JP4701257B2 - 液体ポンプシステム - Google Patents
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Description
本発明は、液体ポンプシステムに係り、例えば、フォトレジスト液等の薬液を塗布する薬液供給装置に好適に用いられたりする液体ポンプシステムに係り、詳しくは、液体用のポンプと、ポンプに対する吐出側流路を開閉する吐出側弁と、ポンプに対する吸入側流路を開閉する吸入側弁とを有し、吐出側弁を閉弁し、かつ、吸入側弁を開弁してポンプを吸入動作させる吸入駆動状態と、吐出側弁を開弁し、かつ、吸入側弁を閉弁してポンプを吐出動作させる吐出駆動状態とを交互に切換可能に構成されている液体ポンプシステム関するものである。
半導体基板であるウェハの製造装置や、液晶基板製造装置、或いは多層配線基板製造装置などにおいては、フォトレジスト液、アルカリ性や酸性の処理液等の薬液が使用される。それぞれの薬液は、ポンプ作動によって薬液貯蔵槽内から吐出側流路を介して薬液吐出部に導かれる。このように薬液等の液体を供給するための液体ポンプシステムとして、特許文献1において開示されているように、ベローズタイプのポンプを用いたものが知られている。
即ち、前記液体ポンプシステムは、容器(薬液貯留槽)に収容されているレジスト液等の薬液をウェハに塗布するためのものであって、ハウジングに往復動自在に設けられたべローズを駆動するためにハウジングには駆動部材が設けられており、ベローズの往復動によって吸入側と吐出側の2つの逆止弁を介して薬液がノズル(薬液吐出部)に供給されるように構成されている。そして、吐出側の逆止弁とノズルとの間の吐出側流路には、薬液内の異物を除去するフィルタと、供給路を開閉するダイヤフラムバルブと、サックバックバルブとが設けられている。
上記のような液体ポンプシステムを用いて薬液をウェハに塗布するには、ベローズを後退移動させることにより、吸入側の逆止弁を介して薬液をポンプ室内に流入し、次いでベローズを前進移動させることにより、逆止弁を介してノズルに薬液が供給される。所定の量の薬液をノズルから吐出した後には、ノズルからの液垂れを防止するために、ダイヤフラムバルブを閉じてサックバックバルブを作動させ、ノズルの先端部内に薬液を吸引するようにしている。
しかしながら、ダイヤフラムバルブの変形による流路内の容積変化によってノズルから不測の液垂れが生じるおそれがあるとともに、サックバックバルブを用いる場合には、サックバック速度やサックバック量の調整が必要になるが、それらの調整はポンプシステム毎に行わねばならず非常に手間が掛るという問題があった。
特許文献2のものは、特許文献1のものの改良である。即ち、吐出側弁を開弁し、かつ、吸入側弁を閉弁してポンプを吐出動作させて薬液を吐出させる吐出駆動状態(吐出工程)から、吐出側弁を閉弁し、かつ、吸入側弁を開弁してポンプを吸入動作させて容器から薬液を吸入させる吸入駆動状態(吸入工程)に切換えるときに、残圧除去動作(残圧除去工程)とサックバック動作(サックバック工程)とをこの順で行うことにより、ダイヤフラムバルブやサックバックバルブを省略して前述の問題を克服せんとする技術である。
尚、残圧除去動作とは、吐出動作の終了後にポンプ室内の残圧を除去する動作(工程)のことであり、サックバック動作とは、ポンプ室内の残圧が除去された後において吸入側弁を閉弁し、かつ、吐出側弁を開弁した状態でポンプを吸入動作させることにより、ノズル内の薬液を戻し移動させる動作(工程)である。
米国特許第5061156号公報
特開平10−57850号公報
ところが、特許文献2による液体ポンプシステムでも不都合の生じることが分ってきた。即ち、薬液吐出動作の終了後におけるノズルからの不測の液垂れを防止するための残圧除去動作中や、残圧除去動作からサックバック動作に切換わる間等においてノズルからしばしば液垂れが生じることが知見されたのである。従って、ノズルからの不測の液垂れが生じない液体ポンプシステムを得るには更なる改善の余地がある。
本発明の目的は、ポンプのサックバック動作で液垂れが生じないようにする構成をさらに工夫することにより、不測の液垂れが皆無となるまでに改善された液体ポンプシステムを実現して提供する点にある。
請求項1に係る発明は、液体用のポンプPと、前記ポンプPに対する吐出側流路30を開閉する吐出側弁28と、前記ポンプPに対する吸入側流路29を開閉する吸入側弁27とを有し、前記吐出側弁28を閉弁し、かつ、前記吸入側弁27を開弁して前記ポンプPを吸入動作させる吸入駆動状態と、前記吐出側弁28を開弁し、かつ、前記吸入側弁27を閉弁して前記ポンプPを吐出動作させる吐出駆動状態とが切換可能に構成されている液体ポンプシステムにおいて、
前記吐出駆動状態から前記吸入駆動状態に切換わるときには、前記吐出駆動状態の終了に伴って、前記吐出側弁28を開弁し、かつ、前記吸入側弁27を閉弁して前記ポンプPを吸入動作させる逆駆動状態を経て前記吸入駆動状態に切換えられるとともに、
前記吐出駆動状態から前記逆駆動状態に切換わるときは、前記吐出側弁28の開弁状態と前記吸入側弁27の閉弁状態とが維持されている状態で前記ポンプPが前記吐出動作から直ちに前記吸入動作に切換えられるように構成されており、
前記吐出側弁28及び前記吸入側弁27が、エアを用いて弁体61を動かすことで前記弁体61が弁座62に当接している閉弁状態と前記弁体61が前記弁座62から離れている開弁状態との切換えが可能なエアオペレイト弁に構成され、
