JP4686782B2 - 静電誘導ダイオード - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、整流素子に利用し、少ない回復電荷量の高耐圧で高速の静電誘導ダイオードに関する。
【0002】
【従来の技術】
陰極がn形半導体との接合で形成され、陽極としてゲート電極とソース電極を備え、第1接合であるゲート電極を備えるp形半導体とn形半導体の接合、第2接合であるソース電極を備える金属とn形半導体の接合を備え、両者n形半導体は一体であり、これら2つの接合領域が交互に配置されて、ゲート電極とソース電極が陽極として接続されており、陽極陰極が逆バイアス時に第1接合のp型半導体によってn形半導体領域に生じる空乏領域が第2接合のn形半導体領域を覆い隠すように第1接合と第2接合が配置されているMPS、Pinch Rectifier、JBSともよばれている静電誘導ダイオードであった。
【0003】
従来の技術の構成を図3に示す。第1接合はゲート電極21を備えるp形半導体22とn型半導体23との境界である。第2接合は、ソース電極24およびn型半導体23との境界で構成される領域である。陰極は25、陽極は26で示す。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
陽極陰極が逆バイアス時に第1接合のp型半導体によってn形半導体領域に生じる空乏領域によって、逆バイアス時の電流を遮断するが、この遮断の状態に至るターンオフ動作の初期に、第2接合の電極金属とn形半導体接合(所謂ショットキー接合)で生じる逆バイアスによって第2接合からの電子電流が減少して初めて遮断状態に至る。このため、第2接合の金属は逆バイアス時の逆方向電流を少なくするために電位障壁の大きい金属を用いればよいが、電位障壁の大きい金属とn型半導体の接合は順方向電流時の電子電流は高い電位障壁を越えてから流れるので順方向降下電圧が高くなり、このため、順方向電流時に第1接合のp形半導体からの正孔電流が増大して、これがターンオフ時に蓄積電荷となり回復電荷量が増加し、特性を劣化する欠点を有していた。
【0005】
反対に、第2接合に電位障壁の低い金属を用いると、逆方向電流が大きいために、ターンオフの際に第2接合からの電子電流を遮断するためには、第1接合のp型半導体によってn形半導体領域に生じる空乏領域をより広くする必要があり、このために陽極の第1接合のp形半導体領域が大きくなり、順方向時の電流通路を狭めてダイオード全体の順方向降下電圧を高くして特性を劣化する欠点を有していた。
【0006】
【課題を解決するための手段】
これらの欠点を除去するために、本発明の静電誘導ダイオードは、第1のn形半導体と、第1のn形半導体と低抵抗接合を形成する陰極と、ゲート電極を備え、第1のn形半導体と第1の接合を形成するp形半導体と、第1のn形半導体と第2の接合を形成する薄膜p形半導体と、第2のn形半導体を介して薄膜p形半導体上に配設された陽極と、を備え、ゲート電極が陽極に接続されており、陰極と陽極とが順バイアス時に、薄膜p形半導体はパンチスルー状態となり、陰極と陽極とが逆バイアス時に、第1接合のp形半導体によって第1のn形半導体に生じる空乏領域が、第2接合の第1のn形半導体を覆い、ターンオフすることを特徴とする。
上記構成において、第2のn形半導体は、多結晶半導体でもよい。
第1接合は、平面、リセス及び埋め込みの何れかの構造とすることができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
本願発明の基本構成を図1に示す。第1接合はゲート電極1を備えるp形半導体2とn型半導体3との境界である。第2接合は、ソース電極4と接する薄膜p形半導体5およびn型半導体3との境界で構成される領域である。陰極は6、陽極は7で示す。図1では配線接続で示したが、ゲート電極1とソース電極4は、一体の金属電極で形成されることがある。また、図1は基本構成であって、いわゆるゲートリセス構造を例示したが、平面構造、埋め込み構造であってよい。
【0008】
他の構成である請求の範囲2の場合を図2に例示する。第1接合はゲート電極11を備えるp形半導体12とn型半導体13との境界である。第2接合は、ソース電極14と接するn形半導体またはn形多結晶半導体15でこれと接する薄膜p形半導体16およびn型半導体13との境界の領域である。陰極は17、陽極は18で示す。
【0009】
実施形態の製造方法の例を以下に述べる。
