JP4685259B2 - 感光性平版印刷版及び印刷版の製版方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、390〜430nmのレーザー光に対して高感度であって、コンピューター等のデジタル信号からの直接描画に好適な、感光性平版印刷版及び印刷版の製版方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、平板印刷版、プリント基板、カラーフィルター、大規模集積回路(LSI)、薄型トランジスタ(TFT)、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、半導体パッケージ(TAB)等の微細加工には、感光性組成物の層を支持体表面に形成した画像形成材をマスクを通して画像露光し、露光部と非露光部の現像液に対する溶解性の差を利用してパターンを形成するリソグラフィー法が広く用いられてきた。
【0003】
例えばカラーフィルター用レジスト材料の光重合開始系として、ヘキサアリールビイミダゾール誘導体とアミノベンゾフェノン誘導体を組み合わせた例等が知られている(特開平11−327127号公報等)。
しかし、該カラーフィルター用レジスト材料は、レーザーを用いて露光するものではなく、高圧水銀灯などを露光源としてマスクを介して使用するものである。また、顔料を多量に含有するため、画像形成に例えば200mJ/cm2の多量のエネルギーを必要としている。
また、米国特許第5863678号には、光重合開始系としてチタノセン化合物とジアルキルアミノベンゼン化合物を含有したカラーフィルター用レジスト材料が開示されている。しかしながら、該レジスト材料も実際には高圧水銀灯などを露光源としてマスクを介して使用しており、露光エネルギーの80〜200mJ/cm2である。
また、上記公報には、感光性平版印刷版としての黄色燈下でのセーフライト性に関しては記載されていない。
【0004】
これに対し、近年、露光光源にレーザー光を用いることにより、マスクを用いずにコンピューター等のデジタル情報から直接画像を形成するレーザー直接描画法が、生産性のみならず、解像性や位置精度等の向上も図れることから注目されるに至り、それに伴い、リソグラフィー法においてもレーザー光の利用が盛んに研究されている。
【0005】
レーザー光は、紫外から赤外までの種々の光源が知られているが、画像露光に利用できるレーザー光としては、出力、安定性、感光能力、及び、コスト等の点から、アルゴンイオンレーザー、ヘリウムネオンレーザー、YAGレーザー、及び、半導体レーザー等の可視から赤外領域の光を発するものが有力視されており、例えば、波長488nmのアルゴンイオンレーザー、波長532nmのFD-YAGレーザー用の感光性組成物が種々提案され、該レーザー露光用の感光性平版印刷版は実用化に至っている。
【0006】
かかる感光性組成物として、例えば、チタノセン化合物とビピロメテン錯体の組み合わせや、チタノセンとクマリン誘導体の組み合わせ等が知られている(例えば、特開平11−271969号公報)。
しかし、これらの従来公知のレーザー露光用感光性組成物は、390〜430nmの青紫色レーザー光に着目しておらず、事実Arレーザーに相当する488nm、FD−YAGレーザーに相当する532nmでの感度等が示されているに過ぎない。
【0007】
又、このような可視レーザー光を用いた画像形成法は、可視領域に十分な吸収を有する感光性組成物が使用されるため、390〜430nmの青紫色レーザー光に対する感度が不十分であったり、場合によっては黄色燈下(約500〜750nmの波長の光を含む環境)でのセーフライト性に劣り、赤色燈照明のような暗室環境下での作業が必要であるという制約が有る。
【0008】
一方、特公平7−60268号公報には安全光適性に優れた感光性平版印刷版として、光重合型感光性組成物層の上に特定の着色剤を含有する保護層を有する感光性平版印刷版が開示され、露光源として高圧水銀灯、メタルハライドランプ等の汎用の光源の他、アルゴンイオンレーザー、ヘリウムカドミウムレーザー、クリプトンレーザーが開示され、重合開始剤の列記にはビイミダゾールとミヒラーケトンとの複合体系も例示されている。しかしながら、該公報では、具体的にはキセノン灯で露光した際の480nmの相対感度、アルゴンイオンレーザーを用いた場合の488nm及びヘリウム−カドミウムレーザーを用いた場合の442nmで画像形成に要する照射エネルギーに着目しており、390〜430nm、特には400〜420nmに発振波長を有するレーザーには着目しておらず、又、442nmのヘリウム−カドミウムレーザーで画像形成に要する照射エネルギーは0.6〜1.0mJ/cm2と未だ十分なものではない。
【0009】
これに対して、近年のレーザー技術の著しい進歩により、黄色燈照明のような明室環境下での作業が可能な、紫外光領域のレーザー、その中でも390〜430nm、特には400〜420nmの波長領域で安定的に発振できる半導体レーザーが利用できるようになりつつある。しかしながら、青紫色光領域のレーザー(390〜430nmのレーザー)露光用に適した感光性平版印刷版は見いだされていない。
【0010】
【本発明が解決しようとする課題】
本発明は、前述の従来技術に鑑みてなされたものであり、従って、本発明の目的は、青紫色レーザー露光用として高感度な感光性平版印刷版を提供するものである。
又、本発明の別の目的は該感光性平版印刷版を用いた印刷版の製版方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、390〜430nmのレーザー露光用感光性組成物として、分光感度の極大ピークを特定の波長領域に有し、波長410nmにおいて画像形成可能な最小露光量が特定の値以下である感光性組成物が前記目的を達成することができることを見出し本発明を完成したものである。
【0012】
即ち、第1の本発明の要旨は、支持体上に、感光層及び保護層をこの順に有する感光性平版印刷版において、該感光層が390〜430nmの波長域に分光感度の極大ピークを有し、該感光性平版印刷版の波長410nmにおける画像形成可能な最小露光量(S410)が100μJ/cm2以下であり、且つ波長450nmにおける画像形成可能な最小露光量(S450)と、波長410nmにおける画像形成可能な最小露光量(S410)との関係が、0<S410/S450≦0.1であることを特徴とする感光性平版印刷版に存する。
【0013】
更に、エチレン性単量体と特定の光重合開始系から成る感光性組成物が前記目的を達成することができることを見出し本発明を完成したものであって、即ち、第2の本発明の要旨は、支持体上に、(A)エチレン性単量体、(B)増感色素、(C)ラジカル発生剤を含有する感光層及び保護層をこの順に有する感光性平版印刷版において、(C)ラジカル発生剤が、ヘキサアリールビイミダゾール化合物又はチタノセン化合物を含有し、(B)増感色素がジアルキルアミノベンゼン化合物を含有する感光性平版印刷版に存する。
【0014】
更に、第3の本発明の要旨は、第1又は第2の本発明の感光性平版印刷版を、波長390〜430nmのレーザー光により画像露光した後、水性現像液により現像することを特徴とする印刷版の製版方法に存する。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、第1の本発明を説明する。
本発明の感光性平版印刷版は、支持体上に、感光層及び保護層をこの順に有するものであり、該感光層が、390〜430nmの波長域に分光感度の極大ピークを有し、かつ波長410nmにおいて画像形成可能な最小露光量が100μJ/cm2以下であり、更に波長450nmにおいて画像形成可能な最小露光量(S450)に対する、波長410nmにおける画像形成可能な最小露光量(S410)の比(S410/S450)が0.1以下である。
【0016】
分光感度の極大ピークは、400〜420nmの波長域にあるのが更に好ましい。分光感度の極大ピークを前記範囲未満の波長域に有する場合には、感光性組成物として390〜430nmのレーザー光(以下、青紫色領域のレーザー光と称することがある)に対する感度が劣り、一方、前記範囲超過の波長域に有する場合には青紫色領域のレーザー光に高感度でも、黄色燈下でのセーフライト性が劣ることとなる。
【0017】
又、波長410nmにおいて、画像形成が可能な最小露光量は、100μJ/cm2以下であり、50μJ/cm2以下が好ましく、35μJ/cm2以下が更に好ましい。最小露光量が100μJ/cm2より大では、レーザー光源の露光強度にもよるが、露光時間が長くなり、実用的でない。
尚、下限は小さい程好ましいが、通常1μJ/cm2以上であり、実用的には、2.5μJ/cm2以上である。
【0018】