前記吐出側弁28及び前記吸入側弁27へのエア給排を制御する制御弁39と前記吐出側弁28及び前記吸入側弁27とを接続する吐出側及び吸入側のエア給排路41,40を設けるとともに、前記吐出側エア給排路41を通るエアに絞り作用する絞り手段43が配備されていることを特徴とするものである。
前記吐出駆動状態から前記吸入駆動状態に切換わるときには、前記吐出駆動状態の終了に伴って、前記吐出側弁28を開弁し、かつ、前記吸入側弁27を閉弁して前記ポンプPを吸入動作させる逆駆動状態を経て前記吸入駆動状態に切換えられるとともに、
前記吐出駆動状態から前記逆駆動状態に切換わるときは、前記吐出側弁28の開弁状態と前記吸入側弁27の閉弁状態とが維持されている状態で前記ポンプPが前記吐出動作から直ちに前記吸入動作に切換えられるように構成されており、
前記吐出側弁28及び前記吸入側弁27が、エアを用いて弁体61を動かすことで前記弁体61が弁座62に当接している閉弁状態と前記弁体61が前記弁座62から離れている開弁状態との切換えが可能なエアオペレイト弁に構成され、
前記吐出側弁28及び前記吸入側弁27へのエア給排を制御する制御弁39と前記吐出側弁28及び前記吸入側弁27とを接続する吐出側及び吸入側のエア給排路41,40を設けるとともに、前記吐出側エア給排路41を通るエアに絞り作用する絞り手段43が配備されていることを特徴とするものである。
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の液体ポンプシステムにおいて、前記吸入側エア給排路40を通るエアに絞り作用する絞り手段42が配備されていることを特徴とするものである。
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の液体ポンプシステムにおいて、前記絞り手段42,43が可変絞り弁であることを特徴とするものである。
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の液体ポンプシステムにおいて、前記可変絞り弁42,43としてニードル弁が採用されていることを特徴とするものである。
請求項1の発明によれば、吐出駆動状態から逆駆動状態に切換わるときは、吐出側弁の開弁状態と吸入側弁の閉弁状態とが維持されている状態でポンプが吐出動作から直ちに前記吸入動作に切換えられるので、ノズル等の液体吐出部の液体は吐出状態から吸入状態に切換わる際に一時的に吐出圧が作用するとか、圧変動するといった不安定な圧力挙動が生じないようになり、その状態で逆駆動による液垂れ防止作用が機能するものとなる。これにより、ポンプの残圧が吐出側流路に作用するとか、サックバック動作に切換わる際に圧の変動が生じること等によって、ノズルからの不測の液垂れが生じることのないように規制されるようになる。その結果、ポンプのサックバック動作で液垂れが生じないようにする構成をさらに工夫することにより、不測の液垂れが皆無となるまでに改善される望ましい液体ポンプシステムを実現して提供することができる。
加えて、詳しくは実施例2の項にて説明するが、吐出側弁を応答性に優れるエアオペレイト弁で構成することによって新たに生じる問題をも解消することができる利点がある。即ち、エアオペレイト弁の閉弁動作によって液体吐出部への流路にポンピング作用が生じ、サックバック動作を行うにも拘らずに液だれするおそれがあり、これが新たな問題である。しかしながら、吐出側エア給排路を通るエアに絞り作用する絞り手段を配備することにより、吐出側エアオペレイト弁によるポンピング作用による悪影響が実質的に解消され、液だれのおそれなく応答性に優れるエアオペレイト弁の利点を享受でき、より改善された液体ポンプシステムが可能になる。
請求項2の発明によれば、吸入側エアオペレイト弁のエア経路にも絞り手段が配備されているので、吸入側エアオペレイト弁の弁体が急激に突出或いは戻り移動することによる新たな不都合(例えば、液体の吹き戻しや泡立ち等)も防止することができるので、システム全体としての完成度をさらに向上させることが可能である。
請求項3の発明によれば、絞り手段を可変型としてあるので、組付け後に微調整ができてより効果的な液だれ防止効果が得られるとか、製品誤差や部品誤差等の不都合が生じても、それらを吸収して設計通りの液だれ防止が行えるといった付随効果がある。
請求項4の発明によれば、絞り手段として量販されていて入手し易いニードル弁を用いており、必要な機能を得ながら量産に適する液体ポンプシステムの構築に寄与できるという効果がある。
以下に、本発明による液体ポンプシステムの実施の形態を、図面を参照しながら説明する。図1は実施例1による液体ポンプシステムを示すブロック図、図2〜図4はポンプの一部切欠き側面図、ポンプ要部の断面図、ピストン伸張時の断面図、図5はポンプと各弁との動作状況を示すタイムチャート、図6は一段による逆駆動状態を示す(a)作用図、(b)タイムチャートの要部図、図7は二段の段逆駆動状態を考察する作用図、図8は逆駆動状態のタイムチャート要部を示し、(a)は二段切換型、(b)は三段切換型の要部図である。また、図9は実施例2による液体ポンプシステムを示すブロック図、図10はエアオペレイトバルブの構造を示す断面図、図11はニードル弁の構造を示す断面図、図12は吐出側弁の閉じ動作に伴うノズル液面の不都合挙動等を示す作用図、図13はノズル液面の改善状況を示す要部の作用図、図14はポンプの所定高さ部位での平面図である。
〔実施例1〕
実施例1による液体ポンプシステムAを図1に示す。このシステムAは、薬液タンク31と、ポンプPと、フィルタ32と、ノズル33と、吸入側弁27と、吐出側弁28と、吸入側流路29と、吐出側流路30とを有して構成されている。ポンプPの吸入部6と薬液タンク31とに亘る吸入側流路29の途中に吸入側弁27が配備され、ポンプPの吐出部7とノズル33とに亘る吐出側流路30には、吐出側弁28とフィルタ32とが配備されている。
