以下、本発明の発光ダイオードアレイ装置を図面に基づき詳細に説明する。
図1〜図3は本発明に係る発光ダイオードアレイ装置の一実施形態を示し、図1は本発明の横断面図であり、図2は、発光ダイオード(発光素子部)の要部拡大の断面図であり、図3は発光ダイオードアレイ装置の平面である。なお、図4は第1の共通電極と第2の共通電極との関係を明瞭にした平面図である。
図において、1は高抵抗基板であり、10は発光ダイオード素子であり、2は発光ダイオード10を構成する一導電型半導体層であり、3は発光ダイオード10を構成する逆導電型半導体層であり、4は個別電極であり、50は共通電極であり、5は第1の共通電極であり、6は第2の共通電極であり、7は高抵抗基板1の表面に形成された第1の絶縁膜であり、8は第1の共通電極5上に被着された第2の絶縁膜であり、本発明でいう絶縁膜とはこの第2の絶縁膜8を指す。
高抵抗基板1は、たとえばシリコン(Si)やガリウム砒素(GaAs)などの単結晶半導体基板やサファイア(Al2O3)などの単結晶絶縁基板である。例えば、単結晶半導体基板の場合においては、(100)面を<011>方向に2〜7°オフさせた基板などが好適に用いられる。サファイアの場合においては、C面基板が好適である。
この高抵抗基板1上の表面中央部領域に、複数の発光ダイオード10が1列に複数配列されて形成されている。また、基板1上には、この発光ダイオード10が配列された領域Lを挟んで、主に個別電極が形成される個別電極形成領域Sと、主に共通電極が形成される共通電極形成領域Cを有している。
この発光ダイオードの主要部分の構成は、一導電型半導体層2及び逆導電型半導体層3から構成されている。
一導電型半導体層2は、バッファ層2a、オーミックコンタクト層2b、電子の注入層2cで構成される。バッファ層2aは2〜4μm程度の厚みに形成され、オーミックコンタクト層2bは0.1〜1.0μm程度の厚みに形成され、電子の注入層2cは0.2〜0.4μm程度の厚みに形成される。バッファ層2aとオーミックコンタクト層2bはガリウム砒素などで形成され、電子の注入層2cはアルミニウムガリウム砒素などで形成される。また、オーミックコンタクト層2bはシリコンなどの一導電型半導体不純物を1×1016〜1019atoms/cm3 程度含有し、電子の注入層2cはシリコンなどの一導電型半導体不純物を1×1016〜1019atoms/cm3 程度含有する。
バッファ層2aは高抵抗基板1と半導体層との格子定数の不整合に基づくミスフィット転位を防止するために設けるものであり、半導体不純物を含有させる必要はない。
この一導電型半導体層2のオーミックコンタクト層2bには、共通電極50が接続される。
また、逆導電型半導体層3は、発光層3a、第2のクラッド層3bおよび第2のオーミックコンタクト層3cで構成される。
発光層3aと第2のクラッド層3bは0.2〜0.4μm程度の厚みに形成され、オーミックコンタクト層3cは膜厚d>(0.15μm−オーミックコンタクト層膜厚)程度の厚みに形成される。発光層3aと第2のクラッド層3bはアルミニウムガリウム砒素などから成り、第2のオーミックコンタクト層3cはガリウム砒素などから成る。発光層3aと第2のクラッド層3bは、電子の閉じ込め効果と光の取り出し効果を考慮してアルミニウム砒素(AlAs)とガリウム砒素(GaAs)との混晶比を異ならしめる。発光層3aと第2のクラッド層3bは亜鉛(Zn)などの逆導電型半導体不純物を1×1016〜1021atoms/cm3 程度含有し、第2のオーミックコンタクト層3cは亜鉛などの逆導電型半導体不純物を1×1019〜1021atoms/cm3 程度含有する。
この逆導電型半導体層3の第2のオーミックコンタクト層3cには、個別電極4が接続される。
また、高抵抗基板1の共通電極形成領域C及び個別電極形成領域Sの大部分の領域には、第1の絶縁膜7が形成されている。
第1の絶縁膜7は、酸化シリコンや窒化シリコンなどが例示できる。基板材料がシリコンである場合、基板表面の熱酸化処理により形成できる。また、その他の基板材料の場合に、シランガス(SiH4)や必要に応じてアンモニアガス(NH3)を用いてプラズマCVD法などによって被着形成する。