尚、本発明において、「分光感度の極大ピーク」とは、例えば、「フォトポリマー・テクノロジー」(山岡亜夫著、昭和63年日刊工業新聞社発行、第262頁)等に詳述されている方法に準じて、下記のようにして求められる。即ち、支持体表面に感光性組成物からなる層(感光層)を形成した感光性画像形成材試料を、分光感度測定装置を用いてキセノンランプ又はタングステンランプ等の光源から分光した光を照射、露光し(この際、横軸方向に露光波長が直線的に、縦軸方向に露光強度が対数的に減少するように設定して照射してする)、該試料を現像することにより、各露光波長に応じたレジスト画像が得られ、その画像高さから画像形成可能な露光エネルギーを算出する。横軸に波長、縦軸に前記露光エネルギーの逆数をプロットすることにより得られる分光感度曲線における極大ピークを示す露光波長が分光感度の極大ピークに相当する。
【0019】
又、波長410nmにおいて画像形成可能な最小露光量は、上記と同様にして分光感度測定装置を用いて得られた画像の高さから算出される露光エネルギーとして求める。
尚、画像形成可能な最小露光量は、感光層を露光後、感光性組成物の種類に応じて、現像液のpH等の現像液の種類、現像温度、現像時間等を変化させて決定される最適現像条件で現像して画像を形成しうる最小露光量であるが、通常、露光後、pH11〜14のアルカリ現像液に、25℃で30秒〜3分浸漬することで画像形成できる最小露光量を意味する。
【0020】
更に、本発明の感光性平版印刷版は、波長450nmにおいて画像形成可能な最小露光量S450(J/cm2)に対する、波長410nmにおける画像形成可能な最小露光量S410(J/cm2)の比S410/S450が0.1以下である。S410/S450の値は、0.05以下であるのが好ましい。つまり、450nmの波長における画像形成可能な最小露光量S450が大で、410nmの波長において画像形成可能な最小露光量S410が小であれば、結果として500nm付近の波長の光を含む環境下、即ち黄色灯下での取り扱い性に優れることとなり、上記比は小さければ小さいほど良い。なお、S410/S450の値の最小値は0であり、それは、S450が無限大、即ち、450nmの波長の光には、全く感応しないことを意味する。
【0021】
又、黄色灯下での取り扱い性の点から450nmより長い波長において画像形成可能な最小露光量が、450nmにおいて画像形成可能な最小露光量より大きいのが好ましい。より具体的には、450nmを越え750nm以下の各波長において画像形成可能な最小露光量が、450nmにおいて画像形成可能な最小露光量(S450)よりいずれも大きいことが好ましい。そして、感光層が有している390〜430nmの波長域の分光感度の極大ピークが、波長390〜750nmの範囲において分光感度の最大ピークであることが特に好ましい。
上記感光性平版印刷版は、中でも、400〜420nmに発振波長を有するレーザー露光用として特に有用である。
【0022】
かかる感光性平版印刷版における感光層の構成成分としては、上記規定を満足するものであれば特に限定されないが、銀塩系の感光性組成物に比べ現像後の廃液処理等の取り扱い性が有利であることから、エチレン性化合物及び光重合開始系(増感色素とラジカル発生剤との組合せ)を含有する光重合性組成物を用いるのが好ましい。
次に第2の本発明の感光性平版印刷版を説明する。該感光性平版印刷版は、第1の発明の感光性平版印刷版の感光層の物性を達成するための具体的な構成成分を含有する感光性平版印刷版である。
【0023】
<エチレン性単量体>
本発明において、(A)エチレン性単量体としては、感光性組成物が活性光線の照射を受けたときに、光重合開始系の作用により付加重合し、場合により架橋、硬化するような、ラジカル重合性のエチレン性二重結合を有する化合物であり、エチレン性二重結合を一分子中に1個有する化合物、具体的には、例えば、アクリル酸、メタクリル酸(尚、以降、「アクリル」及び「メタクリル」を纏めて「(メタ)アクリル」と言う場合がある。)、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等の不飽和カルボン酸、及びそのアルキルエステル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、スチレン等、であってもよい。但し、重合性、架橋性、及び、それに伴う露光部と非露光部の現像液溶解性の差異を拡大できる観点から、エチレン性二重結合を一分子中に2個以上有する化合物が好ましい。
【0024】
エチレン性単量体としては、例えば(A−1)不飽和カルボン酸と脂肪族ポリヒドロキシ化合物とのエステル類、(A−2)アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基含有ホスフェート類、(A−3)ウレタン(メタ)アクリレート類、(A−4)エポキシ(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
【0025】
不飽和カルボン酸と脂肪族ポリヒドロキシ化合物とのエステル類(A−1)としては、前記の如き不飽和カルボン酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール等の脂肪族ポリヒドロキシ化合物とのエステル類があり、具体的には、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、及び同様のクロトネート、イソクロトネート、マレエート、イタコネート、シトラコネート等が挙げられる。
【0026】
アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基含有ホスフェート類(A−2)としては、その構造中に(メタ)アクリロイルオキシ基を有するホスフェート化合物であれば特に限定されないが、特に、下記一般式(Ia)又は(Ib)で表されるものが好ましい。
【0027】
【化3】
【0028】
〔式(Ia)及び(Ib)中、R1は水素原子又はメチル基を示し、nは1〜25の整数、mは1、2、又は3である。〕
ここで、nは1〜10、特に1〜4であるのが好ましく、これらの具体例としては、例えば、メタクリロイルオキシエチルホスフェート、ビス(メタクリロイルオキシエチル)ホスフェート、メタクリロイルオキシエチレングリコールホスフェート等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で用いても混合物として用いてもよい。
【0029】
ウレタン(メタ)アクリレート類(A−3)としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート等のポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールエタントリ(メタ)アクリレート等の不飽和ヒドロキシ化合物とのウレタン(メタ)アクリレート類があり、具体的には、例えば、ヘキサメチレンビス〔(メタ)アクリロイルオキシメチルウレタン〕、ヘキサメチレンビス〔(メタ)アクリロイルオキシエチルウレタン〕、ヘキサメチレンビス{トリス〔(メタ)アクリロイルオキシメチル〕メチルウレタン}、ヘキサメチレンビス{トリス〔(メタ)アクリロイルオキシメチル〕エチルウレタン}等が挙げられる。
【0030】
エポキシ(メタ)アクリレート類(A−4)としては、例えば、(ポリ)エチレングリコールポリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、(ポリ)テトラメチレングリコールポリグリシジルエーテル、(ポリ)ペンタメチレングリコールポリグリシジルエーテル、(ポリ)ネオペンチルグリコールポリグリシジルエーテル、(ポリ)ヘキサメチレングリコールポリグリシジルエーテル、(ポリ)トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセロールポリグリシジルエーテル、(ポリ)ソルビトールポリグリシジルエーテル等のポリエポキシ化合物と、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物とのエポキシ(メタ)アクリレート類が挙げられる。
【0031】
更に、上記以外のエチレン性単量体としては、例えば、ヒドロキノンジ(メタ)アクリレート、レゾルシンジ(メタ)アクリレート、ピロガロールトリ(メタ)アクリレート等の芳香族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル類、エチレングリコールの(メタ)アクリロイルエチレンオキシド付加物、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンの(メタ)アクリロイルジエチレンオキシド付加物等の(メタ)アクリルヒドロキシ化合物類、及び、エチレングリコールと(メタ)アクリル酸とフタル酸との縮合物、ジエチレングリコールと(メタ)アクリル酸とマレイン酸との縮合物、ペンタエリスリトールと(メタ)アクリル酸とテレフタル酸との縮合物、ブタンジオールとグリセリンと(メタ)アクリル酸とアジピン酸との縮合物等のポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸と多価カルボン酸との縮合物類が挙げられる。更に、前記の如き不飽和カルボン酸と、メチレンジアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ポリアミン化合物とのアミド類、具体的には、例えば、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、ジエチレントリアミントリス(メタ)アクリルアミド、ヘキサメチレンビス(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0032】
