JP4702351B2 - 2次電池電極用インク、リチウムイオン電池、電子機器及び車両 - Google Patents
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Description
このような正極材や負極材を形成する場合、従来では、まず、活物質を含む電極層の形成材料を液性媒体に溶解または分散させてスラリー化する。次いで、このように調製されたスラリーをロールコーターで集電層上に塗布する。その後、塗布したスラリーを乾燥して液性媒体を除去し、さらに硬化させることによって電極層を形成し、正極材(正電極)や負極材(負電極)を得ている。
このようにインクジェット法(液滴吐出法)で電極層を形成すると、塗布厚を薄くすることができ、したがって得られる電極層の厚さを薄くし、内部抵抗を十分に低くすることが可能になる。また、電極層のパターニングが容易になり、これによって充放電の特性制御も可能になる。
しかしながら、前記の特許文献1〜3では、このような不具合を改善するためのインク組成としての具体的な提案がなされていない。したがって、インクジェット法(液滴吐出法)によって電極層を形成するには、使用するインクの組成について十分な検討が不可欠であり、特に使用する溶媒(液性媒体)の選定が極めて重要となっている。
Li−Mn系金属酸化物、Li−Ni系金属酸化物、Li−Co系金属酸化物、Li-Fe系金属酸化物またはこれら酸化物の複数種からなる混合物を含む正極活物質からなる活物質と、前記活物質を溶解及び/又は分散する液性媒体とを含み、
前記液性媒体は、密封された該液性媒体中に、エポキシ系接着剤の硬化物を大気圧下、50℃の環境下で10日間静置した際の、前記エポキシ系接着剤の硬化物の重量増加率を130%以下とするものであることを特徴としている。
この2次電池電極用インクによれば、これを用いて電極層を形成した際、液性媒体がエポキシ系接着剤に対して与えるダメージが少ないため、エポキシ系接着剤を用いた液滴吐出ヘッドによる吐出安定性に優れたものとなる。また、液滴吐出ヘッドに大きなダメージを与えてしまうことによる液滴吐出ヘッドの短寿命化を、抑制することができる。
黒鉛、易黒鉛化炭素、難黒鉛化炭素、Li−Ti系金属酸化物、Li-Sn系金属酸化物、Li-Si系金属酸化物またはこれら材料の複数種からなる混合物を含む負極活物質からなる活物質と、前記活物質を溶解及び/又は分散する液性媒体とを含み、
前記液性媒体は、密封された該液性媒体中に、エポキシ系接着剤の硬化物を大気圧下、50℃の環境下で10日間静置した際の、前記エポキシ系接着剤の硬化物の重量増加率を130%以下とするものであることを特徴としている。
この2次電池電極用インクによれば、これを用いて電極層を形成した際、液性媒体がエポキシ系接着剤に対して与えるダメージが少ないため、エポキシ系接着剤を用いた液滴吐出ヘッドによる吐出安定性に優れたものとなる。また、液滴吐出ヘッドに大きなダメージを与えてしまうことによる液滴吐出ヘッドの短寿命化を、抑制することができる。
液性媒体がエポキシ系接着剤に対して与えるダメージが少ないため、液滴吐出ヘッドに対してノズルプレートが良好に接合した状態に保持され、したがってエポキシ系接着剤のダメージに起因するインクの吐出安定性低下や、液滴吐出ヘッドそのものの短寿命化が抑制される。
このようなエポキシ系接着剤は、液滴吐出ヘッドのノズルプレートとヘッド本体とを強固に接着し固定することができる。そして、この液滴吐出ヘッドによる液滴吐出時に、液滴吐出ヘッドが好ましくない振動をしてしまうことを効果的に抑制することもできる。
このようにすれば、2次電池電極用インクを吐出する液滴吐出ヘッドにおける目詰まり等が効果的に防止され、2次電池電極の生産性が向上する。
このようにすれば、2次電池電極用インクを吐出する液滴吐出ヘッドにおける目詰まり等が効果的に防止され、2次電池電極の生産性が向上する。
このようにすれば、液性媒体がエポキシ系接着剤に対して与えるダメージがより少なくなり、したがってエポキシ系接着剤のダメージに起因するインクの吐出安定性低下や、液滴吐出ヘッドそのものの短寿命化がより抑制される。
