JP4695938B2 - 工程離型材 - Google Patents

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本発明は工程離型材に関する。
従来、合成皮革は離型紙の上にポリウレタン溶液を塗布して表面層を形成し、乾燥、溶剤蒸発させた後、表面層上に接着層を塗布し、編織布又は不織布からなる基体と貼り合わせ、40℃の温度下に約2日間おいてキュアリングし、しかる後離型紙を剥離し、プリント、艶調整等の仕上げ処理することにより製造されている(非特許文献1参照)。この合成皮革の製造に用いられる離型紙として、アクリレートを主成分とする電子線硬化性樹脂組成物からなる剥離層を有する工程剥離紙がある。しかし、アクリレートがシリコーンに比べ極性が高く、アクリレートを主成分とする電子線硬化性樹脂組成物からなる剥離層を有する剥離紙は合成皮革の剥離が重く、全く剥離できない場合が多い。この剥離紙の合成皮革剥離性を改善するためにシリコンオイルのような剥離性物質を剥離層を構成する電子線硬化性塗料組成物に添加しても、キャストすると添加したシリコンオイルが有効に表面に分布せず剥離性改善効果が得られないことがある。また、剥離性改善効果が当初は見られても、繰り返し合成皮革の作成に使用することにより、工程剥離しの表面の剥離性物質が合成皮革に取られてしまい、剥離性改善効果が減少してしまうという問題があった(特許文献1参照)。
財団法人日本化学会、化学便覧 応用化学編、丸善株式会社、昭和61年10月15日、P,685−686 特公昭63−2780号公報
本発明の課題は、上記した従来の欠点を解消し、離型層の材料としてアクリル系樹脂を用い、離型層の合成皮革との剥離性を向上させた工程離型材を提供することである。
請求項1に記載の発明は、上記の課題を解決するもので、基材上にエンボスパターンを有するアクリル系電離放射線硬化性樹脂の硬化膜からなる離型層を設け、該離型層上に金属又は金属酸化物の薄膜を設けたことを特徴とする合成皮革製造用工程離型材を要旨とする。
本発明において金属又は金属酸化物の薄膜として金属又は金属酸化物の蒸着膜を適用し得る。
本発明の工程離型材は、基材上にエンボスパターンを有するアクリル系電離放射線硬化性樹脂の硬化膜からなる離型層を設け、該離型層上に金属又は金属酸化物の薄膜を設けたことを特色とするので、アクリル系電離放射線硬化性樹脂の硬化膜からなる離型層が金属又は金属酸化物の薄膜で覆われていることにより、離型層は−NCOに対して不活性化され、それによってその上に塗工する合成皮革の表面層との離型性が向上せしめられる。また、従来のように離型層に剥離剤等を含ませる必要もない。また、エンボス加工時に離型層の樹脂がエンボスロールに付着することもなく、輪郭のはっきりしたエンボスパターンを離型層に付与することができる。
図1は本発明の工程離型材を示す。
図1に示すように、本発明の工程離型材5は、基材1上にエンボスパターン3を有するアクリル系電離放射線硬化性樹脂の硬化膜からなる離型層2を備え、この離型層2上に金属又は金属酸化物の薄膜4を備える。このように構成されているので、離型層2は、金属又は金属酸化物の薄膜4で覆われていることにより、合成皮革の製造に用いられる接着剤に含まれる−NCOに対して不活性化され、それによってその上に塗工する合成皮革の表面層との離型性が向上せしめられる。また、従来のように離型層2に剥離剤等を含ませる必要もない。また、エンボス加工時に離型層の樹脂がエンボスロールに付着することもなく、輪郭のはっきりしたエンボスパターンを離型層に付与することができる。
本発明において、基材1としてはクレーコートした耐熱性のある中性紙、耐熱性が良い二軸延伸ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム等を用いることができる。基材として紙を用いる場合、特に片面にクレーコート層を有する原紙からなり、前記原紙は、230℃において3分間放置しても、JISP8113による引張り強さは、少なくとも縦方向で10KN/mN以上に維持され、JISP8116による引裂き強さが、縦方向、横方向共に500mN以上に維持される耐熱性を有する中性紙であり、且つ前記クレーコート層は、原紙のパルプ繊維による表面凹凸を吸収するように100秒以上のJISP8119による平滑度を有する原紙が好ましい。