上記の中で、(メタ)アクリロキルオキシ基含有ホスフェート類を含有するのが好ましく、感光層の一成分としての前記エチレン性単量体全体に占める前記(メタ)アクリロイルオキシ基含有ホスフェート類の含有量は、1〜60重量%、特には2〜40重量%であるのが好ましい。この範囲においては、感光層としての露光感度、耐刷性が向上すると共に、現像性(非画先部の汚れ)が改善される。
【0033】
又、上記の中で、ウレタン(メタ)アクリレート類を含有するのが好ましく、ウレタン(メタ)アクリレート類の中でも、(a3)一分子中に4つ以上のウレタン結合[−NH−(C=O)−O−]及び4つ以上の付加重合可能な二重結合を有するウレタン系化合物を含有することが好ましい。該ウレタン化合物の製造方法としては特に限定されないが、イソシアネート基(−N=C=O)と水酸基の付加反応によってウレタン結合を容易に形成できるので、(a1)一分子中に4つ以上の活性イソシアネート基を有する化合物と、(a2)一分子中に1つ以上の水酸基と2つ以上の付加重合可能な二重結合を有する化合物とを反応させて得ることが好ましい。
該ウレタン系化合物(a3)の添加による感度向上作用の要因としては以下のものが考えられる。例えば、連鎖移動反応によるウレタン活性ラジカルの生成または、ウレタン系化合物(a3)の多感官能アクリレート基の光重合が高い光硬化作用を誘起し、さらにこの光硬化作用がウレタン系化合物(a3)の高い分子量により高められる等が挙げられる。
【0034】
化合物(a1)の、一分子中に4つ以上の活性イソシアネート基を有する化合物としては、例えば、アルコール性水酸基を二つ以上有する化合物(以下、多価アルコール類と称する)とイソシアネート基を2以上有する化合物との反応により4つ以上の活性イソシアネート基が導入された化合物が挙げられる。具体的には、ペンタエリスリトール、ポリグリセリン等の一分子中に4つ以上のアルコール性水酸基を含有する化合物に、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物を反応させて得られた化合物;エチレングリコール等の一分子中に2つ以上のアルコール性水酸基を含有する化合物に、旭化成工業株式会社製のデュラネート24A−100、22A−75PX、21S−75E、18H−70B等のビウレットタイプ;P−301−75E、E−402−90T、E−405−80T等のアダクトタイプ等の一分子中にイソシアネート基を少なくとも3つ以上含有する化合物を反応させて得られた化合物などが挙げられる。
【0035】
また、イソシアネートエチルメタクリレートを単独もしくは他の成分と共重合させて一分子中に平均4つ以上のイソシアネート基を含有する化合物を得ることもできる。一分子中に4つ以上のイソシアネート基を含有する化合物(a1)の具体的例としては、例えばデュラネートME20−100(旭化成工業株式会社製商品名)などがある。
【0036】
化合物(a1)中のイソシアネート基の数は、好ましくは、6以上、特に好ましくは7以上である。イソシアネート基が4未満では、感度の点で劣る蛍光にある。上限は特に限定されないが、大きすぎると合成が困難なため、好ましくは20以下である。イソシアネート基の数は、多価アルコール類の水酸基数と、イソシアネート基を2以上有する化合物の種類及び配合比により調整することができる。
化合物(a1)の分子量は、通常500以上で、好ましくは1000以上であり、200000以下、好ましくは150000以下である。この範囲をはずれると感度が低下する怖れがある。
【0037】
ウレタン系化合物(a3)を構成する、一分子中に1つ以上の水酸基と2つ以上の付加重合可能な二重結合を有する化合物(a2)の化合物としては、例えば、多価アルコールの如きアルコール性水酸基を複数有する化合物と、カルボキシル基及び(メタ)アクリロイル基を含有する化合物とのエステル化反応で得られた化合物であって、アルコール性水酸基を1以上有する化合物、即ち、アルコール性水酸基が少なくとも1ケ残るような割合で上記カルボキシル基含有化合物を反応させた反応物があげられる。より具体的には、アクリル酸3モルとペンタエリスリトール1モルを反応させた化合物、アクリル酸2モルとペンタエリスリトール1モルを反応させた化合物、アクリル酸5モルとジペンタエリスリトール1モルを反応させた化合物、アクリル酸4モルとジペンタエリスリトール1モルを反応させた化合物等の多価アルコール類とアクリル酸とのエステルであって1以上のアルコール性水酸基を有する水酸基含有多官能アクリレート化合物が挙げられ、具体的な化合物としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートなどがある。これらの化合物は単独でも混合物で用いても良い。
【0038】
又、成分(a2)の化合物の他の例としては、グリシジルメチルエーテル等のエポキシ基を含有する化合物と、少なくとも1つ以上のカルボキシル基かつ少なくとも1つ以上の付加重合可能な二重結合を有する化合物との反応物;あるいは少なくとも1つ以上のエポキシ基と少なくとも1つ以上の付加重合可能な二重結合を同時に有する化合物と、少なくとも1つ以上のカルボキシル基を含有する化合物との反応物;または少なくとも1つ以上のカルボキシル基かつ少なくとも1つ以上の付加重合可能な二重結合を有する化合物と、少なくとも1つ以上のエポキシ基かつ少なくとも1つ以上の付加重合可能な二重結合を有する化合物との反応物;も挙げられる。例えば、グリシジルメタクリレートと(メタ)アクリル酸の反応物などがこの例として挙げられる。
【0039】
化合物(a2)としては、中でも、付加重合可能な二重結合を3つ以上有するのが感度の点で好ましい。
化合物(a1)と化合物(a2)の反応、即ち、化合物(a1)のイソシアネート基と化合物(a2)の水酸基との反応によりウレタン系化合物(a3)を得る反応は既知の方法に準じて行うことが出来る。具体的には、化合物(a1)のイソシアネート基と、化合物(a2)の水酸基を1/10〜10の割合で反応させることにより行われ、例えば、トルエンや酢酸エチル等の有機溶媒に両者を希釈した後に10〜150℃で、5分〜30時間程度加熱する方法;もしくはジラウリン酸n−ブチルスズなどの触媒を触媒量添加する方法;最初に適当な有機溶媒に化合物(a2)を希釈し、これに後から化合物(a1)を順次滴下する方法;またはこの逆の方法等が挙げられる。
【0040】
ウレタン系化合物(a3)の分子量は、好ましくは600以上である。600以下では、感光性組成物からなる層(未硬化膜)の堅牢性の点で劣る傾向がある。一方、上限は特に限定されないが、合成・入手のしやすさの点から150000以下が好ましい。分子量は、化合物(a1)及び(a2)の種類及びエステル化率の調整により行うことができる。
【0041】
ウレタン系化合物(a3)は、感光性組成物の感度の点で、付加重合可能な二重結合を4つ以上有するが、更に6つ以上、特に8つ以上有するのが好ましい。
又、ウレタン系化合物(a3)は、単独でも混合物で用いても良い。特に、ウレタン系化合物の原料が混合物の場合、ウレタン系化合物(a3)は、反応物を混合物で使用することとなる。
【0042】
また、ウレタン系化合物(a3)を製造する際に、感光性組成物の各種性能を制御する目的で、付加重合可能な二重結合以外の官能基を導入しても良い。例えば、一分子内に水酸基とカルボキシル基を有する化合物(a4)を、化合物(a2)と併用して、化合物(a1)と反応させることにより、一分子内に4つ以上のウレタン結合と、付加重合可能な二重結合及びカルボキシル基を有する化合物を得ることが出来る。
更に具体的には、一分子内に4つのイソシアネート基を有する化合物(a1’)と、一分子内に1つの水酸基と2つの付加重合可能な二重結合を有する化合物と(a2’)、一分子内に1つの水酸基と1つのカルボキシル基を有する化合物(a4’)とを、a1’:a2’:a4’のモル比が1:3:1で反応を行うと、一分子内に4つのウレタン結合を有し、平均的に6つの二重結合及び1つのカルボキシル基を有する化合物(a3’)を製造することが出来る。
【0043】
化合物(B)と併用して化合物(A)と反応させることができる化合物(D)(一分子内に水酸基とカルボキシル基を有する化合物)としては、具体的には例えば2−ヒドロキシオクタン酸、2−ヒドロキシヘキサン酸、2−ヒドロキシデカン酸、3−ヒドロキシオクタン酸、8−ヒドロキシオクタン酸等の水酸基を有する脂肪族カルボン酸が好ましく、なかでも、カルボン酸のα位に水酸基を有する炭素数4〜20のカルボン酸が好ましい。
