JP4700998B2 - Zn含有窒化鉄系粉末 - Google Patents

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Description

本発明は、高記録密度の磁気記録媒体に適した窒化鉄系の磁性粉末に関する。
近年の磁気記録媒体には一層の高記録密度化が望まれており、それを達成するために記録波長の短波長化が進められてきている。磁性粒子の大きさは、短波長の信号を記録する領域の長さよりも極めて小さくなければ、明瞭な磁化遷移状態を作り出すことができず、実質的に記録不可能となる。よって、磁性粉末には、その粒子の大きさが記録波長よりも十分に小さいことが要求される。
また、高密度化を進めるためには記録信号の分解能を上げる必要があり、そのために磁気記録媒体のノイズを低減することが重要となる。ノイズは粒子の大きさによる影響が大きく、微粒子であればあるほどノイズの低減が進む。よって、高記録密度用の磁性粉末としては、この点からも粒子の大きさが十分に小さいことが要求される。
しかし、微粒子になるに従って、お互いの粒子同士が一つ一つ独立して存在することが難しくなり、データストレージ用として一般的に使用されるメタル磁性粉の場合でも著しく微粒子化すると、その製造過程の還元時において焼結しやすいといった問題がある。焼結を起こしてしまうと、粒子体積が大きくなるため、ノイズの発生源となり、またテープ化する際には、分散性の悪化や、表面平滑性が損なわれるなどの悪影響を及ぼす。高密度記録媒体に適した磁性粉末としては、磁性体として磁気特性が良好であることが必要であるが、それ以上にテープ化する際の粉体特性すなわち、粒子サイズ、粒度分布、比表面積、TAP密度、分散性などが重要である。
これまでに、優れた磁気特性を持つ高密度記録媒体に適した磁性粉末としてFe162相を主相とする窒化鉄系磁性粉末が知られており、特許文献1に開示されている。例えば特許文献1には、高保磁力(Hc)、高飽和磁化(σs)を発現する磁性体として比表面積の大きな窒化鉄系の磁性体が開示され、Fe162相の結晶磁気異方性と磁性粉末の比表面積を大きくすることの相乗効果として、形状に因らず高磁気特性が得られると教示されている。
特許文献2には、特許文献1に改良を加えた磁性粉末として、本質的に球状ないし楕円状の希土類−鉄−ホウ素系、希土類−鉄系、または希土類−窒化鉄系の磁性粉末が記載されており、それらを用いてテープ媒体を作製すると優れた特性が得られると教示されている。なかでもFe162相を主相とする希土類−窒化鉄系磁性粉末は20nm程度の微粒子であるにもかかわらず、保磁力が200kA/m(2512Oe)以上と高く、また、BET法による比表面積が小さいことから飽和磁化も高く、保存安定性もよいとされ、この希土類−窒化鉄系磁性粉末を使用することにより、塗布型磁気記録媒体の記録密度を飛躍的に高めることができると記載されている。また、特許文献2の実施例には20nm以下の粒子サイズレベルの磁気特性に優れた粒子の記載がある。
この希土類−窒化鉄系磁性粉末の製法は、希土類元素とAl、Si、の1種または2種を粒子表面に被着したマグネタイトを還元することによって希土類―鉄系の磁性粉末にした後、NH3ガスによる窒化処理を行うアンモニア窒化法であり、この窒化処理で生成するFe162相の大きな結晶磁気異方性により、高記録密度媒体に適した磁性粉末すなわち微粒子でかつ高Hc、高σs等の特性を有する磁性粉末を得ることができる。
特開2000−277311号公報 国際公開第03/079333号パンフレット
平均粒子径が20nm以下にもなると、粒子径を1nm小さくするだけでも粒子体積の低減効果は非常に大きい。例えば40nmから39nmに小さくする場合だと粒子体積はは93%に低減するにとどまるが、20nmから19nmに小さくする場合は86%にまで減少する。また、体積低減効果が大きくなるに伴い比表面積の増大効果も高まる。しかしながら、粒子径が小さくなると途中の製造過程で焼結が起こりやすくなるという問題がある。磁気特性について高いポテンシャルを有しているものでも、焼結が起きると本来の優れた磁気特性が十分発揮されなくなるだけでなく、粒度分布や分散性を阻害するようになり、結果として塗布型磁気記録媒体には適用しにくいものとなってしまう。
