JP4701516B2 - 光学用被覆フィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なポリエステル重縮合触媒を用いて重合されたポリエステルを主たる構成成分とするフィルム基材を用いた光学用被覆フィルムに関するものであり、さらに詳しくは、ゲルマニウム、アンチモン化合物、チタン化合物を触媒主成分として用いない、新規なアルミニウム系重縮合触媒を用いて重合されたポリエステルを主たる構成成分とするフィルム基材を用いた光学用被覆フィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等に代表されるポリエステルは、機械的特性、及び化学的特性に優れており、それぞれのポリエステルの特性に応じて、例えば包装用途や工業用途の各種分野において広範囲に使用されている。
【0003】
特に、液晶ディスプレイに用いられるプリズムレンズシート、ハードコートフィルム、反射防止フィルム、拡散板、CRT用の破砕防止フィルム、またプラズマディスプレイの前面板に用いられる近赤外線吸収フィルター、タッチパネルやエレクトロルミネッセンス用の透明導電性フィルムなどの光学部材用ベースフィルム(以後、光学用フィルムと略す)として用いられる二軸延伸ポリエステルフィルムは、優れた強度、寸法安定性が要求されるため100μm以上の比較的厚手のフィルムが好適に用いられている。
【0004】
このような光学用フィルムに用いられるベースフィルムには、プリズムレンズ層やハードコート層、反射防止層など後加工時にフィルムに積層される被覆層に対する優れた接着性と優れた透明性とが要求されるほかに、フィルム中に含まれる微小な異物も光学的な欠点となるため極カ少ないことが望まれている。また、フィルムの色調も黒ずみや黄色味を帯びていないものが要求されている。
【0005】
しかしながら、一般にポリエステルフィルムは概して他の材科、例えばアクリレートを主成分とするプリズムレンズやハードコートとの接着性が悪い。また、ハンドリング性を付与するために、フィルム中に粒子を含有させフィルム表面に凹凸を形成させることが一般的に行われているが、これらの粒子の屈折率は通常ポリエステルの屈折率と差異があるため、透明性を阻害する傾向がある。
【0006】
さらに、従来から、ポリエステルの重縮合時に用いられるポリエステル重合触媒としては、三酸化アンチモンが広く用いられている。この三酸化アンチモンは、安価で、かつ優れた触媒活性をもつ触媒であるが、これを重縮合触媒の主成分、即ち、実用的な重合速度が発揮される程度の添加量にて使用すると、重縮合時に三酸化アンチモンが還元され、10μm以下の金属アンチモン粒子が生成する。そして、フィルム製造時の溶融押出し工程で金属アンチモン粒子が凝集し、20〜50μmの異物としてフィルム中に存在するようになる。
【0007】
この金属アンチモン粒子による凝集体は、フィルム延伸工程でこの異物周囲のポリエステルフィルムの配向性に悪影響を及ぼし、光学的歪みが発生する。そのため、実際の異物の大きさよりもかなり大きな欠点として検出され、著しく品位を損なう。例えば、大きさ20μmの異物でも光学的に50μm以上の大きさの光学欠点として認識され、さらには100μm以上の大きさの光学欠点として認識される場合もある。
【0008】
これらの金属アンチモン粒子の凝集体を除去するために、溶融押出し時にフィルターを使用しても、金属アンチモン粒子の凝集体が変形しながらフィルターを通り抜け、完全に除去することは極めて困難であった。
【0009】
一般に、光学用フィルムには透明性が厳しく要求されるが、透明性が高い程、このような微小金属アンチモン粒子による光学欠点はより鮮明となる傾向がある。さらに、重縮合触媒としてアンチモン化合物を用いて製造したポリエステルはフィルムの色調が黒ずんでおり、さらなる改善が求められている。したがって、アンチモン化合物を触媒主成分として含まないポリエステルが望まれている。
【0010】
また、光学用被覆フィルムの基材フィルムの原料であるポリエステルの製造時の重縮合触媒として、ゲルマニウム化合物を用いた場合は高価であり工業的規模で生産する上で好ましくなく、さらにチタン化合物を用いた場合は耐熱性が不良なため、フィルムの色調が黄色味を帯び好ましくない。
【0011】
上記の問題を解決する方法として、重縮合触媒として三酸化アンチモンを用いて、かつPETの黒ずみや異物の発生を抑制する試みが行われている。例えば、特許第2666502号においては、重縮合触媒として三酸化アンチモンとビスマスおよびセレンの化合物を用いることで、PET中の黒色異物の生成を抑制している。また、特開平9−291141号においては、重縮合触媒としてナトリウムおよび鉄の酸化物を含有する三酸化アンチモンを用いると、金属アンチモンの析出が抑制されることを述べている。ところが、これらの重縮合触媒では、結局ポリエステル中のアンチモンの含有量を低減するという目的は達成できない。
【0012】
三酸化アンチモン等のアンチモン系触媒に代わる重縮合触媒の検討も行われており、テトラアルコキシチタネートに代表されるチタン化合物やスズ化合物がすでに提案されている。しかしながら、これらを用いて製造されたポリエステルは溶融成形時に熱劣化を受けやすく、またポリエステルが著しく着色するという問題点を有する。
【0013】
このような、チタン化合物を重縮合触媒として用いたときの問題点を克服する試みとして、例えば、特開昭55−116722号では、テトラアルコキシチタネートをコバルト塩およびカルシウム塩と同時に用いる方法が提案されている。また、特開平8−73581号によると、重縮合触媒としてテトラアルコキシチタネートをコバルト化合物と同時に用い、かつ蛍光増白剤を用いる方法が提案されている。ところが、これらの技術では、テトラアルコキシチタネートを重縮合触媒として用いたときのPETの着色は低減されるものの、PETの熱分解を効果的に抑制することは達成されていない。
【0014】
チタン化合物を重縮合触媒として用いて重合したポリエステルの溶融成形時の熱劣化を抑制する他の試みとして、例えば、特開平10−259296号では、チタン化合物を触媒としてポリエステルを重合した後にリン系化合物を添加する方法が開示されている。しかし、重合後のポリマーに添加剤を効果的に混ぜ込むことは技術的に困難であるばかりでなく、コストアップにもつながり実用化されていないのが現状である。
【0015】
アルミニウム化合物にアルカリ金属化合物を添加して十分な触媒活性を有するポリエステル重縮合触媒とする技術も公知である。かかる公知の重縮合触媒を使用すると熱安定性に優れたポリエステルが得られるが、このアルカリ金属化合物を併用した重縮合触媒は、実用的な触媒活性を得ようとするとそれらの添加量が多く必要であり、その結果、得られたポリエステル重合体中のアルカリ金属化合物に起因して、少なくとも以下のいずれかの問題を生じる。
【0016】
1)異物量が多くなり、フィルムに使用したときに製膜性やフィルム物性が低下する。
2)ポリエステル重合体の耐加水分解性が低下し、また異物発生により透明性が低下する。
3)ポリエステル重合体の色調の不良、即ち重合体が黄色く着色する現象が発生し、フィルムに使用したときに、成型品の色調が悪化するという問題が発生する。
4)長時間生産する際、溶融押出し工程において異物の目詰まりによってフィルター昇圧が高くなり、フィルターの交換頻度が短くなり生産性が低下する。
【0017】
アンチモン化合物以外で優れた触媒活性を有しかつ上記の問題を有しないポリエステルを与える重縮合触媒としては、ゲルマニウム化合物がすでに実用化されているが、この触媒は非常に高価であるという問題点や、重合中に反応系から外へ留出しやすいため反応系の触媒濃度が変化し重合の制御が困難になるという課題を有しており、触媒主成分として使用することには問題がある。
【0018】
また、ポリエステルの溶融成形時の熱劣化を抑制する方法として、ポリエステルから触媒を除去する方法も挙げられる。ポリエステルから触媒を除去する方法としては、例えば特開平10−251394号公報には、酸性物質の存在下にポリエステル樹脂と超臨界流体である抽出剤とを接触させる方法が開示されている。しかし、このような超臨界流体を用いる方法は技術的に困難である上に製品のコストアップにもつながるので好ましくない。
【0019】
以上のような経緯で、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物以外の金属成分を主成分とし、触媒活性に優れ、かつ溶融成形時に熱劣化をほとんど起こさない(a)熱安定性、(b)熱酸化安定性、(c)耐加水分解性の少なくともいずれかに優れ、しかも異物量が少なくて、色調及び透明性に優れたポリエステルを提供することができる重縮合触媒が望まれている。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来のアンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物などの重縮合触媒を主成分としない、新規なポリエステル重縮合触媒を用いて製造されたポリエステルを主たる構成成分とする、透明性及び色調に優れ、かつアンチモンに起因する異物がない、光学用被覆フィルムを提供するものである。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明の技術的要旨は、従来のアルミニウム化合物を重縮合触媒として用いて重合したポリエステルの熱安定性を向上する目的で、重合時に各種酸化防止剤や安定剤の添加効果を検討したところ、アルミニウム化合物にフェノール系化合物、リン化合物又はフェノール部を同一分子内に有するリン化合物を組み合わせることによって、ポリエステルの熱安定性が向上するとともに、もともと触媒活性に劣るアルミニウム化合物が重縮合触媒として十分な活性をもつようになることを見いだし、前記重縮合触媒を用いて得られたポリエステルを光学用被覆フィルムにおける基材フィルムの原料ポリマーの主たる構成成分として用い、該基材に被覆層を設け、かつ光学特性を適正化することにより、透明性及び色調に優れ、かつアンチモンに起因する異物がない、光学用被覆フィルムが得られることを見出したところにある。
【0022】
すなわち、本発明は、二軸延伸ポリエステルフィルムを基材とし、該基材の少なくとも片面に高分子樹脂及び粒子から主として構成された被覆層を設けてなる被覆フィルムであって、前記ポリエステルフィルムはアルミニウム及び/又はその化合物と、フェノール系化合物を含有する重縮合触媒を用いて重合されたポリエステルを主たる構成成分とし、かつフィルムのヘイズが2.0%以下であることを特徴とする光学用被覆フィルムである。
【0023】
また、二軸延伸ポリエステルフィルムを基材とし、該基材の少なくとも片面に高分子樹脂及び粒子から主として構成された被覆層を設けてなる被覆フィルムであって、前記ポリエステルフィルムはアルミニウム及び/又はその化合物と、リン化合物を含有する重縮合触媒を用いて重合されたポリエステルを主たる構成成分とし、かつフィルムのヘイズが2.0%以下であることを特徴とする光学用被覆フィルムである。
【0024】
また、二軸延伸ポリエステルフィルムを基材とし、該基材の少なくとも片面に高分子樹脂及び粒子から主として構成された被覆層を設けてなる被覆フィルムであって、前記ポリエステルフィルムはリン化合物のアルミニウム塩を含有する重縮合触媒を用いて重合されたポリエステルを主たる構成成分とし、かつフィルムのヘイズが2.0%以下であることを特徴とする光学用被覆フィルムである。
【0025】
さらに、二軸延伸ポリエステルフィルムを基材とし、該基材の少なくとも片面に高分子樹脂及び粒子から主として構成された被覆層を設けてなる被覆フィルムであって、前記ポリエステルフィルムは前記一般式(7)で表される化合物から選択される少なくとも1種を含有する重縮合触媒を用いて重合されたポリエステルを主たる構成成分とし、かつフィルムのヘイズが2.0%以下であることを特徴とする光学用被覆フィルムである。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明の光学用被覆フィルムの主たる構成成分であるポリエステルを重合する際に使用する重縮合触媒は、アルミニウム及び/又はその化合物とフェノール系化合物を含有する触媒、アルミニウム及び/又はその化合物とリン化合物を含有する触媒、リン化合物のアルミニウム塩を含有する触媒、または前記一般式(7)で表わされる化合物から選択される少なくとも1種を含有する触媒である。
【0027】
アルミニウム及び/又はアルミニウム化合物として、金属アルミニウムのほか、公知のアルミニウム化合物を限定なく使用することができる。
【0028】
アルミニウム化合物としては、具体的には、ギ酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム、プロピオン酸アルミニウム、蓚酸アルミニウム、アクリル酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、安息香酸アルミニウム、トリクロロ酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、サリチル酸アルミニウムなどのカルボン酸塩、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム、炭酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、ホスホン酸アルミニウムなどの無機酸塩、アルミニウムメトキサイド、アルミニウムエトキサイド、アルミニウムn-プロポキサイド、アルミニウムiso-プロポキサイド、アルミニウムn-ブトキサイド、アルミニウムt−ブトキサイドなどアルミニウムアルコキサイド、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムアセチルアセテート、アルミニウムエチルアセトアセテート、アルミニウムエチルアセトアセテートジiso-プロポキサイドなどのアルミニウムキレート化合物、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物およびこれらの部分加水分解物、酸化アルミニウムなどが挙げられる。これらのうちカルボン酸塩、無機酸塩およびキレート化合物が好ましく、これらの中でもさらに酢酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウムおよびアルミニウムアセチルアセトネートが特に好ましい。
【0029】
前記アルミニウム及び/又はアルミニウム化合物の添加量としては、得られるポリエステルのジカルボン酸や多価カルボン酸などのカルボン酸成分の全構成ユニットのモル数に対して0.001〜0.05モル%が好ましく、さらに好ましくは、0.005〜0.02モル%である。添加量が0.001モル%未満であると触媒活性が十分に発揮されない場合があり、添加量が0.05モル%以上になると、熱安定性や熱酸化安定性の低下、アルミニウムに起因する異物の発生や着色の増加が問題になる場合が発生する。この様にアルミニウム成分の添加量が少なくても本発明の重合触媒は十分な触媒活性を示す点に大きな特徴を有する。その結果、熱安定性や熱酸化安定性が優れ、アルミニウムに起因する異物や着色を低減することができる。
【0030】
