JP2931136B2 - 穴拡げ加工性に優れたドローレスフィン用アルミニウム合金薄板の製造方法 - Google Patents

穴拡げ加工性に優れたドローレスフィン用アルミニウム合金薄板の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は張り出し加工、バーリン
グ加工、しごき加工、伸びフランジ加工を施してルーム
エアコン用フィンとして使用される穴拡げ加工性に優れ
たドローレスフィン用アルミニウム合金薄板の製造方法
に関するものである。
【0002】
【従来の技術およびその課題】一般に空調用熱交換器の
アルミニウム合金フィンは図1(イ)〜(ニ)に示すよ
うに、プレート部(1)に熱交チューブを挿着するため
のカラー部(2)を形成したものであり、プレート部形
状に応じて、フラットタイプ(イ)、ルーバータイプ
(ロ)、スリットタイプ(ハ)、コルゲートタイプ
(ニ)に区分される。またカラー部の成形方法はドロー
方式とドローレス方式に区分される。ドロー方式は図2
(イ)〜(ヘ)に示すように張り出し(イ)、絞り
(ロ)〜(ニ)、打ち抜き、バーリング(ホ)、リフレ
アー(ヘ)の工程からなり、張り出し加工が中心をなし
ている。従ってフィン材には優れた伸びが要求されてお
り、通常は厚さ0.13mm以上の厚いフィンの製造に用
いられている。また、ドローレス方式は図3(イ)〜
(ニ)に示すように打ち抜き−穴拡げ(イ)、バーリン
グ(ロ)、アイアニング(しごき)(ハ)、リフレアー
(ニ)の工程からなり、しごき加工が中心をなしてい
る。従ってフィン材にはしごき加工性に優れる事が要求
され、通常0.13mm以下の薄いフィンの製造に用いら
れている。
【0003】最近は省エネルギー、省資源の面から熱交
換器の軽量化が望まれ、アルミニウム合金フィンにおい
ても、薄肉軽量化が図られ、フィンの製造にもドローレ
ス方式が多用されるようになっている。いずれの成形方
式についても空調機のサイズ、用途に応じてフィン成形
各工程の寸法を変更しているが、フィンの間隔を決める
役割をするカラー部の高さは、通常ドロー方式の場合、
張り出し工程の張出し高さとリフレアー工程のポンチ押
し込み量で調整し、ドローレス方式の場合、しごき工程
のしごき高さとリフレアー工程のポンチ押し込み量で調
整している。しかし材料の薄肉化による変形能の低下、
および製品サイズの多品種化に伴い、上記の変更だけで
は対応できず、打ち抜き−穴拡げ工程での打ち抜き穴
径、あるいはバーリング工程での立ち上げ高さ等も調整
しているのが現状である。
【0004】しかしドローレス方式硬質フィン材では打
ち抜き穴径が小さい場合、あるいはバーリング加工時の
立ち上げ高さが高い場合、即ち穴拡げ率が大きい場合に
は最終工程であるリフレアー工程でひどい花割れを生じ
るという問題がある。この割れはカラー部と熱交チュー
ブの密着性を損ない、熱交特性を低下させるとともに成
形フィンの外観を害するものであり、製品としての価値
を下げる場合がある。従って、この割れ発生を避けるた
め、自ずから製品サイズの自由度が小さくならざるをえ
ず、この成形不良の低減が強く望まれている。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記問題点
を解決するために検討を重ねた結果、従来のドローレス
方式に用いられる硬質フィン材は、バーリング加工時の
穴拡げ度合い(穴拡げ率)が大きい場合には、その打ち
抜き穴端面に板厚減少部分(ネッキング)或いはクラッ
クを生じ、これがしごき加工時に拡大され、最終工程の
リフレアー工程で割れの起点となりひどい花割れを生じ
ること。またバーリング成形時のネッキングを防ぐため
には素材自体の穴拡げ性の向上が必要でありこのために
は素材の軟質化による伸び値向上が最も容易且つ有効で