このリチウムイオン電池によれば、液滴吐出ヘッドに大きなダメージが与えられることなく製造されたものとなるので、生産性が良好となり、また、電極層の厚さが薄くなることで電極の内部抵抗が十分に低くなり、さらに、電極層のパターニングが容易になって充放電の特性制御も可能なものとなる。
この電子機器によれば、前記したように優れた特性のリチウムイオン電池を備えているので、この電子機器自体も良好なものとなる。
本発明の2次電池電極用インクは、リチウムイオン電池(リチウムイオン2次電池)における2次電池用電極の製造に用いられるインクであり、特に、液滴吐出法の代表的な方式であるインクジェット方式による、2次電池用電極の製造に用いられるものである。この2次電池電極用インクは、集電層上に設けられる電極層を形成するためのもので、正極(正電極)用のインク(以下、正極用インクと記す)と、負極(負電極)用のインク(以下、負極用インクと記す)とがある。
なお、前記のバインダとしてのポリビニリデンフルオロライド(PVDF)は、カーボン材料や金属集電体(Cu箔)に対して結着作用があり、したがって後述する実験例では結着剤としている。
(式) 重量増加率=(w2/w1)×100[%]
なお、このようなエポキシ系接着剤の硬化物の重量増加率の測定については、例えば、直径6mm×厚さ2mmの円盤状の試験片を用いて行うことができる。
これに対して本発明で用いられる液性媒体は、前記のようなエポキシ系接着剤の硬化物も侵しにくいため、より長期間にわたってインクの吐出安定性を維持することができ、さらに、液滴吐出ヘッドそのものの長寿命化を図ることもできる。
図1は、本発明に係るリチウムイオン電池の一例の要部を示す説明図であり、図1中符号1はリチウムイオン電池である。このリチウムイオン電池1は、シート状の正極(正電極)2と、シート状の負極(負電極)3と、これらの間に設けられた多孔性のセパレータ4と、からなる3層構造を多数備え、さらにこれら三層構造に電解液を含浸させた状態で、金属缶ケース5で密閉した構造となっている。
正極2や負極3となる電極については、本発明では、前記の正極用インク、負極用インクを用いて液滴吐出法(液滴吐出方式)で形成する。そこで、まず、液滴吐出法(インクジェット法)について図3、図4を図面を参照して説明する。なお、図3は液滴吐出装置を示す斜視図、図4は図3に示す液滴吐出装置における液滴吐出ヘッドを示す図であり、(a)は断面斜視図、(b)は断面図である。
第1位置制御装置104は、制御手段112からの信号に応じて、液滴吐出手段103をX軸方向、およびX軸方向に直交するZ軸方向に沿って移動させるものである。さらに、第1位置制御装置104は、Z軸に平行な軸の回りで液滴吐出手段103を回転させる機能も有している。本実施形態では、Z軸方向を鉛直方向としている。第2位置制御装置108は、制御手段112からの信号に応じて、X軸方向およびZ軸方向の双方に直交するY軸方向に沿ってステージ106を移動させるものである。さらに、第2位置制御装置108は、Z軸に平行な軸の回りでステージ106を回転させる機能も有している。
液滴吐出手段103は、前述したように第1位置制御装置104によってX軸方向に移動させられる。一方、ステージ106は、第2位置制御装置108によってY軸方向に移動させられる。つまり、第1位置制御装置104および第2位置制御装置108によって、ステージ106に対する液滴吐出ヘッドの相対位置が変わる(ステージ106に保持された基板Wと、液液滴吐出手段103とが相対的に移動する)ようになっているのである。
液滴吐出手段103は、図4(a)(b)に示す液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)114を複数有し、さらにこれら液滴吐出ヘッド114を保持するキャリッジを有してなるものである。
また、振動板126とノズルプレート128との間には、複数の隔壁122が設けられており、これら隔壁122の一対と振動板126、ノズルプレート128とによって囲まれた空間部は、キャビティ120となっている。ここで、このようなキャビティ120を含む隔壁122および振動板126側が、前記したヘッド本体となっている。