前記重縮合触媒を構成するフェノール系化合物としては、フェノール構造を有する化合物であれば特に限定はされないが、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、2,6-ジシクロヘキシル-4-メチルフェノール、2,6-ジイソプロピル-4-エチルフェノール、2,6-ジ-tert-アミル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-tert-オクチル-4-n-プロピルフェノール、2,6-ジシクロヘキシル-4-n-オクチルフェノール、2-イソプロピル-4-メチル-6-tert-ブチルフェノール、2-tert-ブチル-2-エチル-6-tert-オクチルフェノール、2-イソブチル-4-エチル-6-tert-ヘキシルフェノール、2-シクロヘキシル-4-n-ブチル-6-イソプロピルフェノール、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、トリエチレングリコール−ビス[3-(3-tert-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオール−ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2-チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4,4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N'-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナミド)、1,3,5-トリス(2,6-ジメチル-3-ヒドロキシ-4-tert-ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス[(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]イソシアヌレート、トリス(4-tert-ブチル−2,6-ジメチル-3-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、2,4-ビス(n−オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、テトラキス[メチレン(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ)ヒドロシンナメート]メタン、ビス[(3,3-ビス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)ブチリックアシッド)グリコールエステル、N,N'-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、2,2'-オギザミドビス[エチル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[2-tert-ブチル-4-メチル-6-(3-tert-ブチル-5-メチル−2-ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフタレート、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9-ビス[1,1-ジメチル2-{β-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、2,2-ビス[4-(2-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシシンナモイルオキシ))エトキシフェニル]プロパン、β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アルキルエステル、テトラキス-[メチル-3-(3',5'-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、チオジエチレンービス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、トリエチレングリコール-ビス-[-3-(3'-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)]プロピオネート、1,1,3-トリス[2-メチル-4-[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]-5-tert-ブチルフェニル]ブタンなどを挙げることができる。
【0031】
これらは、同時に二種以上を併用することもできる。これらのうち、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス-[メチル-3-(3',5'-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、チオジエチレンービス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が好ましい。
【0032】
これらのフェノール系化合物をポリエステルの重合時に添加することによって、アルミニウム化合物の触媒活性が向上するとともに、重合したポリエステルの熱安定性も向上する。
【0033】
前記フェノール系化合物の添加量としては、得られるポリエステルのジカルボン酸や多価カルボン酸などのカルボン酸成分の全構成ユニットのモル数に対して5×10-7〜0.01モルが好ましく、更に好ましくは1×10-6〜0.005モルである。また、本発明では、フェノール系化合物にさらにリン化合物をともに用いても良い。
【0034】
前記重縮合触媒を構成するリン化合物としては特に限定はされないが、ホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、ホスフィン系化合物からなる群より選ばれる一種または二種以上の化合物を用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。これらの中でも、一種または二種以上のホスホン酸系化合物を用いると触媒活性の向上効果が特に大きく好ましい。
【0035】
前記のホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、ホスフィン系化合物とは、それぞれ下記式(8)〜(13)で表される構造を有する化合物のことである。
【0036】
【化8】
【0037】
【化9】
【0038】
【化10】
【0039】
【化11】
【0040】
【化12】
【0041】
【化13】
【0042】
前記のホスホン酸系化合物としては、例えば、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸ジメチル、フェニルホスホン酸ジエチル、フェニルホスホン酸ジフェニル、ベンジルホスホン酸ジメチル、ベンジルホスホン酸ジエチルなどが挙げられる。
【0043】
前記のホスフィン酸系化合物としては、例えば、ジフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸メチル、ジフェニルホスフィン酸フェニル、フェニルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸メチル、フェニルホスフィン酸フェニルなどが挙げられる。
【0044】
前記のホスフィンオキサイド系化合物としては、例えば、ジフェニルホスフィンオキサイド、メチルジフェニルホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。
【0045】
ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、ホスフィン系化合物の中では、リン化合物としては、下記式(14)〜(19)で表される化合物を用いることが好ましい。
【0046】
【化14】
【0047】
【化15】
【0048】
【化16】
【0049】
【化17】
【0050】
【化18】
【0051】
【化19】
【0052】
前記のリン化合物の中でも、芳香環構造を有する化合物を用いると、触媒活性の向上効果が大きくより好ましい。
【0053】
また、前記の重縮合触媒を構成するリン化合物としては、下記一般式(20)〜(22)で表される化合物を用いると、特に触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0054】
【化20】
【0055】
【化21】
【0056】
【化22】
【0057】
(式(20)〜(22)中、R1、R4、R5、R6はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R2、R3はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。ただし、炭化水素基はシクロヘキシル等の脂環構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0058】
前記の重縮合触媒を構成するリン化合物としては、上記式(20)〜(22)中、R1、R4、R5、R6が芳香環構造を有する基である化合物が特に好ましい。
【0059】
前記の重縮合触媒を構成するリン化合物としては、例えば、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸ジメチル、フェニルホスホン酸ジエチル、フェニルホスホン酸ジフェニル、ベンジルホスホン酸ジメチル、ベンジルホスホン酸ジエチル、ジフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸メチル、ジフェニルホスフィン酸フェニル、フェニルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸メチル、フェニルホスフィン酸フェニル、ジフェニルホスフィンオキサイド、メチルジフェニルホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。これらのうちで、フェニルホスホン酸ジメチル、ベンジルホスホン酸ジエチルが特に好ましい。
【0060】
前記のリン化合物の添加量としては、得られるポリエステルのジカルボン酸や多価カルボン酸などのカルボン酸成分の全構成ユニットのモル数に対して5×10-7〜0.01モルが好ましく、更に好ましくは1×10-6〜0.005モルである。
【0061】
前記の重縮合触媒を構成するフェノール部を同一分子内に有するリン化合物としては、フェノール構造を有するリン化合物であれば特に限定はされないが、フェノール部を同一分子内に有する、ホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、ホスフィン系化合物からなる群より選ばれる一種または二種以上の化合物を用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。これらの中でも、一種または二種以上のフェノール部を同一分子内に有するホスホン酸系化合物を用いると触媒活性の向上効果が特に大きく好ましい。
【0062】
また、前記の重縮合触媒を構成するフェノール部を同一分子内に有するリン化合物としては、下記一般式(23)〜(25)で表される化合物などが挙げられる。これらのうちで、下記式を用いると特に触媒活性が向上するため好ましい。
【0063】
【化23】
【0064】
【化24】
【0065】
【化25】
【0066】
(式(23)〜(25)中、R1はフェノール部を含む炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基などの置換基およびフェノール部を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R4、R5、R6はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基などの置換基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R2、R3はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基などの置換基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。ただし、炭化水素基は分岐構造やシクロヘキシル等の脂環構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。R2とR4の末端どうしは結合していてもよい。)
【0067】
前記のフェノール部を同一分子内に有するリン化合物としては、例えば、p−ヒドロキシフェニルホスホン酸、p−ヒドロキシフェニルホスホン酸ジメチル、p−ヒドロキシフェニルホスホン酸ジエチル、p−ヒドロキシフェニルホスホン酸ジフェニル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(p−ヒドロキシフェニル)ホスフィン酸メチル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)ホスフィン酸フェニル、p−ヒドロキシフェニルフェニルホスフィン酸、p−ヒドロキシフェニルフェニルホスフィン酸メチル、p−ヒドロキシフェニルフェニルホスフィン酸フェニル、p−ヒドロキシフェニルホスフィン酸、p−ヒドロキシフェニルホスフィン酸メチル、p−ヒドロキシフェニルホスフィン酸フェニル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)ホスフィンオキサイド、トリス(p−ヒドロキシフェニル)ホスフィンオキサイド、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メチルホスフィンオキサイド、および下記式(26)〜(29)で表される化合物などが挙げられる。これらのうちで、下記式(28)で表される化合物およびp−ヒドロキシフェニルホスホン酸ジメチルが特に好ましい。
【0068】
【化26】
【0069】
【化27】
【0070】
【化28】
【0071】
【化29】
【0072】
上記の式(28)にて示される化合物としては、例えばSANKO-220(三光株式会社製)が使用可能である。
【0073】
これらのフェノール部を同一分子内に有するリン化合物をポリエステルの重合時に添加することによってアルミニウム化合物の触媒活性が向上するとともに、重合したポリエステルの熱安定性も向上する。
【0074】
前記のフェノール部を同一分子内に有するリン化合物の添加量としては、得られるポリエステルのジカルボン酸や多価カルボン酸などのカルボン酸成分の全構成ユニットのモル数に対して5×10-7〜0.01モルが好ましく、更に好ましくは1×10-6〜0.005モルである。
【0075】
また、前記のリン化合物として、リンの金属塩化合物を用いることが好ましい。前記のリンの金属塩化合物とは、リン化合物の金属塩であれば特に限定はされないが、ホスホン酸系化合物の金属塩を用いると、触媒活性の向上効果が大きく好ましい。リン化合物の金属塩としては、モノ金属塩、ジ金属塩、トリ金属塩などが含まれる。
【0076】
また、上記のリン化合物の中でも、金属塩の金属部分が、Li、Na、K、Be、Mg、Sr、Ba、Mn、Ni、Cu、Znから選択されたものを用いると、触媒活性の向上効果が大きく好ましい。これらのうち、Li、Na、Mgが特に好ましい。
【0077】
前記のリンの金属塩化合物として、下記一般式(30)で表される化合物から選択される少なくとも一種を用いると、触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0078】
【化30】
【0079】
(式(30)中、R1は水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R2は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R3は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基またはカルボニルを含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。lは1以上の整数、mは0または1以上の整数を表し、(l+m)は4以下である。Mは(l+m)価の金属カチオンを表す。nは1以上の整数を表す。炭化水素基はシクロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0080】
上記のR1としては、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、9−アンスリル、4−ビフェニル、2−ビフェニルなどが挙げられる。上記のR2としては例えば、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、長鎖の脂肪族基、フェニル基、ナフチル基、置換されたフェニル基やナフチル基、−CH2CH2OHで表される基などが挙げられる。R3O-としては例えば、水酸化物イオン、アルコラートイオン、アセテートイオンやアセチルアセトンイオンなどが挙げられる。
【0081】
上記一般式(30)で表される化合物の中でも、下記一般式(31)で表される化合物から選択される少なくとも一種を用いることが好ましい。
【0082】
【化31】
【0083】
(式(31)中、R1は水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R3は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基またはカルボニルを含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。lは1以上の整数、mは0または1以上の整数を表し、(l+m)は4以下である。Mは(l+m)価の金属カチオンを表す。炭化水素基はシクロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0084】
上記のR1としては、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、9−アンスリル、4−ビフェニル、2−ビフェニルなどが挙げられる。R3O-としては例えば、水酸化物イオン、アルコラートイオン、アセテートイオンやアセチルアセトンイオンなどが挙げられる。
【0085】
上記のリン化合物の中でも、芳香環構造を有する化合物を用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0086】
上記式(31)の中でも、Mが、Li、Na、K、Be、Mg、Sr、Ba、Mn、Ni、Cu、Znから選択されたものを用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。これらのうち、Li、Na、Mgがとくに好ましい。
【0087】