この原紙は、合成皮革の製造工程において5回以上の繰り返し使用に耐え、転写の過程で離型紙の伸び等を生ずることなく高い転写精度で離型紙の型を転写して風合いのある合成皮革を形成する。また、紙基材の坪量は、製品としての強度、合成皮革加工作業性、離型紙の繰り返し使用耐久性及びエンボス加工適性の面から100〜200g/m2であることが好ましい。坪量が100g/m2より低いと合成皮革の製造時にカールや波打ちが発生し易くなる。逆に坪量が200g/m2より高くなるとエンボス加工性が悪く、また、離型紙が厚くなることによりその巻き径が大きくなって作業性が低下する。また、クレーの塗工量は、5〜540g/m2が好ましい。5g/m2よりも少ないと必要な平滑性が得られない。一方40g/m2より多くなるとエンボスの賦型性が低下する。
次に、本発明において離型層2の材料として用いることができる樹脂の代表的なものを挙げると、下記の通りである。
(1)ポリエステルアクリレート、ポリエステルメタクリレート。
(2)ウレタンアクリレート、ウレタンメタクリレート。
(3)単官能アクリレート、単官能メタクリレート、アクリロイル化合物、アクリルアミド化合物;例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、アクリロイルモルフォリン、ベンジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、ブトキシエチルアクリレート、アクリルアミドエーテル化合物等。エチレンオキシド変性フェノキシ化燐酸アクリレート、エチレンオキシド変性ブトキシ化燐酸アクリレート等。
(4)多官能アクリレート、多官能メタクリレート;例えば、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、イソシアヌル酸トリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレンオキシド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、プロピレンオキシド変性ジペンタエリスリトールポリアクリレート、ペンタエリスリトールアクリル酸付加物のアクリレート。
(5)エポキシアクリレート、エポキシメタクリレート。
次に金属又は金属酸化物の薄膜3としては、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等により形成した、アルミニウム(Al)、珪素(Si)、錫(Sn)、チタン(Ti)、鉛(Pb)等の金属、又はアルミニウム(Al)、珪素(Si)、錫(Sn)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、ナトリウム(Na)、硼素(B)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)等の金属の酸化物の薄膜を適用することができる。
次に本発明の工離型材の製造工程について説明する。
先ず、図2に示すように、基材1の巻取りロール11から基材1を巻き出し、コーティング部6においてアクリル系電離放射線硬化性樹脂を含むコーティング材料7を塗布し、乾燥部8で溶剤を蒸散させた後にエンボス部9でエンボス加工を行い、しかる後、電離放射線照射装置10により紫外線、又は電子線を照射し、エンボスパターンを有するアクリル系電離放射線樹脂層を硬化させて巻取りロール12を形成する。
次いで図3に示すように、上記のようにして得た基材1上にエンボスパターンを有するアクリル系電離放射性樹脂硬化膜を設けたものの上に、図3に示すような巻取り式真空蒸着装置21を用い、金属又は金属酸化物の薄膜4を形成する。巻取り式蒸着装置21は、内部が10-2Paより低い圧力に保たれた真空チャンバー22を備え、真空チャンバー22内には巻き出し部23、ガイドロール24、25、冷却されたコーティングドラム26、ガイドロール27、28及び巻取り部29が設けられており、コーティングドラム26の下方には、マスク32、32を介して、金属或いは金属酸化物の蒸発源Mと蒸発源Mをを保持し、加熱するための坩堝30、及び酸素ガス吹出し口31が配設されている。