陰極となる高濃度n形不純物を陰極に接して拡散などを行って形成する。また、ソース電極を有する第2接合となる領域を除いて、選択的にボロンなどの拡散によって第1接合のp形半導体領域を形成するが、この第2接合は逆バイアスに第1接合からの空乏領域で遮蔽される大きさ、あるいは間隔の幅である。たとえば、この大きさは、n形領域の不純物濃度が1×1014、p形領域の不純物濃度が1×1020であれば、p形領域の間隔は5μm程度である。次に第1接合の薄膜p型半導体を形成するが、不純物濃度が約1×1018であれば厚さは約30nm、不純物濃度が約1×1019であれば厚さは約10nmである。この高濃度の薄膜体積は本願発明者によるMLE(分子層エピタキシー)によって可能である。また、高濃度p形不純物の拡散を防ぐための低温の結晶形成技術によっても良い。さらに、第1接合のゲート電極と第2接合のソース電極を同時に金属膜で形成すれば両方を接続した陽極が形成され本願発明の静電誘導ダイオードが製作できる。
【0010】
なお、この数10nmの薄いp型半導体層がソース電極金属の形成に際に金属拡散などによって失われることを防ぐために、ソース電極(陽極電極)の形成の前に、多結晶n型半導体あるいはn型半導体を形成する方法もある。この場合ソース電極との接合抵抗を低下させるために、例えば1×1018以上の高濃度のn型不純物を含ませる。
【0011】
なお、半導体領域の各々p形n形の導電形は各々反対導電形でも良い。また、シリコン、ガリウム砒素、窒化ガリウム、炭化シリコン、インジウム燐など種々の半導体材料を用いることができる。
【0012】
実施形態の作用を以下に述べる。
陰極陽極が同電位の際には、第2接合のソース電極金属と薄膜p型半導体およびn形半導体の領域ではp形半導体とn形半導体の電位障壁が生じているが、順方向電位が印加されると図4に示すように薄いp型半導体層による極めて薄い電位障壁が殆どパンチスルー状態となり、従来技術の電位分布と殆ど変わらない電位傾斜となり、ソース電極からの電子電流が流入し、これと釣り合う正孔電流が第1接合のp形半導体からn型半導体に注入され、第1接合に依る静電誘導電位が低下してさらに第2接合からの電子電流が増加し導通状態となる。
【0013】
逆バイアスが印加されると、図5に示すように、第2接合の薄膜p形半導体とn形半導体との点線で示す従来技術よりも高い電位障壁が形成されると電子電流が停止しターンオフが開始され、第1接合の静電誘導に依る電位障壁が回復されて遮断状態となる。
【0014】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の静電誘導ダイオードは、薄いp形半導体層を第2接合に有することから、順方向時には低い順バイアス電圧でターンオンが行えるので導通状態の順方向降下電圧が低いの低導通損失という効果を有する。
【0015】
また、逆バイアス方向時には第2接合からの逆方向電流が低いので、第1接合による静電誘導効果による遮蔽能率に優れるので電子電流が流れる第2接合の面積を大きくなり、正孔電流を減じることができる。この結果、ターンオフ時の回復電荷量が少なくなり高速なターンオフが可能となる効果を有する。
この結果、本発明の静電誘導ダイオードは低損失で高速なスイッチングが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の基本構成を示す図である。
【図2】 本発明を実施した素子の構造の一例を示す図である。
【図3】 従来技術の素子の構造を示す図である。
【図4】 本発明の順バイアス状態の電位分布を示す図である。
【図5】 本発明の逆バイアス状態の電位分布を示す図である。
【符号の説明】
1,11…ゲート電極
2,12…p形半導体
3,13…n型半導体
4,14…ソース電極
5,16…薄膜p形半導体
6,17,25…陰極
7,18,26…陽極
15…n形半導体またはn形多結晶半導体

Claims (3)

  1. 第1のn形半導体と、
    上記第1のn形半導体と低抵抗接合を形成する陰極と、
    ゲート電極を備え上記第1のn形半導体と第1の接合を形成するp形半導体と、
    上記第1のn形半導体と第2の接合を形成する薄膜p形半導体と、
    第2のn形半導体を介して上記薄膜p形半導体上に配設された陽極と、
    を備え
    上記ゲート電極が上記陽極に接続されており、
    上記陰極と上記陽極とが順バイアス時に、上記薄膜p形半導体はパンチスルー状態となり、
    上記陰極と上記陽極とが逆バイアス時に、上記第1接合の上記p形半導体によって上記第1のn形半導体に生じる空乏領域が、上記第2接合の上記第1のn形半導体を覆い、ターンオフすることを特徴とする、静電誘導ダイオード。
  2. 前記第2のn形半導体は、多結晶半導体からなることを特徴とする、請求項1に記載の静電誘導ダイオード。
  3. 前記第1接合は、平面、リセス及び埋め込みの何れかの構造を有することを特徴とする、請求項1に記載の静電誘導ダイオード。
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