前記のリンの金属塩化合物としては、リチウム[(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、ナトリウム[(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、カリウム[(2−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[(2−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、リチウム[ベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[ベンジルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[ベンジルホスホン酸エチル]、ベリリウムビス[ベンジルホスホン酸エチル]、ストロンチウムビス[ベンジルホスホン酸エチル]、マンガンビス[ベンジルホスホン酸エチル]、ベンジルホスホン酸ナトリウム、マグネシウムビス[ベンジルホスホン酸]、ナトリウム[(9−アンスリル)メチルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[(9−アンスリル)メチルホスホン酸エチル]、ナトリウム[4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[4−クロロベンジルホスホン酸フェニル]、マグネシウムビス[4−クロロベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[4−アミノベンジルホスホン酸メチル]、マグネシウムビス[4−アミノベンジルホスホン酸メチル]、フェニルホスホン酸ナトリウム、マグネシウムビス[フェニルホスホン酸エチル]、亜鉛ビス[フェニルホスホン酸エチル]などが挙げられる。
【0088】
これらの中で、リチウム[(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、ナトリウム[(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、リチウム[ベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[ベンジルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[ベンジルホスホン酸エチル]、ベンジルホスホン酸ナトリウム、マグネシウムビス[ベンジルホスホン酸]が特に好ましい。
【0089】
前記の重縮合触媒を構成する別の好ましいリン化合物であるリンの金属塩化合物は、下記一般式(32)で表される化合物から選択される少なくとも一種からなるものである。
【0090】
【化32】
【0091】
(式(32)中、R1、R2はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜30の炭化水素基を表す。R3は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R4は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基またはカルボニルを含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R4O-としては例えば、水酸化物イオン、アルコラートイオン、アセテートイオンやアセチルアセトンイオンなどが挙げられる。lは1以上の整数、mは0または1以上の整数を表し、(l+m)は4以下である。Mは(l+m)価の金属カチオンを表す。nは1以上の整数を表す。炭化水素基はシクロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0092】
これらの中でも、下記一般式(33)で表される化合物から選択される少なくとも一種を用いることが好ましい。
【0093】
【化33】
【0094】
(式(33)中、Mn+はn価の金属カチオンを表す。nは1、2、3または4を表す。)
【0095】
上記式(32)または(33)の中でも、Mが、Li、Na、K、Be、Mg、Sr、Ba、Mn、Ni、Cu、Znから選択されたものを用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。これらのうち、Li、Na、Mgが特に好ましい。
【0096】
前記の特定のリンの金属塩化合物としては、リチウム[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸]、カリウム[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸]、ベリリウムビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸メチル]、ストロンチウムビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、バリウムビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸フェニル]、マンガンビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、ニッケルビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、銅ビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、亜鉛ビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]などが挙げられる。これらの中で、リチウム[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]が特に好ましい。
【0097】
本発明の別の実施形態は、リン化合物のアルミニウム塩から選択される少なくとも一種を含むことを特徴とするポリエステル重合触媒である。リン化合物のアルミニウム塩に他のアルミニウム化合物やリン化合物やフェノール系化合物などを組み合わせて使用しても良い。
【0098】
前記の重縮合触媒を構成する好ましい成分であるリン化合物のアルミニウム塩とは、アルミニウム部を有するリン化合物であれば特に限定はされないが、ホスホン酸系化合物のアルミニウム塩を用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。リン化合物のアルミニウム塩としては、モノアルミニウム塩、ジアルミニウム塩、トリアルミニウム塩などが含まれる。
【0099】
上記リン化合物のアルミニウム塩の中でも、芳香環構造を有する化合物を用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0100】
上記の重合触媒を構成するリン化合物のアルミニウム塩としては、下記一般式(34)で表される化合物から選択される少なくとも一種を用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0101】
【化34】
【0102】
(式(34)中、R1は水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R2は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R3は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基またはカルボニルを含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。lは1以上の整数、mは0または1以上の整数を表し、(l+m)は3である。nは1以上の整数を表す。炭化水素基はシクロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0103】
上記のR1としては、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、9−アンスリル、4−ビフェニル、2−ビフェニルなどが挙げられる。上記のR2としては例えば、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、長鎖の脂肪族基、フェニル基、ナフチル基、置換されたフェニル基やナフチル基、−CH2CH2OHで表される基などが挙げられる。上記のR3O-としては例えば、水酸化物イオン、アルコラートイオン、エチレングリコラートイオン、アセテートイオンやアセチルアセトンイオンなどが挙げられる。
【0104】
前記のリン化合物のアルミニウム塩としては、(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチルのアルミニウム塩、(1−ナフチル)メチルホスホン酸のアルミニウム塩、(2−ナフチル)メチルホスホン酸エチルのアルミニウム塩、ベンジルホスホン酸エチルのアルミニウム塩、ベンジルホスホン酸のアルミニウム塩、(9−アンスリル)メチルホスホン酸エチルのアルミニウム塩、4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチルのアルミニウム塩、2−メチルベンジルホスホン酸エチルのアルミニウム塩、4−クロロベンジルホスホン酸フェニルのアルミニウム塩、4−アミノベンジルホスホン酸メチルのアルミニウム塩、4−メトキシベンジルホスホン酸エチルのアルミニウム塩、フェニルホスホン酸エチルのアルミニウム塩などが挙げられる。
【0105】
これらの中で、(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチルのアルミニウム塩、ベンジルホスホン酸エチルのアルミニウム塩が特に好ましい。
【0106】
また、別の実施形態は、下記一般式(35)で表されるリン化合物のアルミニウム塩から選択される少なくとも一種からなるポリエステル重合触媒である。リン化合物のアルミニウム塩に、他のアルミニウム化合物やリン化合物やフェノール系化合物などを組み合わせて使用しても良い。
【0107】
【化35】
【0108】
(式(35)中、R1、R2はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜30の炭化水素基を表す。R3は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R4は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基またはカルボニルを含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。lは1以上の整数、mは0または1以上の整数を表し、(l+m)は3である。nは1以上の整数を表す。炭化水素基はシクロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0109】
これらの中でも、下記一般式(36)で表される化合物から選択される少なくとも一種を用いることが好ましい。
【0110】
【化36】
【0111】
(式(36)中、R3は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R4は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基またはカルボニルを含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。lは1以上の整数、mは0または1以上の整数を表し、(l+m)は3である。炭化水素基はシクロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0112】
上記のR3としては、例えば、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、長鎖の脂肪族基、フェニル基、ナフチル基、置換されたフェニル基やナフチル基、−CH2CH2OHで表される基などが挙げられる。上記のR4O-としては、例えば、水酸化物イオン、アルコラートイオン、エチレングリコラートイオン、アセテートイオンやアセチルアセトンイオンなどが挙げられる。
【0113】
前記のリン化合物のアルミニウム塩としては、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチルのアルミニウム塩、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸メチルのアルミニウム塩、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸イソプロピルのアルミニウム塩、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸フェニルのアルミニウム塩、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸のアルミニウム塩などが挙げられる。
【0114】
これらの中で、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチルのアルミニウム塩、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸メチルのアルミニウム塩が特に好ましい。
【0115】
また、前記リン化合物としてP−OH結合を少なくとも一つ有するリン化合物を用いることが好ましい。P−OH結合を少なくとも一つ有するリン化合物とは、分子内にP−OHを少なくとも一つ有するリン化合物であれば特に限定はされない。これらのリン化合物の中でも、P−OH結合を少なくとも一つ有するホスホン酸系化合物を用いると、触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0116】
上記のリン化合物の中でも、芳香環構造を有する化合物を用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0117】
前記の重縮合触媒を構成するP−OH結合を少なくとも一つ有するリン化合物として、下記一般式(37)で表される化合物から選択される少なくとも一種を用いると、触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0118】
【化37】
【0119】
(式(37)中、R1は水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R2は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。nは1以上の整数を表す。炭化水素基はシクロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0120】
上記のR1としては、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、9−アンスリル、4−ビフェニル、2−ビフェニルなどが挙げられる。上記のR2としては例えば、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、長鎖の脂肪族基、フェニル基、ナフチル基、置換されたフェニル基やナフチル基、−CH2CH2OHで表される基などが挙げられる。
【0121】
上記のリン化合物の中でも、芳香環構造を有する化合物を用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0122】
P−OH結合を少なくとも一つ有するリン化合物としては、(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル、(1−ナフチル)メチルホスホン酸、(2−ナフチル)メチルホスホン酸エチル、ベンジルホスホン酸エチル、ベンジルホスホン酸、(9−アンスリル)メチルホスホン酸エチル、4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル、2−メチルベンジルホスホン酸エチル、4−クロロベンジルホスホン酸フェニル、4−アミノベンジルホスホン酸メチル、4−メトキシベンジルホスホン酸エチルなどが挙げられる。これらの中で、(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル、ベンジルホスホン酸エチルが特に好ましい。
【0123】
また、好ましいリン化合物としては、P−OH結合を少なくとも一つ有する特定のリン化合物が挙げられる。重縮合触媒を構成する好ましいリン化合物であるP−OH結合を少なくとも一つ有する特定のリン化合物とは、下記一般式(38)で表される化合物から選択される少なくとも一種の化合物のことを意味する。
【0124】
【化38】
【0125】
(式(38)中、R1、R2はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜30の炭化水素基を表す。R3は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。nは1以上の整数を表す。炭化水素基はシクロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0126】
これらの中でも、下記一般式(39)で表される化合物から選択される少なくとも一種を用いることが好ましい。
【0127】
【化39】