実施例1による液体ポンプシステムAを図1に示す。このシステムAは、薬液タンク31と、ポンプPと、フィルタ32と、ノズル33と、吸入側弁27と、吐出側弁28と、吸入側流路29と、吐出側流路30とを有して構成されている。ポンプPの吸入部6と薬液タンク31とに亘る吸入側流路29の途中に吸入側弁27が配備され、ポンプPの吐出部7とノズル33とに亘る吐出側流路30には、吐出側弁28とフィルタ32とが配備されている。
吸入側及び吐出側の各弁27,28は、開弁状態と閉弁状態とがエア圧によって切換えられるように作動する二位置切換型のエアオペレイトバルブに構成されている。吐出側流路30に配備される複数の流体機器、即ち吐出側弁28、フィルタ32、及びとノズル33のうち、吐出側流路30の終端に配備されるノズル(液体吐出部の一例)33を除いて最も液体流れ方向下流側に配備される流体機器がフィルタ32に設定されている。尚、34は薬液eの塗布対象(液体供給対象)としてのウェハである。
ポンプPについて説明する。ポンプPは、図2〜図4に示すように、シリンダ1と、このシリンダ1内に収容されて往復駆動されるピストン2と、ピストン2に取付けられる内周部3c、及びピストン外周の折返部3dを経てシリンダ1に取付けられる外周部3eを有するローリングダイヤフラム3と、シリンダ1、ピストン2、及びローリングダイヤフラム3により画される圧力室4と、各々が圧力室4に連通する液体の吸入部(吸込口とも言う)6及び吐出部(吐出口とも言う)7を有するローリングダイヤフラムポンプに構成されている。
このローリングダイヤフラムポンプPおいて、シリンダ1内には、ピストン2が軸方向に移動自在に収容され、このピストン2には、後述するポンプ駆動源と回り止め手段によって往復運動が与えられる。ピストン2は、その移動方向中間部に形成される環状のパッキン溝2eと、それよりシリンダヘッド側の先端部2bと、その反対でピストン根元側の基端部2aと、ネジ孔2d等を有する直胴状のものに構成されている。尚、ローリングダイヤフラム3のピストン2に対する位置が、図2に示すものと、図3及び4に示すものとで若干異ならせて描いてあるが、いずれのタイプの構造を採っても良い。
シリンダヘッド1aとによって圧力室4を画成するローリングダイヤフラム3は、ネジ軸部3aと、フランジ部3bと、ダイヤフラム内周部3cと、ダイヤフラム外周部3eと、リング部3fと、頭部3gとを有して形成されている。ネジ軸部3aは、ピストン2の先端部2bの先端面に同軸的に設けられた有底のネジ孔2dに螺合されている。フランジ部3bは、ネジ軸部3aの頭部側の一端外周面から半径方向に突出形成され、ピストン2の先端部2bの先端面外縁部に密着接合されている。ダイヤフラム内周部3cは、フランジ部3bの端部からピストン2の先端部2bの先端部外周面に沿って軸方向に延設され、ピストン2の先端部2bの先端部外周面に密着する薄膜状のものである。
ダイヤフラム外周部3eは、ダイヤフラム内周部3cの端部からU字状の折返部3dを経てシリンダ1のシリンダヘッド側の内周面に沿って軸方向に延設され、シリンダ1のシリンダヘッド側の内周面に密着する薄膜状のものである。リング部3fは、ローリングダイヤフラム外周部3eの端部から半径方向に延出され、シリンダ1とその一端のシリンダヘッド(ポンプヘッド)1aとの間に挟持されている。頭部3gは、ネジ軸部3aの頭部側の一端面に突出して設けられ、ネジ孔2dにネジ軸3aを螺合する際にレンチ等の工具を嵌合させるための二面切欠き構造のものに形成されている。
尚、シリンダ1とリング部3fとの接合面間にはシール部材であるフッ素ゴムからなるOリング5が設けられており、シリンダヘッド1aとリング部3fとの接合面間は、シリンダヘッド1aに形成されているリップシール部(図示省略)をリング部3fの表面に押当てることでシールされている。また、図3にはピストン2が吸込工程でのストローク終端位置に移動した時のローリングダイヤフラム3を示し、ローリングダイヤフラム外周部3eがローリングダイヤフラム内周部3cに対して大きく捲れ上がった状態になっている。この図3に示す状態が成形時の形態になるローリングダイヤフラム3を、ローリングダイヤフラムポンプに備えている。
シリンダヘッド1aには、圧力室4に連通する流体の吸込部6及び吐出部7が開口され、吸込部6が、吸込側弁27を設けた吸入側流路29を介して薬液タンク31に連通接続され、吐出部7が、吐出側弁28及びフィルタ32を設けた吐出側流路30を介してノズル33に連通接続されている。尚、前述したように、吐出時は吐出側弁28のみ開き、吸入側弁27は閉じられ、吸込時は吐出側弁28は閉じ、吸入側弁27のみ開かれる。
以上の構成において、後述するポンプ駆動源と回り止め手段によってピストン2に往復運動が与えられ、ピストン2がシリンダ1内で往復駆動されると、圧力室4の容積が拡大するピストン2の吸込工程(図3,図4において右行工程)で、圧力室4に薬液タンク31内の薬液eが吸込まれ、圧力室4の容積が縮小するピストン2の吐出工程(図3,図4において左行工程)で、圧力室4内の薬液eがノズル33に供給される。従って、ピストン1の往復駆動によって、ノズル33に薬液タンク31内の薬液eを供給することができる。