【0044】
ウレタン化合物(a3)としては、具体的な下記一般式(II)で表わされるウレタン化合物が好ましい。
【0045】
【化4】
【0046】
〔式(II)中、xは4〜20の整数、yは0〜15の整数、zは1〜15の整数を表わし、Raはアルキレンオキシ又はアリーレンオキシ由来のくり返し単位を有し、かつRbと結合しうるオキシ基を4〜20有する基を表わし、Rb,Rcは独立にC1〜10のアルキレン基を表わし、Rdは(メタ)アクリル基を1〜10個有する有機残基を表わし、Ra、Rb、Rc、Rdはそれぞれ独立して置換基を有していてもよい。〕
【0047】
式中、Raのくり返し単位に用いられるアルキレンオキシ基としては、グリセリン、ペンタエリスリトール、プロピレントリオール等のアルキレンオキシ残基が、又、Raのくり返し単位に用いられるアリーレンオキシ基としては、ピロガロール、1,3,5−ベンゼントリオール等のフェノキシ残基が挙げられる。
xは4〜15の整数、yは1〜10の整数、zは1〜10の整数を表わし、Ra及びRcは独立にC1〜5のアルキレン基を表し、Rdは(メタ)アクリル基を1〜7個有する有機残基を表わすものが好ましい。
さらに好ましくは、Raが
【0048】
【化5】
【0049】
(但し、kが2〜10)であり、Rb、Rcが独立に−C2H4−、−CH2−C(CH3)−、又は、−C3H6−であり、Rdが
【0050】
【化6】
【0051】
である。
該ウレタン化合物(a3)の配合比としては、エチレン性単量体100重量部に対して、0.5〜50重量部、好ましくは1〜40重量部であり、更に好ましくは2〜30重量部である。
【0052】
<光重合開始系>
光重合開始系は、通常、(C)ラジカル発生剤と(B)増感色素、場合により、更に重合加速剤としての水素供与性化合物を含む。(C)ラジカル発生剤は、(B)増感色素が活性光線の照射を受けたときに、増感色素の光励起エネルギーを受けとり、エネルギーにより活性ラジカルを発生し、前記エチレン性単量体を重合に到らしめる化合物であって、第2の本発明の感光性平版印刷版の感光層成分においては、(C)ラジカル発生剤としてヘキサアリールビイミダゾール系化合物又はチタノセン化合物を、(B)増感色素としてジアルキルアミノベンゼン系化合物を含有する。
【0053】
ここでヘキサアリールビイミダゾール系化合物とは、3個のアリール基を有するイミダゾール化合物の2量体であり、390〜430nmのレーザーの露光により直接又は共存する増感剤との相互作用によりラジカルを発生する化合物であればよく、そのヘキサアリールビイミダゾール系化合物としては、例えば、特公昭45-37377号公報、特開昭47-2528号公報、特開昭54-15529号公報等に記載されるヘキサアリールビイミダゾール化合物が挙げられ、具体的には、例えば、2,2’−ビス(o−クロルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(o−クロルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(p−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2′−ビス(o−クロルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(p−メチルフェニル)ビイミダゾール、2,2′−ビス(o−クロルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(p−エトキシカルボニルフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(p−フルオロフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ブロムフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(p−ヨードフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(p−クロルナフチル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロルフェニル)−4,4’5,5’−テトラ(p−クロルフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ブロムフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(p−クロル−p−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(o,p−ジクロルフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロルフェニル)−4,4’5,5’−テトラ(o,p−ジブロムフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ブロムフェニル)−4,4’5,5’−テトラ(o,p−ジクロルフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(o,p−ジクロルフェニル)−4,4’5,5’−テトラ(o,p−ジクロルフェニル)ビイミダゾール等を挙げることができ、中でもヘキサフェニルビイミダゾール化合物が好ましく、特に、イミダゾール環上の2,2′位のベンゼン環のオルト位がハロゲンで置換されたものが好ましく、更に、イミダゾール環上の4,4′,5,5′位のベンゼン環が無置換または、ハロゲン置換又はアルコキシカルボニル置換されたものが好ましい。
【0054】
こららのヘキサアリールビイミダゾール類は、必要に応じ、多種のビイミダゾールと併用して使用することもできる。ビイミダゾール類は例えばBull.Chem.Soc.Japan.33,565(1960)及びJ.Org.Chem.36[16]2262(1971)に開示されている方法により容易に合成することができる。
【0055】
チタノセン化合物としては、具体的には、例えば、ジシクロペンタジエニルチタニウムジクロライド、ジシクロペンタジエニルチタニウムビスフェニル、ジシクロペンタジエニルチタニウムビス(2,4−ジフルオロフェニル)、ジシクロペンタジエニルチタニウムビス(2,6−ジフルオロフェニル)、ジシクロペンタジエニルチタニウムビス(2,4,6−トリフルオロフェニル)、ジシクロペンタジエニルチタニウムビス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)、ジシクロペンタジエニルチタニウムビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)、ジ(メチルシクロペンタジエニル)チタニウムビス(2,6−ジフルオロフェニル)、ジ(メチルシクロペンタジエニル)チタニウムビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)、ジシクロペンタジエニルチタニウムビス〔2,6−ジフルオロ−3−(1−ピロリル)フェニル〕等の、ジシクロペンタジエニル構造とビフェニル構造を有するチタン系化合物が挙げられ、ビフェニル環のo位にハロゲン原子が置換されているものが好ましい。
【0056】
更に、ラジカル発生剤として、上述のヘキサアリールビイミダゾール化合物とチタノセン化合物を併用することも好ましい。
次に、(B)増感色素として用いるジアルキルアミノベンゼン系化合物としては、ジアルキルアミノベンゼン構造を有し、390〜430nmの波長の光を吸収すると共に、ラジカル発生剤との相互作用により、ラジカル発生剤からのラジカルの発生を効率よく行う化合物であれば任意の置換基を有していてよいが、中でも、ジアルキルアミノベンゾフェノン系化合物、ベンゼン環上のアミノ基に対してp−位の炭素原子に芳香族複素環基を置換基として有するジアルキルアミノベンゼン系化合物、及びこれらの化合物のジアルキルアミノ基を構成するアルキル基が互いに結合して、及び/又は該アルキル基がベンゼン環上のアミノ基の結合する炭素原子に隣接する炭素原子と結合して含窒素複素環構造を形成した構造の化合物が好ましい。尚、上記において、ジアルキルアミノ基を構成するアミノ基は互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜6が好ましい。
【0057】
中でも好ましいジアルキルアミノベンゼン化合物は、下記一般式(IIIa)及び(IIIb)で示される。
【0058】
【化7】
【0059】