【0128】
(式(39)中、R3は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。炭化水素基はシクロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0129】
上記のR3としては、例えば、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、長鎖の脂肪族基、フェニル基、ナフチル基、置換されたフェニル基やナフチル基、−CH2CH2OHで表される基などが挙げられる。
【0130】
前記のP−OH結合を少なくとも一つ有する特定のリン化合物としては、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸メチル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸イソプロピル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸フェニル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸オクタデシル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸などが挙げられる。これらの中で、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸メチルが特に好ましい。
【0131】
好ましいリン化合物としては、化学式(40)であらわされるリン化合物が挙げられる。
【0132】
【化40】
【0133】
(式(40)中、R1は炭素数1〜49の炭化水素基、または水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基を含む炭素数1〜49の炭化水素基を表し、R2、R3はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。炭化水素基は脂環構造や分岐構造や芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0134】
また、更に好ましくは、化学式(40)中のR1、R2、R3の少なくとも一つが芳香環構造を含む化合物である。
【0135】
前記リン化合物の具体例を以下に示す。
【0136】
【化41】
【0137】
【化42】
【0138】
【化43】
【0139】
【化44】
【0140】
【化45】
【0141】
【化46】
【0142】
また、前記リン化合物は、分子量が大きいものの方が重合時に留去されにくいためより好ましい。
【0143】
重縮合触媒として使用することが好ましい別のリン化合物は、下記一般式(47)で表される化合物から選ばれる少なくとも一種のリン化合物である。
【0144】
【化47】
【0145】
(上記式(47)中、R1、R2はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜30の炭化水素基を表す。R3、R4はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。nは1以上の整数を表す。炭化水素基はシクロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0146】
上記一般式(47)の中でも、下記一般式(48)で表される化合物から選択される少なくとも一種を用いると触媒活性の向上効果が高く好ましい。
【0147】
【化48】
【0148】
(上記式(48)中、R3、R4はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。炭化水素基はシクロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0149】
上記のR3、R4としては例えば、水素、メチル基、ブチル基等の短鎖の脂肪族基、オクタデシル等の長鎖の脂肪族基、フェニル基、ナフチル基、置換されたフェニル基やナフチル基等の芳香族基、−CH2CH2OHで表される基などが挙げられる。
【0150】
前記の特定のリン化合物としては、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジイソプロピル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジ−n−ブチル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジオクタデシル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジフェニルなどが挙げられる。
【0151】
これらの中で、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジオクタデシル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジフェニルが特に好ましい。
【0152】
重縮合触媒として使用することが好ましい別のリン化合物は、化学式(49)、化学式(50)で表される化合物から選ばれる少なくとも一種のリン化合物である。
【0153】
【化49】
【0154】
【化50】
【0155】
上記の化学式(49)で示される化合物としては、Irganox1222(チバ・スペシャルティーケミカルズ社製)が市販されている。また、化学式(50)にて示される化合物としては、Irganox1425(チバ・スペシャルティーケミカルズ社製)が市販されている。
【0156】
リン化合物は、一般に酸化防止剤としてはよく知られていたが、これらのリン化合物を従来の金属含有ポリエステル重合触媒と組み合わせて使用しても、溶融重合を大きく促進することは知られていない。実際に、ポリエステル重合の代表的な触媒であるアンチモン化合物、チタン化合物、スズ化合物あるいはゲルマニウム化合物を重合触媒としてポリエステルを溶融重合する際に、リン化合物を添加しても、実質的に有用なレベルまで重合が促進されることは認められない。
【0157】
すなわち、前記のリン化合物を併用することにより、ポリエステル重合触媒中のアルミニウムの含有量が少量でも、十分な触媒活性を発揮することができる。
【0158】
前記のリン化合物の添加量は、ポリエステルを構成するジカルボン酸成分の全構成ユニットのモル数に対して、0.0001〜0.1モル%が好ましく、0.005〜0.05モル%であることがさらに好ましい。リン化合物の添加量が0.0001モル%未満の場合には添加効果が発揮されない場合がある。一方、0.1モル%を超えて添加すると、逆にポリエステル重合触媒としての触媒活性が低下する場合がある。また、その低下の傾向は、アルミニウムの添加量等により変化する。
【0159】
リン化合物を使用せず、アルミニウム化合物を主たる触媒成分とし、アルミニウム化合物の添加量を低減し、さらにコバルト化合物を添加することにより、アルミニウム化合物を主触媒とした場合の熱安定性の低下による着色を防止することが検討されているが、コバルト化合物を十分な触媒活性を有する程度に添加するとやはり熱安定性が低下する。従って、この技術では両者を両立することは困難である。
【0160】
前記の特定の化学構造を有するリン化合物の使用により、熱安定性の低下、異物発生等の問題を起こさず、しかも金属含有成分のアルミニウムとしての添加量が少量でも十分な触媒効果を有する重縮合触媒が得られ、この重縮合触媒により重合したポリエステルを使用することにより、溶融成形後のポリエステルフィルムの熱安定性が改善される。
【0161】
また、前記リン化合物に代えてリン酸やトリメチルリン酸等のリン酸エステルを添加しても、前記添加効果は見られない。さらに、前記のリン化合物を前記好ましい添加量の範囲で、従来のアンチモン化合物、チタン化合物、スズ化合物、ゲルマニウム化合物等の金属含有ポリエステル重縮合触媒と組み合わせて使用しても、溶融重合反応を促進する効果は認められない。
【0162】
一方、本発明においてアルミニウムもしくはその化合物に加えて少量のアルカリ金属、アルカリ土類金属並びにその化合物から選択される少なくとも1種を第2金属含有成分として共存させることも好ましい態様である。かかる第2金属含有成分を触媒系に共存させることは、ジエチレングリコールの生成を抑制する効果に加えて触媒活性を高め、従って反応速度をより高めた触媒成分が得られ、生産性向上に有効である。
【0163】
アルミニウム化合物にアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を添加して十分な触媒活性を有する触媒とする技術は公知である。かかる公知の触媒を使用すると熱安定性に優れたポリエステルが得られるが、アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を併用した公知の触媒は、実用的な触媒活性を得ようとすると、触媒添加量を多くする必要がある。
【0164】
アルカリ金属化合物を併用した場合、それに起因する異物量が多くなり、フィルム製造時の溶融押出し工程でフィルター交換頻度が短くなったり、フィルム欠点が増加する傾向がある。
【0165】
また、アルカリ土類金属化合物を併用した場合には、実用的な活性を得ようとすると、得られたポリエステルの熱安定性や熱酸化安定性が低下し、加熱による着色が大きく、異物の発生量も多くなる。
【0166】
アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの化合物を添加する場合、その添加量M(モル%)は、ポリエステルを構成する全ポリカルボン酸ユニットのモル数に対して、1×10- 6以上0.1モル%未満であることが好ましく、より好ましくは5×10- 6〜0.05モル%であり、さらに好ましくは1×10- 5〜0.03モル%であり、特に好ましくは、1×10- 5〜0.01モル%である。
【0167】
すなわち、アルカリ金属やアルカリ土類金属の添加量が少量であるため、熱安定性低下、異物の発生、着色等の問題を発生させることなく、反応速度を高めることが可能である。また、耐加水分解性の低下等の問題を発生させることもない。
【0168】
アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの化合物の添加量Mが0.1モル%以上になると熱安定性の低下、異物発生や着色の増加、耐加水分解性の低下等が製品加工上問題となる場合が発生する。Mが1×10-6モル%未満では、添加してもその効果が明確ではない。
【0169】
前記アルミニウムもしくはその化合物に加えて使用することが好ましい第2金属含有成分を構成するアルカリ金属、アルカリ土類金属としては、Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Baから選択される少なくとも1種であることが好ましく、アルカリ金属ないしその化合物の使用がより好ましい。
【0170】
アルカリ金属ないしその化合物を使用する場合、アルカリ金属としては、特にLi、Na、Kが好ましい。アルカリ金属やアルカリ土類金属の化合物としては、例えば、これら金属のギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、蓚酸などの飽和脂肪族カルボン酸塩、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和脂肪族カルボン酸塩、安息香酸などの芳香族カルボン酸塩、トリクロロ酢酸などのハロゲン含有カルボン酸塩、乳酸、クエン酸、サリチル酸などのヒドロキシカルボン酸塩、炭酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホスホン酸、炭酸水素、リン酸水素、硫化水素、亜硫酸、チオ硫酸、塩酸、臭化水素酸、塩素酸、臭素酸などの無機酸塩、1−プロパンスルホン酸、1−ペンタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸などの有機スルホン酸塩、ラウリル硫酸などの有機硫酸塩、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、iso−プロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシなどのアルコキサイド、アセチルアセトネートなどとのキレート化合物、水素化物、酸化物、水酸化物などが挙げられる。
【0171】
これらのアルカリ金属、アルカリ土類金属またはそれらの化合物のうち、水酸化物等のアルカリ性の強いものを用いる場合、これらはエチレングリコール等のジオールもしくはアルコール等の有機溶媒に溶解しにくい傾向があるため、水溶液で重合系に添加しなければならず重合工程上問題となる場合が有る。
【0172】
さらに、水酸化物等のアルカリ性の強いものを用いた場合、重合時にポリエステルが加水分解等の副反応を受けやすくなるとともに、重合したポリエステルは着色しやすくなる傾向があり、耐加水分解性も低下する傾向がある。
【0173】
従って、前記のアルカリ金属またはその化合物、アルカリ土類金属またはその化合物として好適なものは、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の飽和脂肪族カルボン酸塩、不飽和脂肪族カルボン酸塩、芳香族カルボン塩、ハロゲン含有カルボン酸塩、ヒドロキシカルボン酸塩、硫酸、硝酸、リン酸、ホスホン酸、リン酸水素、硫化水素、亜硫酸、チオ硫酸、塩酸、臭化水素酸、塩素酸、臭素酸から選ばれる無機酸塩、有機スルホン酸塩、有機硫酸塩、キレート化合物、および酸化物である。これらの中でもさらに、取り扱い易さや入手のし易さ等の観点から、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の飽和脂肪族カルボン酸塩、特に酢酸塩の使用が好ましい。
【0174】
本発明の光学用被覆フィルムの支持体の主たる構成成分であるポリエステルは、熱安定性パラメータ(TS)が下記式を満たすことが好ましく、より好ましくは0.25以下、特に好ましくは0.20以下である。TSが0.30未満のポリエステルを用いることにより、フィルムを製造する際の溶融押出し工程における熱安定性に優れ、着色や異物の発生の少ないポリエステルフィルムが得られる。
(1)TS<0.30
【0175】
TSは下記方法により算出する。
固有粘度([IV]i )が約0.65dl/gのポリエステル1gをガラス試験管に入れ、130℃で12時間真空乾燥する。次いで、非流通窒素雰囲気下で300℃にて2時間溶融状態に維持した後、サンプルを取り出し冷凍粉砕する。それを真空乾燥後、固有粘度([IV]f )を測定する。例えば、ポリエステルがポリエチレンテレフタレートの場合には、次式により計算することができる。
TS=0.245{[IV]f -1.47 −[IV]i -1.47 }
【0176】
非流通窒素雰囲気とは、流通しない窒素雰囲気を意味し、例えば、レジンチップを入れたガラス試験管を真空ラインに接続し、減圧と窒素封入を5回以上繰り返した後に100Torrとなるように窒素を封入して封管した状態である。
【0177】
また、本発明で使用するポリエステルは、熱酸化安定性パラメータ(TOS)が下記式(2)を満たすことが好ましく、より好ましくは0.09以下、さらに好ましくは0.08以下である。
(2)TOS<0.10
【0178】
TOSは下記方法により算出する。
固有粘度([IV]i )が約0.65dl/gの溶融重合して得られたポリエステルレジンチップを冷凍粉砕し、20メッシュ以下の粉末にする。その粉末を130℃で12時間真空乾燥し、0.3gをガラス試験管に入れる。次いで、70℃で12時間真空乾燥し、さらにシリカゲルで乾燥した空気下で230℃、15分間加熱した後、固有粘度([IV]f 1 )を測定する。例えば、ポリエステルがポリエチレンテレフタレートの場合には、次式により計算することができる。
TOS=0.245{[IV]f1 -1.47−[IV]i -1.47 }
上記式において、[IV]i および[IV]f1はそれぞれ加熱試験前と加熱試験後のIV(dl/g)を指す。
【0179】
シリカゲルで乾燥した空気下で加熱する方法としては、例えば、シリカゲルを入れた乾燥管をガラス試験管上部に接続し、乾燥した空気下で加熱する方法が例示できる。
【0180】
また、本発明に使用するポリエステルは、耐加水分解性パラメータ(HS)が下記式(3)を満たすことが好ましく、より好ましくは0.09以下、特に好ましくは0.085以下である。
(3)HS<0.10
【0181】
HSは下記方法により算出する。
固有粘度が約0.65dl/g(試験前:[IV]i )の溶融重合して得られるポリエステルチップを冷凍粉砕し20メッシュ以下の粉末にする。130℃で12時間真空乾燥した後、その1gを純水100mlと共にビーカーに入れる。密閉系にして、130℃で加熱、加圧した条件下で6時間撹拌した後、固有粘度([IV]f2)を測定する。例えば、ポリエステルがポリエチレンテレフタレートの場合には、次式により計算することができる。
HS=0.245×{[IV]f2 -1.47−[IV]i -1.47 }
【0182】
HSの測定に使用するビーカーは、酸やアルカリの溶出のないものを使用する。具体的には、ステンレスビーカー、石英ビーカーの使用が好ましい。