共通電極50を構成する第1の共通電極5は、高抵抗基板1の共通電極側領域Cの第1の絶縁膜7上に形成される。この第1の共通電極5は、発光ダイオード10の配列方向に略平行に形成され、その長さは、実質的には、発光ダイオード10の配列の幅と同等の長さを有している。また、この第1の共通電極は、発光ダイオード10の駆動の単位である発光素子群を構成する発光ダイオードの構成数(N)と同一の数だけ形成される。
第1の共通電極5は、高抵抗基板1上に形成した平坦な面を有する第1の絶縁膜7上に、例えば、下地導体膜としてCrを150Å以上形成した後、アルミニウム/金などの順次積層た多層構成などが例示できる。その厚みが例えば1μmである。なお、下地導体膜を省略して金/クロム(Au/Cr)、アルミニウム/クロム(Al/Cr)の多層層構造であってもよい。
この第1の共通電極5は、発光ダイオード10の配列幅にわたり、比較的長く形成されているものの、その下面には、平坦な高抵抗基板1の表面に形成された第1の絶縁膜に形成される。即ち、基板の複雑な構造や導体膜がない状態でないため、第1の絶縁膜7の表面が非常に平坦化された表面となり、この平坦な表面に第1の共通電極5を形成されるため、複数の第1の共通電極5において構造的に均一化を図ることができる。また、材料も金を含む非常に良好な導電材料を用いているため、その抵抗のバラツキも抑えることができる。
第2の絶縁膜8は、共通電極形成領域C、個別電極形成領域Sの一部、さらには、発光ダイオードの一部に形成されるものであり、例えば透明な材料で構成される。具体的には、ポリイミド合成樹脂、感光性樹脂、窒化シリコン、酸化シリコン、ポリイミドシリコンなどから成る材料などが例示できる。この第2の絶縁膜8の厚みは2000〜20000Å程度に形成する。
この第2の絶縁膜8は、発光ダイオード10において、少なくともオーミックコンタクト層2b、3cを露出するように形成され、さらに、共通電極形成領域Cには、2種類の開口(コンタクトホール9、10)が形成されている。
コンタクトホール9は、発光ダイオードのオーミックコンタクト層2bと第1の共通電極5を接続する第2の共通電極6が、安定して所定第1の共通電極5に接続するように形成されるものであり、例えば、所定第1の共通電極5の一部を露出するように形成されている。
また,コンタクホール10は、共通電極側接続パッド12と所定第1の共通電極5を接続する引出し電極13が、安定して所定第1の共通電極5に接続するように形成されるものである。
このような第2の絶縁膜8は、例えば高抵抗基板1の上面に、第2の絶縁膜8となるポリイミド合成樹脂、感光性樹脂、窒化シリコン、酸化シリコン、ポリイミドシリコンなどを被着形成し、その後フォトグラフィ技術を利用して、コンタクトホール9、10や一導電型半導体層2のオーミックコンタクト層2b、逆導電型半導体層3のオーミックコンタクト層3cが露出すようにエッチング処理されて形成されるものである。
ここで、コンタクトホール9は、1つの発光素子群の幅に対応する領域に、N個の第1の共通電極5を順次露出するように形成されている。図3においては、最も右側(右側かち奇数番目)の発光素子群に対応するN個のコンタクトホール9は、右肩下がりに配列されて形成され、右から2番目(右から偶数番目)の発光素子群に対応するN個のコンタクトホール9は、右肩上がりに配列されて形成されている。その結果、第2番目の発光素子群と、第3番目の発光素子群と範囲に対応する共通電極形成領域Cには、比較的広い第2の絶縁膜の領域が形成されることになる。
コンタクトホール10は、M群の発光素子群の幅(アレイの全幅)に対応する領域に、N個の第1の共通電極5のいずれかを露出するように形成されている。図3においては、右側から1番目の発光素子群と右側から2番目の発光素子群との間に、右側から2数番目の発光素子群と右側から3番目の発光素子群との間に、・・・にそれぞれ形成されている。
また、高抵抗基板1の個別電極形成領域Sには、複数の個別電極4が形成されている1つの個別電極4は、1つの発光素子群を成す例えば8つ個の発光素子に共通的に接続するように、例えば櫛形状に形成される。即ち、個別電極4は、発光素子群の数Mに対応する数だけ形成されている。この個別電極4は、第2の絶縁膜8上に形成され、発光ダイオード10の逆導電型半導体層3cに接続される。