特許文献2では、大きな結晶磁気異方性を持つFe162相を生成させる際、焼結防止剤として、Si、Al、希土類元素(Yを含む)などを粒子表面に被着することにより、焼結のない微粒子を作製している。しかし、この被着により焼結防止を行う方法は、被着の条件が不十分な場合、粒子ごとに焼結防止剤の被着の度合いが異なるので、十分に被着されたところは焼結防止できる反面、あまり被着されていないところは焼結してしまう。その結果、得られる粉体の粒度分布が悪化する問題がある。特に微粒子になると粒子は凝集しやすく、凝集体として振る舞うため、被着ムラが生じやすい。粒度分布の悪化は、テープの表面性を悪化させる原因となり、ひいてはテープの電磁変換特性を悪化させる。
また、粒子が凝集せず均一に分散されていたとしても、被着による焼結防止法では、微粒子化して比表面積が増えると、全ての表面をコーティングするためには比表面積の増大に応じて焼結防止剤量も増やさなければならない。さらに、Siを焼結防止剤として使用する場合、Siは吸着力が強く高い焼結防止効果が得られるが、その反面、Si同士の結合も強いために粒子の分散性を阻害しやすい。
そこで、本出願人はこのような問題を解決すべく種々検討の末、窒化鉄系磁性粉末製造の出発材料としてAlを固溶したゲーサイトを使用すると、粒度分布が狭く焼結の少ない平均粒子径20nm以下の窒化鉄系磁性粉末が得られることを見出し、特願2004−76080号として提案した。この窒化鉄系磁性粉末はテープ化する際に良好な分散性を呈するものである。
ところが、Alを固溶したゲーサイトを使用すると、分散性を阻害することなく焼結防止を図ることができるものの、Fe162への窒化がうまく進行しないという事態が生じることがあった。窒化が不十分だとα−Fe相が多く残存してしまい磁気特性、特に保磁力Hcの低下を招く。
本発明はこのような現状に鑑み、Alを固溶したゲーサイトを使用することにより焼結防止および分散性確保を図ったFe162相主体の窒化鉄系磁性粉末において、さらに、窒化の進行を改善したものを提供しようというものである。
発明者らは種々検討の結果、Znを被着させたゲーサイトを原料として還元処理を経て生成したα−Fe粉末に対し、窒化処理を施すと、磁気特性に優れたFe162相主体の窒化鉄系粉末が得られることを見出した。そのゲーサイトとしては特にAlを固溶させることによって焼結防止を図ったものを適用することが好ましい。窒化の進行が改善された好ましいFe162相主体の窒化鉄系粉末は、窒化後に例えばZnをFeに対する原子比(すなわちZn/Fe原子比)で0.05〜5%含有するものである。
ここで、Zn/Fe原子比は、粉末中のZn含有量(原子%)とFe含有量(原子%)を測定し、次式、
Zn含有量(原子%)/Fe含有量(原子%)×100
により求めることができる。
Alは、Feに対する原子比で0.1〜20%含有していることが好ましい。このようなものにおいては優れた焼結防止効果が発揮される。粉末中に含まれる上記Alの含有量はゲーサイト中に固溶していたAlが主体となるが、焼結防止効果を高めるためにはAlの被着処理をも行うことも有効であり、その場合は、被着Alの分も上記Al含有量に含め粒子設計を行う。このような本発明のFe162相主体の窒化鉄系粉末として、長径(それぞれの粒子の中で最も長い径を測定して得られる長さ)の平均粒子径が20nm以下に微粒子化したものが提供される。
ここで、「Fe162相主体の窒化鉄系粉末」とは、評価対象となる粉末についてCo−Kα線によるX線回折を行ったとき、そのX線回折パターンにおいて、回折角2θが10〜120°の範囲にある回折ピークのうち最も高いピークが49.5〜50.5°の位置に出現するものをいう。そして特に、そのX線回折パターンにおいて、2θ:49.5〜50.5°の範囲におけるピークの高さI50と、2θ:51.5〜53.0°の範囲におけるピークの高さI52との間に下記(1)式の関係が成り立つものが好適な対象となる。
50/I52≧1.5 ……(1)