【0183】
また、本発明に使用するポリエステルは、ポリエステルの溶液ヘイズ値(SH)が下記式(4)を満たすことが好ましく、より好ましくは2.0以下、さらに好ましくは1.0以下である。
(4)SH<3.0(%)
【0184】
SHは下記方法により算出する。
固有粘度が約0.65dl/gの溶融重合したポリエステルレジンチップをp−クロロフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタンの3/1混合溶媒(重量比)に溶解して8g/100mlの溶液とする。セル長1cmのセルに、前記溶液を充填し、ヘイズメータを用いて、溶液ヘイズ値を測定する。
【0185】
前記の、TS、TOS、HS、SHを測定するために使用するポリエステルレジンチップは、溶融重合後、溶融状態からの急冷によって作製されたものを使用する。これらの測定に用いるレジンチップの形状としては、例えば、長さ約3mm、直径約2mmのシリンダー形状のレジンチップを使用する。
【0186】
また、カラー測定を行う場合は、レジンチップは、溶融重合工程を経た後、溶融状態からの急冷によって作製された実質的に非晶のものを使用する。実質的に非晶のレジンチップを得る方法としては、例えば、溶融重合後反応系からポリマーを取り出す際に、反応系の吐出口からポリマーを吐出させた直後に冷水にて急冷し、その後十分な時間冷水中で保持した後チップ状にカットして得る方法などが例示できる。
【0187】
このようにして得られたレジンチップは、外観上、結晶化による白化は認められず透明なものが得られる。このようにして得られたレジンチップは、約一昼夜室温にて濾紙等の上で風乾した後、カラー測定に使用される。上記の操作の後も、レジンチップは外観上、結晶化による白化は認められず透明なままである。なお、カラー測定用のレジンチップには二酸化チタン等の外観に影響を及ぼす添加剤は一切使用しない。カラー測定用に用いるレジンチップの形状としては、例えば、長さ約3mm、直径約2mmのシリンダー形状のレジンチップを使用する。
【0188】
本発明で使用するポリエステルには、さらに、コバルト化合物をコバルト原子としてポリエステルに対して10ppm未満の量で添加することが好ましい態様である。
【0189】
コバルト化合物はそれ自体ある程度の重合活性を有していることは知られている。しかしながら、前記のように十分な触媒効果を発揮する程度に添加すると、得られるポリエステルフィルムの色調の低下や熱安定性の低下が起こる。
【0190】
本発明で用いるポリエステルは、色調及び熱安定性が良好であるが、コバルト化合物を上記のような少量で、かつ添加による触媒効果が明確でないような添加量にて添加することにより、得られるポリエステルの色調の低下を起こすことなく、着色をさらに効果的に消去できる。
【0191】
前記コバルト化合物の添加する目的は、着色を消去することにあり、添加時期は重合工程のどの段階であってもよく、重合反応終了後であってもかまわない。
【0192】
コバルト化合物の種類に特に限定はないが、例えば、酢酸コバルト、硝酸コバルト、塩化コバルト、コバルトアセチルアセトネート、ナフテン酸コバルトおよびそれらの水和物等が挙げられる。その中でも、特に酢酸コバルト四水塩が好ましい。
【0193】
コバルト化合物の添加量は、最終的に得られるポリエステルに対して、アルミニウム原子とコバルト原子の合計量が50ppm以下で、かつコバルト原子の量は10ppm未満とすることが好ましい。より好ましくは、アルミニウム原子とコバルト原子の合計量が40ppm以下で、かつコバルト原子の量は8ppm以下、さらに好ましくはアルミニウム原子とコバルト原子の合計量が25ppm以下で、かつコバルト原子は5ppm以下である。
【0194】
ポリエステルの熱安定性の点から、アルミニウム原子とコバルト原子の合計量が50ppmより少ないこと、コバルト原子の量が10ppm以下であることが好ましい。また、十分な触媒活性を有するためには、アルミニウム原子とコバルト原子の合計量が0.01ppmより多いことが好ましい。
【0195】
本発明で用いるポリエステルは、ポリエステル重合触媒として前記の特定の触媒を用いる以外は、従来公知の製造方法で行うことができる。例えば、PETを製造する場合は、テレフタル酸とエチレングリコールとをエステル化反応させた後重縮合する方法、もしくはテレフタル酸ジメチルなどのテレフタル酸のアルキルエステルとエチレングリコールとのエステル交換反応を行った後重縮合する方法、のいずれの方法でも行うことができる。また、重合装置は、回分式であっても、連続式であってもよい。
【0196】
本発明で用いるポリエステルの触媒は、重合反応のみならずエステル化反応およびエステル交換反応にも触媒活性を有する。例えば、テレフタル酸ジメチルなどのジカルボン酸のアルキルエステルとエチレングリコールなどのグリコールとのエステル交換反応による重合は、通常チタン化合物や亜鉛化合物などのエステル交換触媒の存在下で行われるが、これらの触媒に代えて、もしくはこれらの触媒に共存させて本発明の請求項に記載の触媒を用いることもできる。また、前記の触媒は、溶融重合のみならず固相重合や溶液重合においても触媒活性を有しており、いずれの方法によってもポリエステルフィルムの主たる構成成分であるポリエステルを製造することが可能である。
【0197】
本発明で用いるポリエステルの重合触媒は、重合反応の任意の段階で反応系に添加することができる。例えば、エステル化反応もしくはエステル交換反応の開始前および反応途中の任意の段階、重縮合反応の開始直前、あるいは重縮合反応途中の任意の段階で、反応系への添加することが出きる。特に、アルミニウムないしその化合物は重縮合反応の開始直前に添加することが好ましい。
【0198】
本発明で用いるポリエステルの重縮合触媒の添加方法は、特に限定されないが、粉末状もしくはニート状での添加であってもよいし、エチレングリコールなどの溶媒のスラリー状もしくは溶液状での添加であってもよい。また、アルミニウム金属もしくはその化合物と他の成分、好ましくは本発明のフェノール系化合物もしくはリン化合物とを予め混合したものを添加してもよいし、これらを別々に添加してもよい。また、アルミニウム金属もしくはその化合物と他の成分、好ましくはフェノール系化合物もしくはリン化合物とを同じ添加時期に重合系に添加しても良いし、それぞれを異なる添加時期に添加してもよい。
【0199】
本発明で用いるポリエステルの重縮合触媒は、アンチモン化合物、チタン化合物、ゲルマニウム化合物、スズ化合物等の他の重合触媒を、ポリエステルの特性、加工性、色調等製品に問題が生じない範囲内において、適量共存させて用いることは、重合時間の短縮による生産性を向上させる際に有利であり、好ましい。
【0200】
具体的には、アンチモン化合物の添加量は、重合して得られるポリエステルに対してアンチモン原子換算で50ppm以下とすることが好ましく、より好ましくは30ppm以下の量である。アンチモン原子換算量が50ppmを超えると、金属アンチモンの析出が起こり、ポリエステルが黒っぽくなり外観上好ましくない。また、金属アンチモンに起因する異物が増加し、特に欠点に対する要求が厳しい用途では好ましくない。
【0201】
チタン化合物の添加量は、重合して得られるポリエステルに対してチタン原子換算で10ppm以下の量とすることが好ましく、より好ましくは5ppm以下、さらに好ましくは2ppm以下である。チタン原子換算量が10ppmを超えると、得られるレジンの熱安定性が著しく低下する。
【0202】
ゲルマニウム化合物の添加量は、重合して得られるポリエステルに対してゲルマニウム原子換算量で20ppm以下とすることが好ましく、より好ましくは10ppm以下である。ゲルマニウム原子換算量が20ppmを超えると、コスト的に不利となるため好ましくない。
【0203】
本発明で用いるポリエステルを重合する際には、本願請求項に記載の触媒に加え、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物、スズ化合物を1種又は2種以上を使用することができる。
【0204】
前記アンチモン化合物、チタン化合物、ゲルマニウム化合物およびスズ化合物の種類は特に限定はない。
【0205】
具体的には、アンチモン化合物としては、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酢酸アンチモン、アンチモングリコキサイドなどが挙げられ、これらのうち三酸化アンチモンが好ましい。
【0206】
また、チタン化合物としては、テトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトライソブチルチタネート、テトラ−tert−ブチルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラフェニルチタネート、蓚酸チタン等が挙げられ、これらのうちテトラ−n−ブトキシチタネートが好ましい。
【0207】
さらに、ゲルマニウム化合物としては二酸化ゲルマニウム、四塩化ゲルマニウムなどが挙げられ、これらのうち二酸化ゲルマニウムが好ましい。
【0208】
スズ化合物としては、ジブチルスズオキサイド、メチルフェニルスズオキサイド、テトラエチルスズ、ヘキサエチルジスズオキサイド、トリエチルスズハイドロオキサイド、モノブチルヒドロキシスズオキサイド、トリイソブチルスズアデテート、ジフェニルスズジラウレート、モノブチルスズトリクロライド、ジブチルスズサルファイド、ジブチルヒドロキシスズオキサイド、メチルスタンノン酸、エチルスタンノン酸などが挙げられ、特にモノブチルヒドロキシスズオキサイドの使用が好ましい。
【0209】
本発明でフィルム原料として使用するポリエステルとは、ジカルボン酸を含む多価カルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体から選ばれる一種または二種以上とグリコールを含む多価アルコールから選ばれる一種または二種以上とから成るもの、またはヒドロキシカルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体からなるもの、または環状エステルからなるものをいう。
【0210】
好ましいポリエステルとしては、主たる酸成分がテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体、もしくはナフタレンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体であり、主たるグリコール成分がアルキレングリコールであるポリエステルである。
【0211】
主たる酸成分がテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体もしくはナフタレンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体であるポリエステルとは、全酸成分に対してテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体とナフタレンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を合計して70モル%以上含有するポリエステルであることが好ましく、より好ましくは80モル%以上含有するポリエステルであり、さらに好ましくは90モル%以上含有するポリエステルである。
【0212】
主たるグリコール成分がアルキレングリコールであるポリエステルとは、全グリコール成分に対してアルキレングリコールを合計して70モル%以上含有するポリエステルであることが好ましく、より好ましくは80モル%以上含有するポリエステルであり、さらに好ましくは90モル%以上含有するポリエステルである。
【0213】
ジカルボン酸としては、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、 テトラデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、1,3−シクロブタンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5−ノルボルナンジカルボン酸、ダイマー酸などに例示される飽和脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸などに例示される不飽和脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、5−(アルカリ金属)スルホイソフタル酸、ジフェニン酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルエーテルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−p,p’−ジカルボン酸、パモイン酸、アントラセンジカルボン酸などに例示される芳香族ジカルボン酸、またはこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。
【0214】
これらのジカルボン酸のうち、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、またはこれらのエステル形成性誘導体が好ましい。
【0215】
ナフタレンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体としては、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、またはこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。
【0216】
特に好ましくは、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体である。必要に応じて、他のジカルボン酸を構成成分としてもよい。
【0217】
これらジカルボン酸以外の多価カルボン酸として、エタントリカルボン酸、プロパントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0218】
グリコールとしては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジエタノール、1,10−デカメチレングリコール、1,12−ドデカンジオールなどのアルキレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどに例示される脂肪族グリコール、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビスフェノール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、1,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、ビスフェノールA、ビスフェノールC、2,5−ナフタレンジオール、これらのグリコールにエチレンオキシドが付加したグリコール、などに例示される芳香族グリコールが挙げられる。
【0219】
これらのグリコールのうち、アルキレングリコールが好ましく、さらに好ましくは、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールである。また、前記アルキレングリコールは、分子鎖中に置換基や脂環構造を含んでいても良く、同時に2種以上を使用しても良い。
【0220】
これらグリコール以外の多価アルコールとして、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセロール、ヘキサントリオールなどが挙げられる。
【0221】
ヒドロキシカルボン酸としては、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、ヒドロキシ酢酸、3−ヒドロキシ酪酸、p−ヒドロキシ安息香酸、p−( 2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸、4−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸、またはこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0222】
環状エステルとしては、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、β−メチル−β−プロピオラクトン、δ−バレロラクトン、グリコリド、ラクチドなどが挙げられる。
【0223】
多価カルボン酸もしくはヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体としては、これらのアルキルエステル、酸クロライド、酸無水物などが挙げられる。
【0224】
本発明で用いるポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリプロピレンナフタレートおよびこれらの共重合体が好ましく、特に好ましくはポリエチレンテレフタレートおよびこの共重合体である。
【0225】