また、ピストン2のストローク制御により、ポンプの吐出量及び吐出速度を変更調節することができるように、このローリングダイヤフラムポンプには、ポンプ駆動源として、リニアアクチュエータ8を備えている。このリニアアクチュエータ8は、多相(例えば、5相)ステッピングモータ部9と、このモータ部9の回転運動を直線運動に変換して出力する直動機構部10とで構成されている。モータ部9は、中空状の回転軸11と、この回転軸11の外周面に取付けられた回転子12と、この回転子12の周囲に設けられた固定子13とを備えている。回転軸11は、ベアリング14により支持された小径部11aと、スラスト荷重及びラジアル荷重の両方を受けるベアリング15により支持された大径部11bとを備える段付き構造を有し、小径部11aに回転子12を取付けると共に、大径部11b内に後述するネジナット16が配設されている。尚、ベアリング15のインナーは、大径部11bの端部外周面に螺合するロックナット17により大径部11bに固定されている。この構成において、モータ部9は、図示しない固定子巻線への通電に伴って回転軸11が回転子12と共に回転する。
回転軸11の中空部には、出力用ネジ軸(ボールネジ軸)18が同軸的に貫通され、大径部11b内には、出力用ネジ軸18に螺合されたネジナット(ボールネジナット)16が挿入されている。このネジナット16は、回転軸11の大径部11b側の開口端から半径方向に突出するフランジ部16aを有し、このフランジ部16aをボルト18を介してロックナット17に固定されている。この構成において、ネジナット16は、回転軸11と共に回転することができる。
出力用ネジ軸18は、後述する回り止め手段によりその軸線を中心とする回転が規制されることで、ネジナット16の回転に伴って軸方向に直線運動する。従って、このリニアアクチュエータ8では、回転軸11の回転運動が、出力用ネジ軸18の直線運動に変換される。そして、リニアアクチュエータ8はシリンダ1のシリンダヘッド側と反対側端部に同軸的に取付けられ、出力用ネジ軸18の一端が、ピストン2の基端部2a側の先端に同軸的にネジ結合で一体連結されている。つまりリニアアクチュエータ8の出力用ネジ軸18がピストンロッドとしての役目を果たすように構成されている。
ところで、ピストン2は、ローリングダイヤフラム3を介してシリンダ1に繋がれているため、ローリングダイヤフラム3でも、ピストン2とこれに結合された出力用ネジ軸18の同一軸線を中心とする回転を規制することができるが、この場合、ローリングダイヤフラム3に回転モーメント(ねじり力)が働き、フッ素樹脂からなるローリングダイヤフラム3に亀裂や孔等が生じるおそれがある。
そのため、本実施の形態では、ローリングダイヤフラムポンプにおけるピストン2とシリンダ1間に、このピストン2の往復移動を許容して回転を規制する回り止め手段が設けられている。この回り止め手段は、具体的には、シリンダ1の側壁に軸線に沿って開口形成された長孔19と、ピストン2の基端部2aの先端側外周面に一端がねじ込み固定されて、ピストン2の基端部2aの先端側外周面から半径方向に突出状に取付けられ、シリンダ1の長孔19を通して他端がシリンダ1外に突出された係合ピン20とで構成されている。この構成において、係合ピン20は、ピストン2と一体に往復移動する。
以上の構成において、ピストン2は、この軸線を中心とする回転が規制されて長孔19の範囲内で軸方向に往復移動可能となり、このピストン2に一体に結合された出力用ネジ軸18及びフッ素樹脂からなるローリングダイヤフラム3の軸線を中心とする回転も同時に規制され、フッ素樹脂からなるローリングダイヤフラム3に回転モーメントを与えることなく、このフッ素樹脂からなるローリングダイヤフラム3に亀裂や孔等が生じるのを防止しながら、リニアアクチュエータ8によりピストン2を往復駆動できる。このため、ピストンストロークを制御でき、ポンプの吐出量及び吐出速度を変更調節することができる。
また、このローリングダイヤフラムポンプPには、ピストン2のストローク制御(ポンプの吐出量及び吐出速度制御)を行う際の、ピストン2の基準位置を検知するためのセンサ21が備えられている。このセンサ21は、例えば、先端部がコ字状に分岐形成されたセンサ台22の先端一端部に取付けられた発光素子(図示省略)と、センサ台22の先端他端部に取付けられ、発光素子(図示省略)と所定の間隔を設けて対向配置された受光素子(図示省略)とで光電式に構成されている。
さらに、このローリングダイヤフラムポンプPにおいて、シリンダ1とピストン2の摺動面間、つまりシリンダ1の内周面とピストン2の基端部2aの外周面との間には、ピストン2の基端部2aの外周面で、環状のパッキン溝2eを介してシール部材であるフッ素ゴムからなるOリング23と、このOリング23の外周に配設されたポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂からなるスリッパーリング24とが設けられている。また、シリンダ1の側壁には、ピストン2の吸込工程でのストローク終端位置におけるローリングダイヤフラム3の折返部3dの背後(図3,図4おいて右側)近傍に位置する空気吸出口25が設けられている。これにより、シリンダ1内には、圧力室4と反対側に、ローリングダイヤフラム3、Oリング23、シリンダ1の内周面、ピストン2の先端部2b、スリッパーリング24、及びOリング5により画成されて、空気吸出口25に連通する負圧室26が備えられている。この負圧室26は、空気吸出口25に接続されるアスピレータ(真空発生器)35による吸気作用により、圧力が、圧力室4の圧力より十分低く維持されている。