(式(IIIa)中、R2〜R5は、それぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基を、R6〜R9は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示すが、R2とR3、R4とR5、R2とR6、R3とR7、R4とR8、R5とR9は、それぞれ独立に結合して環を形成していてもよい。)
【0060】
【化8】
【0061】
(式(IIIb)中、R10、R11はそれぞれ独立して炭素数1〜6のアルキル基を、R13及びR14は独立して水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を、Yは、硫黄原子、酸素原子、ジアルキルメチレン又は−N(R15)−を示し、R15は水素原子又は、炭素1〜6のアルキル基を示す。但しR10とR11、R10とR13又はR11とR14がそれぞれ独立に結合して環を形成してもよい。)尚、ジアルキルメチレンのアルキル基の炭素数は1〜6、好ましくは1である。
式(IIIa)及び(IIIb)においてR2〜R14のいずれかが結合して環を形成する場合、5又は6員環であるのが好ましく、特に6員環が好ましい。
前記一般式(IIIa)で示される化合物としては、4,4′−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4′−ジエチルアミノベンゾフェノン及び下記構造の化合物が挙げられる。
【0062】
【化9】
【0063】
又、前記一般式(IIIb)で表わされる化合物としては、2−(p−ジメチルアミノフェニル)ベンゾオキサゾール、2−(p−ジエチルアミノフェニル)ベンゾオキサゾール、2−(p−ジメチルアミノフェニル)ベンゾ〔4,5〕ベンゾオキサゾール、2−(p−ジメチルアミノフェニル)ベンゾ〔6,7〕ベンゾオキサゾール、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)1,3,4−オキサゾール、2−(p−ジメチルアミノフェニル)ベンゾチアゾール、2−(p−ジエチルアミノフェニル)ベンゾチアゾール、2−(p−ジメチルアミノフェニル)ベンズイミダゾール、2−(p−ジエチルアミノフェニル)ベンズイミダゾール及び下記構造の化合物が挙げられる。
【0064】
【化10】
【0065】
式(IIIa)、(IIIb)以外のジアルキルアミノベンゼン化合物としては、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)1,3,4−チアジアゾール、(p−ジメチルアミノフェニル)ピリジン、(p−ジエチルアミノフェニル)ピリジン、2−(p−ジメチルアミノフェニル)キノリン、2−(p−ジエチルアミノフェニル)キノリン、2−(p−ジメチルアミノフェニル)ピリミジン、2−(p−ジエチルアミノフェニル)ピリミジン等が挙げられる。
【0066】
尚、黄色灯下での取り扱い性の点、特に前記S410/S450が0.1以下であるためには、(C)ラジカル発生剤としてのヘキサアリールビイミダゾール化合物と(B)増感色素としてのジアルキルアミノベンゼン化合物の組み合わせである光重合開始系が好ましい。
又、本発明の青紫色レーザー光用感光性組成物は、光重合開始能力の向上を目的として、前記成分以外に、重合加速剤として水素供与性化合物成分を含有しているのが好ましい。
【0067】
その水素供与性化合物としては、具体的には、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズオキサゾール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール等のメルカプト基を有する化合物、N,N−ジアルキル安息香酸アルキルエステル、N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシンの塩、N−フェニルグリシンエチルエステル、N−フェニルグリシンベンジルエステルなどのN−フェニルグリシンのアルキルエステル等のN−アリール−α−アミノ酸又はその塩及びエステル体、更に下記一般式(IV)で表される化合物等が挙げられる。
【0068】
【化11】
【0069】
式(IV)中、R16は水素原子、又は置換基を有してもよいアルキル基を示し、R17は水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいビニル基、置換基を有してもよいアリル基、置換基を有してもよい(メタ)アクリロイル基、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよい芳香族複素環基を示し、ベンゼン環は置換基を有してもよく、pは2〜10の整数である。
【0070】
本発明の感光性平版印刷版は、感光層を塗設する際の塗膜性や、現像性等の向上を目的として、感光層中に前記成分以外に高分子結合剤を含有するのが好ましい。
高分子結合材の具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、マレイン酸、(メタ)アクリロニトリル、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニリデン、マレイミド等の単独もしくは共重合体、その他、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリエチレンテレフタレート、アセチルセルロース、またはポリビニルブチラール等が挙げられる。
【0071】
中でも、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の置換されていてもよい(メタ)アクリル酸エステルの少なくとも一種と(メタ)アクリル酸を共重合成分として含有する、分子内にカルボキシル基を含有する共重合体(以下、「カルボキシル基含有共重合体」と称する)が好ましい。
【0072】
カルボキシル基含有高分子結合材の好ましい酸価の値は10〜250KOH・mg/gであり、好ましいポリスチレン換算重量平均分子量(以下Mwと略す)は5,000から1,000,000である。更に好ましくは10,000から500,000である。
これらの高分子結合材は、側鎖に不飽和結合を有する事が望ましく、前記の如きカルボキシル基含有共重合体にエポキシ基と不飽和基を併せ有する化合物を反応させた樹脂が挙げられる。
【0073】
エポキシ基と不飽和基を併せ有する化合物としては、例えば、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート、α−エチルグリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルクロトネート、グリシジルイソクロトネート、クロトニルグリシジルエーテル、イタコン酸モノアルキルモノグリシジルエステル、フマール酸モノアルキルモノグリシジルエステル、マレイン酸モノアルキルモノグリシジルエステル等の脂肪族エポキシ基含有不飽和化合物、又は、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0074】
中でも、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートが好ましく、さらに、好ましくは3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートである。
更に好ましくは、下記式(V)で表される構造単位(モノマーユニット)を有するものが好ましい。
【0075】
【化12】
(式(V)中、Reは水素原子またはメチル基を表す。)
【0076】
以上挙げたカルボキシル基と側鎖二重結合を併せ有する樹脂の好ましい分子量はMwで10000〜1000000、好ましくは、20000〜500000の範囲である。さらに、側鎖二重結合は主鎖モノマーユニット100に対して1〜50、好ましくは5〜40ユニット導入されているものが好ましい。
【0077】
また、本発明の感光性平版印刷版は、390〜430nmの波長域のレーザー光に対する感度を向上させる目的で、感光層中に25℃におけるpKb(解離定数)が7以下のアミン化合物、または、分子内に原子団[N−CH2]を有するアミン化合物を含有するのが好ましい。更に好ましくは、感光層中に25℃におけるpKbが7以下であり、且つ分子内に原子団[N−CH2]を有するアミン化合物である。
該アミンとしては、上記の条件を満たす限り脂肪族、脂環式、又は芳香族アミンのいずれでもよく、該アミン中の炭化水素基は置換基を有していてもよい。又、モノアミンに限定されず、ジアミン、トリアミン等のポリアミンであってもよく、又、第1アミン、第2アミン、第3アミンのいずれであってもよい。但し、pKbの点から実質的には、置換基を有していてもよい炭化水素基を有する脂肪族アミンから選択され、中でも第3アミンが好ましい。
アミンのpKbは、好ましくは5以下である。また、pKbの下限は好ましくは3以上である。また、アミンは分子内に原子団[CH2−N−CH2]を有するものが更に好ましい。
【0078】