また、本発明で用いるポリエステルには、公知のリン化合物を共重合成分として含むことができる。リン系化合物としては二官能性リン系化合物が好ましく、例えば(2−カルボキシルエチル)メチルホスフィン酸、(2−カルボキシエチル)フェニルホスフィン酸、9,10−ジヒドロ−10−オキサ−(2,3−カルボキシプロピル)−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイドなどが挙げられる。これらのリン系化合物を共重合成分として含むことで、得られるポリエステルの難燃性等を向上させることが可能である。
【0226】
また、ポリエステルを重合した後に、得られたポリエステルから触媒を除去するか、またはリン系化合物などの添加によって触媒を失活させることによって、ポリエステルの熱安定性をさらに高めることができる。
【0227】
本発明で用いるポリエステル中には、使用する目的に応じて、無機粒子、耐熱性高分子粒子、架橋高分子粒子などの不活性粒子、蛍光増白剤、紫外線防止剤、赤外線吸収色素、熱安定剤、界面活性剤、酸化防止剤などの各種添加剤を1種もしくは2種以上含有させることができる。酸化防止剤としては、芳香族アミン系、フェノール系などの酸化防止剤が使用可能であり、安定剤としては、リン酸やリン酸エステル系等のリン系、イオウ系、アミン系などの安定剤が使用可能である。
【0228】
しかしながら、本願発明においては、フィルムの透明性を低下させるような添加剤は可能な限り使用しないことが好ましく、基材ポリエステルフィルム中には粒子を実質上含有させないことが透明性の点で特に好ましい実施形態である。粒子を実質上含有しないとは、原子吸光分析法や発光分析法など予め他の化学分析法で定量分析して作成した蛍光X線分析法の検量線を用いて粒子に起因する元素を定量した際に、その含有量が検出限界以下となることを意味する。
【0229】
しかしながら、例えばエステル交換触媒に用いられる酢酸カルシウムと炭酸カルシウム粒子、燐酸カルシウム粒子などでは、元素としてカルシウムが共通しており、カルシウム元素が触媒なのか粒子なのかの判別が困難な場合がある。このような場合には、ポリエステル樹脂またはポリエステルフィルムをヘキサフルオロイソプロパノール/クロロホルム(=2/3;体積比)で溶解し、次いで遠心分離して粒子を分離した後、デカンテーションを行い、原子吸光分析法や発光分析法などで上澄み液中の触媒起因のカルシウム元素量を定量する。そして、ポリエステル中の総カルシウム含有量と触媒に用いたカルシウム元素量との差異より、粒子起因のカルシウム元素量を算出することができる。
【0230】
また、ポリエステル樹脂の固有粘度は、0.45〜0.80dl/gの範囲が好ましい。固有粘度が0.45dl/g未満であると、フィルム製造時に破断が多発しやすくなる。一方、固有粘度が0.80dl/gを超えると、濾圧上昇が大きくなり高精度濾過が困難となる。さらに、フィルムの熱収縮率も悪化する。
【0231】
本発明において、被覆層形戒のために使用する塗布液は、溶媒、高分子樹脂、粒子を主たる構成成分とする。溶媒としては、水系溶媒または有機溶媒のいずれも使用できるが、作業環境、環境保護、生産性などの点から水系溶媒が好適である。
【0232】
本発明で基材フィルムの被覆層に用いる高分子樹脂は、後加工で積層されるプリズムレンズ層、ハードコート層、光拡散層、反射防止層などで通常用いられるアクリレート系樹脂及び基材のポリエステルフィルムの両方に対し、接着性の良好な高分子樹脂であれば特に限定されるものではないが、例えばポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、およびそれらの共重合体や混合物等が挙げられる。また、被覆層は、透明性の点から基材ポリエステルフィルムと屈析率の近い組成の高分子樹脂から構成することが好ましい。このような高分子樹脂としては、例えば、分岐したグリコールを構成成分として含有する共重合ポリエステル樹脂(A)と、ブロック型イソシアネート基を含有する樹脂(B)とを主成分とする樹脂組成物が挙げられる。
【0233】
前記の共重合ポリエステル樹脂(A)において、分岐したグリコール成分とは、例えば2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピルー1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−イソプロピル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−n−ヘキシル−1,3一プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−n−ブチルー1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−n−へキシル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジ−n一ブチル−1,3−プロパンジオール、2−n−ブチル−2−プロピルー1,3−プロパンジオール、及ぴ2,2−ジ−n−ヘキシル−1,3−プロパンジオールなどが挙げられる。
【0234】
上記の分岐したグリコール成分は、全グリコール成分の中に、好ましくは10モル%以上の割合で、さらに好ましくは20モル%以上の割合で含有される。上記化合物以外のグリコール成分としてはエチレングリコールが最も好ましい。少量であれば、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオールまたは1,4シクロヘキサンジメタノールなどを用いても良い。
【0235】
また、前記の共重合ポリエステル系樹脂(A)のジカルボン酸成分としては、テレフタル酸およびイソフタル酸が最も好ましい。少量であれば他のジカルボン酸;ジフェニルカルボン酸及び2,6−ナフタレンジカルボン酸の芳香族ジカルボン酸を加えて共重合させてもよい。
【0236】
上記ジカルボン酸成分の他に、水分散性を付与させるため、5−スルホイソフタル酸を1〜10モル%の範囲で使用するのが好ましく、例えばスルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレンイソフタル酸−2,7−ジカルボン酸および5−(4−スルフォフェノキシ)イソフタル酸及びその塩類等を挙げることができる。
【0237】
また、ブロック型イソシアネート基を含有する樹脂(B)として、末端イソシアネート基を親水性基で封鎖(以下ブロックと言う)した、熱反応型の水溶性ウレタンなどが挙げられる。上記イソシアネート基のブロック化剤としては、重亜硫酸塩類及びスルホン酸基を含有したフェノール類、アルコール類、ラクタム類、オキシム類及び活性メチレン化合物類等が挙げられる。ブロック化されたイソシアネート基はウレタンプレポリマーを親水化あるいは水溶化する。フィルム製造時の乾燥あるいは熱セット過程で、上記樹脂に熱エネルギーが与えられると、ブロック化剤がイソシアネート基からはずれるため、上記樹脂は自己架橋した編み目に混合した水分散性共重合ポリエステル樹脂を固定化するとともに上記樹脂の末端基等とも反応する。塗布液調整中の樹脂は親水性であるため耐水性が悪いが、塗布、乾燥、熱セットして熱反応が完了すると、ウレタン樹脂の親水基すなわちブロック化剤がはずれるため、耐水性が良好な塗膜が得られる。
【0238】
上記ブロック化剤の内、熱処理温度、熱処理時間が適当で、工業的に広く用いられるものとしては重亜硫酸塩頬が最も好ましい。
【0239】
上記樹脂において使用される、ウレタンプレポリマーの化学組成としては、(1)分子内に2個以上の活性水素原子を有する、有機ポリイソシアネート、あるいは分子内に少なくとも2個の活性水素原子を有する分子量が200〜20,000の化合物、(2)分子内に2個以上のイソシアネート基を有する、有機ポリイソシアネート、あるいは、(3)分子内に少なくとも2個活性水素原子を有する鎖伸長剤を反応せしめて得られる、末端イソシアネート基を有する化合物である。
【0240】
上記(1)の化合物として一般に知られているのは、末端又は分子中に2個以上のヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基あるいはメルカプト基を含むものであり、特に好ましい化合物としては、ポリエーテルポリオールおよびポリエーテルエステルポリオール等が挙げられる。
【0241】
ポリエーテルポリオールとしては、例えばエチレンオキシド及び、プロピレンオキシド等アルキレンオキシド類、あるいはスチレンオキシドおよびエピクロルヒドリン等を重合した化合物、あるいはそれらのランダム重合、ブロック重合あるいは多価アルコールへの付加重合を行って得られた化合物がある。ポリエステルポリオール及びポリエーテルエステルポリオールとしては、主として直鎖状あるいは分岐状の化合物か挙げられる。コハク酸、アジピン酸、フタル酸及び無水マレイン酸等の多価の飽和あるいは不飽和カルボン酸、あるいは該カルボン酸無水物等と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール及びトリメチロールプロパン等の多価の飽和及び不飽和アルコール類、比較的低分子量のポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコール等のポリアルキレンエーテルグリコール類、あるいはそれらアルコール類の混合物とを縮合することにより得ることができる。
【0242】
さらに、ポリエステルポリオールとしてはラクトン及びヒドロキシ酸から得られるポリエステル類、またポリエーテルエステルポリオールとしては、あらかじめ製造されたポリエステル類にエチレンオキシドあるいはプロピレンオキシド等を付加せしめたポリエーテルエステル類も使用することができる。
【0243】
上記(2)の有機ポリイソシアネートとしては、トルイレンジイソシアネートの異性体類、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類、キシリレンジイソシアネート等の芳香族脂肪族ジイソシアネート類、イソホロンジイソシアネート及び4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート、および2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類、あるいはこれらの化合物を単一あるいは複数でトリメチロールプロパン等とあらかじめ付加させたポリイソシアネート類が挙げられる。
【0244】
上記(3)の少なくとも2個の活性水素を有する鎖伸長剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、及び1,6−ヘキサンジオール等のグリコール類、グリセリン、トリメチロールプロパン、およびペンタエリスリトール等の多価アルコール類、エチレンジアミン、へキサメチレンジアミン、およびピペラジン等のジアミン類、モノエタノールアミンおよびジエタノールアミン等のアミノアルコール類、チオジエチレングルコール等のチオジグリコール類、あるいは水が挙げられる。
【0245】
上記(3)のウレタンポリマーを合成するには通常、上記鎖伸長剤を用いた一段式あるいは多段式イソシアネート重付加方法により、150℃以下、好ましくは70〜120℃の温度において、5分ないし数時問反応させる。活性水素原子に対するイソシアネート基の比は、1以上であれば自由に選べるが、得られるウレタンプレポリマー中に遊離のイソシアネート基が残存することが必要である。
【0246】
さらに、遊離のイソシアネート基の含有量は10重量%以下であればよいが、ブロック化された後のウレタンポリマー水溶液の安定性を考慮すると、7重量%以下であるのが好ましい。
【0247】
得られた上記ウレタンプレポリマーは、好ましくは重亜硫酸塩を用いてブロック化を行う。重亜硫酸塩水溶液と混合し、約5分〜1時間、よく攪拌しながら反応を進行させる。反応温度は60℃以下とするのが好ましい。その後、水で希釈して適当な濃度にして、熱反応型水溶性ウレタン組成物とする。該組成物は使用する際、適当な濃度および粘度に調製するが、通常80〜200℃前後に加熱すると、ブロック剤の重亜硫酸塩が解離し、活性なイソシアネート基が再生するために、プレポリマーの分子内あるいは分子間で起こる重付加反応によってポリウレタン重合体が生成したり、また他の官能基への付加を起こす性質を有するようになる。
【0248】
上記のブロック型イソシアネート基を含有する樹脂(B)の1例としては、第一工業製薬(株)製の商品名エラストロンが代表的に例示される。エラストロンは、重亜硫酸ソーダによってイソシアネート基をブロックしたものであり、分子末端に強力な親水性を有する、カルバモイルスルホネート基が存在するため、水溶性となっている。
【0249】
前記の分岐したグリコール成分を含有する共重合ポリエステル樹脂(A)およびブロック型イソシアネート基を含有する樹脂(B)を混合して塗布液を調製する場含、樹脂(A)と樹脂(B)の重量比は(A):(B)=90:10〜10:90が好ましく、更に好ましくは(A):(B)=80:20〜20:80の範囲である。固形分重量に対する上記樹脂(A)の重量比が10%未満では、基材フィルムへの塗布性が不適で、表面層と該フィルムとの間の接着性が不十分となりやすい。一方、樹脂(B)の重量比が10%未満の場合には、UV硬化タイプのハードコートにおいては実用性のある接着性が得られにくい。
【0250】
本発明で使用される水性塗布液には、熱架橋反応を促進させるため、触媒を添加しても良く、例えば無機物質、塩類、有機物質、アルカリ性物質、酸性物質および含金属有機化合物等、種々の化学物質が用いられる。また水溶液のpHを調節するために、アルカリ性物質あるいは酸性物質を添加してもよい。
【0251】
上記水性塗布液を基材フィルム表面に塗布する際には、該フィルムヘの濡れ性を上げ、塗布液を均一にコートするために、公知のアニオン性活性剤およびノニオン性の界面活性剤を必要量添加して用いることができる。塗布液に用いる溶剤は、水の他にエタノール、イソプロピルアルコールおよびベンジルアルコール等のアルコール類を、全塗布液に占める割合が50重量%未満となるまで混合してもよい。さらに、10重量%未満であれば、アルコール類以外の有機溶剤を溶解可能な範囲で混合してもよい。ただし、塗布液中、アルコール類とその他の有機溶剤との合計は、50重量%未満とする。
【0252】
有機溶剤の添加量が50重量%未満であれば、塗布乾燥時に乾燥性が向上するとともに、水のみの場合と比較して塗布膜の外観向上の効果がある。50重量%を越えると、溶剤の蒸発速度が速く塗工中に塗布液の濃度変化が起こり、粘度が上昇して塗工性が低下するために、塗布膜の外観不良を起こす恐れがあり、さらには火災などの危険性も考えられる。
【0253】
さらに、塗布液中には、ハンドリング性、帯電防止性、抗菌性など、他の機能性をフィルムに付与するために、透明性や接着性を阻害しない範囲内で、無機及び/または耐熱性高分子粒子、帯電防止剤、紫外線吸収剤、有機潤滑剤、抗菌剤、光酸化触媒などの添加剤を適性量含有させることができる。さらに、塗布液が水性であるため、透明性や接着性を阻害しない範囲内で、性能向上のために、他の水溶性樹脂、水分散性樹脂およびエマルジョン等を塗布液に添加してもよい。
【0254】
本発明の光学用被覆フィルムは、透明性の点から、基材のポリエステルフィルム中に不活性粒子を実質上含有させないことが好ましいため、フィルムのハンドリング性や耐スクラッチ性を向上させるために、被覆層中に適切な大きさの粒子を塗布液中に適正量含有させ、被覆層表面に凹凸を形成させることが必要である。
【0255】
かかる粒子の例としては、(1)シリカ、ガラスフィラー、シリカ−アルミナ複合酸化物粒子、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、カオリン、タルク、二酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン等の無機粒子、(2)架橋ポリスチレン、架橋ポリメチルメタクリレート、架橋アクリル、などの架橋高分子粒子、(3)シリコン樹脂粒子、ポリイミド粒子、フッ素系樹脂粒子、などの耐熱性高分子粒子、(4)シュウ酸カルシウム等の有機粒子を挙げることができる。なかでも、シリカ粒子はポリエステル樹脂と屈折率が比較的近く、高透明のフィルムを得やすいため最も好適である。
【0256】
上記水性塗布液に添加する粒子の平均粒径は、0.001〜1.0μmが好ましく、さらに好ましくは0.005〜0.5μm、特に好ましくは0.01〜0.1μmである。平均粒径が1.0μmを超えるとフィルム表面が粗面化し、フィルムの透明性が低下する傾向がある。一方、0.001μm未満ではハンドリング性が不十分となる。また、乾燥後の被覆層中の粒子含有量は0.1〜60重量%であることが好ましく、さらに好ましくは0.5〜50重量%、特に好ましくは1〜40重量%である。被覆層中の粒子含有量が60重量%を超えると、フィルムの透明性や接着性が不十分となりやすい。
【0257】
被覆層中に、上記粒子を2種類以上含有させてもよく、同種の粒子で粒径の異なるものを含有させてもよい。いずれにしても、粒子全体の平均粒径、および合計の含有量が上記範囲を満足することが好ましい。また、上記塗布液を塗布する際には、塗布液中の粒子の粗大凝集物を除去するために、塗布直前に塗布液が精密濾過されるように濾材を配置することが好ましい。
【0258】