次に、液体ポンプシステムAの運転方法について説明する。この液体ポンプシステムAにおいては、吐出側弁28を閉弁し、かつ、吸入側弁27を開弁してポンプPを吸入動作させる吸入工程(吸入駆動状態)と、吐出側弁28を開弁し、かつ、吸入側弁27を閉弁してポンプAを吐出動作させる吐出工程(吐出駆動状態)とを交互に切換可能に構成されている。即ち、ポンプPにおけるピストン2が突出移動することによる1回の吐出動作(ポンピング)によって吐出される薬液eがノズル33から吐出されてウェハ34に滴下供給される。そして、次の吸入工程の間に、薬液eが供給されたウェハ34を送り出すとともに、薬液未処理のウェハ34をノズル33直下に位置させるウェハ交換工程を行うようにすれば、ポンプPを連続駆動させて連続的にウェハ34に薬液eを供給することができる。
つまり、吐出側弁28を閉弁し、かつ、吸入側弁27を開弁してポンプPを吸入動作させる吸入駆動状態と、吐出側弁28を開弁し、かつ、吸入側弁27を閉弁してポンプPを吐出動作させる吐出駆動状態とを交互に切換可能に構成されている液体ポンプシステムである。吐出駆動状態から吸入駆動状態に切換わるときには、吐出駆動状態の終了に伴って、吐出側弁28を開弁し、かつ、吸入側弁27を閉弁してポンプPを吸入動作させる逆駆動状態を経て吸入駆動状態に切換えられる。そして、吐出駆動状態から逆駆動状態に切換わるときは、吐出側弁28の開弁状態と吸入側弁27の閉弁状態とが維持されている状態でポンプPが吐出動作から直ちに吸入動作に切換えられるように構成されている。
そして、吐出工程の終了後にノズル33から不測の液垂れを防止するための工夫が為されている。即ち、吐出工程から吸入工程に切換わるときには、吐出工程の終了に伴って、吐出側弁5を開弁し、かつ、吸入側弁27を閉弁してポンプPを吸入動作させる逆駆動工程(逆駆動状態)を経て吸入工程に切換えられるとともに、吐出工程から逆駆動工程に切換わるときは、吐出側弁28の開弁状態と吸入側弁27の閉弁状態とが維持されている状態でポンプPが吐出動作から直ちに吸入動作に切換えられるように構成されている。加えて、逆駆動工程でのポンプPの吸入動作が、吐出動作から切換えられた直後の高速吸入動作と、高速吸入動作に続く中速吸入動作と中速吸入動作に続く低速吸入動作とによる三段切換駆動状態に設定されている。
つまり、図1に示すように、吸入側弁27を駆動開閉させる吸入側駆動機構36と、吐出側弁28を駆動開閉させる吐出側駆動機構37と、これら吸入側及び吐出側の各駆動機構36,37、及びポンプPの駆動状態を司る制御手段38とを設けて液垂れ防止装置Bが構成されている。液垂れ防止装置Bの機能(作用)は、図5に示すように、ピストン2を押出し方向に移動させるようにポンプPを時間t1に亘ってプラス(+)駆動させる吐出工程の終了に伴い、直ちにピストン2を引戻し方向に移動させるようにポンプPを時間t2に亘って高速でマイナス(−)駆動させ、引続きポンプPを時間t3に亘って中速でマイナス(−)駆動させ、引続きポンプPを時間t4に亘って低速でマイナス(−)駆動させるという逆駆動工程(サックバック工程)を行うのである。その逆駆動工程の後に時間t6に亘って吸入工程が行われる。
尚、サックバック工程終了後にポンプPの吐出側弁28を閉じる際に、薬液が僅かに吐出方向に流れ出ること(リバウンド現象)がある場合には、所望する薬液吸込み量からその流出分を足した量を予め吸入させておくことにより、吐出側弁28が閉じた際には所望する位置に薬液eを留めることが可能である。また、吐出工程の開始時にポンプPの内圧が高い状態のときに、吐出側弁28を開弁した瞬間に薬液eが吐出方向に移動してしまうことがある場合は、それを防止すべく吸入工程終了後において吸入側弁27及び吐出側弁28が共に閉じている状態で、ローリングダイヤフラム3を任意の位置に移動させることで圧力室4の圧力を調整し、吐出開始時の薬液eの不用意な移動を防止することが可能である。
〔逆駆動動作(サックバック動作)の考察について〕
サックバック動作の際は、吐出側弁の液押出し分を予め吸い込んでおかねばならないが、1回のサックバック動作では、液切れ良くするために吸込み速度を速くする必要がある。即ち、吐出側弁28の開弁状態と吸入側弁27の閉弁状態とを維持しながらポンプPを吐出動作から一旦停止することなく一気に高速吸入動作に切換えることにより、図6(a)に示すように、ノズル33先端部の薬液eを一気に吸い込み、次の薬液吐出までの間の液垂れを防止することができると考えられる。
サックバック動作の際は、吐出側弁の液押出し分を予め吸い込んでおかねばならないが、1回のサックバック動作では、液切れ良くするために吸込み速度を速くする必要がある。即ち、吐出側弁28の開弁状態と吸入側弁27の閉弁状態とを維持しながらポンプPを吐出動作から一旦停止することなく一気に高速吸入動作に切換えることにより、図6(a)に示すように、ノズル33先端部の薬液eを一気に吸い込み、次の薬液吐出までの間の液垂れを防止することができると考えられる。
しかしながら、液垂れを防止すべく吸入速度をかなりの高速〔図6(b)を参照〕に設定すると、図6(a)に示すように、薬液eの吸込み時にノズル33の先端部内に気泡が発生したり薄膜が形成されたりする不都合が稀に生じることがある。そこで、図7に示すように、前記不都合を回避すべく、逆駆動状態でのポンプPの吸入動作が、吐出動作から切換えられた直後の高速吸入動作と、高速吸入動作に続く低速吸入動作とによる二段切換駆動状態に設定してみた。これにより、所期通りに気泡の発生や薄膜の形成は生じなくなったが、図7における左右中央部に描かれているように、逆駆動状態における高速吸入動作から低速吸入動作に切換わる際にノズル33先端から稀に液垂れするという新たな問題が生じてきた。