また、各個別電極4は、個別電極側接続パッド11を有している。また、個別電極側接続パッド11も第2の絶縁膜8に形成されている。なお、個別電極側接続パッド11と外部駆動回路との接続手法によっては、第2の絶縁膜8が除外されて第1の絶縁膜7上に形成してもよい。
高抵抗基板1の共通電極形成領域Cには、複数の第2の共通電極6が形成されている。1つの第2の共通電極6は、1つの発光ダイオードの一導電型半導体層2のオーミックコンタクト層2bから所定のコンタクホール9から露出する第1の共通電極5を接続するために形成されている。即ち、第1の共通電極5は、発光ダイオード10の配列方向に平行に延びているが、第2の共通電極6は、それと直交する方向に形成されている。
これより、発光素子群を構成するN個の発光ダイオード10は、それぞれ異なる第1の共通電極5に接続することになる。
また、各第1の共通電極5には、それぞれ1つの共通電極側接続パッド12に接続されている。この共通電極側接続パッド12は、例えば個別電極形成領域S側に形成されている。そして、この共通電極側接続パッド12と所定の第1の共通電極5は、引出し電極13によってコンタクトホール10を介して接続されている。なお、共通電極側接続パッド12も第2の絶縁膜8に形成されているが、虚通電極側接続パッド12と外部の駆動回路との接続手法によっては、第2の絶縁膜8が除外されて第1の絶縁膜7上に形成してもよい。
また、この引出し電極13は、各発光素子群との境界部分の間隙に、第2の絶縁膜8上に形成されている。これにより、共通電極形成領域Cに形成されたコンタクトホール10と個別電極形成領域Sに形成された共通電極側接続パッド12とが引出し電極13が接続されている。
この第2の共通電極6や個別電極4は、オーミックコンタクト層2b、3cに接触する電極である。このため、金/金・ゲルマニウム/クロム(Au/AuGe/Cr)などのから成る多層構造となっており、その厚み1μm程度以下に形成される。なお、この多層構造の材料を熱処理を加えて、Geを半導体層に拡散処理している。
なお、引出し電極13は、第2の共通電極6、個別電極4と同一工程で形成することが望ましいが、金属−半導体オーミック接触性を考慮することなく、良導電体材料を用いて構わない。また、接続パッド11、12の上面にも、引出し電極13と同一の良導電体材料を被着形成してもよい。
以上の構成した発光ダイオードアレイ装置では、高抵抗基板1の共通電極形成領域Cでは、高抵抗基板1上に第1の絶縁膜7が形成され、さらに、第1の共通電極5が形成され、さらに、第1の共通電極5上には第2の絶縁膜8が形成されおり、第2の絶縁膜8を介して第2の共通電極6または引出し電極13が形成ささている構造である。
また、高抵抗基板1の個別電極形成領域Sでは、高抵抗基板1上に第1の絶縁膜7、第2の絶縁膜8が形成されており、この第2の絶縁膜8上に個別電極4、個別電極側接続パッド11、共通電極側接続パッド12、引出し電極13が形成されている。なお、個別電極側接続パッド11、共通電極側接続パッド12の直下においては、第2の絶縁膜8を省略してもよい。
次に、図3、図4を用いて、発光ダイオードアレイ装置の電極及び接続パッド構造を詳細に説明する。
上述の構成の発光ダイオードは、複数アレイ状に配置され、例えば、隣接するN個(図3、図4では8個)の発光ダイオード(素子)が1つの群として取り扱われる。図3、図4では、右側からは第1の群から第4群までの32(8素子×4群)素子が示されているが、全体としては、M群の発光素子群を有している。
図3、図4に示す高抵抗基板1の図の下側領域である個別電極形成領域Sには、1つの発光素子群を成す8つ個の発光素子に共通的に接続するように、例えば櫛形状の個別電極4が形成されている。そして、この櫛状の個別電極4には個別電極側接続パッド11が1つ形成さている。なお、隣接する群も個別電極4の構成は同様となっている。