本発明のフィルムの被覆層を形成するのに用いられる塗布液を精密濾過するための濾材は、濾過粒子サイズが25μm以下(初期濾過効率95%)であることが好ましい。25μm以上では粗大凝集物が十分除去できず、除去できなかった多くの組大凝集物は塗布、乾燥後一軸延伸、あるいは二軸延伸した際に、被覆層に粒子の粗大凝集物が広がって100μm以上の凝集物として認識され、結果として多くの光学欠点が発生しやすい。
【0259】
前記濾材のタイプは特に限定されないが、例えばフィラメント型、フェルト型、メッシュ型が挙げられる。また、濾材の材質も特に限定はされないが、例えばステンレス、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン等が挙げられる。
【0260】
本発明で支持体として用いる二軸延伸ポリエステルフィルムは、厚みが100〜250μmであることが、後加工工程での加工性や取り扱い性の点で好ましい。
【0261】
本発明の光学被覆フィルムは、ヘイズが2.0%以下であることが必要であり、好ましくは1.5%以下、特に好ましくは1.0%以下である。ヘイズ値が2.0%を超えると、当該フィルムをLCD用のレンズフィルムや、ブラウン管用反射防止フィルム等に用いた場合、画面の鮮明度が低下するので好ましくない。
【0262】
次に、本発明の光学用被覆フィルムの製造方法について、ポリエチレンテレフタレート(以下PETと略称する)を例にして説明するが、当然これに限定されるものではない。
【0263】
前記の新規な重合触媒を用いて製造した、実質的に粒子を含有しないPETのペレットを十分に真空乾燥した後、二軸押し出し機に供給し、280℃でシート状に溶融押し出しし、冷却固化せしめて未延伸PETシートを製膜する。この際溶融樹脂が280℃に保たれたメルトラインの任意の場所で、高精度濾過を行う。溶融樹脂の高精度濾過に用いられる濾材は特に限定はされないが、ステンレス焼結体の濾材がSi、Ti、Sb、Ge、Cu、などを主成分とする凝集物及び高融点有機物の除去性能に優れ好適である。
【0264】
さらに、濾材の濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)を25μm以下、さらに好ましくは15μm以下とすることが、光学欠点の少ない光学用被覆フィルムを得るためには有効である。25μmを超えると、異物を十分除去することができなくなる。
【0265】
得られた未延伸シートを80〜120℃に加熱したロールで長手方向に2.5〜5.0倍延伸して一軸配向PETフィルムを得る。さらに、フィルムの端部をクリップで把持して80〜180℃に加熱された熱風ゾーンに導き、乾燥後幅方向に2.5〜5.0倍に延伸する。引き続き、160〜240℃の熱処理ゾーンに導き、1〜60秒間の熱処理を行い、結晶配向を完了させる。この熱処理工程及び冷却工程中で必要に応じて幅方向あるいは長手方向に1〜12%の弛緩処理を施してもよい。
【0266】
この工程中の任意の段階でポリエステルフィルムの少なくとも片面に、前記水溶性共重合ポリエステルの水溶液を塗布する。
上記水性塗布液を塗布するには、公知の任意の方法で行うことができる。例えばリバースロール・コート法、グラビア・コート法、キス・コート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーバーコート法、パイプドクター法、含浸・コート法およびカーテン・コート法などが挙げられ、これらの方法を単独であるいは組み合わせて行うことができる。
【0267】
上記水性塗布液を塗布する工程は、通常の塗布工程、すなわち二軸延伸し熱固定した基材フィルムに塗布する工程でもよいが、該フィルムの製造工程中に塗布することが好ましい。さらに好ましくは結晶配向が完了する前の基材フィルムに塗布する。水溶液中の固形分濃度は通常30重量%以下であり、好ましくは10重量%以下である。
【0268】
該水性塗布液は、走行しているフィルム1m2あたり0.04〜5g、好ましくは0.2〜4gが付着されるように塗工される。該水性塗布液が塗布されたフィルムは、延伸および熱固定のためにテンターに導かれ、そこで加熱されて、熱架橋反応により安定な被膜を形成し、ポリエステル系積層フィルムとなる。インキの密着性を得るためには、この時のコート量が0.01g/m2以上であって、100℃で1分以上の熱処理が必要である。
【0269】
かくして得られた被覆ポリエステルフィルムは、透明性、接着性に優れ、且つ金属アンチモン粒子による凝集物を実質的に含まないため、光拡散シート、プリズムシート用のベースフィルムや反射防止フィルム用のベースフィルム及びCRT用の破砕防止フィルム等に好適に使用することができる。
【0270】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はもとよりこれらの実施例に限定されるものではない。なお、各実施例および比較例において用いた評価方法を以下に説明する。
【0271】
〔評価方法〕
(1)リン化合物の評価
(a)1H-NMR測定
化合物をCDCl3またはDMSOに溶解させ、室温下でVarian GEMINI-200を使って測定した。
【0272】
(b)融点測定
化合物をカバーガラス上にのせ、Yanaco MICRO MELTING POINT APPARATUSを使って1℃/分の昇温速度で測定した。
【0273】
(c)元素分析
リンの分析は、PETレジンチップを湿式分解後、モリブデンブルー比色法を用いて行った。その他の金属は、灰化/酸溶解後、高周波プラズマ発光分析および原子吸光分析を用いて行った。
【0274】
(2)ポリエステルの特性
(a)固有粘度(IV)
ポリエステルをフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタンの6/4(重量比)混合溶媒を使用して溶解し、温度30℃にて測定した。
【0275】
(b)酸価
ポリエステル重合体0.1gをベンジルアルコール10mlに溶解した後、0.1N−NaOHのメタノール/ベンジルアルコール(=1/9)の溶液を使用して滴定により測定した。
【0276】
(c)色相
ポリエステル重合体の色相は、溶融重合したレジンチップ用い、色差計(東京電色(株)製、MODEL TC-1500MC-88)を使用して、L値、a値、b値を測定した。
【0277】
(d)示差走査熱量分析(DSC)
TAインスツルメンツ社製DSC2920を用いて測定した。ポリエステル10.0mgをアルミパンに入れ、50℃/分の昇温速度で280℃まで加熱し、280℃に達してから1分間保持した後即座に、液体窒素中でクエンチした。その後、室温から20℃/分の昇温速度で300℃まで昇温し、昇温時結晶化温度Tc1ならびに融点Tmを求めた。300℃に達してから2分間保持した後に、10℃/分で降温し、降温時結晶化温度Tc2を求めた。Tc1、Tm、Tc2はそれぞれのピーク温度とした。
【0278】
(e)熱安定性パラメータ(TS)
PETレジンチップ([IV]i )1gを内径約14mmのガラス試験管に入れ130℃で12時間真空乾燥した後、真空ラインにセットし減圧と窒素封入を5回以上繰り返した。次いで、100mmHgの窒素を封入して封管し、300℃の塩バスに浸漬して2時間溶融状態に維持した。その後、サンプルを取り出して冷凍粉砕して真空乾燥し、[IV]f2を測定し、下記計算式を用いて求めた。式は、既報(上山ら:日本ゴム協会誌第63巻第8号497頁1990年)から引用した。
TS=0.245{[IV]f2 -1.47 −[IV]i -1.47 }
【0279】
(f)熱酸化安定性パラメータ(TOS)
PETレジンチップ([IV]i)を冷凍粉砕して20メッシュ以下の粉末にした。この粉末を130℃で12時間真空乾燥し、粉末300mgを内径約8mm、長さ約140mmのガラス試験管に入れ70℃で12時間真空乾燥した。次いで、シリカゲルを入れた乾燥管を試験管上部につけて乾燥した空気下で、230℃の塩バスに浸漬して15分間加熱した後の[IV]f1を測定した。TOSは、上記TSと同じ計算式を用い、下記のように求めた。ただし、[IV]i および[IV]f1はそれぞれ加熱試験前と加熱試験後のIV(dl/g)を指す。冷凍粉砕は、フリーザーミル(米国スペックス社製、6750型)を用いて行った。専用セルに約2gのレジンチップと専用のインパクターを入れた後、セルを装置にセットし液体窒素を装置に充填して約10分間保持し、次いでRATE10(インパクターが1秒間に約20回前後する)で5分間粉砕を行った。
TOS=0.245{[IV]f1 -1.47−[IV]i -1.47 }
【0280】
(g)耐加水分解性パラメータ(HS)
PETレジンチップ(試験前;[IV]i )を上記と同様に冷凍粉砕し、20メッシュ以下の粉末にした。その粉末を130℃で12時間真空乾燥した。加水分解試験はミニカラー装置((株)テクサム技研、TypeMC12.ELB)を用いて行った。上記粉末1gを純水100mlと共に専用ステンレスビーカーに入れてさらに専用の攪拌翼を入れ、密閉系にして、ミニカラー装置にセットし130℃に加熱、加圧した条件下に6時間攪拌した。試験後のPETをグラスフィルターで濾取し、真空乾燥した後IVを測定し([IV]f2)、以下の式により耐加水分解性パラメータ(HS)を求めた。
HS=0.245{[IV]f2 -1.47 −[IV]i -1.47 }
【0281】
(3)フィルム特性
(a)フィルムの熱安定性
得られたキャストフィルムの外観を目視で観察し、フィルムの着色の程度により、下記の基準により、ランク付けを行った。
◎:着色がない。
○:わずかに着色している。
△:着色している。
×:著しく着色している。
【0282】
(b)フィルム中のSb粒子の有無
ポリエステルフィルム40gをパラクロロフェノールとテトラクロロエタンの混合溶媒(重量比で75/25)で溶解し、親水性ポリテトラフルオロエチレン製の平均孔径0.1μmのメンブレンフィルターで濾過した。このメンブレンフィルター上の残渣を真空乾燥したのち、走査型電子顕微鏡によりフィルターにトラップされた粒子を観察し、エネルギー分散型X線マイクロアナライザー(堀場製作所製、EMAX2770)によりSb元素の有無を確認した。
【0283】
(C)ヘイズ
JIS−K7105に準じ、ヘイズメーター(東京電色工業社製、モデルTC−H3DP)を用いて測定した。
【0284】
(d)接着性
ポリエステルフィルムの被覆層面に、下記の組成のハードコート剤を#8ワイヤバーにより塗布し、70℃で1分間乾燥し溶剤を除去した後、高圧水銀灯で80w/cm、照射距離15cm、5m/分の条件下で2μmのハードコート層を形成した。得られたフィルムをJIS−K5400の8.5.1記載の試験方に準拠して接着性を求めた。具体的には被覆層を貫通して、基材フィルムに達する100個の升目状の切り傷を隙間間隔2mmのカッターガイドを用いて付け、セロハン粘着テープ(ニチバン社製405番24mm幅)を升目状の切り傷面に張り付け消しゴムでこすって完全に付着させた後、垂直に引き剥がして目視により下記の式から接着性を求めた。なお、1つの升目中で部分的に剥がれているものは、剥がれた升目として計数した。
接着性(%)=(1−剥がれた升目の個数/100)×100
【0285】
(実施例1)
(1)ポリエステルの重合
高純度テレフタル酸とエチレングリコールから常法に従って製造したビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート及びオリゴマーの混合物に対し、重縮合触媒として塩化アルミニウムの13g/lのエチレングリコール溶液をポリエステル中の酸成分に対してアルミニウム原子として0.015mol%とIrganox 1425(チバ・スペシャルティーケミカルズ社製)の10g/lエチレングリコール溶液を酸成分に対してIrganox 1425として0.02mol%を加えて、窒素雰囲気下、常圧にて245℃で10分間撹拌した。次いで50分間を要して275℃まで昇温しつつ反応系の圧力を徐々に下げて13.3Pa(0.1Torr)としてさらに275℃、13.3Paで重縮合反応を行った。ポリエチレンテレフタレートの固有粘度が0.65dl/gに到達するまでに要した重合時間(AP)は75分であった。重縮合にて得られたポリエチレンテレフタレートを常法に従ってチップ化した。
【0286】
得られたPETレジンの特性は、固有粘度が0.65dl/g、酸価が1.4eq/ton、DEGが2.1mol%であった。また、熱特性は、融点(Tm)が257.4℃、昇温結晶化温度(Tc1)が155.6℃、降温結晶化温度(Tc2)が181.5℃であった。色相はL値が68.5、a値が−2.7、b値が5.3であった。
【0287】
また、上記のPETレジンチップの熱安定性パラメータ(TS)は0.17、熱酸化パラメータ(TOS)は0.01未満、耐加水分解性パラメータ(HS)は0.05、溶液へイズ(SH)は0.1%であった。
【0288】
(2)塗布液の調整
被覆層形成用塗布液を以下の方法に従って調製した。
ジメチルテレフタレート95重量部、ジメチルイソフタレート95重量部、エチレングリコール35重量部、ネオペンチルグリコール145重量部、酢酸亜鉛0.1重量部および三酸化アンチモン0.1重量部を反応容器に仕込み、180℃で3時間かけてエステル交換反応を行った。次に、5−ナトリウムイソフタル酸6.0重量部を添加し、240℃で1時間かけてエステル化反応を行った後、250℃で減圧下(10〜0.2mmHg)で2時間かけて重縮合反応を行い、分子量19500、軟化点60℃のポリエステル樹脂を得た。
【0289】
得られたポリエステル樹脂の30%水分散液を6.7重量部、重亜硫酸ソーダでブロックしたイソシアネート基を含有する自己架橋型ポリウレタン樹脂の20重量%水溶液(第一工業製薬製:商品名エラストロンH−3)を40重量部、エラストロン用触媒(Cat64)を0.5重量部、水を47.8重量部およびイソプロピルアルコールを5重量部、それぞれ混合し、さらにコロイダルシリカ粒子(日産化学工業社製:スノーテックスOL)を樹脂固形分に対し5重量%、アニオン性界面活性剤を塗布液重量に対し1重量%、添加し塗布液とした。
【0290】
(3)被覆ポリエステルフィルムの製造
前記の方法で得たポリエチレンテレフタレートチップを135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した後、二軸押出機に供給し、約280℃でシート状に溶融押し出して、表面温度20℃に保った金属ロール上で急冷固化し、未延伸シートを得た。
【0291】
この時、溶融樹脂の異物除去用濾材として濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)15μmのステンレス製焼結濾材を用いた。次にこの未延伸シートを加熱されたロール群及び赤外線ヒーターで100℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で長手方向に3.5倍延伸して、一軸配向PETフィルムを得た。
【0292】
その後、前記塗布液を濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)25μmのフェルト型ポリプロピレン製濾材で精密濾過し、リバースロール法で片面に塗布、乾燥した。塗布後、引き続いて、フィルムの端部をクリップで把持して130℃に加熱された熱風ゾーンに導き、塗布液を乾燥後、幅方向に4.0倍に延伸した。さらに、フィルム幅長を固定した状態において230℃で熱固定処理を行い、降温時200℃で3%の横弛緩処理をして、塗布量が0.01g/m2の被覆層を有する厚さ188μmの被覆ポリエステルフィルムを得た。
【0293】
得られた被覆ポリエステルフィルムは、ヘイズが0.7%であり、アクリレート製コート層との接着性は100%であった。また、Sbを主成分とする粒子はポリエステルフィルム中で検出されなかった。さらに、フィルムの黒ずみは、実施例1と同様に、重縮合触媒として従来の三酸化アンチモンを用いて製造したポリエステルをフィルム原料とした場合と比べ改善されていた。
【0294】
(実施例2)
(リン化合物の合成例)
下記式(51)で表されるリン化合物(リン化合物A)の合成
【0295】
【化51】
【0296】
1.Sodium(O-ethyl 3,5-di-tert-butyl-4-hydroxybenzylphosphonate)の合成
50%水酸化ナトリウム水溶液6.5g(84mmol)とメタノール6.1mlの混合溶液中にdiethyl(3,5-di-tert-butyl-4-hydroxybenzyl)phosphonate 5g(14mmol)のメタノール溶液6.1mlを加え、窒素雰囲気下24時間加熱還流を行った。反応後、反応混合物を冷却しながら濃塩酸7.33g(70mmol)を加え、析出物をろ取、イソプロパノールで洗浄後、ろ液を減圧留去した。得られた残渣を熱イソプロパノールに溶解させ、不溶分をろ取し、イソプロパノールを減圧留去後、残渣を熱ヘプタンで洗浄、乾燥してSodium(O-ethyl 3,5-di-tert-butyl-4-hydroxybenzylphosphonate) を3.4g(69%)得た。なお、多量に合成する場合は、上記の各原料のモル比をあわせて行った。
【0297】
形状:白色粉体
融点:294-302℃(分解)
1H-NMR(DMSO,δ):1.078(3H, t, J=7Hz), 1.354 (18H, s), 2.711(2H, d),
3.724(2H, m, J=7Hz), 6.626(1H, s), 6.9665(2H, s)