ただし、ピークの高さはX線回折強度(cps)に比例する量として定まる値を採用して比の値を算出する。
本発明によれば、Znを被着させたゲーサイトを使用することにより、窒化が十分に進行した磁気特性の良好なFe162相主体の窒化鉄系粉末が提供可能になった。特に、Alを固溶させた後、さらにZnやAlを被着させたゲーサイトを還元処理に供することができるので、Al固溶+Al被着による優れた焼結防止効果と、Zn被着による窒化促進効果とを両方同時に享受することができる。このため、従来のSi被着による焼結防止手段を採用する必要がなく、Si被着で問題になった分散性低下のデメリットが回避できる。したがって本発明は、磁気特性の面および粉体特性の面において、塗布型磁気記録媒体に好適な磁性粉を提供するものである。
本発明では、ゲーサイト(オキシ水酸化鉄)に由来するα−Feを窒化処理して得られるFe162相主体の窒化鉄系磁性粉末を対象とする。ゲーサイトからα−Feを得るには水素などの雰囲気で還元処理を行う必要がある。ゲーサイトから直接α−Feを得ることもできるし、中間物質として鉄酸化物を生成させる過程をとってもよい。いずれの場合も、水素などの還元雰囲気中で熱処理を施すのが一般的である。この還元熱処理に際しては粒子同士の焼結を防止することが重要となる。焼結防止手段としては前述のようにSiを被着する方法や、Alを固溶する原料粉を使用する方法などがあるが、塗布型磁気記録媒体への適用を考慮すると、後者のAl固溶による方法が分散性等の面で有利といえる。ただし、後者の場合、窒化の進行が抑制されるというマイナス要因を抱えており、その克服法の確立が待たれていた。
発明者らの詳細な研究の結果、Alを固溶させたゲーサイトであっても、Znをさらに被着させることにより、窒化の進行のし易さが顕著に改善され、保磁力に優れた微細な窒化鉄系粉末が得られることがわかった。その際、粉末中におけるZnの存在量として、Feに対する原子比(Zn/Fe原子比)で0.05%以上を確保することが望ましい。それよりZnが少ないと十分な窒化促進効果が得られない。Zn/Fe原子比の上限については、窒化促進効果が十分に得られ、かつ他の特性(磁気特性や粉体特性)を阻害しない限り特に制限はないが、Zn/Fe原子比が5%を超えるとFeの含有量が減少することに起因してσsが低下し、磁気記録媒体として必要な記録信号を得ることが難しくなる。通常、Zn/Fe原子比は0.1〜3%の範囲で良好な結果が得られる。
窒化し易いということはFe162相が生成され易いということであり、具体的には同じ条件で窒化処理を施した場合、窒化処理後にFe162相の存在率がより高く且つα−Feの存在率がより低くなるということである。特性X線を照射したX線回折によれば、Fe162相の最も強度の高い回折ピークとα−Feの最も強度の高い回折ピークはかなり近い位置に出現する。例えばCo−Kα線を用いたX線回折では、Fe162相の前記ピークは回折角2θが49.5〜50.5°の間に出現し、α−Feのそれは2θが51.5〜53.0°の間に出現する。これら2つのピーク高さ(回折強度(cps)に比例した値としてプロットしたもの)の相対的な比を調べることによって、窒化のし易さを評価することができる。
発明者らの検討によれば、実用的な窒化処理の条件で製造された窒化鉄系粉末において、Co−Kα線を用いて測定されたX線回折パターン上の、2θ:49.5〜50.5°の範囲におけるピークの高さI50と、2θ:51.5〜53.0°の範囲におけるピークの高さI52との間に下記(1)式、
50/I52≧1.5 ……(1)
の関係が成り立つ粉末は、窒化が十分に進行しており、平均粒子径が同レベルのもので比べた場合、それぞれの粒子径に応じた用途において優れた磁気特性を発揮することがわかった。特に平均長径が20nm以下に微粒子化された窒化鉄系粉末において上記(1)式を満たすものは、記録密度の高い塗布型磁気記録媒体用の磁性粉として好適な磁気特性を発揮する。
Znを被着したゲーサイトを使用したときに窒化の進行が改善されるメカニズムについては、現時点で明らかにされていない。ただ、後述の図1から判るように、本発明の窒化鉄磁性粉末では粒子の最外層にZnの濃化した酸化物皮膜が形成されている。このZnの濃化した酸化物皮膜は、Znを含まない酸化物皮膜と比べ、内部への窒素の進入が生じやすい構造をもつのではないかと推察される。