つぎに、共通電極50について言えば、第1の共通電極5と第2の共通電極6とか構成されているが、図4に示すように、第1の共通電極5は、発光ダイオードの配列方向と平行に延びるように形成されている。第1の共通電極5は、例えば発光素子群の群数Mに係わらず、1つの発光素子群を構成する発光ダイオード10の数N(図ではN=8)に相当する数だけ形成されている。この例では第1の共通電極5は8つの電極で構成されている。また、第2の共通電極6は、各発光ダイオードと第1の共通電極5とを接続するものであり、各発光ダイオードから第1の共通電極5のいずれかに接続するように発光ダイオードの配列方向と直交する方向に延びて形成されている。そして、第2の共通電極6の一端は1つの発光タダイオードの一導電型半導体層2のオーミックコンタクト層2bに重畳接続し、他端はコンタクトホール9を介して所定第1の共通電極5の一部に重畳接続する。即ち、第2の共通電極6は発光素子群1つから素子数N(例ではN=8)だけ延びており、全体として、N素子×M群だけ形成されている。
ここで、第1の共通電極5に関しては、例えば8つの第1の共通電極を区別するためには、発光ダイオードアレイに近い側から符号5a、5b、5c・・5h(例では1発光素子群が8素子で構成されているためN=8、最終符号は5hとなる)で示す。また、第2の共通電極6に関しては、例えば最も右側の発光素子群を構成する発光ダイオードで、第1の共通電極5aに接続する第2の共通電極を符号61a、そのコンタンクトホール91a、第1の共通電極5bに接続する第2の共通電極を符号61b、そのコンタンクトホール91b、・・・・・第1の共通電極5hに接続する第2の共通電極を符号61h、そのコンタンクトホール91hと示し、右側から2番目の発光素子群を構成する発光ダイオード10で第1の共通電極5aに接続する第2の共通電極を符号62a、そのコンタンクトホール92a、第1の共通電極5bに接続する第2の共通電極を符号62b、そのコンタンクトホール92b、・・・・・第1の共通電極5hに接続する第2の共通電極を符号62h、そのコンタンクトホール92hと示す。
この図3、図4で、右側から第1番目、3番目、5番目・・・(奇数番目)の発光素子群の発光ダイオードで、第2の共通電極を介して第1の共通電極5aに接続する発光ダイオードは、発光素子群中最も右側に形成されものであり、第1の共通電極5hに接続する発光ダイオードは、発光素子群中最も左側に形成されものであり、右側から第2番目、4番目、6番目・・・(偶数番目)発光素子群の発光ダイオードで、第2の共通電極を介して第1の共通電極5aに接続する発光ダイオードは、発光素子群中最も左側に形成されものであり、第1の共通電極5hに接続する発光ダイオードは、発光素子群中最も右側に形成されものであり、奇数番目の発光素子群と偶数番目の発光素子群と対象に配置されている。
これにより、M群の発光素子群のうち、m番目の発光素子群の各発光ダイオードは、N個の共通電極のうち発光ダイオードアレイに最も近い側の第1の共通電極5aから遠い側の第1の共通電極5hに順次に第2の共通電極6を介して接続するとともに、M群の発光素子群のうち、m番目の発光素子群に隣接する発光素子群の各発光ダイオードは、N個の共通電極のうち発光ダイオードアレイに最も遠い側の第1の共通電極5hから近い側の第1の共通電極5aに順次に第2の共通電極6を介して接続されている。このため、m番目の発光素子群に隣接する2つの発光素子群のうち、1つのは発光素子群との間には、実質的に三角形状のスペースXが形成される。
また、第1の共通電極5aの一部は、共通電極側接続パッド12aに接続されており、第1の共通電極5bの一部は共通電極側接続パッド12bに接続されており、・・・第1の共通電極5hの一部は共通電極側接続パッド12hに接続されている。
具体的には、図3、図4では第1の共通電極5aに接続する共通電極側接続パッド12aは、第1番目の発光素子群と第2番目の発光素子群との境界部分を介して、個別電極形成領域S側に延び、個別電極側接続パッド11に並設されている。また、第1の共通電極5bに接続する共通電極側接続パッド12bは、第2番目の発光素子群と第3番目の発光素子群との境界部分を介して、個別電極形成領域S側に延び、個別電極側接続パッド11に並設されている。このとき、第1の共通電極5aと共通電極側接続パッド12aとは、コンタンクホール10a、引出し電極13を介して行われる。同様に、第1の共通電極5b〜5hと共通電極側接続パッド12b〜12hとは、コンタンクホール10b〜10h、引出し電極13を介して行われる。