つまり、当初の予測では、図7の破線で示す矢印イのように、逆駆動工程における一段目の高速吸入動作による一気の吸込み、及びそれに続く二段目の低速吸入動作により、気泡の発生や薄膜の形成無く液垂れ防止できると考えていた。ところが、高速吸入動作から低速吸入動作に切換わる際に、制御上で一瞬吸入速度がゼロになる(高速→ゼロ→低速)ことから、その一瞬の速度ゼロによって液垂れする場合のあることが知見されたのである。つまり、図7に矢印ロ及びハによって示すように、高速吸入による吸込みから低速吸入に切換わる際に薬液eが液垂れすることがある。
その対策としては、一旦速度をゼロにすることなく、高速吸入動作から直接に低速吸入動作に移行させることであり、1.吸入速度を一旦ゼロにすることなく高速から低速に切換える手段〔二段切換駆動状態であり、図8(a)の仮想線のグラフを参照〕と、2.吸入速度を高速から一旦ゼロにすることなく中速に切換え、かつ、その中速から一旦ゼロにすることなく低速に切換える手段〔三段切換駆動状態であり、図5や図8(b)を参照〕とが考えられる。実施例1の液体ポンプ装置Aは、より決め細やかな液垂れ防止制御を行うべく2.の三段切換駆動状態を採るものであるが、1.の二段切換駆動状態を採る液体ポンプシステムでも良い。
三段切換駆動状態は、図5や図8(b)の要部のタイムチャートで示されるように、逆駆動工程における一段目の高速吸入動作による一気の吸込み、及びそれに続く二段目の中速吸入動作により、ノズル33の先端から垂れ下がろうとする薬液eをノズル33内に良好に維持又は吸い上げ、引き続く三段目の低速吸入動作により、気泡の発生や薄膜の形成無く液垂れ防止させる、というものである。尚、中速吸入動作における「中速」とは、高速吸入より遅く、かつ、低速吸入よりは速い速度のことである。このように、高速→中速→低速の三段切換で吸入動作させる逆駆動状態(逆駆動工程)を設定することにより、液垂れを確実に防止すべく一段目吸入速度を「かなりの高速」としても、気泡の発生や薄膜形成が生じないようにしながら、吐出動作後におけるノズル33からの不測の液垂れを完全なまでに防止することができる液体ポンプシステムを実現できている。
ノズル33を除いてフィルタ32より液体流れ方向下流側には発塵源、即ち何らかの流体機器を設置していないので、ノズル33から吐出される薬液に塵埃が混入するおそれが無く、従って品質合格ウェハ34の歩留まりが向上する。サックバックバルブを使用せず、ポンプPのローリングダイヤフラム3を吸込み方向に移動させることでサックバック動作(逆吸入動作)では不可能であったフィルタ内の圧力上昇分を吸収する大容量のサックバック動作を行うことができる。サックバック速度、サックバック量の調節は、制御手段(ポンプコントローラ内のパラメーター)38の設定によって行うことが可能であり、サックバックの手動調節が不要となって手間が掛らない利点がある。本発明では、ポンプ室内容積変化をモータ駆動により緻密に制御して、サックバック動作を非常に高精度に行わせることが可能である。これにより、吐出量も高精度に制御可能である。
〔別実施例〕
液垂れ防止装置Bは、図6(b)に仮想線で示すように、吐出工程から逆駆動工程に切換わるときに、定格速度での吐出動作から、高速での吸入動作に直接切換えるように制御されるものとしても良い。これは言わば一段切換駆動状態による逆駆動工程であって、ポンプPの動作を速度ゼロに維持することが無いようにしてポンプPの動作速度をプラス速度からマイナス速度に瞬時に切換える制御により液垂れを防止させる手段である。前述したように、図6に実線で示すかなりの高速での吸入動作では薬液eに気泡や薄膜が生じてしまうことがあるので、高速、やや高速、或いは定格速度での吸入動作による一段切換駆動状態にすれば、図8(a)に示す二段切換や図8(b)に示す三段切換による逆駆動状態(逆駆動工程)を採ることなく、気泡や薄膜が生じることが無いようにしながら液垂れを解消することが可能である。
液垂れ防止装置Bは、図6(b)に仮想線で示すように、吐出工程から逆駆動工程に切換わるときに、定格速度での吐出動作から、高速での吸入動作に直接切換えるように制御されるものとしても良い。これは言わば一段切換駆動状態による逆駆動工程であって、ポンプPの動作を速度ゼロに維持することが無いようにしてポンプPの動作速度をプラス速度からマイナス速度に瞬時に切換える制御により液垂れを防止させる手段である。前述したように、図6に実線で示すかなりの高速での吸入動作では薬液eに気泡や薄膜が生じてしまうことがあるので、高速、やや高速、或いは定格速度での吸入動作による一段切換駆動状態にすれば、図8(a)に示す二段切換や図8(b)に示す三段切換による逆駆動状態(逆駆動工程)を採ることなく、気泡や薄膜が生じることが無いようにしながら液垂れを解消することが可能である。
尚、「…吐出駆動状態から逆駆動状態に切換わるときは、吐出側弁28の開弁状態と吸入側弁27の閉弁状態とが維持されている状態でポンプPが吐出動作から直ちに吸入動作に切換えられるように構成されている…」における「直ちに」とは、速度ゼロの状態を維持することが無いという意味であり、プラス速度からマイナス速度に切換わる途中に理論上、一瞬速度ゼロになることは除く。
〔実施例2〕
実施例2による液体ポンプシステムAは、図9,図10に示すように、図1に示す実施例1によるものと基本的には同じであり、吸入側弁27及び吐出側弁28とその操作系を具体化したものである。この実施例2のシステムは、実施例1による液体ポンプシステムAにおいて新たに生じる問題、即ち前述したリバウンド現象をも解消可能となるように、さらに構造に工夫を凝らされたより優れたシステムを提供するものである。
実施例2による液体ポンプシステムAは、図9,図10に示すように、図1に示す実施例1によるものと基本的には同じであり、吸入側弁27及び吐出側弁28とその操作系を具体化したものである。この実施例2のシステムは、実施例1による液体ポンプシステムAにおいて新たに生じる問題、即ち前述したリバウンド現象をも解消可能となるように、さらに構造に工夫を凝らされたより優れたシステムを提供するものである。