あるが、冷間加工度の高い硬質フィン材の場合、調質焼
鈍の高温化により容易に再結晶核を生じ、そこを起点と
してネッキングあるいはクラックを生じるため、軟質化
による伸び値向上にも限界が有ること。さらにフィン剛
性を保持する観点からある程度の強度も必要である事等
を知見した。上記の知見に基づき、強度と穴拡げ性を同
時に向上し得る材料について鋭意検討を行った結果、ア
ルミマトリックス中に、回復サブグレンの成長を抑制す
る、0.1μm程度の微細な金属間化合物を多数析出さ
せると共に、最終板の加工組織を、旧粒界等の再結晶起
点を含まない均一な組織とすることにより、調質焼鈍時
の再結晶発生をかなり低強度まで抑制することができ、
その結果穴拡げ性を大幅に向上し得ることがわかった。
【0006】上記の金属組織の作り込み法について更に
検討を重ねた結果、Si0.01〜0.15重量%、F
e0.10〜0.40重量%、Mn0.10〜0.40
重量%を含み残部Alと不可避的不純物とからなる合金
鋳塊に400〜500℃の温度で1〜30時間保持の均
質化処理を施した後、冷却することなく直ちに熱間圧延
を施し、その熱間圧延を100mm以下の板厚での圧延が
熱間圧延上りの板厚となるまでに7パス以上となるよう
な圧下率で、かつ熱間圧延の終了温度が200℃以上と
なるように行った後、圧下率80%以上で冷間圧延し、
得られた薄板に250〜290℃の範囲内の温度で調質
焼鈍を施すことによって得られたアルミニウム合金薄板
はドローレス方式で成形するに十分な高強度とフィン加
工性を有し且つ優れた穴拡げ性を具備するという知見を
得たものである。
【0007】
【作用】本発明は上記知見に基づいてなされたものであ
って以下に合金組成、製造条件を上記のとおりに限定し
た理由を説明する。まず合金組成を本発明の通り限定し
た理由を説明する。本発明アルミニウム合金板はSi
0.01〜0.15重量%、Fe0.10〜0.40重
量%、Mn0.10〜0.40重量%を含み残部Alと
不可避的不純物とからなる合金組成を有することを特徴
とする。Si、FeおよびMn成分には一部アルミニウ
ムに固溶し、薄板の強度を高める効果に加え、合金板中
に直径が1〜10μm程度のAl−Fe系、Al−Fe
−Mn系、Al−(Fe、Mn)−Si系の非常に硬い
金属間化合物となって均一に分散し、しごき加工におけ
る工具との焼き付きを防止し、しごき性を向上する効果
がある。さらにMn成分には合金薄板の伸び値を向上す
る効果がある。ここで、Siの添加量が0.01重量%
未満、Feの添加量が0.10重量%未満、Mnの添加
量が0.10重量%未満では所望の強度、伸びが得られ
ないばかりか金属間化合物の数および大きさが減少する
ため焼き付きが多発し、しごき性が劣化するため好まし
くない。一方、Siの添加量が0.15重量%より多
く、Feの添加量が0.40重量%より多く、かつMn
の添加量が0.40重量%より多くなると、しごき加工
時に加工硬化が促進され易くなるとともに、金属間化合
物が粗大化し、しごき加工時、リフレアー加工時に割れ
起点となるため成形性が劣化する。したがって、Si
0.01〜0.15重量%、Fe添加量は0.10〜
0.40重量%であり、Mn添加量は0.10〜0.4
0重量%であることが必要である。
【0008】次に本発明の製造方法について説明する。
本発明アルミニウム合金薄板の製造方法の特徴は、上記
合金組成を有する鋳塊に、400〜500℃の温度で1
〜30時間保持の均質化処理を施した後に、冷却するこ
となく直ちに100mm以下の板厚での圧延が熱間圧延上
りの板厚となるまでに7パス以上となる圧下率で、かつ
熱間圧延の終了温度が200℃以上となるように熱間圧
延を施すところにある。ここで、鋳塊の均質化処理温度
が400℃未満では、鋳塊組織の均質化が不十分である