本発明の窒化鉄系粉末は、例えば以下のような製造法により得ることができる。
出発原料としては、優れた焼結防止効果を付与するために、内部にAlが固溶しているゲーサイトを用意することが望ましい。このようなゲーサイトを得るには、ゲーサイトを湿式法で合成する際にAlを同伴させる。例えば、第一鉄塩水溶液(FeSO4、FeCl2などの水溶液)を水酸化アルカリ(NaOHやKOH水溶液)で中和した後、空気などで酸化してゲーサイトを生成させる方法では、このゲーサイトの生成反応を、Al含有塩が存在する環境下で行えばよい。また、第一鉄塩水溶液を炭酸アルカリで中和した後、空気などで酸化してゲーサイトを生成させる方法でも、このゲーサイトの生成反応をAl含有塩の存在下で行えばよい。別法として、第二鉄塩水溶液(FeCl3などの水溶液)をNaOHなどで中和してゲーサイトを生成させる反応を、やはりAl含有塩との存在下で行ってもよい。
次に、このゲーサイトにZnを被着させる。例えば、上記のAl固溶ゲーサイトを水中に分散させた後、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛などの水溶性Zn含有塩を添加して、アルカリで中和する方法や、該分散液から水を蒸発させる方法などによって、粒子表面にZnを被着させることができる。Znの被着量は、上記所望のZn/Fe原子比になるように調整することが望ましい。この段階でのZn/Fe原子比は、概ね窒化処理後のFe/Zn原子比にそのまま反映される。被着量の調整はZn含有塩の濃度を変えることによって可能である。
Znのみを被着させたゲーサイトをそのまま還元処理に供することもできるが、より高い焼結防止効果を得るために、Al、希土類元素(Yを含む)などの1種以上を被着させることが望ましい。これらは、上記のZnの被着と同時に行うことができる。その場合、必要な被着元素を含む水溶性塩を上記Zn含有塩とともに添加した液を使用すればよい。Al源、希土類元素(Yを含む)源となる塩としては、それぞれ例えばアルミン酸ナトリウム、硝酸ランタンおよび硝酸イットリウムを挙げることができる。その他、Zr、Mo、W、P、Bなどを被着させることも焼結防止効果を高める上で有効である。
ゲーサイトに固溶させるAl量および被着させるAl量は両方の総和がFeに対するAl/Fe原子比で0.1〜14%、好ましくは1〜10%程度とすればよい。Al/Fe原子比が0.1%未満だと、その磁性粉末のσsは高くなるが、十分な焼結防止効果が得られない。逆に14%を超えると焼結防止効果は十分であるが、Zn被着の手法を採用しても窒化の進行促進効果が不足する。ゲーサイトに被着させるAlを除く焼結防止剤の量(Yを含む希土類元素などの総量X)はFeに対する原子比X/Feで0.1〜10%好ましくは0.1〜5%とすればよい。
このようにして得られたゲーサイトはろ過・水洗工程を経た後、200℃以下の温度で乾燥し、これを還元処理に供することができる。あるいはゲーサイトを、200〜600℃で脱水する処理や、水分濃度5〜20%の水素雰囲気で還元する処理に供して、一旦中間物質とし、これをさらに還元処理してもよい。この中間物質は鉄と酸素の化合物であれば特に限定されるものではなく、ゲーサイト(初期のものが変性したもの)、ヘマタイト、マグヘマイト、マグネタイト、ウスタイトなどが挙げられる。これらの平均粒子径は35nm以下であることが望ましい。35nmよりも大きい場合には、最終的に得られる窒化鉄系磁性粉末の粒子径も大きくなり、その結果粒子体積が大きくなって短波長記録に適さず、また、その磁気テープの表面平滑性も悪くノイズも高くなるので、高記録密度磁気記録媒体用の磁性粉末には適さなくなる。
次いで、ゲーサイトあるいは上記中間物質をα‐Feに還元する。還元処理は一般的に水素(H2)を使用した還元方法が適しており、温度は300〜600℃が好ましい。300℃よりも低いと還元が不十分となることがあり、その場合、酸素が残留して窒化処理の速度が著しく低下することがある。還元温度が600℃を超えると、Al等の焼結防止剤を含有させる対策をとっても粒子間の焼結が起こりやすく、平均粒子径の増大や分散性の悪化を招き好ましくない。