キャビティ120には、一つのノズル118が前記ノズルプレート128に形成されており、したがってキャビティ120の数とノズル118の数とは同じになっている。また、キャビティ120には、一対の隔壁122間に位置する供給口130を介して、液たまり129から2次電池電極用インクIが供給されるようになっている。
これに対して本発明で用いられる液性媒体は、前記のようなエポキシ系接着剤の硬化物も侵しにくいため、より長期間にわたってインクの吐出安定性を維持することができ、さらに、液滴吐出ヘッドそのものの長寿命化を図ることもできる。加えて、エポキシ接着剤からの成分の溶出も少なく、製品への不純物混入を抑制する効果がある。
次に、用意した集電層6(8)を、図3中の基板Wとしてステージ106上に載置し、その状態から制御手段112によって液滴吐出手段103や第1位置制御装置104、第2位置制御装置108をそれぞれ制御する。これにより、液滴吐出手段103の液滴吐出ヘッド114に対して集電層6(8)を相対的に移動させつつ、液滴吐出ヘッド114から2次電池電極用インクIを集電層6(8)上に吐出する。
その後、これら正極2、負極3を用いて従来と同様にして組み立て、図1に示すようなリチウムイオン電池1を得る。
図5は、本発明の電子機器をモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータに適用した場合の一例を示す斜視図である。
図5に示すようにパーソナルコンピュータ1100は、キーボード1102を備えた本体部1104と、表示ユニット1106とによって構成され、表示ユニット1106は、本体部1104に対してヒンジ構造部を介して回動可能に支持されている。
このパーソナルコンピュータ1100においては、その電源として、図1に示したようなリチウムイオン電池を備えている。
したがって、このパーソナルコンピュータ1100によれば、前記したように優れた特性のリチウムイオン電池を備えているので、このパーソナルコンピュータ1100自体も良好なものとなる。
また、本発明のリチウムイオン電池は、前記した電子機器以外にも、車両など、電源を必要とする全てのものに使用することができる。
2次電池電極用インクIとして、正極用インクを以下のようにして作製した。
正極活物質としてマンガン酸リチウム(LiMn2O4)を用い、導電剤としてカーボンブラックを用い、さらに分散樹脂(バインダ)と、結着剤としてのポリビニリデンフルオロライド(PVDF)とを用い、これらを適宜に配合して固形分を調整した。そして、このような固形分に対し、複数種の溶媒を混合してなる液性溶媒(混合溶媒)を加えて固形分を溶解/分散させ、実施例1〜実施例23、及び比較例1〜比較例12までのスラリー(分散液)、すなわち正極用インク(2次電池電極用インクI)を得た。
また、これら表1、表2には、形成した正極用インクの粘度と、使用した液性媒体(混合溶媒)のエポキシ膨潤重量(先に定義した本発明における重量増加率)とを併記した。また、配合比(含有量)については、その単位を重量%(wt%)としている。
記号(略号) 溶媒名 沸点 エポキシ膨潤重量 粘度
(℃) (重量%) (mPas)
A;NPP Nペンチルピロリドン 260 156.13 2.8
B;NBP Nブチルピロリドン 245 142.28 2.5
C;NEP Nエチルピロリドン 218 165.35 2.09
D;DMPU NNジメチルプロピルウレア 245 164.33 2.91
E;DMI ジメチルイミダゾリジノン 225 145.46 1.94
F;NMF Nメチルホルムアニリド 245 114.13 2.5
G;gBL γブチロラクトン 204 83.01 1.7
H;PC 炭酸プロピレン 242 32.04 2.4
I;EDE ジエチレングリコールジエチルエーテル
188 27.81 1.4
J;EDM ジエチレングリコールメチルエチルエーテル
176 40.82 1.2
K;PHMM エチレングリコールフェニルメチルエーテル
222 60.06 2