と共に、鋳造時に強制固溶された添加元素の固溶量を低
減することができないため、しごき加工時に加工硬化し
易く、しごき割れを多発する。一方500℃より高い温
度では、再結晶の発生を抑制し伸び値を向上させる、
0.1μm径程度の金属間化合物を、十分に析出させる
ことが困難となり、所定の穴拡げ性向上が得られない。
また保持時間が1時間未満では微細な金属間化合物は多
数生じるが、前記元素固溶量を低減することが出来ず、
しごき加工性が劣化する。一方30時間を超えて保持し
た場合は前記元素固溶量はかなり低減されるが、金属間
化合物の粗大化を招き、調質焼鈍時に再結晶核となり易
いため、かえって、穴拡げ性が劣化することとなり、好
ましくない。均質化処理後、直ちに熱間圧延を100mm
以下の板厚での圧延が熱間圧延上りの板厚となるまでに
7パス以上となるような圧下率で熱間圧延終了時の温度
が200℃以上となるようにおこなう。それは7パス未
満では、1パス毎の圧下率が大きくなるため、パス間に
回復、再結晶を繰り返す結果、最終パス終了後の熱間圧
延板中に、調質焼鈍時の再結晶核となり易い旧粒界を、
多数生じる結果となり、穴拡げ性が著しく劣化するから
である。また熱間圧延終了時の温度を200℃以上とし
たのは、200℃未満での熱間圧延では0.1μm径以
下の金属間化合物が析出しにくく、効果が少ないからで
ある。ここで熱間圧延上りの板厚は3〜10mm程度とす
るのが通常である。圧下率80%以上で冷間圧延を行う
のは、80%未満ではドローレス用フィン材として必要
な強度が不足するためである。また得られた薄板に25
0〜290℃の温度で調質焼鈍を施すことにより、穴拡
げ性を著しく向上し得ると共に、コルゲートタイプ用ド
ローレスフィン材として必要な成形性特にコルゲート性
(張出し性)を向上することができる。ここで、調質温
度が250℃未満では十分な成形性が得られず、290
℃より高い温度で調質焼鈍した場合、再結晶粒を生じ
て、これが割れの起点となるために、かえって成形性が
劣化してしまう。したがって、圧下率80%以上で冷間
圧延を行い、得られた薄板に250〜290℃の温度で
調質焼鈍を施す必要がある。
【0009】
【実施例】
〔実施例1〕 表1に示す化学組成の合金鋳塊を通常の水冷鋳造により
作製し、その鋳塊(厚さ400mm)を片面10mmずつ両
面面削後、表2に示した条件で均質化処理、熱間圧延を
行い、厚さ6mmの熱延板とした。この熱延板を冷間圧延
して厚さ0.115mmの板とした後、表3に示す温度範
囲で調質焼鈍を施して、引張強度14〜15kg/mm2
のドローレスフィン用薄板を得た。このようにして得ら
れたフィン材の引張試験、穴拡げ性試験、フィン成形性
試験の結果を表3に併記した。ここで穴拡げ性試験は、
図4に示すように、薄板に直径22mmの穴を打ち抜き加
工した後、直径33mmのポンチで穴拡げ加工し、目視に
より穴の端面にクラックを生じた時の径dn を測定する
ことによって算出した。図4においてdo =22mmφ、
Pd=33mmφ、dn =xmmφとしたとき限界穴拡げ率
は次式により示される。
【0010】
【数1】
【0011】しごき加工性は、ドローレスフィン実機に
より、直径8.32mmの第2アイアニングダイスと直径
8.24mmの第2アイアニングポンチを用い、しごき率
65%の苛酷条件でフィンカラー部を160個成形した
ときのしごき割れ不良率で評価した。コルゲート加工性
は、ドローレスフィン実機により、成形高さ1.3mmの
コルゲート板を用いてコルゲート部を100個成形した
時の割れの有無により評価した。
【0012】
【表1】
【0013】
【表2】
【0014】
【表3】
【0015】表1、2、3から明らかなように本発明合
金板試料No.1〜4は従来合金板試料No.11〜13と
同等の強度で穴拡げ性が優れると共にしごき性、コルゲ