尚、図では省略しているが、共通電極側接続パッド12を、上述のコンタクトホール10a〜10hの形成領域を含む領域、即ち、上述の三角形状のスペースXに形成してもよい。このときには、1つの三角形状のスペースXに1つの第1の共通電極5に接続する1つの共通電極側接続パッド12を形成する。しかも、この共通電極側接続パッド12の形成領域の直下にコンタクトホール10a〜10hを位置させれば、引出し電極が省略できる。
このような接続構造において、各発光素子群に係わらず、各発光タイオードの共通電極50側においては、第2の共通電極6、コンタンクホール9を介して、所定の第1の共通極5a〜5hのいずれかに接続し、さらに各第1の共通電極5a〜5hから1つのコンタンクホール10a〜10hを介して共通電極側接続パッド12a〜12hに接続している。
このような発光ダイオードアレイ装置は、外部の駆動回路によって、個別電極4と共通電極50とが同時にと選択された発光ダイオード10に電圧が印加され、その結果、それに対応する発光ダイオードが発光することになる。
例えば、第1の共通電極5aに相当する共通電極を選択することにより、発光し得る発光ダイオードは、各発光素子群内で1つの発光ダイオードだけとなる。即ち、図3、図4においては、右側から奇数番目の発光素子群の最も右側の発光ダイオードと、同じく偶数番目の発光素子群の最も左側の発光ダイオードに限られる。
この時、発光素子群に共通的に接続される個別電極4で、どの発光素子群に選択するかによって、選択された発光素子群の上述の発光ダイオード10に発光に必要な電圧が印加されて発光することになる。
このように、第1の共通電極5a〜5hに相当する共通電極50のうち、どれの共通電極50を選択し、個別電極4側でどの発光素子群を選択するかによって、アレイ状に配置された発光ダイオードのうち、どの発光ダイオードを発光させるかを制御できる。
このように、個別電極4で、発光させるべき対象の発光ダイオードを含む発光素子群を選択し、共通電極50側の第1の共通電極5a〜5hを順次選択切り替えてすべての発光ダイオードを独立に制御することができる。
しかも、発光ダイオードの配列数、即ち、発光されるビット数が64bit(N=8、M=8)であっても、192bit(N=8、M=24)であっても、8つの第1の共通電極で簡単に駆動制御が可能である。この第2の共通電極5の数は、発光素子群を構成する発光ダイオードの数に相当する数で、簡単に発光ダイオードの発光制御が可能である。
なお、この構造は、1系統の駆動回路で発光制御することを前提として説明しているものであり、2系統の駆動回路で制御する場合には、この発光ダイオードアレイ装置を、1つの高抵抗基板1上に並設するようにしても構わない。
このように、本発明の発光ダイオードアレイ装置によれば、複数の発光ダイオードの発生を制御するための個別電極4、共通電極50の第1の共通電極5、第2の共通電極6とが全く別の構造で形成されており、且つ第1の共通電極5の導体材料と第2の共通電極6とを全く別の材料で構成することができる。例えば第1の共通電極5を、配線抵抗(電極抵抗)を小さくするための構造、材料を容易に選択でき、また、第2の共通電極6を、半導体−金属の接触性を考慮して、また、第1の共通電極5との接続性を考慮して、それぞれの特性が良好にするための構造、材料を選択できる。
しかも、各発光ダイオード10から共通電極側接続パッド12までの接続点、例えばコンタクトホール9、10の数を、各発光ダイオード10で均一化することができる。
これにより、従来例に示した発光ダイオードアレイ装置に比較して、共通電極側における発光ダイオードから共通電極側接続パッドまでの接続点の数を減少でき、また、目的に応じて導体材料の選択の容易となり、その結果、各発光ダイオードにおける共通電極5の電極抵抗のバラツキが極小化でき、発光バラツキを小さくすることができる。