即ち、実施例2による液体ポンプシステムAにおいては、吸入側弁27及び吐出側弁28が、エアを用いて弁体61を動かすことで弁体61が弁座62に当接している閉弁状態〔図10(a)参照〕と、弁体61が弁座62から離れている開弁状態〔図10(b)参照〕との切換えが可能なエアオペレイト弁に構成されている。そして、吸入側弁27及び吐出側弁28へのエア給排を制御する制御弁39と吸入側弁27及び吐出側弁28とを接続する吸入側及び吐出側の各エア給排路40,41を設けるとともに、吸入側エア給排路40を通るエアに絞り作用する吸入側絞り手段42、及び吐出側エア給排路41を通るエアに絞り作用する吐出側絞り手段43が配備されている。
いずれの絞り手段42,43も可変絞り手段であってニードル弁に構成されており、それらニードル弁42,43並びにアスピレータ35への空気ポンプ63からのエア(圧搾空気)給排を司どる制御弁39は、制御手段38によって切換制御される3連型の電磁切換弁に構成されている。つまり、吸入側弁27及び吐出側弁28は、電磁切換弁39から吸入側ニードル弁42又は吐出側ニードル弁43を通って来るエア圧によって開閉操作される構成となっている。
吸入側及び吐出側の各エアオペレイト弁27,28の構造は、図10に示すように、互いに共通の軸心Wを有する一対の流路51,52、弁体61、弁座62等が配されるフッ素樹脂(PFA等)製の弁本体50と、弁体61を先端に備えるピストン54、戻しバネ55、エア給排部56等が配されるアクチュエータ部53、取付板57、各流路51,52毎に装備される管継手部58等を有して構成されている。第1流路51は、流路軸心Wに直交する縦軸心Zを有する円環路51Aが末端に形成されるとともに、その円環路51Aの内側に第2流路52の末端縦向き路52Aが同心状で形成されており、それら円環路51Aと末端縦向き路52Aとを仕切る円環状の仕切り壁50Aの頂面で弁座62が形成されている。
縦軸心Zの方向視で円形を呈する弁体61は、その外周の伸縮部61aと、その外周であってアクチュエータ部53の合成樹脂(PPS等)製ケーシング53Aと弁本体50との間に介装される押え外周部61bと、ピストン54先端のネジ穴部(符記省略)に螺入される嵌合棒部61cとを有するフッ素樹脂(PTFE等)製のダイヤフラムに構成されている。エア給排部56にはチューブ材等によるエア給排路40,41が連通接続され、第1,第2流路51,52は、吸入側流路29、ポンプPの吸入部6や吐出部7、吐出側流路30が適宜に連通接続される。尚、53a,59aは空気抜き孔である。また、環状流体給排口部58aと、これに螺着されるユニオンナット58b、及びインナーリング58c等から成る管継手部58は公知構造に付き、ここでの詳細な説明は割愛する。
エアオペレイト弁27,28の開閉動作を説明すると、エア給排部56にエアが供給されていない場合(排気状態)では、図10(a)に示すように、コイルバネで成る戻しバネ55の付勢力によってピストン54が押し下げられ、弁体61が弁座62に当接して円環路51Aと末端縦向き路52Aとが断絶する閉弁状態となる。そして、エア給排部56から高圧のエアがシリンダ室53Sに供給されると、図10(b)に示すように、ピストン上端面54aが蓋ケース59の下端面59bに当接するまで戻しバネ55の付勢力に抗してピストン54が上昇移動され、弁体61が弁座62から所定距離浮上して離れて第1流路51と第2流路52とが連通する開弁状態になる。
弁の開閉応答性を良くする点からは、弁体61のリフト量r〔図10(b)参照〕を小さくするのが良いが、開弁状態に十分な流量(単位時間当たりの流量)を確保することからある程度の値(=r)が必要であり、あまり小さくはできない。そこで、弁体61の移動速度を素早くして応答性を良くすることが考えられ、そのためには戻しバネ55をバネ定数の高い強力なものにし、かつ、開弁するためのエア圧をそれに打ち勝つ高いものに設定することになる。従って、エアオペレイト弁27,28では、エア解除(エア排気)に伴って弁体61が瞬間的に戻り移動して弁座62に当接するので、その弁体61の急速な戻り移動が一種のポンプのような作用を為し、ノズル33の液面をやや押出すことがありうる。これが前述のリバウンド現象である。
ニードル弁42,43は、図11に示すように、互いに共通の軸心Xを有して対向配置される一対の給排路45,46、軸心Xに直交する縦軸心Yを持つリング状のガイドケース47、これら給排路45,46や黄銅製のガイドケース47を収容する合成樹脂製の弁ボディ44、黄銅製のニードル48、ロックナット49等を有して構成されている。ガイドケース47の下端部47Aは、シールリング60を介して弁ボディ44のリング隔壁部44Aに密封内嵌されており、その上下に第1給排路45の第1末端路45aと第2給排路46の第2末端路46aとが振り分け形成されている。
ニードル48は、弁ボディ44に一体的に組み込まれているガイドケース47の上端部に螺入されており、ツマミ48Aの回し操作により、ガイドケース47に対して上下移動可能であるとともに、ロックナット49の操作によって適宜の上下方向位置において係止維持可能である。リング隔壁部44Aの中心孔44aには、上端にツマミ48Aを備えたニードル48の先窄まりテーパ状の先端ニードル48Nが挿入されており、先端ニードル48Nの上側にはより急なテーパ角を有するストップ部48sが形成されている。