上記の巻取り式真空蒸着装置21において、上記のようにして得た巻取りロール12を巻き出し部23に取り付けて、巻き出し部23から基材1が、離型層2側を下側に向けて巻き出され、ガイドロール24、25に案内されてコーティングドラム26に送られる。一方、坩堝30を加熱することにより蒸発源Mから、例えば、金属アルミニウム、或いは酸化アルミニウム等を蒸発させ、必要ならば、酸素ガス吹出し口31から酸素ガスを噴出し、マスク32、32を介して、コーティングドラム26上に搬送される基材1上の離型層2に衝突させて金属又は金属酸化物の薄膜(真空蒸着膜)3を形成し、巻取り部29に巻き取る。
金属又は金属酸化物の薄膜の厚さは、100Å〜1000Å程度が好ましい。金属又は金属酸化物の薄膜の厚さが100Åより少ないとクラックが入り易く十分な剥離性がでなくなり好ましくない。一方金属又は金属酸化物の厚さが1000Åを越えると製造コストがかかりすぎるため好ましくない。
次に実施例と比較例を挙げて本発明についてより詳細に説明する。
紙(坪量125g/m2)にトリメチロールプロパントリアクリレート樹脂(軟化点:37℃)を主成分としたコーティング液に、開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社:イルガキュア907)を3wt%の割合で混合したものを、リバースコーターにて約21g/m2塗工してエンボス前原板を得た。その後、エンボス基(由利ロール機械製)で、格子柄のエンボスパターンを有するエンボスロールを用いて、80℃のエンボス温度で熱エンボスをかけた。その後160W/cmの高圧水銀ランプ炉を用い、表面の樹脂を紫外線硬化させた。その後表面を不活性化するため、バッチ式真空蒸着装置にて、アルミニウムを蒸着源に用い、エレクトロンビーム(EB)加熱方式による真空蒸着法により、膜厚500Åのアルミニウム蒸着膜を形成し、合皮用離型紙を作製した。実際に、この後この合皮用離型紙を用いて合皮を作るため、1液PU(クリスボンNB−130,大日本インキ化学工業製)、2液接着剤(クリスボン4070,クリスボンNX,クリスボンHM)、バックスキン順に離型紙上に形成し、40℃で2日エージングを行ない、その後合皮を離型紙より剥がしたところ、離型紙と合皮は、スムーズに剥離することができた。
[比較例]
実施例と同様にして、但し熱エンボスをかけた表面への蒸着工程を行なわないで合皮用離型紙を作製した。この合皮用離型紙を用いて合皮を作るため、1液PU(クリスボンNB−130,大日本インキ化学工業製)、2液接着剤(クリスボン4070,クリスボンNX,クリスボンHM)、バックスキン順に離型紙上に形成し、40℃で2日エージングを行ない、その後合皮を離型紙より剥がしたところ、作製した合皮が剥離紙から剥がれず使用可能な合皮を得ることができなかった。
本発明の工程離型材は、ポリウレタン合成皮革、ポリ塩化ビニル合成皮革等の合成皮革の製造に利用することができる。
本発明の工程離型材の断面図である。 本発明の工程離型材の製造においてエンボス付離型層を形成する過程を示す断面図である。 エンボス付離型層の上に金属又は金属酸化物の蒸着膜を形成する過程において用いる巻取り式真空蒸着装置の略図である。
符号の説明
1 基材
2 離型層
3 エンボス
4 金属又は金属酸化物の薄膜
5 工程離型材
6 コーティング部
7 コーティング材料
8 乾燥部
9 エンボス部
10 電離放射線照射装置
11 巻取りロール
12 巻取りロール

Claims (1)

  1. 基材上に離型層を設け、更に該離型層上に、−NCO結合を有する樹脂で構成した接着剤からなる接着剤層を設けて合成皮革を製造する際に使用する合成皮革製造用工程離型材であって、
    上記離型層は、エンボスパターンを有するアクリル系電離放射線硬化性樹脂の硬化膜から構成し、
    かつ、上記離型層と上記接着剤層との間に位置した上記離型層上に、上記接着剤に含まれる−NCOに対して不活性化され、それによってその上に塗工する合成皮革の表面層との離型性が向上せしめられる金属又は金属酸化物の薄膜を設けたこと
    を特徴とする合成皮革製造用工程離型材。
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