元素分析(カッコ内は理論値):Na 6.36%(6.56%), P 9.18%(8.84%)
【0298】
2.O-ethyl 3,5-di-tert-butyl-4-hydroxybenzylphosphonic acid(リン化合物A)の合成
室温で攪拌下、Sodium(O-ethyl 3,5-di-tert-butyl-4-hydroxybenzylphosphonate)1g(2.8mmol)の水溶液20mlに濃塩酸1.5gを加えて1時間攪拌した。反応混合物に水150mlを加え、析出した結晶をろ取、水洗、乾燥してO-ethyl 3,5-di-tert-butyl-4-hydroxybenzylphosphonic acidを826mg(88%)得た。なお、多量に合成する場合は、上記の各原料のモル比をあわせて行った。
形状:板状結晶
融点:126-127℃
1H-NMR(CDCl3,δ):1.207(3H, t, J=7Hz), 1.436(18H, s), 3.013(2H, d),
3.888(2H, m, J=7Hz.), 7.088(2H, s), 7.679-8.275(1H, br)
【0299】
(ポリエステルの重合)
重合反応缶に高純度テレフタル酸とその2倍モル量のエチレングリコールを仕込み、トリエチルアミンを酸成分に対して0.3mol%加え、0.25Mpaの加圧下245℃にて水を系外に留去しながらエステル化反応を120分間行いエステル化率が95%のビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)およびオリゴマーの混合物(以下、BHET混合物という)を得た。このBHET混合物に対して、アルミニウムトリスアセチルアセトネートの2.5g/lのエチレングリコール溶液をポリエステル中の酸成分に対してアルミニウム原子として0.015mol%加え、上記リン化合物Aの10g/lのエチレングリコール溶液をポリエステル中の酸成分に対してリン化合物Aとして0.04mol%添加し、窒素雰囲気下常圧にて245℃で10分間攪拌した。次いで、50分間を要して275℃まで昇温しつつ反応系の圧力を徐々に下げて0.1Torrとして、さらに275℃、0.1Torrで重縮合反応を行った。ポリエチレンテレフタレートの固有粘度が0.65dl/gに到達するまでに要した重合時間(AP)は103分であった。重縮合にて得られたポリエチレンテレフタレートを常法に従ってチップ化した。
【0300】
得られたPETレジンの特性は、固有粘度が0.65dl/g、酸価が2.0eq/ton、DEGが2.0mol%であった。また、熱特性は、融点(Tm)が257.5℃、昇温結晶化温度(Tc1)が164.1℃、降温結晶化温度(Tc2)が185.4℃であった。色相はL値が68.3、a値が−1.1、b値が1.9であった。
【0301】
また、上記のPETレジンチップの熱安定性パラメータ(TS)は0.16、熱酸化パラメータ(TOS)は0.01未満、耐加水分解性パラメータ(HS)は0.04、溶液へイズ(SH)は0.04%であった。
【0302】
上記溶融重合で得られたPETレジンチップを用いて、実施例1と同様にして被覆ポリエステルフィルムを得た。得られた被覆ポリエステルフィルムは、ヘイズが0.7%であり、アクリレート製コート層との接着性は100%であった。また、Sbを主成分とする粒子はポリエステルフィルム中で検出されなかった。さらに、フィルムの黒ずみは、実施例1と同様に、重合触媒として従来の三酸化アンチモンを用いて製造したポリエステルをフィルム原科とした場合と比べ改善されていた。
【0303】
(実施例3)
(リン化合物の合成例)
下記式(52)で表されるリン化合物のマグネシウム塩(リン化合物B)の合成
【0304】
【化52】
【0305】
1.Sodium(O-ethyl 3,5-di-tert-butyl-4-hydroxybenzylphosphonate) の合成
50%水酸化ナトリウム水溶液6.5g(84mmol)とメタノール6.1mlの混合溶液中にdiethyl(3,5-di-tert-butyl-4-hydroxybenzyl)phosphonate 5g(14mmol)のメタノール溶液6.1mlを加え、窒素雰囲気下24時間加熱還流を行った。反応後、反応混合物を冷却しながら濃塩酸7.33g(70mmol)を加え、析出物をろ取、イソプロパノールで洗浄後、ろ液を減圧留去した。得られた残渣を熱イソプロパノールに溶解させ、不溶分をろ取し、イソプロパノールを減圧留去後、残渣を熱ヘプタンで洗浄、乾燥してSodium(O-ethyl 3,5-di-tert-butyl-4-hydroxybenzylphosphonate) を3.4g(69%)得た。なお、多量に合成する場合は、上記の各原料のモル比をあわせて行った。
【0306】
形状:白色粉体
融点:294-302℃(分解)
1H-NMR(DMSO,δ):1.078(3H, t, J=7Hz), 1.354 (18H, s), 2.711(2H, d),
3.724(2H, m, J=7Hz), 6.626(1H, s), 6.9665(2H, s)
元素分析(カッコ内は理論値):Na 6.36%(6.56%), P 9.18%(8.84%)
【0307】
2.Magnesium bis(O-ethyl 3,5-di-tert-butyl-4-hydroxybenzylphosphonate)(リン化合物B)の合成
室温で攪拌下、Sodium(O-ethyl 3,5-di-tert-butyl-4-hydroxybenzylphosphonate) 500mg(1.4mmol)の水溶液4mlに硝酸マグネシウム6水和物 192mg(0.75mmol)の水溶液1mlを滴下した。1時間攪拌後、析出物をろ取、水洗、乾燥してMagnesium bis(O-ethyl 3,5-di-tert-butyl-4-hydroxybenzylphosphonate) を359mg(74%)得た。なお、多量に合成する場合は、上記の各原料のモル比をあわせて行った。
【0308】
形状:白色粉体
融点:>300℃
1H-NMR(DMSO,δ):1.0820(6H, t, J=7Hz), 1.3558(36H, s), 2.8338(4H, d),
3.8102(4H, m, J=7Hz), 6.6328(2H, s), 6.9917(4H, s)
【0309】
(ポリエステルの重合)
重合反応缶に高純度テレフタル酸とその2倍モル量のエチレングリコールを仕込み、トリエチルアミンを酸成分に対して0.3mol%加え、0.25MPaの加圧下245℃にて水を系外に留去しながらエステル化反応を120分間行いエステル化率が95%のビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)およびオリゴマーの混合物(以下、BHET混合物という)を得た。このBHET混合物に対して、アルミニウムアセチルアセトネートの2.5g/lのエチレングリコール溶液をポリエステル中の酸成分に対してアルミニウム原子として0.015mol%加え、上述のリン化合物Bを酸成分に対して0.02mol%添加し、窒素雰囲気下常圧にて245℃で10分間攪拌した。次いで、50分間を要して275℃まで昇温しつつ反応系の圧力を徐々に下げて0.1Torrとして、さらに275℃、0.1Torrで重縮合反応を行った。ポリエチレンテレフタレートの固有粘度が0.65dl/gに到達するまでに要した重合時間(AP)は39分であった。重縮合にて得られたポリエチレンテレフタレートを常法に従ってチップ化した。
【0310】
得られたPETレジンの特性は、固有粘度が0.65dl/g、酸価が2.0eq/toであった。また、熱特性は、融点(Tm)が256.5℃、昇温結晶化温度(Tc1)が165.6℃、降温結晶化温度(Tc2)が185.1℃であった。色相はL値が66.6、a値が−2.1、b値が4.5であった。
【0311】
また、上記のPETレジンチップの熱安定性パラメータ(TS)は0.19、熱酸化パラメータ(TOS)は0.01未満、耐加水分解性パラメータ(HS)は0.06であった。
【0312】
上記溶融重合で得られたPETレジンチップを用いて、実施例1と同様にして被覆ポリエステルフィルムを得た。得られた被覆ポリエステルフィルムは、へイズが0.7%であり、アクリレート製コート層との接着性は100%であった。また、Sbを主成分とする粒子はポリエステルフィルム中で検出されなかった。さらに、フィルムの黒ずみは、実施例1と同様に、重合触媒として従来の三酸化アンチモンを用いて製造したポリエステルをフィルム原料とした場含と比べ改善されていた。
【0313】
(実施例4)
(リン化合物のアルミニウム塩の合成例)
O-ethyl 3,5-di-tert-butyl-4-hydroxybenzylphosphonateのアルミニウム塩(アルミニウム塩A)の合成
【0314】
1.Sodium(O-ethyl 3,5-di-tert-butyl-4-hydroxybenzylphosphonate)の合成
50%水酸化ナトリウム水溶液6.5g(84mmol)とメタノール6.1mlの混合溶液中にdiethyl(3,5-di-tert-butyl-4-hydroxybenzyl)phosphonate 5g(14mmol)のメタノール溶液6.1mlを加え、窒素雰囲気下24時間加熱還流を行った。反応後、反応混合物を冷却しながら濃塩酸7.33g(70mmol)を加え、析出物をろ取、イソプロパノールで洗浄後、ろ液を減圧留去した。得られた残渣を熱イソプロパノールに溶解させ、不溶分をろ取し、イソプロパノールを減圧留去後、残渣を熱ヘプタンで洗浄、乾燥してSodium(O-ethyl 3,5-di-tert-butyl-4-hydroxybenzylphosphonate) を3.4g(69%)得た。なお、多量に合成する場合は、上記の各原料のモル比をあわせて行った。
【0315】
形状:白色粉体
融点:294-302℃(分解)
1H-NMR(DMSO,δ): 1.078(3H, t, J=7Hz), 1.354 (18H, s), 2.711(2H, d),
3.724(2H, m, J=7Hz), 6.626(1H, s), 6.9665(2H, s)
元素分析(カッコ内は理論値):Na 6.36%(6.56%), P 9.18%(8.84%)
【0316】
2.O-ethyl 3,5-di-tert-butyl-4-hydroxybenzylphosphonateのアルミニウム塩(アルミニウム塩A)の合成
室温で攪拌下、Sodium(O-ethyl 3,5-di-tert-butyl-4-hydroxybenzylphosphonate) 1g(2.8mmol)の水溶液7.5mlに硝酸アルミニウム9水和物 364mg(0.97mmol)の水溶液5mlを滴下した。3時間攪拌後、析出物をろ取、水洗、乾燥してO-ethyl 3,5-di-tert-butyl-4-hydroxybenzylphosphonateのアルミニウム塩Aを860mg得た。なお、多量に合成する場合は、上記の各原料のモル比をあわせて行った。
【0317】
形状:白色粉体
融点:183-192℃
【0318】
(ポリエステルの重合)
重合反応缶に高純度テレフタル酸とその2倍モル量のエチレングリコールを仕込み、トリエチルアミンを酸成分に対して0.3mol%加え、0.25MPaの加圧下245℃にて水を系外に留去しながらエステル化反応を120分間行いエステル化率が95%のビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)およびオリゴマーの混合物(以下、BHET混合物という)を得た。このBHET混合物に対して、上述のアルミニウム塩Aをポリエステル中の酸成分に対してアルミニウム原子として0.02mol%添加し、窒素雰囲気下常圧にて245℃で10分間攪拌した。次いで、50分間を要して275℃まで昇温しつつ反応系の圧力を徐々に下げて0.1Torrとして、さらに275℃、0.1Torrで重縮合反応を行った。ポリエチレンテレフタレートの固有粘度が0.65dl/gに到達するまでに要した重合時間(AP)は、98分であった。重縮合にて得られたポリエチレンテレフタレートを常法に従ってチップ化した。
【0319】
得られたPETレジンの特性は、固有粘度が0.65dl/g、酸価が1.0eq/ton以下であった。また、熱特性は、融点(Tm)が257.1℃、昇温結晶化温度(Tc1)が160.7℃、降温結晶化温度(Tc2)が185.1℃であった。色相はL値が64.3、a値が−1.4、b値が2.3であった。
【0320】
また、上記のPETレジンチップの熱安定性パラメータ(TS)は0.14、熱酸化パラメータ(TOS)は0.01、耐加水分解性パラメータ(HS)は0.03、溶液へイズ(SH)は0.03%であった。
【0321】
上記溶融重合で得られたPETレジンチップを用いて、実施例1と同様にして被覆ポリエステルフィルムを得た。得られた被覆ポリエステルフィルムは、ヘイズが0.7%であり、アクリレート製コート層との接着性は100%であった。また、Sbを主成分とする粒子がポリエステルフィルム中で検出されなかった。さらに、フィルムの黒ずみは、実施例1と同様に、重合触媒として従来の三酸化アンチモンを用いて製造したポリエステルをフィルム原料とした場合と比べ改善されていた。
【0322】
(比較例l)
重縮合触媒を三酸化アンチモンに変更し、三酸化アンチモンの添加量をPET中の酸成分に対してアンチモン原子として0.05mol%となるように使用した以外は実施例1と同様にして被覆ポリエステルフィルムを得た。
得られた被覆ポリエステルフィルムは、ヘイズが0.7%であり、アクリレート製コート層との接着性は100%であった。また、Sbを主成分とする粒子がポリエステルフィルム中で検出された。さらに、前記実施例のフィルムと比較して、フィルムに黒ずみが見られた。
【0323】
(比較例2)
重縮合触媒を三酸化アンチモンに変更し、三酸化アンチモンの添加量をPET中の酸成分に対してアンチモン原子として0.05mol%となるように使用し、さらに平均粒径1.4μmのシリカ粒子を300ppmの濃度になるように添加した以外は実施例1と同様にして被覆ポリエステルフィルムを得た。
得られた被覆ポリエステルフィルムは、アクリレート製コート層との接着性は100%であったが、ヘイズが2.8%と透明性に劣っていた。また、Sbを主成分とする粒子がポリエステルフィルム中で検出された。さらに、前記実施例のフィルムと比較して、フィルムに黒ずみが見られた。
【0324】
(比較例3)
被覆層を設けなかった以外は、比較例1と同様の方法でポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムは、へイズが0.5%と透明性に優れていたが、アクリレート製コート層との接着性は6%と劣っていた。また、Sbを主成分とする粒子が、ポリエステルフィルム中で検出された。さらに、前記実施例のフィルムと比較して、フィルムに黒ずみが見られた。
【0325】
【発明の効果】
本発明の光学用被覆フィルムは、アンチモン化合物またはゲルマニウム化合物以外の成分を主成分とし、かつ触媒活性に優れた新規な触媒を用いて製造された、熱安定性に優れたポリエステルをフィルム原科の主たる構成成分とし、フィルムのヘイズ値を特定範囲としているため、透明性及び色調に優れ、かつアンチモンに起因する異物がないという効果がある。したがって、本発明の光学用被覆フィルムは、例えば、液晶ディスプレイに用いられるプリズムレンズシート、ハードコートフィルム、反射防止フィルム、拡散板、CRT用の破砕防止フィルム、またプラズマディスプレイの前面板に用いられる近赤外線吸収フィルター、タッチパネルやエレクトロルミネッセンス用の透明導電性フィルムなどの光学部材用ベースフィルムとして使用することができる。
Claims (7)
- 前記アルミニウム及び/又はその化合物が、アルミニウムのカルボン酸塩、無機酸塩及びキレート化合物から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の光学用被覆フィルム。
- 前記アルミニウム及び/又はその化合物が、酢酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム及びアルミニウムアセチルアセトネートから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2記載の光学用被覆フィルム。
- 前記アルミニウム及び/又はその化合物が、酢酸アルミニウムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光学用被覆フィルム。
- 前記高分子樹脂が、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、もしくはそれらの共重合体から選ばれる少なくとも1種以上である請求項1〜4のいずれかに記載の光学用被覆フィルム。
- 前記高分子樹脂が、分岐したグリコールを構成成分として含有する共重合ポリエステル樹脂と、ブロック型イソシアネート基を含有する樹脂とを主成分とする請求項1〜5のいずれかに記載の光学用被覆フィルム。
- 前記基材フィルムが粒子を実質的に含有していないことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の光学用被覆フィルム。
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