また、第1の共通電極5は、発光ダイオードアレイの配列方向に平行に形成され、第2の共通電極6は、各発光ダイオーと第1の共通電極5とを接続するように形成されている。即ち、第2の共通電極6の幅を、実質的に発光ダイオードの幅よりも小さく設計することで、発光ダイオードアレイの配列方向の寸法を極小化することができる。
さらに、共通電極側接続パッド12は、発光ダイオード10の配列領域Lを挟んで設けられる個別共通電極形成領域Sに形成されている。即ち、共通電極が形成された共通電極形成領域Cから個別電極形成領域Sに、発光素子群との境界部分に形成された引出し電極13によって接続され、この個別電極形成領域Sには個別電極側接続パッド11、共通電極側接続パッド12とが並設されている。
これにより、外部の駆動回路との接続、例えばボンディングワイヤの融着接合が、高抵抗基板の一方端部側である個別電極形成領域のみで行われるため、その接合作業が非常に簡単となり、発光ダイオードアレイ装置と外部の駆動回路との接合が安定する。
これは、ボンィングワイヤに限らず、例えば接続パッドに銀粉末を含有する導電性ペーストを塗布して、この銀バンプと外部の駆動回路とを接続する場合においても、上述の導電性ペーストの塗布が高抵抗基板の一方端部側である個別電極形成領域のみで行われるので、その接合作業が非常に簡単となる。
しかも、第1の共通電極5から共通電極側接続パッド12への接続部(コンタクトホール10)は、上述のm番目の発光素子群に隣接する発光素子群のうち、1つの発光素子群との間に形成される実質的に三角形状のスペースXに形成されている。このため、第1の共通電極5と共通電極側接続パッド12(または共通電極側接続パッド12に接続する引出し電極13)との接続部(コンタクトホール10)が、第1の共通電極5と第2の共通電極6との接続部(コンタクトホール9)から距離的に離して形成できる。このため、第1の共通電極と共通電極側接続パッド(または共通電極側接続パッドに接続する引出し電極13)との接続部の接続信頼性が向上する。
また、共通電極を電極が要求される抵抗特性と、半導体と接続する金属−半導体のオーミック接触性とを両立させることができ、また、導体長さの長い第1の共通電極を低抵抗とすることも容易となり、これによっても、発光ダイオードでの発光バラツキを改善できる。
このよう発光ダイオードアレイ装置は、LEDプリンタの露光用光源として用いられる。即ち、LEDプリンタは、その主要部分の構成は、ページプリンタ用感光ドラム、この感光体ドラム上に画像を形成するための露光光源手段である発光ダイオードアレイ装置、このプリントすべき画像情報、感光体ドラムの回転測度に応じて、発光させるべき発光ダイオードの駆動を制御する駆動回路と、ドラムに電荷を印加または除去する手段、トナーを供給する手段、ドラム上に付着するトナーを記録媒体に転写する転写手段、記録媒体に転写したトナーを定着する定着手段、記録媒体を搬送する搬送手段、ドラム上の不要なトナーを除去するクリーニング手段とから構成されている。
このようなLEDプリンタにおいて、露光光源である発光ダイオードアレイ装置の発光バラツキがすくないため、非常に安定した画像を感光体ドラムに形成することができ、よって、記録媒体に印刷される画像が非常に高品位とすることができる。
また、このような発光ダイオードアレイ装置を安定した接合状態で駆動回路に接続して、発光制御して発光動作させることにより、その結果、該ドラム表面に安定した画像を形成することができ、高い品位の印字が可能となる。
次に、図5〜図10及び図3、図4を用いて発光ダイオードアレイ装置の製造方法を説明する。
まず、図5において、単結晶材料からなる高抵抗基板1を用意するとともに、その全面に第1の絶縁膜7となる絶縁膜71を形成する。絶縁膜71は、酸化シリコンや窒化シリコンなどが例示で、基板材料よっては、基板表面を熱酸化処理に形成したり、また、プラズマCVD法で、シランガス(SiH4)や必要に応じてアンモニアガス(NH3)を用いて被着形成する。
つぎに、図6に示すに、発光ダイオード10が形成される領域Lのみを、配列方向に沿って絶縁膜71をエッチング処理して、共通電極形成領域C、個別電極形成領域にSに第1の絶縁膜7を形成する。