具体的にはブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、アミルアミン、ジアミルアミン、トリアミルアミン、ヘキシルアミン、ジヘキシルアミン、トリヘキシルアミンンベンジルアミン、ジベンジルアミン、トリベンジルアミン、トリエタノールアミン、アリルアミン、ジアリルアミン、トリアリルアミン等の、水酸基又はフェニル基で置換されていてもよい脂肪族アミンが挙げられる。
【0079】
一方本発明に用いられるのアミン化合物としては、実用上感光層を塗布・乾燥した際、感光層に残る必要があること、又臭気等の取り扱い性上問題が無い必要があることから、常圧下での沸点は80℃以上のものが好ましく、沸点が150℃以上で且つ常温(25℃)で固体であれば特に好ましい。又、トリアラルキルアミンが着色顔料の分散性を低下させることがなく好ましい。その点を踏まえ、入手し易さなども考慮すれば、例えばトリベンジルアミンが特に好ましい例として挙げられる。
【0080】
該アミンの添加による感度向上の理由は、以下の様に考えられる。
(1)光重合開始機構で発生するラジカル、または該ラジカルの作用でアクリレートモノマーが光重合されて生成するポリアクリレートラジカルとアミンとの連鎖移動反応により生成される活性なアミノラジカルの生成。
(2)通常、光励起増感色素からラジカル発生剤への電子移動による増感過程により生成する増感色素カチオンとラジカル発生剤アニオンが、色素カチオンへの逆電子移動により失活するラジカル発生剤アニオンから増感がこの過程を、該アミンが増感色素カチオンに電子移動を行ないこのカチオンを中性の増感色素に変えてしまうことにより、逆電子移動を抑制し、ラジカル発生剤アニオンの分解効率を向上させラジカルの発生効果を高める。
(3)アルカリ現像時に特に非画像部、或いは、不十分な硬化状態の感光性層のアルカリ現像液への溶出速度を大きく向上させる作用により光硬化感光性層の膜減りを防ぎ、感度を向上させる。
【0081】
第2の本発明の感光性平版印刷版の感光層には、前記エチレン性単量体と、光重合開始系としてヘキサアリールビイミダゾール化合物(ラジカル発生剤)及びジアルキルアミノベンゼン化合物(増感色素)の組み合わせ、或いは、チタノセン化合物(ラジカル発生剤)及びジアルキルアミノベンゼン化合物(増感色素)の組み合わせを必須成分とするが、エチレン性単量体100重量部に対する各成分の配合割合は、ヘキサアリールビイミダゾール化合物が好ましくは5〜60重量部、更に好ましくは15〜40重量部、チタノセン化合物が好ましくは1〜30重量部、更に好ましくは5〜20重量部、ジアルキルアミノベンゼン化合物が好ましくは1〜30重量部、更に好ましくは5〜20重量部である。又、ラジカル発生剤と増感色素の組成比率として、ヘキサアリールビイミダゾール化合物1重量部に対してジアルキルアミノベンゼン化合物が好ましくは0.1〜5重量部、更に好ましくは0.2〜3重量部、チタノセン化合物1重量部に対してジアルキルアミノベンゼン化合物が0.5〜〜6重量部、更に好ましくは0.5〜1.8重量部である。
【0082】
又、光重合開始能力の向上を目的として重合加速剤(水素供与性化合物)を含有する場合、エチレン性単量体成分100重量部に対して1〜50重量部の範囲で含有しているのが好ましく、10〜40重量部の範囲で含有しているのが更に好ましい。
又、高分子結合剤を含有する場合、エチレン性単量体100重量部に対して50〜500重量部の範囲で含有しているのが好ましく、70〜200重量部の範囲で含有しているのが更に好ましい。
さらに、本発明に用いられる感光層には、その目的に応じて更に他の物質を含有することができる。例えば、ノニオン性、アニオン性、カチオン性、フッ素系等の界面活性剤等の塗布性改良剤;ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール等の熱重合防止剤;有機又は無機の染顔料からなる着色顔料(但し、前述の増感色素とは区別されるもので、通常塗布溶媒や感光層成分とほとんど相溶せず増感機能を有さないもの);ジオクチルフタレート、ジドデシルフタレート、トリクレジルホスフェート等の可塑剤;三級アミンやチオールのような感度特性改善剤;その他色素前駆体消泡剤、可視画性付与剤、密着性向上剤、現像性改良剤、紫外線吸収剤等の添加剤が添加されていてもよい。
【0083】
以上述べた添加剤の好ましい添加量は、エチレン性単量体100重量部に対して熱重合防止剤2重量部以下、着色顔料20重量部以下、可塑剤40重量部以下、色素前駆体30重量部以下、界面活性剤10重量部以下の範囲である。
特に、着色顔料の含有量が多すぎると、本発明の性能が十分に発揮されない怖れがあるため、着色顔料の含有量は感光性組成物中に20重量%以下であるのが好ましい。
【0084】
以上述べた感光性組成物は、適当な溶媒で希釈して、支持体上に塗布・乾燥し感光層として形成される。
本発明に用いられる支持体としては、従来から感光性平版印刷版用に使用されているものがいずれも使用でき、例えば、アルミニウム、亜鉛、鉄、銅あるいはそれらの合金からなる金属板;クロム、亜鉛、銅、ニッケル、アルミニウム、鉄等がメッキ又は蒸着された金属板、紙、プラスチックフィルム及びガラス板;樹脂が塗布された紙;アルミニウム箔等の金属箔が張られた紙;親水化処理したプラスチックフィルム等が挙げられる。なかでも、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる板(以下、アルミニウム支持体と称することがある)が好ましく用いられる。
【0085】
アルミニウム支持体の厚さは、通常0.01〜10mm程度、好ましくは0.05〜1mm程度である。
アルミニウム支持体は、少なくとも感光層組成物側の表面を粗面化処理した後、陽極酸化処理を実施する。この他必要に応じて脱脂処理、封孔処理、下引き処理などを施しても良い。通常粗面化処理の前に脱脂処理が行われるが、脱脂処理は、溶剤を用いてふきトリ、浸漬または蒸気洗浄する方法、アルカリ水溶液を用いて浸漬、又は噴霧した後酸水溶液で中和する方法、界面活性剤を用いて浸漬、又は噴霧する方法などの常法に従ってなされる。粗面化の方法としては、一般に公知のブラシ研磨法、ボール研磨法、電解エッチング、化学エッチング、液体ホーニング、サンドブラスト法等の方法及びこれらの組み合わせが挙げられ、好ましくはブラシ研磨法、ボール研磨法、電解エッチング、化学エッチング、液体ホーニングが挙げられる。
【0086】
更に粗面化処理が施されたアルミニウム版は必要に応じて酸またはアルカリ水溶液にてデスマット処理される。
デスマット処理は、硫酸、硝酸、塩酸、燐酸、クロム酸等の酸、又は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、メタ珪酸ナトリウム、燐酸ナトリウム、ピロ燐酸ナトリウム、燐酸カリウム、アルミン酸ナトリウム等のアルカリの水溶液を用いて浸漬、又は噴霧する等の常法に従ってなされる。こうして得られたアルミニウム板は、通常、陽極酸化処理されるが、特に好ましくは、硫酸を含む電解液で処理する方法が挙げられる。硫酸を含む電解液で陽極酸化する方法は、従来公知の方法、例えば特開昭58−213894号公報に記載の方法等に準じて行われる。具体的には、例えば硫酸5〜50重量%、好ましくは15〜30重量%が用いられ、温度は5〜50℃程度、好ましくは15〜35℃であり、電流密度1〜60A/dm2で5秒〜60秒間程度で行なわれる。また、更に必要に応じて珪酸ソーダ処理等の珪酸アルカリや熱水による処理、その他カチオン性4級アンモニウム基を有する樹脂やポリビニルホスホン酸等の水性高分子化合物を含有する水溶液への浸漬等による表面処理を行うことができる。アルミニウム支持体の厚さは、通常0.01〜10mm、好ましくは0.05〜1mm程度であり、表面粗さはJIS B0601に規定される平均粗さRaで通常0.3〜1.0μm、好ましくは0.4〜0.8μm程度である。
【0087】
本発明に用いられる感光性平版印刷版は、レーザー光により、比較的低露光にて露光するので、現像性や印刷時の汚れといった悪影響を起こさないかぎりスマットを残して感光性組成物の接着性を高めることも有効である。スマットの残量としては、感光性組成物側表面の反射濃度として表したときに、0.3以上が好ましく、0.3〜0.5が更に好ましく、特に好ましくは0.32〜0.45である。反射率が上記範囲にあれば、耐刷性が向上する。
【0088】
また、デスマット処理を行う場合には、粗面化処理工程直後の感光性組成物側表面の反射濃度をD、陽極酸化処理工程後の感光性組成物側表面の反射濃度をEとした場合、D−E≦0.1となるようにデスマット条件を制御して行うことが好ましい。より好ましいデスマットの条件としては、D−E≦0.08である。
【0089】
反射濃度の測定は、反射濃度計を用い、フィルターを使用しないビジュアルモードにて実施される。本発明の条件となるデスマット処理は、用いるアルカリ水溶液や、粗面化処理の状態にもよるが、好ましくは濃度0.1〜4重量%、液温5〜30℃程度のNaOH水溶液に1〜10秒程度浸漬する等の条件が挙げられる。