ート性も良好である。これに対し本発明合金板の請求範
囲から、はずれる比較合金板試料No.5〜10は穴拡げ
性、しごき性、コルゲート性のいずれかが劣ることが判
る。すなわち、Fe、Si、Mn含有量のいずれかが上
限を超えると比較合金板試料No.9は粗大な金属間化合
物を起点とした割れを生じ易く、穴拡げ性が劣化し、一
方Fe、Si、Mn含有量のいずれかが下限未満の比較
合金板試料No.10はコルゲート性が不足すると共に、
しごき加工時に焼き付きを生じやすいため、しごき性が
劣化する。また均質化処理条件が適正でも、通常の熱間
圧延を施した比較合金板試料No.5は、十分な穴拡げ性
向上効果が得られないと共に、しごき性が著しく劣化す
る。また熱間圧延条件が適正でも均質化処理温度が低す
ぎる比較合金板試料No.6、あるいは高すぎる比較合金
板試料No.8は、共に加工硬化し易く、穴拡げ性、しご
き性ともに劣化する。
【0016】〔実施例2〕 表1,2,3に示す調質焼鈍前の本発明合金板試料No.
2および比較合金板試料No.5および従来合金板試料N
o.11、12、13を用いて、表4に示す温度で調質
焼鈍を行い、引張試験、穴拡げ性試験を行った。その結
果を表4に併記する。なお穴拡げ性試験の条件は実施例
1に記載した条件と同様である。
【0017】
【表4】
【0018】表4から明らかなように、従来合金板試料
No.11、12は調質温度を高温化し、かなり軟質化し
ないと穴拡げ性が向上しないのに対し、本発明合金板試
料No.2に250〜290℃の調質焼鈍を施すことによ
り得られた薄板は、従来合金板に比べ、高強度で、優れ
た穴拡げ性を示すことが判る。一方、熱間圧延条件が適
正となっていない比較合金板試料No.5は、調質焼鈍に
より軟質化された時に、再結晶を生じやすく、十分な穴
拡げ性が得られないことが判る。また調質温度が本発明
範囲外である比較合金板試料No.2′は穴拡げ性が良く
ない。
【0019】
【発明の効果】このように本発明製造方法によって得ら
れたフィン材は、ドローレス方式フィン成形における穴
拡げ加工性、しごき性、コルゲート性に優れ、不良率を
著しく低減し得るという顕著な効果を奏するものであ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】(イ)〜(ニ)はそれぞれ熱交換器のアルミニ
ウムフィンの形態を示す断面図であり、(イ)はフラッ
トタイプ、(ロ)はルーバータイプ、(ハ)はスリット
タイプ、(ニ)はコルゲートタイプである。
【図2】(イ)〜(ヘ)はドロー方式によるフィンの成
形方法を示す説明図。
【図3】(イ)〜(ニ)はドローレス方式によるフィン
の成形方法を断面図で示す説明図。
【図4】穴拡げ性測定方法を示す説明図。
【符号の説明】
1 プレート部 2 カラー部

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Si0.01〜0.15重量%、Fe
    0.10〜0.40重量%、Mn0.10〜0.40重
    量%を含み残部Alと不可避的不純物とからなる合金鋳
    塊に400〜500℃の温度で1〜30時間保持の均質
    化処理を施した後、冷却することなく直ちに熱間圧延を
    施し、その熱間圧延を100mm以下の板厚での圧延が熱
    間圧延上りの板厚となるまでに7パス以上となるような
    圧下率で、かつ熱間圧延の終了温度が200℃以上とな
    るように行った後、圧下率80%以上で冷間圧延し、得
    られた薄板に250〜290℃の範囲内の温度で調質焼
    鈍を施すことを特徴とする穴拡げ加工性に優れたドロー
    レスフィン用アルミニウム合金薄板の製造方法。
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