つぎに、図7、図8に示すように、高抵抗基板1が露出する配列領域Lに、一導電型半導体層2及び逆導電型半導体層3をMOCVD法などで順次積層して発光ダイオード10の主要部分を形成する。これより、図2に示すように一導電型半導体層2は、バッファ層2a、オーミックコンタクト層2b、電子の注入層2cからなり、逆導電型半導体層3は、発光層3a、第2のクラッド層3bおよび第2のオーミックコンタクト層3cからなる発光ダイオードの主要部分が形成される。なお、一導電型半導体層2、逆導電型半導体層3を形成する場合、高抵抗基板1を400〜500℃に設定して200〜2000Åの厚みにアモルファス状のガリウム砒素膜を形成した後、基板温度を700〜900℃に上げて所望厚みの半導体層2、3を形成する。この場合、原料ガスとしてはTMG((CH3)3Ga)、TEG((C2H5)3Ga)、アルシン(AsH3)、TMA((CH3)3Al)、TEA((C2H5)3Al)などが用いられ、導電型を制御するためのガスとしては、シラン(SiH4)、セレン化水素(H2Se)、TMZ((CH3)3Zn)などが用いられ、キャリアガスとしては、H2などが用いられる。
そして、隣接する発光ダイオード10どうしが電気的に分離されるように、一導電型半導体層2、逆導電型半導体層が島状にパターニングされる。このエッチングは、硫酸過酸化水素系のエッチング液を用いたウェットエッチングやCCl2F2ガスを用いたドライエッチングなどで行われる。
その後、一導電型半導体層2の一端部側の一部が露出し、且つこの一導電型半導体層2の隣接する領域部分が露出するように逆導電型半導体層3が一導電型半導体層2よりも幅狭に形成されるように逆導電型半導体層3をエッチングする。このエッチングも硫酸過酸化水素系のエッチング液を用いたウェットエッチングやCCl2F2ガスを用いたドライエッチングなどでおこなわれる。
次に、図9に示すように高抵抗基板1の共通電極形成領域Cの絶縁膜7上に第1の共通電極5a〜5hを形成する。具体的にはクロムと金を順次蒸着法やスパッタリング法で多層化された金属膜を形成しパターン化する。この形成にあたっては、パターン化の際にエッチング液が発光ダイオードの主要部分に及ぼす影響を考慮して、リフトオフ法によって形成する。
つぎに、図10に示すように第2の絶縁膜8を形成する。この絶縁膜8の形成において、同時に、複数のコンタクトホール9、10が形成される。具体的には、全体にポリイミド合成樹脂、感光性樹脂、窒化シリコン、酸化シリコン、ポリイミドシリコンなどから成る材料で絶縁膜を厚み2000〜20000Å程度に形成する。その後、フォトグラフィ技術を利用して、少なくともコンタクトホール9、10、一導電型半導体層2のオーミックコンタクト層2b、逆導電型半導体層3のオーミックコンタクト層3cが露出すようにエッチング処理しその後レジスト膜を剥離する。
最後に、図4に示すように、高抵抗基板1の第2の絶縁膜8上に、個別電極4、第2の共通電極6、個別電極側接続パッド11、共通電極側接続パッド12を被着形成する。
このうち、第2の共通電極6は、高抵抗基板1の中央付近に配列された発光ダイオードの配列ラインを挟み、一方側、例えば図面の上部側の第2の絶縁膜8に形成され、個別電極4、第2の共通電極6、接続パッド11、12は、他方側、例えば図面の下部側の第2の絶縁膜8に形成される。即ち、第2の共通電極6は、発光ダイオードの一導電型半導体層2のオーミックコンタクト層2cと、所定の第1の共通電極5が露出するコンタクトホール9に跨がるように形成される。また、第1の共通電極5とこの共通電極5と接続する接続パッド11とは、コンタンクホール10から発光素子群で区分される境界部分の間を介して延びる引出し電極13によって、共通電極側接続パッド12に接続されている。
これらの第2の共通電極6、個別電極4とは、半導体−金属接触性を考慮した材料を用いる必要があり、接続パッド11、12は半導体−金属接触性を考慮する必要はない。従って、この第2の共通電極6、個別電極4、個別電極側接続パッド11、共通電極側接続パッド12とを同一工程で形成してもよいし、例えば、第2の共通電極6、個別電極4を半導体−金属接触性の良好な材料、良好な層構成で形成し、その後、個別電極側接続パッド11、共通電極側接続パッド12のみを良導電性の材料で形成しても構わない。