窒化処理自体は、同出願人による特開平11−340023号広報に記載されているアンモニア法を適用することができる。すなわちアンモニアに代表される窒素含有ガスを200℃以下で流しながら、数時間から数十時間保持することによってFe162相を主体とする窒化鉄粉体を得ることができる。なお、この窒化処理に使用するガス中の酸素量は数ppmもしくはそれ以下であることが望ましい。
この窒化処理のあとは、窒素中に酸素を0.01〜2体積%程度含有させた混合ガスで粒子表面を徐酸化し、大気中でも安定に取り扱える窒化鉄系磁性粉末とするのが好ましい。
なお、高記録密度磁気記録媒体に適用するには、長径の平均径が20nm以下の微細な窒化鉄系粉末であることが望ましいが、そのような粒子径のコントロールは、原材料であるゲーサイトの空気酸化の割合や時間、温度を制御することによって行うことができる。
以下に本発明の実施例を挙げるが、その前に、各実施例で得られた特性値を測定した方法について予め説明しておく。
〔組成分析〕
磁性粉末中のFeの定量は平沼産業株式会社製平沼自動滴定装置(COMTIME−980)を用いて行った。
〔粉体バルクにおける磁気特性〕
磁気特性(保磁力Hc、飽和磁化σs)の測定:VSM(デジタルメジャーメントシステムズ株式会社製)を用いて、最大796kA/mの外部印加磁場で測定した。
〔平均粒子径〕
30万倍の透過型電子顕微鏡写真として映し出された粒子のうち、2粒子もしくはそれ以上粒子が重なっているのか焼結しているのか判別できない粒子を除き、粒子同士の境界が判別できる粒子1000個について、それぞれの粒子の中で最も長い径を測定して得られる長さの平均値を用いた。
〔ESCAによる各元素の濃度分布測定〕
窒化鉄系粒子の表面付近における元素濃度の深さ方向プロファイルを調べるため、ESCAを用いて測定を行った。測定は、アルバック・ファイ(株)製、5800を用い、X線源:Al陽極線源、150W、分析面積:800μmφ、中和銃:使用、試料調整:試料ホルダー上にセット、取り出し角:45°、Arスパッタリング速度:8.7nm/min(SiO2換算値)の条件で測定した。
ESCA測定において、粒子表面に濃化している元素は、測定開始直後にもっとも高濃度に検出され、その後検出濃度が低下し、ある濃度で一定になる。このことから例えばZnと酸素の濃度変化が上記の変化を示す場合だと、Znが粒子外層の酸化膜層に主体的に存在するといえる。
〔実施例1〕
0.2モル/L(Lはリットルを表す)のFeSO4水溶液4Lに、12モル/LのNaOH水溶液0.5Lと、アルミン酸ナトリウム水溶液を加えた上で、40℃の液温を維持しながら空気を300mL/minの流量で2.5時間吹き込むことによりAlを固溶した澱物(ゲーサイト)を得た。
このゲーサイトの澱物をろ過・水洗したうえ再度水中に分散させた。その分散液に硝酸亜鉛水溶液および硝酸イットリウム水溶液を加え、40℃でアルミン酸ナトリウム水溶液およびNaOH水溶液を添加してpH=7〜8に調整し、粒子表面にZn、YおよびAlを被着させた。その後、液をろ過して得た固形分を水洗したのち、空気中110℃で乾燥した。
得られた粉末はX線回折の結果ゲーサイトを主体とする化合物であることが確認された。このゲーサイト粉末の長径の平均粒子径は30nmであった。この粉末を出発原料とし、500℃、3時間水素ガスにより還元処理をした後100℃まで冷却し、この温度で水素ガスをアンモニアガスに切り替え、再度昇温して、140℃に達したところで、20時間窒化処理を行った。窒化処理後は80℃まで冷却し、窒素ガスに切り替えた。そして、この窒素ガスに0.01〜2%のO2濃度となるように空気を添加して粒子表面を徐酸化処理し、得られた粉末を大気中に取り出した。
得られた粉末は電子顕微鏡写真から、平均粒子径17nmの球状ないし楕円状の粒子で構成されていることがわかった。X線回折の結果これはFe162相を主体とする窒化鉄系粉末であり、I50/I52=1.69であった。この窒化鉄粉末の組成、特性などを表1に示してある。また、ESCAによる表面付近の元素濃度のプロファイルを図1に示してある。図1(b)は、同(a)のZnの曲線を縦方向に拡大表示したものである。