【0090】
感光性組成物の塗布方法としては、ディップコート、コーティングロッド、スピナーコート、スプレーコート、ロールコート等の周知の方法により塗布することが可能である。塗布量は用途により異なるが、乾燥膜厚として0.5〜100g/m2の範囲が好ましく、例えば平版印刷版では0.5〜5g/m2が好ましい。尚、乾燥温度としては例えば30〜150℃程度、好ましくは40〜110℃程度で5秒から60分程度、好ましくは10秒から30分程度である。
【0091】
更に、前述の感光層の上には、酸素による重合禁止作用を防止するために保護層(酸素遮断層)が設けられる。その具体例としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、セルロース等の水溶性高分子が挙げられる。この内、特に酸素ガスバリア性の高いポリビニルアルコールを含むものが好ましい。また、ポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンを併用したものも好ましく、この場合には、ポリビニルアルコール100重量部に対して、ポリビニルピロリドンが好ましくは1〜20重量部、更に好ましくは3〜15重量部用いられる。
【0092】
本発明の感光性平版印刷版は、400〜440nmの波長域以外に分光感度の極大ピークを有する感光性組成物からなる感光層を形成した後、該感光層上に光の透過性を調整する機能を有する保護層を設けることにより、例えば、430〜460nmに分光感度の極大ピークを有する感光性組成物からなる層を形成した後、該感光層上に、430〜500nm領域に吸収を有する保護層を設け、結果として、400〜420nmの波長域に分光感度の極大ピークを有し、かつ波長410nmにおける絶対感度が100μJ/cm2以下であることを満足するようにしても良い。
【0093】
この場合の感光層を構成する感光性組成物としては、上記の感光性組成物において、重合開始系を変更したもの、具体的には、前述の如きチタノセン化合物とクマリン系化合物の組み合わせ等が挙げられる。
クマリン系化合物としては、例えば、特開平6−301208号公報、特開平8−146605号、特開平8−211605号公報、特開平8−129258号公報、特開平8−129259号公報等に記載のクマリン系色素が挙げられる。尚、クマリン系色素は、その構造中に下記骨格を有する色素である。
【0094】
【化13】
【0095】
尚、光ラジカル重合を利用した感光性組成物を用いて感光層を形成する場合には、前述の様に該感光層上に、酸素によるラジカル重合禁止作用を防止するために酸素遮断層を設けることが好ましいが、かかる酸素遮断層を保護層とし、該保護層の成分を調整することにより、感光性平版印刷版としての分光感度の極大ピークを400〜440nmの波長域となるように調節することが可能である。保護層の主成分としては、前述の酸素遮断層と同様の水溶性高分子が挙げられ、これに、上記所望の波長の光を吸収する化合物を含有すればよい。
【0096】
次に本発明の感光性組成物を用いた第3の発明である印刷版の製版方法について説明する。
本発明の印刷版の製版方法においては、上述の感光性平版印刷版を390〜430nmの波長のレーザーにより露光後、現像して未露光部を除去することにより画像形成する。
【0097】
本発明の製版方法に適用し得る露光光源としては、390〜430nmに発振波長を有するするレーザーであれば特に限定されないが、好ましくは400〜420nmに発振波長を有するレーザーであり、特に窒化インジウムガリウム半導体レーザーの410nm付近の波長が有利である。
露光は、レーザーの出力光強度1〜100mW、好ましくは3〜70mW、発振波長は390〜430nm、好ましくは400〜420nmのレーザー光線を、2〜30μm好ましくは4〜20μm径のビームスポットとし、50〜500m/s好ましくは100〜400m/sの走査速度にて該ビームスポットを移動することにより行われる。
印刷版上のレーザー光露光量(版面露光量)が、100μJ/cm2以下、好ましくは、50μJ/cm2以下となるように画像露光する。下限は小さいほど好ましいが通常、1μJ/cm2以上であり、実用上5μJ/cm2以上である。
また、露光の走査密度は、高い方が高精細な画像形成に有利であるので、好ましくは2000dpi以上、更に好ましくは4000dpi以上である。
【0098】
本発明の感光性平版印刷版は、かかる光源にて画像露光を行った後、水を主体とし、該感光性組成物を現像可能な水性現像液、好ましくは界面活性剤とアルカリ成分を含有する水溶液を用いて現像すれば支持体上に画像を形成することができる。
この水溶液には、更に有機溶剤、緩衝剤を含有することができる。好ましいなアルカリ成分としては、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、第三リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム等の無機アルカリ剤、及びトリメチルアミン、ジエチルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン類などの有機アミン化合物などが挙げられ、これらは単独もしくは組み合わせて使用できる。アルカリ現像液のpHは、通常9〜14程度、好ましくは11〜14である。
【0099】
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンアルキルエステル類、モノグリセリドアルキルエステル類等のノニオン系界面活性剤;アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキル硫酸塩類、アルキルスルホン酸塩類、スルホコハク酸エステル塩類等のアニオン界面活性剤;アルキルベタイン類、アミノ酸類等の両性界面活性剤が使用可能である。また、有機溶剤としては例えば、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、フェニルセロソルブ、プロピレングリコール、ジアセトンアルコール等を必要により含有させることが可能である。
【0100】
現像方法としては特に限定されないが、現像液に浸漬揺動する方法や物理的にブラシなどで現像液で溶解しかかった非画像部を除去する方法や、現像液をスプレー状に吹き付けて非画線部を除く方法などが挙げられる。現像時間は、上記現像方法に応じて未露光部が十分に除去できる時間を選定すればよく5秒〜10分の範囲から適宜選ばれる。
【0101】
現像後は、特に印刷版に置いて必要に応じてアラビアガムなどの親水化処理などを適宜行っても良い。また、必要に応じて現像前に予め酸素遮断層を水洗しても良い。
【0102】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
<アルミニウム支持体の製造−1>
厚さ0.3mmのアルミニウム板を3%水酸化ナトリウムにて脱脂し、これを11.5g/l塩酸浴中で25℃、80A/dm2の電流密度で11秒電解エッチングし、水洗後30%硫酸浴中で30℃、11.5A/dm2の条件で15秒間陽極酸化し、水洗、乾燥して平版印刷版用アルミニウム板(以下「支持体−1」と略す。)を得た。
【0103】
<アルミニウム支持体の製造−2>
アルミニウム板(厚さ0.24mm)を3重量%水酸化ナトリウム水溶液で脱脂した後、18.0g/リットル硝酸浴中で、25℃、90A/dm2の電流密度で11秒間、電解エッチングした。次いで30℃の4.5重量%水酸化ナトリウム水溶液で2秒間デスマット処理した後、25℃の10重量%硝酸水溶液で5秒間中和し、水洗後、30重量%硫酸浴中で、30℃、10A/dm2の電流密度で16秒間、陽極酸化処理し、水洗、乾燥して支持体を得た。
支持体の反射濃度(マクベス社製 反射濃度計 RD−918にて測定)は、0.32であった。また、この製造工程中、A−B=0.08(但し、粗面化処理工程直後の感光性組成物側表面の反射濃度をA、陽極酸化処理工程直前の感光性組成物側表面の反射濃度をBとする)。
こうして得た支持体を以下、「支持体−2」と略す。
【0104】
実施例1〜14、比較例1〜5
上記支持体−1上に、下記の感光性組成物塗布液をバーコーターを用いて乾燥膜厚2g/m2となるように塗布乾燥した(乾燥条件170℃、2分間)。更にこの上に、下記の保護層塗布液−1をバーコーターを用いて乾燥膜厚3g/m2となるように塗布乾燥して(乾燥条件170℃、2分間)感光性平版印刷版を作製した。
【0105】
【表1】
<保護層塗布液−1>
ポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製 GL−03) 90重量部
ポリビニルピロリドン(Mw=4000) 5重量部
水 1000重量部
【0106】
【表2】
感光性組成物塗布液
ラジカル発生剤(第1表に記載の化合物) 第1表に記載の配合量
増感剤(第1表に記載の化合物) 第1表に記載の配合量
