大金属間化合物数が1500個/mm2以下、旧結晶粒の平均バンド幅が500μm以下、最大径0.3μm以下の微細金属間化合物数が50個/100μm2以上かつ500個/100μm2以下、平均亜結晶粒サイズが2.5μm以下である特徴を持つアルミニウム合金フィン材。
- Mn0.15〜0.50%、Si0.25%以下、Fe0.40%以下、Ti0.15%以下で、残部がAl及び不可避的不純物からなるAl合金鋳塊を、330〜540℃の温度範囲で保持1〜12時間の加熱処理を施した後、熱間粗圧延の終了温度を300〜490℃、熱間仕上げ圧延の終了温度を200〜350℃になるよう制御し、冷延率90%以上の最終冷延を行い、180〜300℃で保持0.5〜8時間の調質焼鈍を行い、最大径3μm以上の粗大金属間化合物数が1500個/mm2以下、旧結晶粒の平均バンド幅が500μm以下、最大径0.3μm以下の微細金属間化合物数が50個/100μm2以上かつ500個/100μm2以下、平均亜結晶粒サイズが2.5μm以下である特徴を持つアルミニウム合金フィン材の製造方法。
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