つまり、ツマミ48Aを右回ししてニードル48を下降移動させ、ストップ部48sで中心孔44aを閉塞すれば閉弁状態になり、その状態からツマミ48Aを左回ししてニードル48を徐々に持上げると、中心孔44aと先端ニードル48Nとの間にリング状の流体通路(符記省略)が形成されて絞りが効いて第1末端路45aと第2末端路46aとが連通する開弁状態にすることができる。そして、ニードル48の上昇量を大きくすればするほど、前記流体通路の面積が広くなって絞りを緩くすることができる。即ち、ニードル弁42,43は、ツマミ48Aの回し操作で絞り効果(絞り量)を可変設定できる可変絞り弁である。
次に、実施例1によるシステム(図1を参照)において新たな生じてきた不都合状況について説明する。サックバック工程終了後にポンプPの吐出側弁である吐出側エアオペレイト弁28を閉じた際に、前述のリバウンド現象により、吸入された薬液eの液面がノズル33内にて再下降することがある。即ち、図12に示すように、サックバック動作によってノズル33の下端から高さHに液面が吸入されるが、その高さHは、リバウンド現象による再下降量hを見越した引上げたかさとして設定されている。ゆえに、例えリバウンド現象が生じても、H>hであるから、破線で示すノズル33のように再下降した薬液eの液面は依然としてノズル下端よりは上に位置するはず(即ち、OK!)である。
しかしながら、場合によっては吐出側弁28の閉じ動作(弁体39の急激な戻り移動)によって、高さHま吸入された薬液eが予想より大きく再下降し、×が施された仮想線の経路に従って示されるノズル状況(図12で最も紙面右側に上下のカッコ付きで描かれているノズル33)のように、吐出側エアオペレイト弁28の閉じ動作に起因して気泡の混入もしくはノズル33から液だれが生じるおそれがあったのである。これが吐出側弁28を応答性に優れるエアオペレイト弁を用いたことによる新たな問題である。
そこで、その新たな問題を解決するための手段が、電磁制御弁39とエアオペレイト弁27,28との間にニードル弁42,43を介装することである。即ち、図9に示すように、可変絞り弁であるニードル弁42,43を通したエアを吸入側及び吐出側の各エアオペレイト弁27,28に供給することにより、図13に示すように、サックバック動作後の吐出側エアオペレイト弁28の閉じ操作に伴う弁体61の弁座62への開弁作用は変わらず移動速度が緩慢なものに制御されてポンプ作用による悪影響が解消又はほぼ解消され、リバウンド現象による悪影響が消滅又はほぼ消滅するのである。図13の紙面上側に描かれているように、例え、僅かにリバウンド現象が生じたとしても、それによる薬液eの液面再下降量は、図12に示す不都合時の再下降量hに比べて著しく小さいd(d<<h)で済み、不測の液だれが未然に防止される。
また、再下降量が小さくなったことにより、図13の紙面下側に、仮想線の矢印で示す順序によって描かれているように、サックバック動作による液面の上昇量自体を少なくして、エアオペレイト弁27,28を用いたことによる新たな問題が生じないよういにしながら、システムとしての応答性がさらに改善可能となるようにすることもできる。
図9においては、吸入側弁27もエアオペレイト弁として吸入側ニードル弁42も介装させる構成とされており、念のために吸入側エアオペレイト弁27のリバウンド現象による悪影響も出ないようにされているが、ノズル33からの液だれを解消させる目的のみで良ければ、吸入側ニードル弁42を省くことは可能である。
27 吸入側弁
28 吐出側弁
29 吸入側流路
30 吐出側流路
39 制御弁
40 吸入側エア給排路
41 吐出側エア給排路
42,43 絞り手段
61 弁体
62 弁座
P ポンプ
28 吐出側弁
29 吸入側流路
30 吐出側流路
39 制御弁
40 吸入側エア給排路
41 吐出側エア給排路
42,43 絞り手段
61 弁体
62 弁座
P ポンプ
Claims (4)
- 液体用のポンプと、前記ポンプに対する吐出側流路を開閉する吐出側弁と、前記ポンプに対する吸入側流路を開閉する吸入側弁とを有し、前記吐出側弁を閉弁し、かつ、前記吸入側弁を開弁して前記ポンプを吸入動作させる吸入駆動状態と、前記吐出側弁を開弁し、かつ、前記吸入側弁を閉弁して前記ポンプを吐出動作させる吐出駆動状態とが切換可能に構成されている液体ポンプシステムであって、
前記吐出駆動状態から前記吸入駆動状態に切換わるときには、前記吐出駆動状態の終了に伴って、前記吐出側弁を開弁し、かつ、前記吸入側弁を閉弁して前記ポンプを吸入動作させる逆駆動状態を経て前記吸入駆動状態に切換えられるとともに、
前記吐出駆動状態から前記逆駆動状態に切換わるときは、前記吐出側弁の開弁状態と前記吸入側弁の閉弁状態とが維持されている状態で前記ポンプが前記吐出動作から直ちに前記吸入動作に切換えられるように構成されており、
前記吐出側弁及び前記吸入側弁が、エアを用いて弁体を動かすことで前記弁体が弁座に当接している閉弁状態と前記弁体が前記弁座から離れている開弁状態との切換えが可能なエアオペレイト弁に構成され、
前記吐出側弁及び前記吸入側弁へのエア給排を制御する制御弁と前記吐出側弁及び前記吸入側弁とを接続する吐出側及び吸入側のエア給排路を設けるとともに、前記吐出側エア給排路を通るエアに絞り作用する絞り手段が配備されている液体ポンプシステム。 - 前記吸入側エア給排路を通るエアに絞り作用する絞り手段が配備されている請求項1に記載の液体ポンプシステム。
- 前記絞り手段が可変絞り弁である請求項1又は2に記載の液体ポンプシステム。
- 前記可変絞り弁としてニードル弁が採用されている請求項3に記載の液体ポンプシステム。
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