高分子結合材(下記化合物:P−1) 45重量部
エチレン性単量体 1(下記化合物:E−1) 第1表に記載の配合量
エチレン性単量体 2(下記化合物:E−2) 22重量部
エチレン性単量体 3(下記化合物:E−3) 第1表に記載の配合量
エチレン性単量体 4(下記化合物:E−4) 第1表に記載の配合量
2−メルカプトベンゾチアゾール 5重量部
N−フェニルグリシンベンジルエステル 第1表に記載の配合量
トリベンジルアミン 第1表に記載の配合量
銅フタロシアニン顔料(可視画剤) 4重量部
エマルゲン104P(花王(株)社製 界面活性剤) 2重量部
S−381(旭硝子(株)社製 フッ素系界面活性剤) 0.3重量部
Disperbyk 161(ビックケミー社製分散剤) 2重量部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 400重量部
シクロヘキサノン 740重量部
【0107】
尚、感光性組成物の成分の内、ラジカル発生剤、増感剤、高分子結合材、エチレン性単量体の各化合物の構造は下記の通りである。
<ラジカル発生剤>
【0108】
【化14】
【0109】
<増感剤>
【0110】
【化15】
【0111】
<高分子結合材>
【0112】
【化16】
【0113】
<エチレン性単量体>
【0114】
【化17】
【0115】
【化18】
【0116】
得られた青紫色レーザー露光用感光性平板印刷版について下記の項目について評価した。結果を第1表に示す。
<感度評価>
得られた感光性平板印刷版を50×60mmの大きさに切り、感光材試料に、ウシオ電機社製キセノンランプ:U1−501C(1kW)を光源とし、回折分光照射装置(ナルミ社製 RM−23)により横軸が波長、縦軸が対数的に光強度が弱くなる様に10秒間照射した。露光試料は、炭酸ナトリウム0.7重量%及びアニオン性界面活性剤(花王(株)製ペレックスNBL)0.5重量%を含む水溶液に、28℃で30秒浸漬することにより現像を行なった。現像後、得られた硬化画像の高さより、410nmの光線による光硬化に必要な最小露光エネルギー量を算出した。該エネルギー量が小さい程高感度であることを示す。
【0117】
<S410 /S450>
前記感度評価と同様にして、感光材試料を露光、現像したときの、波長410nmに於ける最小露光エネルギー S410(μJ/cm2)及び、波長450nmに於ける最小露光エネルギー S450(μJ/cm2)をそれぞれ求め、その比(S410/S450)を算出した。
なお、第1表中最小露光エネルギーの欄のA〜Dの記号は以下を意味する。
A:S410/S450が0.03以下
B:S410/S450が0.03を越えて0.1以下
C:S410/S450が0.1を越えて0.5以下
D:S410/S450が0.1を越える
該比が小さいほど、黄色灯下でのセーフライト性が良好な結果を示している。
【0118】
<分光感度の極大ピーク>
前記感度評価と同様にして、感光材試料を露光、現像し、横軸に露光波長を、縦軸にその波長での最少露光エネルギーの逆数(感度)を取り、得られた分光感度曲線から、分光感度の極大ピークを示す波長を求めた。なお、露光波長は350nmから650nmまで変化させた。
<黄色燈下でのセーフライト性>
感光性平板印刷版を30×30mmの大きさに切り、それぞれ黄色燈照明(約470nm以下の波長の光を遮断した条件)下に、1分間、2分間、5分間、10分間、20分間、30分間、40分間放置した後、前記と同様にして現像することにより、黄色燈下に放置することで感光組成物が硬化しない最長時間を求めた(最大40分迄の評価)。
【0119】
なお、第1表中、セーフライト性の欄のA〜Dの記号は以下を意味する。
A:20分間以上
B:10分間以上20分間未満
C:1分間以上10分間未満
D:1分間未満
【0120】
実施例15
実施例12において、支持体−1の代わりに支持体−2を用いた以外は実施例12と同様に感光性組成物塗布液及び保護層塗布液を順次塗布/乾燥して、感光性平版印刷版を作製し、同様に評価した。結果を第1表に示す。
【0121】
【表3】
【0122】
【表4】
【0123】
*1「無し」は、1分間の放置で硬化することを示す。
*2は、上記条件の450nmでの露光に於いて、約2000μJ/cm2で画像形成不可であったことを示す。
*3「F」は、上記条件の410nmでの露光に於いて、約2000μJ/cm2で画像形成不可であったことを示す。
【0124】
尚、前記分光感度の評価より、実施例1〜15の感光剤試料の画像形成可能な最小露光量は、450nmより長波長において、450nmにおける値より大きい値を満足するものであった。一方、比較例1の感光剤試料の画像形成可能な最小露光量は、450nmより長波長において、450nmにおける値より大きい値であった。また、実施例1〜15の感光層は、350〜650nmの範囲において、いずれも410nmに最大ピークを示した。
【0125】
実施例16
実施例1と同様にして作製した感光性平版印刷版をエッシャーグラッド社製410nm青紫色レーザー印刷版露光装置(Cobalt8)を用いて、レーザー光出力0.5mW、レーザービームスポット径12μm、走査密度5080dpi、走査速度167m/sにて画像露光を行った。画像露光した感光性平版印刷版を実施例5と同様に現像したところ、高品質の画像が形成された印刷が得られた。この時の版面露光エネルギーは30μJ/cm2であった。
尚、実施例2〜15と同様にして製造した感光性平版印刷版は、実施例1と同様にして、エッシャーグラッド社製410nm青紫色レーザー印刷版露光装置(Cobalt8)を用いて、レーザー光出力0.5mW、レーザービームスポット径12μm、走査密度5080dpi、走査速度167m/sにて画像露光を行い、現像することにより、画像を形成することができる。
【0126】
【発明の効果】
本発明の感光性平版印刷版は390〜430nmのレーザー露光用として高感度であり、従って390〜430nmのレーザーを用いて効率よく、画像及び印刷版を形成することができる。
更に、好ましい態様に於いては、黄色灯下でのセーフライト性が良好で、取り扱い性に優れる。
Claims (12)
- 支持体上に、感光層及び保護層をこの順に有する感光性平版印刷版において、該感光層が390〜430nmの波長域に分光感度の極大ピークを有し、該感光性平版印刷版の波長410nmにおける画像形成可能な最小露光量(S410)が100μJ/cm2以下であり、且つ波長450nmにおける画像形成可能な最小露光量(S450)と、波長410nmにおける画像形成可能な最小露光量(S410)との関係が、0<S410/S450≦0.1であり、
該感光層中に、エチレン性単量体として一分子中に4つ以上のウレタン結合と4つ以上の付加重合可能な二重結合を有するウレタン系化合物(a3)を含有することを特徴とする感光性平版印刷版。 - 450nmを越え650nm以下の各波長において画像形成可能な最小露光量が、450nmにおいて画像形成可能な最小露光量(S450)よりいずれも大きいことを特徴とする請求項1に記載の感光性平版印刷版。
- 支持体上に、(A)エチレン性単量体、(B)増感色素、(C)ラジカル発生剤を含有する感光層及び保護層をこの順に有する感光性平版印刷版において、該感光層が390〜430nmの波長域に分光感度の極大ピークを有し、該感光性平版印刷版の波長410nmにおける画像形成可能な最小露光量(S410)が100μJ/cm2以下であり、且つ波長450nmにおける画像形成可能な最小露光量(S450)と、波長410nmにおける画像形成可能な最小露光量(S410)との関係が、0<S410/S450≦0.1であり、
該感光層中に、エチレン性単量体として一分子中に4つ以上のウレタン結合と4つ以上の付加重合可能な二重結合を有するウレタン系化合物(a3)を含有する
ことを特徴とする感光性平版印刷版。 - (C)ラジカル発生剤が、チタノセン化合物を含有し、(B)増感色素がジアルキルアミノベンゼン化合物を含有する請求項3に記載の感光性平版印刷版。
- 感光層中に更に、水素供与性化合物を含有する請求項1又は3に記載の感光性平版印刷版。
- 感光層中に更に、25℃におけるpKbが7以下であるアミン化合物を含有する請求項1又は3に記載の感光性平版印刷版。
- 感光層中に更に、原子団[N−CH2]を有するアミン化合物を含有する請求項1又は3に記載の感光性平版印刷版。
- 請求項1に記載の感光性平版印刷版を、波長390〜430nmのレーザー光により画像露光した後、水性現像液により現像することを特徴とする印刷版の製版方法。
- レーザー光の走査密度が4000dpi以上である請求項9に記載の印刷版の製版方法。
- レーザー光の走査速度が50〜500m/sである請求項9に記載の印刷版の製版方法。
- 画像露光における版面露光エネルギーが50μJ/cm2以下である請求項9に記載の印刷版の製版方法。
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