たとえば、個別電極4、第2の共通電極6、個別電極側接続パッド11、共通電極側接続パッド12を同時に形成する場合に半導体−金属接触性を考慮して、クロムと金ゲルマニウムと金を蒸着法やスパッタリング法で順次積層して、Cr/AuGe/Auの層構成とすればよい。
以上のようにして製造された発光ダイオードアレイ装置は、高抵抗基板1上に複数の一導電型半導体層2と逆導電型半導体層3を被着形成し、且つ該一導電型半導体層2に共通電極50を、逆導電型半導体層3に個別電極4を接続した発光ダイオード10を複数個配列するとともに、前記複数の配列された発光ダイオード10のうち、所定数の発光ダイオード10を一つの発光素子群として、複数発光素子群から構成される発光ダイオードアレイと、同一の群内の発光ダイオード10の逆電型半導体層3に個別電極4を接続し、異なる群に属する所定番目に配置された発光ダイオードの一導電型半導体層2に共通電極50に接続した発光ダイオードアレイ装置である。そして、共通電極50は、発光ダイオード10の配列方向に概略平行に延びる第1の共通電極5及び該第1の共通電極5の一部から各異なる群に属する所定の発光ダイオード10の一導電型半導体層2に接続する第2の共通電極6とから構成される。
なお、第1の共通電極5は、高抵抗基板1上に形成した第1の絶縁膜7上に形成され、前記第2の共通電極6と第1の共通電極5との間には、第2の絶縁膜8が介在され、第2の共通電極6の一部が、コンタンクトホール9を介して第1の共通電極5に重畳して接続されている。
これにより、第1の共通電極5を、発光素子群を構成する発光ダイオード10の数に相当する数だけ形成され、各発光ダイオード10は、第2の共通電極6を介して、所定の第1の共通電極5に接続されている。この第2の共通電極6は、どの発光素子群に属する発光ダイオード10でありながら、その接続構造は、実質的に同一構造となる。即ち、どの発光ダイオード10であっても、接続部であるコンタクホール9は1個所のみとなる。これにより、発光ダイオード10に接続する共通電極50の構造が非常に簡素化し、接続条件が均一となるため、電極における抵抗のバラツキが小さく、これにより、発光ダイオードの発光バラツキを小さくすることができる。
また、第1の共通電極5と第2の共通電極6、個別電極側接続パッド11、共通電極側接続パッド12をそれぞれ別の導体材料で構成できるため、第2の共通電極6、個別電極4では、安定した金属−半導体接触性を考慮した材料を、第1の共通電極5では、良好な導電性を考慮した材料を選択できるため、これによっても、電極抵抗のバラツキが小さくなり、これにより、発光ダイオードの発光バラツキを小さくすることができる。
また、第1の共通電極5が高抵抗基板1に形成した第1の絶縁膜7上に形成されている。この絶縁膜7の下部には、基板の凹凸の構造物、他の導体膜の凹凸が一切ない、この絶縁膜7の表面が非常に平坦化することになる。このため、第1の共通電極5を非常に安定した形成できる。これより、第1の共通電極5は構造的にバラツキが少ないものとなる。
また、個別電極側接続パッド11、共通電極側接続パッド12は、発光ダイオードの配列領域を中心に個別電極形成領域Sに集中されており、共通電極50(第1の共通電極5及び第2の共通電極6の接続構造)は、発光ダイオード10の共通電極形成領域Cに集中されている。
これにより、外部の駆動回路との接続が一方側の領域のみで行われるため、駆動回路の接続が容易となる。
また、個別電極側接続パッド11、共通電極側接続パッド12の下部領域には、従来のように共通電極などが全く配置されていない。従って、この接続パッド11、12と駆動回路が形成された回路基板とを接続するにあたり、個別電極側接続パッド11、共通電極側接続パッド12に半田バンプなどのように半田接合やボンディングワイヤによる接合をおこなっても、熱衝撃や機械的衝撃が個別電極側接続パッド11、共通電極側接続パッド12接続パッド11、12に印加されても、共通電極や個別電極の接続構造に悪影響を与えることが一切なく、安定した発光動作が可能となる。