L;MFTG トリプロピレングリコールメチルエーテル
242 27.31 4.5
M;BDM ジエチレングリコールブチルメチルエーテル
215 35.92 1.6
N;BMGA ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート
192 30.92 1.6
O;DPMA ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート
213 21.7 1.7
P;EEP エトキシプロピオン酸エチル 170 45.12 1.2
Q;NMP Nメチルピロリドン 202 180.01 1.65
一方、比較例1〜12の2次電池電極用インクを用いてこれを前記の液滴吐出ヘッド114から吐出し、図2に示した電極層7を形成したところ、得られた電極層7には厚さむらが見られるものもあった。また、長期間連続して吐出を行ったところ、液滴吐出ヘッド114に対して大きなダメージを与えてしまい、ヘッド本体からノズルプレートが剥離してしまうものもあった。
Claims (9)
- 集電層上に設けられた活物質を含む電極層を、液滴吐出方式で製造する際に用いられるインクであって、
Li−Mn系金属酸化物、Li−Ni系金属酸化物、Li−Co系金属酸化物、Li-Fe系金属酸化物のいずれか1種または複数種からなる混合物を含む正極活物質と、前記正極活物質を溶解及び/又は分散する液性媒体とを含み、
前記液性媒体は、エポキシ系樹脂と脂肪酸ポリアミンを含むエポキシ系接着剤の硬化物である円盤状の試験片を該液性媒体中に浸漬し、大気圧下50℃の環境下で10日間静置した際の、前記試験片の重量増加率を130%以下とするものであることを特徴とする2次電池電極用インク。 - 集電層上に設けられた活物質を含む電極層を、液滴吐出方式で製造する際に用いられるインクであって、
黒鉛、易黒鉛化炭素、難黒鉛化炭素、Li−Ti系金属酸化物、Li-Sn系金属酸化物、Li-Si系金属酸化物のいずれか1種または複数種からなる混合物を含む負極活物質と、前記負極活物質を溶解及び/又は分散する液性媒体とを含み、
前記液性媒体は、エポキシ系樹脂と脂肪酸ポリアミンを含むエポキシ系接着剤の硬化物である円盤状の試験片を該液性媒体中に浸漬し、大気圧下50℃の環境下で10日間静置した際の、前記試験片の重量増加率を130%以下とするものであることを特徴とする2次電池電極用インク。 - 前記液性媒体の含有率は、70〜98wt%であることを特徴とする請求項1〜2のいずれか一項に記載の2次電池電極用インク。
- 前記液性媒体の大気圧下における沸点は、180〜300℃であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の2次電池電極用インク。
- 前記液性媒体の25℃における蒸気圧は、0.1mmHg以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の2次電池電極用インク。
- 前記液性媒体は、ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−エチルピロリジノン、N−プロピルピロリジノン、N−ブチルピロリジノン、N−ペンチルピロリジノン、ジメチル−N,N’−ジメチルプロピルウレア、γブチロラクトン、γノナラクトン、炭酸プロピレン、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、から選択される1種または2種以上を含むものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の2次電池電極用インク。
- 請求項1〜6のいずれかに一項に記載の2次電池電極用インクを用いて製造された2次電池用電極を備えたことを特徴とするリチウムイオン電池。
- 請求項7記載のリチウムイオン電池を備えたことを特徴とする電子機器。
- 請求項7記載のリチウムイオン電池を備えたことを特徴とする車両。
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