〔比較例1〕
Znを被着させなかったこと(Zn源として液中に硝酸亜鉛を添加しなかったこと)を除き、実施例1と同様にして窒化鉄系粉末を作製した。
得られた粉末は電子顕微鏡写真から、平均粒子径18nmの球状ないし楕円状の粒子で構成されていることがわかった。X線回折の結果これはFe162相を主体とする窒化鉄系粉末であり、I50/I52=1.39であった。この窒化鉄粉末の組成、特性などを表1に示してある。また、ESCAによる表面付近の元素濃度のプロファイルを図2に示してある。図2(b)は、同(a)のZnの曲線を縦方向に拡大表示したものである。
〔比較例2〕
比較例1に比べてゲーサイトに固溶させるAlの添加量を増加させたことを除き、比較例1と同様にして窒化鉄系粉末を作製した。
得られた粉末は電子顕微鏡写真から、平均粒子径17nmの球状ないし楕円状の粒子で構成されていることがわかった。X線回折の結果、I50/I52=0.86であった。この粉末の組成、特性などを表1に示してある。
表1で示すように、比較例1であっても、平均粒子径が20nmといった非常に小さい径を有する磁性粉末が得られている。しかし、磁気記録密度をさらに向上させるためにはさらなる微粒子化が必要で、粒子の焼結をいかに抑制するか検討しなければならない。比較例2ではゲーサイトの固溶Alを増量したことにより比較例1よりは焼結防止効果が大きく、微粒子のものが得られている(すなわち長径の平均粒子径が小さくなっている)。しかし、窒化がどの程度進んだかを判断する指標となるI50/I52値は非常に低く、Alの固溶量を増やすことによって窒化が進行しにくいものになっていることがわかる。これに対し、Al固溶量を増加させる代わりにZnを被着させた実施例1では、比較例2と同等に微粒子のものが得られており、焼結防止効果がAlの固溶量を多くしたものと同等に高くなったことがわかる。さらに、I50/I52が1.5を超えて高く、窒化も十分に進行しており、そのため保磁力Hcの向上が見られ、200kA/mを上回る高保磁力を呈するものが得られている。なお、飽和磁化σsは逆に若干低下する傾向が見られるが、比較例ではI50/I52<1.5であるので、Fe相が多く存在し、このためFe相の飽和磁化が影響して実施例よりも高くなっている。このことから、比較例では、Fe162相とFe相の2相が存在することがわかり、2相が混合された状態は磁気特性に悪影響を及ぼすので磁気記録媒体の磁性体としては好ましくない。
図1から、本発明の窒化鉄系粉末は表面付近の酸化物皮膜中にZnが濃化していることがわかる。
なお、参考のため、図3、図4、図5にはそれぞれ実施例1、比較例1および比較例2で得られた窒化鉄系粉末の透過型電子顕微鏡写真を示す。各写真とも、掲載している視野の横方向両端の距離が約580nmに相当する。
実施例1の窒化鉄系粉末についてESCAによる元素濃度の深さ方向プロファイルを示すグラフ。 比較例1の窒化鉄系粉末についてESCAによる元素濃度の深さ方向プロファイルを示すグラフ。 実施例1で得られた窒化鉄系粉末の透過型電子顕微鏡写真。 比較例1で得られた窒化鉄系粉末の透過型電子顕微鏡写真。 比較例2で得られた窒化鉄系粉末の透過型電子顕微鏡写真。

Claims (4)

  1. Znを被着させたゲーサイトを還元して得られたα−Fe粉末に窒化処理を施してなるFe162相主体の窒化鉄系粉末。
  2. 前記ゲーサイトが固溶Alを含むものである請求項1に記載の窒化鉄系粉末。
  3. 平均粒子径が20nm以下である請求項1又は2に記載の窒化鉄系粉末。
  4. Co−Kα線によるX線回折を行ったとき、X線回折パターンの2θ:49.5〜50.5°の範囲におけるピークの高さI50と、2θ:51.5〜53.0°の範囲におけるピークの高さI52との間に下記(1)式の関係が成り立つ請求項1〜3のいずれかに記載の窒化鉄系粉末。
    50/I52≧1.5……(1)
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